(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116365
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】検体検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20240820BHJP
G01N 35/02 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G01N35/00 B
G01N35/02 C
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024096731
(22)【出願日】2024-06-14
(62)【分割の表示】P 2020155932の分割
【原出願日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】P 2019169073
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】時田 俊伸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 建
(72)【発明者】
【氏名】縄田 功
(72)【発明者】
【氏名】原頭 基司
(72)【発明者】
【氏名】羽鳥 孝
(57)【要約】
【課題】検査効率を向上させること。
【解決手段】実施形態に係る検体検査装置は、試料を収容する検査カートリッジを用いて検査を行う検体検査装置であって、筐体と、保持部と、開口部と、温度調整部とを備える。保持部は、前記検査カートリッジを保持する。開口部は、前記筐体に設けられ、試料容器が挿入される。温度調整部は、前記開口部に挿入された前記試料容器内の試料の温度を調整する。
【選択図】
図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を収容する検査カートリッジを用いて検査を行う検体検査装置であって、
筐体と、
前記検査カートリッジを保持する保持部と、
前記保持部に保持された前記検査カートリッジ内の試料の温度を調整する温度調整部と、
を備える、検体検査装置。
【請求項2】
前記温度調整部は、前記試料の種別に応じて温度を変更する、請求項1に記載の検体検査装置。
【請求項3】
前記温度調整部は、前記試料の温度を45℃以下に調整する、請求項2に記載の検体検査装置。
【請求項4】
前記検査カートリッジに付された識別情報を取得する取得部をさらに備え、
前記温度調整部は、前記識別情報に基づいて、前記検査カートリッジ内の試料の温度を調整する、請求項1~3のいずれか1つに記載の検体検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、検体検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検者から採取した検体に含まれる対象物質について、抗原抗体反応を利用して分析する検体検査装置が知られている。このような検体検査装置は、例えば、対象物質(抗原)と特異的に結合する抗体が固定された磁性微粒子と、対象物質と特異的に結合する抗体が固定された光導波路と、磁場を発生させる磁場印加部とを有し、抗原抗体反応によって対象物質を光導波路表面に結合させ、対象物質が結合した後の光導波路を介して受光した光の光量に基づいて測定を行う。
【0003】
図10は、検体検査装置の一例を説明するための図である。
図10に示すように、検体検査装置20は、光導波路型センサチップ200と、光源210と、受光素子211と、第1の磁場印加部220と、第2の磁場印加部221と、制御回路230が備えられている。光導波路型センサチップ200の一部の表面には、第1の抗体201が固定されている。また、測定対象となる試料203は、被検者から採取した検体に含まれる抗原204と、第2の抗体205が固定された磁性微粒子206を含む液体からなり、試料滴下口207から滴下される。なお、光導波路型センサチップ200は、検査カートリッジ208に固定保持されている。
【0004】
試料203の中で、抗原204は第2の抗体205と抗原抗体反応する。そして、抗原204と第1の抗体201とを抗原抗体反応させるため、制御回路230は、第2の磁場印加部221で磁場を印加させ、第2の磁場印加部方向の磁力を発生させる。これにより、磁性微粒子206は第2の抗体205と抗原204ごと第1の抗体201に引き寄せられる。その結果、抗原204と第1の抗体201との抗原抗体反応を促進させることができる。なお、抗原抗体反応時は、制御回路230は、第2の磁場印加部221による磁場の印加を停止させておく。次に、制御回路230は、抗原抗体反応しなかった磁性微粒子206を第1の抗体201付近から引き離すため、第1の磁場印加部220で磁場を印加させ、第1の磁場印加部方向の磁力を発生させる。これにより、第1の抗体201と、抗原204を介して第2の抗体205が結合している磁性微粒子206のみが光導波路209近傍に残り、第1の抗体201と、抗原204を介して第2の抗体205が結合していない磁性微粒子206が光導波路209近傍から引き離される。
【0005】
光源210から発せられた光は、光導波路型センサチップ200内を伝搬し、受光素子211に受光される。受光素子211は、光導波路型センサチップ200内を伝搬した光の光量を測定する。光導波路上の第1の抗体201付近のエバネッセント光は、第1の抗体201と、抗原204を介して第2の抗体205が結合している磁性微粒子206が光導波路209近傍に残っていると、光の吸収もしくは散乱効率が高まるので、受光素子211による受光光量が低下する。検体検査装置は、この特性を用いて抗原抗体反応の有無を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-118055号公報
【特許文献2】特開2018-9884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、検査効率を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る検体検査装置は、試料を収容する検査カートリッジを用いて検査を行う検体検査装置であって、筐体と、保持部と、開口部と、温度調整部とを備える。保持部は、前記検査カートリッジを保持する。開口部は、前記筐体に設けられ、試料容器が挿入される。温度調整部は、前記開口部に挿入された前記試料容器内の試料の温度を調整する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】
