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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116302
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】流れで起動するガス供給
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/00 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
A61M16/00 315
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024094550
(22)【出願日】2024-06-11
(62)【分割の表示】P 2023507971の分割
【原出願日】2021-08-04
(31)【優先権主張番号】16/986,017
(32)【優先日】2020-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/199,172
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/350,921
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/393,316
(32)【優先日】2021-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】523039433
【氏名又は名称】エフォートレス オキシジェン,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100206911
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 岳彦
(74)【代理人】
【識別番号】100206656
【弁理士】
【氏名又は名称】林 修身
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】メテリッツ,ジョエル ビー.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】酸素又は他のガスをモニタして人間又は他の動物に送達することと、そのガスの送達を効果的に節約するためのデバイス及び方法を提供する。
【解決手段】流体送達システム100は、流体、例えば補助酸素を、吸息に応答して患者114に供給する。流体送達システムは、弁組立体を含み、弁組立体は、吸気の開始を、鼻若しくは口カニューレ、マスク、又はヘルメット内の空気流の温度変化を測定することにより感知することで起動される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体、好ましくは補助酸素、治療ガス、又は麻酔ガスの、人間又は動物への送達を制御するための流体送達システムであって、
前記流体の少なくとも1つの供給源と、
少なくとも1つの弁組立体であって、必要に応じて前記少なくとも1つの弁組立体を動作するように構成された電源を含み、前記流体の前記少なくとも1つの供給源に結合され、ここで前記人間又は動物の吸気中に前記少なくとも1つの供給源からの前記流体の流れを可能にするように構成された、少なくとも1つの弁組立体と、
前記少なくとも1つの弁組立体に流体連通する鼻若しくは口カニューレ、マスク、又はヘルメットを含む出口端部と、
前記人間又は動物の吸気に応答して流体送達を起動するための流量センサと、を備え、
ここで前記流量センサは、前記鼻若しくは口カニューレ、マスク、又はヘルメットと流体連通してその上流にあり、前記人間又は動物による吸気の開始を示す温度変化を、前記吸気の開始から約20ミリ秒未満内、好ましくは10~20ミリ秒内に検出するように構成された温度センサを含み、
ここで前記少なくとも1つの弁組立体は、流体流量の送達を傾斜させて、前記人間又は動物の呼吸パターンと調和させるように構成される、
流体送達システム。
【請求項2】
前記流量センサは、前記鼻カニューレ若しくは口カニューレ、マスク、又はヘルメットの内部に、あるいは隣接して配置されるか、前記鼻カニューレ、マスク、ヘルメット、又は口カニューレ、又は互いに結合された鼻及び口カニューレと前記流体の前記少なくとも1つの供給源とを接続するように適合されたチューブ内に配置される、請求項1に記載の流体送達システム。
【請求項3】
前記流量センサからの信号に基づいて前記少なくとも1つの弁組立体を制御するための電子回路であって、好ましくは、前記少なくとも1つの弁組立体を介して前記流体の放出を作動するためのトリガ機構を含む電子回路を更に備える、請求項1に記載の流体送達システム。
【請求項4】
前記センサが、熱センサ、好ましくはサーミスタ、又はMEMS熱流量センサ、好ましくはMEMS熱質量流量センサ、MEMSピエゾ抵抗流量センサ、若しくはMEMS超音波トランジット流量センサを含む、請求項1に記載の流体送達システム。
【請求項5】
前記サーミスタを加熱するように構成されたドライバ、あるいは前記流量センサ又は前記流量センサの上流の前記流体を加熱するように構成されたヒータであって、それぞれ周囲温度より高く、好ましくは周囲温度より10~20℃高く加熱するドライバあるいはヒータを更に備える、請求項4に記載の流体送達システム。
【請求項6】
前記温度センサは、前記吸気の開始と呼息の開始を温度の方向変化によって検出するように構成され、前記システムは、必要に応じて、前記温度センサ、又は2つのMEMS熱流量センサ若しくは2つのMEMS熱質量流量センサの上流及び任意に下流に配置されたヒータと、前記2つのMEMS熱流量センサ若しくは前記2つのMEMS熱質量流量センサの間に配置されたヒータとを含む、請求項4に記載の流体送達システム。
【請求項7】
前記流量センサは、ピエゾアクチュエータ弁によって前記流体の少なくとも1つの供給源から分離される、請求項1に記載の流体送達システム。
【請求項8】
流体供給から人間又は動物に送達される流体、好ましくは補助酸素、治療ガス、又は麻酔ガスを節約するための装置であって、
前記流体供給と鼻カニューレ若しくは口カニューレ、マスク、又はヘルメットとの間に接続された流体節約装置コントローラであって、少なくとも1つの弁を含み、必要に応じて、前記流体を前記鼻若しくは口カニューレ、マスク、又はヘルメットに送達するために選択的に起動される前記少なくとも1つの弁を動作するように構成された電源を含む、流体節約装置コントローラと、
人間又は動物による吸気を感知するように構成された流量センサと、
前記節約装置コントローラを作動するために前記流量センサと通信するトリガ機構であって、ここで前記流量センサは前記鼻若しくは口カニューレ、マスク、又はヘルメットと流体連通してその上流にあり、前記人間又は動物による前記吸気の開始を示す温度変化を、前記吸気の開始から約20ミリ秒未満内、好ましくは10~20ミリ秒内に検出するように構成された温度センサを含み、ここで前記少なくとも1つの弁は必要に応じて、流体流量の送達を傾斜させて、前記人間又は動物の呼吸パターンと調和させるように構成される、トリガ機構と、
を備える、装置。
【請求項9】
前記流量センサと前記トリガ機構は互いに離れており、前記流量センサと前記トリガ機構は有線又は無線のいずれかで通信し、必要に応じて、前記少なくとも1つの弁を前記流量センサからの信号に基づき制御するための電気回路を更に備える、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記センサが、熱センサ、好ましくはサーミスタ、又はMEMS熱流量センサ、好ましくはMEMS熱質量流量センサ、MEMSピエゾ抵抗流量センサ、若しくはMEMS超音波トランジット流量センサを含む、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
周囲温度より高く、前記サーミスタを加熱するように構成されたドライバ、あるいは前記流量センサ又は前記流量センサの上流の前記流体を加熱するように構成されたヒータを更に備える、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記温度センサは、前記吸気の開始と前記呼息の開始を温度の方向変化によって検出するように構成され、前記システムは、必要に応じて、前記温度センサ、又は2つのMEMS熱流量センサ若しくは2つのMEMS熱質量流量センサの上流及び任意に下流に配置されたヒータと、前記2つのMEMS熱流量センサ若しくは前記2つのMEMS熱質量流量センサの間に配置されたヒータとを含む、請求項8に記載の装置。
【請求項13】
