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特開2024-116321一価の抗プロペルジン抗体および抗体断片
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116321
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】一価の抗プロペルジン抗体および抗体断片
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/18 20060101AFI20240820BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240820BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 7/08 20060101ALI20240820BHJP
   A61P 33/06 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
C07K16/46
A61K39/395 N
A61P43/00 111
A61P37/06
A61P7/00
A61P13/02
A61P13/12
A61P11/06
A61P11/00
A61P17/00
A61P31/04
A61P21/00
A61P29/00
A61P17/02
A61P25/28
A61P35/04
A61P7/02
A61P25/16
A61P27/02
A61P1/16
A61P9/00
A61P15/00
A61P25/00
A61P3/00
A61P37/02
A61P19/08
A61P9/10
A61P9/10 101
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P7/08
A61P33/06
C07K16/18
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024095141
(22)【出願日】2024-06-12
(62)【分割の表示】P 2022107980の分割
【原出願日】2018-01-30
(31)【優先権主張番号】62/452,187
(32)【優先日】2017-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503102674
【氏名又は名称】アレクシオン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シェリダン,ダグラス エル.
(72)【発明者】
【氏名】タンブリーニ,ポール ピー.
(72)【発明者】
【氏名】マック,タネーシャ アン-タナラ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィエトリ,ウォルター シー.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】補体第二経路調節異常によって媒介される疾患を治療する方法に有用である、プロペルジン活性の効果的な調節を提供する。
【解決手段】ヒトプロペルジンに特異的または実質的に特異的に結合し、補体第二経路の活性化を選択的にブロックする、単離された一価の抗体およびそれらの抗体断片を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトプロペルジンに結合する、単離された一価の抗体またはその抗体断片。
【請求項2】
前記抗体または断片はラクダ科動物抗体である、請求項1に記載の抗体またはその断片。
【請求項3】
前記抗体または断片はシングルドメイン抗体である、請求項1に記載の抗体またはその断片。
【請求項4】
前記抗体または断片はヒトプロペルジンのTSR0および/またはTSR1に結合する、請求項1に記載の抗体またはその断片。
【請求項5】
前記抗体または断片は、アミノ酸配列LCQPCRSPRWSLWSTWAPCSVTCSEGSQLRYRRCVGWNGQ(配列番号8)内のエピトープに結合する、請求項1に記載の抗体またはその断片。
【請求項6】
前記抗体または断片は、50nM未満の親和性でマウスプロペルジンに結合する、請求項1に記載の抗体またはその断片。
【請求項7】
前記抗体または断片はヒト化されている、請求項1に記載の抗体またはその断片。
【請求項8】
前記抗体または断片は、第2の一価の抗体または抗体断片とリンクされている、請求項1に記載の抗体またはその断片。
【請求項9】
前記第2の一価の抗体または抗体断片はヒト化されている、請求項8に記載の抗体またはその断片。
【請求項10】
前記抗体または断片は、リンカーによって前記第2の抗体または断片にリンクされている、請求項8に記載の抗体またはその断片。
【請求項11】
前記リンカーはポリグリシンリンカーである、請求項10に記載の抗体またはその断片。
【請求項12】
前記ポリグリシンリンカーは、GGGGD(配列番号63)、GGGGS(配列番号1)、GGGGA(配列番号100)またはGGGGE(配列番号64)の配列を含む、請求項11に記載の抗体またはその断片。
【請求項13】
前記第2の一価の抗体または抗体断片は、アルブミンと特異的に結合する、請求項8に記載の抗体またはその断片。
【請求項14】
前記第2の一価の抗体またはその断片は、ヒトプロペルジンに結合する前記抗体または抗体断片の前記N末端にリンクされている、請求項8に記載の抗体またはその断片。
【請求項15】
前記抗体は、アルブミン結合ペプチドにリンクされている、請求項8に記載の抗体またはその断片。
【請求項16】
前記抗体または断片は、以下の配列を有する3つのCDRすなわち、
a)アミノ酸配列GRISSIIHMA(配列番号16)を含むCDR-H1、
b)アミノ酸配列RVGTTVYADSVKG(配列番号12)を含むCDR-H2、
c)アミノ酸配列LQYEKHGGADY(配列番号17)を含むCDR-H3、
を含む、請求項1に記載の抗体またはその断片。
【請求項17】
前記抗体または断片は、
a)アミノ酸配列GRIFEVNMMA(配列番号9)を含むCDR-H1、
b)アミノ酸配列RVGTTX1YADSVKG(配列番号10)を含み、Xが極性アミノ酸または非極性アミノ酸であるCDR-H2、
c)アミノ酸配列LQYX2RYGGAEY(配列番号11)を含み、Xが極性アミノ酸であるCDR-H3から選択される3つのCDRのうちの少なくとも1つまたは全てを含む、請求項1に記載の抗体またはその断片。
【請求項18】
CDR-H2は、前記アミノ酸配列RVGTTVYADSVKG(配列番号12)を含む、請求項17に記載の抗体。
【請求項19】
CDR-H3は、アミノ酸配列LQYDRYGGAEY(配列番号13)を含む、請求項18に記載の抗体。
【請求項20】
CDR-H2は、アミノ酸配列RVGTTTYADSVKG(配列番号15)を含む、請求項17に記載の抗体。
【請求項21】
CDR-H3は、アミノ酸配列LQYSRYGGAEY(配列番号14)を有する、請求項20に記載の抗体。
【請求項22】
CDR-H3は、アミノ酸配列LQYDRYGGAEY(配列番号13)を有する、請求項20に記載の抗体。
【請求項23】
CDR-H3は、アミノ酸配列LQYDRYGGAEY(配列番号13)を有する、請求項17に記載の抗体。
【請求項24】
CDR-H3は、アミノ酸配列LQYSRYGGAEY(配列番号14)を有する、請求項17に記載の抗体。
【請求項25】
前記抗体は、以下の配列を有する6つのCDRすなわち、
a)アミノ酸配列GYIFTNYPIH(配列番号18)を含むCDR-H1、
b)アミノ酸配列FIDPGGGYDEPDERFRD(配列番号19)を含むCDR-H2、
c)アミノ酸配列RGGGYYLDY(配列番号20)を含むCDR-H3、
d)アミノ酸配列RASQDISFFLN(配列番号21)を含むCDR-L1、
e)アミノ酸配列YTSRYHS(配列番号22)を含むCDR-L2、
f)アミノ酸配列QHGNTLPWT(配列番号23)を含むCDR-L3、
を含む、請求項1に記載の抗体またはその断片。
【請求項26】
前記抗体は、以下の配列を有する6つのCDRすなわち、
a)アミノ酸配列GFSLTTYGVH(配列番号24)を含むCDR-H1、
b)アミノ酸配列VIWSGGDTDYNASFIS(配列番号25)を含むCDR-H2、
c)アミノ酸配列NKDYYTNYDFTMDY(配列番号26)を含むCDR-H3、
d)アミノ酸配列KSSQSVLYSSNQKNFLA(配列番号27)を含むCDR-L1、
e)アミノ酸配列WASTRES(配列番号28)を含むCDR-L2、
f)アミノ酸配列HQYLSSYT(配列番号29)を含むCDR-L3、
を含む、請求項1に記載の抗体またはその断片。
【請求項27】
前記抗体は、以下の配列を有する6つのCDRすなわち、
a)アミノ酸配列GYTFIDYWIE(配列番号30)を含むCDR-H1、
b)アミノ酸配列EIFPGSGTINHNEKFKD(配列番号31)を含むCDR-H2、
c)アミノ酸配列EGLDY(配列番号32)を含むCDR-H3、
d)アミノ酸配列SASSSVSYIY(配列番号33)を含むCDR-L1、
e)アミノ酸配列DTSTLAS(配列番号34)を含むCDR-L2、
f)アミノ酸配列QQWSRNPFT(配列番号35)を含むCDR-L3、
を含む、請求項1に記載の抗体またはその断片。
【請求項28】
前記抗体は、以下の配列を有する6つのCDRすなわち、
a)アミノ酸配列GFSLTSYGVH(配列番号36)を含むCDR-H1、
b)アミノ酸配列VIWSGGSTDYNAAFIS(配列番号37)を含むCDR-H2、
c)アミノ酸配列NKDFYSNYDYTMDY(配列番号38)を含むCDR-H3、
d)アミノ酸配列KSSQSVLYSSNQKNFLA(配列番号27)を含むCDR-L1、
e)アミノ酸配列WASTRES(配列番号28)を含むCDR-L2、
f)アミノ酸配列HQYLSSYT(配列番号29)を含むCDR-L3、
を含む、請求項1に記載の抗体またはその断片。
【請求項29】
前記抗体は、以下の配列を有する6つのCDRすなわち、
a)アミノ酸配列GYTXTAYGIN(配列番号39)を含むCDR-H1、
b)アミノ酸配列YIYIGNGYTDYNEKFKG(配列番号40)を含むCDR-H2、
c)アミノ酸配列SGWDEDYAMDF(配列番号41)を含むCDR-H3、
d)アミノ酸配列RASENIYSYLA(配列番号42)を含むCDR-L1、
e)アミノ酸配列HAKTLAE(配列番号43)を含むCDR-L2、
f)アミノ酸配列QHHYGPPPT(配列番号44)を含むCDR-L3、
を含む、請求項1に記載の抗体またはその断片。
【請求項30】
前記抗体または断片は、ヒトプロペルジンの活性を阻害する、請求項1または8に記載の抗体またはその断片。
【請求項31】
請求項1または8に記載の抗体を、これを必要とする患者に有効量で投与することを含む、補体第二経路調節異常により媒介される疾患を治療する方法。
【請求項32】
前記疾患は、自己免疫性血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、溶血性尿毒症症候群(HUS)、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)または発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
請求項1または8に記載の抗体を、これを必要とする患者に有効量で投与することを含む、補体第二経路膜侵襲複合体アセンブリを阻害する方法。
【請求項34】
補体第二経路依存性溶血を阻害する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
活性成分としての請求項1または8に記載の抗体またはその断片と、薬学的に許容可能な担体と、を含む、薬学的組成物。
【請求項36】
医薬品として用いられる、請求項1または8に記載の抗体またはその断片。
【請求項37】
補体第二経路調節異常により媒介される疾患の治療に用いられる、請求項1または8に記載の使用のための抗体またはその断片。
【請求項38】
前記疾患は、自己免疫性血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、溶血性尿毒症症候群(HUS)、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、IgA腎症(バージャー病)、C3糸球体症(C3G)、喘息、ゴーシェ病、化膿性汗腺炎、ベーチェット病、皮膚筋炎、重度の火傷、早期敗血症、肺炎球菌性髄膜炎、アルツハイマー病、がん転移、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺障害(ACI)、輸血関連肺障害(TRALI)、血液透析による血栓症、後天性表皮水疱症(EBA)、ブドウ膜炎、パーキンソン病、原発性胆道閉鎖症、抗好中球細胞質抗体(ANCA)血管炎、網膜変性、広範な血栓性微小血管障害症(TMA)、広範なTMA(APS)、造血幹細胞療法(HSCT)TMA、加齢黄斑変性(AMD)、子癇前症、溶血、肝酵素上昇および血小板減少(HELLP)症候群、多発性硬化症、抗リン脂質抗体症候群(APS)、再発性多発軟骨炎、虚血性障害、脳卒中、移植片対宿主病(GvHD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、アテローム性動脈硬化、急性冠動脈症候群、出血性ショック、関節リウマチ、透析(心血管リスク)、心血管疾患、胎盤マラリア、抗リン脂質抗体症候群(APS)妊娠喪失、膜性増殖性(MP)糸球体腎炎、膜性腎炎、脳炎、脳障害、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体抗体脳炎、マラリア溶血危機、腹部大動脈瘤(AAA)または胸腹部大動脈瘤(TAA)である、請求項37に記載の使用のための抗体またはその断片。
【請求項39】
単離された抗体またはその断片であって、前記抗体は、LEVQLVESGGGLVQAGGSLRLSCAASGRISSIIHMAWYRQAPGKQRELVAEISRVGTTVYADSVKGRFTISRDDAKNTVTLQMNSLKPEDTAVYYCNALQYEKHGGADYWGQGTQVTVSSRKCCVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号53)を含む、単離された抗体またはその断片。
【請求項40】
単離された抗体またはその断片であって、前記抗体は、LEVQLVESGGGLVQAGGSLRLSCAASGRISSIIHMAWYRQAPGKQRELVAEISRVGTTVYADSVKGRFTISRDDAKNTVTLQMNSLKPEDTAVYYCNALQYEKHGGADYWGQGTQVTVSSPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCAVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号54)を含む、単離された抗体またはその断片。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
免疫複合体のクリアランスならびに、感染因子、外来抗原、ウイルス感染細胞および腫瘍細胞に対する免疫応答において、補体系が中心的な役割を果たす。補体の活性化は、主に3つの経路(古典的経路、レクチン経路、第二経路)で発生する。補体第二経路が制御されずに活性化されたり調節が不十分であったりすると、全身性炎症、細胞傷害および組織の損傷につながる可能性がある。補体第二経路は、増え続ける多種多様な疾患の病因に関与してきた。プロペルジンは、C3転換酵素複合体およびC5転換酵素複合体(C3bBbおよびC3bnBb)と結合してこれを安定化することにより、補体第二経路の活性化を正に調節する。プロペルジン活性の阻害または調節は、補体第二経路の調節異常に関連する症状を緩和し、疾患の進行を遅らせる重要な治療戦略である。このプロペルジン活性の効果的な調節に対する需要は、依然として満たされていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本明細書に記載されるのは、プロペルジンに特異的または実質的に特異的に結合し、補体第二経路の活性化を選択的にブロックする、単離された一価の抗体およびそれらの抗体断片である。プロペルジンの機能的活性を阻害することにより、本明細書に記載の一価の抗体は、補体第二経路が誘導する、膜侵襲複合体の形成を阻害する。また、単一のプロペルジン分子と一価の抗体との選択的結合により、凝集によって生じる望ましくない免疫複合体を減らすことができる。したがって、単一のプロペルジン単量体または多量体の選択的ターゲティングは、補体第二経路調節異常により媒介される疾患のある患者にとっての臨床的な利益を増す可能性がある。
【0003】