図1Aは、第1の実施形態に係る開口部及び温度調整部の一例を示す図である。
【
図1B】
図1Bは、第1の実施形態に係る開口部及び温度調整部の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る検査者による検査手順を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る検査者による検査手順を示すフローチャートである。
【
図4A】
図4Aは、第1の実施形態に係る検体検査装置の一例を示す模式図である。
【
図4B】
図4Bは、第1の実施形態に係る検体検査装置の一例を示す模式図である。
【
図4C】
図4Cは、第1の実施形態に係る検体検査装置の一例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る検体検査装置の内部構成の一例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、その他の実施形態に係るホルダの一例を示す模式図である。
【
図7】
図7は、その他の実施形態に係る検体検査装置の一例を示す模式図である。
【
図8】
図8は、その他の実施形態に係る開口部及び温度調整部の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、その他の実施形態に係る検体検査装置の内部構成の一例を示す模式図である。
【
図10】
図10は、検体検査装置の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、検体検査装置の実施形態について詳細に説明する。また、本願に係る検体検査装置は、以下に示す実施形態によって限定されるものではない。また、実施形態は、内容に矛盾が生じない範囲で他の実施形態や従来技術との組み合わせが可能である。また、以下の説明において、同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する。
【0011】
(第1の実施形態)
本実施形態に係る検体検査装置は、試料を収容する検査カートリッジを用いて検査を行う検体検査装置であり、検査効率を向上させる。具体的には、本実施形態に係る検体検査装置は、試料の温度を調整することにより、抗原抗体反応の効率を高め、検出感度の向上ならびに検査時間の短縮を図ることで、検査効率を向上させる。
【0012】
上述したように、検体検査装置は、例えば、対象物質(抗原)と特異的に結合する抗体を用いた抗原抗体反応によって対象物質を光導波路表面に結合させ、抗原が結合した後の光導波路を介して受光した光の光量に基づいて検査を行う。抗原抗体反応は、温度によって反応効率が異なり、例えば、タンパク質の場合、体温相当である37℃から42℃程度での反応効率が高いとされている。そこで、本願では、検査の過程において抗原抗体反応を促進させるように、温度調整を行う。
【0013】
ここで、本実施形態に係る検体検査装置においては、抗原と磁性微粒子に固定された抗体との抗原抗体反応、及び、抗原と検査カートリッジ(光導波路型センサチップ)に固定された抗体との抗原抗体反応について、温度調整を行うことができる。具体的には、検体検査装置は、抗原抗体反応前に検体及び試薬の温度を調整することで、上記した抗原抗体反応を促進させる。また、検体検査装置は、抗原抗体反応中に検体及び試薬の温度を調整することで、上記した抗原抗体反応を促進させる。以下、これらについて説明する。
【0014】
まず、抗原抗体反応前に検体及び試薬の温度を調整することで抗原抗体反応を促進させる場合について説明する。かかる場合には、第1の実施形態に係る検体検査装置は、筐体と、検査カートリッジを筐体内部に保持する保持部と、筐体に設けられ、試料容器が挿入される開口部と、開口部に挿入された試料容器内の試料の温度を調整する温度調整部とを備える。
【0015】
筐体は、検体検査装置の外装であり、検査カートリッジを保持する保持部などの種々の機器類を収容する。保持部は、例えば、マウントであり、筐体内で検査カートリッジを保持する。開口部は、検査の対象物質(抗原)と試薬とを混合する試料容器が挿入され、挿入された試薬容器を保持する。温度調整部は、開口部に挿入された試料容器内の試料(抗原及び試薬)の温度を調整する。
【0016】
図1A及び
図1Bは、第1の実施形態に係る開口部及び温度調整部の一例を示す図である。例えば、本実施形態に係る開口部は、試料が収容されたボトル1が挿入されるホルダ2である。検査カートリッジの試料滴下口に滴下される試料は、ボトル1内に収められている。検体検査装置を用いた検査を行うにあたり、検査者は、まず、被検者から検体を採取し、採取した検体を試薬と混合することで試料を調製する。例えば、検査者は、被検者から採取した検体を、検査用の試薬が収容されたボトル1に入れて撹拌することで、検体と試薬とを混合させる。例えば、インフルエンザウイルスを測定対象とする場合、界面活性剤などからなる試薬によってインフルエンザウイルスの膜タンパクを壊し、試薬内に核タンパクを溶出させる。この場合、上述した抗原は、この核タンパクに相当する。
【0017】
本実施形態に係る検体検査装置では、
図1Aに示すように、ホルダ2の内部に第1の温度調整部3が設けられ、ボトル1がホルダ2に収納された際に、ボトル1内の検体及び試薬の温度を調整する。例えば、検査者は、被検者から採取した検体を、試薬が収容されたボトル1に入れて検体と試薬とを混合させ、ボトル1をホルダ2に収納する。
【0018】
ここで、ホルダ2は、試料をボトル1から検査カートリッジに滴下させるためのボトル1の滴下口が上向きとなるように、ボトル1が挿入される。例えば、ホルダ2は、
図1Aに示すように、ボトル1のノズルの先端が上向きになるように挿入される。これにより、滴下用のノズルから試料がこぼれることを抑止することができる。
【0019】
第1の温度調整部3は、試料の種別に応じて温度を変更する。具体的には、第1の温度調整部3は、抗原の種別に応じて設定された温度に調整する。例えば、抗原がタンパク質の場合、第1の温度調整部3は、試料の温度を45℃以下に調整する。また、第1の温度調整部3は、温度が設定温度となるように出力を調整する。例えば、第1の温度調整部3は、温度センサを有し、温度センサによって取得される温度が設定温度となるように、出力を調整する。
【0020】
第1の温度調整部3は、ボトル1と第1の温度調整部3とを接触または近接させる抵抗加熱(ジュール熱)や誘導加熱(電磁誘導)、或いは、ボトル1と第1の温度調整部3とを非接触とする誘電加熱や赤外線加熱によって実現することができる。例えば、抵抗加熱の場合、第1の温度調整部3は導線で形成され、この導線の抵抗に電流が流れることで発熱し、ボトル1を介して検体および試薬を温める。
