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特開2024-116318血液細胞の人工多能性幹細胞へのリプログラミングのための新規及び効率的な方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116318
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】血液細胞の人工多能性幹細胞へのリプログラミングのための新規及び効率的な方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20240820BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240820BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12N5/10
C12N15/12
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024095073
(22)【出願日】2024-06-12
(62)【分割の表示】P 2022164730の分割
【原出願日】2017-06-16
(31)【優先権主張番号】15/184,241
(32)【優先日】2016-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】514135801
【氏名又は名称】シーダーズ-サイナイ メディカル センター
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】サリーン ドゥルーブ
(72)【発明者】
【氏名】オルネラス ローレン エイ.
(72)【発明者】
【氏名】スヴェンセン クライブ
(57)【要約】
【課題】人工多能性幹細胞(iPSC)の生成を含む、非組込み型エピソーマルプラスミドベクターを使用する、高い効率で再現性のあるリプログラミングを確立するための改良された技術を提供する。
【解決手段】ある量の血液細胞を用意すること、ある量のリプログラミング因子を前記血液細胞に送達すること、及び前記血液細胞をリプログラミング培地中で少なくとも4日間培養することを含む、血液細胞由来の人工多能性幹細胞を生成する方法であって、前記リプログラミング因子を送達すること及びリプログラミング培地で培養することにより、血液細胞由来の人工多能性幹細胞が生成される、前記方法である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある量の血液細胞を用意すること、
ある量のリプログラミング因子を前記血液細胞に送達すること、及び
前記血液細胞をリプログラミング培地中で少なくとも4日間培養すること
を含む、血液細胞由来の人工多能性幹細胞を生成する方法であって、
前記リプログラミング因子を送達すること及びリプログラミング培地で培養することにより、血液細胞由来の人工多能性幹細胞が生成される、前記方法。
【請求項2】
ある量のリプログラミング因子を送達することが、ヌクレオフェクションを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リプログラミング因子が、Oct-4、Sox-2、Klf-4、c-Myc、Lin-28、SV40ラージT抗原(「SV40LT」)、及びp53を標的とするショートヘアピンRNA(「shRNA-p53」)からなる群から選択される1つ以上の因子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記リプログラミング因子が、1つ以上のoriP/EBNA1由来ベクターにコードされる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上のoriP/EBNA1由来ベクターが、pEP4 E02S ET2K、pCXLE-hOCT3/4-shp53-F、pCXLE-hSK、pCXLE-hUL、及びpCXWB-EBNA1を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
リプログラミング因子を前記血液細胞に送達した後で、処理した細胞培養表面上に前記血液細胞を播種すること、及び、リプログラミング培地中、前記処理した細胞培養表面上で前記血液細胞を培養することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記処理した細胞培養表面が、マウス胚性フィーダー細胞(MEF)の播種を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記処理した細胞培養表面が、細胞外基質タンパク質を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞外基質タンパク質がラミニンを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ラミニンがL-521を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記リプログラミング培地が胚性幹細胞(ESC)培地を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ESC培地が塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記リプログラミング培地がE7培地を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記リプログラミング培地がL-アスコルビン酸、トランスフェリン、重炭酸ナトリウム、インスリン、亜セレン酸ナトリウム及び/またはbFGFを含有するE7培地を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
リプログラミング培地中で前記血液細胞を培養することが、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16日間である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
リプログラミング培地中で前記血液細胞を培養することが、少なくとも17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30または31日間である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法によって生成される、血液細胞由来の人工多能性幹細胞を含む細胞株。
【請求項18】
血液細胞が、疾患変異を有する対象から単離される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記疾患変異が、神経変性疾患、障害、及び/または状態と関連する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記疾患変異が、炎症性腸疾患、障害、及び/または状態と関連する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
血液細胞が、非T細胞、非B細胞である単核細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
血液細胞がヒト対象から採血された試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記試料が全血である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記試料が末梢血である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記試料が、非T細胞、非B細胞である単核細胞の単離成分である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
血液細胞由来の人工多能性幹細胞株。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本明細書に記載されるのは、全血及び末梢血に由来する人工多能性幹細胞(iPSC)の誘導を含む再生医療に関する方法及び組成物であり、そのような方法及び組成物は再生可能な移植材料を提供する。
【背景技術】
【0002】
背景
多能性幹細胞(「pSC」)は、再生医療に使用するための治療物質を生成する幅広い機会を提供すると同時に、疾患の開始及び進行を研究するための貴重なインビトロモデルを提供する。pSCの1つのカテゴリーである人工多能性幹細胞(「iPSC」)は、特徴的な幹細胞特性である、自己複製(すなわち、不死)及び3つの胚性胚葉全てに由来する細胞への分化能(すなわち、多能性)を有する。これらの細胞は、成体の体細胞などの非胚性起源からの細胞の脱分化を含む「リプログラミング」によって得ることができる。リプログラミングプロセスにより、胚性幹細胞(「ESC」)などpSCのような他のタイプの胚性原料物質に対する潜在的な倫理的懸念を取り除きつつ、潜在的な患者特異的免疫学的不適合性を可能にするさらなる利点を提供する。
【0003】
堅牢なリプログラミング技術の確立に加えて、幹細胞再生医療の治療目標の完全実現には、再生可能な再生材料のための供給源として機能することができる宿主細胞のタイプをさらに検討する必要がある。理想的には、細胞は安定したリプログラミングのために必要な可塑性及びその後の増殖における安定性を保有するだけでなく、分離、保存、安定性及び維持の容易さなどの臨床的側面における利点ももたらすであろう。これに関して、それらの広く利用される医学的診断及び細胞リプログラミングのための非常に入手しやすい供給源として考えると、血液細胞はそのような用途のための魅力的な選択肢を代表する。線維芽細胞は、過去10年間に行われた多くのリプログラミング実験のために広く使用されている細胞供給源であるが、この原料物質は、定方向のリプログラミングにとって最良の選択でない可能性がある。線維芽細胞を得るための皮膚生検は、侵襲的で非無菌的な処置であり、実験の前に回収された細胞の増殖を必要とする。最も重要なことに、皮膚細胞は、血液などの体内からの細胞よりもUV照射などの環境的な傷害により、より多くの変異を有する。
【0004】
患者固有の免疫適合性の生物学的物質を生成するという最終的な治療目標を考慮すると、最終的な臨床応用に適した治療物質の原料を同定するとともに、リプログラミング細胞のための堅牢で再現性のある手段を確立することが、当技術分野において、非常に必要とされている。このような改良された方法は、高いリプログラム効率、一貫性のある複製を有すること、ゲノム安定性を有する細胞を生成すること、及び様々な細胞種に容易に広げることができることが必要であろう。
【0005】
本明細書には、血液試料中の非T細胞、非B細胞成分からのiPSCの生成を含む、非組込み型エピソーマルプラスミドベクターを使用する高効率で再現性のあるリプログラミングを確立するための改良された技術が記載される。これらの記載アプローチにより、ゲノム安定性及び核型安定性において優れた特性を有する細胞リプログラミング用の容易に入手可能な供給源としての、血液の使用が可能になる。
【発明の概要】
【0006】
本明細書に記載されるのは、ある量の血液細胞を用意すること、ある量のリプログラミング因子を血液細胞に送達すること、及びその血液細胞をリプログラミング培地中で少なくとも4日間培養することを含む、血液細胞由来の人工多能性幹細胞を生成する方法であり、ここで、リプログラミング因子を送達すること、及びリプログラミング培地中で培養することにより、血液細胞由来の人工多能性幹細胞が生成される。他の実施形態において、ある量のリプログラミング因子の送達には、ヌクレオフェクションが含まれる。他の実施形態において、リプログラミング因子には、Oct-4、Sox-2、Klf-4、c-Myc、Lin-28、SV40ラージT抗原(「SV40LT」)、及びp53を標的とするショートヘアピンRNA(「shRNA-p53」)からなる群から選択される1つ以上の因子が含まれる。他の実施形態において、リプログラミング因子は、1つ以上のoriP/EBNA1由来ベクターにコードされる。他の実施形態において、1つ以上のoriP/EBNA1由来ベクターには、pEP4 E02S ET2K、pCXLE-hOCT3/4-shp53-F、pCXLE-hSK、pCXLE-hUL及びpCXWB-EBNA1が含まれる。他の実施形態において、リプログラミング因子を血液細胞に送達した後で、処理した細胞培養表面に血液細胞を播種し、リプログラミング培地中、処理した細胞培養表面上で血液細胞を培養する。他の実施形態において、処理した細胞培養表面は、マウス胚性フィーダー細胞(MEF)の播種を含む。他の実施形態において、処理した細胞培養表面には、細胞外基質タンパク質を含む。他の実施形態において、細胞外基質タンパク質はラミニンを含む。他の実施形態において、ラミニンはL-521を含む。他の実施形態において、リプログラミング培地は胚性幹細胞(ESC)培地を含む。他の実施形態において、ESC培地は塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を含む。他の実施形態において、リプログラミング培地はE7培地を含む。他の実施形態において、リプログラミング培地は、L-アスコルビン酸、トランスフェリン、重炭酸ナトリウム、インスリン、亜セレン酸ナトリウム及び/またはbFGFを含有するE7培地を含む。他の実施形態において、リプログラミング培地での血液細胞の培養は、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16日間である。他の実施形態において、リプログラミング培地での血液細胞の培養は、少なくとも17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30または31日間である。本明細書にさらに記載されるのは、前述の方法によって生成される血液細胞由来の人工多能性幹細胞を含む細胞株である。他の実施形態において、血液細胞は疾患変異を有する対象から単離される。他の実施形態において、疾患変異は、神経変性疾患、障害、及び/または状態と関連する。他の実施形態において、疾患変異は炎症性腸疾患、障害、及び/または状態と関連する。他の実施形態において、血液細胞は、非T細胞、非B細胞である単核細胞である。他の実施形態において、血液細胞は、ヒト対象から得た試料である。他の実施形態において、試料は全血である。他の実施形態において、試料は末梢血である。他の実施形態において、試料は、非T細胞、非B細胞である単核細胞の単離成分を含む。本明細書にさらに記載されるのは、血液細胞由来の人工多能性幹細胞株である。
【0007】
本明細書においてさらに記載されるのは、ある量の血液細胞を用意すること、その血液細胞にある量のリプログラミング因子を送達すること、処理した細胞培養表面に血液細胞を播種すること、及びその血液細胞をリプログラミング培地中で少なくとも4日間培養することを含む、人工多能性幹細胞を生成する方法であり、ここで、リプログラミング因子を送達すること、及びリプログラミング培地中で培養することにより、血液細胞由来人工多能性幹細胞が生成される。他の実施形態において、ある量のリプログラミング因子を送達には、ヌクレオフェクションが含まれ、リプログラミング因子は、1つ以上のoriP/EBNA1由来ベクターにコードされるOct-4、Sox-2、Klf-4、c-Myc、Lin-28、SV40ラージT抗原(「SV40LT」)、及びp53を標的とするショートヘアピンRNA(「shRNA-p53」)からなる群から選択される1つ以上の因子を含む。他の実施形態において、1つ以上のoriP/EBNA1由来ベクターにはpEP4 E02S ET2K、pCXLE-hOCT3/4-shp53-F、pCXLE-hSK、pCXLE-hUL、及びpCXWB-EBNA1が含まれる。他の実施形態において、処理した細胞培養表面には、マウス胚性フィーダー細胞(MEF)の播種が含まれる。他の実施形態において、処理した細胞培養表面には、細胞外基質タンパク質が含まれる。他の実施形態において、細胞外基質タンパク質はラミニンを含む。他の実施形態において、ラミニンはL-521を含む。他の実施形態において、リプログラミング培地は塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を含有する胚性幹細胞(ESC)培地を含む。他の実施形態において、リプログラミング培地は、L-アスコルビン酸、トランスフェリン、重炭酸ナトリウム、インスリン、亜セレン酸ナトリウム及び/またはbFGFを含有するE7培地を含む。他の実施形態において、リプログラミング培地での血液細胞の培養は、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16日間である。他の実施形態において、リプログラミング培地での血液細胞の培養は、少なくとも17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30または31日間である。他の実施形態において、血液細胞は、ヒト対象から得た試料である。他の実施形態において、試料は全血である。他の実施形態において、試料は末梢血である。他の実施形態において、試料は、非T細胞、非B細胞である単核細胞の単離成分を含む。本明細書にさらに記載されるのは、血液細胞由来の人工多能性幹細胞株である。
[本発明1001]
ある量の血液細胞を用意すること、
ある量のリプログラミング因子を前記血液細胞に送達すること、及び
前記血液細胞をリプログラミング培地中で少なくとも4日間培養すること
を含む、血液細胞由来の人工多能性幹細胞を生成する方法であって、
前記リプログラミング因子を送達すること及びリプログラミング培地で培養することにより、血液細胞由来の人工多能性幹細胞が生成される、前記方法。
[本発明1002]
ある量のリプログラミング因子を送達することが、ヌクレオフェクションを含む、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記リプログラミング因子が、Oct-4、Sox-2、Klf-4、c-Myc、Lin-28、SV40ラージT抗原(「SV40LT」)、及びp53を標的とするショートヘアピンRNA(「shRNA-p53」)からなる群から選択される1つ以上の因子を含む、本発明1001の方法。
[本発明1004]
前記リプログラミング因子が、1つ以上のoriP/EBNA1由来ベクターにコードされる、本発明1003の方法。
[本発明1005]
前記1つ以上のoriP/EBNA1由来ベクターが、pEP4 E02S ET2K、pCXLE-hOCT3/4-shp53-F、pCXLE-hSK、pCXLE-hUL、及びpCXWB-EBNA1を含む、本発明1004の方法。
[本発明1006]
リプログラミング因子を前記血液細胞に送達した後で、処理した細胞培養表面上に前記血液細胞を播種すること、及び、リプログラミング培地中、前記処理した細胞培養表面上で前記血液細胞を培養することを含む、本発明1001の方法。
[本発明1007]
前記処理した細胞培養表面が、マウス胚性フィーダー細胞(MEF)の播種を含む、本発明1006の方法。
[本発明1008]
前記処理した細胞培養表面が、細胞外基質タンパク質を含む、本発明1006の方法。
[本発明1009]
前記細胞外基質タンパク質がラミニンを含む、本発明1008の方法。
[本発明1010]
ラミニンがL-521を含む、本発明1009の方法。
[本発明1011]
前記リプログラミング培地が胚性幹細胞(ESC)培地を含む、本発明1001の方法。
[本発明1012]
前記ESC培地が塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を含む、本発明1011の方法。
[本発明1013]
前記リプログラミング培地がE7培地を含む、本発明1001の方法。
[本発明1014]
前記リプログラミング培地がL-アスコルビン酸、トランスフェリン、重炭酸ナトリウム、インスリン、亜セレン酸ナトリウム及び/またはbFGFを含有するE7培地を含む、本発明1013の方法。
[本発明1015]
リプログラミング培地中で前記血液細胞を培養することが、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16日間である、本発明1001の方法。
[本発明1016]
リプログラミング培地中で前記血液細胞を培養することが、少なくとも17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30または31日間である、本発明1001の方法。
[本発明1017]
本発明1001の方法によって生成される、血液細胞由来の人工多能性幹細胞を含む細胞株。
[本発明1018]
血液細胞が、疾患変異を有する対象から単離される、本発明1001の方法。
[本発明1019]
前記疾患変異が、神経変性疾患、障害、及び/または状態と関連する、本発明1018の方法。
[本発明1020]
前記疾患変異が、炎症性腸疾患、障害、及び/または状態と関連する、本発明1018の方法。
[本発明1021]
血液細胞が、非T細胞、非B細胞である単核細胞である、本発明1001の方法。
[本発明1022]
血液細胞がヒト対象から採血された試料である、本発明1001の方法。
[本発明1023]
前記試料が全血である、本発明1022の方法。
[本発明1024]
前記試料が末梢血である、本発明1022の方法。
[本発明1025]
前記試料が、非T細胞、非B細胞である単核細胞の単離成分である、本発明1022の方法。
[本発明1026]
血液細胞由来の人工多能性幹細胞株。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1A~1B 血液成分の分離。図1Aは分離した成分を示す概略図である。図1Bは分離した成分の画像を示す。
図2A図2A~2E 品質管理:iPS細胞。生成された細胞の品質管理の様々な測定法が示されており、それらは以下を含む:図2A 顕微鏡検査、及び多能性幹細胞マーカーの染色。図2B 幹細胞の多能性の描写。図2C 核型分析。図2D 異なる細胞株に対する、多能性及び系統特異的マーカーのRT-PCR。図2E 3つの胚系統全てに分化することができる多能性幹細胞。
図2B図2Aの説明を参照のこと。
図2C図2Aの説明を参照のこと。
図2D図2Aの説明を参照のこと。
図2E図2Aの説明を参照のこと。
図3】PBMC単離及び凍結保存プロセス。リプログラミング及びiPSCの生成のための原料として利用される血球細胞を得るためのプロセスを示す。
図4】末梢血単核細胞(PBMC)。PBMCの集団及び相対的な集団の存在比を含む、血液の様々な成分の描写を示す。
図5】血液由来のiPSCのT細胞受容体クロナリティアッセイを示す。
図6A図6A~6B iPSC株で観察された染色体変化を示すイデオグラムは、Cedars-SinaiのiPSC Coreである。各色のバーは、1つの細胞株における1つの染色体変化の発生を示す。細胞遺伝学的変化は(Marooon、モノソミー、全染色体の喪失)のように色分けされる。BC-iPSCは線維芽細胞由来のiPSCより安定した核型を維持する点で優れている。本発明者らの研究室における線維芽細胞由来iPSC(図6A)及びPBMC由来iPSC(図6B)に由来する異常核型の個々の染色体レベルのイデオグラム表示。イデオグラムで表される異常iPSC核型は、(図6A)fib-iPSC(n:59)/全258のfib-iPSC培養物の核型、及び(図6B)BC-iPSC(n:4)/全てのBC-iPSCss核型(n=106)である。
図6B図6Aの説明を参照のこと。
図7A図7A~7B 核型。図7Aは、継代数に関連した異常核型の分布を示す。図7Bは組織提供者の年齢に関連した異常核型の分布(Marooon、モノソミー、全染色体の喪失)を示す。
図7B図7Aの説明を参照のこと。