前記流量センサは、ピエゾアクチュエータ弁によって前記流体供給から分離される、請求項8に記載の装置。
【請求項14】
流体供給源から患者への流体、好ましくは補助酸素、治療ガス、又は麻酔ガスの送達を節約するための方法であって、
前記流体供給源と、前記患者が装着する鼻若しくは口鼻カニューレ、マスク、又はヘルメットとに連通する弁を提供する段階と、
前記鼻若しくは口カニューレ、マスク、又はヘルメットと流体連通して上流にある流量センサを用いて、前記鼻若しくは口カニューレ、マスク、又はヘルメットを通る流体の温度変化を、吸気の開始から約20ミリ秒未満以内、好ましくは10~20ミリ秒内に検出することによって、前記吸気の開始を感知する段階と、
前記感知された吸気の開始に応答して、前記弁を起動し、前記流体を前記流体供給源から放出し、前記鼻若しくは口カニューレ、マスク、又はヘルメットを介して前記患者に送達する段階であって、ここで前記弁は必要に応じて、流体流量の送達を傾斜させて、前記人間又は動物の呼吸パターンと調和させるように構成され、必要に応じて前記流量センサを、吸気の開始を感知しつつ、前記流体供給源から分離する段階を含む、段階と、
を含む、方法。
【請求項15】
前記センサが、熱センサ、好ましくはサーミスタ、又はMEMS熱流量センサ、好ましくはMEMS熱質量流量センサ、又はMEMSピエゾ抵抗流量センサ、又はMEMS超音波流量センサを含み、必要に応じて前記流量センサ又は前記流量センサの上流の前記流体を周囲温度より高く加熱することを更に含み、
前記流量センサは、前記吸気の開始と呼息の開始を温度の方向変化によって検出するように構成された温度センサを含み、必要に応じて前記流量センサの上流及び/下流の前記流体の流れを加熱することを含む、
請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、酸素又は他のガスをモニタして人間又は他の動物に送達することと、そのガスの送達を効果的に節約するためのデバイス及び方法に関する。本開示は、人間又は動物の患者への補助酸素の送達に特に有用であり、そのような有用性に関連して説明されるが、他の有用性も企図される。
【背景技術】
【0002】
今日の米国では、150万人を優に超える人間の患者が、年間20億ドルを超えると考えられる費用で酸素補充療法を受けている。更に、COVID-19による急性症例により、補助酸素の需要が激化し、一部の病院では酸素供給が不足するほどになっている。
【0003】
長期の酸素補充療法(LTOT)を受けている患者の大部分は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に起因する慢性低酸素血症に苦しんでいる。現在では、この病状に対して治療法がない。しかし、慢性低酸素血症の有害な影響は、長期の酸素療法(LTOT)の投与によって緩和され得る。低流量の酸素、通常、2~3lpm(リットル毎分)の酸素の鼻カニューレからの連続的な吸息は、患者が呼吸する酸素の濃度を高める。1lpmの流量毎に、全体的な吸息濃度は3~4%上昇すると推定される。酸素濃度の上昇は、酸素の吸収において患者の肺の不十分な機能を補償する。
【0004】
一般的に、患者が慢性低酸素血症と診断されると、酸素は、診療室での20分の滴定試験に基づき、一定の流量で処方される。試験の間に、患者の血中酸素飽和度は、侵襲性の血液ガス分析器、又は例えばパルスオキシメータなどの非侵襲性のデバイスを用いて測定される。血中飽和度(SpO)を測定する間、患者にはトレッドミル上で歩行することが求められ、彼又は彼女が運動中に必要とする補助酸素を測定し得る。この短い試験に基づき、一定の流量の補助酸素が処方される。患者は、運動の間、例えば階段を上がる間、睡眠の間、又は息切れを感じる場合に、補助酸素の流量を増加させるように勧告され得る。患者は、酸素補充療法の妥当性を、睡眠中を含む全ての活動中に患者の酸素飽和度が90%以上を維持することを目標として、確認する必要がある。一部の患者は、1日24時間、呼吸のために補助酸素を処方される場合があり、又は歩行中にのみ補助酸素を必要とする場合があり、又は、睡眠時のみ酸素補充療法を必要としてもよい。目覚めている時間中にLTOTを必要とする患者の中には、睡眠中には、より高い流量が必要となることが多い。患者が睡眠している間に、毎分1リットルずつ流量を増やすことが一般的である。
【0005】
患者が、安静にしている間でも補助酸素を呼吸する必要がある場合、彼又は彼女には据え付け酸素発生ユニットが彼らの自宅に与えられ、それは例えば93%の酸素を最大で毎分5リットル生成するように設定され得る。一般的に、これらのユニットは、今日では、処方されたリットル毎分の流量に手動で設定される。患者が歩行中に補助酸素を必要とする場合、彼又は彼女は、通常、小型の高圧酸素ボンベ、又は小型の充填式液体酸素デュワを携行する。小型の携帯式酸素発生器もまた利用可能であり、それは最大で毎分3リットルの連続酸素を生成し、又はより高い流量でパルス化された酸素を送達し得る。これらの携帯式酸素送達システムの全てには、欠点がある。携帯式濃縮器は、通常、嵩張り、ノイズが多く、バッテリ寿命が比較的に短い。小型の高圧酸素ボンベは容量が制限され、特により小型のものがそうであるが、バッテリを必要とせず、又は濃縮器によるその種類のノイズを生じない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第9,707,366号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「Long-term supplemental oxygen therapy」Up-To-Date,2013年1月18日。Brian L Tiep,MD Rick Carter,PhD,MBA
【非特許文献2】Respiratory Care.2003年2月、48巻2号
【非特許文献3】Critical Comparisons of the Clinical Performance of Oxygen-conserving Devices」と題する、Am.J.Respir.Crit.Care Med.2010年5月15日、181(10)、頁1061-1071
【非特許文献4】オンラインで刊行、2010年2月4日、doi:10.1164/rccm.200910-1638OC PMCID、PMC2874449
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
酸素を移動用の小型のボンベ及びデュワへ供給する費用がかかるため、様々な酸素節約装置が酸素の流れを節約するために開発されてきた。これらの先行技術の酸素節約装置は、患者の吸息の開始時に、酸素の短いパルスを送達するのみである。呼息中、又は吸息の遅い期間に酸素を送達しないことによって、患者の酸素飽和度の増加には影響を及ぼさないであろう酸素が節約される。現在、空気式及び電子式の両方の酸素節約装置が存在しており、それらは連続的な酸素流量の送達に比較して2:1から7:1の比率で酸素の節約を達成することを主張する。このようなより高い節約率は電子デバイスによって達成され、それらは呼吸をスキップするようにプログラムされ、その結果、酸素パルスは1回おきの呼吸の際でのみ送達される。しかし、電子デバイスは全ての歩行中の患者に用いることができるというわけではなく、それは、このような高い節約率が、実際には、特に酸素利用が増加する期間、例えば活発に歩く、又は階段を上る間の、患者の酸素飽和度の不足を生じる場合があるためである。
【0009】
更に、現在利用可能な節約装置は鼻腔空気圧力の低下を測定するが、これは多くの患者にとっては、様々な状況下、例えば、極めて呼吸機能が低下している、ほぼ口で呼吸している、歩きながら話している、活発に歩くか勢いよく話をしている、又は睡眠中を含めて、酸素の放出を起動させるのに不十分である。これらの移動式のデバイスの始動において、患者は鼻呼吸に集中してデバイスの起動を補助するように「教えられる」。多くの場合、患者は、彼又は彼女の活動を止めて、彼ら自身の鼻呼吸に集中するか、又は鼻カニューレプローブを彼ら自身の口に付けて、より有効にデバイスを起動させる必要がある。
【0010】
電子酸素節約装置における吸息の開始の圧力感知は、現在、2つの方法のうちの一方で実行される。
1.一部の先行技術の設計はデュアル管腔カニューレを採用し、それらの管腔の一方は圧力感知の専用であり、他方は酸素の供給専用である。この設計は、吸息の開始に対してより敏感であることが意図されるが、鼻腔の一方にのみ酸素を送達可能であるという欠点がある。
2.他の設計は、単一管腔カニューレを用い、それは通常、2つの鼻プロングの下方のT字形部分に接続された圧力センサを有する。吸息に関連する全体的な圧力の低下は、両方の鼻腔から感知され、かつ酸素は両方の鼻腔に送達される。
