(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116294
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】微生物増殖培地およびそれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
C12N1/20 A
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024094078
(22)【出願日】2024-06-11
(62)【分割の表示】P 2021110510の分割
【原出願日】2015-04-24
(31)【優先権主張番号】61/983,675
(32)【優先日】2014-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516318673
【氏名又は名称】ラピッド マイクロ バイオシステムズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(72)【発明者】
【氏名】シャラ,ケイト
(72)【発明者】
【氏名】シュウェドック,ジュリー
(72)【発明者】
【氏名】フォーゲル,ゾマー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】膜上での微生物の増殖を支援することが可能な汎用の組成物、および細胞集団を培養する方法を提供する。
【解決手段】カゼイン消化物、ダイズ消化物、動物組織消化物、酵母抽出物、デキストロース、リン酸バッファー、ヘミン、およびL-シスチンを含んでなる組成物である。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カゼイン消化物、ダイズ消化物、動物組織消化物、酵母抽出物、デキストロース、リン酸バッファー、ヘミン、およびL-シスチンを含んでなる組成物。
【請求項2】
22℃において、前記組成物は固体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は粉末である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物の総質量から前記リン酸バッファーを除いて、前記組成物は、約1g/kg~約500g/kgの間のカゼイン消化物を含んでなる、請求項2または3に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物の総質量から前記リン酸バッファーを除いて、前記組成物は、約0.5g/kg~約300g/kgの間のダイズ消化物を含んでなる、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物の総質量から前記リン酸バッファーを除いて、前記組成物は、約1g/kg~約500g/kgの間の動物組織消化物を含んでなる、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物の総質量から前記リン酸バッファーを除いて、前記組成物は、約1g/kg~約500g/kgの間の酵母抽出物を含んでなる、請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物の総質量から前記リン酸バッファーを除いて、前記組成物は、約1g/kg~約500g/kgの間のデキストロースを含んでなる、請求項2に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物は、水性媒体への溶解時に0.1mmol/(pH単位)~100mmol/(pH単位)の緩衝能を提供するのに十分なリン酸バッファーの量を含んでなる、請求項2に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物は、約0.2g/kg~約1g/kgの間のヘミンを含んでなる、請求項2に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物の総質量から前記リン酸バッファーを除いて、前記組成物は、約8g/kg~約40g/kgの間のL-シスチンを含んでなる、請求項2に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物は界面活性剤をさらに含んでなる、請求項2に記載の組成物。
【請求項13】
前記界面活性剤はポリソルベートである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
22℃において、前記組成物は液体またはゲルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
精製水をさらに含んでなる、請求項1または14に記載の組成物。
【請求項16】
ヒツジ血液をさらに含んでなる、請求項1または14に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物中の前記ヒツジ血液の濃度は、約5mL/kg~約200mL/kgの間である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記ヒツジ血液は溶血ヒツジ血液である、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物中のカゼイン消化物の濃度は、約0.1g/kg~約50g/kgの間である、請求項14に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物中のダイズ消化物の濃度は、約0.05g/kg~約30g/kgの間である、請求項14に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物中の動物組織消化物の濃度は、約0.1g/kg~約50g/kgの間である、請求項14に記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物中の酵母抽出物の濃度は、約0.1g/kg~約50g/kgの間である、請求項14に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物中のデキストロースの濃度は、約0.1g/kg~約50g/kgの間である、請求項14に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物は、0.1mmol/(pH単位)~100mmol/pHの緩衝能を提供するのに十分なリン酸バッファーの量を含んでなる、請求項14に記載の組成物。
【請求項25】
前記組成物中のヘミンの濃度は、約0.01g/kgである、請求項14に記載の組成物。
【請求項26】
前記組成物中のL-シスチンの濃度は、約0.01g/kg~約0.5g/kgの間である、請求項14に記載の組成物。
【請求項27】
界面活性剤をさらに含んでなる、請求項14に記載の組成物。.
【請求項28】
前記界面活性剤はポリソルベートである、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
ゲル化剤をさらに含んでなる、請求項1または14に記載の組成物。
【請求項30】
前記ゲル化剤は、寒天、ジェラン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、グアーガム、ゼラチン、アガロース、ポリアクリルアミド、およびリゾビウム属種(CNCM番号:I-1809)によって生産された多糖からなる群から選択される、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記ゲル化剤は寒天である、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記組成物中の前記ゲル化剤の濃度は、固体では約10g/kg~約800g/kgの間の前記ゲル化剤、液体またはゲルでは約5g/kg~約25g/kgの間である、請求項30に記載の組成物。
【請求項33】
前記組成物は、7.3±0.5のpHを有する、請求項1または14に記載の組成物。
【請求項34】
前記組成物は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項35】
前記組成物は添加ナトリウムを含有しない、請求項1に記載の組成物。
【請求項36】
消毒剤の中和剤をさらに含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項37】
前記中和剤はヒスチジン、チオ硫酸塩、ポリソルベート80、および/またはレシチンである、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
細胞集団を培養する方法であって、前記細胞集団の増殖を支援する条件下で、請求項14に記載の組成物と前記細胞集団を接触させることを含む、方法。
【請求項39】
前記細胞集団は、膜の第1の面に配置され、前記膜の第2の面は、前記組成物と接触している、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記細胞集団内の1種以上の細胞は好気性生物である、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記細胞集団内の1種以上の細胞は嫌気性生物である、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記細胞集団内の1種以上の細胞は、アシネトバクター属、アスペルギルス属、バチルス属、コリネバクテリウム属、デルマコッカス属、エシェリキア属、エクセロヒルム属、コクリア属、メチロバクテリウム属、ミクロコッカス属、パエニバチルス属、ペニシリウム属、プロピオニバクテリウム属、シュードモナス属、スタフィロコッカス属、ストレプトコッカス属、およびストレプトマイセス属からなる群から選択される属に属する、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
請求項14に記載の組成物を調製する方法であって、
i)精製水、カゼイン消化物、ダイズ消化物、リン酸バッファー、デキストロース、動物組織消化物、酵母抽出物、ヘミン、およびL-シスチンを含んでなる混合物をオートクレーブ処理すること;
ii)所望により、前記混合物を冷却すること;
iii)所望により、前記混合物に滅菌水酸化カリウムまたは塩化水素を加えることによりpHを7.3±0.5に調整すること;および
iv)前記混合物にヒツジ血液を加えること
を含む、方法。
【請求項44】
前記混合物の色が赤色から褐色に変化するまで前記混合物の温度を約65℃に保つことをさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
工程ii)における前記冷却は室温に冷却することである、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
工程i)の前記混合物はゲル化剤をさらに含んでなる、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
工程i)の前記混合物は界面活性剤をさらに含んでなる、請求項43に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
