(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116290
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】正確に改変した秘匿メッセンジャーRNA、及び、その他のポリヌクレオチド
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20240820BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240820BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20240820BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20240820BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240820BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20240820BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240820BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
C12N15/12
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/09 110
C07K14/47
C12N15/11 Z
C12N15/113 140Z
A61K48/00
A61P43/00 105
C12N15/62 Z
C12N15/12 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024093674
(22)【出願日】2024-06-10
(62)【分割の表示】P 2021531464の分割
【原出願日】2019-08-08
(31)【優先権主張番号】62/716,451
(32)【優先日】2018-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521061298
【氏名又は名称】カーナル バイオロジクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ユスフ アークル
(72)【発明者】
【氏名】バラク イルマズ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】mRNAの自然免疫原性を抑制する方法を提供する。
【解決手段】本開示は、ポリヌクレオチド配列での免疫原性モチーフに正確な配列の改変により、長いポリヌクレオチド配列での免疫原性を抑制する方法に関する。さらに、本開示は、低度の自然免疫原性、改善した安定性、または、タンパク質の高発現をもたらす、改善した機能性を備えた、正確に配列を改変したポリヌクレオチドに関する。これらのポリヌクレオチドでは、免疫原性配列モチーフを除去しており、そして、残余の配列を保存している。全体的なヌクレオチドの変更と比較して、この標的を改変する手法は、天然または最適化したポリヌクレオチド配列の攪乱が少ないなどの独自の利点があり、それ故に、自然免疫受容体を秘匿する一方で、高い発現性を維持している。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
参照による配列表の援用
2018年8月9日に作成し、そして、EFS-Webを介して米国特許商標庁に提出をした、Sequence Listing Kernal.txtの名称の6KBのASCIIテキストファイルの配列表を、参照により、本明細書で援用する。
【背景技術】
【0002】
メッセンジャーリボ核酸(mRNA)分野は、現代医学では複数の用途がある。治療目的でmRNAを使用する上で非常に重要なことは、その自然免疫原性を抑制することにあり、さもなければ、サイトカイン分泌からRNA分解や翻訳の停滞に至る一連の望ましくない影響を招きかねない。幾つかの自然免疫受容体は、ヒトで同定されており、これらは、一般的にはインビトロ転写(IVT)反応を介して製造される外因性mRNAを認識するものであり、一本鎖mRNAと、キャップ付きmRNAの両方、ならびに、二本鎖mRNA、及び/または、無キャップmRNAなどの副産物の出現を招く(Sahin et
al., 2014, Nat Rev Drug Discov, 13:759-80)。自然免疫系の受容体として、無キャップRNA、二本鎖RNA(dsRNA)、及び、一本鎖RNA(ssRNA)のセンサーがある(Schlee & Hartmann, 2016, Nat Rev Immunol, 16:566-580)。これらの受容体の中で、RIG-Iは、5’三リン酸(5’PPP)、または、キャップ0構造を有する平滑末端dsRNAに結合する(Schuberth-Wagner et
al., 2015, Immunity. 43:41-52)が、IFIT1は、5’三リン酸(5’PPP)またはキャップ0構造を有するssRNAに結合する(Abbas et al., 2013, Nature. 494:60-64;Abbas et al., 2017, PNAS, 114:E2106-E2115)。これらの無キャップRNAセンサーは、キャップI構造を得るための効率的なキャッピング、及び/または、IVT mRNAのホスファターゼ処理によって回避することができる(Warren et al., 2010, Cell Stem Cell. 7:618-30;Ramanathan et al., 2016, Nucleic Acids Res. 44:7511-7526)。dsRNAを感知する受容体として、TLR3、MDA5、PKR、及び、OAS1があり(Schlee & Hartmann, 2016, Nat Rev Immunol, 16:566-580)、これらは、mRNAを精製して、IVT反応の二本鎖RNA産物を除去することで回避できる(Kariko et al., 2011, Nucleic Acids Res. 39:e142;Person et al. 2014, 米国特許商標庁 特許出願番号第US 2014/0328825 A1号)。
【0003】
ssRNA(一本鎖ORN、及び、siRNA二本鎖の個々の鎖)に結合する自然免疫受容体として、TLR7とTLR8があり、これらは相同性が大きい(Wang et al., 2006, J Biol Chem, 281:37427-37434;Matsushima et al., 2007, BMC Genomics, 10.1186/1471-2164-8-124;Wei et al. 2009, Protein Sci., 18:1684-1691)。siRNAなどの二本鎖RNAは、エンドソーム内で、二本鎖RNAの2本の鎖を一本鎖RNAに分離した後に、TLR7とTLR8が認識することもできる(Goodchild et al., 2009, BMC Immunology, 10:40)。これらの受容体を刺激すると、細胞内のNF-κBと、IRF-3シグナル伝達経路が活性化され、そして、IFN-アルファ(TLR7)、及び、TNF-アルファ、及び、IL-12p40(TLR8)が分泌される(Gorden et al. 2005;J Immunol., 174:1259-1268;Forsbach et al., 2008, J Immunol., 180:3729-3738)。これらのタンパク質の結晶構造が、最近になって解明されており(Tanji et al., 2015, Nat Struct Mol Biol. 22:109-115;Zhang et al., 2016, Immunity. 45:737-748)、そして、それらのリガンド結合部位が同定されている(Wei et al., 2009, Wei et al. 2009, Protein Sci., 18:1684-1691;Ohto et
al., 2014, Microbes Infect. 16:273-282)。これらの研究によって、2つの別個のリガンド結合ドメインが明らかになった。一方は、単一のヌクレオシド(TLR7に関するグアノシンと、TLR8に関するウリジン)に結合し、他方は、短いオリゴリボヌクレオチド(ORN)に結合する。これらの受容体を二量体化して活性化するには、両方のドメインでのリガンド結合が必要である。構造生物学の研究は、U-及びGU-に富んだORN配列が、TLR7/8の活性化因子であることを一貫して示しているTLR7/8リガンドに関する従前の研究と一致している(Judge et al. 2005, Nat Biotechnol, 23,457-462;Heil et al., 2004, Science, (80)303:1526-1529;Hornung et al., 2005, Nat Med., 10.1038/nm1191)。幾つかのグループが、TLR7及び/またはTLR8に対して大きな刺激活性を示す特異的なssRNA配列を同定した(Diebold
et al., 2006, Eur J Immunol. 10.1002/eji.200636617;Forsbach et al., 2008, J Immunol., 180:3729-3738;Jurk et al., 2011, Nucleic Acid Ther. 21:201-214, Green et al., 2012, J Biol Chem. 287:39789-39799)。Jurk et al. (2011)は、これらのssRNAの様々な誘導体について試験を行い、そして、TLR7/8結合に関するssRNA配列モチーフを同定した。彼らは、(IFN-a分泌に基づいて)ヒトTLR7のUCWモチーフ(Wは、UまたはAである)と、(IL12p40分泌に基づいて)ヒトTLR8刺激のKNUNDKモチーフ(Nは、あらゆるヌクレオチド、Kは、GまたはU、及び、Dは、C以外のあらゆるヌクレオチドである)に注目した。
【0004】