【0021】
また、例えば、誘導加熱の場合、ボトル1は、鉄鋼やステンレス鋼、銅などの金属や、炭素素材、あるいはそれらを含有する材料によって形成される。第1の温度調整部3は、コイルを有し、このコイルに交流を流すことにより、ボトル1の材質で交番磁界が発生して渦電流が発生し、検体および試薬を温める。
【0022】
また、例えば、誘電加熱は、いわゆるマイクロ波を意味する。第1の温度調整部3は、高周波電圧を印加することで、検体および試薬の分子の向きを一斉に揃え、電圧の向きを変えて分子の双極子を反転し、分子同士を接触、摩擦熱を発生させて検体および試薬を温める。
【0023】
また、例えば、赤外線加熱はハロゲンヒータやカーボンヒータを適用するものであり、第1の温度調整部3は、赤外線を検体および試薬に照射して赤外線のエネルギーにより分子を振動させることで、照射した赤外線を熱エネルギーに変換して検体および試薬を温める。
【0024】
なお、上述した例はあくまでも一例であり、第1の温度調整部3は、上述した例に限定されるものではない。例えば、第1の温度調整部3は、上述した例の他、ペルチェ素子などの熱電効果を利用して検体および試薬を温めることも可能である。
【0025】
上述したように、第1の温度調整部3は、抵抗加熱や誘導加熱、誘電加熱、赤外線加熱、熱電効果などによって検体および試薬を含む試料の温度を調整することができる。ここで、ボトル1と第1の温度調整部3とを接触または近接させる抵抗加熱や誘導加熱、誘電加熱、熱電効果を利用した場合、第1の温度調整部3は、検体および試薬の温度調整を短時間で行うことができる。また、ボトル1と第1の温度調整部3とを非接触とする誘電加熱、赤外線加熱を利用した場合、ボトル1と第1の温度調整部3との間に十分な隙間を設けることができ、ボトル1の形状やサイズが変わっても、そのまま適用することができる。例えば、測定対象ごとにボトル1の形状や大きさが変わる場合に好適である。なお、第1の温度調整部は、試料の温度を直接調整しても、あるいは容器(ボトル1)の温度を調整することで結果として試料の温度を調整してもよい。容器の温度を調整することを試料の温度を調整することとみなしてもよい。
【0026】
第1の温度調整部3は、
図1Aに示すように、ボトル1がホルダ2に収納されているか否かに関わらず温度を調整するように構成することもできるが、ボトル1がホルダ2に収納されている際に、温度を調整するように構成することもできる。かかる場合には、検体検査装置は、試料容器の開口部への挿入を検出する検出部と、検出部による検出結果に基づいて、温度調整部による温度の調整を制御する制御部とをさらに備える。例えば、
図1Bに示すように、ホルダ2に対して、検出部の一例であるボトル検出部4と、制御部の一例である温度制御回路5とが設けられる。
【0027】
ボトル検出部4は、ボトル1がホルダ2に格納されたことを検知して、検知信号を温度制御回路5に出力する。具体的には、ボトル検出部4は、ボトル1がホルダ2に格納されている間、検知信号を温度制御回路5に出力する。ここで、ボトル検出部4は、機械式センサのリミットセンサや、光学式センサなどを用いて実現することができる。なお、ボトル1の収納を検知することができればセンサの種類はこれに限定されない。
【0028】
温度制御回路5は、ボトル検出部4の出力に応じて、第1の温度調整部3を制御する。具体的には、温度制御回路5は、ボトル1がホルダ2に格納されたことを示す検知信号をボトル検出部4から受信すると、第1の温度調整部3による温度調整を開始させる。また、温度制御回路5は、ボトル検出部4から出力を受信している間、第1の温度調整部3による温度調整を継続させる。そして、温度制御回路5は、ボトル検出部4からの検出信号が受信されなくなった場合に、第1の温度調整部3による温度調整を停止させる。
【0029】
このように、ボトル1がホルダ2に格納された状態の時のみで温度調整を行うように制御することで、ボトル1がホルダ2に未格納の時には第1の温度調整部3をOFFにすることができるため、電力消費を抑えることができる。また、第1の温度調整部3が誘導加熱や誘電加熱の場合は特に有効である。一方、
図1Aのように常時第1の温度調整部をONにして温度調整することで、複雑な制御を省略することも可能であり、抵抗加熱や赤外線加熱の場合は特に有効である。
【0030】
図1A及び
図1Bに示すホルダ2は、筐体に設けられる。具体的には、ホルダ2は、筐体の上面、又は、筐体内部に設けられる。なお、この点については、後に詳述する。
【0031】
次に、温度調整を行う場合の検査者の手順の詳細について、
図2及び
図3を用いて説明する。
図2及び
図3は、第1の実施形態に係る検査者による検査手順を示すフローチャートである。
図2に示すように、検査者は、まず、ボトル1と検査カートリッジを袋からそれぞれ取り出し(ステップS21)、被検者から検体を採取する(ステップS22)。例えば、検査者は、綿棒で鼻ぬぐい液などを採取する。
【0032】
そして、検査者は、採取した検体をボトル1内に入れて、ボトル1内の試薬と混合させ(ステップS23)、ボトル1にノズル付キャップを装着する(ステップS24)。その後、検査者は、ノズル付キャップを装着したボトル1をホルダ2に格納する(ステップS25)。ここで、本実施形態に係る検体検査装置は、ホルダ2内に上述した第1の温度調整部3を備えており、ボトル1内に入れられた抗原の種別に応じて、試料の温度を調整する。
【0033】
ここで、ボトル1をホルダ2に収納している時間は、予め設定することができる。例えば、試料が目的の温度に達するまでの時間から、ボトル1をホルダ2に収納している時間が設定される。
【0034】
一方、検査者は、ステップS21にて袋から取り出した検査カートリッジを、筐体内の保持部(マウント)に装着させる(ステップS26)。そして、検査者は、ステップS25にて温度を調整した試料を検査カートリッジに滴下して(ステップS27)、ボトル1を廃棄する。なお、検査カートリッジに滴下される試料中の磁性微粒子とそれに固定された抗体は、予めボトル1に装着するキャップ内に内包されていても良いし、或いは、試薬の中に含有されていても良い。
【0035】
その後、検査者は、検体検査装置を操作して、検査カートリッジ内の抗原抗体反応を、光導波路型センサチップを用いて測定し、測定対象の有無すなわち陽性、陰性を判定して、出力させる(ステップS28)。そして、検査者は、測定が完了すると、検査カートリッジを回収して廃棄し(ステップS29)、検査を終了する。
【0036】
なお、本実施形態に係る検体検査装置の運用方法として、まず始めにボトル1をホルダ2に収納して温度を調整しておき、その後、被検者から採取した検体を、試薬が収納されたボトル1に入れて検体と試薬とを混合させ、滴下用ノズルを装着して検査カートリッジに試料を滴下する方法もある。