図8A図8A~8F PBMCのiPSCへの確実なエピソーマルリプログラミング。図8A:エピソーマルリプログラミングプロセス及びPBMCからのiPSC生成の時間軸を示す概略図。図8B:PBMC由来のリプログラミングされたiPSCコロニーの明視野画像は、2例の健康なボランティアの一方には非T細胞(03iCTR-NTn1)リプログラミング法を用い、もう一方にはT細胞(80iCTR-Tn1)リプログラミング方法を用いて得た。これらは高い核:細胞質比を示し、アルカリホスファターゼ陽性ならびに表面抗原のSSEA4、TRA-1-60、TRA-1-81、かつ核多能性マーカーのOCT3/4、SOX2、及びNANOGについて免疫陽性である。スケールバー:75μm。図8C:Illuminaマイクロアレイ遺伝子チップとバイオインフォマティクスに基づくPluriTestにより、BC-iPSCの多能性レベルを確認する。図8D:PBMC-iPSC株は、2つの代表的な系統で示されるように、正常なGバンド核型を維持した。図8E:非T細胞またはT細胞のクロナリティアッセイ。図8F:H9 hESCと比較した49iCTR及び84iSMA LCL-iiPSCにおけるPOU5F1(OCT4)、SOX2、LIN28、L-MYC、及びKLF4発現の定量RT-PCR分析。図8G:T細胞受容体遺伝子再編成アッセイによって、異なるセットのPCRプライマーを使用してT細胞法に由来するBC-iPSCで生じるTCRG遺伝子再編成が検出された一方で、145~255bpの範囲のPCR産物は非T細胞iPSCクローンで検出されなかったことを示す。クローン陽性対照が含まれる。図8F:TaqMan hPSC Scorecard表は、PBMC-iPSC株に由来するEBの自発的なインビトロでのEB分化と比較した場合の4つの遺伝子群(自己複製/多能性、外胚葉、内胚葉、及び中胚葉)の中から選択された遺伝子による代表的なBC-iPSCの三系列の分化能を示す。図8G:同等数の外胚葉(Nkx6.1+/βチューブリン+神経細胞)を示す、代表的な線維芽細胞由来iPSC(n:26)及びPBMC由来iPSC(n:12)の神経細胞分化指向性。スケールバー:75μm。図8H:公表された4p法(T細胞及び非T細胞の両方についてn=7)と比較した場合、5p法(T細胞についてはn=28、非T細胞についてはn=13)による凍結保存PBMCのiPSCリプログラミング効率が高い。リプログラミング成功率は、PBMCのリプログラミングの10の全試行(成功または失敗)回数のうちの割合として計算される。[「T細胞、5p対4p(***):z値=3.74、両側p値=0.00018、2比率のz-試験」、「非T細胞、4p対5p(****):z値=7.18、両側p値<0.0001、2比率のz検定」]。ND:未検出。さらに、4p法と比較した場合、T細胞集団及び非T細胞集団の両方について5p法のリプログラミング効率がより高いことが観察された。リプログラミング効率は、確認された個々のiPSCコロニーに基づいており、解凍後のヌクレオフェクションされたPBMCの総数に対して正規化した。[「T細胞、4p対5p(***):両側p値=0.0004、ウェルチの補正を伴う対応のないt検定」、「非T細胞、4p対5p(***):両側p値<0.0001、ウェルチの補正を伴う対応のないt検定」]。ND:未検出。図8I及び図8J:本発明者らの研究室の線維芽細胞由来iPSC(上側)及びPBMC由来iPSC(下側)に由来する異常核型の個々の染色体レベルのイデオグラム表示。イデオグラムで表される異常iPSC核型は、(上側)核型分析した全n=260のfib-iPSC培養のうちfib-iPSC(n=61)、及び(下側)核型分析した全n=206のPBMC-iPSC株のうちPBMC-iPSC(n=4)である。分析には、培養あたり最低20細胞の染色体検査が含まれる。本明細書のデータセットには、ISCN2013のクローン性の定義に合致する異常のみが含まれる。転座(濃紺色のバー)カテゴリーの上の文字は、各転座異常が生じた染色体位置間で対応するように符合される。各染色体のイデオグラムにおけるバーの幅は、fib-iPSC及びPBMC-iPSCについて検討した試料数に応じて拡大した。したがって、PBMC-iPSC株で見いだされた異常を示すバーは、fib-iPSC株で見いだされた異常を示すバーの幅の1.26倍(260/206)である。
図8B図8Aの説明を参照のこと。
図8C図8Aの説明を参照のこと。
図8D図8Aの説明を参照のこと。
図8E図8Aの説明を参照のこと。
図8F図8Aの説明を参照のこと。
図8G図8Aの説明を参照のこと。
図8H図8Aの説明を参照のこと。
図8I図8Aの説明を参照のこと。
図8J図8Aの説明を参照のこと。
図9図9A図9D:fib-iPSCと比較して、BC-iPSCは、長期培養に対してより安定である。図9A:線維芽細胞及びPBMCのドナー年齢に対する対比における、iPSC株で観察された異常なGバンド核型率。図9B:リプログラミング後の初回の核型分析及び長期細胞培養で評価されたiPSC株の繰り返し核型分析における異常なGバンド核型率。点線は、fib-iPSC(オレンジ色)及びBC-iPSC(青色)の全体の平均核型異常率を表す。図9C:iPSCの継代数に関して、fib-iPSCクローン株及びPBMC-iPSCクローン株について評価された初回のGバンド核型分析での異常率。図9D:iPSCの継代数に関して、fib-iPSCクローン株及びPBMC-iPSCクローン株について評価された2~4回目(繰り返し)のGバンド核型分析での異常率。
図10-1】図10A図10E:比較ゲノムハイブリダイゼーションにより、BC-iPSCが、fib-iPSCと比較して、比較的小さく、少数の極微小な細胞遺伝学的異常を有することを確認。(図10A図10B)各iPSC株の親細胞を比較した場合の、aCGHによって検出されたfib-iPSC(n:6)及びPBMC-iPSC(n:7)のMbにおける新たな獲得増幅及び欠失の平均サイズ。aCGHで使用したiPSC株は、異常Gバンド核型及び正常なGバンド核型を有していた。異常:fib-iPSC(n:3)及びPBMC-iPSC(n:2)。正常:fib-iPSC(n:3)及びPBMC-iPSC(n:5)。(図10C図10D)各iPSC株の親細胞と比較した場合の、fib-iPSC(n:6)及びPBMC-iPSC(n:7)のMbにおける、aCGHによって検出された新たな獲得増幅及び欠失の平均数。図10E:本発明者の研究室で観察されたfib-iPSC株またはPBMC-iPSC株において確認された、最も再発性の高い極微小な増幅/欠失のリスト。図10F:ここに示されている全てのデータは、Cedars-Sinaiにある本発明者らの研究室で誘導したiPSC株に基づく。fib-iPSCは3p法でリプログラミングし、PBMC-iPSCは5p法によりリプログラミングした。線維芽細胞及びPBMCのドナー年齢に対する対比における、iPSC株で観察された異常なGバンド核型率。[「fib-iPSCのドナー年齢21~40対0~20または51~60または41~50または61~90は有意ではない(ns)、2つの比率のz検定」]。fib-iPSC:n=10/63(0~20)、n=17/50(21~40)、n=4/28(41~50)、n=10/41(51~60)、n=7/29(61~90)。[「fib-iPSC対PBMC-iPSCの年齢群0~20:ns、年齢群21~40(**):z値=2.9、両側p値=0.003、年齢群41~50(*):z値=2.4、両側p値=0.015、年齢群51~60(***):z値=3.5、両側p30値=0.0005、年齢群61~90(****):z値=4.02、両側p値<0.0001、2比率のz検定}]。PBMC-iPSC:n=2/34(0~20)、n=0/19(21~40)、n=0/39(41~50)、n=1/56(51~60)、n=0/62(61~90)。ND:未検出。リプログラミング後初回の核型及び長期細胞培養で評価されたiPSC株の繰り返しでの核型における異常Gバンド核型率。点線は、fib-iPSC(黒色)及びPBMC-1 iPSC(灰色)の全体の平均核型異常率を表す。[「初回の核型、fib-iPSC対PBMC-iPSC(****):z値=5.59、両側p値<0.0001、2比率z検定」、「繰り返し(2~4回目)の核型、fib-iPSC対PBMC-iPSC(***):z値=3.72、両側p値=0.0002、2比率z検定」、「fib-iPSC及びPBMC-iPSC、初回核型対繰り返し核型は2比率z検定によって有意でないと試験された」)。fib-iPSC:n=46/205(初回の核型)及びn=15/55(繰り返しでの核型)。PBMC-iPSC:n=2/143(初回の核型)及びn=2/63(繰り返しでの核型)。iPSCの継代数に関して、fib-iPSCクローン株及びPBMC-iPSCクローン株について評価された初回のGバンド核型での異常率。[「fib-iPSC対PBMC-iPSC-継代数1~8(****):z値=4.31、両側p値<0.0001、継代数9~23(***):z値=3.21、両側p値=0.001、2比率z検定」]。fib-iPSC:n=20/102(継代数1~8)及びn=12 26/103(継代数9~23)。PBMC-iPSC:n=1/99(継代1~8)及びn=1/42(継代9~23)。iPSCの継代数に関して、fib-iPSCクローン株及びPBMC-iPSCクローン株について評価された2~4回目(繰り返し)のGバンド核型での異常率。[「fib-iPSC対PBMC-iPSCの低継代数1~14:ns、z値=1.53、両側p値=0.12、2比率のz検定}]。[「fib-iPSC対PBMC-iPSCの高継代数≧15(**):z値=2.61、両側p17値=0.009、2比率のz検定」]。fib-iPSC:n=7/12(低継代数1~14)及びn=8/43(高継代数≧15)。PBMC-iPSC:n=0/2(低継代数1~14)及びn=2/61(高継代数≧15)。ND:未検出。図10G:各iPSC株の親細胞を比較した場合の、aCGHによって検出されたfib-iPSC(n=6)及びPBMC-iPSC(n=8)のMbにおける新たな獲得増幅及び欠失の平均サイズ。[「fib-iPSC対PBMC-iPSC(**):両側p値=0.0015、対応のないt検定」]。aCGHの増幅/欠失解析に使用したiPSC株は、異常Gバンド核型及び正常なGバンド核型を有していた。異常:fib-iPSC(n=3)及びPBMC-iPSC(n=2)。正常:fib-iPSC(n=3)及びPBMC-iPSC(n=6)。各iPSC株の親細胞を比較した場合の、aCGHによって検出されたfib-iPSC(n=6)及びPBMC-iPSC(n=8)のMbにおける新たな獲得増幅及び欠失の平均数。[「fib-iPSC対PBMC-iPSC(*):両側p値=0.0369、対応のないt検定」]。iPSC株は、1つの異常な核型のfib2 iPSC(n=3)及びPBMC-iPSC(n=2)ならびに正常な核型のfib-iPSC(n=3)及びPBMC3 iPSC(n=6)を用いて新たな重複/欠失の数の分析に使用した。本発明者の研究室で観察されたiPSC株において確認された、最も再発性の高い極微小な増幅/欠失のリスト。図10H:Gバンド核型分析によって観察された線維芽細胞由来iPSC(fib-iPSC)における個々の染色体レベルでの種々の核型異常の頻度。再編成-転座、逆位及び誘導体を含む構造再編成。灰色で網掛けされたセルは、fib-iPSC培養物の核型異常が全く観察されなかった染色体を示す。オレンジ色で示されたセルは、染色体の欠損または構造的再編成を含む全体での染色体異常のカテゴリーのそれぞれについて、最高順位(上位3)の核型異常を示す。
図10-2】図10-1の説明を参照のこと。
図10-3】図10-1の説明を参照のこと。
図10-4】図10-1の説明を参照のこと。
図10-5】図10-1の説明を参照のこと。
図11A図11A図11C:導入遺伝子フリーな状態のBC-iPSC。図11A:BC-iPSCのゲノムDNAにおける、アッセイを用いたプラスミドベースのEBNA遺伝子発現の欠如。図11B:内因性のPOU5F1(OCT4)、SOX2、LIN28、L-MYC、及びKLF4発現(コーディングDNA配列、CDS)を検出するプライマーを用いた定量的RT-PCR分析によって測定した相対的な正規化された遺伝子発現。図11C:同様にiPSC株では検出されないプラスミド由来の発現(Pla)。
図11B図11Aの説明を参照のこと。
図11C図11Aの説明を参照のこと。
図12A図12A図12B:リンパ芽球様細胞株(LCL)-iPSC及び上皮細胞由来iPSCの染色体イデオグラム。本発明者らの研究室におけるLCL由来iPSC(図12A)及び上皮由来iPSC(図12B)に由来する異常核型の個々の染色体レベルのイデオグラム表示。イデオグラムで表される異常iPSC核型は、(図12A)LCL-iPSC(n:15)/全60のLCL-iPSC培養物核型、及び(図12B)上皮-iPSC(n:7)/全てのBC-iPSC核型(n:26)である。
図12B図12Aの説明を参照のこと。
図13A図13A図13B:PBMC由来iPSCの3系列分化能。本発明者らの研究室で生成された代表的なPBMC由来iPSCの3系列分化能を示すTaqMan hPSC Scorecard表。図13A:4つの群(自己複製/多能性、外胚葉、内胚葉、及び中胚葉)における選択遺伝子の発現は、図13B:iPSC段階の14~18日後のPBMC-iPSC株のそれぞれに由来する自発的な胚様体(EB)のインビトロでの分化と比較される。自己複製の陰性スコアは、EBの分化状態を反映し、一方、3胚葉のそれぞれの陽性スコアは、定方向分化なしで外胚葉、中胚葉及び内胚葉を生成するためのPBMC由来iPSC株の比較的同等な傾向を示す。
図13B図13Aの説明を参照のこと。
図14A図14A図14C:エピソーマルプラスミドでリプログラミングされたPBMC-iPSCには、導入遺伝子が存在しない。図14A:PBMC-iPSCのゲノムDNAに存在するプラスミドベースのEBNA1遺伝子の欠如。図14B及び図14C:内因性のPOU5F1(OCT4)、SOX2、LIN28、L-MYC、及びKLF4発現(コードDNA配列、CDS)ならびにPBMC-iPSC系では検出不可能であるプラスミド由来発現(Pla)を検出するプライマーを用いた定量的RT-PCR分析によって測定した相対的な正規化された遺伝子発現。
図14B図14Aの説明を参照のこと。
図14C図14Aの説明を参照のこと。
図15図15A図15B:5p法でリプログラミングされたPBMC-iPSCは、SV40LT遺伝子の組込み及び発現がない。図15Aは、PBMC-iPSC、H9-hESC、組込み型iPSC対照株及び陽性対照(30日間PBMCS中で5pを使用してヌクレオフェクトした)から単離されたゲノム及びエピソームDNAにおけるプラスミドベースのEBNA1及びSV40LT遺伝子存在の欠如。図15B:EBNA1、SV40LT及びGAPDHの発現を検出するプライマーを用いて、同じ細胞株における定量的RT-PCR分析によって測定した遺伝子発現。ヌクレオフェクションした陽性対照と比較した場合、SV40LT遺伝子発現は、リプログラムされたPBMC-iPSC株では検出されない。32PCRサイクルを全てのプライマーセットに使用した。
図16A図16A図16B:リンパ芽球様細胞株(LCL)-iPSC及び上皮細胞由来iPSCの染色体イデオグラム。本発明者らの研究室の図16AのLCL由来iPSC(上側)及び図16Bの上皮由来iPSC(下側)に由来する異常核型の個々の染色体レベルのイデオグラム表示。イデオグラムで表される異常iPSC核型は、(上側)LCL-iPSC(n=15)/全60のLCL-iPSC培養物核型、及び(下側)上皮-iPSC(n=7)/全てのPBMC-iPSC核型(n=26)である。
図16B図16Aの説明を参照のこと。
図17】p53分析。体細胞のバリアント(iPSCクローンのみに出現するものは、GATKツールキット及びMuTectパッケージで生成された再配列及び再較正された配列ファイル(.bam)を用いて同定される。このパッケージは、対になった正常試料(この場合血液由来のDNA)及び体細胞試料(この場合はiPSCクローンDNA)から処理されたシーケンスリードを受け取り、その後、Bayesian分類器を適用して体細胞試料のみに生じるバリアントを同定してから追加の品質管理ステップでバリアントを生殖系列または体細胞として同定する。次いで、同定されたバリアントは、母集団(dbSNP)で同定された共通変異の大きなSNPデータベースでアノテートされる。
図18A図18A図18B:3P、5P法を用いた線維芽細胞におけるリプログラミング技術の追加的な特徴づけ。図18A:ヌクレオフェクション後22日目。図18B:ヌクレオフェクション後28日目。
図18B図18Aの説明を参照のこと。
図19A図19A図19B:3P、5P法を用いた線維芽細胞におけるリプログラミング技術の追加的な特徴づけ。図19A:AP染色-3プラスミド条件。図19B:AP染色-5プラスミド条件。
図19B図19Aの説明を参照のこと。
図20】Gバンド核型分析によって観察された線維芽細胞由来iPSC(fib-iPSC)における個々の染色体レベルでの種々の核型異常の頻度。転座、逆位及び誘導体を含む構造再編成。灰色で網掛けされたセルは、fib-iPSC培養物の核型異常が全く観察されなかった染色体を示す。オレンジ色で示されたセルは、染色体の増加、減少または構造的再編成を含む全体での染色体異常のカテゴリーのそれぞれについて、最高順位(上位3)の核型異常を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
本明細書に引用される全ての参考文献は、全体が記載されているかのようにその全体が参照により組み込まれる。別様に定義されない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるような同じ意味を有する。Allen et al.,Remington:The Science and Practice of Pharmacy 22nd ed.,Pharmaceutical Press(September 15,2012)、Hornyak et al.,Introduction to Nanoscience and Nanotechnology,CRC Press(2008)、Singleton and Sainsbury,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 3rd ed.,revised ed.,J.Wiley&Sons(New York,NY 2006)、Smith,March’s Advanced Organic Chemistry Reactions,Mechanisms and Structure 7th ed.,J.Wiley&Sons(New York,NY 2013)、Singleton,Dictionary of DNA and Genome Technology 3rd ed.,Wiley-Blackwell(November 28,2012)、及びGreen and Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual 4th ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(Cold Spring Harbor,NY 2012)は、本出願で使用される用語の大部分の一般的な説明を当業者に提供する。抗体の調製方法についての参考文献については、Greenfield,Antibodies A Laboratory Manual 2nd ed.,Cold Spring Harbor Press(Cold Spring Harbor NY,2013)、Kohler and Milstein,Derivation of specific antibody-producing tissue culture and tumor lines by cell fusion,Eur.J.Immunol.1976 Jul,6(7):511-9、Queen and Selick,Humanized immunoglobulins,U.S.Patent No.5,585,089(1996 Dec)、及びRiechmann et al.,Reshaping human antibodies for therapy,Nature1988 Mar 24,332(6162):323-7を参照されたい。
【0010】
当業者は、本発明の実施において使用することができる、本明細書に記載された多くの方法及び材料またはそれらの等価物を理解するであろう。実際、本発明は、記載された方法及び材料に決して限定されない。本発明の目的のために、以下の用語を以下に定義する。
【0011】
本明細書及び添付の特許請求の範囲を通して使用される場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」の意味は、文脈上明確に別様に指示されない限り、複数の言及を含む。また、文脈上別様に明確に指示されない限り、「~の中(in)」の意味は「~の中(in)」及び「~の上(on)」を含むものとする。
【0012】
記載されるように、患者固有の人工多能性幹細胞(「iPSC」)は、疾患の原因、薬物スクリーニング、及び最終的には再生医療の治療に関与するメカニズムを解明するための疾患モデリングを含む、多くの用途に期待されている。ヒトiPSCの実用は、品質、ゲノムの完全性及び安定性が維持されていることが条件である。複数の研究室では、様々な組織源に由来する核型異常が約10~25%の割合で、長期培養時にヒトiPSC株において再発性のゲノム異常が示されている。
【0013】
hiPSC株のゲノムの完全性及び安定性を維持することは、信頼できる疾患モデリング及び再生医療などの幹細胞の安全な臨床適用にとって不可欠である。体細胞のリプログラミング中及び/またはhiPSCの維持、拡大培養及び長期培養中に起こる異常な細胞遺伝学的エラーは、インビトロ疾患モデリングの精度、またはiPSCの再生医療に対するインビボでの実用性に影響する。いくつかの研究がiPSCにおける染色体の異数性、転座、重複及び欠失、及び点突然変異を報告していることを考えると、臨床用途におけるiPSCはがんと関連するゲノム異常がないことが重要である。正常なhESCの悪性類似体である、高度に異数性のヒト胚性がん腫(EC)幹細胞は、典型的に12番染色体の短腕の増幅領域ならびに1番染色体、17番染色体及びX染色体の増加を含む。
【0014】
初期、中期または後期の継代数の違いによるサブ染色体(sub-chromosomal)のコピー数多型(CNV)の増加、腫瘍抑制遺伝子に関連する欠失、及びがん遺伝子の重複は、全てiPSCにおいて報告されている。これらの研究の大部分において、iPSC株におけるゲノム異常は、組込み型リプログラミング方法から生じている。しかし、今日まで、多数の線維芽細胞由来hiPSC株または血液由来hiPSC株に固有の再発性のサブ染色体異常を体系的かつ十分に制御した(同様のリプログラミング及び幹細胞培養法)報告はない。本発明者らは、ヒトiPSC株の生産、特徴づけ、及び分化の経験が豊富なiPSC core施設を開発した。このバイオ貯蔵所では、現在、細胞株ごとに複数のクローン(2~6)を有する、十分に特徴づけされた160種類を超える個々のドナーのヒトiPSC株を保有する。iPSC Coreは、該Coreに由来する、線維芽細胞、末梢血単核細胞、不死化リンパ芽球様細胞株、及び初代上皮細胞に由来する複数の継代にわたる450の独立したiPSC培養物からのhiPSCのゲノム安定性を体系的にモニターしている。
【0015】
リプログラムのために頻繁に使用される細胞の出発原料は、皮膚生検により単離された真皮線維芽細胞であった。しかし、記載されているように、皮膚パンチ生検由来のiPSCはより侵襲的であり、リプログラミングする前に培養における増殖の期間を2~3週間延長する必要がある。最も重要なことは、UV光への表皮曝露に関連する変異がより多く存在し、皮膚由来のiPSC細胞の安全性に対する懸念が高まることである。一般的な線維芽細胞原料に付随する問題は、リプログラミングのために容易に入手できる患者組織源として利用可能な末梢血により回避されるであろう。末梢血は最も入手可能な成人の組織であり、既に血液バンクに保存されている多数の凍結試料の入手が可能になる。さらに、多くの貯蔵所は、特定の遺伝子型で末梢血またはリンパ芽球の血液を保存している。
