(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116394
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】異常検知システム及び成形機システム
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20240820BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
G05B23/02 V
G05B23/02 302S
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024099128
(22)【出願日】2024-06-19
(62)【分割の表示】P 2021009823の分割
【原出願日】2021-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】風呂川 幹央
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 潤
(72)【発明者】
【氏名】平野 峻之
(57)【要約】
【課題】製造装置の運転制御を行う制御装置に過度の負荷を与えることなく、製造装置の異常を検知し、製造装置の状態を診断することができる異常検知システムを提供する。
【解決手段】異常検知システムは、製造装置の異常を検知する異常検知装置と、製造装置の運転制御を行い、運転データを送信する制御装置と、製造装置の動作又は製品に係る物理量を検出し、センサ値データを出力するセンサと、診断装置とを備え、異常検知装置は、制御装置から送信される運転データと、センサから出力されるセンサ値データとに基づいて、製造装置の異常の有無を判定し、判定結果を制御装置へ送信する。また、異常検知装置は、運転データ及びセンサ値データを診断装置へ送信し、診断装置はデータベースに蓄積された過去のセンサ値データと、受信したデータとに基づいて製造装置の状態を診断し、診断結果を異常検知装置へ送信する。異常検知装置は診断結果を制御装置へ送信する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造装置の異常を検知する異常検知装置と、前記製造装置の状態を診断する診断装置とを備えた異常検知システムであって、
前記製造装置の運転制御を行い、前記運転制御の内容を示す運転データを前記異常検知装置へ送信する制御装置と、
前記製造装置の動作又は製品に係る物理量を検出し、検出した該物理量を示す時系列のセンサ値データを前記異常検知装置へ出力するセンサと
前記運転データ、前記センサ値データ、及び前記製造装置の状態を含む情報を蓄積するデータベースと
を備え、
前記異常検知装置は、
前記制御装置から送信される前記運転データを受信する第1通信部と、
前記センサから出力される前記センサ値データを取得する取得部と、
該取得部にて取得した前記センサ値データの統計量を算出し、算出した前記統計量と、受信した前記運転データに応じた閾値とに基づいて、前記製造装置の異常の有無を判定する処理部と
を備え、
前記第1通信部は、
前記運転データ及び前記センサ値データを前記診断装置へ送信し、
前記診断装置は、
前記異常検知装置から送信された前記運転データ及び前記センサ値データを受信する第2通信部と、
前記第2通信部にて受信した前記運転データ及び前記センサ値データ、並びに前記データベースに蓄積された情報に基づいて、前記製造装置の状態を診断する診断処理部と
を備え、
前記第2通信部は、
前記診断処理部による診断結果を外部の端末装置へ送信する
異常検知システム。
【請求項2】
前記データベースに蓄積されている前記製造装置の状態は、前記製造装置又は該製造装置の部品の寿命に関する情報、前記製造装置又は前記部品の異常に関する情報を含み、
前前記診断処理部は、
前記製造装置又は前記部品の寿命又は異常の有無を診断する
請求項1に記載の異常検知システム。
【請求項3】
前記診断装置は、
前記センサ値データが入力された場合、前記製造装置又は製品の特徴量を出力する学習モデルを備え、
前記診断処理部は、
受信した前記センサ値データを前記学習モデルに入力して得られる特徴量と、前記データベースに蓄積されている前記センサ値データを前記学習モデルに入力して得られる特徴量とを比較することによって、前記製造装置の状態を診断する
請求項1又は請求項2に記載の異常検知システム。
【請求項4】
前記第2通信部は、
前記診断処理部による前記診断結果の適否又は正しい診断結果を示すフィードバック情報を受信し、
前記診断処理部は、
受信した前記フィードバック情報に基づいて、前記学習モデルを追加学習させ、又は前記特徴量に基づく診断基準を更新する
請求項3に記載の異常検知システム。
【請求項5】
前記第1通信部又は前記第2通信部は、
前記運転データ及び前記センサ値データに対応する前記製造装置の状態を示す情報を受信し、