全体として、本発明は、微生物増殖培地およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの産業、特に、食品、飲料、医療、電子および製薬の産業では、細菌、酵母、またはカビなどの微生物による汚染の程度についてサンプルを迅速に分析することが不可欠である。具体的には、製薬会社および生物製剤会社は、微生物学的汚染物質の存在について無菌製品を検査することが求められる。米国薬局方モノグラフ<71>に記載されている伝統的な検査は、22.5℃でトリプチカーゼダイズブロス(trypticase soy broth)(TSB)を用い、32.5℃で液体チオグリコール酸培地(fluid thioglycollate medium)(FTM)を用いる増殖に基づくアッセイである。TSBは、酵母、カビ、および好気性細菌を検出するために使用される汎用増殖培地である。FTMは好気層および嫌気層を有し、偏性嫌気性生物、ならびに好気性細菌を検出するために使用される。増殖条件のこの組合せの目的は、できる限り多くの生物を増殖させることである。FTMは、嫌気性生物を増殖させる能力を有するが、多くの種に対して増殖促進性が低い汎用性に乏しい培地である。加えて、FTMは、表面上の微生物の、特に、嫌気性生物の増殖を支援する能力が限られている。
【0003】
他の既知増殖培地、例えば、シェドラー培地(Schaedler media)などは、特定の微生物の増殖を支援するために特化されている。例えば、シェドラー培地は、ヒト病原体の増殖を支援するように最適化されているが、無菌製品の検査には、できる限り多くの微生物の増殖を支援することが可能な包括的な培地が必要である。
【0004】
好気性および嫌気性細菌の、特に、膜上での増殖を支援することが可能な包括的な増殖培地がなお必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、嫌気性生物、カビ、損傷胞子、および一般的な好気性細菌の増殖を他の培地よりも大きく支援することができる多目的の微生物増殖培地を特徴とする。本発明は、カゼイン消化物、ダイズ消化物、動物組織消化物、酵母抽出物、デキストロース、リン酸バッファー(例えば、リン酸カリウムバッファー)、ヘミン、およびL-シスチンを含有する組成物を特徴とする。
【0006】
第1の態様において、前記組成物は、22℃において、固体、例えば、粉末である。第1の態様の組成物の実施形態を表1に要約する。量は、組成物全体のキログラム数に対する個々の成分のグラム数で示し、当業者は、個々の成分のそれぞれの総量が1kgを超えないことを理解するであろう。
【0007】
【0008】
第1の態様の特定の実施形態では、表1に記載の組成物は、リン酸バッファー、例えば、リン酸水素二カリウムまたはその水和物とリン酸二水素カリウムまたはその水和物との混合物をさらに含有する。さらに他の実施形態では、第1の態様の組成物中に存在するリン酸バッファー、例えば、リン酸カリウムバッファーの量は、表1の組成物およびそのリン酸バッファーを水性媒体(例えば、精製水、ヒツジ血液(例えば、脱線維素ヒツジ血液または溶血ヒツジ血液)、または両方)中に溶解または懸濁させることによって生成される培地中で、0.1mmol/(pH単位)~100mmol/(pH単位)、例えば、1mmol/(pH単位)~50mmol/(pH単位)、2mmol/(pH単位)~20mmol/(pH単位)、または3mmol/(pH単位)~10mmol/(pH単位)の緩衝能を提供するのに十分な量である。他の実施形態では、リン酸バッファー、例えば、リン酸カリウムバッファーは、液体またはゲル組成物において7.3±0.5のpH(例えば、7.3±0.2のpH)をもたらすのに十分な量で存在する。
【0009】
第1の態様のいくつかの実施形態では、前記組成物はゲル化剤をさらに含有する。前記組成物がゲル化剤を含有する場合、その組成物は、約10g/kg~約800g/kgの間、好ましくは、約100g/kg~約600g/kgの間、より好ましくは、約250g/kg~約450g/kgの間のゲル化剤(例えば、寒天)(例えば、約350g/kgのゲル化剤)を含有する。いくつかの実施形態では、前記ゲル化剤は寒天である。他の実施形態では、前記ゲル化剤はジェラン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、グアーガム、ポリアクリルアミド、またはエラジウム(Eladium)(登録商標)である。
【0010】
第1の態様のある特定の実施形態では、前記組成物は界面活性剤をさらに含有する。第1の態様の組成物は、表1に示した組成物の、約0g/kg~約190g/kgの間、例えば、約1g/kg~約60g/kgの間、約4g/kg~約40g/kgの間、または約20g/kgの界面活性剤を含有することができる。その界面活性剤は、好ましくは、ポリソルベート(例えば、ツイーン(Tween)(登録商標)20としても知られている、ポリソルベート20)である。
【0011】
第2の態様において、前記組成物は22℃において液体であり、第3の態様では、前記組成物は22℃においてゲルである。その液体またはゲルは、その液体またはゲルを形成するのに十分な水または他の水溶液または懸濁液を含むことになる。いくつかの実施形態では、その液体またはゲル組成物は、7.3±0.5のpH(例えば、7.3±0.2のpH)を有する。
【0012】
第2または第3の態様の組成物の例を表2に示す。量は、組成物全体(存在する場合、溶媒およびゲル化剤を含む)のキログラム数に対する個々の成分のグラム数で示し、当業者は、全成分の総量が1kgを超えないことを理解するであろう。
【0013】
【0014】
ある特定の実施形態では、第2または第3の態様の組成物は、水性媒体(例えば、精製水、ヒツジ血液(例えば、脱線維素ヒツジ血液または溶血ヒツジ血液)、または両方)1キログラム当たり表1の組成物5g~100g、例えば、表1中の組成物10g~50g、20g~30g、または約23gを含有する。
【0015】
第2または第3の態様の他の実施形態では、表2に記載の組成物は、リン酸バッファー、例えば、リン酸カリウムバッファーをさらに含有する。さらに他の実施形態では、第2または第3の態様の組成物中に存在するリン酸バッファー、例えば、リン酸カリウムバッファーの量は、0.1mmol/(pH単位)~100mmol/(pH単位)、例えば、1mmol/(pH単位)~50mmol/(pH単位)、2mmol/(pH単位)~20mmol/(pH単位)、または3mmol/(pH単位)~10mmol/(pH単位)の緩衝能を提供するのに十分な量である。
【0016】
第2または第3の態様の特定の実施形態では、前記組成物は、ヒツジ血液(例えば、脱線維素ヒツジ血液または溶血ヒツジ血液)をさらに含有する。前記組成物中のヒツジ血液の濃度は、約200mL/kg未満、好ましくは、約100mL/kg未満(例えば、約50mL/kg)であり得る。特定の実施形態では、前記ヒツジ血液中の赤血球は溶解している(例えば、赤血球を溶解するために処理された溶血ヒツジ血液または脱線維素ヒツジ血液)。
【0017】
第2または第3の態様の特定の実施形態では、前記組成物は、界面活性剤をさらに含有する。第2または第3の態様の組成物は、表2に示した組成物の、0g/kg~19g/kgの間、例えば、約0.05g/kg~約6g/kgの間、約0.1g/kg~約4g/kgの間、または約0.5g/kgの界面活性剤を含有することができる。その界面活性剤は、好ましくは、ポリソルベート(例えば、ツイーン(登録商標)20としても知られている、ポリソルベート20)である。
【0018】
第2の態様のある特定の実施形態および第3の態様では、前記組成物はゲル化剤を含有する。液体は、ゲル化するのに不十分な量でゲル化剤を含み得ることは理解されるであろう。ゲル化剤の例としては、寒天、ジェラン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、グアーガム、ポリアクリルアミド、およびエラジウム(商標)が挙げられる。前記組成物中の寒天またはエラジウム(商標)の濃度は、例えば、約5g/kg~約25g/kgの間(例えば、約13.5g/kg)であり;前記組成物中のジェランの濃度は、例えば、約1.0g/kg~約13g/kgの間(例えば、約6.8g/kgであり;前記組成物中のキサンタンガムまたはアルギン酸ナトリウムの濃度は、例えば、約3.4g/kg~約17g/kgの間(例えば、約9g/kg)であり;前記組成物中のポリアクリルアミドの濃度は、例えば、約50g/kg~約200g/kgの間(例えば、約150g/kg)であり;前記組成物中のグアーガムの濃度は、例えば、約10g/kg~約40g/kgの間(例えば、約21g/kg)である。
【0019】
第1~第3の態様のある特定の実施形態では、前記培養培地は、例えば、感受性もしくは耐性試験のためまたは耐性細胞の選択のために、抗生物質をさらに含み得る。第1~第3の態様の他の実施形態では、前記増殖培地は消毒剤の中和剤をさらに含む。中和すべき消毒剤の例としては、アルコール、次亜塩素酸塩、過酸化水素、酢酸、ペルオキシ酢酸、第四級アンモニウム化合物、フェノール類、ヨウ素、塩素製剤、水銀剤、ホルムアルデヒド、およびグルタルアルデヒドが挙げられる。中和剤の例としては、ヒスチジン、チオ硫酸塩、ポリソルベート80、および/またはレシチンが挙げられる。他の中和剤としては、重亜硫酸塩、グリシン、二価陽イオン(例えば、Mg2+またはCa2+)、およびチオグリコール酸塩が挙げられる。
【0020】
第4の態様では、本発明は、該細胞集団の増殖を支援する条件下で本発明の第2または第3の態様による組成物と該細胞集団を接触させることにより細胞集団を培養する方法を特徴とする。
【0021】
第4の態様のいくつかの実施形態では、前記細胞集団は、透過性の膜の一方の側に配置され、その透過性の膜のもう一方の側は、本発明の第2または第3の態様による組成物と接触している。透過性の膜は、多孔性であり、そうでなければ、一方の側からもう一方の側への増殖培地の輸送を可能にすることができる。
【0022】