精製及びキャップをしたIVT mRNAは、RIG-I、IFIT、PKR、MDA5、OAS、及び、TLR3を回避できるが、ヒト細胞では、TLR7及びTLR8によって認識される。この認識は、プソイドウリジン、N1-メチル-プソイドウリジン、メトキシ-ウリジン、及び、2-チオウリジンなどの非カノニカルヌクレオチドのmRNAへの組み込み(Kariko, 2005, Immunity. 23:165-75;Kariko, 2008, Mol Ther. 16:1833-40;Kormann et al., 2011, Nat Biotechnol. 29:154-157;Andries et al., 2015, J Control Release. 217:337-344)、あるいは、mRNAの全体的なヌクレオチド含有量の変更を介して、mRNA配列の未精製/大雑把な改変のいずれかを行って、回避をすることができる。後者の手法は、GC含量の増量を介して行うことができ(Thess et al., 2015, Mol Ther. 23:1456-64;Schlake and Thess, 2015)、または、mRNAのAを増量して、もしくは、UまたはGUの含有量を減量して行うことができる(Kariko & Sahin, 2017, WIPO特許出願第WO 2017/036889 A1号)。コード領域の場合、この配列の改変は、主にmRNAに関するコドンの3番目のヌクレオチドを変えて実施する。遺伝暗号の冗長性のため、配列を改変しても、コードしたタンパク質のアミノ酸配列は変わらない。この方法は、導入遺伝子のタンパク質発現収量を改善するために、分子生物学及び合成生物学で一般的に使用されている技術であるコドン最適化に類似している(Quax et al., 2015, Mol Cell. 59:149-161)。しかしながら、IVT mRNA配列改変の事例での主な目標は、IVT mRNAを秘匿する、あるいは、体内のRNAセンサーから見えないようにする、ことである。
プソイドウリジンなどの化学修飾は、特に、トランスフェクションを繰り返すと、自然免疫原性を抑制するが、完全に除去するまでには至らない(Liang et al.,
2017, Mol Ther. 25(12):2635-2647)。加えて、その他のRNAセンサーではなく、一部の刺激を所望する場合には、mRNAの治療用途が考えられる。例えば、TLR7結合活性だけを有するmRNAは、IFN-アルファ分泌が、抗腫瘍免疫を誘導または増強できる一部の免疫腫瘍学用途において望ましい場合がある。化学修飾では、一部のセンサーを回避したり、その他のセンサーを刺激したりすることはできない。
ヒトゲノムでのコード領域のGC含量は、52%であり(Merchant et al., 2007, Science. 318(5848):245-50)、そのヌクレオチドの1%未満が、非カノニカルである(Li et al, 2015, Nat Chem Biol, 11(8):592-7)。mRNAの化学的性質または配列を、(IVT mRNAの自然免疫原性を抑制するために)天然(細胞)のヒトmRNAからさらに離れていくような修飾をすると、意図しない結果を招くリスクが高くなる。全体的なヌクレオチド含有量を変える手法を介した化学修飾と配列の改変の両方は、攪乱を招き、かつ、合併症を招く未精製/大雑把な方法であり;同合併症として、(5-メチル-シチジン、6-メチルアデノシン、及び、2-チオ-ウリジン修飾の場合は)翻訳の抑制(Kariko et al., 2015, Mol Ther, 16(11):1833-40)、または、潜在的なペプチド形成(Mauro & Chappell, 2014, Trends Mol Med. 2014 Nov;20(11):604-13;Mauro et al., 2018, BioDrugs, 32:69-81)がある。さらに、ヒトmRNA「エピトランスクリプトーム」内では、m6Aやプソイドウリジンなどの化学修飾ヌクレオシドは、均一に分布していない(Carlile et al., 2014, Nature. 515:143-6;Dominissini et al., 2016, Nature. 530:441-446)。例えば、哺乳動物の終止コドンに位置するウリジンは、プソイドウリジン化モチーフを含んでおらず(Schwartz et al, 2014, Cell. 159:148-162)、また、IVT mRNAへのプソイドウリジンの取り込みが、終止コドンの読み通しを招くことを示した(Karijolich & Yu, 2011, Nature. 474:395-398;Fernandez et al, 2013, Nature. 500:107-110)。さらに、修飾ヌクレオチドは、RNA転写酵素(T7 RNAポリメラーゼ)と、翻訳機構の忠実度を抑制することができ、また、タンパク質の翻訳後修飾を変えることもできる。また、修飾ヌクレオチドは、ヒトのRNaseに対する耐性をmRNAに付与することができ、また、血清でのRNA蓄積は、凝固亢進状態をもたらすことができる。これらの生物学的リスクに加えて、非カノニカルヌクレオチドの使用は、製造コストの増大も招く(Hadas et al., 2017, Wiley Interdiscip Rev Syst Biol Med. 9:e1367)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0328825号明細書
【特許文献2】国際公開第2017/036889号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Sahin et al., 2014, Nat Rev Drug Discov, 13:759-80
【非特許文献2】Schlee & Hartmann, 2016, Nat Rev Immunol, 16:566-580
【非特許文献3】Schuberth-Wagner et al., 2015, Immunity. 43:41-52
【非特許文献4】Abbas et al., 2013, Nature. 494:60-64
【非特許文献5】Abbas et al., 2017, PNAS, 114:E2106-E2115
【非特許文献6】Warren et al., 2010, Cell Stem Cell. 7:618-30
【非特許文献7】Ramanathan et al., 2016, Nucleic Acids Res. 44:7511-7526
【非特許文献8】Schlee & Hartmann, 2016, Nat Rev Immunol, 16:566-580
【非特許文献9】Kariko et al., 2011, Nucleic Acids Res. 39:e142
【非特許文献10】Wang et al., 2006, J Biol Chem, 281:37427-37434
【非特許文献11】Matsushima et al., 2007, BMC Genomics, 10.1186/1471-2164-8-124
【非特許文献12】Wei et al. 2009, Protein Sci., 18:1684-1691
【非特許文献13】Goodchild et al., 2009, BMC Immunology, 10:40
【非特許文献14】Gorden et al. 2005;J Immunol., 174:1259-1268
【非特許文献15】Forsbach et al., 2008, J Immunol., 180:3729-3738
【非特許文献16】Tanji et al., 2015, Nat Struct Mol Biol. 22:109-115
【非特許文献17】Zhang et al., 2016, Immunity. 45:737-748
【非特許文献18】Wei et al., 2009, Wei et al. 2009, Protein Sci., 18:1684-1691
【非特許文献19】Ohto et al., 2014, Microbes Infect. 16:273-282
【非特許文献20】Judge et al. 2005, Nat Biotechnol, 23,457-462
【非特許文献21】Heil et al., 2004, Science, (80)303:1526-1529
【非特許文献22】Hornung et al., 2005, Nat Med., 10.1038/nm1191
【非特許文献23】Diebold et al., 2006, Eur J Immunol. 10.1002/eji.200636617
【非特許文献24】Forsbach et al., 2008, J Immunol., 180:3729-3738
【非特許文献25】Jurk et al., 2011, Nucleic Acid Ther. 21:201-214
【非特許文献26】Green et al., 2012, J Biol Chem. 287:39789-39799
【非特許文献27】Kariko, 2005, Immunity. 23:165-75
【非特許文献28】Kariko, 2008, Mol Ther. 16:1833-40
【非特許文献29】Kormann et al., 2011, Nat Biotechnol. 29:154-157
【非特許文献30】Andries et al., 2015, J Control Release. 217:337-344
【非特許文献31】Thess et al., 2015, Mol Ther. 23:1456-64
【非特許文献32】Quax et al., 2015, Mol Cell. 59:149-161
【非特許文献33】Liang et al., 2017, Mol Ther. 25(12):2635-2647
【非特許文献34】Merchant et al., 2007, Science. 318(5848):245-50
【非特許文献35】Li et al, 2015, Nat Chem Biol, 11(8):592-7
【非特許文献36】Kariko et al., 2015, Mol Ther, 16(11):1833-40
【非特許文献37】Mauro & Chappell, 2014, Trends Mol Med. 2014 Nov;20(11):604-13
【非特許文献38】Mauro et al., 2018, BioDrugs, 32:69-81
【非特許文献39】Carlile et al., 2014, Nature. 515:143-6
【非特許文献40】Dominissini et al., 2016, Nature. 530:441-446
【非特許文献41】Schwartz et al, 2014, Cell. 159:148-162
【非特許文献42】Karijolich & Yu, 2011, Nature. 474:395-398
【非特許文献43】Fernandez et al, 2013, Nature. 500:107-110
【非特許文献44】Hadas et al., 2017, Wiley Interdiscip Rev Syst Biol Med. 9:e1367
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ヒトTLR8に対する結合に関与する免疫原性配列モチーフを除去するように配列を改変したポリヌクレオチド(例えば、メッセンジャーRNA)を提供する。
【0008】
ある実施形態では、本発明は、ポリヌクレオチド(例えば、mRNA)の配列を正確に改変する方法を提供しており、免疫原性モチーフだけを除去する一方で、残余の配列は無傷のままである。
【0009】
ある実施形態では、本発明は、ヒトTLR8を介して自然免疫原性を有意に抑制するポリヌクレオチド(例えば、mRNA)から、免疫原性RNA配列モチーフであるKNUNDKを除去する方法を提供する。