【0016】
血液は、臨床診断で広く使用されており、標準化されかつ皮膚生検よりも外傷が少ない、より非侵襲性の採取法を含むことから、iPSC誘導のための有利な代替物のように思われる。末梢血(PB)の主要成分は赤血球及び血小板である。白血球は、3.6~11×10/mlの濃度のPB中の有核細胞である。PB中の成熟T細胞及び一次前駆細胞は、確立された方法を用いて容易に増殖させることができ、これらは最も良好に使用されるリプログラミングのための供給源の1つである。T細胞はPB中の顆粒球に続いて最も豊富な細胞であり(20~30%)、T細胞はIL-2及び抗CD3/CD28マイクロビーズで容易に増殖することができる。多能性へのT細胞のリプログラミングは、免疫療法のために老化したT細胞に対する代替物を開発するための異なるアプローチを使用する多くの研究室によって報告されている。しかしながら、成熟T細胞は、体細胞組換え後に単一のT細胞受容体(TCR)を保持し、無限の可能性でT細胞レパートリーを生成する能力を失っている。
【0017】
ここで、本発明者らは、末梢単核血液細胞(PBMC)を含む血液細胞(BC)をiPSC(BC-iPSC)に効率的にリプログラミングするための確実なプロトコルを開発し、そしてこれらのiPSC株は、公的な貯蔵所または地元の診療所から得られたそれらの線維芽細胞由来iPSC(Fib-iPSC)株と比較して細胞遺伝学的安定性に関して優れていることを示す。本発明者らは、リンパ系T細胞及び骨髄性非T細胞集団の両方からBC-iPSCを誘導するための方法及び細胞遺伝学的安定性を記載する。本発明者らは、非組込み法を使用してPBMCから生成されたhiPSC株は、組込み法で生成されるhiPSC株よりも、ゲノム異常の発生が非常に低いことを発見した。同じ体細胞由来のfib-iPSC及びBC-iPSCの両方に、同等数の新たなCNVが含まれていた。本発明者らの結果は、単離されたばかりのヒトPBMCが、エピソーマルプラスミドを用いて、より大きな細胞遺伝学的安定性を有する多能性へと忠実にリプログラミングされ得ることを示す。このように、PBMCは、獲得したゲノム異常の任意の影響を最小限に抑えるiPSCリプログラミングのための好ましい体細胞源であり、さらに再生医療の理想的な細胞源とみなされるであろう。
【0018】
成熟T細胞またはB細胞と対照的に、血液前駆細胞の代替供給源にはインタクトなゲノムが含まれる。さらに、それらは、骨髄性細胞または赤血球細胞の増殖に有利な培養条件で増殖させることができる。血液幹細胞/前駆細胞は、表面マーカーCD34を発現し、幹細胞ニッチに存在する。しかしながら、毎日約1%の幹細胞/前駆細胞しか循環に入らず、そして結果としてPB中0.01~0.1%の細胞のみがCD34+細胞である。この集団は、磁気活性化細胞選別法(MACS)によって濃縮され得るか、または数日間MNCを培養することによりCD34+細胞を5~20%の純度にまで増殖され得、これによりさらに精製せずにリプログラミングに使用することができる。
【0019】
他の有核末梢血細胞には、顆粒球(主に好中球)、単球、Tリンパ球、Bリンパ球及び少数の前駆細胞が含まれる。これらの血液構成の収束は、溶解緩衝液に続いて複数の遠心分離を用いて赤血球及び血小板を枯渇させることで達成され得る。Ficoll勾配遠心分離を使用して赤血球及び顆粒球の両方を枯渇させ、単核細胞(MNC)を濃縮させることもできる。この背景について、外因的に発現された因子によるリプログラミングは周知のように非効率的であり、多能性を達成するためには複数の細胞周期が必要である。このように、初代顆粒球、単球及びBリンパ球は、これらの細胞を増殖させるための確実なプロトコルが無いため、リプログラミングすることが最も難しい細胞の1つである。この分野における主な成功には、エプスタイン-バーウイルス不死化リンパ芽球B細胞がエクスビボ培養で容易に増殖されることで、多能性へとリプログラミングされることが含まれる。
【0020】
上記を考慮すると、非常に重要なのは、血液の非T細胞成分のリプログラミングである。既存の技術では、単離した末梢血単核細胞(PBMC)からこの集団をリプログラムすることはほとんど不可能である。より具体的には、PBMCは、丸い核を有する任意の末梢血細胞である。これにはリンパ球(T細胞、B細胞、NK細胞)、単球、樹状細胞が含まれる。リンパ球は、小サイズ(5~10μm)及び中サイズ(10~18μm)であり、PBMCの70~90%を構成する。これらの細胞に含まれるのは、70~85%のCD3+T細胞(PBMCの40~70%)、典型的にはCD4対CD8比が2:1であるCD4ヘルパーT細胞(PBMCの25~60%)、CD8「細胞傷害性」区分のT細胞(PBMCの5~30%)である。残りの区分には、5~20%のB細胞(PBMCの15%まで)及び5~20%のNK細胞(PBMCの15%まで)が含まれる。単球は16~25μmであり、PBMC(マクロファージ)の10~30%である。樹状細胞:PBMCの1~2%。
【0021】
ここで、本発明者は、新鮮な(増殖していない)末梢血単核細胞(PBMC)のiPSC(PBMC-iPSC)への新規かつ確実な非組込み型エピソーマルプラスミドリプログラミング方法を記載する。本発明者らは、この方法を使用して生成したPBMC-iPSCが、異常率がわずか1.9%である優れた染色体レベルの核型安定性を有し、サブ染色体で新たなコピー数多型がほとんどないことを示す。対照的に、予め増殖させた真皮線維芽細胞、リンパ芽球細胞株または上皮細胞からエピソーマルリプログラミングされたiPSC株(それぞれ、fib-iPSC、LCL-iPSC、またはepi-iPSC)は、10倍超の核型不安定性(23~27%)を示す。これらの知見は、本明細書に記載されている方法を用いて非増殖PBMCからリプログラミングされ、維持されたiPSCが優れた細胞遺伝学的安定性及び最小限のゲノム異常を有することを示しており、このことは、これが研究及び治療的臨床応用においてiPSCの好ましい方法であることを示唆している。
【0022】
これらの記載されたアプローチにより、そうでなければ末梢血に由来する治療材料に存在するであろう突然変異または他の形態の構造変化の原因となる環境侵害を回避しながら、ゲノム及び核型の安定性に優れた特性を有する細胞リプログラミングのための容易に入手可能な資源としての末梢血の使用が可能となる。
【0023】
記載されるように、本発明者らは本明細書中で「BC-iPSC」と記載されるリプログラミングされた多能性細胞をもたらす、全血及び末梢血を含む血液細胞からのiPSCの生成を含む、非組込み型エピソーマルプラスミドベクターを使用する高効率で再現性のあるリプログラミングのための改良された技術を確立した。
【0024】
一般に、非組込み型リプログラミングのための異なるアプローチは、少なくとも(1)組込み欠損ウイルス送達、(2)エピソーマル送達、(3)直接的なRNA送達、(4)直接的なタンパク質送達及び(5)化学的な誘導にわたる。本明細書にさらに記載されるように、エピソーマルベクターの採用により、それらの産生に使用されるベクターを実質的に含まないのは、iPSCの生成を可能にするエピソーマルベクターまたは類似のベクターが感染または複製コンピテントウイルスを生じるのに十分なウイルスゲノムをコードしないためである。同時に、これらのベクターは、開始時の体細胞宿主細胞において、ある程度の自己複製能を実際に有する。この自己複製能により、標的宿主細胞内に定着開始するための脱分化プロセスを可能にする上で有益であると理解されている、ある程度の持続的発現が提供される。
【0025】
これらの基準を満たすプラスミドベクターの1つの例には、自己複製を制限することができ、哺乳類細胞で機能することが知られているEpstein Barr oriP/Nuclear Antigen-1(「EBNA1」)の組み合わせが含まれる。エプステインバーウイルス由来の2つの要素であるoriP及びEBNA1を含むため、ウイルスレプリコン領域oriPへのEBNA1タンパク質の結合により、哺乳動物細胞内においてプラスミドのエピソームとしての存在が比較的長期間維持される。oriP/EBNA1ベクターのこの特長は、組込みのないiPSCの生成に理想的である。
【0026】
より具体的には、oriP/EBNA1ベクターにコードされたリプログラミング因子の持続的発現は、複数の細胞分割周期にわたって生じる。いくつかの細胞分裂にわたる十分に高いレベルのリプログラミング因子により、1回のみの感染後であっても良好なリプログラミングが可能となる。リプログラミング因子の持続的発現は、初期プログラミング段階の間有益であると理解されるが、無制限の常時発現は、リプログラミングプロセスの後続段階を妨害するだろう。例えば、衰えないリプログラミング因子の発現は、その後の宿主細胞の増殖、発生及び運命の指定を妨害するであろう。
【0027】
同時に、エピソームのごく一部が細胞周期ごとに失われるため、さらなる利点は、最終的なリプログラミング因子導入遺伝子の除去である。これは、宿主細胞ゲノム及びエピソーム自己複製の非対称複製能力に起因し、1世代あたり約0.5%のベクターが失われると推定される。各細胞分裂中のプラスミドの漸進的な枯渇は、組込みのないiPSCの集団に至る増殖に続くならば、避けられない。oriP/EBNA1上の永続的ではあるが最終的には停止されるリプログラミング因子発現は、トランスポゾン及び切除可能なポリシストロニックレンチウイルスベクターエレメントの使用を通して試みられたように、リプログラミングプロセスの様々な段階に対する必要性と非常に一致しており、そしてリプログラミング因子を除去するためのさらなる操作ステップが必要ない。oriP/EBNA1は、リプログラミング研究において他者によって適用されているが、報告されている効率は非常に低く(ヌクレオフェクトした百万細胞あたりわずか3~6個のコロニー)、これは、1つにはトランスフェクション効率に負の影響を及ぼす、複数のリプログラミング因子をコードする大きなプラスミド(例えば、12kb超)によるものであり得る。
【0028】
ベクター設計におけるこれらの選択に加えて、文献で実施されているリプログラミング因子の特定の組み合わせは様々であった。前述したように、使用されたリプログラミング因子には、多能性関連遺伝子Oct-4、Sox-2、Lin-28、Nanog、Sall4、Fbx-15及びUtf-1が含まれる。元来、これらの因子は通常、発生の初期に発現し、着床前胚及び着床後の固有胚の内部細胞塊を構成する細胞のサブセットの多能性潜在力の維持に関与すると理解されている。それらの異所性発現により、宿主細胞内の別の休止状態の内在性核内多能性プログラムを開始及び伝播させる、胚様の転写カスケードの確立が可能になると考えられている。Tert、Klf-4、c-Myc、SV40ラージT抗原(「SV40LT」)及びp53を標的とするショートヘアピンRNA(「shRNA-p53」)など、ある特定の他のリプログラミング決定因子が適用されている。これらの決定因子は、それ自体が潜在能力決定因子ではないかもしれないが、リプログラミングにおいて有益であると報告されている。例えば、TERT及びSV40LTは、リプログラミング中の生存を促進するために細胞増殖を増強すると考えられているが、p53のショートヘアピンターゲティングなどの他のものは、老化及びアポトーシス機構などのリプログラミングの障壁を抑制または排除する。それぞれの場合において、リプログラミングの速度及び効率の両方の増加が観察される。さらに、マイクロRNA(「miRNA」)も多能性及びリプログラミングに影響することが知られており、miR□290クラスター由来の一部のmiRNAがリプログラミング研究に適用されている。例えば、多分化能関連遺伝子に加えて、線維芽細胞へのmiR 291 3p、miR 294またはmiR 295の導入により、リプログラミング効率が高まることも報告されている。
【0029】
当分野における種々のベクター及びリプログラミング因子は、細胞内でリプログラミングを確立することができる複数の成分を提示するようであるが、良好なリプログラミングを保持するのに必要な化学量論的発現レベルを考慮に入れる場合、高度の複雑さが生じる。例えばOct-4及びSox2が単一のベクター上で1:1の比率でコードされる場合、別々のベクターで2つの因子を送達するのとは対照的に、体細胞リプログラム効率は4倍高いと報告されている。後者の場合、2つの因子の取り込み率が制御されにくくなり、リプログラミング効率に悪影響を与える。これらの障壁に対処するための1つのアプローチは、転写プロモーターの遠位にある導入遺伝子(複数可)の上流に提供される、内部リボソーム導入部位(「IRES」)の包含などのポリシストロニックベクターの使用である。この機構により、1つまたは複数の導入遺伝子が単一のリプログラミングベクターで提供され、様々な誘導性プロモーターまたは構成的プロモーターを発現カセットとして一緒に組み合わせて、複数の導入遺伝子に対する転写制御をより顆粒レベルで伝達することができる。これらのより特異的な制御レベルにより、リプログラミングプロセスに相当な利益がもたらされ、ベクター上の別々の発現カセットは別々のプロモーターの制御下でそれに応じて設計され得る。
【0030】
単一または少数のベクターを介してこのような因子を提供することには利点があるが、最終的なベクターサイズに対する上限サイズの制限が存在し、それは宿主標的細胞にそれらの送達を促進させる試みを妨げる可能性がある。例えば、ポリシストロニックベクターの使用についての初期の報告では、細胞の1%未満、より典型的には0.1%未満で時々生じる非常に低いリプログラミング効率が注目された。これらの障壁の一部は、大きな構築物(例えば、線維芽細胞)に対する低い寛容性、または宿主細胞によるIRES部位の不十分なプロセシングを有する、ある特定の標的宿主細胞によるものである。さらに、ベクター発現カセットにおける因子の配置は、その化学量論的及び時間的発現の両方に影響し、リプログラミング効率に影響を及ぼすさらなる変化をもたらす。したがって、いくつかの改良された技術は、様々な発現カセット中の1つ以上のリプログラミング因子をそれぞれコードする複数のベクターに依存することができる。これらの設計の下、送達のための特定のベクターの量を変更することにより、標的細胞における発現レベルを調節するための洗練されていないが比較的直接的な経路が提供される。
【0031】
本明細書に記載される技術のさらなる利点は、ESC培地及び/またはE7培地の使用を含むリプログラミングプロセスのための規定された培地条件の使用である。ある特定の添加物はリプログラミングプロセスを刺激するためにあっても良いが、(例えば、L-アスコルビン酸、トランスフェリン、重炭酸ナトリウム、インスリン、亜セレン酸ナトリウム及び/またはbFGF)血清または動物成分は使用しない。場合によって、それらはリプログラミングが行われる化学的条件及び/または大気条件を変えることでさらなる利点があり得る。例えば、着床前の胚は血管新生されておらず、そして低酸素であるため(骨髄幹細胞のニッチと同様)、大気の21%のOの代わりに5%Oの低酸素条件下でリプログラミングすることにより、リプログラミング効率を高める機会がさらに提供され得る。同様に、化学的誘導技術は、異なるリプログラミング研究で幅広く使用されているリプログラミング、特にヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤分子、バルプロ酸(VPA)と組み合わせて使用されている。同時に、MAPKキナーゼ(MEK)-ERK(「MEK」)阻害剤PD0325901、トランスフォーミング増殖因子β(「TGF-β」)I型受容体ALK4、ALK5及びALK7阻害剤SB431542などの他の小分子ならびにグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3(「GSK3」)阻害剤CHIR99021は、自己複製を持続させるために他の経路(例えば、MAPKキナーゼ(MEK)-ERK経路の阻害)の調節と組み合わせて分化誘導経路(例えば、BMPシグナル伝達)の活性化のために適用される。Y-27632及びチアゾビビン(「Tzv」)などのRho関連コイルドコイル含有タンパク質キナーゼ(「ROCK」)阻害剤などの他の小分子には、生存を促進し、特に単一細胞の解離において細胞死に対するpSCの脆弱性を低減させるために適用されている。
【0032】
送達ベクターの選択、リプログラミング因子の組み合わせ、及びリプログラミングの条件に加えて、さらなる変形には、リプログラミングのための宿主標的細胞の性質を考慮しなければならない。今日まで、線維芽細胞、胃細胞及び肝臓細胞の培養物、ヒトケラチノサイト、脂肪細胞、ならびに凍結ヒト単球を含む、幅広い細胞がリプログラミングのための供給源として役立っている。明らかに、多くの組織源にわたって、広く堅牢な脱分化の可能性がある。それにもかかわらず、ドナー細胞種に応じて、異なる効率及び動態でリプログラミングが達成されることが広く理解されている。例えば、線維芽細胞はリプログラミング研究にとって最も一般的なドナー細胞種であるが、Oct-4、Sox-2、Klf-4及びc-Mycで形質導入されたヒト初代ケラチノサイトなどの他の細胞種は、100倍超の効率かつ2倍の速さでリプログラミングすると報告されている。さらに、臍帯血細胞などのいくつかの他の細胞種は、着床するための脱分化にOct-4及びSox-2などのリプログラミング因子のサブセットのみを必要し得るが、神経前駆細胞はOct-4のみを必要とし得る。いずれの特定の理論にも拘束されるものではないが、特定の宿主細胞のリプログラミング効率及び/または必要なリプログラミング因子の相違は、リプログラミングにより適している高い内因性レベルのある特定のリプログラミング因子及び/または内因性エピジェネティック状態に起因すると考えられる。
【0033】
これらの多くの他の原料がiPSCの生成のための研究を通じて使用されてきたが、末梢血(PB)由来の単核細胞(MNC)は、利便性と細胞リプログラミングのためのほぼ無限の原料としての特徴のために、非常に魅力的な宿主細胞候補である。特にPB細胞は、線維芽細胞(例えば、皮膚生検)などの他の原料からの単離と比較して、比較的単離(例えば、採血)が容易である。これらの細胞は、リプログラミングする前に面倒な培養及び増殖を必要とせず、それによってリプログラミングiPSCを得られる全体の時間が短縮される。
【0034】
良好なリプログラミングの後、クローン選択により多能性幹細胞株の生成が可能になる。理想的には、そのような細胞は、必要な形態(すなわち、密集したコロニー、高い核対細胞質比及び顕著な核小体)、培養における無限増殖(すなわち不死)のための自己複製能力、及び3つの胚葉全てに分化する能力(例えば、内胚葉、中胚葉及び外胚葉)を有する。所与の細胞集団の多能性を特徴づけるさらなる技術には、3つの胚葉全ての細胞または組織に特徴的な奇形腫の形成のための重症複合免疫不全(「SCID」)マウスなどの免疫不全状態の動物への注射が含まれる。
【0035】
上記の例として、ヌクレオフェクションあたり約5×10細胞のPBMCをAmaxa Nucleofector 2D Device with the Amaxa Human T-cell Nucleofector(登録商標)KitにおいてプログラムV-024を用いてプラスミド混合物4pまたはプラスミド混合物5pのいずれかでヌクレオフェクトした。次いで、約1×10個の細胞を、マイトマイシン処理マウス胚性フィーダー(MEF)層で覆われるか、または10μg/mlのLaminin-521(L-521、BioLamina)でコーティングした6ウェルプレートのウェルに播種した。各エピソーマルプラスミド(pEP4 E02S ET2K、pCXLE-hOCT3/4-shp53-F、pCXLEhUL、pCXLE-hSK、及びpCXLE-EBNA1)、(Addgene)は7つの因子(OCT4、SOX2、KLF4、LMYC、LIN28、SV40LT及びp53shRNA)を発現する。外因的に導入された遺伝子は組み込まれず、その代わりエピソームにより一時的に発現されるため、この方法は、ウイルス形質導入に優る大きな利点を有する。細胞は、αβ T細胞培地(30U/mlのIL-2及び5ul/ウェルのDynabeads Human T-activator CD3/CD28を添加したX-vivo10)または非T細胞培地(10%FBS、10ng/mlのIL-3、10ng/mlのIL-6、10ng/mlのG-CSF及び10ng/mlのGM-CSFを添加したαMEM)のいずれか2mlに播種した。ヌクレオフェクションの2日後に、5ng/mlのbFGF(MEF条件用)またはE7培地(L-521条件用)を含む等量の霊長類ESC培地(ReproCell)を、古い培地を吸引することなくウェルに添加した。4日目からは、各ウェルから培地を穏やかに吸引し、2mlの適切な新鮮なリプログラミング培地を各ウェルに加えた。培地は1日おきに交換した。ヌクレオフェクション後約18日目に、各条件の全てのウェルにおける個々のコロニーを観察した。ヌクレオフェクション後約25日目に、個々のコロニーを単離し、適切な基質及び培地を含む12ウェルプレートのうち1ウェルにサブクローニングした。これらのヌクレオフェクションした細胞を、フィーダー非依存性のBD Matrigel(商標)増殖因子減少型マトリックス(Corning/BD Biosciences,#354230)に播種した。全ての培養物は、リプログラミングプロセスの間、20%のO2で維持した。ES/iPSC様形態を有する個々のPBMC-iPSCコロニーは25~32日の間に現れ、そして最良の形態を有するものは機械的に単離し、新鮮なMatrigel(商標)マトリックスと共に12ウェルプレートに移し、mTeSR(登録商標)1培地で維持した。さらなる解析のために、iPSCクローンをさらに増殖させてスケールアップした。全ての線維芽細胞は、記載したように3pリプログラミングプラスミド混合物を使用してリプログラムした。
【0036】
本明細書には、血液細胞由来の人工多能性幹細胞(「BC-iPSC」)の組成物が記載される。特定の実施形態において、血液細胞由来の人工多能性幹細胞の組成物は、ある量の血液細胞を用意すること、ある量のリプログラミング因子を血液細胞に送達すること、血液細胞をリプログラミング培地中で少なくとも4日間培養することによって生成される細胞を含み、ここでリプログラミング因子を送達すること及び培養することにより、血液細胞由来の人工多能性幹細胞が生成される。ある特定の実施形態において、血液細胞はT細胞である。他の実施形態において、血液細胞は非T細胞である。他の実施形態において、血液細胞は、例えば末梢血単核細胞(PBMC)を含む単核細胞(MNC)である。他の実施形態において、細胞は、一次顆粒球、単球及びBリンパ球である。
【0037】
ある特定の実施形態において、リプログラミング因子はOct-4、Sox-2、Klf-4、c-Myc、Lin-28、SV40ラージT抗原(「SV40LT」)、及びp53を標的とするショートヘアピンRNA(「shRNA-p53」)である。他の実施形態において、これらのリプログラミング因子はpEP4 E02S ET2K、pCXLE-hOCT3/4-shp53-F、pCXLE-hSK、pCXLE-hUL及びpCXWB-EBNA1を含むベクターの組み合わせにコードされている。これには、例えば、約0.5~1.0ugのpCXLE-hOCT3/4-shp53、0.5~1.0ugのpCXLE-hSK、0.5~1.0ugのpCXLE-UL、約0.25~0.75ugのpCXWB-EBNA1及び0.5~1.0ugのpEP4 E02S ET2Kの使用が含まれる。これには例えば、0.83ugのpCXLE-hOCT3/4-shp53、0.83ugのpCXLE-hSK、0.83ugのpCXLE-UL、0.5ugのpCXWB-EBNA1及び0.83ugのpEP4 E02S ET2Kの使用が含まれ、ここでSV40LT(pEP4 E02S ET2Kにコードされる)とEBNA-1(pCXWB-EBNA1にコードされる)の化学量論比は、末梢血単核細胞を含む血液の非T細胞成分のリプログラミングを支持する。ある特定の他の実施形態において、リプログラミング培地はPD0325901、CHIR99021、HA-100、及びA-83-01を含む。他の実施形態において、リプログラミング培地での血液細胞の培養は、4~30日間である。様々な実施形態において、血液細胞は、ある量のリプログラミング因子を送達した後で、処理した細胞培養表面上に播種される。種々の実施形態において、処理には、マウス胚線維芽細胞などのフィーダー細胞の播種が含まれる。他の実施形態において、処理には、細胞外基質タンパク質によるコーティングが含まれる。様々な実施形態において、細胞外基質タンパク質はラミニンを含む。
