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  • 特開-電子レンジ用パウチ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116378
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】電子レンジ用パウチ
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
B65D81/34 U
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024097583
(22)【出願日】2024-06-17
(62)【分割の表示】P 2019201323の分割
【原出願日】2019-11-06
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100138254
【弁理士】
【氏名又は名称】澤井 容子
(72)【発明者】
【氏名】三浦 崇
(72)【発明者】
【氏名】本郷 勝弘
(72)【発明者】
【氏名】松永 史絵
(57)【要約】      (修正有)
【課題】優れた開封性が得られながら、加熱時に切り込み加工部が意図せず破断されることがない電子レンジ用パウチを提供する。
【解決手段】積層フィルムを熱接着することにより袋状に成形され、加熱時に収容部内の蒸気を自動的に逃がす蒸気抜き機構を備えた電子レンジ用パウチであって、前記積層フィルムが、外層から順に、蒸着ポリエチレンテレフタレート層/ポリブチレンテレフタレート層/無延伸ポリプロピレン層で構成され、前記積層フィルムの中間層の少なくとも一部に切り込み加工部を有し、前記積層フィルムの外層には切り込み加工部が形成されず、かつ、前記積層フィルムの前記ポリブチレンテレフタレート層の厚み方向の少なくとも一部が切り込み加工のない状態で、前記ポリブチレンテレフタレート層の切断の深さが、切断されずに残るポリブチレンテレフタレート層の厚みが2μm以上確保される深さとする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層フィルムを熱接着することにより袋状に成形され、加熱時に収容部内の蒸気を自動的に逃がす自動蒸気抜き機構を備えた電子レンジ用パウチであって、
前記自動蒸気抜き機構は、加熱時に収容部の内圧が上昇することで剥離を開始するように構成された蒸気抜きシール部と、前記蒸気抜きシール部によって囲まれた蒸気開放部とを備え、
前記積層フィルムが、外層から順に、蒸着ポリエチレンテレフタレート層/ポリブチレンテレフタレート層/無延伸ポリプロピレン層で構成され、
前記積層フィルムの中間層の少なくとも一部に切り込み加工部を有し、前記積層フィルムの外層には切り込み加工部が形成されず、かつ、前記積層フィルムの前記ポリブチレンテレフタレート層の厚み方向の少なくとも一部が切り込み加工のない状態であり、前記ポリブチレンテレフタレート層の切断の深さが、切断されずに残るポリブチレンテレフタレート層の厚みが2μm以上確保される深さであることを特徴とする電子レンジ用パウチ。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重ねた積層フィルムを熱接着することにより袋状に成形され、加熱時に内部の蒸気を自動的に逃がす自動蒸気抜き機構を備えた電子レンジ用パウチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、重ねた積層フィルムを熱接着することにより袋状に成形されたパウチ内に、調理済あるいは半調理済の食品を収容し、当該食品を食べる時に、電子レンジによって加熱調理する包装食品が市場に出回っている。
【0003】
このようなパウチでは、電子レンジで加熱すると、食品から発生する蒸気や内部空気の熱膨張によりパウチの内圧が高まり、パウチに破袋や変形が生じたり、また、破袋によりパウチ内の食品が飛散したりする虞がある。
【0004】
そのため、近年、電子レンジ用のパウチには、加熱時に内部の蒸気を自動的に逃がす自動蒸気抜き機構が一般的に設けられている。このような自動蒸気抜き機構を備えたパウチとしては、重ねた積層フィルムの一部を熱接着して環状の蒸気抜きシール部を設け、環状の蒸気抜きシール部に囲まれた蒸気開放部に蒸気抜き孔を設けたパウチが知られている(例えば特許文献1、2参照。)。