第4の態様のある特定の実施形態では、前記細胞集団は好気性生物を含む。他の実施形態では、前記細胞集団は嫌気性生物(例えば、偏性嫌気性生物)を含む。第4の態様の特定の実施形態では、前記細胞集団は、アシネトバクター属(Acinetobacter)(例えば、アシネトバクター・ルオフィイ(Acinetobacter lwofii))、アスペルギルス属(Aspergillus)(例えば、アスペルギルス・ブラジリエンシス(Aspergillus brasiliensis)またはアスペルギルス・フミガーテス(Aspergillus fumigates))、バチルス属(Bacillus)(例えば、バチルス・クラウシイ(Bacillus clausii)、バチルス・イドリエンシス(Bacillus idriensis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、またはバチルス・スブスチリス(Bacillus substilis))、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)(例えば、コリネバクテリウム・ツバークロステアリクム(Corynebacterium tuberculostearicum)またはゼローシス菌(Corynebacterium xerosis))、デルマコッカス属(Dermacoccus)(例えば、デルマコッカス・ニシノミヤエンシス(Dermacoccus nishinomiyaensis))、エシェリキア属(Escherichia)(例えば、大腸菌(Escherichia coli))、エクセロヒルム属(Exserohilum)(例えば、エクセロヒルム・ロストラタム(Exserohilum rostratum))、コクリア属(Kocuria)(例えば、コクリア・リゾフィラ(Kocuria rhizophila))、メチロバクテリウム属(methylobacterium)(例えば、メチロバクテリウム・ラジオトレランス(methylobacterium radiotolerans))、ミクロコッカス属(Micrococcus)(例えば、ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus))、パエニバチルス属(Paenibacillus)(例えば、パエニバチルス・グルカノリティカス(Paenibacillus glucanolyticus))、ペニシリウム属(Penicillium)(例えば、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)またはペニシリウム・ノタタム(Penicillium notatum))、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)(例えば、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes))、シュードモナス属(Pseudomonas)(例えば、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa))、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)(例えば、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、またはスタフィロコッカス・ホミニス(Staphylococcus hominis))、ストレプトコッカス属(Streptococcus)(例えば、化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes))、およびストレプトマイセス属(Streptomyces)(例えば、ストレプトマイセス・ハルステディイ(Streptomyces halstedii))からなる群から選択される属に属する細胞を含む。いくつかの実施形態では、前記バチルス属は酸化ストレスを受けている。
【0023】
第4の態様のいくつかの実施形態では、前記細胞集団はサンプル中に存在する。前記サンプルは、多細胞生物から得られた流体または組織(例えば、動物(例えば、ヒトまたは非ヒト脊椎動物)の体液または組織)を含有し得る。前記サンプルは、呼吸器、尿生殖器、消化管、または生殖管、中枢神経系、尿、皮膚、粘液、血液、血漿、血清、リンパ、脳脊髄液、唾液、創傷組織、創傷滲出液、生検組織、糞便、または固形組織、またはそれらの誘導体から得られ得る。ある特定の実施形態では、前記サンプルは、血液または尿サンプルである。前記サンプルはまた、植物または真菌由来であり得る。前記サンプルは、環境の空気、土壌、または水、環境に曝された表面、物体、または生物をサンプリングすることによって得られ得る。前記サンプルは、ヒトまたは動物における局所使用または内部使用のための医薬品、化粧品、血液製剤、または他の製品の製造における原材料、完成品、または中間製品;食品、飲料、または栄養補給剤の製造における原材料、中間製品、または完成品(例えば、ビタミン類またはハーブ抽出物);医療用または体外診断用機器の製造における原材料、中間製品、または完成品;化学製品;工業上の表面;器具類;および機械類から得られ得る。前記サンプルは、前記接触工程の前にそれを液化しかつ/またはホモジナイズするために処理され得る。加えてまたはあるいは、前記接触工程の前に、前記サンプルは、前記細胞集団以外の物質または物体を除去するために、例えば、濾過または沈降により、処理され得る。
【0024】
具体的な実施形態では、前記方法は、前記サンプルを3つの独立したアリコートの前記培養培地と接触させる無菌試験であり、1つは室温、例えば、約22℃で好気的にインキュベートされ、1つは高温、例えば、約32.5℃で好気的にインキュベートされ、1つは高温、例えば、約32.5℃で嫌気的にインキュベートされる。
【0025】
第5の態様では、本発明は、本発明の第2の態様による組成物を調製する方法を特徴とする。その方法は:
i)精製水、カゼイン消化物、ダイズ消化物、リン酸バッファー、デキストロース、動物組織消化物、酵母抽出物、ヘミン、およびL-シスチンを含有する混合物をオートクレーブ処理すること;
ii)所望により、前記混合物を室温に冷却すること;
iii)所望により、前記混合物に滅菌水酸化カリウムまたは塩化水素を加えることによりpHを7.3±0.2に調整すること;および
iv)前記混合物にヒツジ血液を加えること
を含む。
【0026】
第5の態様のいくつかの実施形態では、工程iv)後に、前記方法は、工程v)前記混合物の色が赤色から褐色に変化するまで前記混合物の温度を約65℃に保つことをさらに含む(例えば、ヒツジ血液が脱線維素ヒツジ血液である場合)。溶血ヒツジ血液を使用する場合、工程iv)は45℃以下で起こり得る。
【0027】
第5の態様の特定の実施形態では、カゼイン消化物、ダイズ消化物、リン酸バッファー、デキストロース、動物組織消化物、酵母抽出物、ヘミン、およびL-シスチンの成分の量は、本発明の第1の態様に記載した量である。第5の態様のある特定の実施形態では、ヒツジ血液の量は本発明の第2または第3の態様で記載した量と同じである。
【0028】
第5の態様のある特定の実施形態では、工程i)の前記混合物は、ゲル化剤、例えば、寒天、ジェラン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、グアーガム、ポリアクリルアミド、またはエラジウム(商標)をさらに含有する。
【0029】
第5の態様のいくつかの実施形態では、工程i)の前記混合物は、界面活性剤、例えば、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20)をさらに含有する。あるいは、界面活性剤は工程i)の後に(例えば、工程iv)またはv)の後に)加えることができる。
【0030】
第5の態様の他の実施形態では、最終組成物は、保存容器(例えば、ボトル、ジャー、バイアル、アンプル、またはカセット(例えば、カセット、例えば、国際公開第2013/070730号に記載されているカセットなど))に移される。充填された滅菌保存容器は、培地を滅菌するためにγ線照射処理することができる。γ線滅菌の線量は、10kGyより大きくてよく、例えば、10kGy~50kGyの間、10kGy~40kGyの間、10kGy~30kGyの間、または10kGy~20kGyの間(例えば、12kGy~19kGyの間)であり得る。
【0031】
本発明の任意の態様のいくつかの実施形態では、前記組成物はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを含有しない。本発明の任意の態様の特定の実施形態では、前記組成物は添加ナトリウムを含まない。例えば、デキストロース、リン酸バッファー、ヘミン、およびL-シスチンのいずれもナトリウムを含まない。
【0032】
本発明の任意の態様のある特定の他の実施形態では、前記リン酸バッファーは、リン酸三カリウムまたはその水和物、リン酸水素二カリウムまたはその水和物、およびリン酸二水素カリウムまたはその水和物の1つ以上を含む。特定の実施形態では、前記リン酸バッファーは、リン酸水素二カリウムまたはその水和物およびリン酸二水素カリウムまたはその水和物の1つ以上を含む。他の実施形態では、前記リン酸バッファーは、リン酸水素二カリウムまたはその水和物と、リン酸二水素カリウムまたはその水和物との混合物である。
【0033】
本発明の第1の態様のいくつかの実施形態では、前記組成物は、カゼイン消化物、ダイズ消化物、動物組織消化物、酵母抽出物、デキストロース、リン酸バッファー、例えば、リン酸カリウムバッファー、ヘミン、L-シスチンと、所望により、消毒剤の中和剤とからなる。本発明の第1の態様の特定の実施形態では、前記組成物は、カゼイン消化物、ダイズ消化物、動物組織消化物、酵母抽出物、デキストロース、リン酸バッファー、例えば、リン酸カリウムバッファー、ヘミン、L-シスチン、ゲル化剤と、所望により、消毒剤の中和剤とからなる。本発明の第2の態様の特定の実施形態では、前記組成物は、カゼイン消化物、ダイズ消化物、動物組織消化物、酵母抽出物、デキストロース、リン酸バッファー、例えば、リン酸カリウムバッファー、ヘミン、L-シスチン、精製水と、所望により、消毒剤の中和剤とからなる。本発明の第2の態様の他の実施形態では、前記組成物は、カゼイン消化物、ダイズ消化物、動物組織消化物、酵母抽出物、デキストロース、リン酸バッファー、例えば、リン酸カリウムバッファー、ヘミン、L-シスチン、精製水、ヒツジ血液(例えば、脱線維素ヒツジ血液または溶血ヒツジ血液)と、所望により、消毒剤の中和剤とからなる。本発明の第2の態様の他の実施形態では、前記組成物は、カゼイン消化物、ダイズ消化物、動物組織消化物、酵母抽出物、デキストロース、リン酸バッファー、例えば、リン酸カリウムバッファー、ヘミン、L-シスチン、精製水、ヒツジ血液(例えば、脱線維素ヒツジ血液または溶血ヒツジ血液)、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)と、所望により、消毒剤の中和剤とからなる。本発明の第3の態様のある特定の実施形態では、前記組成物は、カゼイン消化物、ダイズ消化物、動物組織消化物、酵母抽出物、デキストロース、リン酸バッファー、例えば、リン酸カリウムバッファー、ヘミン、L-シスチン、精製水、ゲル化剤と、所望により、消毒剤の中和剤とからなる。本発明の第3の態様の他の実施形態では、前記組成物は、カゼイン消化物、ダイズ消化物、動物組織消化物、酵母抽出物、デキストロース、リン酸バッファー、例えば、リン酸カリウムバッファー、ヘミン、L-シスチン、精製水、ヒツジ血液(例えば、脱線維素ヒツジ血液または溶血ヒツジ血液)、ゲル化剤と、所望により、消毒剤の中和剤とからなる。本発明の第3の態様の他の実施形態では、前記組成物は、カゼイン消化物、ダイズ消化物、動物組織消化物、酵母抽出物、デキストロース、リン酸バッファー、例えば、リン酸カリウムバッファー、ヘミン、L-シスチン、精製水、ヒツジ血液(例えば、脱線維素ヒツジ血液または溶血ヒツジ血液)、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)、ゲル化剤と、所望により、消毒剤の中和剤とからなる。これらの実施形態のいずれにおいても、前記消毒剤の中和剤は省略し得る。これらの実施形態のいずれにおいても、前記成分の量は、表1または2で示されるものであり得る。
【0034】
本発明の任意の態様の組成物はまた、色素または染色剤、特に、生細胞の染色剤、例えば、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド(X-Galとしても知られている;この試薬はβ-ラクタマーゼ酵素の存在の指標である)を含み得る。この試薬は、テトラゾリウム塩(例えば、ニトロブルーテトラゾリウムまたはテトラゾリウムレッド)とともに使用し得る。本発明の任意の態様の組成物において使用し得る他の色素としては、Salmon-Gal、Magenta-Gal、およびGreen-Galが挙げられる。
【0035】
本明細書において使用される「約」という用語は、列挙された値の±10%の値を指す。
【0036】
本明細書において使用される「緩衝能」という用語は、液体またはゲル組成物のpHを1.0だけ変更するのに必要な強一塩基性酸または強一塩基性塩基のミリモル(milimoles)数を指す。