一実施形態では、本開示は、ヒトプロペルジンに結合する単離された一価の抗体またはその抗体断片に関する。特定の実施形態では、抗体または断片はラクダ科動物抗体である。特定の実施形態では、抗体または断片はシングルドメイン抗体である。特定の実施形態では、抗体または断片は、ヒトプロペルジンのTSR0および/またはTSR1に結合する。特定の実施形態では、抗体または断片は、アミノ酸配列LCQPCRSPRWSLWSTWAPCSVTCSEGSQLRYRRCVGWNGQ(配列番号8)のエピトープに結合する。特定の実施形態では、抗体または断片は、50nM未満の親和性でマウスプロペルジンに結合する。特定の実施形態では、抗体または断片は、a)アミノ酸配列GRIFEVNMMA(配列番号9)を含むCDR-H1、b)アミノ酸配列RVGTTX1YADSVKG(配列番号10)を含み、Xが極性アミノ酸または非極性アミノ酸であるCDR-H2、c)アミノ酸配列LQYX2RYGGAEY(配列番号11)を含み、Xが極性アミノ酸であるCDR-H3から選択される3つのCDRのうちの少なくとも1つまたはすべてを含む。特定の実施形態では、CDR-H2は、アミノ酸配列RVGTTVYADSVKG(配列番号12)を含む。特定の実施形態では、CDR-H3は、アミノ酸配列LQYDRYGGAEY(配列番号13)を含む。特定の実施形態では、CDR-H2は、アミノ酸配列RVGTTTYADSVKG(配列番号15)を含む。特定の実施形態では、CDR-H3は、アミノ酸配列LQYSRYGGAEY(配列番号14)を有する。特定の実施形態では、CDR-H3は、アミノ酸配列LQYDRYGGAEY(配列番号13)を有する。特定の実施形態では、CDR-H3は、アミノ酸配列LQYDRYGGAEY(配列番号13)を有する。特定の実施形態では、CDR-H3は、アミノ酸配列LQYSRYGGAEY(配列番号14)を有する。特定の実施形態では、抗体または断片は、a)アミノ酸配列GRISSIIHMA(配列番号16)を有するCDR-H1、b)アミノ酸配列RVGTTVYADSVKG(配列番号12)を有するCDR-H2、c)アミノ酸配列LQYEKHGGADY(配列番号17)を有するCDR-H3の3つのCDRを含む。特定の実施形態では、抗体は、a)アミノ酸配列GYIFTNYPIH(配列番号18)を有するCDR-H1、b)アミノ酸配列FIDPGGGYDEPDERFRD(配列番号19)を有するCDR-H2、c)アミノ酸配列RGGGYYLDY(配列番号20)を有するCDR-H3、d)アミノ酸配列RASQDISFFLN(配列番号21)を有するCDR-L1、e)アミノ酸配列YTSRYHS(配列番号22)を有するCDR-L2、f)アミノ酸配列QHGNTLPWT(配列番号23)を有するCDR-L3の6つのCDRを含む。特定の実施形態では、抗体は、a)アミノ酸配列GFSLTTYGVH(配列番号24)を有するCDR-H1、b)アミノ酸配列VIWSGGDTDYNASFIS(配列番号25)を有するCDR-H2、c)アミノ酸配列NKDYYTNYDFTMDY(配列番号26)を有するCDR-H3、d)アミノ酸配列KSSQSVLYSSNQKNFLA(配列番号27)を有するCDR-L1、e)アミノ酸配列WASTRES(配列番号28)を有するCDR-L2、f)アミノ酸配列HQYLSSYT(配列番号29)を有するCDR-L3の6つのCDRを含む。特定の実施形態では、抗体は、a)アミノ酸配列GYTFIDYWIE(配列番号30)を有するCDR-H1、b)アミノ酸配列EIFPGSGTINHNEKFKD(配列番号31)を有するCDR-H2、c)アミノ酸配列EGLDY(配列番号32)を有するCDR-H3、d)アミノ酸配列SASSSVSYIY(配列番号33)を有するCDR-L1、e)アミノ酸配列DTSTLAS(配列番号34)を有するCDR-L2、f)アミノ酸配列QQWSRNPFT(配列番号35)を有するCDR-L3の6つのCDRを含む。特定の実施形態では、抗体は、a)アミノ酸配列GFSLTSYGVH(配列番号36)を有するCDR-H1、b)アミノ酸配列VIWSGGSTDYNAAFIS(配列番号37)を有するCDR-H2、c)アミノ酸配列NKDFYSNYDYTMDY(配列番号38)を有するCDR-H3、d)アミノ酸配列KSSQSVLYSSNQKNFLA(配列番号27)を有するCDR-L1、e)アミノ酸配列WASTRES(配列番号28)を有するCDR-L2、f)アミノ酸配列HQYLSSYT(配列番号29)を有するCDR-L3の6つのCDRを含む。特定の実施形態では、抗体は、a)アミノ酸配列GYTXTAYGIN(配列番号39)を有するCDR-H1、b)アミノ酸配列YIYIGNGYTDYNEKFKG(配列番号40)を有するCDR-H2、c)アミノ酸配列SGWDEDYAMDF(配列番号41)を有するCDR-H3、d)アミノ酸配列RASENIYSYLA(配列番号42)を有するCDR-L1、e)アミノ酸配列HAKTLAE(配列番号43)を有するCDR-L2、f)アミノ酸配列QHHYGPPPT(配列番号44)を有するCDR-L3の6つのCDRを含む。特定の実施形態では、抗体または断片は、ヒトプロペルジンの活性を阻害する。
【0004】
一実施形態では、本開示は、補体第二経路調節異常により媒介される疾患を治療する方法において、あるいは、補体第二経路調節異常により媒介される疾患を治療するための医薬品の製造において、ヒトプロペルジンに結合する単離された一価の抗体またはその抗体断片を使用することに関する。
【0005】
一実施形態では、本開示は、補体第二経路調節異常により媒介される疾患を治療する方法に関する。この方法は、有効量の単離された一価の抗体またはその抗体断片の抗体を投与することを含み、抗体または抗体断片は、それを必要とする患者に対し、ヒトプロペルジンに結合する。特定の実施形態では、疾患は、自己免疫性血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、溶血性尿毒症症候群(HUS)、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、IgA腎症(バージャー病)、喘息(たとえば、重篤な喘息)、C3糸球体症(C3G)、ゴーシェ病、化膿性汗腺炎、ベーチェット病、重度の火傷、早期敗血症、皮膚筋炎、肺炎球菌性髄膜炎、アルツハイマー病、がん転移、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺障害(ACI)、輸血関連肺障害(TRALI)、血液透析による血栓症、後天性表皮水疱症(EBA)、ブドウ膜炎、パーキンソン病、原発性胆道閉鎖症、抗好中球細胞質抗体(ANCA)血管炎、網膜変性、広範な血栓性微小血管障害症(TMA)、広範なTMA(APS)、造血幹細胞療法(HSCT)TMA、加齢黄斑変性(AMD)、子癇前症、溶血、肝酵素上昇および血小板減少(HELLP)症候群、多発性硬化症、抗リン脂質抗体症候群(APS)、再発性多発軟骨炎、虚血性障害、脳卒中、移植片対宿主病(GvHD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、アテローム性動脈硬化、急性冠動脈症候群、出血性ショック、関節リウマチ、透析(心血管リスク)、心血管疾患、胎盤マラリア、抗リン脂質抗体症候群(APS)妊娠喪失、膜性増殖性(MP)糸球体腎炎、膜性腎炎、脳炎、脳障害、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体抗体脳炎、マラリア溶血危機、腹部大動脈瘤(AAA)または胸腹部大動脈瘤(TAA)である。
【0006】
一実施形態では、本開示は、補体第二経路膜侵襲複合体アセンブリを阻害する方法に関する。この方法は、抗体、抗体誘導体またはその断片を、それを必要とする患者に有効量で投与することを含む。特定の実施形態では、この方法は、補体第二経路依存性溶血を阻害する。
【0007】
いくつかの実施形態では、抗体またはその断片は、以下の配列を含む。
【0008】
EVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGRPVSNYAAAWFRQAPGKEREFVSAINWQKTATYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAAVFRVVAPKTQYDYDYWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSLEVQLVESGGGLVQAGGSLRLSCAASGRISSIIHMAWYRQAPGKQRELVAEISRVGTTVYADSVKGRFTISRDDAKNTVTLQMNSLKPEDTAVYYCNALQYEKHGGADYWGQGTQVTVSS(配列番号45)
いくつかの実施形態では、抗体またはその断片は、以下の配列を含む。
【0009】
EVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGRPVSNYAAAWFRQAPGKEREFVSAINWQKTATYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAAVFRVVAPKTQYDYDYWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGRISSIIHMAWFRQAPGKERELVSEISRVGTTVYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLKPEDTAVYYCNALQYEKHGGADYWGQGTLVTVSS(配列番号46)
いくつかの実施形態では、抗体またはその断片は、以下の配列を含む。
【0010】
EVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGRPVSNYAAAWFRQAPGKEREFVSAINWQKTATYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAAVFRVVAPKTQYDYDYWGQGTLVTVSSGGGGDGGGGDGGGGEVQLVESGGGLVQAGGSLRLSCAASGRISSIIHMAWYRQAPGKQRELVAEISRVGTTVYADSVKGRFTISRDDAKNTVTLQMNSLKPEDTAVYYCNALQYEKHGGADYWGQGTQVTVSS(配列番号47)
いくつかの実施形態では、抗体またはその断片は、以下の配列を含む。
【0011】
EVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGRPVSNYAAAWFRQAPGKEREFVSAINWQKTATYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAAVFRVVAPKTQYDYDYWGQGTLVTVSSGGGGEGGGGEGGGGEVQLVESGGGLVQAGGSLRLSCAASGRISSIIHMAWYRQAPGKQRELVAEISRVGTTVYADSVKGRFTISRDDAKNTVTLQMNSLKPEDTAVYYCNALQYEKHGGADYWGQGTQVTVSS(配列番号48)
いくつかの実施形態では、抗体またはその断片は、以下の配列を含む。
【0012】
EVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGRPVSNYAAAWFRQAPGKEREFVSAINWQKTATYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAAVFRVVAPKTQYDYDYWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGRISSIIHMAWVRQAPGKQRELVSEISRVGTTVYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCNALQYEKHGGADYWGQGTLVTVSS(配列番号49)
いくつかの実施形態では、抗体またはその断片は、以下の配列を含む。
【0013】
EVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGRPVSNYAAAWFRQAPGKEREFVSAINWQKTATYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAAVFRVVAPKTQYDYDYWGQGTLVTVSSGGGGDGGGGDGGGGEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGRISSIIHMAWFRQAPGKERELVSEISRVGTTVYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLKPEDTAVYYCNALQYEKHGGADYWGQGTLVTVSS(配列番号50)
いくつかの実施形態では、抗体またはその断片は、以下の配列を含む。
【0014】
EVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGRPVSNYAAAWFRQAPGKEREFVSAINWQKTATYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAAVFRVVAPKTQYDYDYWGQGTLVTVSSGGGGEGGGGEGGGGEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGRISSIIHMAWFRQAPGKERELVSEISRVGTTVYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLKPEDTAVYYCNALQYEKHGGADYWGQGTLVTVSS(配列番号51)
いくつかの実施形態では、抗体またはその断片は、以下の配列を含む。
【0015】
EVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGRPVSNYAAAWFRQAPGKEREFVSAINWQKTATYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAAVFRVVAPKTQYDYDYWGQGTLVTVSSGGGGDGGGGDGGGGEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGRISSIIHMAWVRQAPGKQRELVSEISRVGTTVYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCNALQYEKHGGADYWGQGTLVTVSS(配列番号52)
いくつかの実施形態では、抗体またはその断片は、以下の配列を含む。
【0016】
LEVQLVESGGGLVQAGGSLRLSCAASGRISSIIHMAWYRQAPGKQRELVAEISRVGTTVYADSVKGRFTISRDDAKNTVTLQMNSLKPEDTAVYYCNALQYEKHGGADYWGQGTQVTVSSRKCCVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号53)
いくつかの実施形態では、抗体またはその断片は、C1q結合ドメインなしでhG1にリンクされたLVP058抗プロペルジン一価抗体VHHであり、以下の配列を含む。
【0017】
LEVQLVESGGGLVQAGGSLRLSCAASGRISSIIHMAWYRQAPGKQRELVAEISRVGTTVYADSVKGRFTISRDDAKNTVTLQMNSLKPEDTAVYYCNALQYEKHGGADYWGQGTQVTVSSPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCAVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号54)
いくつかの実施形態では、抗体またはその断片は、(G4S)リンカーによって抗アルブミンVHHにリンクされたLVP058抗プロペルジン一価抗体VHHであり、以下の配列を含む。
【0018】
LEVQLVESGGGLVQAGGSLRLSCAASGRISSIIHMAWYRQAPGKQRELVAEISRVGTTVYADSVKGRFTISRDDAKNTVTLQMNSLKPEDTAVYYCNALQYEKHGGADYWGQGTQVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSEVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGRPVSNYAAAWFRQAPGKEREFVSAINWQKTATYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAAVFRVVAPKTQYDYDYWGQGTLVTVSS(配列番号55)
定義
本明細書で使用する場合、「一価の抗体またはその抗体断片」という用語は、単一のプロペルジン分子などの抗原に対するVまたはVHHなどの結合ドメインを1つ含む抗体またはその抗原結合断片をいう。一実施形態では、結合される抗原分子は、プロペルジンモノマーの三量体またはより高次の多量体の一部である。一価の抗体またはそれらの抗体断片をはじめとして、抗体は一般に、高い特異性で特定の抗原に結合する。
【0019】
本明細書で使用する場合、「シングルドメイン抗体」という用語は、抗原結合部位が単一の免疫グロブリンドメイン上に存在し、且つその単一の免疫グロブリンドメインによって形成される分子を定義する。一般に、免疫グロブリンの単一の可変ドメインの抗原結合部位は、3つ以下のCDRによって形成される。機能的抗原結合単位を形成するために単一の抗原結合ドメインが別の可変ドメインと相互作用する必要がないような方法で単一の抗原結合単位(すなわち、本質的には単一の可変ドメインである機能的抗原結合単位)を形成することができる限り、単一の可変ドメインは、たとえば軽鎖可変ドメイン配列(V配列)またはその適切な断片を含んでもよいし、重鎖可変ドメイン配列(V配列またはVHH配列など)またはその適切な断片を含んでもよい。
【0020】
本明細書で使用する場合、「ラクダ科動物抗体」という用語は、ラクダ、ヒトコブラクダ、ラマ、アルパカまたはグアナコなどのラクダ科動物の種に由来する抗体をいう。ラクダ科動物抗体は、軽鎖がないため完全かつ多様な抗原結合能を持つ重鎖だけを含むという点で、他のほとんどの哺乳動物の抗体とは異なる(Hamers-Casterman, C. et al., Nature, 363:446-8, 1993)。
【0021】
本明細書で使用する場合、「VHH」という用語は、軽鎖のない単一の重鎖可変ドメイン抗体をいう。たとえば、VHH鎖は、もともと軽鎖のないラクダ科(Camelidae)または軟骨魚類に見られるタイプのものであっても、それらに従って構築可能な合成VHHおよび非免疫化VHHであっても構わない。各々の重鎖には、Vエキソン、DエキソンおよびJエキソンによってコードされる可変領域が含まれる。VHHは、ラクダ科動物抗体などの天然のVHH抗体であってもよいし、重鎖可変ドメインを含む組換えタンパク質であってもよい。
【0022】
本明細書で使用する場合、「単離された抗体」という用語は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体をいう(たとえば、プロペルジンに結合する単離された抗体は、プロペルジンと結合しない抗体などの汚染物質を実質的に含まない)。また、「単離された」抗体は、それが存在する天然環境の成分から同定ならびに分離および/または回収されたものである。それが存在する天然環境の汚染成分は、抗体を診断または治療に使用するのを妨げる可能性のある物質であり、酵素、ホルモンおよび他のタンパク質性または非タンパク質性溶質を含む場合がある。