【0011】
両方の設計は、圧力感知に固有のヒステリシスによる酸素の流れの起動において遅延に悩まされる。しかし、酸素の流れの起動に際してのわずかな遅れでさえ、患者は容易に知覚する。圧力センサを使用する現在の設計の別の欠点は、患者の一方の鼻腔が閉塞した場合、酸素の検出と送達が妨げられることである。
【0012】
現在の酸素発生システムに伴う更に別の欠点は、患者の理想的な酸素の必要性が、様々な運動の結果としての短期間、及び健康状態の改善若しくは悪化の結果としての長期間の両方において、時間と共に変化するという事実である。医師が患者に対して一定の流量の酸素を処方する場合、医師は、患者の血液飽和度が88~89%の酸素飽和度を下回らないことを確実にするよう、主として懸念する。医師は、患者が、患者のいかなる活動中にも、90%未満の酸素の不飽和を経験することを望まない。高濃度(50パーセントを超える)の酸素が長期間にわたって投与された患者における潜在的な毒性に関する理論的な懸念(例えば、吸収性無気肺、増加した酸化性ストレス、及び炎症)が存在するが、臨床経験では、LTOTの設定におけるこれらの懸念に対してほとんどサポートを提示していない(非特許文献1)。
【0013】
現在の酸素治療計画は、Fussellらの研究により報告されるように、エラーを生じやすい(非特許文献2)。その研究では、COPDに苦しむ20人の患者の血液飽和度レベルは、パルスオキシメトリを用いて連続的にモニタされて、各患者の酸素処方が彼又は彼女の飽和度を適切に維持しているかどうかを確認した。その研究の結論は、COPD患者のLTOTスクリーニング中、従来の酸素投与評価方法と連続的な移動式のオキシメトリとの間の相関は低いというものであった。最近では非特許文献3において、その全てが圧力感知に基づく節約装置の現在のコレクションは、それらの有効性の主張を達成できないとして批評された。著者らは、「各デバイスは鼻及び口呼吸の間に作動されたが、技術的な期待に応じて一貫して機能したものはなかった」と主張する。
【0014】
患者が、節約装置又は一定の酸素流量を用いている間に低酸素飽和度の結果を得るとき、自然な反応は、単純に流量を増加させることであり、実際には、低酸素飽和度の結果は、吸息の開始時にできるだけ早く補助酸素を起動する際での遅延によって引き起こされる。増加された鼻腔流量はますます費用がかかるようになり、一般的に十分に許容されないものである。据え付けの酸素濃縮器を自宅で用いる一部のCOPD患者は、経済面で悪化しており、酸素濃縮器を連続的に作動させるための電力コストについて懸念している。多くの場合、これは、電気代を節約するために患者が濃縮器のスイッチを入れず、医師によって処方された療法に従わないことを選択するという順守の問題につながる。更に、これらの酸素濃縮器は、かなりの量の熱を部屋に放出するため、例えば部屋を冷やすためのエネルギーコストを更に追加する可能性がある。現在の酸素濃縮器の設計は、典型的には、例えば毎分5リットルの最大流量を生成する。患者の安静時の処方が毎分2リットルである場合、患者は彼らのカニューレを介した流量を必要な流量に設定することができ、生成された過剰な酸素は単純に鼻孔の中に押し込まれ、口呼吸の間に無駄になる場合がある。多くの酸素療法患者は、活動中、会話中、昼寝中、又は睡眠中の彼らのかなりの時間を、許容できない血液酸素飽和度レベルで過ごしている場合がある。
【0015】
現在の圧力ベースの酸素節約ユニットは、患者が、会話中、食事中などのより活発な活動中に、及び/又は睡眠中に、口呼吸をしている場合、彼らの主張に応えられない。多くの場合、移動式の酸素療法の患者は、立ち止まって鼻呼吸に集中し、又は鼻カニューレのプロングを彼らの口に付けて吸引し、酸素の放出を起動させる必要がある。酸素の必要性が満たされていない場合、簡単な解決策は鼻腔流量を増加させることであり、それによって鼻腔の不快な乾燥、時には鼻粘膜出血という問題を増加させる。更に、患者は、食事中には彼らの酸素送達システムを止めることが多い。
【0016】
私の以前の特許文献1では、患者への酸素の送達を制御するための改良されたシステム、方法、及び装置を説明しており、それは弁組立体を具備する鼻カニューレ又は組み合わせられた鼻及び口カニューレと、患者の鼻側空胴を介した「流れの漏れ」を、彼らが呼吸している間に感知する流量センサである。この「隠れた信号」は、鼻腔及び/又は口腔の流れパターンの同時モニタリングと組み合わせられ、その両方が酸素の浪費、又は患者への不適切な酸素送達につながる不確実な、又は誤った方向に送られる酸素のない、オンデマンドの酸素送達システムを可能にする。より具体的には、私の以前の特許文献1は、流体送達システムを説明し、それは流体の少なくとも1つの供給源と、流体の少なくとも1つの供給源に結合された少なくとも1つの弁組立体であって、患者の吸気中に流体の少なくとも1つの供給源からの流れを可能にするように構成された少なくとも1つの弁組立体と、少なくとも1つの弁組立体に流体連通する鼻又は口カニューレを含む出口端部と、患者の吸気に応答して流体送達を起動するための鼻腔流量センサとを具備している。流体送達システムは、少なくとも1つの弁組立体を動作するように構成された電源を更に含む。鼻腔流量センサの位置は、鼻カニューレ若しくは口カニューレの内部又はそれに隣接して、流体供給源に隣接して、あるいは鼻カニューレ若しくは口カニューレと流体の少なくとも1つの供給源との間の空気管内であってもよい。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本開示は、私の以前の特許文献1の方法及び装置を、改良されたトリガ機構を設けることによって改善し、トリガ機構は弁を起動して、流体の供給源からの流体を鼻又は口カニューレを介して患者に送達するために放出する。この方法によって送達される流体は、酸素を含み得る。特に、1つの態様における本開示は、ヒータ(複数可)と温度センサ(複数可)を使用する流量センサを提供し、流体の流れによって誘発される対流冷却により生じる温度差を測定することによって吸気の開始を検出し、吸気の開始から約20ミリ秒未満内、通常は10~20ミリ秒内に流れを起動し、これは、現在利用可能な圧力センサが提供できるよりもはるかに優れている。
【0018】
また、高感度空気流量センサの使用を可能にするために、センサを高圧酸素の流れから保護するために、本開示は、好ましくは、切換弁を介して空気流量センサを酸素流ラインから分離する。
【0019】
本開示の1つの態様では、人間又は動物への流体の送達を制御するための流体送達システムを提供し、それはその流体の少なくとも1つの供給源と、流体の少なくとも1つの供給源に結合された少なくとも1つの弁組立体であって、人間又は動物の吸気中に少なくとも1つの供給源からの流体の流れを可能にするように構成された少なくとも1つの弁組立体と、少なくとも1つの弁組立体に流体連通する鼻又は口カニューレを含む出口端部と、人間又は動物の吸気に応答して流体送達を起動するための流量センサとを具備しており、流量センサは、鼻又は口カニューレと流体連通してその上流にあり、人間又は動物による吸気の開始を示す温度変化を、吸気の開始から約20ミリ秒未満内、通常は10~20ミリ秒内に検出するように構成されたサーミスタなどの温度センサを含む。システムはまた、少なくとも1つの弁組立体を動作するように構成された電源を含み得る。
【0020】
本開示の別の態様では、流量センサは、鼻カニューレ若しくは口カニューレの内部に、又は隣接して配置されるか、あるいは鼻カニューレ若しくは口カニューレと流体の少なくとも1つの供給源とを接続するチューブ内に配置される。鼻カニューレ及び口カニューレは、互いに結合され得る。好ましくは、送達される流体は、補助酸素、治療ガス、又は麻酔ガスを含むことが望ましい。
【0021】
1つの実施形態では、流体送達システムは、流量センサからの信号に基づいて少なくとも1つの弁組立体を制御するための電子回路を含む。好ましくは、電子回路は、少なくとも1つの弁組立体を介して流体の放出を作動するためのトリガ機構を含む。
【0022】
流体送達システムはまた、流量センサ又は流量センサの上流の流体を周囲温度より高く加熱するように構成されたヒータを含んでもよい。
【0023】
好ましい実施形態では、温度センサは、吸気の開始と呼息の開始を温度の方向変化によって検出するように構成され、システムは、必要に応じて、温度センサの上流及び任意に下流に配置されたヒータを含む。
【0024】
別の実施形態では、流量センサは、ピエゾアクチュエータ弁によって流体の少なくとも1つの供給源から分離される。
【0025】