【0037】
かかる場合には、
図3に示すように、検査者は、まず、ボトル1と検査カートリッジを袋からそれぞれ取り出し(ステップS31)、ボトル1をホルダ2に収納する(ステップS32)。ここで、ホルダ2内に配置された第1の温度調整部3は、ボトル1内の試薬の温度を調整する。
【0038】
そして、検査者は、被検者から鼻ぬぐい液などの検体を採取して(ステップS33)、採取した検体をボトル1内に入れて、ボトル1内の試薬と混合させる(ステップS34)。その後、検査者は、ボトル1にノズル付キャップを装着する(ステップS35)。なお、
図3におけるステップS36~ステップS39は、
図2におけるステップS26~ステップS29と同様の手順であり、詳細な説明は省略する。
【0039】
上述したように、本実施形態に係る検体検査装置を用いることで、ステップS25の工程で検体と試薬を温めることができる。或いは、ステップS32の工程で試薬を温めることができる。その結果、ステップS28、或いは、ステップS38の工程における抗原抗体反応を促進させることができ、検体検査装置の検出感度が向上し、検査時間を短縮させることも可能となる。また、検査用の試薬の保存温度(例えば冷蔵庫だと5℃程度、室温保管だと20℃程度)によらず、検査時の試薬温度を一定に保つことができるため、正確な検査結果を安定して得ることが可能になる。
【0040】
また従来は、ステップS24の工程の後、片手でボトル1を持ちながらステップS26の工程を行うことがあったが、ステップS25(或いは、ステップS32)の工程を追加することにより、安定したホルダ2にボトル1を収納させることができ、検査者にとって使いやすさが向上する。さらに、検体と試薬をこぼすリスクが軽減され、ステップS22の工程やり直し(検体の再採取)を減らすことができる。
【0041】
上述したように、本実施形態に係る検体検査装置は、ボトル1内の試料の温度調整を行う第1の温度調整部3が設けられたホルダ2を備える。このホルダ2は、検体検査装置の外部から直接アクセス可能な筐体の一部に設けることができる。
図4A~
図4Cは、第1の実施形態に係る検体検査装置10の一例を示す模式図である。
【0042】
図4Aに示すように、検体検査装置10は、筐体10aと、入力インターフェース10b、表示部10cとを備える。そして、検体検査装置10は、例えば、
図4Aに示すように、筐体10aの上面に、第1の温度調整部3が設けられたホルダ2が設けられる。これにより、外部から容易にアクセスできる位置で検査前の試料ボトルを温められるとともに、検査開始までに試料の温度が下がる程度を低減することができる。さらに、次に検査する被検者のボトル1が筐体10aに載置されていることから、被検者から採取した検体が入ったボトル1を、他の被検者のものと取り違えるリスクを軽減できる。また、
図4Aに占めすように、ボトル1にラベルを設け、そのラベルに被検者の名前や被検者に紐付けられた番号を記すことで、ボトル1を取り違えるリスクをより軽減することができる。
【0043】
また、ホルダ2は、ボトル1の試料滴下口であるノズルの先端が上向きで格納されるように、筐体10aに設けられることで、試料がこぼれることを防ぐことができる。また、さらに、ホルダ2は、筐体10aから着脱可能に設けるようにすることも可能である。こうすることで、ホルダ2内部に検体などがこぼれた場合でも、ホルダ2を筐体10aから外して水洗いすることができ、窪んだホルダ2の開口部の衛生状態を保つことができる。
【0044】
入力インターフェース10bは、検体の選択や、数値の入力、モードの切り替え等を行うための操作を受け付ける。例えば、入力インターフェース10bは、設定温度の入力操作を受け付ける。入力インターフェース10bは、スイッチ、ボタン、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチモニタ、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。入力インターフェース10bは、図示しない制御回路に接続されており、操作者から受け付けた入力操作を電気信号へ変換し制御回路へと出力する。
【0045】
表示部10cは、検査者が入力インターフェース10bを用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、検体検査装置10における表示情報等を表示したりする。また、表示部10cは、検体検査装置10の処理状況や処理結果を操作者に通知するために、各種のメッセージや表示情報を表示する。また、表示部10cは、スピーカーを有し、音声を出力することもできる。なお、表示部10cは、通知部の一例である。
【0046】
例えば、表示部10cは、試料をボトル1から検査カートリッジに滴下可能であることを示す情報を通知する。一例を挙げると、表示部10cは、第1の温度調整部3による温度調整時間を表示する。かかる場合には、表示部10cによる表示を制御する制御回路(不図示)が、ボトル1がホルダ2に格納されたことを示す検知信号をボトル検出部4から受信する。そして、制御回路は、検知信号を受信してからの経過時間、或いは、検知信号の受信をトリガとして所定の時間の減算タイマーを表示部10cに表示させる。これにより、検査者は、試料が十分に温度調整されているか否かを判断することができ、より確実に抗原抗体反応を促進させることができる。
【0047】
なお、表示部10cは、温度調整時間の表示とともに、あるいは表示のかわりに、試料ボトルの温度を取得して、その温度を表示させることもできる。かかる場合には、表示部10cによる表示を制御する制御回路が、第1の温度調整部3が有する温度センサによって取得された温度情報を取得する。そして、制御回路は、取得した温度情報を表示部10cに表示させる。
【0048】
ここで、検体検査装置10は、検査カートリッジを着脱、交換するためのローディング部が可動部として存在する。すなわち、検体検査装置10は、筐体内部に設けられた光源や受光素子などの近傍にある測定位置に検査カートリッジを配置するためのローディング部を備える。例えば、ローディング部は、
図4Bに示すトレー10dである。トレー10dは、検査カートリッジを保持するマウントを含み、検査者の操作に応じて、筐体10aに収納されたり、筐体10aから引き出されたりする。例えば、検査者は、ホルダ2にボトル1を格納して所定の時間が経過すると、
図4Bの右図に示すようにトレー10dを引き出し、マウントに保持された検査カートリッジの滴下口に試料を滴下させ、トレー10dを筐体10a内に収納する。
【0049】
例えば、