【0005】
この特許文献1のパウチでは、電子レンジによる加熱に伴ってパウチの内圧が高まると、蒸気抜きシール部の一部の破断が始まり、パウチの内圧上昇による応力集中により蒸気抜きシール部が後退し、剥離が弱化部に到達すると水蒸気等が外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-249176号公報
【特許文献2】特開2005-187079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、パウチにおいて、使用者が内容物を取り出す際に鋏等を使わずに手で開封できるような加工を施したものが知られている。このような加工としては、フィルムに例えば線状の切り込み加工部を形成するハーフカット加工がある。
然るに、電子レンジ用パウチにおいて上記のようなハーフカット加工を施すと、電子レンジによる加熱に伴ってパウチの内圧が高まったときにこの加工部位から破断が生じてしまう虞がある。
【0008】
本発明は、上述の問題点を解決するものであり、優れた開封性が得られながら、加熱時に切り込み加工部が意図せず破断されることがない電子レンジ用パウチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電子レンジ用パウチは、積層フィルムを熱接着することにより袋状に成形され、加熱時に収容部内の蒸気を自動的に逃がす自動蒸気抜き機構を備えた電子レンジ用パウチであって、
前記自動蒸気抜き機構は、加熱時に収容部の内圧が上昇することで剥離を開始するように構成された蒸気抜きシール部と、前記蒸気抜きシール部によって囲まれた蒸気開放部とを備え、
前記積層フィルムが、外層から順に、蒸着ポリエチレンテレフタレート層/ポリブチレンテレフタレート層/無延伸ポリプロピレン層で構成され、
前記積層フィルムの中間層の少なくとも一部に切り込み加工部を有し、前記積層フィルムの外層には切り込み加工部が形成されず、かつ、前記積層フィルムの前記ポリブチレンテレフタレート層の厚み方向の少なくとも一部が切り込み加工のない状態であり、前記ポリブチレンテレフタレート層の切断の深さが、切断されずに残るポリブチレンテレフタレート層の厚みが2μm以上確保される深さであることにより、上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電子レンジ用パウチによれば、基本的に、加熱時に収容部内の蒸気を自動的に逃がす自動蒸気抜き機構を備えることにより、蒸気抜きを確実に行うことができ、さらに、電子レンジ用パウチを構成する積層フィルムが、中間層にポリブチレンテレフタレート層を有し、かつ、積層フィルムの中間層の少なくとも一部に切り込み加工部を有することにより、ポリブチレンテレフタレート層の厚み方向の少なくとも一部切り込み加工のない状態となるので、ポリブチレンテレフタレートの高温時は伸びがあって切れにくいという特性が発揮されて、優れた開封性が得られながら、加熱時に切り込み加工部が意図せず破断されることを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る電子レンジ用パウチを示す平面図である。
図2図1に示す電子レンジ用パウチの自動蒸気抜き機構の構成を示す拡大図である。
図3】パウチの蒸気抜きの状況を説明するための図であって、パウチの中心点とシール剥離開始点とを結ぶ直線に沿った断面を概略的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の電子レンジ用パウチは、積重配置された積層フィルムが袋状をなすようヒートシールされて形成されており、加熱時にパウチ内の蒸気を自動的に外部に逃がす自動蒸気抜き機構が設けられた構成とされる。
【0013】
以下に、本発明の一実施形態に係る電子レンジ用パウチについて、図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る電子レンジ用パウチを示す平面図である。
この電子レンジ用パウチ(以下、単に「パウチ」という。)100は、平面視にて外形形状が例えば矩形形状をなしており、表面側積層フィルム110(図3参照)と裏面側積層フィルム115(図3参照)とが熱接着されてなる周縁シール部105が、パウチ100の中央部に位置された収容部101の四方を囲むように形成されて構成されている。
【0015】