本開示はまた、流体供給から人間又は動物に送達される流体を節約するための装置を提供し、それは流体供給と鼻カニューレ又は口カニューレとの間に接続された流体節約装置コントローラであって、流体を鼻カニューレ又は口カニューレに送達するために選択的に起動される少なくとも1つの弁を具備する流体節約装置コントローラと、人間又は動物による吸気を感知するように構成された流量センサと、節約装置コントローラを作動するためにセンサと通信するトリガ機構とを含み、ここで流量センサは鼻又は口カニューレと流体連通し、人間又は動物による吸気の開始を示す温度変化を、吸気の開始から約20ミリ秒未満内、通常は10~20ミリ秒内に検出するように構成されたサーミスタなどの温度センサを含む。
【0026】
本開示の1つの実施形態では、流量センサとトリガ機構は互いに離れており、流量センサとトリガ機構は有線又は無線のいずれかで通信する。
【0027】
本開示の好ましい実施形態では、流量センサとトリガ機構は互いに離れており、流量センサとトリガ機構は有線又は無線のいずれかで通信する。
【0028】
本開示の好ましい実施形態では、少なくとも1つの弁は少なくとも1つの弁を含み、流体供給は、好ましくは、酸素、治療ガス、又は麻酔ガスを含む。
【0029】
1つの実施形態では、装置は、流量センサからの信号に基づいて少なくとも1つの弁を制御するための電気回路、及び/又は、流量センサ若しくは流量センサの上流の流体を周囲温度より高く加熱するように構成されたヒータを更に含む。
【0030】
1つの実施形態では、温度センサは、吸気の開始と呼息の開始を温度の方向変化によって検出するように構成され、システムは、必要に応じて、温度センサの上流及び任意に下流に配置されたヒータを含む。
【0031】
別の実施形態では、流量センサは、ピエゾアクチュエータ弁によって流体供給から分離される。
【0032】
本開示はまた、流体供給源から患者への流体の送達を節約するための方法を提供し、流体供給源と、患者が装着する鼻又は口鼻カニューレとに連通する弁を提供する段階と、鼻又は口カニューレと連通するサーミスタなどの温度センサを含む流量センサを用いて、鼻又は口カニューレを通る空気流の温度の変化を吸気の開始から約15~20ミリ秒内に検出することによって、吸気の開始を感知する段階と、感知された吸気の開始に応答して、弁を起動し、流体を流体供給源から放出し、鼻又は口鼻カニューレを介して患者に送達する段階を含み、好ましくは、流体は酸素、麻酔ガスの治療ガスを含む。
【0033】
1つの実施形態では、方法は、流量センサ又は流量センサの上流の流体を周囲温度より高く加熱することを含む。
【0034】
別の実施形態では、流量センサは、吸気の開始と呼息の開始を温度の方向変化によって検出するように構成された温度センサを含む。
【0035】
更に別の実施形態では、方法は、流体供給源から流量センサを分離する一方で、吸気の開始を感知する段階を含む。
【0036】
本開示はまた、人間又は動物への流体の送達を制御するための流体送達システムを提供し、それは、
少なくとも1つのその流体の供給源と、
流体の少なくとも1つの供給源に結合された少なくとも1つの弁組立体であって、人間又は動物の吸気中に少なくとも1つの供給源からの流体の流れを可能にするように構成された少なくとも1つの弁組立体と、
少なくとも1つの弁組立体に流体連通する鼻若しくは口カニューレ、マスク、又はヘルメットを含む出口端部と、
人間又は動物の吸気に応答して流体送達を起動するための流量センサと、を具備しており、
ここで流量センサは、鼻若しくは口カニューレ、マスク、又はヘルメットと流体連通してその上流にあり、人間又は動物による吸気の開始を示す温度変化を、吸気の開始から約20ミリ秒未満内、好ましくは10~20ミリ秒内に検出するように構成された温度センサを含み、
ここで少なくとも1つの弁組立体は、流体流量の送達を傾斜させて、人間又は動物の呼吸パターンと調和させるように構成される。
【0037】
1つの実施形態では、流体送達システムは、少なくとも1つの弁組立体を動作するように構成された電源を含む。
【0038】
別の実施形態では、流量センサは、鼻カニューレ若しくは口カニューレ、マスク、又はヘルメットの内部に、あるいは隣接して配置されるか、鼻カニューレ、マスク、又はヘルメット、又は口カニューレと流体の少なくとも1つの供給源とを接続するチューブ内に配置される。
【0039】
更に別の実施形態では、鼻カニューレと口カニューレが互いに結合される。
【0040】
更に別の実施形態では、送達される流体は、補助酸素、治療ガス、又は麻酔ガスを含む。
【0041】
第4の実施形態では、流体送達システムは、流量センサからの信号に基づいて少なくとも1つの弁組立体を制御するための電子回路を含み、電子回路は、好ましくは、少なくとも1つの弁組立体を介して流体の放出を作動するためのトリガ機構を含む。
【0042】
特に好ましい実施形態では、少なくとも1つの弁組立体は、流体の流量を、起動から15~40%、好ましくは20~35%、より好ましくは約33%の立ち上がり流量から、人間又は動物の吸気量での100%の流量まで傾斜させるように構成される。
【0043】
別の実施形態では、流体送達システムは、流量センサ又は流量センサの上流の流体を周囲温度より高く加熱するように構成されたヒータを更に含み、所望により、温度センサは、吸気の開始と呼息の開始を温度の方向変化によって検出するように構成され、ここでシステムは、必要に応じて、温度センサの上流及び任意に下流に配置されたヒータを含む。
【0044】
別の実施形態では、流量センサは、ピエゾアクチュエータ弁によって流体の少なくとも1つの供給源から分離される。
【0045】
本開示はまた、流体供給から人間又は動物に送達される流体を節約するための装置を提供し、それは、
流体供給と鼻カニューレ若しくは口カニューレ、マスク、又はヘルメットとの間に接続された流体節約装置コントローラであって、流体を鼻若しくは口カニューレ、マスク、又はヘルメットに送達するために選択的に起動される少なくとも1つの弁を具備する流体節約装置コントローラと、
人間又は動物による吸気を感知するように構成された流量センサと、
節約装置コントローラを作動するために流量センサと通信するトリガ機構であって、ここで流量センサは鼻若しくは口カニューレ、マスク、又はヘルメットと流体連通し、人間又は動物による吸気の開始を示す温度変化を、吸気の開始から約20ミリ秒未満内、好ましくは10~20ミリ秒内に検出するように構成された温度センサを含み、ここで少なくとも1つの弁組立体は流体流量の送達を傾斜させて、人間又は動物の呼吸パターンと調和させるように構成される、トリガ機構とを含む。
【0046】
装置の1つの実施形態では、流量センサとトリガ機構は互いに離れており、流量センサとトリガ機構は有線又は無線のいずれかで通信する。
【0047】
装置の更なる実施形態では、流体供給は、酸素、治療ガス、又は麻酔ガスを含む。
【0048】
好ましい実施形態では、装置は、流量センサからの信号に基づいて少なくとも1つの弁を制御するための電気回路を更に含み、任意選択で、流量センサ又は流量センサの上流の流体を周囲温度より高く加熱するように構成されたヒータを更に含む。
【0049】
特に好ましい実施形態では、少なくとも1つの弁組立体は、流体の流量を、起動から15~40%、好ましくは20~35%、より好ましくは約33%の立ち上がり流量から、人間又は動物の吸気量での100%の流量まで傾斜させるように構成される。
【0050】
装置の更に別の実施形態では、温度センサは、吸気の開始と呼息の開始を温度の方向変化によって検出するように構成され、ここでシステムは、必要に応じて、温度センサの上流及び任意に下流に配置されたヒータを含む。
【0051】
更に別の装置では、流量センサは、ピエゾアクチュエータ弁によって流体供給から分離される。
【0052】
本開示はまた、流体供給源から患者への流体の送達を節約するための方法を提供し、それは、
流体供給源と患者が装着する鼻若しくは口鼻カニューレ、マスク、又はヘルメットと連通する弁を提供する段階と、
鼻若しくは口カニューレ、マスク、又はヘルメットと連通する流量センサを用いて、鼻若しくは口カニューレ、マスク、又はヘルメットを通る流体の温度の変化を、吸気の開始から約20ミリ秒未満内、好ましくは10~20ミリ秒内に検出することによって、吸気の開始を感知する段階と、
感知された吸気の開始に応答して、弁を起動し、流体を流体供給源から放出し、鼻若しくは口鼻カニューレ、マスク、又はヘルメットを介して患者に送達する段階であって、ここで弁組立体は流体流量の送達を傾斜させて、人間又は動物の呼吸パターンと調和させるように構成される段階と、を含む。
【0053】
方法の好ましい実施形態では、流体は酸素、麻酔ガスの治療ガスを含み、任意選択で、流量センサ又は流量センサの上流の流体を周囲温度より高く加熱することを更に含む。
【0054】
方法の別の実施形態では、流量センサは、吸気の開始及び呼息の開始を温度の方向変化によって検出するように構成された温度センサを含む。