【0037】
単位「g/kg」、「mol/kg」および「mL/kg」は、組成物の総質量に対する成分の量の比率を示す。
【0038】
本明細書において使用される「精製水」という用語は、米国薬局方および国民医薬品集(the United States Pharmacopeia and National Formulary)(USF 37-NF32)、モノグラフ<1231>(2014年)に記載された精製水の基準を満たすかまたは超える水を指す。
【0039】
「ナトリウムを実質的に含まない」組成物は、50g/kg未満、例えば、10g/kg未満または1g/kg未満のナトリウムイオンを含有する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1A】
図1Aは、異なる培地改変を用いたグロースダイレクト(Growth Direct)(登録商標)無菌カセット中の漂白剤ストレスを受けた枯草菌(B. subtilis)胞子の回収のグラフである。(1)と表示したバーは、元のレシピに従って調製したシェドラーブロスについてのデータを表す。(2)と表示したバーは、シェドラーブロスの元のレシピに従って調製したがトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを添加していない増殖培地についてのデータを表す。(3)と表示したバーは、シェドラーブロスの元のレシピに従って調製したが塩化ナトリウムを添加していない増殖培地についてのデータを表す。(4)と表示したバーは、シェドラーブロスの元のレシピに従って調製したがカリウム源を添加している増殖培地についてのデータを表す。(5)と表示したバーは、本発明の増殖培地についてのデータを表す。(6)と表示したバーは、シェドラーチョコレート寒天培地についてのデータを表す。データは、シェドラーチョコレート寒天で観察された回収に対して正規化している。
【
図1B】
図1Bは、グロースダイレクト(登録商標)無菌カセット中の漂白剤ストレスを受けた枯草菌胞子の回収のグラフである。(1)と表示したバーは、シェドラー血液ブロスについてのデータを表す。(2)と表示したバーは、本発明の増殖培地についてのデータを表す。増殖培地は、全く新しいロットの個々の成分を用いて調製した。データは、シェドラーチョコレート寒天で観察された回収に対して正規化している。
【
図2】
図2は、グロースダイレクト(登録商標)無菌カセット中のメチロバクテリウム・ラジオトレランスの回収のグラフである。(1)と表示したバーは、シェドラー血液ブロスについてのデータを表す。(2)と表示したバーは、本発明の増殖培地についてのデータを表す。ペトリ皿でのTSAのデータは(3)と表示している。この培地ではメチロバクテリウム・ラジオトレランスの増殖は観察されなかったため、データをペトリ皿でのトリプチカーゼダイズ寒天からのメチロバクテリウム・ラジオトレランスの回収に対して正規化することはできなかった。
【
図3】
図3は、液体培地で増殖させた9種の異なる微生物の回収のグラフである。(a)と表示したバーは、TSBについてのデータを表す。(b)と表示したバーは、シェドラー血液ブロスについてのデータを表す。(c)と表示したバーは、本発明の増殖培地についてのデータを表す。データは、本発明の増殖培地で観察された回収に対して正規化している。70%カットオフは、本発明の増殖培地と比較して劣っている増殖を示すことが示されている。142%カットオフは、本発明の増殖培地と比較して優れている増殖を示すことが示されている。142%に対する100%の比率は70%となり、142%カットオフを選択した。
【
図4】
図4は、本発明の増殖培地で増殖させた10種の異なる、ストレスを受けた微生物の回収について、TSAでの回収と比較したグラフである。ストレス源は、図中に、漂白剤、熱、スポル・クレンツ(spor-klenz)(登録商標)(過酸化水素、過酢酸、および酢酸の混合物)、チメロサール、および栄養素として示している。本発明の増殖培地の回収は、対応する、ストレスを受けた微生物のTSAでの回収に対するパーセンテージで示される。
【
図5】
図5は、FTM培地からのMPN分析に対し、コロニーの計数によって決定した場合の、本発明の増殖培地(a)での嫌気性生物クロストリジウム・スポロゲネス(Clostridium sporogenes)およびプロピオニバクテリウム・アクネスの回収を示すグラフである。
【
図6】
図6は、ポリソルベート20を含む(左のバー)または含まない(中央のバー)本発明の増殖培地での、漂白剤ストレスを受けた枯草菌、スフィンゴモナス・ジャポニカ(Sphingomonas japonica)、およびD.ニシノミオヤエンシス(D. nishinomioyaensis)の回収を示すグラフである。本発明の増殖培地についてのデータをTSAでのその微生物の回収と比較している。
【発明を実施するための形態】
【0041】
詳細な説明
増殖培地組成
本発明は、ヒト関連生物、嫌気性生物、水生生物、環境生物、およびカビを含む多くの属の多種多様な生物の増殖を促進する改良された増殖培地を提供する。従って、その培地は、アッセイおよび細胞培養のための汎用培地として使用され得る。培地の多用途性により、無菌試験におけるトリプチカーゼダイズブロス(TSB)および液体チオグリコール酸培地(FTM)の代わりにそれを使用することが可能になる。本発明の増殖培地の例示的な使用分野には、全般的な細胞培養および液体、空気、土壌、表面、工業的もしくは臨床的サンプル、医薬品(無菌または非無菌)、食品、飲料製品、または栄養補給剤の微生物バイオバーデンについての検査が含まれる。その増殖培地はまた、臨床アッセイ、例えば、血液または他の感染についてのアッセイ、および抗生物質耐性についてのアッセイのような他のアッセイにも使用し得る。本発明は、カゼイン消化物、ダイズ消化物、動物組織消化物、酵母抽出物、デキストロース、リン酸バッファー、ヘミン、およびL-シスチンを含有する組成物を特徴とする。その組成物は、本発明の方法により本発明の増殖培地を調製するために、液体(例えば、水および/またはヒツジ血液(例えば、脱線維素ヒツジ血液または溶血ヒツジ血液))と混合し得る固体であり得る。組成物はまた、界面活性剤を含み得る。好ましくは、その組成物は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンおよび/または添加ナトリウムを含有しない。生物学的に誘導された成分はナトリウムを含有し得るため、その組成物はナトリウムフリーではない。本発明のこの組成物は、低ナトリウム含有量により、シェドラーブロスでの増殖と比較して、酸化ストレスを受けた枯草菌の優れた増殖を提供するため、有利である。加えて、より高いカリウム含有量、例えば、トリス(Tris)ではなくリン酸カリウムバッファーを使用することにより、シェドラーブロスでの増殖と比較して、例えば、酸化ストレスを受けた枯草菌の、優れた増殖をもたらした。
【0042】
当業者は、リン酸バッファー中のリン酸カリウムまたはその水和物、リン酸水素カリウムまたはその水和物、およびリン酸二水素カリウムまたはその水和物の1つ以上の最終的な割合を、定型計算により、例えば、ヘンダーソン・ハッセルバルヒの式(the Henderson-Hasselbalch equation)での関連する共役酸についての所望のpH値および水溶液のpKa値を使用することによって、定めることができる。本発明の培地については、約7.3(例えば、7.3±0.5、例えば、7.3±0.2など)のpHが望ましい。
【0043】
本発明の組成物の限定されない例を表3に示す。
【0044】
【0045】
表3のこの組成物はまた、寒天約12~約15g(例えば、寒天約13.5g)を含有し得る。この組成物はさらに、水性媒体約1L、例えば、精製水約950mLおよびヒツジ血液(例えば、脱線維素ヒツジ血液または溶血ヒツジ血液)約50mL中に溶解または懸濁し得る。その組成物は、0.05%(w/v)のポリソルベート20をさらに含有し得る。限定されない例では、表3に記載した組成物は、精製水950mLと合わせ、これにはヒツジ血液(例えば、溶血)50mLをさらに含めることができ、5%(w/v)ポリソルベート20溶液10mLを添加することができる。
【0046】
本発明の固体組成物は、カゼイン消化物、ダイズ消化物、動物組織消化物、酵母抽出物、デキストロース、リン酸バッファー、ヘミン、およびL-シスチンを含有する。本発明のある特定の固体組成物は、ナトリウムイオン約60g/kg未満(例えば、約55g/kg未満または約50g/kg未満)を含有する。本発明の固体組成物はまた、ゲル化剤を含有し得る。ゲル化剤を含む本発明の固体組成物は、水、ヒツジ血液、または両方と混合するとゲルを生じる。ゲル化剤の限定されない例としては、寒天、ジェラン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、グアーガム、ゼラチン、アガロース、エラジウム(商標)(リゾビウム属種(Rhizobium sp.)(CNCM番号:I-1809)によって生産された多糖)、およびそれらの組合せが挙げられる。。当業者は、増殖培地としての使用に好適なゲルの調製に必要な液体(例えば、精製水および/またはヒツジ血液)の量を決定することができる。本発明の固体組成物中のゲル化剤の量は、ゲル化剤が何であるかによって異なる。例えば、本発明の乾燥固体中に存在するゲル化剤がジェランである場合、その濃度は、約50g/kg~約300g/kgの間、好ましくは、約130g/kg~約230g/kgの間(例えば、約180g/kg)であり得る。本発明のゲルまたは液体中に存在するゲル化剤がジェランである場合、その濃度は、約2.5g/kg~約13g/kgの間(例えば、約6.8g/kg)であり得る。別の例では、本発明の乾燥固体中に存在するゲル化剤がキサンタンガムまたはアルギン酸ナトリウムである場合、その濃度は、約70g/kg~約400g/kgの間、好ましくは、約160g/kg~約300g/kgの間(例えば、約220g/kg)であり得る。本発明のゲル中に存在するゲル化剤がキサンタンガムまたはアルギン酸ナトリウムである場合、その濃度は、約3.4g/kg~約13g/kgの間(例えば、約6.8g/kg)であり得る。さらに別の例では、本発明のゲル中に存在するゲル化剤がポリアクリルアミドである場合、その濃度は、約50g/kg~約200g/kgの間(例えば、約150g/kg)であり得る。ある特定の例では、本発明の乾燥固体中に存在するゲル化剤がグアーガムである場合、その濃度は、約400g/kg~約800g/kgの間(例えば、約650g/kg)であり得る。本発明のゲル中に存在するゲル化剤がグアーガムである場合、その濃度は、約10g/kg~約40g/kgの間(例えば、約21g/kg)であり得る。
【0047】
本発明の液体組成物は、精製水またはヒツジ血液または両方を含有する。液体組成物はまた、ゲルを形成するには低すぎる濃度でゲル化剤を含み得る。本発明の液体組成物中の成分の濃度は、本明細書に記載のとおりである。
【0048】
本発明の組成物において使用されるカゼイン消化物は、当技術分野で公知の方法に従って、牛乳由来のカゼインタンパク質の加水分解により調製することができる。本発明の組成物において使用されるダイズ消化物は、当技術分野で公知の方法に従って、例えば、熱に不安定なプロテアーゼ阻害剤を除去するために熱処理した脱脂大豆粉の酵素消化により調製することができる。本発明の組成物において使用される動物組織消化物は、当技術分野で公知の方法に従って、例えば、筋肉組織の食肉または内臓肉およびゼラチンの加水分解により調製することができる。酵母抽出物は、USPにおいて「酵母細胞([例えば、]サッカロミセス属(Saccharomyces))の水溶性のペプトン様誘導体」と定義され、噴霧乾燥粉末として容易に入手可能である。市販のカゼイン消化物、ダイズ消化物、動物組織消化物、および酵母抽出物は、本発明の組成物において使用し得る。これらの成分は、例えば、BD Biosciences(サンノゼ、CA)から入手し得る。これらの成分の各々は15%(w/w)未満のナトリウムを含有する。