【0010】
ある実施形態では、本発明は、GFPをコードするメッセンジャーRNAを提供しており、mRNAのコード領域内のKNUNDK配列モチーフに一致する1つ以上の免疫原性配列を、この配列に関するDNAテンプレートのコドン改変を介して除去しており、そして、ヒトTLR8とタンパク質の高発現を介して、HEK細胞にトランスフェクションして、免疫原性を抑制させる。
【0011】
本発明のある態様は、ヒト胎児腎臓細胞株(HEK293-TLR8 SEAP)を、KNUNDK配列モチーフを除去したmRNAと繰り返し接触させて、mRNAの自然免疫原性を抑制しながら、高レベルのタンパク質発現を可能ならしめる、ことを含む方法である。
【0012】
本発明のある態様は、ヒト初代単球由来樹状細胞(MDDC)を、KNUNDKモチーフを除去したmRNAと接触させて、mRNAの自然TLR8免疫原性を抑制しながら、高レベルのタンパク質発現を可能ならしめる、ことを含む方法である。
【0013】
本発明の別の態様は、mRNAを秘匿するように正確に改変する新規の方法であって、ヒトTLR7、及び、ヒトRIG-Iなどのその他のRNAセンサーの活性化を許容しながら、mRNAによるヒトTLR8の活性化を妨げる。
【0014】
本明細書に開示する正確にmRNAを改変する方法は、モチーフ除去を介して、免疫原性配列を除去しながら、mRNA内の非免疫原性配列の使用を控える。この低侵襲手法は、mRNAが、免疫原性を抑制しながら、高レベルの翻訳活性を保持することを可能にする。大雑把な配列改変手法(高GC、低GU、または、低UをベースとしたmRNA改変など)とは異なり、この手法は、効率的な翻訳を妨げないので、高レベルのタンパク質発現を維持または達成するために、配列を改変したmRNAの数多くのバージョンを試験する必要がない。この手法は、非カノニカルヌクレオチドを使用しないので、翻訳効率の低下、翻訳後修飾、または、終止コドンの読み通しなどの問題は発生し得ない。最後に、正確な改変を行うので、mRNA治療薬の製造コストも抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】配列を改変したeGFP mRNAデザイン。ネイティブ(「野生型」)mRNA配列を、コード領域内で変えて、TLR8モチーフ(「低モチーフ」)を除去して、全体的なG及びU含有量(「粗製」)を減らす、または、両方ともに、モチーフを除去して、G及びU(「低モチーフ+粗製」)を減らす。
【
図1B】ヌクレオチドとモチーフの変化の概要。それぞれのmRNAデザイン手法に関して、存在するTLR8モチーフの最終的な数と、変えたヌクレオチドの総数を表に示す。正確な(低モチーフ)手法は、変えたヌクレオチドの個数を最小限に抑えながら、TLR8結合部位を効率的に除去する。(UTR:非翻訳領域)。
【
図2】TLR8を過剰発現するヒト細胞に対して、Lipofectamineを介してトランスフェクションして改変したeGFP mRNAの自然免疫原性。野生型(WT)、及び、配列を改変したmRNAを、HPLCを介して精製し、そして、Lipofectamine 2000(Life Technologies)を介して、TLR8を過剰発現しており、かつ、レポータープラスミドを保有するHEK293細胞へトランスフェクションを行い、その結果、TLR8刺激をすると、(NF-KB及びAP-1結合部位に融合したIFN-Bプロモーターを介して)分泌した胚性アルカリホスファターゼ(SEAP)を分泌する。分泌したSEAP活性を、mRNAトランスフェクションの48時間後に測定した。低モチーフ、粗製(低GU)、及び、低モチーフ+粗製mRNAは、野生型(WT)mRNAと比較して、TLR8刺激の有意な抑制を示した(3つの比較すべてに関して、p<0.05)。トランスフェクションを定量的に行い、そして、データを、平均+/-標準偏差(SD)として表す。
【
図3】TLR8野生型(WT)を過剰発現するヒト細胞において、Trans-ITを介してトランスフェクションして改変したeGFP mRNAの自然免疫原性。野生型(WT)、及び、配列を改変したmRNAを、HPLCを介して精製し、そして、TransIT-mRNA試薬(Mirus Bio)を介して、HEK293-null細胞(TLR8発現無し)、それに、TLR8を過剰発現するHEK293-TLR8細胞へトランスフェクションした。両方の細胞株は、TLR8刺激の際に、(NF-KB及びAP-1結合部位に融合したIFN-Bプロモーターを介して)アルカリホスファターゼ(SEAP)の分泌を招くレポータープラスミドを保有している。分泌したAP活性を、mRNAトランスフェクションの24時間後に測定し、そして、実験前のSEAPレベルで定量した細胞数で正規化した。化学的に修飾した(「chem.mod.」)mRNAコントロールは、100%の疑似-Uと、100%の5mCを含んでいた。(HEK-Null細胞のAP活性を測定して、基本的なTLR3発現を介して駆動するバックグラウンド免疫シグナルを決定した)。化学的に修飾したmRNAと同様に、低モチーフmRNAは、野生型(WT)及び低GU(「粗製」)mRNAよりも有意に穏やかなTLR8刺激を示した。トランスフェクションを定量的に行い、そして、データを、平均+/-SDとして表す。
【
図4】[
図4A]TLR8を過剰発現するヒト細胞に対して、Lipofectamine 2000を介してトランスフェクションして改変したeGFP mRNAで駆動するタンパク質発現。野生型(WT)、及び、配列を改変したmRNAを、HPLCを介して精製を行い、そして、Lipofectamine 2000を介して、TLR8を過剰発現するHEK293細胞へとトランスフェクションした。eGFP発現細胞の画像を、トランスフェクションの2日後に、Envisionプレートリーダーを介して得た。[
図4B]
図4Aに示したTLR8を過剰発現しているヒト細胞でのeGFP発現の定量。正確に改変したmRNA(「低モチーフ」)は、Low-GU(「粗製」)と、化学修飾(「Chem.mod.」)mRNAよりも有意に大きなタンパク質発現を示した。トランスフェクションを定量的に行い、そして、データを、平均+/-SDとして表す。
【
図5】A~D。ヒト単球由来樹状細胞(MDDC)にトランスフェクションして改変したeGFP mRNAで駆動するタンパク質発現。野生型(WT)、及び、配列を改変したmRNAを、HPLCを介して精製し、そして、Lipofectamine 2000を介して、MDDCへとトランスフェクションした。eGFP発現は、4日目に定量した。MDDCでトランスフェクションを1回行った後に、低モチーフmRNA(C)は、粗製mRNA(B)よりも有意に大きなタンパク質発現と、WT mRNA(A)と同様の発現をもたらした。(D)3度の実験の結果。データを、平均+/-SDとして表す。
【
図6】Lipofectamine 2000を介してTLR8を過剰発現するヒト細胞に繰り返しトランスフェクションして改変したeGFP mRNAで駆動するタンパク質発現。野生型(WT)、及び、配列を改変したmRNAを、スピンカラム(「WT-未精製」及び「低モチーフ-未精製」)を介して回収した、あるいは、HPLC(「WT-HPLC」及び「低モチーフ-HPLC」)を介して精製した。次に、Lipofectamine 2000を介して、2、3、及び、4日目に、TLR8を過剰発現するHEK293細胞へと連続的にトランスフェクションした(0日目に播種した)。eGFP発現を、4、7、及び、11日目に定量した。繰り返しトランスフェクションの設定では、低モチーフの精製mRNAは、WT精製mRNAよりも有意に大きなタンパク質発現を示した。トランスフェクションを定量的に行い、そして、データを、平均+/-SDとして表す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
定義
本明細書で使用する用語「約」とは、所与の値から約±10%以内の変動を指す。
【0017】
用語「クローニング部位」とは、一般的には、発現ベクターに存在するヌクレオチド配列であって、DNAフラグメント(複数可)の発現ベクターへのクローニングにおいて有用な1つ以上の制限酵素認識配列を含むヌクレオチド配列のことを指す。ヌクレオチド配列が、複数の制限酵素認識配列を含む場合、そのヌクレオチド配列を、「マルチクローニング部位」または「ポリリンカー」とも称する。
【0018】
用語「発現ベクター」とは、所望の分子の発現に影響を与える配列、例えば、プロモーター、コード領域、及び、転写終結配列などの核酸のことを指す。発現ベクターを、統合型ベクター(すなわち、宿主ゲノムに統合することができるベクター)、または、統合はしないまでも、自己複製するベクターとすることができ、この事例では、ベクターは、「複製起点」を含んでおり、これにより、宿主細胞内にベクターが入り込むと、ベクター全体が複製される。
【0019】
用語「遺伝子発現」とは、核酸配列が、首尾良く転写され、そして、大抵の事例では、タンパク質またはペプチドを生成する翻訳のプロセスのことを指す。明確にするために、「遺伝子発現」の測定と言及する場合、この測定は、転写の核酸産物、例えば、RNAまたはmRNA、または、翻訳のアミノ酸産物、例えば、ポリペプチドまたはペプチドの測定になり得る、ことを意味するものと理解すべきである。RNA、mRNA、ポリペプチド、及び、ペプチドの量またはレベルを測定する方法は、当該技術分野で周知である。
【0020】
句「免疫原性モチーフ」とは、本明細書では、細胞内に位置するTLR7またはTLR8などの自然免疫受容体に対するRNAの結合に関与しており、かつ、細胞内細胞シグナル伝達経路を活性化して、その結果、遺伝子発現、及び/または、細胞からのサイトカインの放出を変化させるあらゆるRNA配列のことを指す目的で使用している。
【0021】
用語「プラスミド」は、細菌での天然プラスミドと、人工的に構築した環状DNAフラグメントの両方を含む。
【0022】
本明細書で使用する用語「ポリヌクレオチド」とは、13個のヌクレオチドより長いあらゆるRNAまたはDNA配列のことを指す。用語ポリヌクレオチドとして、天然または合成(化学的に修飾した)リン酸骨格、糖類、及び、リボース糖を有する天然または合成起源の核酸がある。
【0023】
本明細書で使用する用語「メッセンジャーRNA」及び「mRNA」とは、細胞内または無細胞タンパク質翻訳系において、ポリペプチドまたはタンパク質をコードすることができるあらゆるRNA配列のことを指す。
【0024】
本明細書で使用する用語「インビトロ転写」とは、プラスミドまたはPCR産物をベースとすることができるDNAテンプレートからmRNAを製造するための酵素反応のことを指す。前者の事例では、制限酵素で線形化したプラスミドDNAと、制限部位との間のIVTテンプレート領域を精製して、より高品質のDNAテンプレートを得る。後者の事例では、末端領域または隣接領域に相補的なプライマーを、プラスミド由来のテンプレートDNAを増幅して精製するように改変する。これらのPCRプライマーの1つが、ポリT配列を含んでいる場合、転写している間に、ポリA尾部をmRNA配列に組み込むこともできる。インビトロ転写(IVT)反応では、通常、T7、T3、または、SP6 RNAポリメラーゼ酵素と、カノニカルヌクレオチド基質、または、化学的に修飾したヌクレオチド基質を使用する。