積層フィルムは、(1)ポリブチレンテレフタレート層(PBT層)/蒸着ポリエチレンテレフタレート層(蒸着PET層)/無延伸ポリプロピレン層(CPP層)、または、(2)蒸着ポリエチレンテレフタレート層(蒸着PET層)/ポリブチレンテレフタレート層(PBT層)/無延伸ポリプロピレン層(CPP層)の層構成を有するものである。
ポリブチレンテレフタレート層の厚みは、例えば10μm以上50μm以下とされる。
蒸着ポリエチレンテレフタレート層は、ポリエチレンテレフタレートフィルムにアルミナや酸化珪素などの金属酸化物による蒸着膜が形成された蒸着膜含有フィルムである。蒸着ポリエチレンテレフタレート層の厚みは、例えば10μm以上50μm以下とされる。
無延伸ポリプロピレン層は、シーラント層として機能する内層である。無延伸ポリプロピレン層の厚みは、例えば20μm以上150μm以下とされる。
【0016】
積層フィルムには、その中間層(上記(1)の層構成を有する場合には蒸着PET層、上記(2)の層構成を有する場合にはPBT層)の少なくとも一部に切り込み加工部130が形成されている。切り込み加工部130は、積層フィルムに形成された面方向の一方向に伸びる直線状のものであり、周縁シール部105の両側に形成された2つのノッチ135を結んで収容部101を横断するよう配置されている。
積層フィルムが上記(1)の層構成を有する場合には、切り込み加工部130は、中間層である蒸着ポリエチレンテレフタレート層を厚み方向に全貫通する切り込みであってもよく、さらに内層(シーラント層)の厚み方向の一部が切断されていてもよい。積層フィルムが上記(2)の層構成を有する場合には、PBT層の厚み方向の一部のみが切断された切り込みであることが好ましく、切り込み加工部130がPBT層の厚み方向の一部のみが切断された切り込みである場合には、その切断の深さは、切断されずに残るPBT層の厚みが例えば2μm以上確保される深さであればよい。
切り込み加工部130は、例えばハーフカット加工などにより形成することができる。
切り込み加工部130は、直線状のものには限定されず、曲線状や屈曲線状のものであってもよい。また、切り込み加工部130は、連続する線状のものでなくてもよい。例えば、仮想直線上に断続的に鎖線状に形成されたものであってもよい。
【0017】
パウチ100には、加熱時に収容部101内の蒸気を自動的に外部に逃がす自動蒸気抜き機構120が設けられている。
自動蒸気抜き機構120は、図2及び図3にも示すように、加熱時に収容部101の内圧が上昇することで表面側積層フィルム110と裏面側積層フィルム115とが剥離を開始するように構成された蒸気抜きシール部121と、蒸気抜きシール部121によって周囲が囲まれた蒸気開放部122と、蒸気開放部122に形成された蒸気抜き部123とを備えている。
【0018】
蒸気抜きシール部121は、表面側積層フィルム110と裏面側積層フィルム115とが熱接着されて例えば環状をなすよう形成されており、外周縁における収容部101の中央に最も近い部位に、電子レンジによる加熱時に収容部101内に発生する水蒸気によって剥離を開始するシール剥離開始部Sを有する。
蒸気抜きシール部121の形成は、周縁シール部105の形成と同時に、又は別々に行なうことができる。
【0019】
蒸気開放部122は、例えば表面側積層フィルム110と裏面側積層フィルム115とを熱接着していない未シール部として形成されている。
なお、蒸気開放部122の具体的態様は、これに限定されず、例えば、周縁シール部105及び蒸気抜きシール部121よりもシール強度が低くなるように熱接着を施した弱接着部や、表面側積層フィルム110及び裏面側積層フィルム115にローレットシール等を施したパターン状接着部として、蒸気開放部を形成してもよい。
【0020】
蒸気抜き部123は、孔またはスリットとして形成され、本実施形態では、例えば開口形状が円形状の貫通孔として形成されている。
蒸気抜き部123は、表面側積層フィルム110及び裏面側積層フィルム115のいずれか一方にのみ設けてもよいし、表面側積層フィルム110及び裏面側積層フィルム115の両方に設けてもよい。
【0021】
蒸気抜きシール部121のシール剥離開始部Sは、パウチ100の2つの短辺の周縁シール部105内端中央に内接する仮想円Rの円周上または該円周の内側の位置されていることが好ましい。このような構成とされることにより、パウチ100内の水蒸気を弱化部から排出させることが可能となり、自動蒸気抜き機構120による自動開口を一層確実に行うことができる。