【0049】
脱線維素ヒツジ血液は、当技術分野で公知の方法に従って、ヒツジから無菌採血し、その後、抗凝固剤の不在下で採取した血液の凝固過程の間にフィブリンを機械的除去することにより調製することができる。市販の脱線維素ヒツジ血液(例えば、Rockland Immunochemicals Inc.(ギルバーツビル、PA)製)は、本発明の組成物において使用し得る。ヒツジ血液は、ナトリウムを(3.48±0.02g/100mLまで;例えば、Long et al., J. Anim. Sci., 24:145-150, 1965参照)含有することが知られている。溶血ヒツジ血液は、脱線維素ヒツジ血液を溶血させることにより調製することができる。市販の溶血ヒツジ血液は、本発明の組成物において使用することができる(例えば、Cedarlane(バーリントン、NC)製)。
【0050】
界面活性剤(例えば、非イオン性界面活性剤)は、本発明の液体およびゲル組成物中での沈殿物の形成を制御するために、本発明の組成物において使用することができる。その界面活性剤は、ポロクサマー、ポリソルベート、またはトリトン(Triton)(商標)であり得る。これらの界面活性剤は、様々な化学製品供給業者、例えば、Dow Chemical(ミッドランド、MI)、およびSigma Aldrich(セントルイス、MO)などから市販されている。好ましい界面活性剤はポリソルベート20である。
【0051】
本発明の増殖培地はまた、当技術分野で公知の抗生物質を含み得る。前記増殖培地は、消毒剤の中和剤をさらに含み得る。中和すべき消毒剤の例としては、アルコール、次亜塩素酸塩、過酸化水素、酢酸、ペルオキシ酢酸、第四級アンモニウム化合物、フェノール類、ヨウ素、塩素製剤、水銀剤、ホルムアルデヒド、およびグルタルアルデヒドが挙げられる。中和剤の例としては、ヒスチジン、チオ硫酸塩、ポリソルベート80、および/またはレシチンが挙げられる。他の中和剤としては、重亜硫酸塩、グリシン、二価陽イオン(例えば、Mg2+またはCa2+)、およびチオグリコール酸塩が挙げられる。上記のように、本発明の組成物は、好ましくは、ナトリウムを実質的に含まない非生物学的誘導成分を含む、すなわち、本発明の組成物は、シェドラーブロスよりも含有するナトリウムは少ない。好ましくは、本発明の組成物は、トリ(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)を含有しない。トリスの品質は、この成分を含有する培地で増殖させた微生物の回収の再現性の低下につながる可能性があるロット間変動を受けやすいため、この成分が不在であることは有利である。従って、リン酸バッファー、例えば、リン酸カリウムバッファーを本発明の組成物において使用する。
【0052】
細胞集団を培養する方法
本発明の増殖培地は、アッセイおよび細胞培養のための一般的な増殖培地として採用し得る。本発明の増殖培地の使用は、例えば、微生物(例えば、細菌または真菌)の増殖のために透過性の膜を採用する細胞培養デバイスの使用を含む、増殖に基づく無菌アッセイにおいて特に有利である。そのような細胞培養デバイスは、国際公開第2007/038478号、国際公開第2013/070730号、および国際公開第2013/158666号に詳細に記載されており、これらの開示は、その全体が引用することにより本明細書の一部とされる。具体的には、本発明の増殖培地は、国際公開第2013/070730号に記載されている方法に従って、グロースダイレクト(商標)無菌カセットとともに使用し得る。特定の利点としては、信頼性の高い無菌試験結果を迅速に達成し、それによって、医療および製造における効率的なコスト管理が可能になることが挙げられる。
【0053】
具体的には、本発明の増殖培地は、TSAおよびFTMを採用する公定書収載試験の類似試験において採用することができる。例えば、その培地は、1つは32.5℃でインキュベートする好気性生物についてのアッセイであり、1つは32.5℃でインキュベートする嫌気性生物についてのアッセイであり、1つは22℃でインキュベートする好気性生物についてのアッセイである、一連の3つのアッセイにおいて採用することができる。その増殖培地の他の使用には、環境モニタリング、バイオバーデン試験、臨床的および診断的使用、抗生物質耐性試験、および抗生物質選択が含まれる。抗生物質感受性試験または抗生物質耐性を有する細胞の選択(例えば、トランスフェクション後)では、その増殖培地は、当技術分野で公知のように、抗生物質を含み得る。
【0054】
本発明の増殖培地の使用は、透過性の膜上での微生物の増殖を含む設定に限定されない。例えば、本発明の増殖培地は、試験管、ペトリ皿、ロダックプレート、マイクロ流体細胞培養デバイス(例えば、米国特許出願公開第2013/0090268号および第2013/0171679号に記載されているものなど)、バイオリアクター(エッペンドルフセルゲン(Eppendorf CellGen)(登録商標)バイオリアクターまたは、例えば、米国特許出願公開第2013/0196375号および第2014/0024105号に記載されているものなど)、および他の細胞培養容器で微生物(例えば、細菌または真菌)を培養するために使用し得る。
【0055】
本発明の増殖培地を使用してアッセイすることができるサンプルは、限定されず、工業的サンプル(例えば、食品、飲料、または栄養補給剤の製造における原材料、中間製品、または完成品;医療用または体外診断用機器の製造における原材料、中間製品、または完成品;化学製品;工業上の表面;器具類;または機械類)、医薬を調製するのに使用される医薬および試薬(例えば、ヒトまたは動物における局所使用または内部使用のための医薬品、化粧品、血液製剤、または他の製品の製造における原材料、完成品、または中間製品)、生体サンプル、環境サンプル(例えば、水サンプル(天然水域(河川、湖沼、池、および海洋など)、廃水、および処理された水源(地方自治体の水道水など))、空気サンプル、土壌サンプル、および表面サンプルなど)を含む。試験し得る表面には、商品(例えば、医薬)の製造、包装または保管に使用される機器、材料および設備;研究に使用される機器、材料および設備;衣類、寝具、および他の布地(例えば、医療提供者または患者のためのもの);ならびに治療に使用される機器、材料および設備(例えば、病院、診療所、および医院)が含まれる。
【0056】
本発明の増殖培地を使用して培養することができる微生物(例えば、細菌または真菌)の属の限定されない例としては、アシネトバクター属(例えば、アシネトバクター・ルオフィイ(Acinetobacter lwofii))、アスペルギルス属(例えば、アスペルギルス・ブラジリエンシスまたはアスペルギルス・フミガーテス(Aspergillus fumigates))、バチルス属(例えば、バチルス・クラウシイ、バチルス・イドリエンシス、バチルス・リケニフォルミス、またはバチルス・スブスチリス(Bacillus substilis))、カンジダ属(Candida)(例えば、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans))、クロストリジウム属(Clostridium)(例えば、クロストリジウム・スポロゲネス(Clostridium sporogenes))、コリネバクテリウム属(例えば、コリネバクテリウム・ツバークロステアリクムまたはゼローシス菌)、デルマコッカス属(例えば、デルマコッカス・ニシノミヤエンシス)、エシェリキア属(例えば、大腸菌)、エクセロヒルム属(例えば、エクセロヒルム・ロストラタム)、コクリア属(例えば、コクリア・リゾフィラ)、メチロバクテリウム属(例えば、メチロバクテリウム・ラジオトレランス)、ミクロコッカス属(例えば、ミクロコッカス・ルテウス)、パエニバチルス属(例えば、パエニバチルス・グルカノリティカス)、ペニシリウム属(例えば、ペニシリウム・クリソゲナムまたはペニシリウム・ノタタム)、シュードモナス属(例えば、緑膿菌またはシュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens))、スフィンゴモナス属(Sphingomonas)(例えば、スフィンゴモナス・ジャポニカ)、スタフィロコッカス属(例えば、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、またはスタフィロコッカス・ホミニス)、ストレプトコッカス属(例えば、化膿レンサ球菌)、およびストレプトマイセス属(例えば、ストレプトマイセス・ハルステディイ)が挙げられる。具体的には、本発明の増殖培地は、漂白剤ストレスを受けた枯草菌を含む数多くの微生物の再現可能な良好な回収を可能にする。
【0057】
本発明のキット
本発明はまた、上記の本発明の組成物を含有するキットを特徴とする。本発明の組成物は、本発明のキットに乾燥物品、例えば、粉末、ゲル、または液体として含め得る。固体、例えば、粉末は、単一の容器(例えば、ボトル、アンプル、またはジャー)中に混合物として包装し得る。あるいは、固体、例えば、粉末は、別々の容器(例えば、バッグ、缶、ポーチ、ボトル、バイアル、アンプル、ジャー、またはそれらの組合せ)に包装し得る。混合物は、カゼイン消化物、ダイズ消化物、動物組織消化物、酵母抽出物、デキストロース、リン酸バッファー、ヘミン、L-シスチン、およびゲル化剤(例えば、寒天、ジェラン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、グアーガム、ゼラチン、アガロース、エラジウム(商標)、またはそれらの組合せ)の1つ以上を含有し得る。これらの成分の相対量は上記のとおりである。
【0058】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図しており、決して本発明を限定するものではない。
【実施例0059】
実施例1:本発明の増殖培地の調製
精製水(950mL)、カゼイン消化物(5.6g、NeogenまたはBD Biosciences)、ダイズ消化物(1g、Neogen)、リン酸二カリウム(2.5g、Sigma-Aldrich)、デキストロース(5.82g、Sigma-Aldrich)、動物組織消化物(5g、BD BiosciencesまたはNeogen)、酵母抽出物(5g、BD BiosciencesまたはNeogen)、リン酸一カリウム(0.31g、Sigma-Aldrich)、ヘミン(0.01g、Sigma-Aldrich)、およびL-シスチン(0.4g、Sigma-Aldrich)を含有する組成物をオートクレーブ処理した。組成物を室温に冷却し、KOHまたはHCl水溶液を用いてpHを7.3(±0.2)に調整した。次いで、組成物を65℃に加熱し、脱線維素ヒツジ血液(Northeast LaboratoriesまたはThermo Scientific)50mLを加えた。赤色から褐色に色が変化するまで温度を一定に保ち、その時点で組成物を周囲温度(室温、約22℃)に冷却した。
【0060】
実施例2:様々な増殖培地における微生物の増殖の比較
この実施例では、米国薬局方モノグラフ<71>に記載されている増殖に基づく無菌アッセイにおいて使用される標準培地と比較して、様々な微生物の増殖を支援する本発明の増殖培地の多用途性を例示する。標準培地はTSBおよびFTMである。