【0055】
方法の更に別の実施形態では、流量センサを、吸気の開始を感知しつつ、流体供給源から分離する段階を含む。
【0056】
方法の更に別の実施形態では、弁組立体は、流体の流量を、起動から15~40%、好ましくは20~35%、より好ましくは約33%の立ち上がり流量から、人間又は動物の吸気量での100%の流量まで傾斜させるように構成される。
【0057】
本開示は、同様の参照指定子を用いて同様の要素を指定する図面と併せて解釈される以下の詳細な説明を読むことによって、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】本開示による、流体送達のための2つの異なるシステムのブロック図である。
図2】本開示による、流体送達のための2つの異なるシステムのブロック図である。
図3】本開示の好ましい実施形態による、遠隔センサ及び制御のブロック図である。
図4】本開示の好ましい実施形態による、起動アルゴリズムを概略的に示す。
図5】本開示のシステムによるガス流送達の開始を、圧力流量センサを使用する従来の先行技術システムと比較する表である。
図6】本開示のガス流送達のフローチャートである。
図7】本開示によるガス流送達を示すブロック流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本明細書で使用される「鼻カニューレ」は、2管腔鼻カニューレ及び鼻マスク又はピローマスクを含むことを意図する。また、「口カニューレ」は、フェイスマスク、呼吸用チューブ、マウスピースなどと、ダイバ及びハザードヘルメットなどを含むことを意図する。
【0060】
実施形態は、以下の説明において、同様の番号が同一又は同様の要素を表す図面を参照して説明される。本明細書を通じて「1つの実施形態」、「一実施形態」、「特定の実施形態」、又は同様の用語についての言及は、その実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたる「1つの実施形態において」、「一実施形態において」、及び同様の用語の出現は、必然的ではないが、全てが同じ実施形態に関連し得る。
【0061】
本開示の記載された特徴、構造、又は特性は、1つ以上の実施形態において、任意の適切な方法で組み合わせることができる。以下の説明では、本開示の実施形態の完全な理解を提示するため、多くの特定の詳細が列挙される。しかしながら、当業者は、本開示が、1つ以上の特定の詳細なしで、又は別の方法、構成要素、材料、その他と共に実施され得ることを認識するであろう。他の例では、周知の構造、材料、又は動作は、開示の態様を不明瞭にすることを回避するために、詳細には図示されず、又は説明されていない。
【0062】
本開示の流体送達システムは、人間又は動物に、患者の1回呼吸に基づいて、間欠的に補助酸素を供給する。この流体送達システムは、鼻腔又は口鼻腔の流れで起動する弁組立体を含んでおり、それは、患者の吸息に応答して開き、吸息段階中に閉じることで、そうでなければ吸息が終了する前に患者の「死腔」を満たすことで無駄になる酸素を節約する。すなわち、本開示は、吸気の開始を、鼻カニューレ又は口カニューレに、あるいはヘルメットの場合は供給チューブに配置された温度センサを通して感知し、調節弁を起動して、吸気の開始時、すなわち、吸気の開始から約15~20ミリ秒以下内に開放し、人間又は動物の1回呼吸と一致する時間、開いたままにする。
【0063】
鼻腔又は口腔の流量温度センサは、吸気の開始を約20ミリ秒未満内、通常は10~20ミリ秒内に感知するのに十分な感度であり、弁組立体に信号を送って開かせ、一定期間酸素の流れを許可する。吸気の開始後、約20ミリ秒内、通常は10~20ミリ秒内に開き、その後、限られた時間、開いたままにすることにより、真にオンデマンドな酸素送達システムを実現することが可能になり、それは不確実な又は誤った方向に送られる酸素がなく、その両方が酸素の浪費又は患者に対する不十分な酸素供給につながるためである。吸気の開始の流れ情報により、例えば、パルス調整された酸素又は連続した流れの酸素に伴う無駄が排除される。患者又はユーザは、呼吸の開始と酸素の送達との間に心地よい同調感を有し、酸素送達の知覚可能な遅延を取り除くことにより、酸素パルスを逃す恐れなく、自由に動き回り、自然に会話することができる。更に、節約装置の有効性は、入院患者、又は寝たきり患者において、中央液体供給からの信頼できるパルス酸素送達システムで利用され得る。
【0064】
更に、先行技術で説明されている圧力流量センサとは異なり、本開示による温度センサを使用した感知及び起動は、本質的に瞬間的であり、すなわち、吸息の開始から約20ミリ秒未満内、通常は10~20ミリ秒内である。したがって、基本的に、補助酸素の送達に遅延はない。また、酸素の無駄が、従来の圧力流量センサ検知器に比べてない。結果的に、補助酸素の流れは、基本的に吸息の開始とともにオンになり、患者の1回呼吸の立ち上がりに合わせて、及び/又は呼息の開始の検出により、一定期間オンのままになるように合わせられる。その結果、補助酸素は節約され、なぜなら、補助酸素は、患者が酸素を必要としないとき、つまり「死腔」を満たす(すなわち、ガス交換に関与しない吸息された空気量)間、又は呼息の間、供給されないためである。
【0065】
本明細書で使用する際、吸息は吸気と同義的に用いられ、呼息は呼気と同義的に用いられる。吸息は、外部環境から気道を通って肺の中に入る空気の動きである。吸息の間、胸部は拡張し、横隔膜は下方へ、又は尾側に収縮して、胸膜腔内の空間の拡大と胸胴内の負圧を生じる。この負圧は、主として鼻又は口から咽頭(喉)及び気管の内部への気流をもたらし、最終的に肺に入る。流量センサを温度センサの形態で用いることにより、吸気の開始の決定は基本的に瞬間的、つまり、吸気の開始から約20ミリ秒未満内、通常は10~20ミリ秒内であり、補助酸素を送達するため吸気において最も重要な位相を利用している。あらゆる塊状の、又はパルス化された酸素送達システムが、流量等価として設定されるが、塊状の量と連続的な流量にはより大きな一貫性及び等量性がある。連続的な流れに匹敵するとみなされる「パルス等価」という用語は、流れ節約調節器がどのように設定されるかを示す。連続的な流量は、毎分数リットルに設定される。
【0066】
パルスユニットは連続した酸素を出力しないため、それらは毎分当たりのリットル数として測定できない。代わりに、それらは個々のパルス(塊状)のサイズによって、つまりそのパルスが毎分、どの程度の頻度で送達され得るか、かつパルスが吸気(呼吸)サイクルにおいていつ送達されるかによって分類される。パルス化された酸素濃縮器を制限する可能性がある他の問題は、患者が毎分、ユニットで生成し得るよりも多く、呼吸をしようとする場合である。このことが発生すると、酸素のユーザは、より小さいパルス、より少ない酸素のパルスを得ることになり、又はパルスを全く得られなくなる。酸素のユーザが力を使い、著しく息を切らしている状態では、ユニットがユーザのニーズを満たせない可能性がある。本開示による鼻腔又は口腔流量温度センサを用いることで、連続的な酸素の流れと同等にまで近付けることができ、それは酸素が本質的に即座に(つまり、ユーザが空気を吸入し始めた後、吸息の開始から約20ミリ秒未満内、通常10~20ミリ秒の範囲内で)送達されるためである。前述のように、酸素の放出を起動させる圧力センサ方法における特有の遅延がないため、塊状の量を増加させて、送達の遅れを補う必要がない。
【0067】
また、本開示による吸息流の開始で起動するパルス酸素を用いることにより、吸気の開始を検出する際の感度が向上するため、ユーザは自分がどのように呼吸しているかについて考える必要はなく、患者が口呼吸をしているとき、又は話している間に、歩きながら話している間、若しくは食べている間であってさえも、トリガが流量センサを介して温度の低下による吸気の開始を検知する。ユーザの鼻孔が大きいか、又はユーザが椅子で居眠りしているか、眠っているかは、問題ではない。訓練を必要とせず、ユーザは、自分の鼻孔又は口内にカニューレを配置するのみで、基本的に同期している酸素の送達を感じる。前述のように、従来の圧力流で起動されるパルス酸素の送達には、送達される酸素の「噴き出し(puff)」に顕著な遅延があるが、本開示による温度低下を使用した吸気流の開始で起動される酸素送達は、本質的に知覚可能な遅延がなく、より自然な感覚を与える。それは、ユーザが吸息を始めた後ではなく、基本的にユーザが吸息しているときに酸素を放出する。吸息の開始を判断するために従来の胸部歪ゲージを用いる場合と比較しても、本開示の流量センサは、弁の開放を、何らかの胸部の運動が検出される前に起動した。この吸息の開始と酸素送達との間の改良された同期性は、より快適であり、より効果的で、かつ信頼性が高く、また別のタイプの節約ユニットが主張するだけであるものを実際に実行することで、患者のより良い順守を得る。