前記異常検知装置又は前記診断装置は、
前記運転データ及び前記センサ値データに対応付けて、受信した前記状態を前記データベースに記憶する
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の異常検知システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の異常検知システムと、
成形機と
を備え、
前記異常検知システムは、前記成形機の異常を検知するようにしてある
成形機システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常検知システム、成形機システム、異常検知装置、異常検知方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、射出成形機の各可動部の振動を加速度センサにより監視し、成形工程の状態及び可動部の異常発生を検知する監視方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1には、射出成形機のような製造装置の運転制御を行う制御装置と、当該製造装置の異常を検知し又は製造装置の状態を診断する装置とを別体で構成する具体的技術は開示されていない。制御装置が製造装置の異常検知及び診断を行うように構成した場合、運転制御処理の遅延など、製造装置の動作に悪影響が出る可能性がある。
【0005】
本開示の目的は、製造装置の運転制御を行う制御装置と、異常検知装置と、診断装置とを備え、各装置が協動することによって制御装置に過度の負荷を与えることなく、製造装置の異常を検知し、製造装置の状態を診断することができる異常検知システム、成形機システム、異常検知装置、異常検知方法及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る異常検知システムは、製造装置の異常を検知する異常検知装置と、前記製造装置の状態を診断する診断装置とを備えた異常検知システムであって、前記製造装置の運転制御を行い、前記運転制御の内容を示す運転データを前記異常検知装置へ送信する制御装置と、前記製造装置の動作又は製品に係る物理量を検出し、検出した該物理量を示す時系列のセンサ値データを前記異常検知装置へ出力するセンサと前記運転データ、前記センサ値データ、及び前記製造装置の状態を含む情報を蓄積するデータベースとを備え、前記異常検知装置は、前記制御装置から送信される前記運転データを受信する第1通信部と、前記センサから出力される前記センサ値データを取得する取得部と、該取得部にて取得した前記センサ値データの統計量を算出し、算出した前記統計量と、受信した前記運転データに応じた閾値とに基づいて、前記製造装置の異常の有無を判定する処理部とを備え、前記第1通信部は、前記運転データ及び前記センサ値データを前記診断装置へ送信し、前記診断装置は、前記異常検知装置から送信された前記運転データ及び前記センサ値データを受信する第2通信部と、前記第2通信部にて受信した前記運転データ及び前記センサ値データ、並びに前記データベースに蓄積された情報に基づいて、前記製造装置の状態を診断する診断処理部とを備え、前記第2通信部は、前記診断処理部による診断結果を前記異常検知装置へ送信し、前記異常検知装置の前記第1通信部は、前記診断処理部による前記診断結果を受信し、前記処理部による判定結果と、前記統計量と、前記診断処理部による前記診断結果とを前記制御装置へ送信する。
【0007】
本開示に係る成形機システムは、上記異常検知システムと、成形機とを備え、前記異常検知システムは、前記成形機の異常を検知するようにしてある。
【0008】
本開示に係る異常検知装置は、製造装置の異常を検知する異常検知装置であって、前記製造装置の運転制御を行う制御装置から送信される、該運転制御の内容を示す運転データを受信する通信部と、前記製造装置の動作又は製品に係る物理量を検出するセンサから出力される時系列のセンサ値データを取得する取得部と、前記取得部にて取得した前記センサ値データの統計量を算出し、算出した前記統計量と、取得した前記運転データに応じた閾値とに基づいて、前記製造装置の異常の有無を判定する処理部とを備え、前記通信部は、前記運転データ及び前記センサ値データを、前記製造装置の状態を診断する外部の診断装置へ送信し、該診断装置から送信された診断結果を受信し、前記処理部による判定結果と、前記統計量と、受信した前記診断結果とを前記制御装置へ送信する。
【0009】
本開示に係る異常検知方法は、製造装置の異常を検出する処理をコンピュータが実行する異常検知方法であって、前記コンピュータは、前記製造装置の運転制御を行う制御装置から送信される、該運転制御の内容を示す運転データを受信し、前記製造装置の動作又は製品に係る物理量を検出するセンサから出力される時系列のセンサ値データを取得し、取得した前記センサ値データの統計量を算出し、算出した前記統計量と、取得した前記運転データに応じた閾値とに基づいて、前記製造装置の異常の有無を判定し、前記運転データ及び前記センサ値データを、前記製造装置の状態を診断する外部の診断装置へ送信し、該診断装置から送信された診断結果を受信し、異常の有無を示す判定結果と、前記統計量と、受信した前記診断結果とを前記制御装置へ送信する処理を実行する。