【0061】
本発明の増殖培地を種々の生物に対して試験した。本発明の培地はまた、当技術分野で公知の他の増殖培地と比較した。総ての試験は、グロースダイレクト(商標)無菌カセット(Rapid Micro Biosystems、ベッドフォード、MA)またはペトリ皿で行った。
【0062】
シェドラーブロスの改変物と、元のレシピ、シェドラーチョコレート寒天、および本発明の増殖培地との比較
元のレシピに従って調製したシェドラーブロス(1)、トリスを含まないシェドラーブロス(2)、ナトリウムを実質的に含まない非生物学的誘導成分を含有するシェドラーブロス(3)、カリウムが多いシェドラーブロス(4)、本発明の増殖培地(5)、およびシェドラーチョコレート寒天(6)での、漂白剤ストレスを受けた枯草菌の回収を
図1Aに示す。試験は、各培地の2つの異なるバッチを用いて三反復で行った。結果は、シェドラーチョコレート培地での回収に対して正規化した。
図1Bに示されるように、結果は、粉末成分および/または血液の異なる基礎的ロットであっても再現可能である。
【0063】
グロースダイレクト(登録商標)無菌カセット中で本発明の増殖培地を使用した回収と、ペトリ皿でTSAを使用した回収との比較
グロースダイレクト(登録商標)無菌カセット中での本発明の増殖培地における23種の異なる生物の増殖を、ペトリ皿でのTSBにおけるその生物の増殖と比較した。結果は、ペトリ皿でのTSAで観察された増殖に対して正規化した。3種の生物だけが良好な増殖についての70%カットオフ以下の回収を示した(USP基準)。2種の生物、デルマコッカス・ニシノミヤエンシスおよびメチロバクテリウム・ラジオトレランスでは、本発明の増殖培地における無菌カセット中での増殖は一貫して優れていた。
図2はメチロバクテリウム・ラジオトレランスについてのデータを示している;しかしながら、TSAでは増殖は観察されなかったため、増殖をTSAに対して正規化することはできなかった。
【0064】
TSB、シェドラー血液ブロス、および本発明の増殖培地を使用したグロースダイレクト(登録商標)無菌カセット中での微生物の増殖の比較
無菌カセットの関連の中で異なる培地における増殖を調査し、寒天の変動を排除した。この研究の焦点は問題のある生物にあった。
図3はこの比較を、本発明の増殖培地における増殖に対して正規化したデータを用いて示している。5種の生物では、総ての培地の間に有意差はなかった。総ての増殖は70%カットオフ~142%カットオフの間にある。2種の生物、ゼローシス菌およびエクセロヒルム・ロストラタムでは、増殖は本発明の増殖培地において優れている。ストレプトマイセス・ハルステディイおよびペニシリウム・クリソゲナムでは、TSBにおいて増殖が優れているが、総ての場合において、増殖が検出される。TSA、TSB、またはシェドラー血液もしくはチョコレート寒天で増殖することができ、本発明の増殖培地で増殖することができない生物は同定されなかった。
【0065】
本発明の増殖培地における微生物の増殖と、FTMにおけるその微生物の増殖との比較 FTMは、嫌気性生物を液体形式で増殖させるために設計されている。この培地は、好気層および嫌気層の両方を有するため、多目的の培地であることが意図されている。これは液体増殖培地であるが濾過膜の表面での増殖を支援しないため、増殖は濁りの存在によってのみモニタリングすることができる。この情報の存在/非存在は、最確数(Most probable Number)(MPN)法を用いて定量的データに変換することができ、この場合、低レベルの接種物の反復10倍希釈物を増殖についてモニタリングし、増殖/非増殖のパターンを最も濃度の高い接種での最も可能性の高い接種物に変換することができる。
【0066】
この方法を用いて、本発明の増殖培地での嫌気性無菌カセット中でのプロピオニバクテリウム・アクネスの増殖を、MPN法を用いたFTMでの増殖と比較した。表4に示すように、嫌気性カセットにおけるカウントは、MPN法を用いたFTMでのものと同様である。しかしながら、プロピオニバクテリウム・アクネスは、FTMでの増殖と比べて、本発明の増殖培地で著しく速く増殖した。
【0067】
【0068】
FTMでのいくつかの好気性生物の増殖を、本発明の増殖培地におけるそれらの増殖と比較した。この試験の焦点はカビにあり、TSAでの増殖と比較した場合、本発明の増殖培地を用いたグロースダイレクト(登録商標)無菌カセットではその回収は70%未満であることが観察された。FTMの増殖/非増殖情報から定量的データを得るためにMPN分析を行った。表5に示すように、カビの増殖は、TSAまたはシェドラーチョコレート寒天(Schaedler chocolate agar)(SCA)でのそれらの増殖と比較して、FTMでは非常に悪かった。本発明の培地における無菌カセット中での増殖は著しく良好であった。(6番目のカラム、FTMでの%増殖率と、最後のカラム、カセット中での%増殖率とを比較。増殖はTSA対照に対して正規化した。)
【0069】
【0070】
実施例3
pH7.3±0.2を有する、精製水(950mL)、カゼイン消化物(5.6g)、ダイズ消化物(1g)、リン酸二カリウム(2.5g)、デキストロース(5.82g)、動物組織消化物(5g)、酵母抽出物(5g)、リン酸一カリウム(0.31g)、ヘミン(0.01g)、L-シスチン(0.4g)、および溶血ヒツジ血液(50mL)または脱線維素ヒツジ血液(50mL)を含有する増殖培地組成物を採用した。溶血ヒツジ血液を含有する組成物は、実施例1に記載のとおりに調製した混合物に溶血ヒツジ血液を45℃以下で加えたことを除いて、実施例1に記載のとおりに調製した。
【0071】
膜フィルターをブロス浸漬パッド上に置いた。組成物の増殖促進を、ヒト関連株、水生生物、酵母、USP微生物、カビおよび複数の胞子形成バチルス属種を含む一連の試験生物を用いて、トリプチカーゼダイズ寒天(trypticase soy agar)(TSA)と比較した(表6)。表6では、%回収率は、本発明の増殖培地(ポリソルベート20を含有しない)における微生物の回収を、TSAにおける回収に対するパーセンテージとして示している。
【0072】
【0073】
さらに、本発明の増殖培地における、ストレスを受けた微生物の回収を、上記の手順に従うことによってTSAにおける回収と比較した。
図4に示されるように、漂白剤ストレス、熱ストレス、および栄養素ストレスを受けた微生物総ての回収は、TSAと比べて、本発明の増殖培地において優れていた。本発明の増殖培地におけるスポル・クレンツ(登録商標)ストレスおよびチメロサールストレスを受けた微生物の回収は、TSAにおけるものと同等であった。この試験に使用した本発明の増殖培地は、脱線維素ヒツジ血液を加え、ポリソルベート20を加えずに調製した。
【0074】
総ての場合において、本発明の増殖培地は、試験した総ての菌株にわたってTSAと同等以上の増殖促進を示した。いずれの場合においても、本発明の増殖培地での試験菌株の回収がTSAのものに実質的に劣っていることはなかった。
【0075】
加えて、本発明の培地の増殖を、公定書収載無菌試験によって記載されているように、FTMにスパイクし増殖させた生物から計算したMPN値と比較した。本発明の増殖培地は、嫌気性条件下で、FTMと同じ増殖促進を示すかどうか調べるために、嫌気性生物であるプロピオニバクテリウム・アクネスおよびクロストリジウム・スポロゲネスを試験した。示されているように、両方の菌株は、FTMでのインキュベーションから得られたMPNに対し、本発明の増殖培地を用いてセルロースパッド上で嫌気的にインキュベートした膜フィルターにおいて同等の回復を示した(
図5)。
【0076】
実施例4
pH7.3±0.2を有する、精製水(950mL)、カゼイン消化物(5.6g)、ダイズ消化物(1g)、リン酸二カリウム(2.5g)、デキストロース(5.82g)、動物組織消化物(5g)、酵母抽出物(5g)、リン酸一カリウム(0.31g)、ヘミン(0.01g)、L-シスチン(0.4g)、溶血ヒツジ血液(50mL)、および10mLの5%(w/v)ポリソルベート20を含有する増殖培地組成物を採用した。組成物は、溶血ヒツジ血液を含有する組成物は、実施例1に記載のとおりに調製した混合物に溶血ヒツジ血液を45℃以下で加えたことを除いて、実施例1に記載のとおりに調製した。
【0077】
漂白剤ストレスを受けた枯草菌、スフィンゴモナス・ジャポニカ、およびデルマコッカス・ニシノミヤエンシスについてのポリソルベート20を含有する本発明の培地における増殖を、ポリソルベート20を含まない本発明の培地における増殖およびTSAにおける増殖と比較した。結果は
図6に示している。ポリソルベート20を含有する本発明の増殖培地はまた、嫌気性生物(例えば、プロピオニバクテリウム・アクネス)の増殖を支援する能力についても試験した。プロピオニバクテリウム・アクネスは、本発明の増殖培地を使用してグロースダイレクト(登録商標)嫌気性無菌カセットにおいて増殖させ、BD社製ガスパック(登録商標)嫌気性ポーチでの血液寒天培地プレートにおける増殖と回収を比較した。本発明の増殖培地におけるプロピオニバクテリウム・アクネスの回収は、血液寒天培地対照の場合の18CFUに対し、平均13.2CFUであった。
【0078】
本発明はまた、以下の番号を付した実施形態によっても記載する。
1.カゼイン消化物、ダイズ消化物、動物組織消化物、酵母抽出物、デキストロース、リン酸バッファー、ヘミン、およびL-シスチンを含んでなる組成物。
2.22℃において、前記組成物は固体である、実施形態1に記載の組成物。
3.前記組成物は粉末である、実施形態2に記載の組成物。
4.前記組成物の総質量から前記リン酸バッファーを除いて、前記組成物は、約1g/kg~約500g/kgの間のカゼイン消化物を含んでなる、実施形態2または3に記載の組成物。
5.前記組成物の総質量から前記リン酸バッファーを除いて、前記組成物は、約50g/kg~約400g/kgの間のカゼイン消化物を含んでなる、実施形態4に記載の組成物。
6.前記組成物の総質量から前記リン酸バッファーを除いて、前記組成物は、約100g/kg~約300g/kgの間のカゼイン消化物を含んでなる、実施形態5に記載の組成物。
7.前記組成物の総質量から前記リン酸バッファーを除いて、前記組成物は、約245.3g/kgのカゼイン消化物を含んでなる、実施形態6に記載の組成物。
8.前記組成物の総質量から前記リン酸バッファーを除いて、前記組成物は、約0.5g/kg~約300g/kgの間のダイズ消化物を含んでなる、実施形態2~7のいずれか1つに記載の組成物。
9.前記組成物の総質量から前記リン酸バッファーを除いて、前記組成物は、約10g/kg~約200g/kg間のダイズ消化物を含んでなる、実施形態8に記載の組成物。
10.前記組成物の総質量から前記リン酸バッファーを除いて、前記組成物は、約10g/kg~約100g/kgの間(between about 10 g/kg about 100 g/kg)のダイズ消化物を含んでなる、実施形態9に記載の組成物。
11.前記組成物の総質量から前記リン酸バッファーを除いて、前記組成物は、約43.8g/kgのダイズ消化物を含んでなる、実施形態10に記載の組成物。
12.前記組成物の総質量から前記リン酸バッファーを除いて、前記組成物は、約1g/kg~約500g/kgの間の動物組織消化物を含んでなる、実施形態2~11のいずれか1つに記載の組成物。
13.前記組成物の総質量から前記リン酸バッファーを除いて、前記組成物は、約50g/kg~約400g/kgの間の動物組織消化物を含んでなる、実施形態12に記載の組成物。