【0025】
本明細書で使用する用語「コード領域」とは、一般的に、5’と3’の非翻訳領域の間に位置しており、かつ、リボソームによってタンパク質を活発に翻訳するメッセンジャーRNAの一部のことを指す。
【0026】
本明細書で使用する用語「5’UTR」とは、mRNAの5’末端に位置しており、かつ、一般的には、リボソームに対する結合、及び、mRNAコード領域の発現の増強に関与するメッセンジャーRNAの一部のことを指す。
【0027】
本明細書で使用する用語「3’UTR」とは、mRNAの3’末端に位置しており、かつ、一般的には、mRNAの発現、及び、半減期の長期化に関与するメッセンジャーRNAの一部のことを指す。
【0028】
本明細書で使用する用語「配列の改変」とは、特定の理由でポリヌクレオチドのヌクレオチド配列に加えられた、あらゆる変化のことを指す。このような変化は、免疫原性の低下、発現の増強、及び/または、半減期の長期化をもたらすことができる。それらは、RNA配列全体、または、RNA配列の特定のセクション内で作り出すことができる。メッセンジャーRNAの場合、配列の改変は、コード配列、5’UTR、及び/または、3’UTR領域の変化に関与し得る。
【0029】
本明細書で使用する用語「正確な配列の改変」とは、残余のオリゴヌクレオチド配列の不必要な変化を回避しながら、免疫原性モチーフを除去して、オリゴヌクレオチドの免疫原性を抑制するために、オリゴヌクレオチド配列に対して加える変化のことを指す。一部の実施形態では、「正確な配列の改変」は、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つの免疫原性モチーフ、または、ポリヌクレオチド内のすべての免疫原性モチーフを除去することと関係している。一部の実施形態では、「正確な配列の改変」は、ポリヌクレオチド配列に認められる免疫原性モチーフの少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも99%、または、100%の除去を含む。
【0030】
句「免疫原性モチーフの除去」とは、免疫原性モチーフの単一ヌクレオチド、または、免疫原性モチーフの複数のヌクレオチド(例えば、所与の免疫原性モチーフの2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、または、すべて)を変化させて、ヌクレオチドモチーフがもはや存在しなくする(すなわち、免疫原性モチーフを「破壊する」)ような、免疫原性モチーフの修飾のことを指す。本明細書で使用する用語「変化」とは、1つ以上のヌクレオチドに対する修飾を含み、同修飾として、ヌクレオチド置換、欠失、挿入、及び、化学修飾があるが、これらに限定されない。例えば、「KNUNDK」免疫原性モチーフは、表1に示したように、192個のヌクレオチド配列を含み得る。「KNUNDK」モチーフに適合しない(すなわち、表1に記載した192個の配列以外の)配列をもたらす1つ以上のヌクレオチドの突然変異、変化、または、置換は、このモチーフを、「破壊」または「除去」する。例えば、出発ポリヌクレオチドの免疫原性モチーフが「GAUAAG」であり、そして、それが「GAAAAG」に変異している場合、KNUNDKモチーフを「除去した」ものとする。
【0031】
一部の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、RNAである。特定の実施形態では、RNAは、メッセンジャーRNA(mRNA)である。mRNAのコード領域内で、正確な配列の改変は、遺伝暗号の冗長性を利用して、それぞれの標的コドンを、ネイティブコドンと同じアミノ酸をコードする代替コドンに置き換え、それにより、コードしたタンパク質の最終配列を保存する。換言すれば、少なくとも1つの免疫原性モチーフが、mRNAのアミノ酸をコードする部分(すなわち、「オープンリーディングフレーム」または「ORF」)にある場合、それらの変化(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、または、すべてのヌクレオチドの変化)は、mRNAがコードするアミノ酸配列を変えずに行える。
【0032】
本明細書で使用する用語「コドン最適化」とは、ポリペプチドまたはタンパク質の発現レベルを高める目的で実行する配列の改変のことを指す。ポリペプチド及びタンパク質の量またはレベルを測定する方法は、当該技術分野で周知である。
【0033】
本明細書で使用する用語「低GU mRNA」とは、配列を改変したmRNAであって、同じmRNAの野生型バージョンのものと比較して、グアニン(G)とウラシル(U)含有量が減っているmRNAのことを指す。
【0034】
本明細書で使用する用語「低U mRNA」とは、配列を改変したmRNAであって、同じmRNAの野生型バージョンのものと比較して、U含有量が減っているmRNAのことを指す。
【0035】
本明細書で使用する用語「高GC mRNA」とは、配列を改変したmRNAであって、同じmRNAの野生型バージョンのものと比較して、G及びC含有量が増えているmRNAのことを指す。
【0036】
本明細書で使用する用語「酵素的キャッピング」とは、酵素によって、キャップ0、キャップI、キャップIIなどの7-メチルグアノシンをベースとしたキャップ構造を付加することを指しており、同酵素として、一般的には、mRNAの5’末端での最初のヌクレオチドを2-O-メチル化してキャップI構造を作り出す2-O-メチルトランスフェラーゼと組み合わせた、5’-5’ホスホジエステル結合を有する7-メチルグアノシンキャップ(キャップ0)を付加するVacciniaキャッピングシステムがあり、これらは、mRNAの翻訳を首尾良く行うために、転写反応の後に添加する。酵素キャッピングの方法は、当該技術分野で周知である。
【0037】
本明細書で使用する用語「共転写キャッピング」とは、7-メチルグアノシンキャップ、または、キャップ類似体、例えば、ARCAまたはCleanCapの付加のことを指しており、これらのキャップ類似体を、mRNA転写反応に取り込んで、mRNAの翻訳を首尾良く行う。共転写キャッピングの方法は、当該技術分野で周知である。
【0038】
本明細書で使用する用語「化学修飾」とは、mRNAの窒素塩基に対して行われる化学的変化のことを指す。このような変化は、一般的には、mRNA転写反応でのT7 RNAポリメラーゼの基質として、非カノニカル(化学的に修飾した)ヌクレオチド類似体を取り込んで実行されている。これらの化学修飾として、プソイドウリジン(Ψ)、5-メチルシチジン(m5C)、N1-メチル-プソイドウリジン(N1mΨ)、5-メトキシウリジン(5moU)、N6-メチルアデノシン(m6A)、5-メチルウリジン(m5U)、または、2-チオウリジン(s2U)があるが、これらに限定されない。
【0039】
本明細書で使用する用語「部分的化学修飾」とは、mRNA内の特定のヌクレオチド、一般的には、ウリジンまたはシチジンのすべての化学修飾ではなく、一部の化学修飾のことを指す。例えば、2-チオウリジン(s2U)を、1~3のモル速度で、IVT基質として一部を取り込むことで、約25%の割合で使用でき、この場合、3つのカノニカルウリジンごとに、1つの2-チオウリジンが、mRNAに取り込まれる。
【0040】
本明細書で使用する用語「カプセル化」とは、固体、層状または小胞様、脂質またはポリマーをベースとしたナノ粒子内へのmRNAの封じ込めのことを指す。
【0041】
本明細書で使用する用語「送達ビヒクル」とは、mRNAのカプセル化のために使用することができ、かつ、標的細胞または組織へのmRNAペイロードの効果的な安定化、輸送、及び、送達を可能ならしめる、あらゆる天然材料または合成材料のことを指す。
【0042】
句「研究用組成物」とは、科学的知識を増やす目的で実験室において使用する、あらゆる研究材料のことを指しており、臨床的または獣医学的使用を意図していない。句「獣医用組成物」とは、動物の健康と生育状態を改善するために、動物に対して使用するあらゆる材料のことを指す。
【0043】
概説
本開示は、ポリヌクレオチド配列での免疫原性モチーフを除去する正確な配列の改変によって、ポリヌクレオチド配列での免疫原性を抑制する方法に関する。本開示は、そのようなポリヌクレオチドでの1つ以上、または、すべての免疫原性配列モチーフを除去した、改変したポリヌクレオチドの組成物にも関する。
【0044】
既存のmRNA修飾と、当該改変方法での制約を考慮して、自然免疫センサーに関連する配列だけを変更する、新規のmRNAを改変する手法が、なおも待望されている。
【0045】
mRNAの自然免疫原性の抑制を可能ならしめる、現在のところ利用可能なmRNAの化学修飾と配列改変の手法は、大雑把であり、また、すべての配列を均一に変化させてしまい、または、修飾する。
【0046】
TLR7及びTLR8は、特定のU含有配列または配列モチーフに基づいて、mRNAを含むssRNA種を検出する。これらの免疫原性モチーフを標的として除去することで、より正確に配列を改変する手法を実現することができる。遺伝暗号の冗長性(ほぼすべてのコドンの3番目の位置に、新生ポリペプチド鎖の同じアミノ酸残基をコードする代替ヌクレオチドがある)が故に、mRNA配列を変化させて、配列モチーフを特異的に除去する一方で、コードしたタンパク質配列を同じままで残存させる。
【0047】
高GC mRNA(mRNA配列を人為的に変更して、全体のG及びC含有量を増やす)、または、低GU mRNA(mRNA配列を人為的に変更して、全体のG及びU含有量を減らす)などの大雑把な改変手法と比較して、この正確な手法(低モチーフ手法)は、低侵襲性であり、すなわち、TLR7/8結合に関与していないあらゆる配列を変化させない。結果として、この新規の手法は、当該mRNAの構造的及び機能的特徴のほとんどを維持する。多くの利点がある中で、この手法は、堅調な翻訳効率を可能にする。本発明は、正確なmRNA改変が、実行可能かつ有利であることを初めて示したのである。
【0048】
したがって、ある実施形態では、研究目的、ならびに、ワクチン接種または治療用遺伝子置換などの獣医学的及び臨床的用途において、本明細書に記載したモチーフを、タンパク質を発現するために使用するその他のメッセンジャーRNAから除去し得る。このmRNAは、様々なオリゴペプチド、ポリペプチド、または、タンパク質の1つ以上をコードすることができ、同産物として、遺伝子編集酵素(例えば、Cas9、ZFN、及び、TALEN)、人工多能性幹細胞(IPSC)リプログラミング因子(Oct4、Sox2、Klf4、及び、c-Myc、Nanog、Lin28、Glis1)、分化転換因子、代謝酵素(例えば、界面活性剤タンパク質B、ウリジン5’-ジホスホ-グルクロノシルトランスフェラーゼ、メチルマロニルCoAムターゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ)、細胞膜タンパク質(例えば、CFTR、OX40L、TLR4、CD40L、CD70、B細胞受容体サブユニット、T細胞受容体サブユニット、キメラ抗原受容体)、ホルモン及びサイトカイン(EPO、VEGF、IL12、IL36ガンマ)、アポトーシス促進性、壊死性及び壊死タンパク質、ウイルス抗原(例えば、HIV gp120及びgp41抗原、インフルエンザHA及びNA抗原)、細菌抗原、及び、毒素、がん抗原、及び、新抗原、予防抗体または治療抗体、及び、抗体フラグメントがあるが、これらに限定されない。