【0023】
本明細書で使用する場合、抗体またはその断片、ポリペプチドまたはペプチドミメティックの「特異的結合」という用語は、標的分子ではない分子との結合とは測定可能な程度に異なる標的分子との結合である。本明細書で使用する場合、特異的結合とは、バックグラウンド(「非特異的」)結合に対して特定の抗原との結合優先性が95%を超えることをいう。「実質的に特異的な」結合とは、バックグラウンドに対して特定の抗原との結合優先性が約80%を超えることをいう。結合は、ウエスタンブロット、イムノブロット、酵素結合免疫吸着検定法(「ELISA」)、ラジオイムノアッセイ(「RIA」)、免疫沈降、表面プラズモン共鳴、バイオレイヤー干渉法、化学ルミネセンス、蛍光偏光、リン光、免疫組織化学分析、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間(「MALDI-TOF」)質量分析、マイクロサイトメトリー、マイクロアレイ、顕微鏡、蛍光活性化細胞選別(「FACS」)およびフローサイトメトリーなどであるが、これらに限定されるものではない、さまざまな方法を用いて測定することができる。
【0024】
本明細書で使用する場合、「ヒトプロペルジン」という用語は、7つのトロンボスポンジンI型リピート(TSR)を有し、N末端ドメインであるTSR0が切断ドメインである、血漿中に見られる469アミノ酸からなる可溶性糖タンパク質をいう。53kDaのタンパク質であるヒトプロペルジンには、シグナルペプチド(アミノ酸1~28)と、アミノ酸80~134(TSR1)、アミノ酸139~191(TSR2)、アミノ酸196~255(TSR3)、アミノ酸260~313(TSR4)、アミノ酸318~377(TSR5)およびアミノ酸382~462(TSR6)という各々約60アミノ酸の6つの異なるTSRリピートが含まれる。プロペルジンは、棒状のモノマーが、環状二量体、三量体、四量体といったオリゴマーになることで形成される。ヒトプロペルジンのアミノ酸配列は、以下のアクセッション番号でGenBankデータベースに見られる。ヒトプロペルジンについては、たとえば、GenBankアクセッション番号AAA36489、NP002612、AAH15756、AAP43692、S29126およびCAA40914を参照のこと。プロペルジンは、第二補体活性化カスケードの正の調節因子である。プロペルジンに対して知られている結合リガンドとして、C3b、C3bBおよびC3bBbがあげられる(Blatt, A. et al., Immunol. Rev., 274:172-90, 2016)。
【0025】
本明細書で使用する場合、「マウスプロペルジン」という用語は、7つのTSR)を有し、N末端ドメインであるTSR0が切断されている、血漿中に見られる457アミノ酸からなる可溶性糖タンパク質をいう。50kDaのタンパク質であるマウスプロペルジンには、シグナルペプチド(アミノ酸1~24)と、アミノ酸73~130(TSR1)、アミノ酸132~187(TSR2)、アミノ酸189~251(TSR3)、アミノ酸253~309(TSR4)、アミノ酸311~372(TSR5)およびアミノ酸374~457(TSR6)という各々約60アミノ酸の6つの異なるTSRリピートが含まれる。マウスプロペルジンは、棒状のモノマーが、環状二量体、三量体、四量体といったオリゴマーになることで形成される。マウスプロペルジンのアミノ酸配列は、たとえば、GenBankデータベースに見られる(GenBankアクセッション番号P11680およびS05478)。
【0026】
本明細書で使用する場合、「TSR0ドメイン」という用語は、プロペルジンのTSR1ドメインに先行するプロペルジンの切断ドメインをいう。たとえば、ヒトプロペルジンのTSR0ドメインは、アミノ酸28~76を含む。
【0027】
本明細書で使用する場合、「TSR1ドメイン」という用語は、プロペルジンのTSR0ドメインに隣接するプロペルジンのドメインをいう。たとえば、ヒトプロペルジンのTSR1ドメインは、アミノ酸77~134を含む。
【0028】
本明細書で使用する場合、「プロペルジンの活性」という用語は、C3/C5転換酵素の安定化につながる結合相互作用を含むがこれらに限定されるものではない、プロペルジンの生物活性をいう。プロペルジンは、C3b,Bb第二経路C3/C5転換酵素と最も強く結合するが、C3b、C3b,BおよびC3b,Bb)とも結合する。1つの機能は、C3b,Bb複合体を安定化し、より高い第二経路の活性化を可能にすることである(Pangburn, M., Methods Enzymol., 162:639-53, 1988、Nolan, K. & Reid, K., Methods Enzymol., 223:35-46, 1993)。プロペルジンは、P,C3b複合体へのB因子の結合を増すことにより、第二経路C3転換酵素の形成を促進する。したがって、プロペルジンは、補体活性化の促進剤(正の調節因子)である。また、プロペルジンは、標的表面に結合し、C3/C5転換酵素の形成を開始することによって、第二経路の活性化を開始することに関与してきた(Kemper C. & Hourcade, D., Mol. Immunol., 45:4048-56, 2008)。
【0029】
本明細書で使用する場合、「補体第二経路」という用語は、補体活性化の3つの経路のうちの1つをいう(残りは古典的経路とレクチン経路である)。補体第二経路は一般に、細菌、寄生虫、ウイルスまたは真菌によって活性化されるが、IgA抗体およびいくつかのIgL鎖も、この経路を活性化することが報告されている。
【0030】
本明細書で使用する場合、「補体第二経路調節異常」という用語は、病原体に対して宿主が自らを防御し、免疫複合体および損傷を受けた細胞を取り除くため、及び免疫調節のための、補体第二経路が持つ能力におけるあらゆる異常を意味する。補体第二経路調節異常は、液相と細胞表面の両方で起こり得るし、過剰な補体活性化または不十分な調節という、どちらも組織損傷を引き起こす状態につながる可能性がある。
【0031】
本明細書で使用する場合、「補体第二経路調節異常により媒介される疾患」という表現は、補体第二経路調節異常によって引き起こされる身体機能、系または臓器の中断、停止または障害をいう。そのような疾患は、本明細書に記載の組成物または製剤による治療の恩恵を受けるであろう。いくつかの実施形態では、疾患は、病原体に対して宿主が自らを防御し、免疫複合体および損傷を受けた細胞を取り除くため、及び免疫調節のための、補体第二経路が持つ能力におけるあらゆる異常によって引き起こされる。本明細書には、補体第二経路の1つまたは複数の成分の調節異常によって直接または間接的に媒介される疾患または補体第二経路によって生成される産物も包含される。
【0032】
本明細書で使用する場合、「補体第二経路-依存性膜侵襲複合体アセンブリ」という用語は、補体第二経路の活性化の結果として形成される末端複合体をいい、補体成分C5、C6、C7、C8およびC9を含む。膜侵襲複合体(MAC)のアセンブリは、細胞溶解につながる。
【0033】
本明細書で使用する場合、「補体第二経路依存性溶血」という用語は、赤血球上での、増加した補体第二経路依存性MACのアセンブリおよび/または沈着により媒介される赤血球の溶解をいう。
【0034】
本明細書で使用する場合、「リンカー」という用語は、2つの要素、たとえばタンパク質ドメイン間の結合をいう。リンカーは、共有結合であってもよいし、スペーサーであってもよい。「結合」という用語は、アミド結合またはジスルフィド結合などの化学結合、あるいは、化学的コンジュゲーションなどの化学反応で生じるあらゆる種類の結合をいう。リンカーとは、2つのポリペプチドまたはポリペプチドドメイン間に空間および/または柔軟性を提供するために2つのポリペプチドまたはポリペプチドドメイン間に生じる部分(たとえば、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマー)またはアミノ酸配列(たとえば、3~200アミノ酸配列、3~150アミノ酸配列または3~100アミノ酸配列)をいう場合もある。アミノ酸スペーサーは、ポリペプチドの一次配列の一部であってもよい(たとえば、ポリペプチド骨格を介して、互いに離れたポリペプチドまたはポリペプチドドメインに結合されている)。リンカーは、1つまたは複数のグリシン残基およびセリン残基を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、選択された抗プロペルジン抗体がヒトプロペルジンに特異的に結合する、モデルシステムを備えたOctet(商標)バイオセンサーを用いて得られたバイオレイヤー干渉データを示す。グラフは、経時的な平衡解離を示す。
図2図2は、選択された抗プロペルジン抗体がマウスプロペルジンに対する弱い結合を示したか全く結合を示さなかった、モデルシステムを備えたOctet(商標)バイオセンサーを用いて得られたバイオレイヤー干渉データを示す。グラフは、経時的な平衡解離を示す。
図3図3は、選択された抗プロペルジン抗体がカニクイザルプロペルジンに対して特異的ではあるが弱い結合を示した、モデルシステムを備えたOctet(商標)バイオセンサーを用いて得られたバイオレイヤー干渉データを示す。グラフは、経時的な平衡解離を示す。
図4図4は、選択された抗プロペルジン抗体が補体第二経路溶血アッセイにおいてヒトプロペルジンの活性を阻害することを示す。
図5A図5Aは、質量分析による選択された抗プロペルジン抗体のキャラクタリゼーションを示す。
図5B図5Bは、質量分析による選択された抗プロペルジン抗体のキャラクタリゼーションを示す。
図5C図5Cは、質量分析による選択された抗プロペルジン抗体のキャラクタリゼーションを示す。
図6A図6Aは、プロペルジン捕捉法を使用した、ビオチン化プロペルジンに対する選択された抗プロペルジン抗体の結合親和性を示す。
図6B図6Bは、プロペルジン捕捉法を使用した、ビオチン化プロペルジンに対する選択された抗プロペルジン抗体の結合親和性を示す。
図7図7は、プロペルジン捕捉法を使用した、ビオチン化プロペルジンに対する選択された抗プロペルジン二重特異性抗体の結合親和性を示す。
図8A図8Aは、選択された抗プロペルジン二重特異性抗体が、補体第二経路溶血アッセイにおいてヒトプロペルジンおよびカニクイザルプロペルジンの活性を阻害することを示す。対照として、抗プロペルジン抗体を使用した。
図8B図8Bは、選択された抗プロペルジン二重特異性抗体が、補体第二経路溶血アッセイにおいてヒトプロペルジンおよびカニクイザルプロペルジンの活性を阻害することを示す。対照には抗プロペルジン抗体を使用した。
図9A図9Aは、選択された抗プロペルジン二重特異性抗体が、補体第二経路溶血アッセイにおいてヒトプロペルジンおよびカニクイザルプロペルジンの活性を阻害することを示す。
図9B図9Bは、選択された抗プロペルジン二重特異性抗体が、補体第二経路溶血アッセイにおいてヒトプロペルジンおよびカニクイザルプロペルジンの活性を阻害することを示す。
図10A図10Aは、プロペルジン捕捉法を使用した、ビオチン化プロペルジンに対する選択された抗プロペルジン二重特異性抗体の結合親和性を示す。
図10B図10Bは、プロペルジン捕捉法を使用した、ビオチン化プロペルジンに対する選択された抗プロペルジン二重特異性抗体の結合親和性を示す。
図11A図11Aは、プロペルジン捕捉法を使用した、ビオチン化プロペルジンに対する選択された抗プロペルジン二重特異性抗体の結合親和性を示す。
図11B図11Bは、プロペルジン捕捉法を使用した、ビオチン化プロペルジンに対する選択された抗プロペルジン二重特異性抗体の結合親和性を示す。
図12A図12Aは、プロペルジン捕捉法を使用した、ビオチン化プロペルジンに対する選択された抗プロペルジン二重特異性抗体の結合親和性を示す。
図12B図12Bは、プロペルジン捕捉法を使用した、ビオチン化プロペルジンに対する選択された抗プロペルジン二重特異性抗体の結合親和性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
プロペルジンは、補体第二経路の正の調節因子である。本明細書に記載されるのは、単一のプロペルジン分子に結合し、補体第二経路の調節異常により媒介される疾患の治療に有用である、新規な一価の抗体である。本明細書に記載されるのは、二価抗体が複数のプロペルジン多量体に結合して生じる免疫複合体が、補体第二経路の異常な活性化を阻害するための治療薬として毒性を示すという発見である。本明細書に記載の一価の抗体は、プロペルジンに対する結合比が1:1であり、設計により、複数のプロペルジン多量体を含む抗体/プロペルジン凝集体を形成できず、二価抗体および多価抗体よりも有利である。
【0037】
以下、補体第二経路調節異常により媒介される疾患のある患者に投与できる一価の抗体または抗体断片について説明する。
【0038】
抗プロペルジン抗体
本明細書に記載されるのは、補体の第二経路の正の調節因子であるプロペルジンを阻害し、続いてC3転換酵素およびC5転換酵素複合体を不安定にする、一価の抗プロペルジン抗体、抗体誘導体(たとえば、改変抗体、ヒューマニア化抗体、キメラ抗体、置換抗体、ヒト化抗体など)およびそれらの抗体断片である。本明細書に記載の抗体は、たとえば、プロペルジンがC3b、C3BbおよびC3bBbに結合するのを阻害することができる。プロペルジンを阻害すると、第二経路の補体活性化の低下につながる。これは、第二経路が過剰に活性化される第二経路調節異常の疾患がある患者にとっての治療上の利益があることを示している。
【0039】
本明細書に記載の抗プロペルジン抗体は、全長プロペルジン、プロペルジンポリペプチドを使用するおよび/またはプロペルジンポリペプチドの断片などの抗原性プロペルジンエピトープ含有ペプチドを使用することによって、産生することができる。天然ポリペプチド、組換えポリペプチドまたは合成組換えポリペプチドとしての抗体を作製するために、プロペルジンペプチドおよびポリペプチドを単離して使用することができる。一価の抗体の作製には、抗プロペルジン抗体の産生に有用なあらゆる抗原を用いることが可能である。適切な一価の抗体の形式およびそれらの作製方法は、当技術分野で知られている(たとえば、WO2007/048037およびWO2007/059782であり、その内容全体を本明細書に援用する)。
【0040】
抗プロペルジン抗体は、モノクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体由来であってもよい。選択された抗原に対する適切なモノクローナル抗体は、既知の技術(“Monoclonal Antibodies: A manual of techniques,” Zola (CRC Press, 1988)、“Monoclonal Hybridoma Antibodies: Techniques and Applications,” Hurrell (CRC Press, 1982)
、その内容全体を本明細書に援用する)によって調製すればよい。
【0041】
他の実施形態では、抗体は、VHHなどのシングルドメイン抗体であってもよい。そのような抗体は、ラクダ科動物やサメに自然に存在する(Saerens, D. et al., Curr. Opin. Pharmacol., 8:600-8, 2008)。ラクダ科動物抗体は、たとえば、米国特許第5,759,808号、同第5,800,988号、同第5,840,526号、同第5,874,541号、同第6,005,079号、同第6,015,695号に記載されており、これらの文献各々の内容全体を本明細書に援用する。クローン化および単離されたVHHドメインは、元の重鎖抗体の完全な抗原結合能力を特徴とする安定したポリペプチドである。VHHドメインは、独特な構造特性および機能特性を備え、従来の抗体の利点(高い標的特異性、高い標的親和性、低い固有毒性)と小分子薬の重要な特徴(酵素を阻害し、受容体の割れ目にアクセスする能力)を兼ね備えている。さらに、それらは安定であり、注射以外の手段によって投与される可能性があり、製造が容易であり、ヒト化することができる(米国特許第5,840,526号、同第5,874,541号、同第6,005,079号、同第6,765,087号、EP 1589107、WO97/34103、WO97/49805、米国特許第5,800,988号、同第5,874,541号、同第6,015,695号、これらの文献各々の内容全体を本明細書に援用する)。
【0042】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、その重鎖可変ドメインとして以下の配列を含む。
【0043】
QVQLVESGGGLVQAGGSLRLSCAASGRTFSSYAMGWFRQAPGKEREFVAAIGWNGEGIYYADSVKGRFTISRDNAKNTGYLQMNSLKPEDTAVYYCAADSEGVVPGFPIAYWGQGTQVTVSG(配列番号71)
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、その重鎖可変ドメインとして以下の配列を含む。
【0044】
QVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFPLNSYAIGWFRQAPGKEREGVSCISVSDDSTYYTDSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCAVDSAPLYGDYVCKPLENEYDFWGQGTQVTVSG(配列番号72)
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、その重鎖可変ドメインとして以下の配列を含む。
【0045】
QVQLVESGGGLVQAGGSLXLSCAASGSDRRINGMGWYRHPPGKQRELVAAITSGGSTNYADSVKGRFTISTNNANNMMYLQMNSLKPEDTAVYYCAIDEFGTGWLDYCGQGTQVTVSG(配列番号73)
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、その重鎖可変ドメインとして以下の配列を含む。
【0046】
QVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGRPFSSYAMGWFRQAPGKEREIVAGLSWSGGNVYYADSVKGRFTISRDNAKNTGDLQMNSLKPEDTAVYYCAIGPKLTTGPTAYRYWGQGTQVTVSS(配列番号74)
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、その重鎖可変ドメインとして以下の配列を含む。
【0047】
QVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCATSGGTFSSYAMGWFRQAPGKEREFVAAITWNGSNRYYADSVKGRFTISRDNAKSTVYLQMNSLKPEDTAVYYCAAEHSTRYSGFYYYTRGETYHYWGQGTQVTVSG(配列番号75)
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、その重鎖可変ドメインとして以下の配列を含む。
【0048】
QVQLVESGGGLVQAGGSLRLSCAASGRTFSTLGMGWFRQAPGKERQFVAAINWSGSSTYYANSVKGRFTISRDNAQSTMYLQMNSLKPEDTAVYYCAADLDSRYSAYYYYSDESQYDYWGQGTLVTVSG(配列番号76)
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、その重鎖可変ドメインとして以下の配列を含む。
【0049】
QVQVVESGGGLVQPGGSLSLSCAASGRTFSSYAMGWFRQAPGKEREFVAAITWDGANIYYADSVKGRFTLSRDNAENTVWLQLNSLKPEDTAVYYCAAAESGRYSGRDYYSAPGVYLYWGQGTLVTVSG(配列番号77)
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、その重鎖可変ドメインとして以下の配列を含む。
【0050】
QVQLVESGGGLVQAGGSLRLSCAASGSIFDINAMGWYRQAPGKQRELVADITSSGSTNYADSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYTCAAESIRESQNRHQLGYMGPLYDYWGQGTQVTVSG(配列番号78)
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、その重鎖可変ドメインとして以下の配列を含む。
【0051】
QVQLIESGGGLVQAGDSLRLSCAASEGTFSRFAMGWFRQAPGKEREFVAAINWSGGITYYADSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTADYYCAAETTTRYSGYYYYEDNKSYDYWGQGTLVTVSG(配列番号79)
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、その重鎖可変ドメインとして以下の配列を含む。
【0052】
QVQVVESGGGLRQTGGSLRLSCTASGRIFEVNMMAWYRQAPGKQRELVAEISRVGTTVYADSVKGRFTISRDSAKNTVTLQMNSLKSEDTAVYYCNALQYDRYGGAEYWGQGTQVTVSS(配列番号58)
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、その重鎖可変ドメインとして以下の配列を含む。
【0053】
QVLLEESGGGLERTGGSLRLSCAASGSIFSVNSMTWYRQAPGKRREFLGTITEEGRTNYADSVKGRFTISRDNAKNTMYLQMNSLKPEDTAVYYCYANLISSEDRTFGVWGQGTQVTVSS(配列番号80)
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、その重鎖可変ドメインとして以下の配列を含む。
【0054】
QVHLVESGGGLVQAGGSLRLSCTASGGTVGDYAVGWFRQAPGKERELIGVVSRLGARTGYADSVLGRFTISRDDVKNTVFLQMDSVKPEDTAVYYCAARRDYSFEVVPYDYWGQGTQVTVSG(配列番号81)
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、その重鎖可変ドメインとして以下の配列を含む。
【0055】
QVQMVESGGGLVQAGGSLRLSCAASGLTNRIRIMGWYRQAPGKLRELVATITNDGSTHYADSVKGRFTISTDNAKNTVFLQMNSLKPEDTAVYICNVGENWGPAYWGQGTQVTVSG(配列番号82)
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、その重鎖可変ドメインとして以下の配列を含む。
【0056】
QVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFPLNSYAIGWFRQAPGKEREGVSCISVSDDSTYYTDSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCAVDSAPLYGDYVCKPLENEYDFWGQGTQVTVSG(配列番号72)
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、その重鎖可変ドメインとして以下の配列を含む。
【0057】
QVRLTESGGGLVQYGTNLTLTCVASGLISTRNKMGWFRRRSGGQREFVASSTVLSDDVIQDDIAETVKGRFAVARNDYKNILYLQMTAVKPEDTGFYWCASGTSLFGASRREDDFNAWGVGTQVTVSA(配列番号83)
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、その重鎖可変ドメインとして以下の配列を含む。
【0058】
QVQLAESGGGLVQAGDSLKLSCTASGRIFEVNMMAWYRQAPGKDRELVAEISRVGTTTYADSVKGRFTISRDSAKNTVTLQMNSLKSEDTAVYYCNALQYSRYGGAEYWGQGTQVTVSG(配列番号59)
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、その重鎖可変ドメインとして以下の配列を含む。
【0059】
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFGSADMSWVRQAPGKGPEWVSAINSNGGSTYYAASVKGRFTISRDNAKNTLYLQMNSLKPEDTAVYYCAQGNWYTEEYHYWGQGTLVTVSG(配列番号84)
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、その重鎖可変ドメインとして以下の配列を含む。
【0060】
QVRLVESGGGLVQAGDSLRLSCAASGRTLSSYAMGWFRQAPGKEREFVAATTWRDTSTYYADSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAAYYCAAEEPSKYSGRDYYMMGDSYDYWGQGTQVTVSS(配列番号85)
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、その重鎖可変ドメインとして以下の配列を含む。
【0061】
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFGSADMSWVRQAPGKGPEWVSAINSNGGSTYYAASVKGRFTISRDNAKNTLYLQMNSLKPEDTAVYYCAQGNWYTEEYHYWGQGTQVTVSG(配列番号86)
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、その重鎖可変ドメインとして以下の配列を含む。
【0062】
QVQLVESGGGLVQAGGSLRLSCAASGRTFSNYAMAWFRQAPGKEREFVASISGSGDSRYYADSVKGRFTISRDNAKNTVYLQTNSPKPEDTAVYYCAAVLPTRYSGFYYYSDGTQYHYWGQGTQVTVSS(配列番号87)
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、その重鎖可変ドメインとして以下の配列を含む。
【0063】
QVNLVESGGGSVQAGGSLRLSCAASENINVINDMGWYRQAPGKQRELVAVITGHDNINYADSATGRFTISTYTWNTENLQMNMLKPEDTAVYYCNADITYANGRFNDWGQGTQVTVSS(配列番号88)
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、その重鎖可変ドメインとして以下の配列を含む。
【0064】
QVHLVESGGGLVQAGGSLRLSCAASGRTFSSYAMGWFRQPPGKEREFVAAITWSGSSIYYADSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCAAEETSKYSGSYYYMMGDSYDYWGQGTQVTVSG(配列番号89)
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、その重鎖可変ドメインとして以下の配列を含む。
【0065】
QVQLVESGGGLVQAGGSLRLSCAASGRTFSSYAMGWFRQAPGKEREFVAAVPWTYGSKYYADSVKGRFTISRDDAKNTVYLQMNNLKPEDTAVYYCAADSSAGYYSGFDYYSAATPYDLWGQGTQVTVSG(配列番号90)
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、その重鎖可変ドメインとして以下の配列を含む。
【0066】
QVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGSDYYAIGWFRQAPGKEREGVSCMSRTDGSTYYADSVKDRFTISRDYAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCGLDRSYPTGGISCLFGDFGSWGQGTQVTVSG(配列番号91)
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、その重鎖可変ドメインとして以下の配列を含む。
【0067】
QVQLVESGGGLVQAGGSLRLSCAASGRTFSSYNMGWFRQRHGNEREFVATISWSGRSTYYADSVKGRFAISRDNANTTVYLQMNSLKPEDSAVYYCAASTRGWYGTQEDDYNFWGQGTQVTVSG(配列番号92)
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、その重鎖可変ドメインとして以下の配列を含む。
【0068】
QVQLVESGGGLVQAGGSLRLSCAASGRISSIIHMAWYRQAPGKQRELVAEISRVGTTVYADSVKGRFTISRDDAKNTVTLQMNSLKPEDTAVYYCNALQYEKHGGADYWGQGTQVTVSG(配列番号60)
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、その重鎖可変ドメインとして以下の配列を含む。
【0069】
QVQLVESGGGLVQAGGSLRLSCAASGGTFSSYSMGWFRQAPGKEREFVAAITWNGVSTYYADSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPTDTAVYYCAAEITTRYSGFYYYEDNKSYDYWGQGTQVTVSS(配列番号93)
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、その重鎖可変ドメインとして以下の配列を含む。
【0070】
QVQLVESGGGLRQTGESLRLSCTASGRIFEVNMMAWYRQAPGKQRELVAEISRVGTTTYADSVKGRFTISRDSAKNTVTLQMNSLKSEDTAVYYCNALQYDRYGGAEYWGQGTQVTVSG(配列番号61)
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、その重鎖可変ドメインとして以下の配列を含む。
【0071】
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTLDYYAIGWFRQAPGKEREGVSCISRTDGSTYYADSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCAVDDSYPTGGISCLFGHFGSWGQGTQVTVSS(配列番号94)
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、その重鎖可変ドメインとして以下の配列を含む。
【0072】
QVQLVESGGGLVQAGDSLRLSCAASGFTFSSYAMGWFRQAPGKEREFVAAITWSGVSTYYADSVKGRFTISRDNAKNRVYLQMNSLKPEDTAVYSCAADGSGRYSGMEYYNRDWVYDYWGQGTQVTVSS(配列番号95)
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、その重鎖可変ドメインとして以下の配列を含む。
【0073】
QVHMVESGGGLVQAGGSLRFSCAASGNIFTISTLDWYRQAPGEQRELVATLTPDGITDYAGSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCNAWRYSDDYRGRVDYWGQGTQVTVSG(配列番号96)
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、その重鎖可変ドメインとして以下の配列を含む。
【0074】
QVQLIESGGGLVQEGASLRLSCAGSGPMFSRLAVGWFRQAPGKEREFVAVINWSGSADFYTNSVKGRFTISRDNAKNTVYLEMNTLKPEDSAVYYCAADQNPLTLRTGVRDVGRQWGQGTEVTVSS(配列番号97)
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、その重鎖可変ドメインとして以下の配列を含む。
【0075】
QVQLVESGGGLVQAGGSLRLSCAASGRTFSSYAMGWFRQAPGKEREFVAAITWRGASTYYADPVKGRFTISRDNAKNTVYLQMSSLKPEDTAVYYCAAEEPSYYSGSYYYMMGDSYNYWGQGTQVTVSG(配列番号98)
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、その重鎖可変ドメインとして以下の配列を含む。
【0076】
QVQLVESGGGLVQAGGSLRLSCTASGRTFSNYAMGWFRQAPGKEREFLAAISRSGESTNYATFVKGRFTIARDNAKNTVSLQMNSLKPEDTAVYFCAAKVAVLVSTTYNSQYDYWGQGTQVTVSS(配列番号99)
本明細書に開示する抗プロペルジン抗体、抗体誘導体およびそれらの断片は、以下のCDRのうちの1つまたは複数もしくはすべてを有するものを含む。
【0077】
a. アミノ酸配列GRIFEVNMMA(配列番号9)を有するCDR-H1
b.アミノ酸配列RVGTTVYADSVKG(配列番号12)を有するCDR-H2
c.アミノ酸配列LQYDRYGGAEY(配列番号13)を有するCDR-H3
本明細書に開示する別の抗プロペルジン抗体、抗体誘導体およびそれらの断片は、以下のCDRのうちの1つまたは複数もしくはすべてを有するものを含む。
【0078】
a.アミノ酸配列GRIFEVNMMA(配列番号9)を有するCDR-H1
b.アミノ酸配列RVGTTTYADSVKG(配列番号15)を有するCDR-H2
c.アミノ酸配列LQYSRYGGAEY(配列番号14)を有するCDR-H3
本明細書に開示する別の抗プロペルジン抗体、抗体誘導体およびそれらの断片は、以下のCDRのうちの1つまたは複数もしくはすべてを有するものを含む。
【0079】
a.アミノ酸配列GRIFEVNMMA(配列番号9)を有するCDR-H1
b.アミノ酸配列RVGTTTYADSVKG(配列番号15)を有するCDR-H2
c.アミノ酸配列LQYDRYGGAEY(配列番号13)を有するCDR-H3
本明細書に開示する別の抗プロペルジン抗体、抗体誘導体およびそれらの断片は、以下のCDRのうちの1つまたは複数もしくはすべてを有するものを含む。
【0080】
a.アミノ酸配列GRISSIIHMA(配列番号16)を有するCDR-H1
b.アミノ酸配列RVGTTVYADSVKG(配列番号12)を有するCDR-H2
c.アミノ酸配列LQYEKHGGADY(配列番号17)を有するCDR-H3
ヒト化ラクダ科動物VHHポリペプチドは、たとえばWO004/041862に教示されており、その教示内容全体を本明細書に援用する。ヒト化ラクダ科動物VHHポリペプチドを作製するために、天然に生じるラクダ科動物抗体単一可変ドメインポリペプチドを修飾することができる(たとえば、45位および103位のアミノ酸置換(W004/041862))ことは、当業者によって理解されるであろう。本明細書には、コモリザメVHHである抗体単一可変ドメインポリペプチドも含まれる(Greenberg, A. et al., Nature, 374:168-73, 1995、米国特許出願公開第20050043519号)。
【0081】
本明細書に開示する別の抗プロペルジン抗体、抗体誘導体およびそれらの断片は、(たとえば、scFvまたはdAbを構築するために)以下のCDRのうちの1つまたは複数もしくはすべてを有するものを含む。