14.前記組成物の総質量から前記リン酸バッファーを除いて、前記組成物は、約100g/kg~約300g/kgの間の動物組織消化物を含んでなる、実施形態13に記載の組成物。
15.前記組成物の総質量から前記リン酸バッファーを除いて、前記組成物は、約219g/kgの動物組織消化物を含んでなる、実施形態14に記載の組成物。
16.前記組成物の総質量から前記リン酸バッファーを除いて、前記組成物は、約1g/kg~約500g/kgの間の酵母抽出物を含んでなる、実施形態2~15のいずれか1つに記載の組成物。
17.前記組成物の総質量から前記リン酸バッファーを除いて、前記組成物は、約50g/kg~約400g/kgの間の酵母抽出物を含んでなる、実施形態16に記載の組成物。
18.前記組成物の総質量から前記リン酸バッファーを除いて、前記組成物は、約100g/kg~約300g/kgの間の酵母抽出物を含んでなる、実施形態17に記載の組成物。
19.前記組成物の総質量から前記リン酸バッファーを除いて、前記組成物は、約219g/kgの酵母抽出物を含んでなる、実施形態18に記載の組成物。
20.前記組成物の総質量から前記リン酸バッファーを除いて、前記組成物は、約1g/kg~約500g/kgの間のデキストロースを含んでなる、実施形態2~19のいずれか1つに記載の組成物。
21.前記組成物の総質量から前記リン酸バッファーを除いて、前記組成物は、約50g/kg~約400g/kgの間のデキストロースを含んでなる、実施形態20に記載の組成物。
22.前記組成物の総質量から前記リン酸バッファーを除いて、前記組成物は、約100g/kg~約300g/kgの間のデキストロースを含んでなる、実施形態21に記載の組成物。
23.前記組成物の総質量から前記リン酸バッファーを除いて、前記組成物は、約255g/kgのデキストロースを含んでなる、実施形態22に記載の組成物。
24.前記組成物は、水性媒体への溶解時に0.1mmol/(pH単位)~100mmol/(pH単位)の緩衝能を提供するのに十分なリン酸バッファーの量を含んでなる、実施形態2~23のいずれか1つに記載の組成物。
25.前記組成物は、水性媒体への溶解時に1mmol/(pH単位)~50mmol/(pH単位)の緩衝能を提供するのに十分なリン酸バッファーの量を含んでなる、実施形態24に記載の組成物。
26.前記組成物は、水性媒体への溶解時に2mmol/(pH単位)~20mmol/(pH単位)の緩衝能を提供するのに十分なリン酸バッファーの量を含んでなる、実施形態25に記載の組成物。
27.前記組成物は、水性媒体への溶解時に3mmol/(pH単位)~10mmol/(pH単位)の緩衝能を提供するのに十分なリン酸バッファーの量を含んでなる、実施形態26に記載の組成物。
28.前記組成物は、約0.2g/kg~約1g/kgの間のヘミンを含んでなる、実施形態2~27のいずれか1つに記載の組成物。
29.前記組成物は、約0.4g/kgのヘミンを含んでなる、実施形態28に記載の組成物。
30.前記組成物の総質量から前記リン酸バッファーを除いて、前記組成物は、約8g/kg~約40g/kgの間のL-シスチンを含んでなる、実施形態2~29のいずれか1つに記載の組成物。
31.前記組成物の総質量から前記リン酸バッファーを除いて、前記組成物は、約12g/kg~約20g/kgの間のL-シスチンを含んでなる、実施形態30に記載の組成物。
32.前記組成物の総質量から前記リン酸バッファーを除いて、前記組成物は、約17.5g/kgのL-シスチンを含んでなる、実施形態31に記載の組成物。
33.前記組成物はゲル化剤をさらに含んでなる、実施形態2~32のいずれか1つに記載の組成物。
34.前記ゲル化剤は、寒天、ジェラン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、グアーガム、ゼラチン、アガロース、およびリゾビウム属種(CNCM番号:I-1809)によって生産された多糖からなる群から選択される、実施形態33に記載の組成物。
35.前記ゲル化剤は寒天である、実施形態34に記載の組成物。
36.前記組成物は、約10g/kg~約800g/kgの間の前記ゲル化剤を含んでなる、実施形態33~35のいずれか1つに記載の組成物。
37.前記組成物は、約100g/kg~約600g/kgの間の前記ゲル化剤を含んでなる、実施形態36に記載の組成物。
38.前記組成物は、約250g/kg~約450g/kgの間の前記ゲル化剤を含んでなる、実施形態37に記載の組成物。
39.前記組成物は、約350g/kgの前記ゲル化剤を含んでなる、実施形態38に記載の組成物。
40.前記組成物は界面活性剤をさらに含んでなる、実施形態2~39のいずれか1つに記載の組成物。
41.前記界面活性剤はポリソルベートである、実施形態40に記載の組成物。
42.前記組成物は、約0.4g/kg~約190g/kgの間の前記界面活性剤を含んでなる、実施形態40または41に記載の組成物。
43.前記組成物は、約4g/kg~約80g/kgの間の前記界面活性剤を含んでなる、実施形態42に記載の組成物。
44.前記組成物は、約4g/kg~約40g/kgの間の前記界面活性剤を含んでなる、実施形態43に記載の組成物。
45.前記組成物は、約20g/kgの前記界面活性剤を含んでなる、実施形態44に記載の組成物。
46.22℃において、前記組成物は液体またはゲルである、実施形態1に記載の組成物。
47.精製水をさらに含んでなる、実施形態1または46に記載の組成物。
48.ヒツジ血液をさらに含んでなる、実施形態1、46、および47のいずれか1つに記載の組成物。
49.前記組成物中の前記ヒツジ血液の濃度は、約5mL/kg~約200mL/kgの間である、実施形態48に記載の組成物。
50.前記組成物中の前記ヒツジ血液の濃度は、約5mL/kg~約100mL/kgの間(between about 5 mL/kg about 100 mL/kg)である、実施形態49に記載の組成物。
51.前記組成物中の前記ヒツジ血液の濃度は、約50mL/kgである、実施形態50に記載の組成物。
52.前記ヒツジ血液中の赤血球は溶解している、実施形態48~51のいずれか1つに記載の組成物。
53.前記ヒツジ血液は溶血ヒツジ血液である、実施形態48~52のいずれか1つに記載の組成物。
54.前記ヒツジ血液は、脱線維素ヒツジ血液である、実施形態48~52のいずれか1つに記載の組成物。
55.前記組成物中のカゼイン消化物の濃度は、約0.1g/kg~約50g/kgの間である、実施形態46~54のいずれか1つに記載の組成物。
56.前記組成物中のカゼイン消化物の濃度は、約1g/kg~約20g/kgの間である、実施形態55に記載の組成物。
57.前記組成物中のカゼイン消化物の濃度は、約2g/kg~約10g/kgの間である、実施形態56に記載の組成物。
58.前記組成物中のカゼイン消化物の濃度は、約5.6g/kgである、実施形態57に記載の組成物。
59.前記組成物中のダイズ消化物の濃度は、約0.05g/kg~約30g/kgの間である、実施形態46~58のいずれか1つに記載の組成物。
60.前記組成物中のダイズ消化物の濃度は、約0.1g/kg~約10g/kgの間である、実施形態59に記載の組成物。
61.前記組成物中のダイズ消化物の濃度は、約0.2g/kg~約3g/kgの間である、実施形態60に記載の組成物。
62.前記組成物中のダイズ消化物の濃度は、約1g/kgである、実施形態61に記載の組成物。
63.前記組成物中の動物組織消化物の濃度は、約0.1g/kg~約50g/kgの間である、実施形態46~62のいずれか1つに記載の組成物。
64.前記組成物中の動物組織消化物の濃度は、約1g/kg~約20g/kgの間である、実施形態63に記載の組成物。
65.前記組成物中の動物組織消化物の濃度は、約2g/kg~約10g/kgの間である、実施形態64に記載の組成物。
66.前記組成物中の動物組織消化物の濃度は、約5g/kgである、実施形態65に記載の組成物。
67.前記組成物中の酵母抽出物の濃度は、約0.1g/kg~約50g/kgの間である、実施形態46~66のいずれか1つに記載の組成物。
68.前記組成物中の酵母抽出物の濃度は、約1g/kg~約20g/kgの間である、実施形態67に記載の組成物。
69.前記組成物中の酵母抽出物の濃度は、約2g/kg~約10g/kgの間である、実施形態68に記載の組成物。
70.前記組成物中の酵母抽出物の濃度は、約5g/kgである、実施形態69に記載の組成物。
71.前記組成物中のデキストロースの濃度は、約0.1g/kg~約50g/kgの間である、実施形態46~70のいずれか1つに記載の組成物。
72.前記組成物中のデキストロースの濃度は、約1g/kg~約20g/kgの間である、実施形態71に記載の組成物。
73.前記組成物中のデキストロースの濃度は、約2g/kg~約10g/kgの間である、実施形態72に記載の組成物。
74.前記組成物中のデキストロースの濃度は、5.8g/kgである、実施形態73に記載の組成物。
75.前記組成物は、0.1mmol/(pH単位)~100mmol/pHの緩衝能を提供するのに十分なリン酸バッファーの量を含んでなる、実施形態46~74のいずれか1つに記載の組成物。
76.前記組成物は、水性媒体への溶解時に1mmol/(pH単位)~50mmol/(pH単位)の緩衝能を提供するのに十分なリン酸バッファーの量を含んでなる、実施形態75に記載の組成物。
77.前記組成物は、水性媒体への溶解時に2mmol/(pH単位)~20mmol/(pH単位)の緩衝能を提供するのに十分なリン酸バッファーの量を含んでなる、実施形態76に記載の組成物。
78.前記組成物は、水性媒体への溶解時に3mmol/(pH単位)~10mmol/(pH単位)の緩衝能を提供するのに十分なリン酸バッファーの量を含んでなる、実施形態77に記載の組成物。
79.前記組成物中のヘミンの濃度は、約0.01g/kgである、実施形態46~78のいずれか1つに記載の組成物。
80.前記組成物中のL-シスチンの濃度は、約0.01g/kg~約0.5g/kgの間である、実施形態46~79のいずれか1つに記載の組成物。
81.前記組成物中のL-シスチンの濃度は、約0.4g/kgである、実施形態80に記載の組成物。
82.界面活性剤をさらに含んでなる、実施形態46~81のいずれか1つに記載の組成物。
83.前記界面活性剤はポリソルベートである、実施形態82に記載の組成物。
84.前記組成物は、約0.01g/kg~約5g/kgの間の前記界面活性剤を含んでなる、実施形態83に記載の組成物。
85.前記組成物は、約0.1g/kg~約2g/kgの間の前記界面活性剤を含んでなる、実施形態84に記載の組成物。
86.前記組成物は、約0.1g/kg~約1g/kgの間の前記界面活性剤を含んでなる、実施形態85に記載の組成物。
87.前記組成物は、約0.5g/kgの前記界面活性剤を含んでなる、実施形態86に記載の組成物。
88.ゲル化剤をさらに含んでなる、実施形態46~87のいずれか1つに記載の組成物。
89.前記ゲル化剤は、寒天、ジェラン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、グアーガム、ゼラチン、アガロース、ポリアクリルアミド、およびリゾビウム属種(CNCM番号:I-1809)によって生産された多糖からなる群から選択される、実施形態88に記載の組成物。
90.前記ゲル化剤は寒天である、実施形態89に記載の組成物。
91.前記ゲル化剤は、リゾビウム属種によって生産された多糖である、実施形態90に記載の組成物。
92.前記組成物中の前記ゲル化剤の濃度は、約5g/kg~約25g/kgの間である、実施形態90または91に記載の組成物。.