【0049】
別の実施形態では、配列を改変するmRNAは、複数のタンパク質、すなわち、(融合タンパク質を産生する)キメラ構築物、あるいは、IRES領域または自己開裂ペプチドをコードする配列が点在している別個のコード領域がコードする別個のポリペプチドのいずれかをコードすることができる。
【0050】
一部の実施形態では、本発明は、KNUNDKを、ヒトTLR8及びマウスTLR7モチーフとして利用しており、そして、KNUNDKモチーフに一致する配列を除去しており、式中、Nは、あらゆるヌクレオチドであり、Kは、グアノシン(G)またはウリジン(U)のいずれかであり、Dは、シチジン(C)以外のあらゆるヌクレオチドである。KNUNDKモチーフを含む6マーの配列を、表1に示す。
【0051】
その他の実施形態では、モチーフ除去を介した正確な配列の改変は、その他のTLR7及びTLR8配列モチーフに基づくことができ、同モチーフとして、UCW、UNU、UWN、USU、KWUNDK、KNUWDK、UNUNDK、KNUNUK(Forsbach et al. 2008;Jurk et al. 2011;Green et al. 2012)、及び、これらの組み合わせがあるが、これらに限定されず、式中、Wは、アデノシン(A)またはUであり、そして、Sは、GまたはCである。
【0052】
【0053】
別の実施形態では、このモチーフ除去手法を、54個超のヌクレオチドのその他の長いポリヌクレオチドに対して実施して、そのようなポリヌクレオチドの自然免疫原性を抑制することができる。一部の実施形態では、長いポリヌクレオチドは、少なくとも54個、少なくとも55個、少なくとも56個、少なくとも57個、少なくとも60個、少なくとも65個、少なくとも70個、少なくとも75個、少なくとも80個、少なくとも85個、少なくとも90個、少なくとも95個、少なくとも100個、少なくとも110個、少なくとも120個、少なくとも130個、少なくとも140個、または、少なくとも150個のヌクレオチドを含む。これらの長いポリヌクレオチドとして、Crispr-Cas9のガイドRNA(gRNA)、長い非コードRNA(IncRNA)、リボソームRNA(rRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、及び、環状RNA(circRNA)があるが、これらに限定されない。
【0054】
一部の実施形態では、改変していない出発ポリヌクレオチドは、複数の免疫原性モチーフを含む。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドでの複数の免疫原性モチーフは、単一のタイプのモチーフである(例えば、ポリヌクレオチドでのすべての免疫原性モチーフは、UCW、UWN、USU、UNU、KWUNDK、KNUWDK、UNUNDK、KNUNDK、及び、KNUNUKからなる群から選択するモチーフであり、式中、Wは、アデノシン一リン酸、または、ウリジン一リン酸を示しており、そして、Sは、グアノシン一リン酸、または、シチジン一リン酸を示す)。一部の実施形態では、ポリペプチドでの複数の免疫原性モチーフは、異なるタイプを含む(例えば、UCW、UWN、USU、UNU、KWUNDK、KNUWDK、UNUNDK、KNUNDK、及び、KNUNUKからなる群から選択するポリヌクレオチド配列では、少なくとも2つの異なるモチーフタイプがあり、式中、Wは、アデノシン一リン酸、または、ウリジン一リン酸を示しており、そして、Sは、グアノシン一リン酸、または、シチジン一リン酸を示す)。
【0055】
一部の実施形態では、正確に配列を改変したポリヌクレオチドは、改変していないポリヌクレオチド(免疫原性モチーフを標的とした除去)と比較して、または、その他の従来の方法で変化させたポリヌクレオチドと比較して、改善した機能性を示す。一部の実施形態では、句「改善した機能性」とは、自然免疫系受容体由来の免疫原性の顕著な低さと、同自然免疫系受容体を秘匿することを指しており、同自然免疫系受容体として、TLR7やTLR8があるが、これらに限定されない。ポリヌクレオチドがタンパク質をコードする実施形態では、句「改善した機能性」とは、改善した翻訳効率のことを指しており、コードしたタンパク質の改善した生産性と、生産量の増大をもたらす。一部の実施形態では、句「改善した機能性」とは、改変したポリヌクレオチドの改善した安定性のことを指す。特定の実施形態では、正確に配列を改変したポリヌクレオチドでの改善した安定性は、エンドヌクレアーゼ、及び/または、エキソヌクレアーゼに対する改善した、または、増強した耐性に起因する。
【0056】
別の実施形態では、当該モチーフ除去手法は、プソイドウリジン(Ψ)、5-メチルシチジン(m5C)、N1-メチル-プソイドウリジン(N1mΨ)、メトキシウリジン(5moU)、N6-メチルアデノシン(m6A)、5-メチルウリジン(m5U)、または、2-チオウリジン(s2U)など、これらに限定されない1つ以上の一般的に使用されているmRNA化学修飾と組み合わせて使用し得るものであり、当該修飾は、mRNAでのカノニカルヌクレオチドの0.1~1%、1~10%または10~25%または25~50%または50~100%を置換する。
【0057】
別の実施形態では、当該モチーフ除去手法は、1つ以上のその他の自然界で認められるRNA化学修飾と組み合わせて使用し得るものであり、同修飾として、1,2’-O-ジメチルアデノシン、1,2’-O-ジメチルグアノシン、1,2’-O-ジメチルイノシン、1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)プソイドウリジン、1-メチルアデノシン、1-メチルグアノシン、1-メチルイノシン、1-メチルプソイドウリジン、2,8-ジメチルアデノシン、2-メチルチオメチレンチオ-N6-イソペンテニル-アデノシン、2-ゲラニルチオウリジン、2-リシジン、2-メチルアデノシン、2-メチルチオ環状N6-スレオニルカルバモイルアデノシン、2-メチルチオ-N6-(シス-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、2-メチルチオ-N6-ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデノシン 2-メチルチオ-N6-メチルアデノシン、2-メチルチオ-N6-スレオニルカルバモイルアデノシン、2-セレノウリジン、2-チオ-2’-O-メチルウリジン、2-チオシチジン 2-チオウリジン、2’-O-メチルアデノシン、2’-O-メチルシチジン、2’-O-メチルグアノシン、2’-O-メチルイノシン、2’-O-メチルプソイドウリジン、2’-O-メチルウリジン、2’-O-メチルウリジン、5-オキシ酢酸メチルエステル、2’-O-リボシルアデノシン(リン酸塩)、2’-O-リボシルグアノシン(リン酸塩)、3,2’-O-ジメチルウリジン、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)-5,6-ジヒドロウリジン、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)プソイドウリジン、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン、3-メチルシチジン、3-メチルプソイドウリジン、3-メチルウリジン、4-ジメチルウイオシン、4-チオウリジン、5,2’-O-ジメチルシチジン、5,2’-O-ジメチルウリジン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)-2’-O-メチルウリジンメチルエステル、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジンメチルエステル、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2-チオウリジン、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2’-O-メチルウリジン、5-(イソペンテニルアミノメチル)ウリジン、5-アミノメチル-2-ゲラニルチオウリジン、5-アミノメチル-2-セレノウリジン、5-アミノメチル-2-チオウリジン、5-アミノメチルウリジン、5-カルバモイルヒドロキシメチルウリジン、5-カルバモイルメチル-2-チオウリジン、5-カルバモイルメチル-2’-O-メチルウリジン、5-カルバモイルメチルウリジン、5-カルボキシヒドロキシメチルウリジン、5-カルボキシメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-ゲラニルチオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-セレノウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチル-2’-O-メチルリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウリジン、5-カルボキシメチルウリジン、5-シアノメチルウリジン、5-ホルミル-2’-O-メチルシチジン、5-ホルミルシチジン、5-ヒドロキシシチジン、5-ヒドロキシメチルシチジン、5-ヒドロキシウリジン、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウリジン、5-メトキシカルボニルメチル-2’-O-メチルウリジン、5-メトキシカルボニルメチルウリジン、5-メトキシウリジン、5-メチル-2-チオウリジン、5-メチルアミノメチル-2-ゲラニルチオウリジン、5-メチルアミノメチル-2-セレノウリジン、5-メチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-メチルアミノメチルウリジン、5-メチルシチジン、5-メチルジヒドロウリジン、5-メチルウリジン、5-タウリノメチル-2-チオウリジン、5-タウリノメチルウリジン、7-アミノカルボキシプロピル-デメチルウイオシン、7-アミノカルボキシプロピルウイオシン、7-アミノカルボキシプロピルウイオシンメチルエステル、7-アミノメチル-7-デアザグアノシン、7-シアノ-7-デアザグアノシン、7-メチルグアノシン、8-メチルアデノシン、N2