【0082】
a)アミノ酸配列GYIFTNYPIH(配列番号18)を有するCDR-H1
b)アミノ酸配列FIDPGGGYDEPDERFRD(配列番号19)を有するCDR-H2
c)アミノ酸配列RGGGYYLDY(配列番号20)を有するCDR-H3
d)アミノ酸配列RASQDISFFLN(配列番号21)を有するCDR-L1
e)アミノ酸配列YTSRYHS(配列番号22)を有するCDR-L2
f)アミノ酸配列QHGNTLPWT(配列番号23)を有するCDR-L3
本明細書に開示する別の抗プロペルジン抗体、抗体誘導体およびそれらの断片は、(たとえば、scFvを構築するために)以下のCDRのうちの1つまたは複数もしくはすべてを有するものを含む。
【0083】
a)アミノ酸配列GFSLTTYGVH(配列番号24)を有するCDR-H1
b)アミノ酸配列VIWSGGDTDYNASFIS(配列番号25)を有するCDR-H2
c)アミノ酸配列NKDYYTNYDFTMDY(配列番号26)を有するCDR-H3
d)アミノ酸配列KSSQSVLYSSNQKNFLA(配列番号27)を有するCDR-L1
e)アミノ酸配列WASTRES(配列番号28)を有するCDR-L2
f)アミノ酸配列HQYLSSYT(配列番号29)を有するCDR-L3
本明細書に開示する別の抗プロペルジン抗体、抗体誘導体およびそれらの断片は、(たとえば、scFvを構築するために)以下のCDRのうちの1つまたは複数もしくはすべてを有するものを含む。
【0084】
a)アミノ酸配列GYTFIDYWIE(配列番号30)を有するCDR-H1
b)アミノ酸配列EIFPGSGTINHNEKFKD(配列番号31)を有するCDR-H2
c)アミノ酸配列EGLDY(配列番号32)を有するCDR-H3
d)アミノ酸配列SASSSVSYIY(配列番号33)を有するCDR-L1
e)アミノ酸配列DTSTLAS(配列番号34)を有するCDR-L2
f)アミノ酸配列QQWSRNPFT(配列番号35)を有するCDR-L3
本明細書に開示する別の抗プロペルジン抗体、抗体誘導体およびそれらの断片は、(たとえば、scFvを構築するために)以下のCDRのうちの1つまたは複数もしくはすべてを有するものを含む。
【0085】
a)アミノ酸配列GFSLTSYGVH(配列番号36)を有するCDR-H1
b)アミノ酸配列VIWSGGSTDYNAAFIS(配列番号37)を有するCDR-H2
c)アミノ酸配列NKDFYSNYDYTMDY(配列番号38)を有するCDR-H3
d)アミノ酸配列KSSQSVLYSSNQKNFLA(配列番号27)を有するCDR-L1
e)アミノ酸配列WASTRES(配列番号28)を有するCDR-L2
f)アミノ酸配列HQYLSSYT(配列番号29)を有するCDR-L3
本明細書に開示する別の抗プロペルジン抗体、抗体誘導体およびそれらの断片は、(たとえば、scFvを構築するために)以下のCDRのうちの1つまたは複数もしくはすべてを有するものを含む。
【0086】
a)アミノ酸配列GYTXTAYGIN(配列番号39)を有するCDR-H1
b)アミノ酸配列YIYIGNGYTDYNEKFKG(配列番号40)を有するCDR-H2
c)アミノ酸配列SGWDEDYAMDF(配列番号41)を有するCDR-H3
d)アミノ酸配列RASENIYSYLA(配列番号42)を有するCDR-L1
e)アミノ酸配列HAKTLAE(配列番号43)を有するCDR-L2
f)アミノ酸配列QHHYGPPPT(配列番号44)を有するCDR-L3
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、以下の配列を含む。
【0087】
LEVQLVESGGGLVQAGGSLRLSCAASGRISSIIHMAWYRQAPGKQRELVAEISRVGTTVYADSVKGRFTISRDDAKNTVTLQMNSLKPEDTAVYYCNALQYEKHGGADYWGQGTQVTVSSRKCCVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号53)
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、以下の配列を含む。
【0088】
LEVQLVESGGGLVQAGGSLRLSCAASGRISSIIHMAWYRQAPGKQRELVAEISRVGTTVYADSVKGRFTISRDDAKNTVTLQMNSLKPEDTAVYYCNALQYEKHGGADYWGQGTQVTVSSPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCAVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号54)
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、以下の軽鎖配列および重鎖配列を含む。
【0089】
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDISFFLNWYQQKPGKAPKLLIYYTSRYHSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHGNTLPWTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号56)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYIFTNYPIHWVRQAPGQGLEWMGFIDPGGGYDEPDERFRDRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARRGGGYYLDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCAVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号57)
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、以下の配列を含む。
【0090】
LEVQLVESGGGLVQAGGSLRLSCAASGRISSIIHMAWYRQAPGKQRELVAEISRVGTTVYADSVKGRFTISRDDAKNTVTLQMNSLKPEDTAVYYCNALQYEKHGGADYWGQGTQVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSEVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGRPVSNYAAAWFRQAPGKEREFVSAINWQKTATYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAAVFRVVAPKTQYDYDYWGQGTLVTVSS(配列番号55)
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗体断片は、以下の配列を含む。
【0091】
EVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGRPVSNYAAAWFRQAPGKEREFVSAINWQKTATYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAAVFRVVAPKTQYDYDYWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSLEVQLVESGGGLVQAGGSLRLSCAASGRISSIIHMAWYRQAPGKQRELVAEISRVGTTVYADSVKGRFTISRDDAKNTVTLQMNSLKPEDTAVYYCNALQYEKHGGADYWGQGTQVTVSS(配列番号45)
【0092】
抗プロペルジン抗体断片および誘導体
天然に生じる抗体の中には、抗原結合ドメインを2つ含むため、二価のものがある。プロテアーゼ消化後に、天然に生じる抗体のさらに小さな抗原結合断片が多数同定されている。これらの断片としては、たとえば、「Fab断片」(V-C-C1-V)、「Fab’断片」(重鎖ヒンジ領域を持つFab)および「F(ab’)断片」(重鎖ヒンジ領域によって結合されたFab’の二量体)があげられる。そのような断片を作製
し、たとえば合成ペプチドリンカーで結合されたVおよびVからなる「単鎖Fv」(可変断片)すなわち「scFv」と呼ばれる断片(V-リンカー-V)などのさらに小さな抗体断片を作製するために、組換え法が用いられてきた。Fab断片、Fab’断片およびscFv断片は、各々1つのV/V二量体を含む抗原結合ドメインを1つしか含まないため、抗原結合については一価である。さらに小さな一価の抗体断片がdAbであり、これは、単独で抗原に特異的に結合する、すなわち相補的なVドメインまたはVドメインを必要としないVまたはVなどの免疫グロブリン可変ドメインを1つしか含まない。dAbは、他のVドメインとは無関係に抗原に結合する。しかしながら、dAbによる抗原結合に他のドメインが必要ない場合、すなわち、dAbが他のVドメインまたはVドメインとは無関係に抗原に結合する場合、他のVドメインまたはVドメインを持つホモ多量体またはヘテロ多量体にdAbが存在することもある。
【0093】
リンカー
本発明において、リンカーは、ポリペプチドまたはタンパク質ドメインおよび/または関連する非タンパク質部分間のリンクまたは接続を記述するために使用される。いくつかの実施形態では、リンカーは、たとえば、2つのポリペプチドコンストラクトが互いにタンデム結合されるように、少なくとも2つのポリペプチドコンストラクト間のリンクまたは接続である(たとえば、第2のポリペプチドまたは一価の抗体にリンクされた一価の抗体)。リンカーは、1つの抗体コンストラクトのN末端またはC末端を、第2のポリペプチドコンストラクトのN末端またはC末端に結合させることができる。
【0094】
リンカーには、ペプチド結合などの単純な共有結合、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマーなどの合成ポリマー、あるいは、化学的コンジュゲーションなどの何らかの化学反応で生じるあらゆる種類の結合が可能である。リンカーがペプチド結合である場合、1つのタンパク質ドメインのC末端のカルボン酸基は、縮合反応で別のタンパク質ドメインのN末端のアミノ基と反応して、ペプチド結合を形成することができる。具体的には、当技術分野でよく知られた従来の有機化学反応による合成手段から、あるいは宿主細胞からの天然の産生によって、ペプチド結合を形成することができる。後者の場合、DNAポリメラーゼおよびリボソームなどの宿主細胞内の必要な分子機構によって、タンデムに配列した2つの抗体コンストラクトなどの両方のタンパク質のDNA配列をコードするポリヌクレオチド配列を、直接転写および翻訳し、両方のタンパク質をコードする一続きのポリペプチドにすることができる。
【0095】
リンカーがPEGポリマーなどの合成ポリマーである場合、2つのタンパク質の接続末端で末端アミノ酸と反応させるために、ポリマーの両末端を反応性の化学官能基で官能化することができる。
【0096】
リンカー(上述したペプチド結合を除く)が化学反応によって作られる場合、たとえばアミン、カルボン酸、エステル、アジドなどの化学官能基または当技術分野で一般に用いられる他の官能基を、1つのタンパク質のC末端と別のタンパク質のN末端にそれぞれ化学合成によって結合させることができる。その後、2つの官能基が化学合成手段を介して反応して化学結合を形成し、2つのタンパク質を結合する。そのような化学的コンジュゲーションの手順は、当業者にとって日常である。
【0097】
本発明では、2つのペプチドコンストラクト間のリンカーは、1~200(たとえば、1~4、1~10、1~20、1~30、1~40、2~10、2~12、2~16、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200)アミノ酸を含むアミノ酸リンカーであってもよい。適切なペプチドリンカーは、当技術分野で知られており、たとえば、グリシンおよびセリンなどの柔軟なアミノ酸残基を含むペプチドリンカーがあげられる。いくつかの実施形態では、リンカーは、GS、GGS、GGGGS(配列番号1)、GGSG(配列番号2)またはSGGG(配列番号3)の単一モチーフもしくは複数の異なるモチーフまたは反復モチーフを含むことができる。例示的なモチーフは、(G4S)G4D)、(G4E)、(G4A)の配列を有し、ここで、n=1、2、3、4、5または6以上およびそれらの組み合わせである。他のリンカーとしては、配列GGGGD(配列番号63)、GGGGE(配列番号64)およびGGGGA(配列番号100)があげられる。リンカーは、これらの様々なモチーフを組み合わせることによって設計することができる。このようなリンカーとして、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号4)、GGGGDGGGGDGGGG(配列番号5)、GGGGEGGGGEGGGG(配列番号6)およびGGGGAGGGGAGGGGS(配列番号101)があげられる。
【0098】
二重特異性コンストラクト
また、本発明は、2つの抗原結合ポリペプチドが(たとえば配列番号1~6、63~64および100~101のいずれか1つのリンカーなどのリンカーによって)リンクされる二重特異性コンストラクトを特徴とする。そのような二重特異性コンストラクトは、リンカーによって第2のポリペプチド(第2の一価の抗体など)に接続された抗プロペルジン結合ポリペプチド(一価の抗体など)を含んでもよい。第2のポリペプチドは、二重特異性コンストラクトのin vivoでの安定性を高めることができる。いくつかの実施形態では、第2のポリペプチドは、アルブミン結合分子、アルブミン結合ペプチドまたは抗アルブミン抗体(一価の抗体など)またはそれらの修飾形態である。アルブミン結合ペプチドは当技術分野で知られており、たとえば、WO2007/106120(表1から9参照)およびDennis et al., 2002, J Biol. Chem. 277: 35035-35043に記載されている。それらの開示内容を本明細書に援用する。
【0099】
いくつかの実施形態では、第2のポリペプチドは、コンストラクトのin vivoでの安定性を高めるFcドメインである。
【0100】
例示的な二重特異性コンストラクトを、以下の実施例5に示す。
【0101】
いくつかの実施形態では、一価の抗プロペルジン抗体は、一価の抗アルブミン抗体とリンクされる。一価の抗プロペルジン抗体は、そのN末端またはC末端によって、一価の抗アルブミン抗体のN末端またはC末端とリンクされていてもよい。
【0102】
一価の抗プロペルジン抗体は、そのN末端またはC末端によって、配列番号1~6、63~64および100~101のいずれか1つのアミノ酸配列を有するリンカーを用いて一価の抗アルブミン抗体のN末端またはC末端とリンクされていてもよい。
【0103】
いくつかの実施形態では、配列番号58のアミノ酸配列を含む一価の抗プロペルジン抗体は、一価の抗アルブミン抗体とリンクされる。配列番号58の配列を含む一価の抗プロペルジン抗体は、そのN末端またはC末端によって、配列番号1~6、63~64および100~101のいずれか1つのアミノ酸配列を含むリンカーを用いて一価の抗アルブミン抗体のN末端またはC末端とリンクされていてもよい。
【0104】
いくつかの実施形態では、配列番号59のアミノ酸配列を含む一価の抗プロペルジン抗体は、一価の抗アルブミン抗体とリンクされる。配列番号59の配列を含む一価の抗プロペルジン抗体は、そのN末端またはC末端によって、配列番号1~6、63~64および100~101のいずれか1つのアミノ酸配列を含むリンカーを用いて一価の抗アルブミン抗体のN末端またはC末端とリンクされていてもよい。
【0105】
いくつかの実施形態では、配列番号60のアミノ酸配列を含む一価の抗プロペルジン抗体は、一価の抗アルブミン抗体とリンクされる。配列番号60の配列を含む一価の抗プロペルジン抗体は、そのN末端またはC末端によって、配列番号1~6、63~64および100~101のいずれか1つのアミノ酸配列を含むリンカーを用いて一価の抗アルブミン抗体のN末端またはC末端とリンクされていてもよい。
【0106】
いくつかの実施形態では、配列番号61のアミノ酸配列を含む一価の抗プロペルジン抗体は、一価の抗アルブミン抗体とリンクされる。配列番号61の配列を含む一価の抗プロペルジン抗体は、そのN末端またはC末端によって、配列番号1~6、63~64および100~101のいずれか1つのアミノ酸配列を含むリンカーを用いて一価の抗アルブミン抗体のN末端またはC末端とリンクされていてもよい。
【0107】
いくつかの実施形態では、配列番号60のアミノ酸配列を含む一価の抗プロペルジン抗体は、そのN末端で、配列番号4の配列を含むリンカーを用いて一価の抗アルブミン抗体とリンクされる。
【0108】
いくつかの実施形態では、配列番号60のアミノ酸配列を含む一価の抗プロペルジン抗体は、そのN末端で、配列番号5の配列を含むリンカーを用いて一価の抗アルブミン抗体とリンクされる。
【0109】
いくつかの実施形態では、配列番号60のアミノ酸配列を含む一価の抗プロペルジン抗体は、そのN末端で、配列番号6の配列を含むリンカーを用いて一価の抗アルブミン抗体とリンクされる。
【0110】
いくつかの実施形態では、二重特異性コンストラクトは、配列番号45~55および62のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、一価の抗プロペルジン抗体は、そのN末端で、配列番号1の配列を含むリンカーを用いて一価の抗アルブミン抗体とリンクされる。
【0112】
いくつかの実施形態では、一価の抗プロペルジン抗体は、そのN末端で、配列番号2の配列を含むリンカーを用いて一価の抗アルブミン抗体とリンクされる。
【0113】
いくつかの実施形態では、一価の抗プロペルジン抗体は、そのN末端で、配列番号3の配列を含むリンカーを用いて一価の抗アルブミン抗体とリンクされる。
【0114】
いくつかの実施形態では、一価の抗プロペルジン抗体は、そのN末端で、配列番号4の配列を含むリンカーを用いて一価の抗アルブミン抗体とリンクされる。
【0115】