93.前記組成物中の前記ゲル化剤の濃度は、約13.5g/kgである、実施形態92に記載の組成物。
94.前記ゲル化剤はジェランである、実施形態93に記載の組成物。
95.前記組成物中のジェランの濃度は約1.0g/kg~約13g/kgの間である、実施形態94に記載の組成物。
96.前記組成物中のジェランの濃度は約6.8g/kgである、実施形態95に記載の組成物。
97.前記ゲル化剤はキサンタンガムまたはアルギン酸ナトリウムである、実施形態89に記載の組成物。
98.前記組成物中の前記ゲル化剤の濃度は、約3.4g/kg~約17g/kgの間である、実施形態97に記載の組成物。
99.前記組成物中の前記ゲル化剤の濃度は、約9g/kgである、実施形態98に記載の組成物。
100.前記ゲル化剤はポリアクリルアミドである、実施形態89に記載の組成物。
101.前記組成物中のポリアクリルアミドの濃度は約50g/kg~約200g/kgの間である、実施形態100に記載の組成物。
102.前記組成物中のポリアクリルアミドの濃度は約150g/kgである、実施形態101に記載の組成物。
103.前記ゲル化剤はグアーガムである、実施形態89に記載の組成物。
104.前記組成物中のグアーガムの濃度は約10g/kg~約40g/kgの間である、実施形態103に記載の組成物。
105.前記組成物中のグアーガムの濃度は約21g/kgである、実施形態104に記載の組成物。
106.前記組成物は液体である、実施形態46~87のいずれか1つに記載の組成物。107.前記組成物はゲルである、実施形態46~105のいずれか1つに記載の組成物。
108.前記組成物は、7.3±0.5のpHを有する、実施形態1および46~107のいずれか1つに記載の組成物。
109.前記組成物は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを含まない、実施形態1~108のいずれか1つに記載の組成物。
110.前記組成物は添加ナトリウムを含有しない、実施形態1~109のいずれか1つに記載の組成物。
111.細胞集団を培養する方法であって、前記細胞集団の増殖を支援する条件下で、実施形態46~110のいずれか1つに記載の組成物と前記細胞集団を接触させることを含む、方法。
112.前記細胞集団は、膜の第1の面に配置され、前記膜の第2の面は、実施形態46~110のいずれか1つに記載の組成物と接触している、実施形態111に記載の方法。113.前記膜は透過性である、実施形態112に記載の方法。
114.前記細胞集団内の1種以上の細胞は好気性生物である、実施形態111~113のいずれか1つに記載の方法。
115.前記細胞集団内の1種以上の細胞は嫌気性生物である、実施形態111~113のいずれか1つに記載の方法。
116.前記嫌気性生物は偏性嫌気性生物である、実施形態115に記載の方法。
117.前記細胞集団内の1種以上の細胞は、アシネトバクター属、アスペルギルス属、バチルス属、コリネバクテリウム属、デルマコッカス属、エシェリキア属、エクセロヒルム属、コクリア属、メチロバクテリウム属、ミクロコッカス属、パエニバチルス属、ペニシリウム属、プロピオニバクテリウム属、シュードモナス属、スタフィロコッカス属、ストレプトコッカス属、およびストレプトマイセス属からなる群から選択される属に属する、実施形態111~113のいずれか1つに記載の方法。
118.前記スタフィロコッカス属は黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、またはスタフィロコッカス・ホミニスである、実施形態117に記載の方法。
119.前記メチロバクテリウム属はメチロバクテリウム・ラジオトレランスである、実施形態117に記載の方法。
120.前記バチルス属はバチルス・クラウシイ、バチルス・イドリエンシス、バチルス・リケニフォルミス、またはバチルス・スブスチリス(Bacillus substilis)である、実施形態117に記載の方法。
121.前記バチルス属は酸化ストレスを受けている、実施形態117または120に記載の方法。
122.前記アスペルギルス属はアスペルギルス・ブラジリエンシスまたはアスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)である、実施形態117に記載の方法。
123.前記コリネバクテリウム属はコリネバクテリウム・ツバークロステアリクムまたはゼローシス菌である、実施形態117に記載の方法。
124.前記デルマコッカス属はデルマコッカス・ニシノミヤエンシスである、実施形態117に記載の方法。
125.前記エシェリキア属は大腸菌である、実施形態117に記載の方法。
126.前記コクリア属はコクリア・リゾフィラである、実施形態117に記載の方法。127.前記ミクロコッカス属はミクロコッカス・ルテウスである、実施形態117に記載の方法。
128.前記パエニバチルス属はパエニバチルス・グルカノリティカスである、実施形態117に記載の方法。
129.前記ペニシリウム属はペニシリウム・クリソゲナムまたはペニシリウム・ノタタムである、実施形態117に記載の方法。
130.前記シュードモナス属は緑膿菌である、実施形態117に記載の方法。
131.前記ストレプトコッカス属は化膿レンサ球菌である、実施形態117に記載の方法。
132.前記ストレプトマイセス属はストレプトマイセス・ハルステディイである、実施形態117に記載の方法。
133.前記アシネトバクター属はアシネトバクター・ルオフィイ(Acinetobacter lwofii)である、実施形態117に記載の方法。
134.前記プロピオニバクテリウム属はプロピオニバクテリウム・アクネスである、実施形態117に記載の方法。
135.前記エクセロヒルム属はエクセロヒルム・ロストラタムである、実施形態117に記載の方法。
136.前記細胞集団はサンプル由来である、実施形態111~135のいずれか1つに記載の方法。
137.前記サンプルは、多細胞生物から得られた流体または組織を含んでなる、実施形態136に記載の方法。
138.前記サンプルは動物の体液または組織を含んでなる、実施形態137に記載の方法、。
139.前記サンプルはヒト由来である、実施形態138に記載の方法。
140.前記サンプルは非ヒト脊椎動物由来である、実施形態138に記載の方法。
141.前記サンプルは、呼吸器、尿生殖器、生殖管、中枢神経系、尿、血液、皮膚、血漿、血清、唾液、創傷組織、創傷滲出液、生検組織、糞便、生殖管、および固形組織のサンプル、およびそれらの誘導体からなる群から選択される、実施形態137~140のいずれか1つに記載の方法。
142.前記サンプルは血液または尿サンプルである、実施形態141に記載の方法。
143.前記サンプルは植物由来である、実施形態137に記載の方法。
144.前記サンプルは、環境の空気、土壌、もしくは水、または環境に曝された表面、物体、もしくは生物をサンプリングすることによって得られる、実施形態136~143のいずれか1つに記載の方法。
145.前記サンプルは、ヒトまたは動物における局所使用または内部使用のための医薬品、化粧品、血液製剤、または他の製品の製造における原材料、完成品、または中間製品;食品、飲料、または栄養補給剤の製造における原材料、中間製品、または完成品;医療用または体外診断用機器の製造における原材料、中間製品、または完成品;化学製品;工業上の表面;器具類;ならびに機械類からなる群から選択される材料から得られる、実施形態136に記載の方法。
146.前記サンプルは、前記接触の前にそれを液化しかつ/またはホモジナイズするために処理される、実施形態136~145のいずれか1つに記載の方法。
147.前記サンプルは、前記接触の前に前記細胞集団以外の物質または物体を除去するために処理される、実施形態136~146のいずれか1つに記載の方法。
148.実施形態46~110のいずれか1つに記載の組成物を調製する方法であって、 i)精製水、カゼイン消化物、ダイズ消化物、リン酸バッファー、デキストロース、動物組織消化物、酵母抽出物、ヘミン、およびL-シスチンを含んでなる混合物をオートクレーブ処理すること;
ii)所望により、前記混合物を冷却すること;
iii)所望により、前記混合物に滅菌水酸化カリウムまたは塩化水素を加えることによりpHを7.3±0.5に調整すること;および
iv)前記混合物にヒツジ血液を加えること
を含む、方法。
149.vi)前記混合物の色が赤色から褐色に変化するまで前記混合物の温度を約65℃に保つことをさらに含んでなる、実施形態148に記載の方法。
150.工程ii)における前記冷却は室温に冷却することである、実施形態148または149に記載の方法。
151.工程ii)における前記冷却は約42℃に冷却することである、実施形態148または149に記載の方法。
152.工程i)の前記混合物はゲル化剤をさらに含んでなる、実施形態148~151のいずれか1つに記載の方法。
153.工程i)の前記混合物は界面活性剤をさらに含んでなる、実施形態148~152のいずれか1つに記載の方法。
154.工程i)の後に前記混合物に界面活性剤を加えることをさらに含んでなる、実施形態148~152のいずれか1つに記載の方法。
155.前記界面活性剤はポリソルベートである、実施形態153または154に記載の方法。
156.前記界面活性剤は、5%(w/v)の前記界面活性剤を含んでなる水溶液として提供される、実施形態153~155のいずれか1つに記載の方法。
157.調製工程が完了した後に前記組成物を保存容器に移すことをさらに含んでなる、実施形態148~156のいずれか1つに記載の方法。
158.前記保存容器はボトル、ジャー、バイアル、アンプル、またはカセットである、実施形態157に記載の方法。
159.前記移入後に前記保存容器をγ線照射処理することをさらに含んでなる、実施形態157または158に記載の方法。
160.前記γ線照射処理の線量は10kGyより高い、実施形態159に記載の方法。161.前記γ線照射処理の線量は約10kGy~約50kGyの間である、実施形態160に記載の方法。
162.前記γ線照射処理の線量は約10kGy~約40kGyの間である、実施形態161に記載の方法。
163.前記γ線照射処理の線量は約10kGy~約20kGyの間である、実施形態に記載の方法162。
164.前記γ線照射処理の線量は約12kGy~約19kGyの間である、実施形態163に記載の方法。
165.前記組成物は消毒剤の中和剤をさらに含んでなる、実施形態1~164のいずれかに記載の組成物または方法。
166.前記中和剤はヒスチジン、チオ硫酸塩、ポリソルベート80、および/またはレシチンである、実施形態165の組成物または方法。
【0079】
他の実施形態
本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、記載した組成物および本発明の使用方法の様々な改変および変形は当業者には明らかであろう。本発明を具体的な実施形態に関連して説明してきたが、特許請求する本発明はそのような具体的な実施形態に過度に限定されるべきではないことは理解されたい。実際に、当業者に自明な本発明を実施するための記載した形態の様々な改変は、本発明の範囲内であることが意図されている。
【0080】
他の実施形態は特許請求の範囲に含まれる。
カゼイン消化物、ダイズ消化物、動物組織消化物、酵母抽出物、デキストロース、リン酸バッファー、ヘミン、およびL-シスチンを含んでなり、増殖培地中のナトリウムの総量が50g/kg未満であり、添加された塩化ナトリウムを含有しない、微生物増殖培地。
前記微生物増殖培地の総質量から前記リン酸バッファーを除いて、前記微生物増殖培地は、約1g/kg~約500g/kgの間のカゼイン消化物を含んでなる、請求項2または3に記載の微生物増殖培地。