,2’-O-ジメチルグアノシン、N2,7,2’-O-トリメチルグアノシン、N2,7-ジメチルグアノシン、N2、N2,2’-O-トリメチルグアノシン、N2、N2,7-トリメチルグアノシン、N2、N2-ジメチルグアノシン、N2-メチルグアノシン、N4,2’-O-ジメチルシチジン、N4、N4,2’-O-トリメチルシチジン、N4、N4-ジメチルシチジン、N4-アセチル-2’-O-メチルシチジン、N4-アセチルシチジン、N4-メチルシチジン、N6,2’-O-ジメチルアデノシン、N6、N6,2’-O-トリメチルアデノシン、N6、N6-ジメチルアデノシン、N6-(シス-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、N6-アセチルアデノシン、N6-ホルミルアデノシン、N6-グリシニルカルバモイルアデノシン、N6-ヒドロキシメチルアデノシン、N6-ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン、N6-イソペンテニルアデノシン、N6-メチル-N6-スレオニルカルバモイルアデノシン、N6-メチルアデノシン、N6-スレオニルカルバモイルアデノシン、Qbase、アグマチジン、アルカエオシン、環状N6-スレオニルカルバモイルアデノシン、ジヒドロウリジンエポキシキューオシン、ガラクトシル-キューオシン、グルタミル-キューオシン、ヒドロキシ-N6-スレオニルカルバモイルアデノシン、ヒドロキシウイブトシン、イノシン、イソウイオシン、マンノシル-キューオシン、メチル化過小修飾ヒドロキシウイブトシン、メチルウイオシン、ペルオキシウイブトシン、プソイドウリジン、キューオシン、過小修飾ヒドロキシウイブトシン、ウリジン5-オキシ酢酸、ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル、ウイイブトシン、及び、ウイオシンがあるが、これらに限定されるものではなく、当該修飾は、mRNAでのカノニカルヌクレオチドの0.1~1%、1~10%または10~25%または25~50%または50~100%を置換する。
【0058】
メッセンジャーRNAの免疫原性と翻訳活性は、キャッピング、ポリアデニル化、及び、不純物(IVT反応に由来するdsRNA汚染物質)の影響も受ける。本発明では、mRNAは、Vacciniaキャッピングシステム(7mGを備えた5’終端には、キャップ0構造があり、そして、2-O-メチル化 N1-ヌクレオチドは、mRNAの5’末端に、キャップI構造を作り出す)を使用して、酵素的にキャップした。別の実施形態では、配列を改変したmRNAは、合成キャップ類似体、または、天然キャップ類似体、例えば、次のものに限定されるものではないが、3’-O-Me-m7G(5’)ppp(5’)G(ARCA)、または、m7G(5’)ppp(5’)(2’OMeA/G)pG(CleanCap)などを使用して、共転写的にキャップし得る。別の実施形態では、mRNAは、5’末端(5’ppp)での脱リン酸化の有無に関係なく、無キャップで使用することができる。
【0059】
本発明の一部の実施形態では、mRNAを、テンプレートをベースとした手法を使用して、ポリアデニル化する。この手法では、テンプレートDNA配列は、mRNA上の固定長ポリA尾部をコードする末端ポリA/T配列を含んでいる。代替の実施形態では、配列を改変したmRNAを、ポリ(A)ポリメラーゼを使用して、酵素的にポリアデニル化し得る。別の実施形態では、mRNAは、ポリアデニル化していない状態で使用し得る。
【0060】
一部の実施形態では、mRNAは、逆相HPLCと、それに続くサイズ排除クロマトグラフィーで精製する。別の実施形態では、mRNAを、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、または、RNAse IIIまたはダイサー処理を用いたdsRNAの酵素消化を介して精製する。別の実施形態では、酵素消化と、1つ以上のクロマトグラフィー法との組み合わせを使用し得る。
【0061】
本発明では、配列を改変する別の方法を用いずに、mRNAのモチーフ除去を使用した。しかしながら、この正確にmRNAを改変する手法を、その他の配列を改変する手法と組み合わせることが可能である。一部の実施形態では、モチーフ除去のための配列の改変を、コドン最適化のための組み合わせ配列の改変において使用する。一部の実施形態では、コドン最適化は、コドン使用(コドンバイアス)、コドン隣接コンテキスト、mRNA二次構造、mRNA三次構造、または、これらのパラメーターの組み合わせに基づく。mRNAのタンパク質発現収量は、コドン最適化を介して、大幅に改善できる。この配列を改変する手法は、TLR7及び/またはTLR8配列モチーフの除去と一緒に使用することができる。
【0062】
別の実施形態では、正確に配列を改変する手法(モチーフ除去)は、高GC mRNAなどの大雑把な配列を改変する手法と組み合わせることができ、その組み合わせでは、配列の改変を、mRNAに対して実施して、低GUである当該mRNAのGC含有量を最大化する、その組み合わせでは、配列の改変を、mRNAのG及びU含有量、または、低U
mRNAを最小化するために実施する、その組み合わせでは、配列の改変を、mRNAのU含有量を最小化するために実行する。これらの大雑把な手法は、一般的には、免疫原性の完全な排除には至らないので、正確な改変と組み合わせて、残余のモチーフを除去して、さらなる改善を図ることができる。本発明では、配列の改変を、mRNAのコード領域内で実施した。別の実施形態では、5’及び3’非翻訳領域を改変して、免疫原性モチーフを除去することもできる。別の実施形態では、5’及び3’非翻訳領域を(天然または合成UTR配列のライブラリーから)選択して、これらの領域でのモチーフの数を解消または最小化することができる。
【0063】
本発明の一部の実施形態では、配列を改変したmRNAは、線状mRNAであった。その他の実施形態では、配列を改変したmRNAは、化学的、酵素的、リボザイム媒介、または、自己循環を介して作り出した環状mRNAとすることができる。
【0064】
一部の実施形態では、本発明は、カチオン性脂質をベースとした送達剤を使用する。その他の実施形態では、mRNAは、その他の送達剤で送達し得るものであり、同送達剤として、ポリラクチド、ポリラクチド-ポリグリコリドコポリマー、ポリアクリレート、ポリアルキシアノアクリレート、ポリカプロラクトン、デキストラン、ゼラチン、アルギン酸塩、プロタミン、コラーゲン、アルブミン、キトサン、シクロデキストリン、PEG化プロタミン、ポリ(L-リジン)(PLL)、PEG化PLL、ポリエチレンイミン(PEI)、脂質ナノ粒子、リポソーム、ナノリポソーム、プロテオリポソーム、天然及び合成の双方に由来するエキソソーム、天然、合成、及び、半合成のラメラ体、ナノ粒子、リン酸カルシウム-ケイ酸塩ナノ粒子、リン酸カルシウムナノ粒子、二酸化ケイ素ナノ粒子、ナノ結晶粒子、半導体ナノ粒子、乾燥粉末、ナノデンドリマー、デンプンをベースとした送達系、ミセル、エマルジョン、ゾル-ゲル、ニオソーム、プラスミド、ウイルス、ウイルス様粒子、リン酸カルシウムヌクレオチド、アプタマー、及び、ペプチドがあるが、これらに限定されない。その他の実施形態では、これらの送達剤は、小分子リガンド、DNAまたはRNAアプタマー、オリゴペプチド、または、抗体などのタンパク質、抗体フラグメント、及び、トランスフェリンなどのリガンドに対するコンジュケーションを介して、界面を機能化する。
【0065】
本発明において、mRNAは、インビトロで、細胞に送達した。別の実施形態では、mRNAは、エクスビボまたはインビボで、細胞、組織、または、生物に送達することができる。インビボ投与のための送達経路は、経口または非経口(静脈内、筋肉内、皮内、または、皮下)である。
【0066】
一部の実施形態では、単一のタンパク質をコードするmRNAは、単独で送達する。別の実施形態では、異なるタンパク質をコードする複数のmRNAは、カクテル製剤として送達する。この製剤内の個々のmRNAを、裸のmRNAとし、または、脂質ナノ粒子またはポリマー担体内にカプセル封入して、mRNAの合理的な取り込みと翻訳を可能ならしめ得る、または、裸のmRNAとカプセル化したmRNAとの組み合わせとし得る。一部の実施形態では、カクテルmRNAを、mRNA配列、及び/または、送達剤成分、大きさ、電荷、電荷比、界面化学を変化させることで、特定の用途における活性をさらに最適化する。特定の実施形態では、カクテル製剤での幾つかのmRNAは、TLR7/8結合を最小化するような改変を施されており、一方で、自然免疫系の選択的または部分的な刺激を可能にするために、改変せずにおく、または、部分的な改変に止める。
【実施例0067】
以下の実施例は、本明細書の一部を構成しており、本開示の特定の態様をさらに実証するためのものであって、限定を意図するものではない。
【0068】
実施例1.材料及び方法
テンプレートDNAの生成(IDT)
本開示で使用するすべてのDNAテンプレートは、T7プロモーター、5’UTR(非翻訳領域)配列、コード領域、及び、3’UTR配列を含んでいた。コード領域は、野生型eGFPテンプレートDNA配列に変化を加えて改変しており、そこでは、野生型コドンと同じアミノ酸残基をコードする代替コドンを使用して、G及びU含有量の減少、あるいは、オープンリーディングフレーム内の免疫原性配列モチーフの除去のいずれかを行った。デザインした配列を、商用ベンダー(IDT)で合成を行い、次いで、TAクローニングを介して、pMini-Tベクター(PCR Cloning Kit,NEB)にクローニングし、そして、Sangerシークエンシングを介して配列を検証した。メッセンジャーRNAを、フォワード(TTGGACCCTCGTACAGAAGCT)(配列番号5)プライマーと、リバース(TTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTATGGCCAGAAGGCAAGCC)(配列番号6)プライマーとを備えたQ5 High-Fidelity DNAポリメラーゼ(NEB)を使用して、PCR増幅によって、ベクターから得た。リバースプライマーは、120個のヌクレオチド長のポリA尾部のテンプレート配列を含んでいた。PCR反応産物を、アガロースゲルに泳動させ、そして、NucleoSpin Gelと、PCR Clean-upキット(Macherey-Nagel)で精製した。
【0069】
mRNAのインビトロ転写(IVT)
未修飾のmRNAを、HiScribe(商標)T7 High Yield RNA
Synthesis Kitを使用して、製造業者のプロトコルに従って、DNAテンプレートから転写した。IVT反応を、37℃で、2時間行った(修飾mRNA)。反応産物を、TURBO DNase(Thermo Fisher)で、37℃で、10分間、処理し、そして、mRNAを、MEGAclear Transcription Clean-Upキット(Thermo Fisher)で分離した。Vaccinia