【0068】
本開示の更なる用途は、睡眠障害の診断分野におけるものである。多くの注目が、睡眠時無呼吸の診断を確認するために睡眠研究に向けられており、それは睡眠研究室及び家庭での両方の睡眠研究において診断されている。睡眠中の呼吸の感知及び裏付けは、吸気の流れをより正確に測定することによって改善され得る。したがって、パルス状の酸素送達を起動し得る同一の鼻腔流量温度センサはまた、診断的な評価の間に効率的に呼吸を測定するように適合され得る。睡眠時無呼吸又は周期的な呼吸があり、補助酸素のみを用いている患者は、パルス化された酸素送達を安全に使用し得る。このデバイスにより、C-PAP又はBi-PAPマシンを用いる患者が、吸気の間にのみ補助酸素を送達する、パルス化された酸素送達の効率の利益を活用できるようになり得る。これは、マスクへ延びるホースに単に酸素を追加するという現在の方法に対する改良であり、現在の方法は、内蔵型マスクの通気と、夜間に生じる不注意によるマスク漏れを考えると、極めて非効率的な酸素送達システムを提示している。
【0069】
本開示による吸気の開始で起動される酸素送達はまた、現在のところ毎分3リットルの連続流量に制限された移動中の患者を、その制限から解放し得る。携帯型濃縮器を用いて、睡眠中に毎分4~6+リットルのパルス速度を設定することは、全く信頼できない(非特許文献3、非特許文献4)。これらのパルス化された高流量デバイスは、睡眠中に患者に酸素を供給し得ると主張するが、大部分の医療提供者は、パルス化された高流量デバイスが、睡眠中の患者に充分な酸素を確実に送達するとは考えていない。
【0070】
本開示による吸気の開始で起動される酸素送達はまた、病院及びクリニックの中央液体酸素システムにおける「ピギーバック方式」に、送達時点で適合させることができ、現状では存在しない効率をもたらす。
【0071】
ここで図面の図1図3を参照すると、図1は、本開示の第1の例示的な実施形態による流体送達システム100の筐体の構成要素を示すブロック図である。特に、図1は、手動バイパス弁構成を有する流体送達システムを示す。
【0072】
システム100は、筐体120を含み、それは流体送達に使用される様々な構成要素を含むハウジング又は同様の構造であり得て、酸素(O2)の供給110が患者114に送達され得る。酸素供給110は、酸素タンク110A、病院又は他の医療施設からの配管酸素供給110B、あるいは酸素を供給するための別のデバイスを含んでもよい。筐体120内で、システム100は、圧力調節器122を含み、それは酸素供給110に接続可能であり、酸素がシステム100に導入される圧力を調節する。酸素供給110は、圧力調節器122のコネクタを使用してシステム100に取り外し可能に取り付けられ得る。酸素供給の圧力は、実質的に高くてもよく、例えば、場合によっては最大3,000PSIであり、圧力調節器122の出口側では、圧力を所望のPSI、一例では15PSIなどまで下げることができる。圧力調節器122から酸素を受け取るのは、手動バイパス弁124であり、それは患者114への酸素送達の手動制御を可能にする。特に、手動バイパス弁124により、ユーザは酸素送達を、第1の経路であって、パルス化された酸素送達が電子コントローラ126によって制御される、「パルスモード」として既知の第1の経路に沿うか、又は第2の経路であって、コントローラ126を実質的にバイパスし、酸素を患者114に直接又はほぼ直接送達する、「バイパスモード」として既知の第2の経路に沿うか、選択し得る。
【0073】
パルスモードの場合、すなわち、手動バイパス弁124が、患者に、コントローラ126によって制御されて酸素を送達するように配置されている場合、酸素は弁128に向けられ、弁128は3ポート圧電弁又は別のタイプであってもよい。弁128は、通電されていない状態である場合、そこを通る酸素の流れを遮断し、通電又は作動されると、弁ポートの1つ以上を開放して、そこを酸素が通って流れるのを可能にする。弁128への酸素の供給はまた、コントローラ126に接続された酸素圧力センサ130と流体連通して、酸素の圧力が感知され得る。弁128の出力は、患者114につながるシステム100の酸素出力132に接続される。図1に示すように、患者への酸素送達は、患者の鼻の近くに配置され得る鼻カニューレ143を備えた様々なチューブを含み得るが、他の送達システムもまた使用され得て、フェイスマスク、マウスピースなどが挙げられる。
【0074】
コントローラ126はまた、電子制御構成要素、例えば、マイクロコントローラ、回路、入力及び出力デバイス、又はシステム100の作動と使用を制御する他の構成要素などを含み、これについては、図3に関して詳細に説明する。概括的には、コントローラ126は、弁128、酸素圧力センサ130、インジケータ装置134、周囲空気供給136、及び電源138と連通する。周囲空気供給136は、筐体120内にポートを含み得て、周囲空気を取り入れて空気流センサ140により通過させる。空気流センサ140は、鼻カニューレ143と通信し、プロセッサ又はマイクロコントローラに周囲空気流の読み取り値を提供し、以下で説明するように、吸気の開始を感知する。周囲空気供給136の出力は、チューブ及びカニューレ、マスク、マウスピース又は他の送達構成要素を使用して、あるいは図2に示されるように周囲空気出口142及びデュアル管腔カニューレを介して、患者114に送達され得る。
【0075】
インジケータ装置134は、様々なタイプのインジケータ、一例では、視覚的インジケータを備えたキーパッドなどを含み得る。他のタイプのインジケータを使用してもよい。インジケータ装置134の視覚的インジケータは、スタンバイ、パルス制御、感度、バイパス又はパルス化された送達を含む動作用、電力レベル用、及び警報用の視覚的インジケータを含み得る。通常、インジケータ装置134は、筐体120に実質的に一体化され得るが、完全に又は部分的に別個の装置であってもよい。電源138は、1つ以上の異なる給電装置、例えば115/230VAC電源などのハードワイヤード装置、ユーザ交換可能バッテリ、充電可能なユーザ交換可能バッテリ、又は交換可能な場合と不可能な場合がある内部充電式バッテリを含み得る。当然のことながら、電源138は、これら又は他の電源の組み合わせを含み、電源の1つが故障した場合にシステム100の継続的な動作を確実にし得る。コントローラ126は、必要に応じて、可聴警報システム144などの追加の構成要素を含み、可聴警報を患者又は別のユーザに提供し得る。コントローラ126の追加の構成要素は、図2に関して議論される。
【0076】
動作中、カニューレ又は他の送達装置は、患者114の口又は鼻に近接して配置される。システム100は、酸素供給110から酸素を受け取り、周囲空気を、周囲空気供給136を介して受け取る。患者が吸息すると、負圧がカニューレチューブに加えられ、酸素出力132及び/又は周囲空気入力136で受け取られる。パルスモードでは、コントローラ126が作動され、制御パルス化酸素が患者に送達される。コントローラ126の作動により、コントローラ126が圧電弁128を通電し、それによって、酸素用の経路が開放され、酸素供給110から圧力調節器122を通り、バイパス弁124を通り、患者114に流れる。コントローラ126は、患者114への特定の酸素の流れを制御し得て、それは、例えば、酸素パルス長、パルス速度、又は酸素が弁128を通過できるようにする他のパルス特性の流れの開始を制御すること、あるいはシステム100の作動の、又は1つ以上の構成要素の感度を制御することによる。制御パルス化酸素送達の間、患者114は、周囲空気を、周囲空気入力136を通じて受け取り続けることができる。
【0077】
コントローラ126は、ボタン又はスイッチなどを用いて手動で、又はより好ましくは本開示に従って、吸気の開始を示す感知された信号によって自動的に作動され得る。一例では、コントローラ126は、患者が吸息を開始したときに生じる温度変化を感知することによって作動され得る。この例では、周囲空気供給136の経路に配置されたサーミスタ140の形態の流量センサが、周囲より高い温度、通常は周囲より10~20℃高い温度に加熱される。ユーザが吸息すると、インラインサーミスタは、加熱されたサーミスタ140を通過する周囲空気の流れに起因する温度の低下を検出する。この温度低下が検出されると、作動信号が弁128に送られ、酸素を放出する。代替的に、サーミスタ140に近接して配置された周囲空気供給136の経路内の空気を、周囲温度より高い温度まで加熱することが可能である。ユーザが吸息すると、サーミスタを使用して、サーミスタ140を通過する際の周囲空気流供給の温度上昇を検出し得て、これを使用して作動信号を送信し得る。好ましい実施形態では、サーミスタは、いずれかの方向の温度変化を測定するように、すなわち、酸素送達を起動するために吸息時の温度変化を測定し、酸素送達の停止を起動するために呼息時の温度変化を測定するように構成される。呼息の開始を感知することで、システムは吸息ごとに1つのトリガを送信することもできる。吸息を感知して流体のパルスを起動した後、システムは、呼息が感知されるまでトリガを禁止することにより、同じ吸息で再び起動するのを防ぎ得る。