【0010】
本開示に係るコンピュータプログラムは、製造装置の異常を検出する処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、前記製造装置の運転制御を行う制御装置から送信される、該運転制御の内容を示す運転データを受信し、前記製造装置の動作又は製品に係る物理量を検出するセンサから出力される時系列のセンサ値データを取得し、取得した前記センサ値データの統計量を算出し、算出した前記統計量と、取得した前記運転データに応じた閾値とに基づいて、前記製造装置の異常の有無を判定し、前記運転データ及び前記センサ値データを、前記製造装置の状態を診断する外部の診断装置へ送信し、該診断装置から送信された診断結果を受信し、異常の有無を示す判定結果と、前記統計量と、受信した前記診断結果とを前記制御装置へ送信する処理を前記コンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、製造装置の運転制御を行う制御装置と、異常検知装置と、診断装置とを備え、各装置が協動することによって制御装置に過度の負荷を与えることなく、製造装置の異常を検知し、製造装置の状態を診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態1に係る成形機システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態1に係る二軸混練押出機の構成例を示す模式図である。
【
図3】本実施形態1に係る異常検知装置の構成例を示すブロック図である。
【
図4】実施形態1に係る診断装置の構成例を示すブロック図である。
【
図5】実施形態1に係るデータベースのレコードレイアウトの一例を示す概念図である。
【
図6】実施形態1に係る二軸混練押出機の異常検知及び診断に係る処理手順を示すフローチャートである。
【
図7】実施形態1に係る二軸混練押出機の異常検知及び診断に係る処理手順を示すフローチャートである。
【
図8】異常判定の処理手順を示すフローチャートである。
【
図9】異常診断の処理手順を示すフローチャートである。
【
図10】スクリュ軸11の異常診断の処理手順を示すフローチャートである。
【
図11】2本のスクリュ軸の変異を示す時系列データ画像である。
【
図12】時系列データ画像の特徴量及び異常検知結果を示す概念図である。
【
図13】寿命診断の処理手順を示すフローチャートである。
【
図14】学習モデルの生成方法の概要を示す概念図である。
【
図15】学習フェーズにおける学習モデルを示す概念図である。
【
図16】テストフェーズにおける学習モデルを示す概念図である。
【
図17】制御装置における異常判定結果等の表示例を示す模式図である。
【
図18】端末装置における異常判定結果等の表示例を示す模式図である。
【
図19】実施形態2に係る診断結果に関するフィードバック処理手順を示すフローチャートである。
【
図20】実施形態3に係る二軸混練押出機の状態に関するフィードバック処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態に係る異常検知システム、成形機システム、異常検知装置、異常検知方法及びコンピュータプログラムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、以下に記載する実施形態及び変形例の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0014】
図1は本実施形態1に係る成形機システムの構成例を示すブロック図である。成形機システムは、二軸混練押出機1と、複数のセンサ2と、異常検知装置3と、ルータ4と、診断装置5と、データベース6と、ユーザの端末装置7とを備える。なお、成形機システムは、二軸混練押出機1と、異常検知システムとからなり、当該異常検知システムは複数のセンサ2、異常検知装置3、診断装置5及びデータベース6によって構成されている。
【0015】
<二軸混練押出機1>
図2は本実施形態1に係る二軸混練押出機1の構成例を示す模式図である。二軸混練押出機1は、樹脂原料が投入されるホッパ10aを有するシリンダ10と、2本のスクリュ軸11とを備える。2本のスクリュ軸11は、相互に噛み合わされた状態で略平行に配され、シリンダ10の孔内に回転可能に挿入されており、ホッパ10aに投入された樹脂原料を押出方向(
図1及び
図2中右方向)へ搬送し、溶融及び混練する。