Capping System(NEB)と、mRNA Cap 2’-O-メチルトランスフェラーゼ(NEB)を使用して、転写後に、キャッピングを実行した。Antarctic Phosphatase酵素(NEB)を使用してホスファターゼ処理を行い、続いて、MEGAclear Transcription Clean-Up Kitで分離した。プソイドウリジンと5-メチルシチジン(L-6101)で修飾したeGFP mRNAを、TriLink Biotechnologiesから得た。
【0070】
mRNA精製:
キャッピングと、脱リン酸化をしたmRNAを、Kariko et al.,2013に従って、HPLC精製した。簡単に説明すると、0.1M TEAA(移動相A)と、25%アセトニトリル緩衝剤を含むTEAA(移動相B)を使用する逆相PDVB HPLCカラム(RNASepカラム、簡潔な分離)を備えたVarian Prostar HPLC機器に、メッセンジャーRNAを導入した。主なmRNA画分を、Amicon Ultra-15遠心フィルターユニット(Millipore)で濃縮し、そして、RNAse不含の水で希釈した。RNAを、酢酸ナトリウム(3M、pH5.5;Thermo Fisher)、イソプロパノール(Thermo Fisher)、及び、グリコーゲン(Roche)で、一晩、沈殿させて回収した。RNA濃度は、NanoDrop 2000 UV-Vis分光光度計(Thermo Fisher)で測定した。
【0071】
細胞:
HEK293 TLR8と、その親株(HEK293 Null)を、Invivogenから得た。細胞を、DMEM(Corning)と、10%FBS(Seradigm)で継代した。実験時の細胞継代数は、15未満であった。ヒト初代単球由来樹状細胞(MDDC)は、Astarte Biologics(Donor #345)から得た。MDDCの維持には、100ug/ml GM-CSFと、IL-4(R&D Systems)を補充したAIM V培地(Thermo Fisher)を使用した。
【0072】
mRNAトランスフェクション:
トランスフェクションの48時間前に、20,000~40,000個のHEK293細胞を、ポリ-L-リジン(Sigma)でプレコートした96ウェルプレートに播種した。Lipofectamine 2000(Thermo Fisher)をベースとしたトランスフェクションの場合、トランスフェクションを行う日に、培地を、50μlのOpti-MEM I無血清培地(Thermo Fisher)と交換した。それぞれのウェルに関して、400ngのmRNAを、Opti-MEMと混合して、最終容量を25μlとし、そして、0.4μlのLipofectamine 2000を、24.6μlのOpti-MEMと混合した。溶液を、室温で、5分間、プレインキュベートした。次いで、それらを合わせて、室温で、20分間インキュベートした。50μlのmRNA-Lipofectamine複合体を、それぞれのウェルに加えて、細胞をトランスフェクションした。トランスフェクションの4時間後に、培地を、DMEM及び10% FBSと交換した。Lipofectamine 2000を用いた繰り返し(連続)トランスフェクションでは、播種した細胞数を、12,000個/ウェルにまで減らした。細胞を、0日目に播種し、そして、2、3、及び、4日目にトランスフェクションした。
【0073】
TransIT mRNA(Mirus Bio)をベースとしたHEK293細胞のトランスフェクションでは、細胞を、ポリ-L-リジンで前処理した96ウェルプレートに、25,000個の細胞/ウェルで播種した。72時間後に、400ng mRNA、0.22μl TransIT mRNA試薬、0.14μl TransIT boost試薬、及び、OptiMEM I無血清培地を、17.5μl/ウェルの最終体積に至るまで使用した。トランスフェクションの24時間後に、培地を、増殖培地と交換した。MDDCトランスフェクションについては、凍結細胞を、解凍、洗浄し、そして、96ウェルプレートに、50,000個/ウェルの細胞を置いた。0.11μl TransIT mRNAと、0.07μl boost試薬を使用して、細胞を、24時間後に、トランスフェクションした。トランスフェクションの4時間後に、培地を交換した。
【0074】
SEAP及びeGFPの定量
eGFPを定量するために、プレートを、EnVision 2105 Multimode Plate Readerで読み取りをした。自然免疫原性の測定では、トランスフェクションの22~24時間後に、QUANTI-Blue Secreted Alkaline Phosphatase Assay(InvivoGen)で、SEAP活性を測定した。ホスファターゼアッセイのインキュベーションを、37℃で、2時間、実施した。
【0075】
実施例2
一部の実施形態では、配列の改変を、eGFP mRNAをコードするテンプレートDNAのORF(コード領域)について行った。Tobacco etch virus(5’UTR)、及び、mus musculusアルファ-グロビン(3’UTR)由来の隣接UTR配列と、ポリA尾部[120個のA]を有する、未改変またはネイティブ(野生型)のeGFP mRNA。
【0076】
(配列番号1)は、TLR8結合に関与する11個の免疫原性モチーフを有しており、これらの内の7つは、mRNAのコード領域に認められており、そして、その他の4つは、5’-及び3’UTR領域内に局在していた(
図1A)。大雑把な改変手法は、結果として、コード領域内の7つの免疫原性モチーフの内の5つを除去しており、しかも、合計で78個の配列の変化を有する低GU mRNA(配列番号2)をもたらしていた。対照的に、正確に配列を改変する手法では、コード領域内の7つの免疫原性モチーフのすべてを除去しており、しかも、配列の変化が非常に少ない(合計7つ)低モチーフmRNA(配列番号3)をもたらしていた(
図1B)。
【0077】
実施例3
一部の実施形態では、配列を改変したmRNAを、TLR8を過剰発現するHEK293細胞に、Lipofectamine 2000でトランスフェクションした(
図2)。27,000個の細胞/ウェルを、ポリ-L-リジンで前処理した96ウェルプレートに播種した。Lipofectamine 2000を使用して、48時間後に、それぞれのウェルで、400ng/ウェルのmRNAをトランスフェクションした。4時間後に、培地を交換した。トランスフェクションの24時間後に、細胞培養上清でのSEAP活性を定量して、自然免疫原性を決定した(
図2)。TLR8刺激の抑制が、低GU mRNA(粗製)と、低モチーフmRNAの両方で認められた。大雑把な手法と、正確な手法(粗製+低モチーフmRNA)を組み合わせて使用しても、TLR8の活性がさらに抑制を受けることはなかった。
【0078】
実施例4
一部の実施形態では、配列を改変したmRNAを、TLR8を過剰発現するHEK293細胞、または、TLR8を過剰発現しない親HEK293 Null細胞に、TransIT-mRNA試薬を使用して、トランスフェクションした(
図3)。35,000個の細胞/ウェルを、ポリ-L-リジンで前処理した96ウェルプレートに播種した。48時間後に、細胞に、400ng/ウェルのmRNAをトランスフェクションした。4時間後に、培地を交換した。自然免疫原性を、トランスフェクションの前と24時間後に、細胞培養上清でのSEAP活性を定量して決定した。トランスフェクション前のSEAP読取値を使用して、免疫シグナルを、播種した細胞量に対して正規化させた。TransITをベースとした送達系では、Lipofectamine 2000をベースとしたトランスフェクションと同様に、正確な改変を行うことで、TLR8刺激の抑制が認められた。化学的に修飾したmRNAも、同様に抑制を受けたTLR8刺激を示した。大雑把な手法でもTLR8活性の抑制が認められたが、低GU mRNAのSEAPシグナルは、低モチーフmRNAと、化学修飾mRNAとでのSEAPシグナルと比較して大きかった。
【0079】
実施例5
一部の実施形態では、配列を改変したmRNAを、Lipofectamine 2000を使用して、TLR8を過剰発現するHEK293細胞にトランスフェクションした(
図4)。27,000個の細胞/ウェルを、ポリ-L-リジンで前処理した96ウェルプレートに播種した。それぞれのウェルを、48時間後に、400ng/ウェルのmRNAでトランスフェクションした。4時間後に、培地を交換した。トランスフェクションの6日後に、eGFPのタンパク質発現レベルを、プレートを画像化して決定し(
図4A)、そして、それぞれのウェルでのeGFPシグナルを定量した(
図4B)。eGFP発現に基づいて、大雑把な手法と化学的修飾が、mRNA翻訳の抑制を招いたが、正確な配列の改変(低モチーフmRNA)では、保存された翻訳が認められた。
【0080】
実施例6
一部の実施形態では、配列を改変したmRNAを、TransIT mRNA試薬を使用して、MDDCにトランスフェクションした(
図5)。50,000個の細胞/ウェルを、96ウェルプレートに播種した。それぞれのウェルを、24時間後に、400ng/ウェルのmRNAでトランスフェクションした。4時間後に、培地を交換した。トランスフェクションの4日後に、eGFPのタンパク質発現レベルを、プレートを画像化して決定し(
図5A)、そして、それぞれのウェルのeGFPシグナルを定量した(
図5B)。LipofectamineでトランスフェクションしたmRNAと同様に、TransITでトランスフェクションしたmRNAは、低GU mRNAと比較して、低モチーフmRNAの翻訳活性の改善を示した。
【0081】
実施例7
別の仕様では、配列を改変したmRNAを、Lipofectamine 2000試薬を使用して、TLR8を過剰発現するHEK293細胞に繰り返しトランスフェクションした(
図6)。12,000個の細胞/ウェルを、0日目に、ポリ-L-リジンで前処理した96ウェルプレートに播種した。それぞれのウェルを、2、3、及び、4日目に、400ng/ウェルのmRNAでトランスフェクションした。トランスフェクションの4時間後に、培地を交換した。4、7、及び、11日目に、eGFPのタンパク質発現レベルを、それぞれのウェルのeGFPシグナルを定量して決定した(
図5B)。トランスフェクションの繰り返し設定では、低モチーフmRNAは、低GU mRNAと、野生型(非改変)mRNAの両方よりも高水準の翻訳を示した。
【0082】
配列表
配列番号1
野生型eGFP mRNAのインビトロ転写のための合成テンプレートDNA配列。T7ファージRNAポリメラーゼプロモーター部位、Tobacco etch virus 5’非翻訳領域(UTR)、Aequorea victoria強化緑色蛍光タンパク質(eGFP)コード配列のネイティブ(野生型)バージョン、mus musculus アルファ-グロブリン3’UTR、及び、ポリA尾部[120個のA]を含む合成DNA配列
【化1】
【0083】
配列番号2