図4Bに示すローディング部を有する検体検査装置10の場合に、ホルダ2を筐体10aの上面に設けることで、ローディング部が可動した場合でもホルダ2は位置が固定された状態を維持することができ、ローディング部の可動に伴う試料漏れを軽減することができるとともに、筐体10aの衛生状態を保つことができる。
【0050】
上述した例では、ホルダ2を筐体10aの上面に設ける場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、ホルダ2が筐体10aの内部に設けられる場合でもよい。例えば、検体検査装置10が、
図4Cに示すように、上部筐体10eと、下部筐体10fとを含んで構成される場合に、ホルダ2は、筐体の内部に設けられる。
【0051】
図4Cに示す検体検査装置10は、上部筐体10eが、下部筐体10fに対して相対移動するように構成されている。かかる場合には、例えば、下部筐体10fにマウントが設けられており、検査者は、上部筐体10eを下部筐体10fに対してスライドさせることで、下部筐体10fに設けられたマウントを露出させ、露出させたマウントに検査カートリッジを装着させる。すなわち、
図4Cにおけるローディング部は、上部筐体10e及び下部筐体10fであり、下部筐体10fに対する上部筐体10eの位置を変えることで、検査カートリッジの計測位置への配置を可能にする。
【0052】
このような検体検査装置10の場合、ホルダ2は、例えば、
図4Cに示すように、下部筐体10fの上面に設けられる。すなわち、ホルダ2は、上部筐体10eを下部筐体10fに対してスライドさせることで露出される。操作者は、上部筐体10eを下部筐体10fに対してスライドさせることでマウント及びホルダ2を露出させ、検査カートリッジをマウントに装着するとともに、ボトル1をホルダ2に格納する。そして、検査者は、ホルダ2にボトル1を格納して所定の時間が経過すると、マウントに保持された検査カートリッジの滴下口に試料を滴下させ、上部筐体10eを下部筐体10fに対して反対方向にスライドさせ、測定を開始する。このように、ホルダ2を下部筐体10fに設けることにより、ボトル1に収容された試料がこぼれる可能性を低減することができる。
【0053】
次に、抗原抗体反応中に検体及び試薬の温度を調整することで抗原抗体反応を促進させる場合について説明する。かかる場合には、第1の実施形態に係る検体検査装置は、第1の温度調整部3に加えて、マウントに保持された検査カートリッジ内の試料の温度を調整する第2の温度調整部を備える。
【0054】
図5は、第1の実施形態に係る検体検査装置10の内部構成の一例を示す模式図である。
図5に示すように、検体検査装置10は、光源110と、受光素子111と、第1の磁場印加部120と、第2の磁場印加部121と、制御回路130と、保持部140aを有するマウント140と、第2の温度調整部150とを有する。そして、検体検査装置10は、マウント140に保持された検査カートリッジ108を対象として検査を行う。
【0055】
検査カートリッジ108は、試料が入る反応室が設けられており、ホルダ2に収納されたボトル1内で温度調整が行われた試料が、試料滴下口から滴下される。なお、光導波路センサは、検査カートリッジ108に固定保持されている。
【0056】
光源110は、検査カートリッジ108に向けて光を出射する。光源110は、例えば、発光ダイオード(LED)や、レーザダイオード(LD)である。受光素子111は、検査カートリッジ108からの光を受光し、光強度を測定する。受光素子111は、例えば、フォトダイオードである。
【0057】
第1の磁場印加部120は、磁場を生成し、生成した磁場を検査カートリッジ108内のセンシングエリアに印加することで、センシングエリア内の磁性微粒子の位置を変化させる。例えば、第1の磁場印加部120は、検査カートリッジ108に磁場を印加することで、第1の磁場印加部120側の方向(第1の方向)に磁性微粒子を移動させる。
【0058】
第2の磁場印加部121は、磁場を生成し、生成した磁場を検査カートリッジ108内のセンシングエリアに印加することで、センシングエリア内の磁性微粒子の位置を変化させる。例えば、第2の磁場印加部121は、検査カートリッジ108に磁場を印加することで、第2の磁場印加部121側の方向(第2の方向)に磁性微粒子を移動させる。
【0059】
マウント140は、第1の磁場印加部120と第2の磁場印加部121との間に配置され、検査カートリッジ108を保持する。具体的には、マウント140は、検査カートリッジを固定保持するための保持部140aを有し、保持部140aに装着された検査カートリッジ108を保持する。
【0060】
制御回路130は、第1の磁場印加部120及び第2の磁場印加部121のそれぞれにおいて磁場を生成するタイミング及び磁場の生成を停止するタイミングを制御する。具体的には、制御回路130は、マウント140に検査カートリッジ108が装着された状態で、各磁場印加部のコイル(不図示)に流す電流を制御することで、第1の磁場印加部120及び第2の磁場印加部121による磁場の印加の開始及び停止を制御する。また、制御回路130は、入力インターフェース10bによって受け付けられた種々の要求に応じた制御を行う。
【0061】
第2の温度調整部150は、検査カートリッジ108内に滴下された試料の温度を調整する。例えば、第2の温度調整部150は、
図5に示すように、マウント140上に搭載される。ここで、第2の温度調整部150は、第1の温度調整部3と同様、抵抗加熱と、誘導加熱と、誘電加熱と、赤外線加熱と、熱電効果の内、少なくともいずれかによって実現することができる。また、第2の温度調整部150は、温度が設定温度となるように出力を調整することもできる。例えば、第2の温度調整部150は、温度センサを有し、温度センサによって取得される温度が設定温度となるように、出力を調整する。なお、第2の温度調整部は、試料の温度を直接調整しても、あるいは容器(検査カートリッジ108)の温度を調整することで結果として試料の温度を調整してもよい。容器の温度を調整することを試料の温度を調整することとみなしてもよい。
【0062】
なお、図示していないが、マウント140上に検査カートリッジ検出部を設け、検査カートリッジ検出部による検出信号に応じて、第2の温度調整部150の温度調整をON、OFFしてもよい。かかる場合には、検査カートリッジ検出部が、マウント140上に検査カートリッジ108が装着されたことを検出して、温度制御回路5に検出信号を出力する。温度制御回路5は、第1の温度調整部3に対する制御と同様に、検査カートリッジ検出部からの検出信号の受信に応じて、第2の温度調整部150のON、OFFを制御する。
【0063】