本実施形態のパウチ100においては、上記条件を満足する状態で、蒸気抜きシール部121が周縁シール部105に連続するように設けられている。
【0022】
而して、パウチ100の加熱時には内容物から発生する水蒸気等により、パウチ100は中心点Pから周縁シール部105に向かって膨張し、図1において中心点Pから短辺の周縁シール部105内端までの距離を半径とする仮想円Rで示すように、放射状に応力集中が発生する。この応力集中により蒸気抜きシール部121では、パウチ100の中心点Pに最も近い部分であるシール剥離開始部Sから表面側積層フィルム110と裏面側積層フィルム115との剥離が開始する。そして、図3に示すように、パウチ100の内圧上昇による応力集中により蒸気抜きシール部121が後退し、剥離が蒸気開放部122に到達するとパウチ100が部分的に開口され水蒸気等が蒸気抜き部123を介して外部に排出される。
【0023】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
例えば、本発明のパウチは、上述した四方シールタイプのものに限定されず、スタンディングパウチ、平パウチ、三方シールタイプ、ピロータイプ、ガセットタイプ等の種々のタイプのパウチに適用することができる。
また、パウチの形状は、上述した実施形態で示した矩形形状以外の、例えば台形や、一部に凹凸のある異形形状等、如何なる形状としてもよい。
【0024】
さらにまた、蒸気抜きシール部は、周縁シール部に連続するように設けられている必要はなく、外縁シール部の内側に独立して設けられていてもよい。また、蒸気抜きシール部を矩形環状等の他の形状で形成してもよく、その寸法も適宜選択することができる。
さらにまた、蒸気抜き部を孔として形成する場合において、孔の開口形状は円形状である必要はなく、例えば長円形、三角形、四角形、台形、おにぎり形等任意であり、その寸法も適宜選択することができる。
【0025】
以下、本発明の効果を確認するために行った実施例について説明する。
【0026】
[実施例1]
図1に示す構成を参照して、自動蒸気抜き機構を備えた四方シールタイプの電子レンジ用パウチ(以下、「サンプルA」という。)を作製した。このサンプルAは、幅寸法(図1において左右方向寸法)が130mm、長さ(図1において上下方向寸法)が175mmである。
このサンプルAに用いた積層フィルムは、厚み15μmのPBT層(外層)、厚み12μmの蒸着PET層(中間層)、厚み70μmのCPP層(内層)がこの順に積層されたフィルムであり、図1に示した位置に切り込み加工部(130)が形成されている。切り込み加工部(130)は、中間層を厚み方向に全貫通するものである。
【0027】
加熱試験として、内容物として水を180g封入したサンプルAを、定格電力500W、加熱時間3分間の加熱条件で加熱し、切り込み加工部の破断の有無及び蒸気抜きシール部の自動開口(蒸通)の有無を確認した。
このサンプルAにおいては、加熱に伴ってパウチの内圧が高まったときにも切り込み加工部から破断は生じないことが確認された。また、このサンプルAにおいては、自動蒸気抜き機構による自動開口が適正に行われることも確認された。
【0028】
[実施例2]
実施例1において、積層フィルムとして厚み12μmの蒸着PET層(外層)、厚み15μmのPBT層(中間層)、厚み70μmのCPP層(内層)がこの順に積層されたフィルムを用い、切り込み加工部(130)として、中間層(PBT層)を厚み方向の一部を深さ13μmに切断したものを形成したこと以外はサンプルAと同様にして、サンプルBを作製した。
サンプルBに対して実施例1と同様にして加熱試験を行い、切り込み加工部の破断の有無及び蒸気抜きシール部の自動開口(蒸通)の有無を確認したところ、加熱に伴ってパウチの内圧が高まったときにも切り込み加工部から破断は生じないことが確認された。また、サンプルBにおいては、自動蒸気抜き機構による自動開口が適正に行われることが確認された。
【符号の説明】
【0029】
100 ・・・ 電子レンジ用パウチ
101 ・・・ 収容部
105 ・・・ 周縁シール部
110 ・・・ 表面側積層フィルム
115 ・・・ 裏面側積層フィルム
120 ・・・ 自動蒸気抜き機構
121 ・・・ 蒸気抜きシール部
122 ・・・ 蒸気開放部
123 ・・・ 蒸気抜き部
130 ・・・ 切り込み加工部
135 ・・・ ノッチ
P ・・・ パウチの中心点
R ・・・ 仮想円
S ・・・ シール剥離開始部

図1
図2
図3