いくつかの実施形態では、一価の抗プロペルジン抗体は、そのN末端で、配列番号5の配列を含むリンカーを用いて一価の抗アルブミン抗体とリンクされる。
【0116】
いくつかの実施形態では、一価の抗プロペルジン抗体は、そのN末端で、配列番号6の配列を含むリンカーを用いて一価の抗アルブミン抗体とリンクされる。
【0117】
いくつかの実施形態では、一価の抗プロペルジン抗体は、そのN末端で、配列番号63の配列を含むリンカーを用いて一価の抗アルブミン抗体とリンクされる。
【0118】
いくつかの実施形態では、一価の抗プロペルジン抗体は、そのN末端で、配列番号64の配列を含むリンカーを用いて一価の抗アルブミン抗体とリンクされる。
【0119】
いくつかの実施形態では、一価の抗プロペルジン抗体は、そのC末端で、配列番号1の配列を含むリンカーを用いて一価の抗アルブミン抗体とリンクされる。
【0120】
いくつかの実施形態では、一価の抗プロペルジン抗体は、そのC末端で、配列番号2の配列を含むリンカーを用いて一価の抗アルブミン抗体とリンクされる。
【0121】
いくつかの実施形態では、一価の抗プロペルジン抗体は、そのC末端で、配列番号3の配列を含むリンカーを用いて一価の抗アルブミン抗体とリンクされる。
【0122】
いくつかの実施形態では、一価の抗プロペルジン抗体は、そのC末端で、配列番号4の配列を含むリンカーを用いて一価の抗アルブミン抗体とリンクされる。
【0123】
いくつかの実施形態では、一価の抗プロペルジン抗体は、そのC末端で、配列番号5の配列を含むリンカーを用いて一価の抗アルブミン抗体とリンクされる。
【0124】
いくつかの実施形態では、一価の抗プロペルジン抗体は、そのC末端で、配列番号6の配列を含むリンカーを用いて一価の抗アルブミン抗体とリンクされる。
【0125】
いくつかの実施形態では、一価の抗プロペルジン抗体は、そのC末端で、配列番号63の配列を含むリンカーを用いて一価の抗アルブミン抗体とリンクされる。
【0126】
いくつかの実施形態では、一価の抗プロペルジン抗体は、そのC末端で、配列番号64の配列を含むリンカーを用いて一価の抗アルブミン抗体とリンクされる。
【0127】
シングルドメイン抗体の作製
一実施形態では、組成物および方法は、(V、たとえば、VHH)または軽鎖ドメイン(V)であるシングルドメイン抗体を使用する。したがって、プロペルジンに特異的な一価のシングルドメイン抗体を作製する1つの手段は、たとえば、抗プロペルジンモノクローナル抗体を発現するハイブリドーマ(たとえば、マウスハイブリドーマ)から単離された重鎖遺伝子配列および軽鎖遺伝子配列のV領域およびV領域を増幅して発現させることである。VドメインおよびVドメインの境界は、たとえば、Kabat et al.(Sequences of Proteins of Immunological Interest (National Institutes of Health, Bethesda, MD, 1991)に記載されている。プロペルジンに結合することが知られている抗体をコードする重鎖コード配列または軽鎖コード配列からVドメインを増幅するPCRプライマーを設計するために、重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子のVドメインおよびVドメインの境界に関する情報が使用される。増幅されたVドメインは、pHEN-1などの適切な発現ベクターに挿入され(Hoogenboom, H. et al., Nucleic Acids Res., 19:4133-7, 1991)、たとえばscFvにおけるVおよびVの融合または他の適切な一価の形式で発現される。得られたポリペプチドを、プロペルジンに対する高親和性の一価の結合についてスクリーニングすることができる。結合のスクリーニングについては、当技術分野で知られた方法によって行うことができる。シングルドメイン抗体は、当技術分野で知られた方法を用いて作製することができる(WO2005118642、Ward, E. et al., Nature, 341:544-6, 1989、Holt, L. et al., Trends Biotechnol., 21:484-90, 2003)。各軽鎖ドメインはκサブグループまたはλサブグループのいずれかであってもよい。VドメインおよびVドメインを単離するための方法は、当技術分野において説明されている(EP0368684)。
【0128】
一実施形態では、シングルドメイン抗体は、ヒト、ヒト化げっ歯類、ラクダ科動物またはサメから得られる。そのようなシングルドメイン抗体は、任意にヒト化することができる。ラクダ科動物のシングルドメイン抗体のヒト化には、単一のポリペプチド鎖内の限られた数のアミノ酸の導入と突然変異誘発が必要である。これは、軽鎖と重鎖の2つの鎖にアミノ酸の変化を導入し、両方の鎖のアセンブリを保存する必要があるscFv、Fab、(Fab’)2およびIgGのヒト化とは対照的である。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、VHHドメインを含む。いくつかの実施形態では、VHHドメインは、プロペルジンに対する天然に生じる重鎖抗体のVHHドメインに対応する。そのようなVHH配列は、たとえば、当技術分野で知られたいずれかの適切な技術を使用して(たとえば、単一細胞PCRによってシングルドメイン抗体をコードする遺伝子をクローニングしてもよいし、あるいは、シングルドメイン抗体をコードするB細胞をEBV形質転換または不死化細胞株への融合によって不死化させてもよい)、ラクダ科動物の種をプロペルジンで適切に免疫する(すなわち、プロペルジンに対する免疫応答および/または重鎖抗体を引き起こす)、そのラクダ科動物から適切な生物学的サンプル(血液試料、血清試料またはB細胞試料など)を取得する、当該試料から始めて、プロペルジンに対するVHH配列を生成することによって、作製することができる。
【0129】
あるいは、プロペルジンに対するそのような天然に生じるVHHドメインは、たとえば、当技術分野で知られている1つ以上のスクリーニング技術を使用して、ラクダ科動物VHH配列のナイーブライブラリーを、プロペルジンまたはその少なくとも1つの部分、断片、抗原決定基またはエピトープを用いてスクリーニングすることにより、そのようなライブラリーから得ることができる(WO99/37681、WO01/90190、WO03/025020およびWO03/035694)。あるいは、ランダム変異誘発および/またはCDRシャッフリングなどの技術によりナイーブVHHライブラリーから得られるVHHライブラリーなど、ナイーブVHHライブラリーに由来する改良された合成ライブラリーまたは半合成ライブラリーを使用してもよい(WO00/43507)。いくつかの実施形態では、VHHライブラリーが構築され、ヘルパーファージでの感染後にファージ上に発現される。数ラウンドのバイオパニングの後、ヒトプロペルジンに対するシングルドメイン抗体を分離し、効率的に発現させることが可能である。
【0130】
スクリーニングを促進するために、VHH断片またはVHH断片を含む融合タンパク質のライブラリーを、ファージ、ファージミド、リボソームまたは適切な微生物(酵母など)上に表示することができる。VHH断片またはVHH断片を含む融合タンパク質(のセット、コレクションまたはライブラリー)を表示およびスクリーニングするための適切な方法、技術および宿主生物は、当技術分野で知られている(WO03/054016、Hoogenboom, H., Nat. Biotechnol., 23:1105-16, 2005)。
【0131】
別の実施形態において、VHH断片配列またはVHH断片配列を含む融合タンパク質を作製する方法は、少なくとも、a)免疫グロブリン配列を発現するラクダ科動物の種に由来する細胞の集合または試料を準備する工程と、b)(i)プロペルジンに結合することができるおよび/またはプロペルジンに対する親和性を有する免疫グロブリン配列を発現する細胞、(ii)重鎖抗体を発現する細胞について、細胞の集合または試料をスクリーニングする工程と、c)(i)重鎖抗体に存在するVHH配列を細胞から単離するまたは(ii)重鎖抗体に存在するVHH配列をコードする核酸配列を細胞から単離した後、VHHドメインを発現させる工程と、を含み、プロペルジンに結合することができるおよび/またはプロペルジンに対する親和性を有する重鎖抗体を準備するために、サブステップ(i)および(ii)は、本質的に1つのスクリーニング工程として実施することができるか、任意の適切な順序で2つの別々のスクリーニング工程として実施することができる。
【0132】
プロペルジンに対するアミノ酸配列を作製するための方法は、少なくとも、a)重鎖抗体またはVHH配列をコードする核酸配列のセット、集合またはライブラリーを準備する工程と、b)プロペルジンに結合することができるおよび/またはプロペルジンに対する親和性を有するVHH配列を含む融合タンパク質または重鎖抗体をコードする核酸配列について、核酸配列のセット、集合またはライブラリーをスクリーニングする工程と、c)核酸配列を単離した後、それぞれ重鎖抗体に存在するVHH配列を発現させるか、VHH配列を含む融合タンパク質を発現させる工程と、を含むことができる。
【0133】
天然に生じるV配列またはVHH配列から開始して、シングルドメイン抗体および/またはそれをコードする核酸を取得するための他の適切な方法および技術は、一価の抗プロペルジンシングルドメイン抗体またはそれをコードする塩基配列または核酸を提供するために、適切な方法で、たとえば(1つまたは複数のフレームワーク領域(FR)配列および/またはCDR配列などの)1つまたは複数の天然に生じるVHH配列の1つまたは複数の部分、(1つまたは複数のフレームワーク領域配列またはCDR配列などの)1つまたは複数の天然に生じるVHH配列の1つまたは複数の部分および/または1つまたは複数の合成配列または半合成配列を組み合わせることを含んでもよい。あるいは、VHHまたはシングルドメイン抗体のフレームワーク配列をコードする塩基配列は、当技術分野で知られており、本明細書に記載の方法を使用して得られる塩基配列から開始するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって得られるものであってもよい。シングルドメイン抗体もしくは補体第二経路またはその断片の調節因子と融合した抗体断片を提供するために、そのような組成物を(たとえば、重複プライマーを用いるPCRアセンブリによって)所望のCDRをコードする塩基配列と適宜組み合わせることができる。
【0134】
抗体断片の作製
既知の手法によって、親抗体と同一のエピトープを認識する抗体断片を作製することができる。たとえば、抗体をタンパク質加水分解するか、断片をコードするDNAをE.coliで発現させることによって、抗体断片を調製することができる。抗体断片は、Fab、F(ab’)などの抗体の抗原結合部分であり、scFVは、従来の方法または遺伝子工学的手法による抗体全体のペプシンまたはパパイン消化によって得ることができる。
【0135】
F(ab’)と呼ばれる100kDaの断片を準備するために、ペプシンを用いて抗体を酵素的に切断することによって、抗体断片を作製することができる。この断片を、チオール還元剤を使用して、任意にジスルフィド結合の切断によって生じるスルフヒドリル基のブロッキング基も使用してさらに切断し、50kDaのFab’一価断片を作製することができる。あるいは、パパインを使用した酵素的な切断によって、Fc断片と2つの一価Fab断片を直接作製する(米国特許第4,036,945号および同第4,331,647号、Nisonoff, A. et al., Arch. Biochem. Biophys., 89:230-44, 1960、Porter, R., Biochem. J., 73:119-26, 1959、Edelman et al., in Methods in Enzymology Vol. I, p.422(Academic Press 1967)およびColigan el al., Current Protocols in Immunology, Vol. 1, p.2.8.1-2.8.10, 2.10.-2.10.4(John Wiley & Sons 1991)。
【0136】
無傷の抗体によって認識される抗原に断片が結合する限り、一価の軽-重鎖断片を形成するための重鎖の分離、断片のさらなる切断または他の酵素的、化学的または遺伝的技術など、抗体を切断する他の方法を使用してもよい。
【0137】
抗体断片の別の形態に、単一の相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドがある。CDRペプチドは、目的の抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することによって取得することができる。そのような遺伝子は、たとえば、ポリメラーゼ連鎖反応を使用して抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成することによって調製される(Larrick, J & Fry, K. METHODS- a companion to Methods in Enzymology Volume: New Techniques in Antibody Generation, 2:106-110, 1991)、Courtenay Luck, “Genetic Manipulation of Monoclonal Antibodies,” in Monoclonal Antibodies: Production, Engineering and Clinical Application, Ritter et al. (eds.), p.166-179 (Cambridge University Press
1995)、Ward et al., “Genetic Manipulation and Expression of Antibodies,” in Monoclonal Antibodies: Principles And Applications, Birch et al., (eds.), p.137-1
85 (Wiley-Liss, Inc. 1995))。
【0138】
他の抗体断片、たとえばシングルドメイン抗体断片は、当技術分野で知られており、特許請求されたコンストラクトで使用することができる(Muyldermans, S. et al., Trends Biochem. Sci., 26:230-5, 2001、Yau, K. et al., J. Immunol. Methods, 281:161-75, 2003、Maass, D. et al., J. Immunol. Methods, 324:13-25, 2007)。VHHは強力な抗原結合能を有し、従来のV-Vペアにはアクセスできない新規なエピトープと相互作用することができる。ラクダ科動物をプロペルジンなどの既知の抗原で免疫することができ、標的抗原に結合してこれを中和するVHHを単離することができる。
【0139】
抗原結合についての一価の抗体のスクリーニング
ライブラリースクリーニング法を使用して、一価のプロペルジン特異的結合抗体または断片を同定することができる。ファージディスプレイ技術によって、大規模で多様なレパートリーの抗体から所望の標的(ヒトプロペルジンなど)に結合する抗体を選択するためのアプローチが提供される(Smith, G., Science, 228:1315-7, 1985、Scott, J. & Smith, G., Science, 249:386-90, 1990、McCafferty, J. et al., Nature, 348:552-4, 1990)。これらのファージ抗体ライブラリーは、ヒトB細胞から採取した再配列V遺伝子を使用する天然ライブラリー(Marks, J. et al., J. Mol. Biol., 222:581-97, 1991、Vaughan, T. et al., Nat. Biotechnol., 14:309-14, 1996)または生殖細胞系V遺伝子セグメントまたは他の抗体ポリペプチドコード配列がin vitroで「再配列」される(Hoogenboom, H. & Winter, G., J. Mol. Biol., 227:381-8, 1992、Nissim, A. et al., EMBO J., 13:692-8, 1994、Griffiths, A. et al., EMBO J., 13:3245-60, 1994、de Kruif, J. et al., J. Mol. Biol., 248:97-105, 1995)または合成CDRが単一の再構成されたV遺伝子に組み込まれている(Barbas, C. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4457-61, 1992)合成ライブラリーという2つのカテゴリーに分類することができる。遺伝子ディスプレイパッケージ(ファージディスプレイ、ポリソームディスプレイなど)を含む方法は、一般にディスプレイパッケージで二価抗体全体ではなく一価の断片のみを発現するため、一価プロペルジン特異的抗体コンストラクトの選択に適している。さまざまな抗体断片を表示するファージディスプレイライブラリーを調製するための方法が、上述した参考文献ならびに、たとえば米国特許6,696,245号に記載されており、その内容全体を本明細書に援用する。
【0140】
ファージ表面でシングルドメイン抗体のレパートリーを発現させた後、ファージレパートリーを、固定化したターゲット抗原(プロペルジンなど)と接触させ、洗浄して未結合のファージを除去し、結合したファージを増やすことによって、選択がなされる。この過程は、全体で「パニング」と呼ばれることが多い。ディスプレイライブラリー(scFv、Fab、(Fab’)2およびVHHなど、Harrison, J. et al., Meth. Enzymol., 267:83-109, 1996)で発現させることができる一価のシングルドメイン抗体および抗体断
片のスクリーニングに適用可能である。あるいは、折り畳まれたメンバーだけが結合する固定化された一般的なリガンド(たとえば、プロテインAまたはプロテインL)に対してパニングすることにより、適切に折り畳まれたメンバーバリアントの発現のためにファージが事前に選択される(WO99/20749)。この方法には、機能的ではないメンバーの割合が減ることで、標的抗原に結合する可能性のあるメンバーの割合が増えるという利点がある。ファージ抗体ライブラリーのスクリーニングは、一般に、たとえば、によって記載されている。