これにより、検査カートリッジ108に滴下される前にボトル内で温度調整された試料が、検査カートリッジ108内でも第2の温度調整部150によって、例えば約40℃といった所定の温度を保つことができる。すなわち、
図2のフロー図におけるS28の工程でも所定の温度を保つことができるため、さらに抗原抗体反応を促進することができる。また、第2の温度調整部150は、検査カートリッジ108に滴下された試料を概ね一定温度に保てれば良く、必ずしも試料温度を測定する必要はない。そのため、より簡単な制御で試料温度を調整することもできる。さらに、第2の温度調整部150の温度を約40℃にできるため、使用者への安全性も向上する。
【0064】
以下、検体検査装置10における測定の一例について説明する。検体検査装置10では、被検者から採取した検体と磁性微粒子を含む試料が検査カートリッジ108の試料滴下口から反応室に滴下される。ここで、試料では、検体に含まれる抗原と磁性微粒子に固定された抗体とが抗原抗体反応によって結合する。
【0065】
そして、制御回路130は、検査カートリッジ108に対して第2の磁場印加部121から磁場を印加するように制御する。これにより、磁性微粒子が、光導波路センサ側に移動する。すなわち、磁性微粒子に固定された抗体と抗原抗体反応で結合した抗原を光導波路センサ側に移動させ、抗原と光導波路センサに固定された抗体との抗原抗体反応を促進することができる。なお、抗原と光導波路センサに固定された抗体との抗原抗体反応中、制御回路130は、第2の磁場印加部121による磁場の印加を停止する。
【0066】
本実施形態に係る検体検査装置10においては、第1の温度調整部3によってボトル1内で試料が温度調整されていることから、検査カートリッジ108に滴下された試料の温度が適温となっており、上記した抗原抗体反応を促進させることができる。さらに、本実施形態に係る検体検査装置10では、第2の温度調整部150によって検査カートリッジ108内の試料を温度調整することができるため、上記した抗原抗体反応をさらに促進させることができる。その結果、検体検査装置10は、検査時間を短縮することもできる。
【0067】
そして、抗原抗体反応が行われると、制御回路130は、検査カートリッジ108に対して第1の磁場印加部120から磁場を印加するように制御する。これにより、光導波路センサに固定された抗体と抗原を介して抗原抗体反応ができなかったためセンサと結合していない磁性微粒子を光導波路センサ近傍から引き離し、検査精度を向上させることができる。なお、第1の磁場印加部120から印加される磁場は、光導波路センサに固定された抗体と抗原抗体反応によって結合している磁性微粒子を引き離さない程度の強度に制御される。
【0068】
その後、光源110が検査カートリッジ108に対して光を出射する。光源110から出射された光は、光導波路センサの内部を反射しながら伝播する。ここで、光導波路センサの内部を反射しながら伝播する光により光導波路センサにおいてエバネッセント(evanescent)光などの近接場光が生じる。近接場光は、光が光導波路センサと反応室との界面において全反射する際、その界面に発生する光である。近接場光は、抗原抗体反応によって光導波路センサの最表面に結合している磁性微粒子によって吸収、散乱される。ここで、近接場光の吸収及び散乱効率は、磁性微粒子の量に応じて高まる。
【0069】
したがって、受光素子111によって測定された光強度と基準となる光強度とに基づいて光強度の低下率を算出することで、光導波路センサの近傍にある磁性微粒子の量を求めることができる。そして、求められた磁性微粒子の量に基づいて、検体中の抗原の量や濃度が算出される。
【0070】
なお、第2の温度調整部150についても、第1の温度調整部3と同様に、抗原の種別に応じて、設定温度を変更することができる。例えば、第2の温度調整部150は、抗原がタンパク質の場合、試料の温度を45℃以下に調整する。第1の温度調整部3及び第2の温度調整部150における設定温度の変更には、例えば、入力インターフェース10bが用いられる。例えば、検査者は、入力インターフェース10bを介して、表示部10cを見ながら設定温度を入力、あるいは検体を選択する。これにより、制御回路130が第1の温度調整部3と第2の温度調整部150の少なくともいずれか一方の設定温度を変更する。
【0071】
或いは、第1の温度調整部3及び第2の温度調整部150における設定温度の変更には、例えば、識別情報(QRコード(登録商標)や、文字など)が利用される。かかる場合には、制御回路130が、ボトル1に付された識別情報を取得する。そして、制御回路130の制御のもと、第1の温度調整部3及び第2の温度調整部150が、識別情報に基づいてボトル1内の試料の温度を調整する。例えば、ボトル1に文字やラベル(QRコード(登録商標))、RF-ID(radio frequency identifier)などの識別情報が貼付され、それらの識別情報に基づいて、第1の温度調整部3及び第2の温度調整部150が、温度を調整する。
【0072】
ここで、ボトル1に文字やラベルが貼付される場合、例えば、カメラによってそれらが読み取られ、読み取られた識別情報を検体検査装置10が取得する。すなわち、検体検査装置10にカメラが接続され、制御回路130が、カメラによって読み取られた識別情報を取得し、取得した識別情報に応じた温度となるように、第1の温度調整部3と第2の温度調整部150の少なくともいずれか一方の設定温度を変更する。
【0073】
また、ボトル1にRF-IDが貼付される場合、例えば、リーダーによってIDが読み取られ、読み取られた識別情報を検体検査装置10が取得する。すなわち、検体検査装置10がリーダーを有し、制御回路130が、リーダーによって読み取られた識別情報を取得し、取得した識別情報に応じた温度となるように、第1の温度調整部3と第2の温度調整部150の少なくともいずれか一方の設定温度を変更する。
【0074】
ここで、文字やラベル、RF-ID等の識別情報は、例えば、検査対象(例えば、対象となるタンパク質等)の情報が含まれる。制御回路130は、取得した識別情報に含まれる検査対象に応じて、第1の温度調整部3と第2の温度調整部150の少なくともいずれか一方の設定温度を変更する。なお、設定温度は、検査対象ごとに予め設定され、検体検査装置10に保持される。
【0075】
なお、識別情報が貼付される位置はボトル1に限られない。例えば、検査カートリッジ108に検査対象の情報を識別表示し、その識別表示をカメラで撮影して、撮影された検査対象に応じて、制御回路130が第1の温度調整部3と第2の温度調整部150の少なくともいずれか一方の設定温度を変更する。
【0076】