スクリュ軸11は、複数種類のスクリュピースを組み合わせ、一体化することによって一本のスクリュ軸11として構成されている。例えば、樹脂原料を順方向へ輸送するフライトスクリュ形状の順フライトピース、樹脂原料を逆方向へ輸送する逆フライトピース、樹脂原料を混練するニーディングピース等を、樹脂原料の特性に応じた順序及び位置に配して組み合わせることにより、スクリュ軸11が構成される。
【0016】
また、二軸混練押出機1は、スクリュ軸11を回転させるための駆動力を出力するモータ12と、モータ12の駆動力を減速伝達する減速機13と、制御装置14とを備える。スクリュ軸11は減速機13の出力軸に接続されている。スクリュ軸11は、減速機13によって減速伝達されたモータ12の駆動力によって回転する。
【0017】
<センサ2>
センサ2は、二軸混練押出機1の動作又は成形品に係る物理量を検出し、検出した物理量を示す時系列のセンサ値データを異常検知装置3へ出力する。物理量には、温度、位置、速度、加速度、電流、電圧、圧力、時間、画像データ、トルク、力、歪、消費電力、重さ等がある。これらの物理量は、温度計、位置センサ、速度センサ、加速度センサ、電流計、電圧計、圧力計、タイマ、カメラ、トルクセンサ、電力計、重量計等を用いて測定することができる。
より具体的には、二軸混練押出機1の動作に係る物理量を検出するセンサ2は、減速機13の振動を検出する加速度センサ等の振動センサ、スクリュ軸11に加わる軸トルクを検出するトルクセンサ、スクリュ軸11の温度を検出する温度計、スクリュ軸11の回転中心の変位を検出する変位センサ、成形品又はストランドの寸法を検出する光センサ、成形品又はストランドを撮像する撮像装置、樹脂圧を検出する樹脂圧センサ等である。
成形品に係る物理量を検出するセンサ2は、成形品の寸法、色度、輝度等を検出する光学的計測器、撮像装置、成形品の重量を検出する重量計等である。
【0018】
<制御装置14>
制御装置14は、二軸混練押出機1の運転制御を行うコンピュータであり、異常検知装置3との間で情報を送受信する図示しない送受信部、及び表示部を備える。
具体的には、制御装置14は、二軸混練押出機1の運転状態を示す運転データを異常検知装置3へ送信する。運転データは、例えばフィーダ供給量(樹脂原料の供給量)、スクリュ軸11の回転数、押出量、シリンダ温度、樹脂圧、モータ電流等である。
制御装置14は、異常検知装置3から送信される二軸混練押出機1の異常の有無を示す後述の判定結果、センサ値データの各種統計量、二軸混練押出機1の異常、寿命等に関する診断結果を受信し、受信した判定結果、統計量の値及びグラフ、診断結果を表示する。また、制御装置14は、判定結果等を用いて二軸混練押出機1の異常を監視し、必要に応じて警告を出力し、二軸混練押出機1の動作を停止させる処理を実行する。
【0019】
<異常検知装置3>
図3は本実施形態1に係る異常検知装置3の構成例を示すブロック図である。異常検知装置3は、エッジコンピュータであり、処理部31、記憶部32、通信部33及び取得部34を備え、記憶部32、通信部33及び取得部34は処理部31に接続されている。異常検知装置3を構成するエッジコンピュータは、後述の診断装置5に比べてハードウェアのスペックが低いコンピュータであり、二軸混練押出機1の簡易な異常検知処理を実行するものである。
【0020】
処理部31は、CPU(Central Processing Unit)、マルチコアCPU、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の演算処理回路、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の内部記憶装置、I/O端子等を有する。処理部31は、後述の記憶部32が記憶するコンピュータプログラムP1を実行することにより、本実施形態1に係る異常検知装置3として機能する。なお、異常検知装置3の各機能部は、ソフトウェア的に実現してもよいし、一部又は全部をハードウェア的に実現してもよい。
【0021】
記憶部32は、ハードディスク、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。記憶部32は、本実施形態1に係る異常検知方法をコンピュータに実施させるためのコンピュータプログラムP1を記憶している。
【0022】
本実施形態1に係るコンピュータプログラムP1は、記録媒体30にコンピュータ読み取り可能に記録されている態様でもよい。記憶部32は、図示しない読出装置によって記録媒体30から読み出されたコンピュータプログラムP1を記憶する。記録媒体30はフラッシュメモリ等の半導体メモリである。また、記録媒体30はCD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、BD(Blu-ray(登録商標)Disc)等の光ディスクでもよい。更に、記録媒体30は、フレキシブルディスク、ハードディスク等の磁気ディスク、磁気光ディスク等であってもよい。更にまた、図示しない通信網に接続されている図示しない外部サーバから本実施形態1に係るコンピュータプログラムP1をダウンロードし、記憶部32に記憶させてもよい。