【0038】
様々な実施形態において、BC-iPSCは、細胞株として連続的に継代することができる。様々な実施形態において、BC-iPSCはゲノム安定性を有する。ゲノム安定性は、当分野で公知の様々な技術によって確認することができる。例えば、Gバンド核型分析は、ゲノム安定性を欠く異常細胞を同定することができ、ここで異常細胞は約10%以上のモザイクを有するか、または約5、6、7、8、9、10もしくはそれ以上のMbよりも大きい1つ以上の均衡転座を有する。あるいは、ゲノム安定性は、比較ゲノムハイブリダイゼーション(aCGH)マイクロアレイを用いて測定することができ、例えばBC-iPSCを線維芽細胞などの非血液細胞源由来のiPSCと比較する。ゲノム安定性には、コピー数多型(CNV)、重複/欠失、及び不均衡転座が含まれ得る。様々な実施形態において、BC-iPSCは、約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、15、16、17、18、19、または20Mb以下の平均サイズの増幅及び欠失を含む。様々な実施形態において、BC-iPSCは、約20~30Mb以下の平均サイズの増幅及び欠失を示さない。様々な実施形態において、BC-iPSCは、約30~40Mb以下の平均サイズの増幅及び欠失を示さない。様々な実施形態において、BC-iPSCは、約40~50Mb以下の平均サイズの増幅及び欠失を示す。様々な実施形態において、BC-iPSCで獲得された新たな増幅及び欠失の平均数は、約5、4、3、2または1未満である。例えば、fib-iPSCにおける新たな増幅及び欠失は、PBMC-iPSCよりも少なくとも2倍大きい。
【0039】
異なる実施形態において、リプログラミング因子は、以下のうちの1つ以上をも含み得る:Oct-4、Sox-2、Klf-4、c-Myc、Lin-28、SV40LT、shRNA-p53、nanog、Sall4、Fbx-15、Utf-1、Tert、またはmiR□291□3p、miR□294もしくはmiR□295などのMir-290クラスターマイクロRNA。異なる実施形態において、リプログラミング因子はベクターによりコードされる。異なる実施形態において、ベクターは例えば、非組込み型エピソーマルベクター、ミニサークルベクター、プラスミド、レトロウイルス(組込み型及び非組込み型)及び/または当業者に公知の他の遺伝要素であり得る。異なる実施形態において、リプログラミング因子は1つ以上のoriP/EBNA1由来ベクターによってコードされる。異なる実施形態において、ベクターは1つ以上のリプログラミング因子をコードし、そしてOct-4、Sox-2、Klf-4、c-Myc、Lin-28、SV40LT、shRNA-p53、nanog、Sall4、Fbx-15、Utf-1、Tert、またはmiR□291□3p、miR□294もしくはmiR□295などのMir-290クラスターマイクロRNAのうちの1つ以上を送達させるために、ベクターの組み合わせを同時に使用することができる。例えば、oriP/EBNA1は、pCXLE-hUL、pCXLE-hSK、pCXLE-hOCT3/4-shp53-F、pEP4 EO2S T2K及びpCXWB-EBNA1などの複数のリプログラミング因子のベクター組み合わせをコードすることができるエピソーマルベクターである。
【0040】
他の実施形態において、リプログラミング因子は、とりわけ、ヌクレオフェクション、トランスフェクション、形質導入、電気融合、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合などの当分野で公知の技術によって送達される。他の実施形態において、リプログラミング因子は、RNA、線状DNA、ペプチドもしくはタンパク質、または多能性幹細胞の細胞抽出物として提供される。
【0041】
様々な実施形態において、リプログラミング培地は胚性幹細胞(ESC)培地を含む。様々な実施形態において、リプログラミング培地はbFGFを含む。様々な実施形態において、リプログラミング培地はE7培地である。様々な実施形態において、リプログラミングE7培地は、L-アスコルビン酸、トランスフェリン、重炭酸ナトリウム、インスリン、亜セレン酸ナトリウム及び/またはbFGFを含む。異なる実施形態において、リプログラミング培地は少なくとも1つの化学的誘導小分子を含む。異なる実施形態において、少なくとも1つの化学的誘導小分子には、PD0325901、CHIR99021、HA-100、A-83-01、バルプロ酸(VPA)、SB431542、Y-27632またはチアゾビビン(「Tzv」)が含まれる。異なる実施形態において、リプログラミング培地中でのBC培養は、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30日間である。
【0042】
ある特定の実施形態において、BC-iPSCは、例えば対象から血液試料を採取することによる、対象から過去に単離された血液細胞に由来する。他の実施形態において、血液細胞は疾患変異を有する対象から単離される。例えば、常染色体優性、劣性、伴性などの任意の数の突然変異を有する対象は、上記の突然変異を有するBC-iPSCを生成するための血液細胞の供給源として役立ち得る。他の実施形態において、疾患変異は、神経変性疾患、障害、及び/または状態と関連する。他の実施形態において、疾患変異は炎症性腸疾患、障害、及び/または状態と関連する。様々な実施形態において、BC-iPSCは、多能性幹細胞の特徴を有する。多能性幹細胞のいくつかの例示的な特徴には、当業者によって理解及び認識されているその他の特徴の中でも、インビトロまたは免疫不全動物に注入された場合インビボのいずれかでの3つの胚葉(外胚葉、内胚葉、中胚葉)の細胞への分化、Oct-4、Sox-2、nanog、TRA-1-60、TRA-1-81、SSEA4などの多能性マーカーの発現、高レベルのアルカリホスファターゼ(「AP」)発現、培養における無限増殖が含まれる。
【0043】
他の実施形態には、上記の方法によって生成されたある量の血液細胞由来の人工多能性幹細胞及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が含まれる。
【0044】
また、本明細書には、ある量の細胞を用意すること、細胞にある量のリプログラミング因子を送達すること、細胞をリプログラミング培地中で少なくとも4日間培養することを含む、人工多能性幹細胞を生成するための効率的な方法が記載されており、ここで、リプログラミング因子を送達すること及び培養することにより、人工多能性幹細胞が生成される。ある特定の実施形態において、細胞は初代培養細胞である。他の実施形態において、細胞は血液細胞(BC)である。ある特定の実施形態において、血液細胞はT細胞である。他の実施形態において、血液細胞は非T細胞である。他の実施形態において、細胞は例えば末梢血単核細胞(PBMC)を含む単核細胞(MNC)である。他の実施形態において、細胞は、一次顆粒球、単球及びBリンパ球である。
【0045】
ある特定の実施形態において、リプログラミング因子はOct-4、Sox-2、Klf-4、c-Myc、Lin-28、SV40ラージT抗原(「SV40LT」)、及びp53を標的とするショートヘアピンRNA(「shRNA-p53」)である。他の実施形態において、これらのリプログラミング因子はpEP4 E02S ET2K、pCXLE-hOCT3/4-shp53-F、pCXLE-hSK、pCXLE-hUL及びpCXWB-EBNA1を含むベクターの組み合わせにコードされている。これには、例えば、約0.5~1.0ugのpCXLE-hOCT3/4-shp53、0.5~1.0ugのpCXLE-hSK、0.5~1.0ugのpCXLE-UL、約0.25~0.75ugのpCXWB-EBNA1及び0.5~1.0ugのpEP4 E02S ET2Kの使用が含まれる。これには例えば、0.83ugのpCXLE-hOCT3/4-shp53、0.83ugのpCXLE-hSK、0.83ugのpCXLE-UL、0.5ugのpCXWB-EBNA1及び0.83ugのpEP4 E02S ET2Kの使用が含まれ、ここでSV40LT(pEP4 E02S ET2Kにコードされる)とEBNA-1(pCXWB-EBNA1にコードされる)の化学量論比は、末梢血単核細胞を含む血液の非T細胞成分のリプログラミングを支持する。様々な実施形態において、リプログラミング培地は胚性幹細胞(ESC)培地を含む。様々な実施形態において、リプログラミング培地はbFGFを含む。様々な実施形態において、リプログラミング培地はE7培地である。様々な実施形態において、リプログラミングE7培地はL-アスコルビン酸、トランスフェリン、重炭酸ナトリウム、インスリン、亜セレン酸ナトリウム及び/またはbFGFを含む。異なる実施形態において、リプログラミング培地は少なくとも1つの化学的誘導小分子を含む。ある特定の他の実施形態において、リプログラミング培地はPD0325901、CHIR99021、HA-100、及びA-83-01を含む。他の実施形態において、リプログラミング培地での血液細胞の培養は、4~30日間である。
【0046】
様々な実施形態において、BC-iPSCは、細胞系として連続的に継代することができる。様々な実施形態において、BC-iPSCはゲノム安定性を有する。ゲノム安定性は、当分野で公知の様々な技術によって確認することができる。例えば、Gバンド核型分析は、ゲノム安定性を欠く異常細胞を同定することができ、ここで異常細胞は約10%以上のモザイクを有するか、または約5、6、7、8、9、10もしくはそれ以上のMbよりも大きい1つ以上の均衡転座を有する。あるいは、ゲノム安定性は、比較ゲノムハイブリダイゼーション(aCGH)マイクロアレイを用いて測定することができ、例えばBC-iPSCを線維芽細胞などの非血液細胞源由来のiPSCと比較する。ゲノム安定性には、コピー数多型(CNV)、重複/欠失、及び不均衡転座が含まれ得る。様々な実施形態において、BC-iPSCは、約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、15、16、17、18、19、または20Mb以下の平均サイズの増幅及び欠失を含む。様々な実施形態において、BC-iPSCは、約20~30Mb以下の平均サイズの増幅及び欠失を示す。様々な実施形態において、BC-iPSCは、約30~40Mb以下の平均サイズの増幅及び欠失を示す。様々な実施形態において、BC-iPSCは、約40~50Mb以下の平均サイズの増幅及び欠失を示す。様々な実施形態において、BC-iPSCで獲得された新たな増幅及び欠失の平均数は、約5、4、3、2または1未満である。例えば、fib-iPSCにおける新たな増幅及び欠失は、PBMC-iPSCよりも少なくとも2倍大きい。様々な実施形態において、本方法は、細胞株として連続的に継代される場合、4~8、9~13、13~17、17~21、21~25または29以上の継代数に対して、全体で約20%、15%、10%、5%以下の異常核型を示すiPSC細胞株を生成する。
【0047】
異なる実施形態において、リプログラミング因子は、以下のうちの1つ以上をも含み得る:Oct-4、Sox-2、Klf-4、c-Myc、Lin-28、SV40LT、shRNA-p53、nanog、Sall4、Fbx-15、Utf-1、Tert、またはmiR□291□3p、miR□294もしくはmiR□295などのMir-290クラスターマイクロRNA。異なる実施形態において、リプログラミング因子はベクターによりコードされる。異なる実施形態において、ベクターは例えば、非組込み型エピソーマルベクター、ミニサークルベクター、プラスミド、レトロウイルス(組込み型及び非組込み型)及び/または当業者に公知の他の遺伝要素であり得る。異なる実施形態において、リプログラミング因子は1つ以上のoriP/EBNA1由来ベクターによってコードされる。異なる実施形態において、ベクターは1つ以上のリプログラミング因子をコードし、そしてOct-4、Sox-2、Klf-4、c-Myc、Lin-28、SV40LT、shRNA-p53、nanog、Sall4、Fbx-15、Utf-1、Tert、またはmiR□291□3p、miR□294もしくはmiR□295などのMir-290クラスターマイクロRNAのうちの1つ以上を送達させるために、ベクターの組み合わせを同時に使用することができる。例えば、oriP/EBNA1は、pCXLE-hUL、pCXLE-hSK、pCXLE-hOCT3/4-shp53-F、pEP4 EO2S T2K及びpCXWB-EBNA1などの複数のリプログラミング因子のベクター組み合わせをコードすることができるエピソーマルベクターである。
【0048】
他の実施形態において、リプログラミング因子は、とりわけ、ヌクレオフェクション、トランスフェクション、形質導入、電気融合、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合などの当分野で公知の技術によって送達される。他の実施形態において、リプログラミング因子は、RNA、線状DNA、ペプチドもしくはタンパク質、または多能性幹細胞の細胞抽出物として提供される。特定の実施形態において、細胞は、リプログラミング因子の送達の前に酪酸ナトリウムで処理される。他の実施形態において、細胞は、さらなる培養の前に、組織培養表面上で1、2、3、4日以上インキュベートされる。これには、例えば、マトリゲルコーティングされた組織培養表面上でのインキュベーションが含まれ得る。他の実施形態において、リプログラミング条件には、大気21%のOより少ない5%Oなどの通常の酸素条件の適用が含まれる。
【0049】
様々な実施形態において、リプログラミング培地は胚性幹細胞(ESC)培地を含む。様々な実施形態において、リプログラミング培地はbFGFを含む。様々な実施形態において、リプログラミング培地はE7培地である。様々な実施形態において、リプログラミングE7培地はL-アスコルビン酸、トランスフェリン、重炭酸ナトリウム、インスリン、亜セレン酸ナトリウム及び/またはbFGFを含む。異なる実施形態において、リプログラミング培地は少なくとも1つの化学的誘導小分子を含む。異なる実施形態において、少なくとも1つの化学的誘導小分子には、PD0325901、CHIR99021、HA-100、A-83-01、バルプロ酸(VPA)、SB431542、Y-27632またはチアゾビビン(「Tzv」)が含まれる。異なる実施形態において、リプログラミング培地中でのBC培養は、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30日間である。
【0050】
リプログラミングの効率は、当業者によって容易に理解される多くの技術のうちの1つによって容易に確認される。例えば、効率は、一式のリプログラミング因子を受け取ったドナー細胞の数と、生成したリプログラミングコロニーの数の間の比率によって説明され得る。リプログラミング因子を受け取ったドナー細胞の数の測定は、リプログラミング因子をコードするベクターにGFPなどのレポーター遺伝子が含まれる場合に、直接的に測定することができる。あるいは送達効率の間接的な測定は、リプログラミング因子ベクターを送達する、ペアとなる試料における送達効率を評価するための代用物として、レポーター遺伝子をコードするベクターをトランスフェクトすることによって得ることができる。さらに、生成されたリプログラミングコロニーの数は、例えば、アルカリホスファターゼ(AP)陽性クローン、転写因子OctまたはNanogの内因性発現を伴うコロニー、またはTra-1-60のような表面マーカーの抗体染色など、1以上の胚性幹細胞様多能性特性の出現を観察することによって測定することができる。別の例において、効率は、人工多能性幹細胞生成のキネティクスによって記述することができる。例えば、効率には、細胞系として連続的に継代される場合、4~8、9~13、13~17、17~21、21~25または29以上の継代数に対して、全体で約20%、15%、10%、5%以下の異常核型を示すiPSC細胞株を産生する方法を含む、正常核型の細胞株の産生を含めることができる。
【実施例0051】
実施例1
血液用の一般的なiPSCリプログラミングプロトコル
一般的に、リプログラミング方法には以下のステップが含まれる。凍結した末梢血単核細胞(PBMC)または単離したばかりのPBMCを使用することができる。解凍または単離したばかりのPBMSを播種するために、処理した細胞培養表面を使用することができる。これには、例えばマウス胚性フィーダー細胞(MEF)または細胞外基質ラミニンL-521Aで処理した細胞培地表面が含まれる。多能性因子の組み合わせをコードするプラスミド混合物を有する発現プラスミド混合物が提供される。例えばヌクレオフェクションを用いてプラスミドをPBMCに導入してから、処理した細胞培養表面上に配置する。培養2日後、リプログラミング培地を導入し、コロニーが形成されるまで補充する。
【0052】
実施例2
リプログラミングのための末梢血採取及び最小限の処理
本発明者らは、採取したばかりの、または市販のヒトまたは哺乳動物の末梢血(PB)からリンパ球を単離するためのプロセスを確立した。そのような試料の採取及び輸送のための好ましい形態は、CPTチューブである。この形態により、供給元が輸送前にバキュテイナ(複数可)を遠心して血漿成分から赤血球を単離することが可能になる。本プロトコルは、CPTチューブの血漿の層からのPBMCの単離を提供する。
【0053】
任意選択の検査:バキュテイナを開ける前に、HIV、B型及びC型肝炎及び梅毒に関する検査を含むいくつかの病態の検査を行うことができる。後者の試験結果は、採取日から1~3営業日内に入手しなければならない。陽性結果であった場合、試料(複数可)は適切に廃棄され、試料を処理するために使用された全ての実験設備は除染される。
【0054】
実施例3
採取手順
(1)赤血球及び血小板は容器を用いて減らす。クエン酸ナトリウムを含むBDバキュテイナ(登録商標)CPT(商標)チューブを室温(18~25℃)にし、患者識別のため適切にラベルをしなければならない。CPTバキュテイナに70%イソプロパノール/エタノールをスプレーし、アルコールを拭き取る。
(2)採血はBDバキュテイナ(登録商標)真空採血管の標準的な方法を使用して1試料あたり3本の8ml CPTチューブ内へ行う。採血後、遠心するまでチューブを立てて室温で保存した。血液試料は良好な結果のために採血から2時間以内に遠心しなければならない。
(3)チューブ/血液試料は水平ローター(スイングアウトヘッド)の中で室温(18~25℃)にて最低20分間(最大30分間)、1500~1800RCF(相対遠心力)で遠心分離する。
(4)CPTチューブで輸送される血液については、24時間以内にリプログラミングを行う。遠心後、単核細胞及び血小板は、血漿層の直下の白っぽい層に存在する(図1参照)。分離された単核細胞を回収するための別の手順は、未開封のBDバキュテイナ(登録商標)CPT(商標)チューブを静かに5~10回反転させることによって細胞を血漿中に再懸濁することである。これは、遠心分離後24時間までの分離試料を保存または輸送するのに好ましい方法である。
【0055】
実施例4
重要なパラメータ
温度:分離の原理は密度勾配に依存し、成分の密度は温度によって変化するため、システムの温度は分離の間18~25℃に制御しなければならない。
遠心分離:分離の原理は、分離媒体を通過する血液中の有形成分の動きに依存するため、「RCF」は1500RCF~1800RCFで制御すべきである。遠心分離の時間は、最低でも20分にすべきである。(トラブルシューティングの項で説明したように、一部の試料は、最適な分離に最大30分かかることがある。)最大30分までのBDバキュテイナ(登録商標)CPT(商標)の遠心分離は、単核細胞画分の赤血球混入を低減する効果を有する。30分を超える遠心分離には、ほとんど追加の効果がない。BDバキュテイナ(登録商標)CPT(商標)チューブは、単核細胞の「バンド」または層が乱されていなければ、再遠心分離しても良い。
時間:血液試料は採血2時間以内に遠心分離または分離しなければならない。分離した単核細胞画分の赤血球混入は、試料の分離の遅れが長いほど増加する。単核細胞の回収率は、遠心分離前の時間遅延の増加と共に低下し、24時間で約40%の単核細胞回収率まで低下する。内容物(血漿層)を、適切にラベルした50mlチューブに注ぐ。
【0056】
実施例5
リプログラミング手順の材料及び供給元
iPSC産生のための、分離全血試料(末梢血単核細胞、PBMC)をリプログラミングするための手順が、本明細書に記載される。使用する材料には、滅菌済1.5mlエッペンドルフチューブ、滅菌済ピペットチップ(1000ul、200ul、10ul)、Amaxa Nucleofector(商標)2b装置(Lonza)、ヒトT細胞用Nucleofectorキット(Lonza、カタログ番号VPA-1002)、MEF 6ウェルTC処理済プレートまたはL-521コーティングプレート、0.22um SteriFlip(任意選択)、霊長類ESC培地またはE7培地が含まれ、下記の表1~4に記載される。
【0057】
使用されるリプログラミングプラスミドには、(1)pCXLE-hOCT3/4-shp53、(2)pCXLE-hSK、(3)pCXLE-UL、(4)pCXWB-EBNA1、(5)pEP4 E02S ET2Kが含まれる。
【0058】
(表1)αβ T細胞培地
【0059】
(表2)非T細胞培地
【0060】
(表3)MEF培地(任意選択)
【0061】
(表4)調製された霊長類ESC培地(任意選択)
【0062】
(表5)調製したE7培地(任意選択)
【0063】
実施例6
リプログラミング手順
[1日目-プレートの調製]
[MEFプレート]
1.6ウェルプレートの各ウェルを1mlの0.1%ゼラチンでコーティングする。
2.プレートを37Cで最低でも1時間インキュベートする。
3.LN2タンクから凍結MEFのバイアルを調達する。
4.8の字の動きで凍結バイアルを水中でゆっくり動かすことにより、バイアルを水浴で解凍させる。
5.15mlのコニカルチューブに解凍した細胞を採取する。
6.MEF培地を容量10mlになるまでゆっくりと加える。
7.チューブ/MEFを室温(18~25℃)、1000~1200RPM(相対遠心力)で5分間遠心する。
8.細胞を回転させている間に6ウェルプレートのゼラチンを吸引し、各ウェルに1mlのMEF培地を添加する。
9.遠心分離が停止した後、コニカルチューブを取り出し、細胞ペレットを乱すことなく上清を吸引する。
10.細胞ペレットを十分なMEF培地に再懸濁して約50,000細胞/mlにする。
11.1mlの細胞/MEF培地混合物を各ウェルに加える。
12.プレートを回してMEFを均一に分布させ、インキュベーターに一晩置く。
13.100ug/mlのL-521の1mlバイアル1本を解凍し、その内容物を9mlの滅菌PBSに加えて、10ug/mlのL-521を調製する。
14.混合物を0.22umフィルターまたはSteriFlipでろ過する。
15.6ウェルプレートの各ウェルに10ug/mlのL-521混合物1mlを加える。
16.パラフィルムでプレートを包み、37℃のインキュベーターに2時間入れる。
17.インキュベーターからプレートを取り出し、4℃の冷蔵庫に入れる。