上述したように、検査対象(抗原)の種別に応じて、設定温度を変更することで、検体の抗原抗体反応を促進するために好適な温度に調整することができ、さらに検体検査装置10の検出感度が向上し、検査時間を短縮させることも可能となる。
【0077】
また、上述した識別情報は、検査対象の情報だけではなく、被検者の情報を含めることも可能である。例えば、被検者を識別するためのラベルがボトル1に貼付される。かかる場合には、制御回路130は、カメラによって読み取られた識別情報を取得し、取得した識別情報に含まれる被検者の情報と、検査結果の情報とを紐付ける。これにより、検体検査装置10は、検体の取り違えを防止することを可能にする。
【0078】
上述したように、第1の実施形態によれば、マウント140は、検査カートリッジ108を筐体内部に保持する。ホルダ2は、筐体に設けられ、ボトル1が挿入される。第1の温度調整部は、ホルダ2に挿入されたボトル1内の試料の温度を調整する。したがって、第1の実施形態に係る検体検査装置10は、検体及び試薬を温度調整することができ、抗原抗体反応を促進させ、検査効率を向上させることを可能にする。
【0079】
また、第1の実施形態によれば、ホルダ2は、筐体10aの上面に設けられている。したがって、第1の実施形態に係る検体検査装置10は、温度調整を行うための別の機器を用いることなく、装置近傍で温度調整を行うことができ、効率よく温度調整を行うことを可能にする。
【0080】
また、第1の実施形態によれば、ホルダ2は、筐体内部に設けられている。したがって、第1の実施形態に係る検体検査装置10は、温度調整を行うための別の機器を用いることなく、装置近傍で温度調整を行うことができ、効率よく温度調整を行うことを可能にする。
【0081】
また、第1の実施形態によれば、ホルダ2は、試料をボトル1から検査カートリッジ108に滴下させるためのボトル1のノズルが上向きとなるように、ボトル1が挿入される。したがって、第1の実施形態に係る検体検査装置10は、試料がこぼれることを抑止して、検体の再採取などを行う手間を低減して、検査効率を向上させることを可能にする。
【0082】
また、第1の実施形態によれば、第1の温度調整部3及び第2の温度調整部150は、試料の種別に応じて温度を変更する。したがって、第1の実施形態に係る検体検査装置10は、検体の種別に応じて最適な温度で抗原抗体反応させることを可能にする。
【0083】
また、第1の実施形態によれば、第1の温度調整部3及び第2の温度調整部150は、試料の温度を45℃以下に調整する。したがって、第1の実施形態に係る検体検査装置10は、タンパク質を対象とした検査において、適切な温度で抗原抗体反応させることを可能にする。
【0084】
また、第1の実施形態によれば、ボトル検出部4は、ボトル1のホルダ2への挿入を検出する。温度制御回路5は、ボトル検出部4による検出結果に基づいて、第1の温度調整部3による温度の調整を制御する。したがって、第1の実施形態に係る検体検査装置10は、電力消費を抑えることを可能にする。
【0085】
また、第1の実施形態によれば、表示部10cは、試料をボトル1から検査カートリッジ108に滴下可能であることを示す情報を通知する。したがって、第1の実施形態に係る検体検査装置10は、温度調整が十分に行われているかどうかを判断することができ、より確実に抗原抗体反応を促進させることを可能にする。
【0086】
また、第1の実施形態によれば、第2の温度調整部150は、マウント140に保持された検査カートリッジ108内の試料の温度を調整する。したがって、第1の実施形態に係る検体検査装置10は、抗原抗体反応中の試料について温度調整することができ、検査効率をさらに向上させることを可能にする。
【0087】
また、第1の実施形態によれば、制御回路130は、ボトル1に付された識別情報を取得する。第1の温度調整部3及び第2の温度調整部150は、識別情報に基づいて、試料の温度を調整する。したがって、第1の実施形態に係る検体検査装置10は、検体の抗原抗体反応を促進するために好適な温度に調整することができ、検査効率をさらに向上させることを可能にする。
【0088】
(その他の実施形態)
さて、これまで第1の実施形態について説明したが、上述した第1の実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0089】
上述した実施形態では、ホルダ2を1つのみ設ける場合を例に挙げて説明したが、実施形態はこれに限定されるものではなく、複数のホルダ2を設ける場合でもよい。これによって、インフルエンザの流行時のように検査対象者が増えた時に検査の順番に従って並べておくことができ、使用者にとって使いやすさが向上する。また、複数のホルダ2を設ける場合に、表示部10cは、各ボトル1について、ホルダ2に格納されてからの経過時間、或いは、減算タイマーをそれぞれ表示させることができる。これにより、検査の順番を守ることができ、被検者の取り違いのリスクを軽減することができる。
【0090】
また、例えば、1つのホルダ2が複数のボトル1を挿入可能に設けられてもよい。
図6は、その他の実施形態に係るホルダ2の一例を示す模式図である。例えば、ホルダ2は、
図6に示すように、複数のボトル1が挿入可能に設けられる。ここで、ホルダ2は、挿入されたボトルを所定の方向(図では左方向)に搬送するボトル搬送部2aを設けることができる。ボトル搬送部2aは、複数のボトルを挿入順に配列させる。すなわち、検査者がボトル1を
図6に示すホルダ2に挿入すると、ボトル搬送部2aが、挿入されたボトルを図の左方向に搬送する。これにより、
図6に示すホルダ2に挿入されたボトル1は、挿入された順番に左から並ぶこととなる。
【0091】
したがって、検査者は、左に位置するボトル1から順に取り出すことで、検査の順番を守ることができる。さらに、
図6に示すホルダ2は、右側に、ボトルを挿入するための空間を提供することができる。また、ボトル搬送部2aによりボトルが自動的に搬送されるため、検査者は、ボトルを挿入する位置を厳密にしなくてもよい。ボトル搬送部2aは、例えば、モータ等によって駆動されるローラや、ベルトコンベヤなどによって実現することができる。
【0092】
また、上述した実施形態では、第1の温度調整部3及び第2の温度調整部150を備える検体検査装置10について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、どちらか一方の温度調整部を備える場合でもよい。すなわち、第1の温度調整部3のみを備え、抗原抗体反応前に検体及び試薬の温度を調整する検体検査装置10でもよく、第2の温度調整部150のみを備え、抗原抗体反応中の検体及び試薬の温度を調整する検体検査装置10でもよい。
【0093】