【0078】
流量センサを高圧酸素流から保護するために、弁128はデュアルアクチュエータピエゾ弁200、202を含む。ピエゾ弁200は、補助酸素源110と流量センサ基盤140との間にインラインで接続され、一方、ピエゾ弁202は、一方の側でセンサ基盤140に接続され、他方の側で周囲空気に対して開放する。流量センサを高圧酸素流から分離することで、非常に感度の高い流量センサを使用できるようになり、これにより本質的に吸息を開始直後に感知することが可能になり、次に無駄なく最適なタイミングで酸素パルスを起動することが可能になる。先行技術のコンサベータは、同じラインからのガス流を感知して送達し、吸息を本質的に開始直後に感知することができない。また、流量センサを分離することにより、ユーザの呼息からの流れの汚濁を排除する。
【0079】
これまでのシステム100の動作の説明は、システムがパルスモードにあるとき、すなわち、酸素送達が電子コントローラ126によって制御されるときのものである。しかし、手動バイパス弁124を使用すると、ユーザは、システム100をパルスモードからバイパスモードに変更して、酸素を患者114に直接送達し得る。図1に示すように、バイパスモードでは、圧力調節器122からの酸素110の供給は、手動バイパス弁124を通過し、酸素出口132に直接又はほぼ直接、配向され得て、それは酸素が1つ以上の分割カップリングを通過し得るためである。したがって、バイパスモードでは、酸素は、コントローラ126からのパルス制御なしで患者114に送達される。バイパス弁124を使用して、ユーザは、必要に応じてシステム100の所望の動作モードを、患者又はシステム100の用途によって制御し得る。
【0080】
図3は、本開示の第3の例示的な実施形態による、図1図2の流体送達システム100及び102のコントローラ126の電気ブロック図を、それぞれに示すブロック図である。図3に示すように、コントローラ126は、流体送達システムの構成要素と通信する様々なコントローラ回路及び処理モジュールを含む。全ての構成要素は、マイクロコントローラ150と通信し得て、マイクロコントローラ150は、各構成要素から信号及び処理データを受信し、処理機能を制御し得る。
【0081】
マイクロコントローラ150は、酸素センサ130又は酸素トランスデューサ抵抗ブリッジに接続され、これにより、酸素センサ130からの信号はブリッジ信号増幅器で増幅され、ADC接続を介してマイクロコントローラ150に入力される。オプションの補助的発振器が、マイクロコントローラ150に設けられてもよい。内部ファクトリCALスイッチ又はジャンパは、CALスイッチ回路を介してマイクロコントローラ150に接続され得る。周囲空気供給136の温度は、サーミスタ140によって感知され、流量センサ回路152によってマイクロコントローラ150に接続され得る。流量センサ回路152内で、ヒータ制御及び1つ以上のヒータドライバを使用して、サーミスタ140及び/又はそれを取り囲む周囲供給を加熱し得て、サーミスタ140からの流量信号は、流量センサ回路152で受信される。信号は、オフセット調整及び/又はスパン調整によって処理され、次に増幅された後にマイクロコントローラ150に送信され得る。
【0082】
圧電弁128は、酸素ポートピエゾ弁ドライバ154及び流量感知ポートピエゾ弁ドライバ156から制御信号を受信し、それらはマイクロコントローラ150に接続されている。酸素ポートピエゾ弁ドライバ154は、電源及びオン/オフ信号に接続されたピエゾドライバDC-DCコンバータ、電圧セレクタ回路、及びFETスイッチ制御を有する。流量感知ポートピエゾ弁ドライバ156は、第2のピエゾドライバDC-DCコンバータ、電圧セレクタ回路、及びFETスイッチ制御を有する。ドライバ154、156のいずれかの動作中に、電圧セレクタ回路からの信号がFB回路に供給され、FB回路はピエゾドライバDC-DCコンバータに電圧フィードバックを供給する。FETスイッチ制御で受信されたマイクロコントローラからの信号は、各ドライバ154、156の対応する接続又はドレインスイッチに送信される。酸素ポートドライバ154の酸素スイッチ及び流量感知ドライバ156の流量センサスイッチから得られる信号は、圧電弁128に送信され、通電及び作動を制御する。
【0083】
インジケータ装置134は、1つ以上のキーパッドボタン押下感知及びLEDドライバ回路を介してマイクロコントローラ150に接続され得る。同様に、可聴警報システム144は、バズドライバを使用してマイクロコントローラ150に接続されてもよい。ハードワイヤード電源又はバッテリ電源を含む電源138は、電源選択を使用してマイクロコントローラ150に接続され得て、電源分配を制御する。様々な電圧調節器及びコンバータを使用して、流体送達用のシステムの様々な回路及び構成要素に、直接、又は図3に示すようにマイクロコントローラ150を介して電力を供給し得る。追加の電源構成要素が含まれてもよく、それには電力入力保護回路、充電回路、バッテリ電圧モニタなどが含まれる。マイクロコントローラ150にはまた、ADC試験回路158が接続されてもよい。
【0084】
本開示の更なる詳細は、図4に見られ、それは、本開示の補助酸素送達システムの動作アルゴリズムを示す概略図であり、どのようにして、システムが吸息を感知して流体のパルスを起動した後に同じ吸息で再び起動されることを、呼息が感知されるまで更なるトリガを阻止することによって防ぎ得るかを示す。
【0085】
図5の表1は、温度センサを用いた、本開示による患者の吸気の開始に続く補助酸素流の起動における応答時間を、従来の圧力センサであるChad Lotus Therapeutic Oxygen Conserver、モデルOM-700と、SmartDose Oxygen Conserver、モデルCTOX-MN02を用いた、吸気開始に続く補助酸素流の起動における応答時間と比較して報告する。試験では、本開示による温度センサ流量センサは、従来の最新技術の圧力流量センサよりも40倍感度が高いことが分かった。
【0086】
図6は、本開示の好ましい実施形態による、ガス送達のフローチャートを示す。特に、感知された吸息開始から補助酸素流の送達を増加させることによって、補助酸素がよりよく節約され、すなわち、マスク又はカニューレを過ぎて噴き出す損失がほとんど又は全くなく、かつユーザがはるかに快適であることを発見した。これは、従来行われているように、加圧源からの補助酸素の完全計量流をオンに切り替えると、ユーザへの酸素の流れが、ユーザが許容できるよりもはるかに過剰な初期速度で生じるという事実によるものである。つまり、肺が呼吸時に自然に膨張するため、ユーザは、快適さと効率を得るのに十分な速さで、補助酸素の目標流量を完全に取り込むことができない。したがって、補助酸素の完全な目標流量で装着者に当たるのではなく、吸息の開始の検出により、補助酸素の流量は増加され、基本的にユーザの呼吸パターンと調和する。通常、補助酸素の送達は、起動から15~40%、好ましくは20~35%、より好ましくは33%の立ち上がり流量から、ユーザの最大吸気量での100%の目標流量まで傾斜され、その後、ユーザが呼息を始めると、又は始める前にオフにされ、一時停止される。例として、毎分16リットルの酸素の目標流量を想定すると、吸気開始時の酸素の流れは、最初は毎分5又は6リットルに設定され、ユーザの吸気に合わせて毎分16リットルに増加され、その後、吸気が停止又は遅くなるのを流量センサによって感知すると遮断される。これは、図7に示している。
【0087】
本開示は、所定の実施形態を参照して詳細に説明されてきたが、当業者は、本開示が、記載の実施形態以外によって実施され得て、記載の実施形態が説明のために提示されたものであり限定するためではないことを理解するであろう。例えば、上記のシステムは、従来の据え付け型の流量調節器、又は従来の病院の壁ユニット調節器に接続され、それらを「高性能調節器」に変換し得る。本システムはまた、C-PAPマスクに内蔵され、又は付加的な特徴として適合され得る。本システムは、一酸化窒素又は麻酔ガスなどの治療ガスの送達を制御するため、あるいは登山又はスキューバの用途、火災及び救助保護具、宇宙服用途などで、補助酸素又は呼吸ガスの流れを調節するために使用され得て、それらは鼻若しくは口のカニューレ、又はマスクではなく、密閉されたヘルメットを使用する可能性がある。したがって、本明細書で使用される鼻カニューレ及び口カニューレは、マスク、密閉されたヘルメットなども含むことを意図している。更に他の変更も可能である。したがって、添付の特許請求の範囲の範囲は、本明細書に含まれる実施形態の説明に限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0088】