【0141】
スクリーニングは一般に、プラスチックチューブまたはウェルなどの固体支持体上、またはSepharose(商標)(Pharmacia)などのクロマトグラフィーマトリックス上に固定化された精製抗原を使用して行われる。スクリーニングまたは選択は、細胞の表面などの複合抗原に対しても行うことができる(Marks, J. et al., Biotechnology(NY), 11:1145-9, 1993、de Kruif, J. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92:3938-42, 1995)。別の方法として、溶液中でビオチン化抗原を結合した後、ストレプトアビジン被覆ビーズで捕捉することで選択を行う方法がある。VHHコード配列は当技術分野で知られており、ラクダ科動物のVHHファージディスプレイライブラリーを構築するのに使用できる。これを、当技術分野で知られたバイオパニング技術による抗体断片の単離に使用することが可能である。
【0142】
抗プロペルジン抗体の発現
核酸の操作は、組換えベクターで行うことができる。本明細書で使用する場合、「ベクター」は、発現および/または複製のために異種DNAを細胞に導入するのに使用される別個の要素をいう。そのようなベクターを選択または構築し、続いて使用する方法は、当業者に知られている。細菌プラスミド、バクテリオファージ、人工染色体、エピソームベクターなど、多数のベクターが公に入手可能である。そのようなベクターを、単純なクローニングおよび突然変異誘発に使用することもできる。ベクターは、所望の大きさのポリペプチドコード配列に対応するように選択される。適切な宿主細胞は、in vitroでのクローニング操作後に、ベクターで形質転換される。各ベクターには、一般にクローニング(または「ポリリンカー」)サイトと複製起点を含む、さまざまな機能的コンポーネントが含まれる。発現ベクターは、エンハンサー要素、プロモーター、転写終結配列およびシグナル配列のうちの1つまたは複数をさらに含むことができ、それぞれポリペプチドをコードする遺伝子に転写制御できるようにリンクされるように、クローニング部位の近くに位置する。
【0143】
クローニングベクターおよび発現ベクターには、どちらも通常は1つまたは複数の選択された宿主細胞でベクターが複製できるようにする核酸配列が含まれる。一般に、クローニングベクターは、ベクターが宿主の染色体DNAとは独立して複製できるようにする配列要素を含み、複製起点または自律複製配列を含む。このような配列は、さまざまな細菌、酵母、ウイルスで知られている。
【0144】
本明細書に記載のスクリーニングされたライブラリーの場合、ベクターは、ポリペプチドライブラリーメンバーの発現を可能にする発現ベクターであり得る。選択は、ポリペプチドライブラリーメンバーを発現する単一のクローンを別々に増殖および発現させるか、任意の選択ディスプレイ系を使用することによってなされる。バクテリオファージディスプレイの場合、ファージまたはファージミドベクターを使用することが可能である。ファージミドベクターは、E. coliの複製起点(二本鎖複製用)およびファージ複製起点(一本鎖DNAの生成用)を有する。
【0145】
一価の抗体の精製と濃縮
ペリプラズム空間または細菌の培地に分泌された一価の抗体は、既知の方法で採取され、精製される(Skerra, A. & Pluckthun, A., Science, 240:1038-41, 1988およびBreitling, F. et al.(Gene, 104:147-53, 1991)は、ペリプラズムからの抗体ポリペプチドの採取について説明し、Better, M. et al.(Science, 240:1041-3, 1988)は、培養上清からの採取について説明している。一部の抗体ポリペプチドについては、プロテインAまたはプロテインLなどの一般的なリガンドに結合することによって精製を実現することもできる。あるいは、Myc、HAまたは6×Hisタグなどのペプチドタグを用いて、可変ドメインを発現させることも可能である。この方法は、アフィニティクロマトグラフィーによる精製を促進する。必要であれば、限外濾過、ダイアフィルトレーションおよびタンジェンシャルフロー濾過を含む、当技術分野でよく知られたいくつかの方法のいずれかを用いて、一価の抗プロペルジン抗体を濃縮する。限外濾過の過程では、大きさおよび形状に基づいて分子種を分離するために、半透膜と圧力を使用する。圧力は、ガス圧または遠心分離によって生じさせる。標的抗体よりも小さい分子量カットオフを選択することによって(通常、標的ポリペプチドの分子量の1/3から1/6)、溶媒と小さい溶質が膜を通過するときに、抗プロペルジン抗体が保持される。
【0146】
薬学的組成物、投与量および投与
本明細書に記載の抗体は、被検体への投与に適した薬学的組成物に組み込むことができる。一般に、薬学的組成物は、一価の抗プロペルジン抗体、抗体誘導体またはその断片および薬学的に許容可能な担体を含む。本明細書で使用する場合、「薬学的に許容可能な担体」には、生理学的に適合する、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。「薬学的に許容可能な担体」という用語には、ウシまたはウマの血清を含む組織培養培地を含まない。薬学的に許容可能な担体の例として、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどの1種類以上ならびにそれらの組み合わせがあげられる。多くの場合、等張剤、たとえば糖、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコールまたは塩化ナトリウムを組成物に含めることが好ましいであろう。薬学的に許容可能な物質には、抗体の貯蔵寿命または有効性を高める湿潤剤または乳化剤、防腐剤または緩衝液などの少量の補助物質が含まれる。
【0147】
本明細書に記載される組成物は、さまざまな形態をとり得る。これらには、たとえば、液体の溶液(注射液および輸液用液など)、分散液または懸濁液、錠剤、丸薬、粉末、リポソームおよび坐薬など、液体、半固体および固体の剤形が含まれる。最終的な形態は、意図する投与方法と治療用途に依存する。典型的な組成物は、他の抗体を用いたヒトの受動免疫に使用されるものと同様の組成物など、注射可能または輸液可能な溶液の形態である。組成物は、たとえば、非経口注射(静脈内注射、皮下注射、腹腔内注射、筋肉内注射など)によりデリバリーである。
【0148】
治療用組成物は、一般に、製造および保管の条件下で無菌かつ安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソームまたは薬物濃度の高い状態に適した他の秩序だった構造として製剤化することが可能である。滅菌注射液は、必要量の一価抗プロペルジンアンタゴニストを、上記の成分を1種類または組み合わせたものと一緒に必要に応じて適切な溶媒に取り込んだ後、フィルター滅菌することにより調製可能である。一般に、分散液は、一価抗プロペルジンアンタゴニストを、基本的な分散媒および上記に列挙したうちの必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクルに取り込むことにより調製される。滅菌注射液の調製用の滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、あらかじめ滅菌濾過した溶液から、活性成分に加えて別の所望の成分の粉末が得られる真空乾燥および凍結乾燥である。溶液の適切な流動性は、たとえば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合は必要な粒度の維持、界面活性剤の使用により維持することができる。
【0149】
本明細書に記載の抗体は、当技術分野で知られているさまざまな方法によって投与することができるが、多くの治療用途では、好ましい投与経路/投与方法は静脈内注射または輸液である。ポリペプチドは、筋肉内注射または皮下注射によって投与することもできる。
【0150】
当業者によって理解されるように、投与経路および/または投与方法は、所望の結果に応じて変わる。いくつかの実施形態では、抗体は、インプラント、経皮パッチおよびマイクロカプセル化デリバリーシステムを含む制御放出製剤など、抗体を急速な放出から保護する担体とともに調製することができる。一価のシングルドメイン抗体は、大きさが小さい、すなわち一用量あたりのモル数をたとえばフルサイズの抗体の場合よりも大幅に多くできることから、ある意味では持続放出製剤としての製剤に適している。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸などの生分解性の生体適合性ポリマーを使用することができる。注射可能な組成物の長期の吸収は、吸収を遅延させる薬剤、たとえばモノステアリン酸塩およびゼラチンを組成物に含めることにより達成することができる。そのような製剤を調製するための多くの方法が、当業者に知られている(たとえば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J. R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978)。本明細書に開示される一価シングルドメイン抗体などの抗体の制御放出または持続放出に適用可能な方法は知られている(米国特許第6,306,406号および同第6,346,274号、米国特許出願第US20020182254号および同第US20020051808号などであり、これらの教示内容全体を本明細書に援用する)。
【0151】
いくつかの実施形態では、一価の抗プロペルジン抗体、抗体誘導体またはその断片は、たとえば、不活性希釈剤または吸収可能な食用担体とともに経口投与することができる。
本明細書に記載の組成物を非経口投与以外の方法で投与するには、化合物を、その不活性化を防ぐための物質でコーティングするか一緒に投与する必要がある場合がある。
【0152】
別の活性化合物も、組成物に取り込むことができる。いくつかの実施形態では、一価の抗プロペルジン抗体、抗体誘導体またはその断片は、1種類以上の追加の治療薬と一緒に製剤化および/または一緒に投与される。たとえば、一価の抗プロペルジン抗体、抗体誘導体またはその断片は、他の標的に結合する1種類以上の追加の抗体(たとえば、補体第二経路の調節因子に結合する抗体)と一緒に製剤化および/または一緒に投与することができる。そのような併用療法では、投与される治療薬の投与量を抑えるため、さまざまな単剤療法に付随する可能性のある毒性または合併症が回避される。さらに、本明細書に記載の組成物は、本明細書に記載の組成物を投与することの副作用を改善するために、他の治療薬と一緒に製剤化または一緒に投与することができる(たとえば、抗菌剤、抗真菌剤および抗ウイルス剤などの免疫不全環境での感染のリスクを最小限にする治療薬)。
【0153】
薬学的組成物は、「治療有効量」または「予防有効量」の一価抗プロペルジンアンタゴニスト(たとえば、抗体またはその誘導体または断片)を含むことができる。「治療有効量」とは、所望の治療結果を達成するために、必要な投与量および期間で有効な量をいう。抗体の治療有効量は、個体の病状、年齢、性別ならびに体重および一価の抗プロペルジンアンタゴニストが個体において所望の応答を誘発する能力などの要因によって変わり得る。「予防有効量」とは、所望の予防結果を達成するために、必要な投与量および期間で有効な量をいう。いくつかの実施形態では、予防有効量が治療有効量よりも少ない疾患の罹患前または罹患初期の段階で被検体に対して予防用量が用いられる。
【0154】
最適な望ましい反応(治療応答または予防応答など)を提供するために、投薬計画を調整してもよい。たとえば、治療状況の緊急性に応じて、単一のボーラスを投与してもよいし、数回に分けた用量で時間をかけて投与しても用量を比例的に減少または増加させてもよい。投与の容易さと投与量の均一性を得るために、非経口組成物を単位剤形で処方すると有利である。本明細書で使用する単位剤形は、治療対象となる哺乳動物被検体用の配合投与量に適した、物理的に別個の単位あって、各々が必要な薬学的担体に付随して所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性化合物を含有する単位をいう。投与量の値は、緩和される状態の種類と重症度によって異なる可能性がある点に注意されたい。特定の被検体について、個々の必要性および投与する臨床医の専門的な判断に従って、特定の投与計画を経時的に調整する必要があることを、さらに理解されたい。
【0155】
一価の抗プロペルジン抗体、抗体誘導体またはその断片の治療有効量または予防有効量の非限定的な範囲は、0.1~20mg/kg、より好ましくは1~10mg/kgである。投与量の値は、緩和される状態の種類と重症度によって異なる可能性がある点に注意されたい。特定の被検体について、個々の必要性および投与する臨床医の専門的な判断に従って、特定の投与計画を経時的に調整する必要があることを、さらに理解されたい。
【0156】
本明細書に記載の一価の抗プロペルジン抗体、抗体誘導体またはその断片による治療の有効性は、治療対象となっている病状または障害の1つ以上の症状または指標の改善に基づいて、熟練した臨床医によって判断される。1つまたは複数の臨床指標の少なくとも10%の改善(測定対象となっている指標に応じて増加または減少)が「効果的な治療」であるとみなされるが、20%、30%、40%、50%、75%、90%、さらには100%などのより大きな改善が望ましく、測定される指標によっては、100%を超える(たとえば、2倍、3倍、10倍など、疾患のない状態に到達するまでを含む)改善が望ましい。
【0157】
一価の抗プロペルジン抗体の使用
本明細書に記載の組成物は、補体第二経路調節異常によって媒介される疾患または障害の治療を必要とする個体においてこれを治療する方法で使用することができる。この方法は、一価の抗プロペルジン抗体、抗体誘導体またはその断片を含む組成物、好ましくは、ヒトプロペルジンに結合する単一のヒト免疫グロブリン可変ドメインを含む組成物を、治療有効量で個体に投与することを含む。一実施形態では、本明細書に記載の一価の抗プロペルジン抗体、抗体誘導体またはその断片は、哺乳動物(ヒトなど)の補体第二経路の活性化を阻害することにより、補体第二経路調節異常によって媒介される疾患の治療に有用である。そのような障害としては、全身性エリテマトーデスおよびループス腎炎、関節リウマチ、抗リン脂質(aPL)Ab症候群、糸球体腎炎、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)症候群、炎症、臓器移植、腸および腎I/R障害、喘息(重度の喘息など)、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、自然胎児喪失、DDD、黄斑変性、TTP、IgA腎症(バージャー病)、C3糸球体症(C3G)、ゴーシェ病、化膿性汗腺炎、ベーチェット病、皮膚筋炎、重度の火傷、早期敗血症、肺炎球菌性髄膜炎、アルツハイマー病、がん転移、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺障害(ACI)、輸血関連肺障害(TRALI)、血液透析による血栓症、後天性表皮水疱症(EBA)、ブドウ膜炎、パーキンソン病、原発性胆道閉鎖症、抗好中球細胞質抗体(ANCA)血管炎、網膜変性、広範な血栓性微小血管障害症(TMA)、広範なTMA(APS)、造血幹細胞療法(HSCT)TMA、加齢黄斑変性(AMD)、子癇前症、溶血、肝酵素上昇および血小板減少(HELLP)症候群、多発性硬化症、抗リン脂質抗体症候群(APS)、再発性多発軟骨炎、虚血性障害、脳卒中、移植片対宿主病(GvHD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、アテローム性動脈硬化、急性冠動脈症候群、出血性ショック、透析(心血管リスク)、心血管疾患、胎盤マラリア、APS妊娠喪失、膜性増殖性(MP)糸球体腎炎、膜性腎炎、脳炎、脳障害、NMDA受容体抗体脳炎、マラリア溶血危機、腹部大動脈瘤(AAA)および胸腹部大動脈瘤(TAA)があげられるが、これらに限定されるものではない。
【実施例0158】
以下の実施例は、ここで特許請求される方法がどのように行われ、化合物がどのように製造されるかを当業者に開示および説明するために提示される。それらは純粋に例示的であることを意図しており、本開示の範囲を限定することを意図していない。
【0159】
実施例1 VHH-His In-Fusionクローニングベクターの作製
pBNJ391ベクターを制限酵素BstEIIおよびEcoRIで消化し、ヒンジおよびFcを除去した。このベクターをゲル精製したところ、1000bpの放出産物が得られた。アニールされたオリゴUDEC6629/6630を、BstEII/EcoRIを用いてpBNJ391ベクターにクローニングした。アニールされたオリゴには、次の配列が含まれていた。
【0160】
UDEC 6629フォワードプライマー:GTCACCGTGTCGAGCCATCATCACCATCATCACTGATGAG(配列番号65)
UDEC 6630リバースプライマー:AATTCTCATCATTTGTCATCATCATCCTTATAGTCGCTCGACACG(配列番号66)
最終ベクターには、BstEII-6×His-EcoRI部位が含まれていた。
【0161】
次に、pNGH0320ベクターをXhoI/BstEII(13bpの放出産物を産生)で消化し、カラム精製した。次に、VHHファージクローンテンプレートを使用して、インサートをPCR増幅した。フォワードプライマーUDEC 6438(GTCCACTCCCTCGAGGTGCAGCTGGTGGAGTCTGGG、配列番号67)およびリバースプライマーUDEC 6442(GCTCGACACGGTGACCTGGGTCCCCTGGCCCCA、配列番号68)を使用した。PCR産物を精製した後、クローニング用にIn-Fusionプロトコルで使用した。
【0162】