また、上述した実施形態では、開口部として、ボトル1を挿入可能な凹部を備えるホルダ2を一例に挙げて説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、筐体10aの上面にボトル1を挿入可能な凹部が形成される場合でもよい。かかる場合には、筐体10aの上面の凹部の内部に第1の温度調整部3が設けられる。
【0094】
上述した実施形態では、ホルダ2が筐体10aの上面に設けられ、検査カートリッジを着脱、交換するためのトレー10dを備える検体検査装置や、表示部10cなどを含む上部筐体10eが、下部筐体10fに対して相対移動する検体検査装置について説明した。しかしながら、実施形態はこれらに限定されるものではなく、その他、種々の形態の検体検査装置を実現することができる。
【0095】
図7は、その他の実施形態に係る検体検査装置10の一例を示す模式図である。例えば、その他の実施形態に係る検体検査装置10は、
図7に示すように、入力インターフェース10b及び表示部10cを備える筐体10aの上面にホルダ2が設けられ、入力インターフェース10b及び表示部10cから独立して、移動可能に設けられた上部筐体10eを備える。例えば、上部筐体10eは、
図7に示すように、入力インターフェース10b及び表示部10cの下部に挿入されるように移動することで、下部筐体10fに対して相対移動する。
【0096】
ここで、その他の実施形態に係る検体検査装置10は、筐体10aの上面に複数のホルダ2を設けることができる。例えば、検体検査装置10は、
図7に示すように、筐体10aの上面に3つ以上のホルダ2を備えることができる。
【0097】
また、上述した実施形態では、ボトル検出部がホルダ2の底部に設けられる場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、側面に設けられる場合でもよい。
図8は、その他の実施形態に係る開口部及び温度調整部の一例を示す図である。例えば、
図8に示すように、ホルダ2に対して、検出部の一例であるボトル検出部6と、制御部の一例である温度制御回路5とが設けられる。
【0098】
ここで、例えば、ボトル検出部6は、フォトリフレクタなどの光学式センサであり、ボトル1からの反射光に基づいてボトル1の有無を検出する。一例を挙げると、ボトル検出部6は、LEDとフォトトランジスタとを有するフォトリフレクタであり、LEDから光を出射して、反射物に当たって反射した反射光をフォトトランジスタが検出する。ここで、ボトル検出部6は、フォトトランジスタによって検出される反射光の量に基づいて、反射物(ボトル1)の有無を検出する。
【0099】
温度制御回路5は、ボトル検出部4の出力に応じて、第1の温度調整部3を制御する。具体的には、温度制御回路5は、ボトル1がホルダ2に格納されたことを示す検知信号をボトル検出部4から受信すると、第1の温度調整部3による温度調整を開始させる。また、温度制御回路5は、ボトル検出部4から出力を受信している間、第1の温度調整部3による温度調整を継続させる。そして、温度制御回路5は、ボトル検出部4からの検出信号が受信されなくなった場合に、第1の温度調整部3による温度調整を停止させる。
【0100】
このように、ボトル検出部として光学式センサを用いることで、ボトル1と接触することなく、ボトル1の有無を検出することができ、機械的な故障を回避することができる。
【0101】
なお、上述した例では、ボトル1がホルダ2に格納された場合に、温度調整を開始する場合について説明したが、常時温度調整を行っている場合でもよい。すなわち、検体検査装置10の電源がONにされると、温度制御回路5は、第1の温度調整部3による温度調整を開始し、ホルダ2に対するボトル1の格納の有無にかかわらず、温度調整を継続する。また、温度制御回路5は、第2の温度調整部150による温度調整も同様に、常時温度調整するように制御することができる。
【0102】
また、上述した実施形態では、試料をボトル1から検査カートリッジに滴下可能であることを示す情報として、温度調整時間(例えば、経過時間、減算タイマーなど)や、ボトル1の温度を表示させる場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、表示部10cは、試料をボトル1から検査カートリッジに滴下可能であることを示す情報として、その他、種々の情報を表示させることができる。
【0103】
例えば、表示部10cによる表示を制御する制御回路(不図示)は、ボトル1がホルダ2に格納されたことを示す検知信号を受信してから所定時間経過後に、「検査可能」等の情報を表示部10cに表示させる。また、例えば、制御回路は、第1の温度調整部3が有する温度センサによって取得されたボトル1(或いは、ボトル1内の試薬)の温度情報を取得して、温度が所定温度に達した場合に「検査可能」等の情報を表示部10cに表示させる。
【0104】
ここで、制御回路は、試料をボトル1から検査カートリッジに滴下不可であることを示す情報を表示部10cに表示させることもできる。例えば、制御回路は、ボトル1がホルダ2に格納されたことを示す検知信号を受信してから所定時間が経過する前にボトル1が取り出されたり、ボトル1(或いは、ボトル1内の試薬)の温度が所定温度に達する前にボトル1が取り出されたりした場合に、「まだ温まっていない」等の警告を表示部10cに表示させることができる。
【0105】
また、上述した実施形態で説明した温度調整部(第1の温度調整部3及び第2の温度調整部150)は、熱を発生させる熱発生部と、熱発生部によって発生された熱をボトル1や検査カートリッジに伝導させる熱伝導部とで構成される場合でもよい。
【0106】
図9は、その他の実施形態に係る検体検査装置の内部構成の一例を示す模式図である。例えば、第2の温度調整部150は、
図9に示すように、ヒータープレート150aと、ヒーター150bとから構成される。ヒータープレート150aは、熱電伝導率が高い材料(例えば、銅やアルミニウム等)によって形成され、ヒーター150bによって発生された熱を検査カートリッジに伝える。ヒーター150bは、上述した抵抗加熱、誘導加熱、誘電加熱、赤外線加熱、或いは、熱電効果などにより、熱を発生させる。
【0107】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、検査効率を向上させることができる。
【0108】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0109】
1 ボトル
2 ホルダ
3 第1の温度調整部
4 ボトル検出部
5 温度制御回路
10 検体検査装置
10a 筐体
10b 入力インターフェース
10c 表示部
140 マウント
150 第2の温度調整部