[0日目-凍結PBMCの細胞調製]
18.それぞれ5e6細胞を含むPBMCの凍結バイアル2本を、小さな氷塊が残るまで「8の字」に動かして水槽中で解凍させる。
19.各チューブの内容物を2つの別々の無菌15mlコニカルチューブに集め、チューブ1及び2にラベルする。
20.各チューブに滅菌PBSを加えて容量を10mlにする。チューブを5回反転させて細胞を混合する。
21.1000RPMで15分間遠心分離する。
22.ステップ25に進む。

[新たに単離したPBMCの細胞調製]
23.単離したばかりの3e6のPBMCを、2本の滅菌15mlコニカルチューブにそれぞれ入れる。
24.ステップ19~22を実施する。

[リプログラミング]
[L-521コーティングプレートを使用する場合、プレートを室温に少なくとも1時間平衡させる。]
25.プロトコル(Nucleofection溶液82ul+反応1回あたり補充18ul)に従って、Lonza Nucleofection溶液の1.5mlエッペンドルフチューブを調製する。チューブをNSとラベルする。

[注意:各反応は2回、すなわち1回はT細胞条件で、もう1回は非T細胞条件で実施する。全ての反応に対するNSのマスターミックスを調製しても良い。]
26.1.5mlのエッペンチューブで以下のように各反応に対する発現プラスミド混合物を3.83ug調製する。
i.pCXLE-hOCT3/4-shp53:0.83ug
ii.pCXLE-hSK:0.83ug
iii.pCXLE-UL:0.83ug
iv.pCXWB-EBNA1:0.5ug
v.pEP4 E02S ET2K:0.83ug
27.6mlのT細胞培地を含む15mlコニカルチューブを調製する。
28.6mlの非T細胞培地を含む15mlコニカルチューブを調製する。
29.細胞を含む15mlのコニカルチューブの1つから上清を吸引する。
30.チューブを静かに軽くたたき、細胞ペレットをほぐす。
31.細胞ペレットに100ulのNS混合物を加えて、静かに3~4回ピペッティングする。
32.NS/細胞混合物の全容量は、プラスミド混合物を含有する1.5mlエッペンドルフチューブに移して、静かに3~4回ピペッティングすることにより混合する。
33.NS/細胞/プラスミド混合物の全容量を、LonzaのT細胞用キットで提供されるガラスキュベットに移す。
34.キュベットをAmaxa nucleofectorに入れてプログラムV-024を実行する。
35.Lonza T細胞キット付属のプラスチックピペットチップを使用して、少量のT細胞培地をガラスキュベットに移してからキュベットの全内容物を6mlのT細胞培地を含む15mlコニカルチューブに移す。
36.細胞を含有する第2の15mlコニカルチューブについて、ステップ29~34を繰り返しステップ37に進む。
37.Lonza T細胞キット付属のプラスチックピペットチップを使用して、少量の非T細胞培地をガラスキュベットに移してからキュベットの全内容物を6mlの非T細胞培地を含む15mlコニカルチューブに移す。

[播種]
[MEF/霊長類のESC条件]
38.各ウェルからMEF培地を除去する。
39.各ウェルを1mlの滅菌PBSですすぐ。
40.ステップ35の15mlコニカルチューブの全内容物を、上部の3ウェルのそれぞれのウェルに2ml加えることによって移す。
41.各ウェルに5ulのDynabeads Human T-activator CD3/CD28を添加する。
42.ステップ37の15mlコニカルチューブの全内容物を、下部の3ウェルのそれぞれのウェルに2ml加えることによって移す。
43.プレートを37Cのインキュベーターに入れる。

[L-521/E7条件]
44.各ウェルのL-521を吸引する。
45.ステップ5.35の15mlコニカルチューブの全内容物を、上部の3ウェルのそれぞれのウェルに2ml加えることによって移す。
46.各ウェルに5ulのDynabeads Human T-activator CD3/CD28を添加する。
47.ステップ37の15mlコニカルチューブの全内容物を、下部の3ウェルのそれぞれのウェルに2ml加えることによって移す。
48.プレートを37Cのインキュベーターに入れる。

[2日目]
49.ヌクレオフェクション後2日目に、2mlの適切なリプログラミング培地(Primate ESC+bFGFまたはE7)を各ウェルに加える。ウェルからは何も吸引しない。