pBNJ391ベクターをBstEII/EcoRI(50ng/μL)で消化した。TEバッファーを使用して、両方の相補的オリゴヌクレオチドを同一のモル濃度で再懸濁した。両方の相補的オリゴヌクレオチド(等モル濃度)を等量ずつ1.5mLのチューブで混合した。チューブを90~95℃の標準ヒートブロックに3~5分間おいた。チューブを装置から取り外し、自然に室温(または少なくとも30°C未満)まで冷却した。このチューブを、さらに使用するまで氷上または4℃で保存した。
【0163】
(pBNJ391へのライゲーションに使用した上記ヌクレオチドからの)インサートDNAを1μL、pBNJ391(EcoRI/BstEII、100ng)を2μL、10×リガーゼバッファー(NEB B0202Sロット:11091410)を1μL、T4 DNAリガーゼ(NEB M0202Lロット:0671502)を1μL、水5μLの混合物でライゲーション反応物を形成した。ライゲーション反応物を室温で30分間インキュベートした。ライゲーション反応物1μLをDH10化学コンピテント細胞30μLに形質転換し(InVitrogen 18297ロット番号1552241)、SOC(NEBB9020Sロット番号2971403)750μLを加えた。チューブを37℃で1時間振盪し、LB炭水化物/グルコースプレートに10μLおよび100μLで播種した。週末から週明けにかけてプレートを室温でインキュベートした。
【0164】
6×HisをpNGH0320に挿入するためのPCR用にコロニーを選んだ。8つのコロニーをスクリーニングし、pBNJ391を陰性対照として使用した。分離したコロニーにTB/Carb/Glucose培養液300μLを加え、37℃で増殖させた。フォワードプライマーUDEC5276(CATAATAGCTGACAGACTAACAGACTG、配列番号69)およびリバースプライマーUDEC1977(CGAAACAAGCGCTCATGAGCCCGAAGT、配列番号70)を使用した。20μLのPCR反応では、シングルコロニーのDNAを、Go Taq Green PCR Mixを10μL、フォワードプライマー(100μM)を0.2μL、リバースプライマー(100μM)を0.2μL、HOを9.6μLの合計20μLに加えた。PCR条件は以下のとおりである。95℃で3分間、95℃で20秒間、50℃で20秒間、72℃で1分15秒間。このサイクルを30回繰り返した後、72℃で5分間インキュベートし、さらに使用するまで4℃で保管した。PCR産物5μLを水15μLと混合し、2%Eゲルで泳動した。2つのクローンが予測サイズに一致した。Promega maxi prepキットで一晩培養したプラスミドmaxi prepを使用した。
【0165】
pNGH0320へのVHHのin-fusionライゲーションを使用してVHH Hisタグ形式で抗プロペルジンVHH抗体をクローニングするために、in-fusionによるpNGH0317へのクローニング用にXhoI部位を有するLlama抗プロペルジンライブラリーpLNJからのVファージミドの増幅用のUDEC 6438-InfusionフォワードプライマーおよびUDEC 6442-Infusionリバースプライマーを使用して、PCRでVHHインサートを作製した。60μLのPCR反応のために、2x融合PCRミックス(NEB M0531sロット:0211412)を30μL、細菌培養液を1μL、フォワードプライマーUDEC 6438(100μM)を0.1μL、リバースプライマーUDEC 6442(100μM)を0.1μL、HOを28.8μLの合計20μL。PCR条件は以下のとおりである。98℃で3分間、98℃で10秒間、52℃で15秒間、72℃で30~60秒間、続いて72℃で5分間。このサイクルを30回繰り返し、さらに使用するまで4℃で保持した。PCR産物5μLを水15μLと混合し、2%Eゲルで泳動した。すべてのクローンが予測サイズに一致した。8回の反応でクローンをプールし、製造業者の指示に従ってPromegaWizard(登録商標)SV GelおよびPCR Clean-Up Systemを使用してカラムを精製した。Promega maxi prepキットで一晩培養したプラスミドmaxi prepを使用した。
【0166】
インサートのライゲーションには、5×In-Fusion HD Enzyme Premix(Clontech 639650ロット:1501713A)を2μL、Vector pNGH0320(XhoI/BstEII)39.1ng/L(100ng)を2.5μL、精製PCR断片(10~200ng)を1μL、水4.5μLでライゲーション反応物を形成した。ライゲーション反応物を50℃で15分間インキュベートした。
【0167】
形質転換のため、Stellar(商標)コンピテントセル(Clontech)を使用直前に氷浴で解凍した。解凍後、細胞を静かに混合して均一な分布にし、コンピテント細胞50μLを14mLの丸底チューブ(ファルコンチューブ)に移した。1μL(5ng未満のDNA)を細胞に加えた。チューブを氷上に30分間置いた。次に、42℃で正確に45秒間、細胞に熱ショックを与えた。その後、チューブを氷上に1~2分間置いた。最終容量が500μLになるようにSOC培地を加えた(使用前に、SOC培地を37℃まで温めた)。チューブを振盪しながら(160~225rpm)37℃で1時間インキュベートした。次に、この溶液10μLを、カルベニシリンを含むLBプレートに播種した。プレートを37℃で一晩インキュベートした。
【0168】
各プールの24のVHHコロニーの挿入について、コロニーPCRスクリーニングを実施した。各プールで合計48のクローンを選択した。ベクターpNGH0320.1を陽性対照として使用した。フォワードプライマーUDEC5276およびリバースプライマーUDEC1977を使用した。20μLのPCR反応では、シングルコロニーのDNAを、Go Taq Green PCR Mixを10μL、フォワードプライマー(100μM)を0.2μL、リバースプライマー(100μM)を0.2μL、HOを9.6μLの合計20μLに加えた。PCR条件は以下のとおりである。95℃で3分間、95℃で20秒間、50℃で20秒間、72℃で1分15秒間。このサイクルを30回繰り返した後、72℃で5分間、さらに使用するまで4℃で保持。PCR産物5μLを水15μLと混合し、2%Eゲルで泳動した。48のクローンすべてについて配列分析を実施した。
【0169】
免疫バイアスされたラマVHHファージディスプレイライブラリーの予備スクリーニングにより、プロペルジンの結合についてELISA陽性であった192のVHHが同定された。57のVHHをクローン化し、6×ヒスチジンタグで発現させた。これらのうち、34のVHHがプロペルジンの結合についてOctet陽性であった。まとめを以下の表1に示す。
【0170】
【表1】
補体第二経路媒介溶血を効果的に阻害するための4種類の機能的VHHが見いだされ、これを以下の表2に示す。
【0171】
【表2】
実施例2 ヒトプロペルジンに対する抗プロペルジンVHH抗体の結合
図1は、Octet機器(ForteBio Inc.)でキネティック結合測定を実行できることを示す。洗浄、希釈、測定はいずれも、プレートを1000rpmで振盪してKineticバッファー(ForteBioカタログ185032)で実施する。ストレプトアビジンバイオセンサー(Forte Bioカタログ:18-5019ロット:1405301)をKineticバッファーで10分間平衡化した後、50nmのビオチン化ヒトプロペルジンをロードした。会合フェーズでは、選択された抗プロペルジン抗体またはキネティクスバッファーブランク10μg/mLを、それぞれビオチン化ヒトプロペルジンをプリロードしたバイオセンサーに加えた。これらの結果は、ヒトプロペルジンに対する、AB005、AB006、AB007およびAB008の結合を示す。
【0172】
図2は、Octet機器(ForteBio Inc.)でキネティック結合測定を実行できることを示す。洗浄、希釈、測定はいずれも、プレートを1000rpmで振盪してKineticバッファー(ForteBioカタログ185032)で実施する。ストレプトアビジンバイオセンサー(Forte Bioカタログ:18-5019ロット:1405301)をKineticバッファーで10分間平衡化した後、50nmのビオチン化マウスプロペルジンをロードした。会合フェーズでは、選択された抗プロペルジン抗体またはキネティクスバッファーブランク10μg/mLを、それぞれビオチン化ヒトプロペルジンをプリロードしたバイオセンサーに加えた。これらの結果は、AB005、AB006、AB007およびAB008の弱い結合または全く結合がみられないことを示す。
【0173】
図3は、Octet機器(ForteBio Inc.)でキネティック結合測定を実行できることを示す。洗浄、希釈、測定はいずれも、プレートを1000rpmで振盪してKineticバッファー(ForteBioカタログ185032)で実施する。ストレプトアビジンバイオセンサー(Forte Bioカタログ:18-5019ロット:1405301)をKineticバッファーで10分間平衡化した後、50nmのビオチン化カニクイザルプロペルジンをロードした。会合フェーズでは、選択された抗プロペルジン抗体またはキネティクスバッファーブランク10μg/mLを、それぞれビオチン化ヒトプロペルジンをプリロードしたバイオセンサーに加えた。これらの結果は、カニクイザルプロペルジンに対する、AB005、AB006、AB007およびAB008の弱い結合を示す。
【0174】
実施例3 補体第二経路溶血アッセイ
図4は、ウサギ赤血球(rRBC)の表面上での末端補体複合体の形成に基づく補体第二経路媒介溶血アッセイを示す。この複合体が形成されることで、rRBCが溶解される。補体複合体の形成を阻害する薬剤は、細胞溶解を阻害すると予想される。第二補体の活性化によって媒介される細胞溶解に対する効果を評価するために、さまざまな抗プロペルジン抗原結合断片を試験した。10mM EGTAおよび10mM MgClを添加したゼラチンベロナールバッファー(GVB)で40%正常ヒト血清を希釈する(たとえば、1600μLの正常ヒト血清を10mM EGTAおよび10mM MgClを添加した2400μLのGVBに入れる)ことによって、「アッセイプレート」を調製した。
この溶液50μLをアッセイプレート(ポリスチレン)の各ウェルに分配した。次に、10mM EGTAおよび10mM MgClを0~100nMの範囲の濃度で添加したGVB中50μL/ウェルの2×mAbs(抗プロペルジンFabなど)を適切なウェルに加えることにより、希釈プレート(ポリプロピレン)を調製した。陽性対照としてウサギ赤血球を蒸留水でインキュベートし(細胞溶解100%)、陰性対照として赤血球をそれぞれ10mM EDTAおよび10mM MgClを含むGVBでインキュベートした(細胞溶解0%)。
【0175】
50μL/ウェルを希釈プレートからアッセイプレートに移した。次の工程に進む間、アッセイプレートを室温で放置した。400μLのrRBCを、10mM EGTAおよび10mM MgClを添加した1mLのGVBで4回洗浄した。洗浄後、そのつどrRBCを2600rpmで1分間回転させた。最後の洗浄を終えた後、10mM EGTAおよび10mM MgClを添加したGVBを300μL加え、容量が400μLになるようにrRBCを再懸濁した。洗浄したrRBC 50μLを、10mM EGTAおよび10mM MgClを添加したGVBで1mLに再懸濁した。この希釈液30μLを、アッセイプレートで調製した試料100μLに加えたところ、1ウェルあたり1.5×10個の細胞が得られた。プレートを37°Cで30分間インキュベートした。次に、プレートを1000×gで5分間遠心処理し、上清85μLを96ウェルの平底プレートに移した。415nmでODを測定することによって、溶血を決定した。415nmにおいて、(無傷細胞の溶解による)光散乱の段階的な減少が濃度の関数として測定された。計算のために、抗プロペルジンVHHの各濃度で総阻害を計算し、その結果をリストされていない対照の割合として表した。
【0176】
実施例4 プロペルジンに対する一価の抗プロペルジンVHH抗体の結合キネティクス
図6において、抗プロペルジンVHH抗体AB007およびAB008をそれぞれ、固定化したセンサー表面に既知の濃度で流した。応答レベル(RU)をセンサーグラムの時間に対してプロットした。
【0177】
抗プロペルジンVHH抗体の結合親和性を決定した。結果を以下の表3にまとめておく。
【0178】
【表3】
実施例5 プロペルジンに対する二重特異性抗プロペルジン抗体の結合キネティクスおよび補体第二溶血アッセイ
抗アルブミンコンストラクトに対するリンカーとリンクされた上記の抗プロペルジンコンストラクトに基づいて、二重特異性コンストラクトを作製した。上記と同様のアッセイで、プロペルジンおよび補体第二溶血への結合を測定した。コンストラクトの配列を以下の表4に示す。
【0179】

【表4】
図7は、Octet機器(ForteBio Inc.)で実施したキネティック結合測定を示す。
洗浄、希釈、測定はいずれも、プレートを1000rpmで振盪してKineticバッファー(ForteBioカタログ185032)で実施した。ストレプトアビジンバイオセンサー(Forte Bioカタログ18-5019 ロット1405301)ををKineticバッファーで10分間平衡化した後、50nmのビオチン化ヒトプロペルジンをロードした。会合フェーズでは、選択された抗プロペルジン抗体またはキネティクスバッファーブランク10μg/mLを、それぞれビオチン化ヒトプロペルジンをプリロードしたバイオセンサーに加えた。これらの結果は、ヒトプロペルジンに対する、TPP-2225、TPP-2591、TPP-3071、TPP-3072、TPP-3261の結合を示す。これらの結果は、すべてのコンストラクトによるヒトプロペルジンへの強い結合を示す。
【0180】
図8Aから図8Bは、ウサギ赤血球(rRBC)の表面上での末端補体複合体の形成に基づく補体第二経路媒介溶血アッセイの結果を示す。この複合体が形成されることで、rRBCが溶解される。補体複合体の形成を阻害する薬剤は、細胞溶解を阻害すると予想される。第二補体の活性化によって媒介される細胞溶解に対する効果を評価するために、さまざまな二重特異性抗プロペルジン抗原結合コンストラクトを試験した。10mM EGTAおよび10mM MgClを添加したゼラチンベロナールバッファー(GVB)で40%正常ヒト血清を希釈する(たとえば、1600μLの正常ヒト血清を10mM EGTAおよび10mM MgClを添加した2400μLのGVBに入れる)ことによって、「アッセイプレート」を調製した。この溶液50μLをアッセイプレート(ポリスチレン)の各ウェルに分配した。次に、10mM EGTAおよび10mM MgClを0~100nMの範囲の濃度で添加したGVB中50μL/ウェルの2×mAbs(抗プロペルジンFabなど)を適切なウェルに加えることにより、希釈プレート(ポリプロピレン)を調製した。陽性対照としてウサギ赤血球を蒸留水でインキュベートし(細胞溶解100%)、陰性対照として赤血球をそれぞれ10mM EDTAおよび10mM MgClを含むGVBでインキュベートした(細胞溶解0%)。
【0181】
50μL/ウェルを希釈プレートからアッセイプレートに移した。次の工程に進む間、アッセイプレートを室温で放置した。400μLのrRBCを、10mM EGTAおよび10mM MgClを添加した1mLのGVBで4回洗浄した。洗浄後、そのつどrRBCを2600rpmで1分間回転させた。最後の洗浄を終えた後、10mM EGTAおよび10mM MgClを添加したGVBを300μL加え、容量が400μLになるようにrRBCを再懸濁した。洗浄したrRBC 50μLを、10mM EGTAおよび10mM MgClを添加したGVBで1mLに再懸濁した。この希釈液30μLを、アッセイプレートで調製した試料100μLに加えたところ、1ウェルあたり1.5×10個の細胞が得られた。プレートを37°Cで30分間インキュベートした。次に、プレートを1000×gで5分間遠心処理し、上清85μLを96ウェルの平底プレートに移した。415nmでODを測定することによって、溶血を決定した。415nmにおいて、(無傷細胞の溶解による)光散乱の段階的な減少が濃度の関数として測定された。計算のために、抗プロペルジン抗体コンストラクトの各濃度で総阻害を計算し、その結果をリストされていない対照の割合として表した。
【0182】
図8Aから図8Bは、ヒト(図8A)およびカニクイザル(図8B)血清におけるTPP-2221、TP-2222、TP-2223、TP-2224およびTP-2225によって媒介される溶血を示す。対照抗体は抗プロペルジン抗体である。図9Aから図9Bは、ヒト(図9A)およびカニクイザル(図9B)血清中のTPP-2225、TPP-2951、TPP-3261、TPP-3071およびTPP-3072によって媒介される溶血を示す。
【0183】
図10Aから図10B図11Aから図11B図12Aから図12Bは、ヒトプロペルジンおよびカニクイザルプロペルジンに対する、TPP-3261、TPP-2951およびTPP-2225の結合キネティクスを示す。
【0184】
以下の表5~9に、それぞれのコンストラクトの結合親和性およびIC50値を示す。
【0185】
【表5】
【0186】
【表6】
【0187】
【表7】
【0188】
【表8】
【0189】
【表9】
【0190】
他の実施形態
本明細書で言及したすべての刊行物、特許および特許出願は、それぞれの独立した刊行物または特許出願を明示的かつ個別に援用する旨を表記するのと同程度に援用される。
【0191】
本明細書に記載の組成物および方法は、さらに改変することが可能であり、この説明は、上記の本質的な特徴に適用でき、特許請求の範囲に従う当該技術分野における既知または慣例の範囲内に包含される本開示からのそのような逸脱をはじめとして、本明細書に大枠で開示された原理に従うあらゆる変形、使用または翻案を含むことを意図していることが理解されよう。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
【配列表】
2024116321000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-07-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一価の抗体またはその抗原結合断片。