100 システム
110 酸素供給
120 筐体
122 圧力調節器
126 電子コントローラ
130 酸素圧力センサ
140 空気流センサ
143 鼻カニューレ
図1
図2
図3
図3-1】
図3-2】
図4
図4-1】
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-06-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間又は動物への流体の送達を制御するための流体送達システムであって、
前記流体の少なくとも1つの供給源と、
少なくとも1つの弁組立体であって、前記流体の前記少なくとも1つの供給源に結合され、前記人間又は動物の吸気中に前記少なくとも1つの供給源からの前記流体の流れを可能にするように構成された、少なくとも1つの弁組立体と、
前記少なくとも1つの弁組立体に流体連通する鼻カニューレ、口カニューレ、マスク、又はヘルメットを含む出口端部と、
前記人間又は動物の吸気に応答して前記少なくとも1つの弁組立体による流体送達動作を起動するための流量センサと、
前記流量センサ又は前記流量センサの上流の流体を周囲温度より高く加熱するように構成されたヒータと、を備え、
ここで前記流量センサは、前記鼻カニューレ、口カニューレ、マスク、又はヘルメットと流体連通してその上流にあり、前記人間又は動物による吸気の開始を示す温度変化を検出するように構成されたセンサを含み、
ここで前記少なくとも1つの弁組立体は、前記人間又は動物の吸気で開始する前記起動から流体の流れの送達を開始するように、かつ流体の流れの送達を、前記人間又は動物の吸気で開始する前記起動から15~40%の立ち上がり流量から傾斜させ、100%の流体の流れの送達まで傾斜させ、次に前記人間又は動物が呼息を始めるとき、又はその前に、流体の流れの送達をオフにするか一時停止して、前記人間又は動物の呼吸パターンと調和させるように構成される、
流体送達システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの弁組立体を動作するように構成された電源を更に備える、請求項1に記載の流体送達システム。
【請求項3】
前記流量センサは、前記鼻カニューレ、口カニューレ、マスク、又はヘルメットに、又は隣接して配置され、あるいは前記鼻カニューレ、口カニューレ、マスク、又はヘルメットと前記流体の前記少なくとも1つの供給源とを接続するチューブ内に配置される、請求項1に記載の流体送達システム。
【請求項4】
送達される前記流体は、補助酸素、又は麻酔ガスを含む、請求項1に記載の流体送達システム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの弁組立体を前記流量センサからの信号に基づいて制御するための電子回路を更に備え、ここで前記電子回路は、前記少なくとも1つの弁組立体による流体送達動作を起動させる制御を行う、請求項1に記載の流体送達システム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの弁組立体は、流体の流れの送達を、前記起動から20~35%の立ち上がり流量から、前記人間又は動物の吸気量での100%の流量まで傾斜させるように構成される、請求項項1に記載の流体送達システム。
【請求項7】
前記センサは、温度の方向変化によって前記吸気の開始及び前記呼息の開始を検出するように構成される、請求項1に記載の流体送達システム。
【請求項8】
前記流量センサは、前記流体の前記少なくとも1つの供給源からピエゾアクチュエータ弁によって分離される、請求項1に記載の流体送達システム。
【請求項9】
流体供給から人間又は動物に送達されている流体を節約するための装置であって、
前記流体供給と鼻カニューレ、口カニューレ、マスク、又はヘルメットとの間に接続された流体節約装置コントローラであって、前記流体を前記鼻カニューレ、口カニューレ、マスク、又はヘルメットに送達する流体送達動作が選択的に起動される少なくとも1つの弁を含む、流体節約装置コントローラと、
人間又は動物による吸気を感知するように構成された流量センサと、
前記流量センサ又は前記流量センサの上流の流体を周囲温度より高く加熱するように構成されたヒータと、
前記流体節約装置コントローラを作動するために前記流量センサと通信し、前記人間又は動物の吸気に応答して前記少なくとも1つの弁による流体送達動作を起動する制御を行う電気回路と、を備え、
ここで前記流量センサは前記鼻カニューレ、口カニューレ、マスク、又はヘルメットと流体連通し、前記人間又は動物による前記吸気の開始を示す温度変化を検出するように構成されたセンサを含み、
ここで前記流体節約装置コントローラは、前記人間又は動物の吸気で開始する前記起動から流体の流れの送達を開始するように、かつ流体の流れの送達を、前記人間又は動物の吸気で開始する前記起動から15~40%の立ち上がり流量から傾斜させ、100%の流体の流れの送達まで傾斜させ、次に前記人間又は動物が呼息を始めるとき、又はその前に、流体の流れの送達をオフにするか一時停止して、前記人間又は動物の呼吸パターンと調和させるように構成される、
装置。
【請求項10】
前記流量センサと前記電気回路は互いに離れており、前記流量センサと前記電気回路は有線又は無線のいずれかで通信する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記流体供給は、酸素、又は麻酔ガスを含む、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記流体節約装置コントローラは、流体の流れの送達を、前記起動から20~35%の立ち上がり流量から、前記人間又は動物の吸気量での100%の流量まで傾斜させるように構成される、請求項9に記載の装置。
【請求項13】
前記センサは、温度の方向変化によって前記吸気の開始及び前記呼息の開始を検出するように構成される、請求項9に記載の装置。
【請求項14】
前記流量センサは前記流体供給からピエゾアクチュエータ弁によって分離される、請求項9に記載の装置。
【請求項15】
流体供給源から動物(人間を除く)への流体の送達を節約するための方法であって、
前記流体供給源と、及び前記動物(人間を除く)が装着する鼻カニューレ、口カニューレ、マスク、又はヘルメットとに連通する弁を提供する段階と、
前記鼻カニューレ、口カニューレ、マスク、又はヘルメットと流体連通してその上流にある流量センサを提供する段階と
前記流量センサ又は前記流量センサの上流の前記流体を周囲温度より高く加熱する段階と、
前記鼻カニューレ、口カニューレ、マスク、又はヘルメットと流体連通する前記流量センサを用いて、前記鼻カニューレ、口カニューレ、マスク、又はヘルメットを通る前記流体の温度変化を検出することによって、吸気の開始を感知する段階と、
前記感知された吸気の開始に応答して前記弁を起動し、前記流体を前記流体供給源から放出して前記鼻カニューレ、口カニューレ、マスク、又はヘルメットを介して前記動物(人間を除く)に送達する段階と、を含み、
ここで前記流体を前記動物(人間を除く)に送達する段階は、前記動物(人間を除く)の吸気で開始する前記起動から流体の流れの送達を開始するように、かつ流体の流れの送達を、前記動物(人間を除く)の吸気で開始する前記起動から15~40%の立ち上がり流量から傾斜させ、100%の流体の流れの送達まで傾斜させ、次に前記動物(人間を除く)が呼息を始めるとき、又はその前に、流体の流れの送達をオフにするか一時停止して、前記動物(人間を除く)の呼吸パターンと調和させるように構成される、
方法。
【請求項16】
前記流量センサは、前記吸気の開始及び呼息の開始を温度の方向変化によって検出するように構成されたセンサを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記流体を前記動物(人間を除く)に送達する段階は、流体の流れの送達を、前記起動から20~35%の立ち上がり流量から、目標流速の100%の流量まで傾斜させるように構成される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記流体を前記動物(人間を除く)に送達する段階は、流体の流れの送達を、前記起動から33%の立ち上がり流量から、目標流速の100%の流量まで傾斜させるように構成される、請求項15に記載の方法。