[4~25+日目]
50.4日目からは、各ウェルから培地を静かに吸引し、2mlの新鮮なリプラグラム培地を各ウェルに加える。これを一日おきに行う。

[25+日目]
51.引き伸ばしたガラスピペットを使用して個々のコロニーを単離し、適切な培養基を含む12ウェルディッシュの1ウェルに単一のコロニーを移す。
【0064】
実施例7
多能性幹細胞の適切な生成を確認するために、様々な品質管理アッセイを実施することができる。pSC生成の望ましい特性を例示するこのような試験の例を表1に示す。
【0065】
(表1)iPSC QCアッセイ
【0066】
実施例8
アルカリホスファターゼ
BC-iPSCの特徴づけのために、アルカリホスファターゼ染色を、Alkaline Phosphatase Staining Kit II(Stemgent、カタログ番号00-0055)を製造者の指示に従って使用して実施することができる。
【0067】
実施例9
免疫組織/細胞化学
BC-iPSCのさらなる特徴づけのために、BC-iPSCまたは分化細胞をカバーガラスまたはオプティカルボトム96ウェルプレート(Thermo、#165305)上に載せ、続いて4%パラホルムアルデヒドで固定することができる。腸管オルガノイドは、4%パラホルムアルデヒドで固定し、30%スクロースに移し、HistoPrep(Thermo Fisher Scientific)に包埋し、20μm切片に切断することができる。全ての細胞を0.1%Triton X-100を含む510%ヤギまたはロバ血清でブロッキングし、室温で3時間または4℃で一晩のいずれかで一次抗体とインキュベートする。次いで細胞をすすぎ、種特異的AF488またはAF594コンジュゲート二次抗体、続いて核を対比染色するためのHoechst 33258(0.5μg/ml、Sigma)でインキュベートする。
【0068】
免疫細胞化学及びイムノブロッティングに適した抗体には、(抗原、希釈、カタログ番号、アイソタイプ、及び製造業者として記載される)SSEA4、1:250、MAB4304、mIgG3、Millipore;TRA-1-60、1:250、09-0010、IgM、Stemgent;TRA-1-81、1:250、09-0011、mIgM、Stemgent;OCT4、1:250、09-0023、ウサギIgG、Stemgent;NANOG、1:250、09-0020、ウサギIgG、Stemgent;SOX2、1:500、AB5603、ウサギIgG、Millipore;TuJ1(β3-チューブリン)、1:1000、T8535、mIgG2b、Sigma;CDX2、1:500、NBP1-40553、IgG、Novus;FABP2、1:500、AF3078、IgG、R&D systems;I型コラーゲン、1:500、600-401-103-0.1、Rabbit Rockland;CD73、1:500、550257、mIgG1、BD Pharmingen;NKX6.1、1:100 F55A10、mIgG1、DSHB Iowa;HB9、1:25、81.5C10、mIgG1、DSHB Iowa;ISELT1、1:250、AF1837、ヤギIgG、R&D systems;SMI32、1:1000、SMI-32R、mIgG1、Covance;CHAT、1:250、AB144P、ヤギIgG、Millipore;SMN、1:250、610647、mIgG1、BD Biosciences;Cox-IV、1:1000、4850s、Rabbit Cell signaling;GAPDH、1:1000、ab9484、mIgG2b、Abcamが含まれる。
【0069】
実施例10
フローサイトメトリー
さらなる特徴づけには、フローサイトメトリーが含まれ得る。具体的には、BC-iPSCをAccutase(Millipore、#SCR005)を用いて単一の細胞懸濁液に解離させる。IPSCの表面染色はSSEA4(R&D Systems、FAB1435A)を用いて行う。
【0070】
次に細胞を固定、透過処理して、Oct3/4(BD Pharmingen、560186)について細胞内染色した。推奨されるアイソタイプは、抗体の推奨(R&D Systems、FABIC007及びBD Pharmingen、562547)に従って使用される。BD FACSDivaソフトウェアを使用して、BD LSRFortessaフローサイトメーターを使用して、全てのサンプルを分析する。全ての画像は、FloJoソフトウェアを使用して生成される。
【0071】
実施例11
核型
核型分析は以下のように実施することができる。ヒトBC-iPSCをコルセミド(100ng/mL、Life Technologies)で、37℃にて30分間インキュベートし、TrypLEを用いて10分間解離させる。これらをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、5mLの低張溶液(1gのKCl、400mLの水中1gのクエン酸ナトリウム)で37℃にて30分間インキュベートすることができる。細胞を1500RPMで2.5分間遠心分離し、固定液(メタノール:酢酸が3:1)に室温で5分間再懸濁する。これを2回繰り返し、最終的に細胞を500μlの固定液に再懸濁し、Gバンド核型分析のためにCedars-Sinai Clinical Cytogenetics Coreに提出する。
【0072】
実施例12
PluriTest
Pluritestは、堅牢な多能性測定を提供する。全RNAは、RNeasy Mini Kit(Qiagen)を用いて単離し、続いてHuman HT-12 v4 Expression BeadChip Kit(Illumina)で測定することができる。生データファイル(idatファイル)はその後、Pluritestウィジェットオンライン(www.pluritest.org)にアップロードされた。
【0073】
実施例13
定量RT-PCR
RNeasy Mini Kit(Qiagen)を用いて全RNAを単離し、そして1ugのRNAを用いて、転写システム(Promega)を使用することによりcDNAを作製した。qRT-PCRは標準的な条件下で、特異的プライマー配列(表2)を用いて行った。「CDS」は、全体での内因性遺伝子発現のみの発現を測定するための、コード配列として設計したプライマーを指し、「Pla」はプラスミド導入遺伝子発現のみの発現を測定するために設計したプライマーを示す。データは平均値±SEMとして示す。
【0074】
(表2)qRT-PCRプライマー配列
【0075】
実施例14
PBMC由来iPSC株 対 線維芽細胞由来iPSC株の細胞遺伝学的安定性
【0076】
(表3A)PBMCの細胞遺伝学的安定性
【0077】
(表3B)PBMCの細胞遺伝学的安定性
【0078】
実施例15
PBMC由来iPSC株 対 線維芽細胞由来iPSC株のアレイCGHの細胞遺伝学的安定性
【0079】
(表4A)PBMCの細胞遺伝学的安定性
【0080】
(表4B)PBMCの細胞遺伝学的安定性
新規または欠失は、親ドナー組織のaCGHプロファイルと比較した場合、リプログラミング中及び/またはそれぞれのiPSC株の増殖で新たに獲得された増幅または欠失である。
【0081】
特定の細胞株を含む、BC-iPSCの優れた特性を示す様々な結果が示されている。MEFにおける末梢血単核細胞(PBMC)ベースのエピソーマルリプログラミングの高い成功率を表5に示す。個体での異なる種類の核型異常の染色体レベルの頻度は、線維芽細胞由来iPSCにおけるGバンド核型分析によって観察される。「再編成」、「逆位」、「派生」を表6に示す。規定のE7リプログラミング培地中のヒト組換えラミニン521における血液ベースのリプログラミングの成功率を表7に示す。マトリゲル基質及び限定E7リプログラミング培地上での血液ベースのエピソーマルリプログラミングの成功の欠如を表8に示す。
【0082】
(表5)MEF上での末梢血単核細胞(PBMC)をベースとしたエピソーマルリプログラミングの高い成功率
NP:実施せず
T:T細胞リプログラミング法
NT:非T細胞リプログラミング法
4P/5P:4つまたは5つのプラスミド上のリプログラミング因子
【0083】
(表6)異なる種類の核型異常の頻度
【0084】
(表7)ヒト組換えラミニン521における血液ベースのリプログラミングの成功率
NP:実施せず
T:T細胞リプログラミング法
NT:非T細胞リプログラミング法
4P/5P:4つまたは5つのプラスミド上のリプログラミング因子
【0085】
(表8)マトリゲル基質上での血液ベースのエピソーマルリプログラミングの成功の相対的欠如
NP:実施せず
T:T細胞リプログラミング法
NT:非T細胞リプログラミング法
4P/5P:4つまたは5つのプラスミド上のリプログラミング因子
【0086】
実施例16
採血により単離されたPBMCは確実にiPSCにリプログラムされる
皮膚生検から得られる真皮線維芽細胞は、その安価で比較的容易な取り扱いにより、iPSCリプログラミング材料の最も一般的な供給源であった。しかしながら、採血と比較して皮膚パンチ生検は3~4mmのサイズとなり得、多くの場合、有痛性の処置であることから、局所麻酔が必要となる。皮膚生検由来の線維芽細胞と比較して、血液はより入手可能な通院患者の組織供給源であり、したがって患者と臨床医の両方によるiPSCリプログラミングのための、供給源組織の好ましい選択である。様々なヒト血液リプログラミング方法は、末梢血から動員されたCD34細胞を含む、混在性の効率と共に報告されている(参照)。臍帯血から単離されない限り、CD34細胞は、通常、数日間G-CSF動員を受けている患者の末梢血または骨髄から単離される。リプログラミングのための十分な細胞数を生じさせるために、単離されたCD34前駆細胞を複雑で高価なプロトコルを用いて培養で濃縮及び増殖させる必要がある。本発明者らは、エピソーマルリプログラミングプラスミドを用いた事前の細胞増殖またはCD34細胞単離を伴わずに、採取した末梢血から単離されたばかりのPBMCをリプログラミングすることに成功した。このようなアプローチは、患者の生体試料を採取する時から厳密に特徴づけされたiPSCを生成するまでの、患者のリプログラミングされたiPSCを得るための最も迅速で最も費用効果の高い手順を提供する。
【0087】
同時に複数の対象からの大きなコホートのPBMCのリプログラミングと、患者の採血後かなり日にちが経過した後でのiPSC株の生成により、iPSCが「将来も使用できる」ことが可能となり、これには生存細胞を確実に回収するためのPBMC凍結保存ステップが必要となる。さらに、より多くの患者の遺伝子型-表現型情報が利用可能である場合、代表的な対象からの選択的なコホートの良好な凍結保存PBMCはiPSCに変換され得ることから、このプロセスには柔軟性がある。しかし、複数の個体由来の凍結保存PBMCがPOU5F1、SOX2、KLF4、LIN28、L-MYC、p53shRNAを発現するエピソーマルプラスミドによりiPSCにリプログラムされる場合、本発明者らは、PBMC細胞種、ECM基層及び培地にかかわらず、35~40日後であっても同定可能なiPSCクローンを単離する際に有意な変動性を観察した。凍結保存PBMCにおける非T細胞法では、いかなるクローンiPSC株も得られなかったが、T細胞リプログラミング法ではPBMC試料のわずか33%で成功した(データは示さず)。
【0088】
決定的なことに、本発明者らの手技におけるPBMCリプログラミングの確実性は、本発明者らが以下を利用した場合に、顕著に向上した:(a)PBMC細胞死を最小限に抑えかつリプログラミング因子プラスミド発現を維持するために、SV40ラージT抗原(SV40LT)とEBNA-1とを特定の化学量論的に含む、2つの追加のエピソーマルプラスミド、ならびに(b)ヌクレオフェクションしたPBMCの高い表面接着を促進するための、規定されたリプログラミング培地(図8A)。この新規プロトコルにより、ヌクレオフェクションから25~35日後の増殖のために機械的に単離及びスケールアップすることができる複数の接着性のPBMC-iPSCクローンの好結果の効率的な生成が得られた(図8A)。重要なことに、非疾患の対照または疾患患者からの複数の個々の凍結保存PBMCのリプログラミングにおける成功率は、T細胞法では90%、マウス胚線維芽細胞(MEF)における非T細胞法(表5)では83%であった。T細胞-iPSCにより負わされる制限、及びPBMC由来の非T細胞リプログラミングの低い効率を考慮すると、本方法では非T細胞由来のBC-iPSCの信頼できるリプログラミングが得られた。
【0089】
本発明者らは、臨床的により適合性のあるリプログラミング方法を使用する場合、この新規プロトコルが尚、対応可能であるかどうかを試験した。組換えヒトラミニン521基質及び化学的に規定されたリプログラミング培地を使用すると、それぞれ75%及び58%とわずかに低い成功率であったにもかかわらず、好結果のPBMCリプログラミングが得られた。T細胞及び非T細胞の平均リプログラミング効率は、それぞれ2.2×10-4%及び1.6×10-6%であった。(表5)。全てのPBMC-iPSC株は、緊密に充填されたコロニー、高い細胞核対細胞質比、堅牢なアルカリホスファターゼ活性、及び多能性抗原の発現を含む典型的なPSC特性を示した(図8B)。BC-iPSCは、PluriTestアッセイによって決定される多能性品質管理測定基準に合格し、PBMC-iPSC転写プロファイルは十分に確立されたhESC及びfib-iPSCに類似しているが、分化した線維芽細胞及び神経前駆細胞には類似していないことが証明される(図8C)。BC-iPSCは正常なGバンド核型を維持し(図8D)、T細胞受容体(TCR)-β及び-γ、遺伝子再編成/クロナリティアッセイを用いてPBMCからのT細胞または非T細胞のいずれかのクローン誘導体であることが確認された(図8E)。BC-iPSCの三系列分化能は、自然発生的な胚様体形成及びTaqMan Scorecardアッセイによる胚葉特異的遺伝子発現プロファイルの測定によって実証された(図8F)。BC-iPSCの「痕跡の無い」状態は、内因性多能性遺伝子発現の実証及びRT-qPCRを用いた外因性リプログラミング導入遺伝子の不在により確認された(図11A)。EBNAプラスミド関連の潜伏感染要素は、最終的に確立されたBC-iPSCから排除された(図11B)。
【0090】
実施例17
BC-iPSCは、fib-iPSCと同等の神経細胞分化を有する
iPSCは、供給源組織にかかわらず、最終的に、元の細胞供給源に関連する遺伝子発現及びエピジェネティックなプロファイルの大部分を失うことが報告されている。しかし、血液由来のiPSCが線維芽細胞由来のiPSCのような効率で他の様々な細胞種に分化することができるかどうかは、おそらく血液由来のiPSCのエピジェネティックな記憶が強く保持されるため、依然として不明である。本発明者らは、中胚葉由来の血液または線維芽細胞由来のiPSCを、外胚葉のような異なる胚葉に配向することによってこれに対処した。具体的に、本発明者らは、健康なボランティア及び疾患患者の両方に由来する、多数の線維芽細胞(n=26)及びPBMC株(n=8)から神経外胚葉分化を行った。TUBB3(β-チューブリン)及びNKX6.1の神経外胚葉マーカーに対する免疫細胞化学及びその後の細胞数に基づいて、神経細胞分化は線維芽細胞-iPSCとBC-iPSCの間で同様の効率で起こることが示され(図8G)、BC-iPSCの有用性がさらに実証された。
【0091】
実施例18
BC-iPSCは、fib-iPSCと比較して、非常により安定した核型を維持する
再発性の染色体異常が、過剰な数のhESC株について前述されている。いくつかの報告では、hiPSC株についての共通の染色体異常が記録されているが、これらは供給源組織、リプログラミング方法及び細胞培養法における変動性を体系的に説明していない。本発明者らの知る限りでは、線維芽細胞及び血液に由来するiPSC間の頻度を比較する細胞遺伝学的分析を説明する系統的研究はなかった。過去6年にわたり、本発明者らは、339の独立したクローンiPSC株を含む104の固有線維芽細胞またはPBMCドナーに由来するiPSC株に対して、慣例的な細胞遺伝学的分析を行った。評価された全ての線維芽細胞及び血液由来iPSCは、同様の非組込みエピソーマルリプログラミング及び標準的なフィーダーフリーのマトリゲル/mTeSR細胞培養法を用いてリプログラミングされた。
【0092】
iPSC Coreに由来するfib-iPSC及びBC-iPSCは、それらのリプログラミング法、多能性及び分化に関して互いに類似しているが、2つの供給源細胞種間の細胞遺伝学的安定性における著しい差の早期の観察により、大規模比較分析の必要性を促された。多くの研究所及び幹細胞貯蔵所では、染色体の細胞中期で得られるGバンド核型分析及びギムザ染色を用いてPSCにおける細胞遺伝学的変化の品質管理アッセイを日常的に行う。5%の異常細胞の確実な同定が容易に達成される本方法により、異常細胞の小さな亜集団を容易に同定することができるため、低解像度(>5~10Mb)でのモザイク現象(>10%)及び均衡転座の検出が可能になる。
【0093】
本発明者らは、供給源の線維芽細胞及びPBMCが複数の研究室または公的な貯蔵所から集められた、364個のヒトiPSC培養物について、核型分析を行った。本発明者らのデータは、fib-iPSC及びBC-iPSCにおける染色体異常の発生率における顕著な差異を明らかにする。78例の固有のドナーに由来するクローン的に独立したヒトfib-iPSC株由来の258個の培養物のうち59個(22.9%)にクローン異常を伴う異常核型が観察された(図6)。全く対照的に、32例の固有のドナーに由来するクローンのヒトPBMC-iPSC株の106個の培養物のうち4個(3.8%)だけが、低頻度の異常を示した。BC-iPSCと比較して、fib-iPSCにおいて再発性の異常がより顕著な程度で表われることは、イデオグラムの染色体の模式図から明らかである(図6)。実際に、この顕著な細胞遺伝学的安定性がPBMCに特有であるのは、リンパ芽球様細胞系列(25%)及び初代上皮細胞(27%)を含む他の細胞起源からリプログラミングされたiPSCが、同様の高い核型異常率を有するためである、(図12)。
【0094】
fib-iPSCで最も頻度の高い核型異常は、13番染色体(13.2%)、1番染色体(11.8%)、12番染色体(11.1%)、及びX染色体(10.4%)で観察された(表6)。より少ない程度の核型変化が、頻度の高い順に21番染色体、11番染色体及び6番染色体においても観察された。異数体のうち、染色体増加(トリソミーまたは重複)は、12番染色体(21.1%)、1番染色体(15.8%)、11番染色体(13.2%)、及び6番染色体(10.5%)で最も一般的に観察され、染色体減少はX染色体(38.5%)及び21番染色体(23.1%)で繰り返し確認された。fib-iPSCの1番染色体及び13番染色体(13.9%)及び14番染色体(11.1%)において、転座の再編成が観察された。BC-iPSCは14番染色体(トリソミー)または18番染色体(重複)でそれぞれ染色体増加を示す1つの株を有した。他の2つのPBMC-iPSC株は、珍しい異常(19%の細胞で転座46、XY、t(7;14)(q34;q11.2)及びモザイク欠失46、X、del(X)(q22q26)を示した(表6)。
【0095】
実施例19
Fib-iPSC及びBC-iPSCの核型分布は、ドナーの年齢ではなく、継代数に関係する
血液と異なり、皮膚は日焼けの可能性などの外環境要素に日常的に曝されており、生検由来の線維芽細胞はリプログラミングの前にある特定のレベルの増殖が必要である。このことは、培養においてさらなる老化と同様である。これを考慮して、本発明者らは、ドナーの年齢がfib-iPSCの細胞遺伝学的不安定性に影響を及ぼす寄与因子であり得ると仮定した。しかし、fib-iPSCにおける細胞遺伝学的異常の頻度に関して、本発明者は、ドナーの年齢と有意な傾向または相関を認めなかった(図9A)。実際には、Gバンド核型分析に基づいて、21~40才の群の線維芽細胞-iPSCにおいて、最も高い割合の核型異常(31.9%)が観察された。
【0096】
多能性幹細胞は、高い増殖性の性質を有する。したがって、本発明者らは次に、細胞培養においてfib-iPSC及びBC-iPSCが経時的にどのように変化したか、及び継代数の増加により細胞遺伝学的異常蓄積の傾向が高くなるかどうかを分析しようと試みた。線維芽細胞由来iPSCの約21.6%が、iPSC生成後の初回のGバンド核型評価において異常核型(クローン異常を伴う1/20超の細胞)を有することが観察されたが、これは典型的には継代数4~23の間であった。全く対照的に、初回の評価において2.8%のみのBC-iPSCが異常核型を有していた。異常核型を有すると判定されたiPSC株は、それ以上培養も評価もされなかった。したがって、2~4回目の繰り返しでの核型は、それらの初回の核型において最初に細胞遺伝学的に正常であると同定されたiPSC株についてのみ評価した。この解析により、正常なiPSC生成後(初回のGバンド核型評価時)に確立された後であっても、培養及び継代中の継続期間にfib-iPSCがBC-iPSCに対して固有のレベルの細胞遺伝学的不安定性を有するかどうかを判定することができた。Gバンド核型分析では、初回の核型での割合と比較して、繰り返しの核型分析の際に、より大きな割合のfib-iPSC(27.8%)が培養において異常核型を獲得し(P<0.001、Bonferroni事後検定を用いた二元配置ANOVA)、BC-iPSCにおける異常核型の割合は、初回及び繰り返しでの核型間に有意差を示さなかった(図9B)。fib-iPSCの細胞遺伝学的不安定性の起源を分析する上で、異常核型(初回または繰り返し)の最も高い割合は、iPSC株の生存期間の10~23継代の間に生じるようであり(図9C~D)、これは典型的に、任意の所与の細胞株について最大量のiPSC増殖が生じる時である。iPSCの増殖が継代数10~23で大きく増加するのは、これらの継代数の辺りで同時に起こる性質決定と細胞バンキングによるところが大きい。それにもかかわらず、これは、fib-iPSまたはBC-iPSCの両方について同様のプロセスであるが、PBMC由来細胞は、長期の培養または増殖時に異常核型に対する増加傾向を示さない。
【0097】
実施例20
BC-iPSCは微小な増幅及び欠損をほとんど獲得しない
Gバンド核型は、fib-iPSC培養物において一般的に観察される均衡転座、逆位、20%未満の培養モザイク、ゲノム増加または減少の染色体位置を検出できるという利点を有する(図6及び表5)。しかし、Gバンド核型は極微小なゲノム異常(<5Mb)を検出することができないので、本発明者らは、fib-iPSC及びPBMC-iPSC株のサブセットで比較ゲノムハイブリダイゼーション(aCGH)マイクロアレイを行うことに決めた。aCGHは均衡転座、逆位及び20%未満の培養モザイクを検出することができないが、iPSC株のより小さなサイズのゲノムの増加及び減少、コピー数多型(CNV)、重複/欠失及び不均衡転座を検出するのに優れた補助的な方法である。本発明者らは、親線維芽細胞またはPBMC供給源の生体試料との比較について、iPSCで獲得された新たな増幅または欠失を分析及び記録した。この分析では、それらが健康な個体で観察されたゲノム変異を含むDatabase of Genomic Variants(DGV)に対する相互参照において正常なCNVではない場合、iPSCで新たに獲得されたそれらの増幅及び欠失のみを考慮した。
【0098】
異常及び正常なGバンド核型を有するiPSC株を含めて、aCGHによって検出された増幅及び欠失の平均サイズは、PBMC-iPSC株における2.1Mbと比較して、44Mbであるfib-iPSC株において有意に大きく(図10A)、その優勢は、異常核型を有するfib-iPSC株によるものであった(図10B)。正常な核型を有するiPSC株間のサイズ分析比較を分離させた場合、新たな増幅/欠失はfib-iPSC株では平均2.31Mb、PBMC-iPSC株では2Mbであった。このデータを裏付けるように、fib-iPSCで獲得された全体での新たな増幅/欠失の平均数(3.7)は、BC-iPSC(1.8)より少なくとも2倍多かった。正常なGバンド核型を有すると決定されたiPSC株でも、新たな増幅/欠失の数は、fib-iPSCにおける3.3に対してBC-iPSCで1.8であった。aCGHで検出された、fib-iPSC株またはPBMC-iPSC株で最も一般的に獲得される極微小(0.8~1.5Mb)の新たな増幅または欠失は、染色体7q31.32の増幅または染色体10q15.2~q25.1、16p11.2、21p11.2~p11.1の欠失であった(図10E)。
【0099】
ここで本発明者らは、多能性因子を発現するエピソーマルプラスミドを用いて、血液の非T細胞成分のリプログラミングのための新規かつより信頼できる方法を報告する。記載されたリプログラミングプロトコルを使用して、非T細胞または非B細胞原料から100%に近い成功率で非T細胞を一貫してリプログラムすることができる。さらなる利点には、規定されたリプログラミング培地E7の使用、及び規定された臨床的に適合性である基質である組換えヒトL-521の使用が含まれる。血液細胞由来のiPSC(「BC-iPSC」)は、線維芽細胞由来iPSC(「fib-iPSC」)と同一の特性を示し、遺伝子型を保持し、正常な多能性プロファイルを示し、3種類の胚葉細胞種全てに容易に分化する。患者の血液試料からiPSCを確実に誘導するための本方法は、患者特異的な系列を含む新規のヒトiPSC株を迅速に生成するための道を開き、病気のモデリング、創薬、及び再生医療用途のための莫大なバイオリソースを提供する。
【0100】
実施例21
追加的な特徴づけ試験
Gバンド核型
ヒトiPSCをコルセミド(100ng/mL、Life Technologies)中で37℃にて30分間インキュベートし、次いでTrypLEを用いて10分間解離させた。次にこれらをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、5mLの低張溶液(1gのKCl、400mLの水中1gのクエン酸ナトリウム)中37℃にて30分間インキュベートした。細胞を1500RPMで2.5分間遠心分離し、固定液(メタノール:酢酸が3:1)に室温で5分間再懸濁した。これを2回繰り返し、最終的に細胞を500μlの固定液に再懸濁し、Gバンド核型分析のためにCedars-Sinai Clinical Cytogenetics Coreに提出した。分析には、培養あたり最低20細胞の染色体検査が含まれる。本明細書のデータセット4には、ISCN 2013のクローン性の定義に合致する異常のみが含まれる。全ての正常核型及び異常核型を表形式で表記した。次に、染色体イデオグラムに沿った任意のゲノム間隔に関連するデータをプロットするIdeoVizパッケージを使用して、表をR Bioconductor(プログラミング言語)にインポートすることによって、染色体の表意文字を生成した。このパッケージは、オープンソースのBioconductorのwebサイトで入手可能である。染色体再編成の頻度を正確に反映させるために、検討した試料数に応じて各イデオグラムのバーの幅を拡大した。そのため、試料セットで見られる異常数を示す線維芽細胞のイデオグラムが、PBMCセットよりも2.16倍大きかったことから、PBMC-iPSC株に見られる異常を示すバーは、fib-iPSC株に見られる異常を示すバーの幅の2.16倍である。染色体の転座(濃紺色のバー)カテゴリーの上の文字は、転座異常が生じた染色体位置間で対応するように符合される。
【0101】
アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション(aCGH)によるコピー数多型
アレイCGHは、不均衡型の検出及び高スループット能力による構造的及び数値的染色体変化のための高解像度の核型分析ソリューションである。初代皮膚線維芽細胞または単離PBMC及びそれらのリプログラミングiPSCから高品質のゲノムDNAを単離した。UVスペクトル(NanoVue)、蛍光光度計(Qubit)及びアガロースゲル分析によって決定されるゲノムDNAの品質。Cell Line Genetics(Madison、WI)により、ヒト幹細胞株及びがん細胞株に適したAgilent 60K Standard aCGHプラットフォームを用いて、CNVについて試料分析した。供給源の親ドナー細胞に対するiPSC株の比較では、示した遺伝子座について新たなコピー数多型(増加/増幅または減少/欠失)を得た。
【0102】
TCRG鎖再編成アッセイ
ゲノムDNA(350ng)を、MasterPure DNA Purification Kit(Epicenter Biotechnologies)を用いて全ての細胞株から回収した。陰性対照として、胚性幹細胞株(H9)を用いた。IgH遺伝子の重鎖遺伝子座における3つのフレームワーク領域を認識するプライマーセットは、InVivoScribe Technologies(Cat No.11010010、San Diego、CA)から入手し、PCRは製造業者のプロトコルに従って実施した。エピソーマルプラスミド関連遺伝子解析のゲノムDNA(400ng)を全ての細胞株から回収し、そして胚性幹細胞株(H9)を陰性対照として用いた。ハウスキーピング遺伝子として使用されたGAPDHに加えて、EBNA-1を認識するプライマーも本研究に含めた。PCRは、95℃で30秒間、60℃で30秒間、及び72℃で30秒間を35サイクル実施した。
【0103】
iPSCからの神経分化
ヒト線維芽細胞-iPSC及びPBMC-iPSCを6ウェルのマトリゲルコーティングプレートに播種した。iPSCは、分化開始前に正常な維持条件下で、コンフルエント付近まで増殖させた。翌日、神経細胞の分化はLDN193189(0.2μM、Cayman)、SB431542(10μM、Cayman)及びCHIR99021(3μM、Cayman)を使用する、SMAD及びGSK-3betaの二重阻害による神経外胚葉分化により開始され、この処理は、非必須アミノ酸(NEAA;1%)、B27(2%)及びN2(1%)を含むイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)/F12(1:1)培地中で6日間行う。6日後に分化している細胞を、次に37℃で5分間Accutase処理により静かに剥離させた。次に、0.1μMのオールトランス型レチノイン酸及び1μMソニックヘッジホッグアゴニスト(SAG)を添加した上記の神経分化培地中に、7.5×10の密度の細胞を6ウェルプレートに播種または1×104細胞を96ウェルプレートに播種した。一日おきに新しい培地に換えた。12日目に分化培地をNEAA(1%)、B27(2%)、N2(1%)、化合物E(0.1μM、Calbiochem)、DAPT(2.5μM、Cayman)、レチノイン酸(0.5μM)オールトランス型、SAG(0.1μM)、アスコルビン酸(200ng/ml)、ジブチリル環状アデノシン一リン酸(1μM)、脳由来神経栄養因子(10ng/ml)、及びグリア細胞株由来の神経栄養因子(10ng/ml)を添加した、最終分化(IMDM)/F12(1:1)培地に変更した。分化18日目に分化神経細胞を固定し、分析した。
【0104】
実施例22
血液から単離された凍結保存PBMCは、確実にiPSCにリプログラミングされる
ヒトiPSCは、エピソーマルプラスミドにより単離されたばかりの非増殖PBMCから作製することができる。しかし、凍結PBMCからiPSCへのリプログラミングについての記載はない。本発明者らは、POU5F1、SOX2、KLF4、LIN28、L-MYC、及びTP53shRNAを発現するエピソーマルプラスミドにより複数の個体からの凍結保存PBMCをiPSCにリプログラミングした場合(4p法と称される)、本発明者らは、35~40日後であっても、同定可能なiPSCクローン単離において、失敗であったか、または有意な変異性が観察された。全血からiPSCを生成するための他の試みには、リプログラミングのために十分な細胞数を生成するために、単離したCD34+前駆細胞を、複雑で高価なプロトコルを用いて培養で濃縮及び増殖させる必要があることが示されている。これは、このプロセスを単純化し、そして体細胞の増殖を回避してリプログラミングする必要性を強調した。この体細胞供給源は複数の対象コホートから最も迅速かつ最も費用効果の高い手順を提供することから、本発明者らは代わりにiPSCへのリプログラミング用に非増殖PBMCを単離し、凍結保存した。凍結保存PBMCにおける非T細胞法では、いかなるクローンiPSC株も得られなかったが、4p法を使用するT細胞リプログラミング法では、PBMC試料のわずか14.3%で成功した。
【0105】
PBMCリプログラミングの効率を高めるために、本発明者らは、以下を使用した:(a)PBMC細胞死を最小限にするために、SV40ラージT抗原(SV40LT)を特定の化学量論的に含む、追加的なエピソーマルプラスミド(5p法と称する)、及び(b)ヌクレオフェクションしたPBMCの高い表面付着を促進するための、規定されたE7リプログラミング培地。この新規プロトコルにより、ヌクレオフェクション後25~35日以内に増殖のために機械的に単離及びかつスケールアップされ得る複数の接着性のPBMC-iPSCクローンの好結果かつ効率的な生成が得られた。重要なことに、非疾患の対照または疾患患者に由来する複数の対象の凍結保存PBMCのリプログラミング成功率及び効率は、4p法の0~15%とは対照的に、5p法を用いた場合、T細胞法では85%、非T細胞法では92%と有意に高かった。市販の培地(霊長類ESC培地、PESC)中のマウス胚線維芽細胞(MEF)上でのPBMCのリプログラミングは、良好なリプログラミング効率を伴ってT細胞法及び非T細胞法の両方で89~95%近い成功であった。臨床的に適合性のあるiPSCに基づく細胞療法に必要とされ得るため、本発明者らは、次に、この5pリプログラミングプロトコルがまた、生体異物を含まない成分で対応可能であるかどうかを試験した。組換えヒトラミニン521基質及び化学的に規定されたリプログラミング1培地(E7)21の使用によっても、T細胞及び非T細胞のリプログラミングはそれぞれ80%及び64%成功した。まとめると、これらの結果は、4p法と比較して、5p法がPBMC(T細胞及び非T細胞の両方)のリプログラミングの成功及び効率を有意に増強し、そして凍結保存したPBMCを確実にリプログラミングするための貴重なプロトコルを提供することを示す。各PBMC-iPSC株は、密集したコロニー、高い細胞核-細胞質比、堅牢なアルカリホスファターゼ活性、及び複数の多能性抗原の発現を含む典型的なPSC特性を示し、これらは2例の健康なボランティア(非T細胞供給源の03iCTR10 NTn1及びT細胞供給源の80iCTR-Tn1)のPBMC由来の代表的なリプログラミングされたiPSCコロニーで全て明らかである。PBMC-iPSCは、PluriTestアッセイによって決定される多能性品質管理測定基準に合格し、PBMC-iPSC転写プロファイルは十分に確立されたhESC及びfib-iPSCに類似しているが、分化した線維芽細胞及び神経前駆細胞には類似していないことが証明される。PBMC-iPSCは正常なGバンド核型を維持し、T細胞受容体(TCR)-β及び-γ、遺伝子再編成/クロナリティアッセイを用いてPBMCからのT細胞または非T細胞のいずれかのクローン誘導体であることが確認された。PBMC-iPSCの三系列分化能は、自然発生的な胚様体形成及びTaqMan Scorecardアッセイによる胚葉特異的遺伝子発現プロファイルの測定によって実証された。PBMCのiPSCのゲノムの導入遺伝子が無い状態は、(1)EBNAプラスミド関連の潜伏要素が、樹立されたPBMC-iPSCから最終的に排除され、ゲノムDNAで検出されなかったことの立証、(2)内因性多能性遺伝子の発現及びRT-qPCRを用いた際にいかなる外来性リプログラミング導入遺伝子も存在しないことにより、確認される。さらに、5pリプログラミング混合物の成分であるSV40LT因子はゲノムDNAレベルで検出されず、リプログラミングされたPBMC-iPSC株で発現しなかった。