大雑把に改変した(低GU)eGFP mRNAのインビトロ転写のための合成テンプレートDNA配列、コード配列:G及びUを減らしたAequorea victoria eGFPコード配列。
【化2】
【0084】
配列番号3
低モチーフeGFP mRNAのインビトロ転写のための合成テンプレートDNA配列。コード配列:KNUNDKモチーフを除去したAequorea victoria eGFPコード配列。
【化3】
【0085】
配列番号4
粗製(低GU)及び低モチーフeGFP mRNAのインビトロ転写のための合成テンプレートDNA配列。コード配列:KNUNDKモチーフを除去しており、そして、GUは、Aequorea victoria eGFPを抑制した。
【化4】
【0086】
配列番号5
DNA-人工配列-オリゴヌクレオチド
【化5】
【0087】
配列番号6
DNA-人工配列-オリゴヌクレオチド
【化6】
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
改変したポリヌクレオチドであって、前記ポリヌクレオチドの配列は、ポリペプチドをコードし、かつ、そのポリペプチドをコードする配列内に複数のTLR7モチーフまたはTLR8モチーフを含むリファレンスオリゴヌクレオチドの配列に対応しているが、前記改変したポリヌクレオチドは、複数の前記モチーフのそれぞれを欠いているにもかかわらず、前記ポリペプチドをなおもコードする、前記改変したポリヌクレオチド。
(項目2)
前記モチーフのそれぞれを、KNUNDKモチーフ、UCWモチーフ、UNUモチーフ、UWNモチーフ、USUモチーフ、KWUNDKモチーフ、KNUWDKモチーフ、UNUNDKモチーフ、KNUNUKモチーフ、及び、それらの組み合わせからなる群から選択する、項目1に記載の改変したポリヌクレオチド。
(項目3)
DNAである、または、DNAを含む、項目1または項目2に記載の改変したポリヌクレオチド。
(項目4)
RNAである、または、RNAを含む、項目1または項目2に記載の改変したポリヌクレオチド。
(項目5)
項目1に記載の改変したポリヌクレオチドを、細胞に対して投与することを含む方法。
(項目6)
前記改変したポリヌクレオチドが、RNAである、または、RNAを含む、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記RNAが、項目1に記載の改変したポリヌクレオチドでもあるDNAから発現した、項目6に記載の方法。
(項目8)
改変したDNAからmRNAを発現させて、治療用mRNAを製造する方法であって、前記DNAの配列は、ポリペプチドをコードし、かつ、そのポリペプチドをコードする配列内に複数のTLR7モチーフまたはTLR8モチーフを含むリファレンスDNAの配列に対応しているが、前記改変したDNAは、複数の前記モチーフのそれぞれを欠いているにもかかわらず、前記ポリペプチドをなおもコードする、前記方法。
(項目9)
少なくとも54個のヌクレオチドを含む改変したポリヌクレオチドであって、前記改変したポリヌクレオチドは、出発ポリヌクレオチドに基づいて正確に配列を改変して、前記出発ポリヌクレオチドでの少なくとも1つの免疫原性配列モチーフを除去している、前記改変したポリヌクレオチド。
(項目10)
前記ポリヌクレオチドが、天然ポリヌクレオチドである、項目9に記載の改変したポリヌクレオチド。
(項目11)
前記ポリヌクレオチドが、合成ポリヌクレオチドである、項目9に記載の改変したポリヌクレオチド。
(項目12)
前記出発ポリヌクレオチドが、メッセンジャーRNA(mRNA)である、項目9~11のいずれか1項に記載の改変したポリヌクレオチド。
(項目13)
少なくとも1つの免疫原性配列モチーフを、コード領域、3’非翻訳領域(3’UTR)、または、5’非翻訳領域(5’UTR)から選択するmRNAの少なくとも1つの領域から除去する、項目10に記載の改変したポリヌクレオチド。
(項目14)
前記mRNAが、哺乳動物タンパク質、病原性抗原、がん抗原及び新抗原、キメラタンパク質、変異タンパク質、及び、合成タンパク質からなる群から選択するポリペプチドをコードする、項目12に記載の改変したポリペプチド。
(項目15)
前記改変したmRNAがコードしたタンパク質が、出発mRNA配列がコードしたタンパク質のアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を有する、項目13に記載の改変したポリヌクレオチド。
(項目16)
前記改変したポリヌクレオチドが、Crispr-Cas9のガイドRNA(gRNA)、長い非コードRNA(IncRNA)、tRNA、リボソームRNA(rRNA)、環状RNA、アプタマーRNA、合成RNAである、項目9に記載の改変したポリヌクレオチド。
(項目17)
前記免疫原性配列モチーフが、ヒトTLR7に結合することができる1つ以上の配列を含む、項目9に記載の改変したポリヌクレオチド。
(項目18)
少なくとも1つの前記免疫原性配列モチーフが、ヒトTLR8に結合することができる1つ以上の配列を含む、項目9に記載の改変したポリヌクレオチド。
(項目19)
前記免疫原性モチーフが、KNUNDKであり、式中、Kは、グアノシン一リン酸、または、ウリジン一リン酸を示しており、Nは、あらゆるヌクレオチドを示しており、Uは、ウリジン一リン酸を示しており、Dは、アデノシン一リン酸、グアノシン一リン酸、または、ウリジン一リン酸を示している、項目18に記載の改変したポリヌクレオチド。
(項目20)
前記免疫原性モチーフが、UCW、UWN、USU、UNU、KWUNDK、KNUWDK、UNUNDK、及び、KNUNUKからなる群から選択するモチーフであり、式中、Wは、アデノシン一リン酸、または、ウリジン一リン酸を示しており、Sは、グアノシン一リン酸、または、シチジン一リン酸を示している、項目9に記載の改変したポリヌクレオチド。
(項目21)
前記出発ポリヌクレオチド配列で認められる免疫原性モチーフ配列の少なくとも1%、少なくとも50%、または、少なくとも90%を除去する、項目9に記載の改変したポリヌクレオチド。
(項目22)
前記免疫原性モチーフの除去を介した正確な配列の改変を、前記ポリヌクレオチドのコドン最適化と組み合わせて使用する、項目9に記載の改変したポリヌクレオチド。
(項目23)
前記正確な配列の改変を、低GU含有量、低U含有量、及び、増大したGC含有量に基づいたmRNA配列の改変からなる群から選択する、大雑把に配列を改変する方法の少なくとも1つと組み合わせて使用する、項目9に記載の改変したポリヌクレオチド。
(項目24)
前記正確な配列の改変が、プソイドウリジン(Ψ)、5-メチルシチジン(m5C)、N1-メチル-プソイドウリジン(N1mΨ)、5-メトキシウリジン(5moU)、N6-メチルアデノシン(m6A)、5-メチルウリジン(m5U)、または、2-チオウリジン(s2U)からなる群から選択する少なくとも1つの非カノニカルヌクレオチドを使用して、ポリヌクレオチドの少なくとも一部の化学修飾と組み合わせて使用する、項目9に記載の改変したポリヌクレオチド。
(項目25)
前記改変したポリヌクレオチドが、キャップ類似体を使用して、酵素的キャッピング、または、共転写キャッピングを介して付加した5’キャップ構造をさらに含む、項目9に記載の改変したポリヌクレオチド。
(項目26)
前記改変したポリヌクレオチドが、ポリA尾部をさらに含む、項目9に記載の改変したポリヌクレオチド。
(項目27)
前記改変したポリヌクレオチドを、精製する、項目9に記載の改変したポリヌクレオチド。
(項目28)
項目1に記載の改変したポリヌクレオチドを含む医薬組成物。
(項目29)
項目9に記載の改変したポリヌクレオチドを含む獣医用組成物、または、研究用組成物。
(項目30)
項目9に記載の改変したポリヌクレオチドを含む送達ビヒクルであって、前記送達ビヒクルを、イオン化可能である、または、カチオン性の脂質ナノ粒子、リポソーム、リポプレックス、及び、ポリマー担体からなる群から選択する、前記送達ビヒクル。
(項目31)
正確に配列を改変する方法であって、
a)少なくとも54個のヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを提供すること、
b)前記ポリヌクレオチド配列での少なくとも1つの免疫原性モチーフを同定すること、
c)前記同定した少なくとも1つの免疫原性モチーフ配列を除去すること、とを含む前記方法。
(項目32)
前記ポリヌクレオチドが、天然ポリヌクレオチドである、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記ポリヌクレオチドが、合成ポリヌクレオチドである、項目31に記載の方法。
(項目34)
前記ポリヌクレオチドが、メッセンジャーRNA(mRNA)である、項目31~33のいずれか1項に記載の方法。
(項目35)
前記修飾が、前記mRNAがコードするアミノ酸配列を変えない、項目34記載の方法。
(項目36)
前記ステップ(b)で同定した少なくとも1つの免疫原性モチーフが、複数の免疫原性モチーフを含む、項目31~35のいずれか1項に記載の方法。
(項目37)
前記ステップc)が、同定した複数の免疫原性モチーフを除去することを含む、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記ステップ(c)が、前記同定した免疫原性モチーフの少なくとも10%を除去することを含む、項目36に記載の方法。
(項目39)
前記ステップ(c)が、前記同定した免疫原性モチーフの少なくとも50%を除去することを含む、項目36に記載の方法。
(項目40)
前記ステップ(c)が、前記同定した免疫原性モチーフのすべてを除去することを含む、項目36に記載の方法。
(項目41)
前記ポリヌクレオチドを、Crispr-Cas9のガイドRNA(gRNA)、長い非コードRNA(IncRNA)、tRNA、リボソームRNA(rRNA)、環状RNA、アプタマーRNA、及び、合成RNAからなる群から選択する、項目31~33のいずれか1項に記載の方法。
(項目42)
d)前記ポリヌクレオチド配列をコドン最適化することをさらに含む、項目31に記載の方法。
(項目43)
d)プソイドウリジン(Ψ)、5-メチルシチジン(m5C)、N1-メチル-プソイドウリジン(N1mΨ)、5-メトキシウリジン(5moU)、N6-メチルアデノシン(m6A)、5-メチルウリジン(m5U)、または、2-チオウリジン(s2U)からなる群から選択する少なくとも1つの非カノニカルヌクレオチドを使用して、前記ポリヌクレオチドの一部を化学修飾することをさらに含む、項目31に記載の方法。
(項目44)
前記前記改変したポリヌクレオチドに対して、キャップ類似体を使用して、酵素的キャッピング、または、共転写キャッピングを介して5’キャップ構造を付加する、ことをさらに含む、項目31に記載の方法。
(項目45)
前記ポリヌクレオチドに対して、ポリA尾部を付加することをさらに含む、項目31に記載の方法。
(項目46)
前記ポリヌクレオチドを、精製することをさらに含む、項目31に記載の方法。