【0106】
実施例23
PBMC-iPSCは、Fib-iPSCと同等の神経細胞分化を有する
多くの初期の報告では、新たにリプログラミングされたiPSCは、親のドナー細胞種のエピジェネティックな記憶を保持していることが示唆されたが、最近の報告では、hiPSCは供給源組織にかかわらず、最終的に、元の細胞供給源に関連する遺伝子発現及びエピジェネティックプロファイルの大部分を増殖後に失うことが示唆されている。しかし、血液由来のiPSCが線維芽細胞由来のiPSCのような効率で他の様々な細胞種に分化することができるかどうかは、おそらく血液由来のiPSCが他のドナー細胞と比べてエピジェネティックな記憶をより強く保持するため、依然として不明である。本発明者らは、ともに中胚葉起源の血液または線維芽細胞に由来するiPSCを、異なる胚葉、すなわち神経外胚葉に配向することによってこれに対処した。具体的に、本発明者らは、健康な対象ならびに疾患患者の両方に由来する、多数の線維芽細胞(n=26)及びPBMC株(n=20)から誘導されるiPSC株から神経外胚葉分化を行った。神経外胚葉マーカーであるTUBB3(β3-チューブリン)及びNKX6.1に対する免疫細胞化学及びその後の定量化により、fib-iPSCとPBMC-iPSCとの間に類似の効率で神経細胞分化が生じ、PBMC iPSCの有用性がさらに実証された。5pでリプログラミングしたPBMC-iPSCは、非常により安定した核型再発性染色体異常を維持することは、hESC株について前に記載されている。一部の報告でもまた、hiPSC株についての共通の染色体異常が記録されているが、これらは供給源組織、リプログラミング方法及び細胞培養法における変動性を体系的に説明していない。本発明者らの知る限りでは、線維芽細胞及び血液由来のiPSC間の頻度を比較する細胞遺伝学的分析を説明する系統的研究はなかった。本発明者らは、16の線維芽細胞(77)またはPBMC(94)である171の固有のドナーに由来するiPSC株に対する詳細な細胞遺伝学的分析を行った。ドナーあたり複数のクローン株を有することから、これには、独立したクローン線維芽細胞(205)またはPBMC(143)のiPSC株348個に由来する核型が含まれた。評価された線維芽細胞、リンパ芽球様細胞株、上皮及び血液由来のiPSCは全て、同様の非組込み型エピソーマルリプログラミング法を用いてリプログラミングした。ここで報告された線維芽細胞及びPBMCのリプログラミング間の主な違いは、使用したリプログラミング因子プラスミドの数である:3p31は線維芽細胞、及びPBMCについては4pまたは5p。リプログラミングが成功した後、ここで分析し報告した全てのiPSC株は、フィーダーフリーのMatrigel(登録商標)/mTeSR1(商標)細胞培養法を使用して維持し、機械操作のStemPro(登録商標)EZPassage(商標)ツールを使用して継代した。これらの系列の遺伝的安定性を確立するために、本発明者らは、最初に、複数の研究所または公的な貯蔵所から収集された線維芽細胞(260)、PBMC(206)、上皮細胞(26)及びリンパ芽球系細胞株(60)由来の552個のヒトiPSC培養物について、Gバンド核型分析を行った。本発明者のデータは、PBMC iPSCにおける染色体異常の発生が著しく低いことを示す。77例の固有のドナーに由来するクローン的に独立したヒトfib-iPSC株由来の260個の培養物のうち61個(23.5%)にクローン異常を伴う異常核型が観察された。典型的には、線維芽細胞は、リプログラミングの前に9~10継代分増殖されていた。全く対照的に、94例の固有のドナーに由来するクローンのヒトPBMC-iPSC株の206個の培養物のうち4個(1.9%)だけが、任意の核型異常を示した。観察された4つの異常も低頻度であった。PBMC-iPSCと比較して、fib-iPSCにおいて再発性の異常がより顕著な程度1で表われることは、染色体イデオグラムの模式図から明らかである。実際に、この顕著な細胞遺伝学的安定性が新規の5p法でリプログラミングされたPBMCに特有であるのは、リンパ芽球様細胞系列(25%、60個のうち15個の異常)及び初代上皮細胞(27%、26個のうち5個の異常)を含む他の細胞起源からリプログラミングされたiPSCが、線維芽細胞でみられる核型異常率と同様の高い核型異常率を有するためである。fib-iPSCで最も頻度の高い核型異常は、13番染色体(14.9%)、1番染色体(11.7%)、12番染色体(9.6%)、及びX染色体(8.5%)で観察された。より少ない程度の核型変化は、21番染色体、11番染色体及び6番染色体においても観察された。興味深いことに、核型の異常は、fib-iPSCの2番染色体、5番染色体及び7番染色体では決して検出されなかった。異数体のうち、染色体増加(トリソミーまたは重複)は、12番染色体(20.0%)、1番染色体(15.0%)、及び13番染色体(12.5%)で最も一般的に観察され、染色体減少はX染色体(38.5%)及び21番染色体(23.1%)で繰り返し確認された。転座、逆位及び派生染色体を含む構造的再編成は、fib-iPSCにおいて13番染色体(22.0%)、1番染色体(12.2%)及び14番染色体(9.8%)で再発した。全く対照的に、分析した178個のiPSC培養物に由来する2つのPBMC-iPSC株だけが14番染色体(トリソミー)または18番染色体(重複)で染色体増加を示した。他の2つのPBMC-iPSC株は、珍しい異常(19%の細胞で転座46、XY、t(7;14)(q34;q11.2)及びモザイク欠失46、X、del(X)(q22q26))を示した。
【0107】
実施例24
PBMC-iPSCの強化された核型安定性は、ドナーの年齢及び継代数に依存しない
血液と異なり、皮膚は日焼けの可能性などの外環境要素に日常的に曝されており、生検由来の線維芽細胞はリプログラミングの前にある特定のレベルの増殖が必要である。このことは、培養においてさらなる老化と同様である。これを考慮して、本発明者らは、ドナーの年齢がfib-iPSCの細胞遺伝学的不安定性に影響を及ぼす寄与因子であり得ると仮定した。この可能性を評価するためにG27バンド核型分析を用いた。fib-iPSCにおけるドナーの年齢の増加と細胞遺伝学的異常の頻度との間に明確な傾向及び相関はなかった。しかし、結果からPBMC-iPSCが全てのドナー年齢群においてfib-iPSCよりもはるかに高い核型安定性を有することを確認した。0~20歳のドナー群以外は、PBMC-iPSCは、21~90歳の間の全てのドナー群について、fib-iPSCよりも有意に安定していた。培養中のiPSCの増殖が遺伝的安定性にどのように影響を及ぼし得るかを確立するために、本発明者らは次に、fib-iPSC及びPBMC-iPSCを経時的に分析した。線維芽細胞由来iPSCの約22.4%が、iPSC生成後の初回のGバンド核型評価において異常核型(クローン異常を伴う1/20超の細胞)を有することが観察されたが、これは典型的には継代数1~23の間であった。全く対照的に、初回の評価においてPBMC由来iPSCの1.4%しか異常核型を有していなかった(p<0.0001)。初回の核型において異常核型を有すると判定されたiPSC株は、それ以上培養も評価もされなかった。したがって、2~4回目の繰り返しでの核型は、それらの初回の核型において最初に細胞遺伝学的に正常であると同定されたiPSC株についてのみが評価された。初回の核型の割合と比較した場合、培養で異常核型を獲得するfib-iPSC(27.3%)の割合は、繰り返しの核型分析で高くなる傾向があり、そしてPBMC-iPSC(p<0.001)よりも有意に高かった。驚くべきことに、PBMC-iPSCの異常核型率は、初回及び繰り返しでの核型間でいずれも有意な差を示さなかった。fib-iPSCにおける細胞遺伝学的不安定性の原因を解析すると、iPSC株の生存期間において、継代数1~23の間に高い異常核型(初回または繰り返し)が生じたようである。この継代範囲は、典型的には、任意の所与の細胞株について、最大量のiPSC増殖が起こる時であり、これらの継代数の辺りで同時に起こる性質決定及び細胞バンキングによるところが大きい。それにもかかわらず、これはfib-iPSCまたはPBMC-iPSCの両方に対して同様のプロセスであり、さらに重要なことに、本発明者らの新しい方法によってリプログラムされたPBMC由来細胞は、長期の培養または増殖時に異常核型対する増加傾向を示さない。Gバンド核型は極微小なゲノム異常(<5Mb)を検出することができないため、限外顕微鏡未満の増幅及び欠損を獲得するPBMC-iPSCは、次にアレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション(aCGH)マイクロアレイを、fib-iPSC及びPBMC-iPSC株のサブセットについて実施した。aCGHは均衡転座、逆位及び20%未満の培養モザイクを検出することができないが、iPSC株11、30、32、33のより小さなサイズのゲノムの増加及び減少、コピー数多型(CNV)、重複/欠失及び不均衡転座を検出するのに優れた補助的な方法である。本発明者らは、親線維芽細胞またはPBMC源の生体試料と比較して、iPSCにおいて獲得された新たな増幅または欠失を分析及び記録した。この分析では、それらが健康な個体で観察されたゲノム変異を含むDatabase of Genomic Variantsに対する相互参照において正常なCNVではない場合、iPSCで新たに獲得されたそれらの増幅及び欠失のみを考慮した。
【0108】
異常及び正常なGバンド核型を有するiPSC株を含めて、aCGHによって検出された増幅及び欠失(増幅/欠失)の平均サイズは、PBMC-iPSC株における2.1Mbと比較して、44Mbであるfib-iPSC株において有意に大きく、その優勢は、異常核型を有するfib-iPSC株によるものであった。正常な核型を有するiPSC株間のサイズ分析比較を分離させた場合、新たな増幅/欠失はfib-iPSC株では平均2.31Mb、PBMC-iPSC株では2Mbであった。このデータを裏付けるように、fib-iPSCで獲得された全体での新たな増幅/欠失の平均数(3.7)は、PBMC-iPSC(1.8)より有意に高かった(2倍)。正常なGバンド核型を有すると決定されたiPSC株でも、新たな増幅/欠失の数は、fib-iPSCにおける3.3に対してPBMC-iPSCで1.8であった。aCGHで検出された、最も一般的に獲得される極微小(0.8~1.5Mb)の新たな増幅または欠失は、染色体7q31.32の増幅または染色体10q15.2~q25.1、16p11.2及び21p11.2~p11.1の欠失であった。まとめると、このデータにより、PBMCをリプログラムするこの新しい方法が、任意の他の公表された方法と比較して、染色体異常の獲得に関して、より安定したヒトiPSCをもたらすことが実証される。
【0109】
実施例25
5p法の追加的な特徴づけ
【0110】
(表9)より多くの数のPBMCがiPSCにリプログラミングされる
【0111】
本発明者らは、PBMC-iPSC株のp53(TP53)が本発明者らの方法を用いてリプログラムされたかどうかを確認するために、さらなる分析を行った。これらの株は、規定されたE7培地中のL521基質上でリプログラムされた。
【0112】
本発明者らは、複数のiPSC株の広範な解析を行った。全ゲノム配列決定(準備中の別の原稿の対象)に基づいて、本発明者らは、ゲノムレベルでTP53遺伝子のエキソン(コード領域)においてiPSC株にいずれのバリアント(SNPまたはIndel)も確認しなかった。
【0113】
全ゲノム配列決定は、Illumina TruSeq PCRフリーライブラリー調製キット(Illumina、San Diego、CA)に従って750ngのゲノムDNAを使用して行った。ライブラリーの質はBioAnalyzer(Agilent Technologies、Santa Clara、CA)を用いて確認し、そしてライブラリーはFulgent Therapeutics(Temple City、CA)のIllumina Hi-Seq10Xで、少なくとも40xリード数まで配列決定した。試料あたり、平均4億6千万超のリードが生成された。Fastqファイルは、4億超のリードでのBurroughs-Wheeler AlignerのBWA-memアルゴリズムを使用してhg38を構築する際に参照ゲノムに対して整列させ、ゲノム全体で平均43xのリード数を生成する各試料に対して良好に整列させた。
【0114】
このパイプラインを用いて、本発明者らはTP53のコード領域(エキソン)においてiPSC株またはそのクローンのみに生じるいずれのバリアント(SNPまたはIndel)も確認しなかった。分析された複数のiPSC株及びそれらのクローン誘導体のうち、1つのドナーiPSC株rs12940247(hg38 chr17:7,664,385 G/A)のみに由来する3つのiPSCクローンのうちの2つにおいて、単一のイントロンの新たなSNPが検出され、それはTP53の単一の(そして稀な)アイソフォームのイントロン1にある。この共通のSNPは、白人の試料の参照集団(ドナー系列のiPSC株は白人ドナーに由来するものであった)において、0.403のマイナーアレル(G)頻度で、アッセイされた全集団の少なくとも36%で見られる。この共通のバリアントは、いかなる機能にも関与していないか、またはがんのバリアントの潜在的影響を割り当てるために使用される典型的な臨床アノテーションデータベースにアノテートされている(CiVIC、ClinVar、COSMIC Cancer Consensus)。このバリアントがGene Tissue Expression(GTEx)データセットの健常組織において、TP53発現レベルの調節因子として作用するという証拠もない。バリアントrs12940247は、Tier1細胞株(PBMC由来のリンパ芽球細胞株のGM12878を含む)の任意の調節機能と交差しない。本発明者らは、これらの試料を特徴づけするためにIllumina Omni2.5Mジェノタイピングアレイも使用した。全ゲノム配列決定の結果と一致して、生殖系列(血液)試料の遺伝子型と一致しなかった、iPSCクローンで検出されたバリアントはなく、この遺伝子座にまたがって同定されたコピー数多型は存在しなかった。
【0115】
(表10)非コード共通バリアントrs12940247は、ドナーCS-002由来の2つのクローンにおいて新たな事象として観察される。
【0116】
TP53の1つのアイソフォームのイントロン6におけるSNPの位置は、灰色の線で示される。TP53のアイソフォームは、GENCODE v24 Comprehensiveの黒色(Protein Data Bankに対応する機能)または濃青色(RefSeqまたはSwissProtのいずれかで調査または検証された転写物)で示される。遺伝子アノテーションの下には、転写、活性プロモーター(いずれもプロットされたゲノム区間で観察されない)及び活性エンハンサー(トラック3及び4、再び、いずれもプロットされたゲノム区間で観察されない)を示す4つのトラックがある。HUVEC細胞のTP53の遺伝子領域(gene body)内には、いくつかの安定した調節エレメントが観察される(青色のピークとして表され、H3K4me1のChIP-Seqによるシグナルの濃縮を示す)。TP53の任意の調節機能を有するドナーiPSC由来の2つのクローンにおいて新たに生じる、観察された非翻訳領域バリアントに対する証拠はない。
【0117】
簡単な方法論:生殖細胞系列のバリアント検出のためのBest Practicesを使用して、Genome Analysis Toolkit(GATK)を用いて生殖細胞系列のバリアント検出を行った。簡単に説明すると、整列させた配列はPicardで前処理され、重複したリード(DNAの単一断片に由来するものであり、これは、試料調製中、またはシーケンスプロセス中にクラスター増幅を使用する時に生成され得る)を、リードの5’末端の配列によって同定する。変異型を同定する前に、遺伝子型検出精度(ベース品質スコアに大きく依存するプロセス)を改善するために、In-del周辺の局所ゲノム再編成後に、ベース品質スコアを再較正する。次いで、検出された一塩基多型(SNP)及びIn-delを使用して、連携の遺伝子型決定モジュール(joint genotyping module)でバリアント検出を再較正することにより、信頼性の高いバリアント検出がもたらされる。
【0118】
結論として、SNP及びWGSレベルでの複数のiPSC株及びクローンの非常に詳細かつ広範な分析に基づいて、本発明者らは、その正常な調節を無効にするであろうTP53遺伝子のいずれの翻訳領域の変異も検出していない。
【0119】
(表11)非コード共通バリアントrs12940247は、ドナーCS-002由来の2つのクローンにおいて新たな事象として観察される。
【0120】
実施例26
考察
本研究において、本発明者らは、非増殖かつ凍結保存のPBMCから新規の方法によって誘導されたヒトiPSC(PBMC-iPSC)が、リプログラミングの前に細胞増殖を必要とする他の体細胞(皮膚線維芽細胞培養物、LCL、上皮細胞、及び脂肪細胞を含む)から生成されたiPSCと比較して、著しく細胞遺伝学的に安定であることを示した。5p法でリプログラムされたこれらのPBMC-iPSCは、他の研究室で得られたhESC及びiPSCなど他の多能性幹細胞株について過去に報告されているものと比較して、安定性の比率も高い。200を超える固有のドナー、同一の幹細胞維持手順、多分化能特性決定及び核型分析による様々な細胞種のエピソーマルプラスミドリプラングを伴うこの全ての研究は、本発明者らの研究室及びCytogenetics Coreで実施された。本発明者らは、基質及び培地にかかわらず確実にリプログラムされるリンパ系T細胞及び骨髄系非T細胞集団の両方を用いて、本発明者の研究室で生成した200を超える個々のクローン性PBMC-iPSC株を体系的に分析した。さらに、本発明者らは、異種成分を含まない(xeno-free)組換えヒトL521基質及び規定されたリプログラング培地での安定なPBMC-iPSCの作製を実証した。最も重要なことに、5p法でリプログラムされたPBMC-iPSCは、長期間培養時に核型安定性を維持する。まとめると、この改良された技術とPBMCなどの非増殖細胞源の組み合わせにより、臨床的に適合性のあるリプログラミング方法及び多数の患者試料に対する容易な入手の両方がもたらされる。
【0121】
本発明者らの研究室において、エピソーマルリプログラミングによって生成されたfib-iPSCの1番染色体、12番染色体、13番染色体、及びX染色体の異数性及び再編成が最も頻繁の高い異常であった。対照的に、これらの異常は本発明者らが生成及び分析したPBMC-iPSCのいずれにも、決して検出されなかった。fib-iPSCで観察されたこれらの変化のいくつかは、12番染色体の短腕ならびに1番染色体、17番染色体及びX染色体の増加または減少が存在する、ヒトESCに見られる再発性の異常と類似しており、これはその悪性ヒト胚性癌腫(EC)幹細胞対応物と同様である。aCGHマイクロアレイを用いて、PBMC-iPSCは、fib-iPSCと比較して、半分の新たなCNVを示した。これらの新たなCNVは、hiPSCとそれらのそれぞれの親線維芽細胞またはPBMCとの間で共有されず、リプログラミングまたはiPSC増殖の間に獲得された可能性が高い。fib-iPSCにおけるCNVの染色体変化の平均塩基対サイズも、PBMC-iPSC株と比較した場合にはるかに大きく、このことは、この新規リプログラミング法の安定性をさらに支持する。
【0122】
iPSCにおいて過去に報告されている増加した核型異常、コード変異、及び小さなゲノム改変は、おそらくリプログラミング手順自体による変異原性作用の結果を反映している。しかし、これらの報告されたゲノム異常の大部分は、組込み型レトロウイルス及びレンチウイルスのリプログラミング方法を用いて皮膚線維芽細胞から生成されたiPSC株で試験されている。低継代のiPSCに対する異なる非組込み型及びレンチウイルスリプログラミング方法を比較する異数性率及びCNVが記載されている。そこではエピソーマルリプログラミング法及び組込み型リプログラミング法を使用する低継代のiPSCにおいて、約12~13%の異数性率が報告されているが、このデータは主に増殖した線維芽細胞培養に由来するiPSCの異常率を含み、ドナー細胞の起源によって分けられていないか、またはPBMCのような非増殖細胞から得られたものではない。酸素分圧、増殖補助剤、増殖因子、継代技術、凍結保存、細胞増殖のための細胞外基質を含む、様々な因子がPSCの長期培養や増殖の間の遺伝的安定性に影響を与え得る36。これらの前述の要因を考慮すると、多くの場合、PSC培養技術には実質的に実験室差があるが、これらの要因は全て、本発明者の研究において厳密に制御されていた。Progenitor Cell Biology Consortium(www.synapse.org)は、主要な発生調節因子と発癌調節因子の間の遺伝子発現とCNVの相関を、ドナー系列の安定性、リプログラミング技術、及び起源の細胞の結果で確認した。しかし、核型異常及び株の安定性は、本研究において起源細胞及びそれらの以前の細胞増殖歴で区別せず、少数の異常な1種のfib-iPSCのみを分析した。
【0123】
iPSCのメチル化及び転写プロファイルは、起源の血液及び線維芽細胞に基づいていくらか分けられたが、これらは体細胞のエピジェネティックな記憶プロファイルに直接起因するものではなかった。このグループでもまた、組込み型プログラミング法を用いて生成された系列のCNVが、より高いレベルとなる傾向が観察された。近年、別のグループが、血液細胞及び誘導iPSCはそのメチル化プロファイル(より高メチル化状態)において、より異常なDNAメチル化を有する他の任意の親組織またはそれらのiPSCと比較して、真正hiPSC及びESCにはるかに近いことを明らかにし、このことは、成体PBMCまたは臍帯血のような過去に組織培養で増殖されていない細胞集団が、リプログラミング及びiPSC段階での細胞遺伝学的安定性の維持のための好ましい選択であり得るという、本発明者らの仮説を支持する。
【0124】
皮膚線維芽細胞、LCL、上皮細胞及び脂肪幹細胞などの増殖した体細胞種から生成されたiPSCと比較して、非増殖PBMCに由来するiPSCの遺伝的安定性の根底にある機構は多要因である可能性が高い。第一に、骨髄ニッチは、ほぼ体の任意の他の細胞種(BNID101940)よりも頻繁に(PBMC株の大部分の細胞では1~5日)、血液の代謝回転を可能にする。したがって、宿主の血液は、数か月から数年にしか再生しない内在の真皮線維芽細胞、上皮細胞または脂肪細胞よりもはるかに「老化」していないと考えられ得る。特に、ドナー由来の皮膚線維芽細胞、LCL、上皮細胞及び脂肪細胞のリプログラミングには、組織培養において長期間のエクスビボでの体細胞増殖が必要となる。これらの要素は、組織培養に関連する細胞ストレス及び老化の増加を伴う細胞の開始時のプールにつながり、したがってDNA修復能の低下が起こりやすい。そのため、過去に増殖させた体細胞の培養物は、全体的に異種性及び固有の遺伝子型の不安定性を伴って始まる可能性があり、そして低レベルのモザイクは、リプログラミングの前にバルク異種細胞培養において従来のGバンド核型で検出されないままであり得る。続いて、低レベルの核型異常が有意なクローン増殖及び増殖の際に拡大するようになるfib-iPSC、LCL-iPSCまたは上皮-iPSC株が単離されうる。本発明者らの方法では、単離されたPBMCは過去に細胞増殖の期間がなく、単離後すぐにリプログラミングが開始されたので、このリスクが回避される。結論として、PBMCの5pリプログラミングプロトコルは追加のエピソーマルプラスミドを含み、リプログラミング因子の1つであるSV40LTがPBMCの細胞死を最小限に抑えて表面接着を促進することにより、細胞にとってストレスのかかるリプログラミング期の間のPBMCの安定性も高められ得る。リプログラミング因子混合物の成分としてのSV40LTの使用は、エピソーマルプラスミドリプログラミングによって誘導されたiPSC株のゲノムに導入遺伝子が組み込まれないので形質転換ではないことも過去に示されており、これも発明者らのデータによって支持されている。予め増殖させた線維芽細胞などの体細胞種は、5pプロトコルでリプログラムした場合にさらに優れた遺伝的安定性が得られ得るが、本発明者らは、予め増殖させた細胞と増殖させていないPMBCとの間のリプログラミングにおけるこの1つの違いでは核型安定性の大きな差が完全に説明されないと思っている。重要なことに、追加の要素は別として、全ての予め増殖した細胞種及び増殖していない血液に由来するiPSCは、同一の非組込み型エピソーマルリプログラミング法を用いてリプログラムされ、そして同一のフィーダーフリーMatrigel(登録商標)/mTeSR1(商標)細胞培地と手作業でのStemPro(登録商標)EZPassage(商標)ツールを用いて維持された。それにもかかわらず、本発明者らの新規5pプロトコルが、増殖していないPBMC以外の追加の細胞種のリプログラミングを促進した場合、それは当分野に対して大きな進歩となり得、そして進行中の研究では、最適化プロトコルを用いる線維芽細胞リプログラミングを評価している。理化学研究所が主催した加齢黄斑変性の患者の初回の自己ヒトiPSC臨床試験は、患者のiPSC株において、患者の本来の線維芽細胞で検出されなかった一塩基変異(SNV)及びCNVが検出されたため、中止となった。CNVは全て単一遺伝子欠失であったが、SNVの1つは、がん関連の体細胞変異データベースで過去に同定されていた6、16。これは、ヒトiPSCの臨床応用の成功には、安定した核型が最も重要であることを強調している。さらに、予測毒性学のためのiPSC及び誘導体のスケールアップならびに治療薬発見のためのハイスループット薬剤スクリーニングには、実質的な細胞安定性を有するiPSCの供給源を必要となる。非増殖PBMCにおけるこの最適なリプログラミング方法は、獲得したゲノム異常の影響を最小にする。これらの結果は、リプログラミングの最適化技術ならびにリプログラミング前の前培養の品質及び期間が、長期のiPSC株の安定に重要であることを示す。このデータは、臨床用途及び創薬研究用途のためのiPSC由来細胞製品の安全性の改善を手助けするとともに、iPSC疾患モデリング研究における再現性を向上させるのに役立つであろう。
【0125】
上記の様々な方法及び技術は、本発明を実施するための多くの手段を提供する。当然のことながら、記載された全ての目的または利点が必ずしも本明細書に記載の特定の任意の実施形態に従って達成され得るとは限らないことを理解されたい。したがって、例えば当業者は、本明細書で教示または示唆されるような他の目的または利点を必ずしも達成することなく、本明細書に教示されているような1つの利点または利点の群を達成または最適化する様式で実施できることを認識するであろう。様々な有利かつ不利な代替物が本明細書で言及される。いくつかの好ましい実施形態には、具体的に1つの、別の、またはいくつかの有利な特徴が含まれる一方で、他には1つの、別の、またはいくつかの不利な特徴が特に排除されると同時にさらに他には1つの、別の、またはいくつかの有利な特徴を包含することによって現在の不利な特徴が特に軽減されることが理解される。
【0126】
さらに、当業者は様々な実施形態から種々の特徴の適用性を理解するであろう。同様に、上述の様々な要素、特徴及びステップ、ならびにそのようなそれぞれの要素、特徴またはステップの他の既知の等価物は、本明細書に記載の原理に従う方法を実施するために、当業者によって組み合わされ、適合され得る。様々な要素、特徴、及びステップの中には、多様な実施形態にとりわけ含まれるものもあれば、とりわけ除外されるものがあり得る。
【0127】
本発明は、ある特定の実施形態及び実施例の文脈において開示されるが、本発明の実施形態は、具体的に開示された実施形態の範囲を超えて他の代替実施形態に及ぶこと、及び/またはその使用及び修正及び同等物に及ぶことは、当業者に理解されるであろう。
【0128】
本発明の実施形態では、多くの変形要素及び代替要素が開示されている。さらなる変形要素及び代替要素は、当業者に明らかであろう。これらの変形要素の中には、限定されないが、血液細胞の供給源、血液の細胞成分、それらの中に由来する多能性幹細胞、血液細胞由来の誘導多能性幹細胞に関連する技術及び組成物、細胞を分化させる技術及び組成物、そのような細胞に関連するバイオマーカー、そして本発明の教示によって作製された生成物の特定の使用がある。本発明の様々な実施形態は、これらの変形または要素のいずれかを具体的に含むかまたは除外することができる。
【0129】
いくつかの実施形態において、本発明のある特定の実施形態を記載及び特許請求するために使用される、成分の量、濃度、反応条件などの特性を表す数字は、場合によっては「約」という用語によって修飾されると理解されるべきである。したがって、いくつかの実施形態では、記載された説明及び添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメータは、特定の実施形態によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。いくつかの実施形態において、数値パラメータは、報告された有効数字の数を踏まえて、かつ通常の丸め法の適用により解釈されるべきである。本発明のいくつかの実施形態の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータが近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に示された数値は、実施可能な限り正確に報告される。本発明のいくつかの実施形態において、提示される数値は、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる、ある特定の誤差を含み得る。
【0130】
いくつかの実施形態において、(特に以下の特許請求の範囲の文脈において)本発明の特定の実施形態を説明する文脈で使用される用語「a」及び「an」及び「the」ならびに類似の言及は、単数形と複数形の両方をカバーすると解釈することができる。本明細書における値の範囲の詳述は、範囲内に入る個々の各値に対して個々に言及する略記法として機能することを意図するに過ぎない。本明細書中で他に示されない限り、個々の各値は、本明細書中に個別に詳述されているかのように明細書に組み込まれる。本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書中で別様に指示されない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施され得る。本明細書のある特定の実施形態に関して提供される任意の及び全ての例、または例示的な言葉(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をよりよく説明するためのものであり、別様に特許請求される本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中のいかなる言葉も、本発明の実施に不可欠な任意の請求されていない要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0131】
本明細書で開示される本発明の代替要素または実施形態のグループ分けは、限定として解釈されるべきではない。各群のメンバーは、個別に、または本明細書に見いだされる群または他の要素の他のメンバーと任意の組み合わせで参照及び特許請求され得る。群の1つ以上のメンバーは、利便性及び/または特許性の理由から、群の中に含めたり、群から削除したりすることが可能である。そのような包含または欠失が生じる場合、本明細書は、改変された群を含むとみなされ、したがって、添付の特許請求の範囲で使用される全てのマーカッシュ群の記述を満たすものとみなされる。
【0132】
本発明を実施するために本発明者らに公知の最良の方法を含む、本発明の好ましい実施形態が本明細書に記載される。これらの好ましい実施形態の変形は、前述の説明を読むことによって当業者に明らかとなるであろう。当業者は、そのような変形を必要に応じて用いることができ、本発明は、本明細書に具体的に記載されている以外の別の方法で実施することができると考えられる。したがって、本発明の多くの実施形態は、適用可能な法律によって許容されるように、添付の特許請求の範囲に記載された主題の全ての改変及び等価物を含む。さらに、本明細書中で別様に指示されない限り、あるいは文脈によって明らかに否定されない限り、それらの全ての可能な変形における上記の要素の任意の組み合わせが本発明に包含される。
【0133】
さらに、多数の参照が本明細書の至るところの特許及び刊行物についてなされる。上記の引用参考文献及び刊行物のそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に個々に組み込まれる。
【0134】
最後に、本明細書で開示される本発明の実施形態は、本発明の原理を例示するものであることを理解されたい。使用することができる他の改変も本発明の範囲内であり得る。したがって、限定ではなく例として、本発明の代替形態を本明細書の教示に従って利用することができる。よって、本発明の実施形態は詳細に図示及び説明されるようなものに限定されない。
【0135】
配列情報
SEQUENCE LISTING
<110> CEDARS-SINAI MEDICAL CENTER
<120> A NOVEL AND EFFICIENT METHOD FOR REPROGRAMMING BLOOD TO INDUCED
PLURIPOTENT STEM CELLS
<150> US 15/184,241
<151> 2016-06-16
<160> 48
<170> PatentIn version 3.5

<210> 1
<211> 23
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 1
ccccagggcc ccattttggt acc 23

<210> 2
<211> 26
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 2
acctcagttt gaatgcatgg gagagc 26

<210> 3
<211> 20
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 3
cattcaaact gaggtaaggg 20

<210> 4
<211> 22
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 4
tagcgtaaaa ggagcaacat ag 22

<210> 5
<211> 24
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 5
ttcacatgtc ccagcactac caga 24

<210> 6
<211> 26
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 6
tcacatgtgt gagaggggca gtgtgc 26

<210> 7
<211> 24
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 7
ttcacatgtc ccagcactac caga 24

<210> 8
<211> 22
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 8
tttgtttgac aggagcgaca at 22

<210> 9
<211> 24
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 9
acccatcctt cctgcccgat caga 24

<210> 10
<211> 24
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 10
ttggtaatgg agcggcggga cttg 24

<210> 11
<211> 23
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 11
ccacctcgcc ttacacatga aga 23

<210> 12
<211> 22
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 12
tagcgtaaaa ggagcaacat ag 22

<210> 13
<211> 26
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 13
gcgaacccaa gacccaggcc tgctcc 26

<210> 14
<211> 25
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 14
cagggggtct gctcgcaccg tgatg 25

<210> 15
<211> 21
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 15
ggctgagaag aggatggcta c 21

<210> 16
<211> 22
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 16
tttgtttgac aggagcgaca at 22

<210> 17
<211> 25
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 17
agccatatgg tagcctcatg tccgc 25

<210> 18
<211> 30
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 18
tcaattctgt gcctccggga gcagggtagg 30

<210> 19
<211> 25
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 19
agccatatgg tagcctcatg tccgc 25

<210> 20
<211> 22
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 20
tagcgtaaaa ggagcaacat ag 22

<210> 21
<211> 21
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 21
cctggaggag aagaggaaag a 21

<210> 22
<211> 21
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 22
ttgaggacct ctgtgtattt g 21

<210> 23
<211> 21
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 23
tgctgtctcc atgtttgatg t 21

<210> 24
<211> 21
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 24
tctctgctcc ccacctctaa g 21

<210> 25
<211> 21
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 25
atcagggcca agacatagag a 21

<210> 26
<211> 20
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 26
gccaatgcaa cttggacgtt 20

<210> 27
<211> 24
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 27
catagaagaa gaagaggatg aaga 24

<210> 28
<211> 24
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 28
gtagggattc gagggaatta ctga 24

<210> 29
<211> 19
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 29
atggaacacg accttgaga 19

<210> 30
<211> 20
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 30
tgagcaggat gaggtctagg 20

<210> 31
<211> 20
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 31
cacctcaacc tggagacaat 20

<210> 32
<211> 20
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 32
tgaagcaggc gtggtttcaa 20

<210> 33
<211> 20
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 33
tcgggggtgt tagagacaac 20

<210> 34
<211> 20
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 34
ttccacgagg gtagtgaacc 20

<210> 35
<211> 20
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 35
accacagtcc atgccatcac 20

<210> 36
<211> 20
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 36
tccaccaccc tgttgctgta 20

<210> 37
<211> 20
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 37
tccttctacg gacggaactg 20

<210> 38
<211> 20
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 38
agaaatgcct gaggaaagca 20

<210> 39
<211> 20
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 39
gattcctcct ccaccctcac 20

<210> 40
<211> 23
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 40
caatattctg cctggcctgg atg 23

<210> 41
<211> 21
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 41
ccacacccac tcagagccat t 21

<210> 42
<211> 20
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 42
caccccacca ccaaaacctt 20

<210> 43
<211> 24
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 43
cgagaggacc ccgtggatgc agag 24

<210> 44
<211> 24
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 44
ggcggccatc ttcagcttct ccag 24

<210> 45
<211> 28
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 45
gaatgctgca aactgaccac gctggaac 28

<210> 46
<211> 28
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 46
tggcattcaa gagggttttc agtctgga 28

<210> 47
<211> 18
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 47
ctatcatgct ggctgcct 18

<210> 48
<211> 20
<212> DNA
<213> Homo sapiens
<400> 48
ctacaacacc cttctcacag 20
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図8H
図8I
図8J
図9
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図10-4】
図10-5】
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図15
図16A
図16B
図17
図18A
図18B
図19A
図19B
図20
【配列表】
2024116318000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-07-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある量の血液細胞を用意すること、
ある量のリプログラミング因子を前記血液細胞に送達すること、及び
前記血液細胞をリプログラミング培地中で少なくとも4日間培養すること
を含む、血液細胞由来の人工多能性幹細胞を生成する方法であって、
前記リプログラミング因子を送達すること及びリプログラミング培地で培養することにより、血液細胞由来の人工多能性幹細胞が生成される、前記方法。