【0023】
通信部33は、イーサネット(登録商標)等の所定の通信プロトコルに従って情報を送受信する通信回路である。通信部33は、LAN等の第1通信ネットワークを介して制御装置14に接続されており、処理部31は通信部33を介して制御装置14との間で各種情報を送受信することができる。
第1ネットワークにはルータ4が接続されており、通信部33はルータ4を介して第2通信ネットワークであるクラウド上の診断装置5に接続されている。処理部31は、通信部33及びルータ4を介して診断装置5との間で各種情報を送受信することができる。
【0024】
取得部34は、信号が入力する入力インタフェースである。取得部34にはセンサ2が接続されており、センサ2から出力された時系列データであるセンサ値データが入力される。
【0025】
<診断装置5及びデータベース6>
図4は実施形態1に係る診断装置5の構成例を示すブロック図である。診断装置5は、コンピュータであり、診断処理部51、記憶部52、通信部53を備える。記憶部52、通信部53は、診断処理部51に接続されている。
【0026】
診断処理部51は、CPU、マルチコアCPU、GPU(Graphics Processing Unit)、GPGPU(General-purpose computing on graphics processing units)、TPU(Tensor Processing Unit)、ASIC、FPGA、NPU(Neural Processing Unit)等の演算処理回路、ROM、RAM等の内部記憶装置、I/O端子等を有する。診断処理部51は、後述の記憶部52が記憶するコンピュータプログラムP2を実行することにより、本実施形態1に係る診断装置5として機能する。なお、診断装置5の各機能部は、ソフトウェア的に実現してもよいし、一部又は全部をハードウェア的に実現してもよい。
【0027】
記憶部52は、ハードディスク、EEPROM、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。記憶部52は、二軸混練押出機1の異常、寿命等、二軸混練押出機1の状態を診断する処理をコンピュータに実施させるためのコンピュータプログラムP2と、一又は複数の学習モデル54とを記憶している。
【0028】
コンピュータプログラムP2及び学習モデル54は、記録媒体50にコンピュータ読み取り可能に記録されている態様でもよい。記憶部52は、図示しない読出装置によって記録媒体50から読み出されたコンピュータプログラムP2及び学習モデル54を記憶する。記録媒体50はフラッシュメモリ等の半導体メモリである。また、記録媒体50はCD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、BD(Blu-ray(登録商標)Disc)等の光ディスクでもよい。更に、記録媒体50は、フレキシブルディスク、ハードディスク等の磁気ディスク、磁気光ディスク等であってもよい。更にまた、図示しない通信網に接続されている図示しない外部サーバからコンピュータプログラムP2及び学習モデル54をダウンロードし、記憶部52に記憶させてもよい。
【0029】
通信部53は、イーサネット(登録商標)等の所定の通信プロトコルに従って情報を送受信する通信回路である。通信部53は、第2通信ネットワークを介して異常検知装置3、データベース6及び端末装置7に接続されており、処理部31は通信部53を介して異常検知装置3、データベース6及び端末装置7との間で各種情報を送受信することができる。
【0030】
図5は実施形態1に係るデータベース6のレコードレイアウトの一例を示す概念図である。データベース6は、ハードディスク、DBMS(DataBase Management System)を備え、二軸混練押出機1の運転に関する各種情報を記憶する。例えば、データベース6のテーブルは、「No.」(レコード番号)列、「運転日時」列、「運転データ」列、「スクリュ構成」列、「樹脂種」列、「センサ値」列、「状態」列、「品質評価」列、「寿命」列を有する。
【0031】
「運転日時」列は、レコードとして記憶される各種データが得られた年、月、日時等を示す情報を格納する。
「運転データ」列は、二軸混練押出機1の運転状態を示す情報、例えばフィーダ供給量(樹脂原料の供給量)、スクリュ軸11の回転数、押出量、シリンダ温度、樹脂圧、モータ電流等を格納する。
「スクリュ構成」列は、スクリュ軸11を構成する各種スクリュピースの種類、配列ないし組合せに関する情報を格納する。
「樹脂種」列は、二軸混練押出機1に供給された樹脂原料の種類を示す情報を格納する。
「センサ値」列は、センサ値データを格納する。「センサ値」列には、数値データをそのまま格納しても良いし、後述するように時系列データであるセンサ値データを画像で表した時系列データ画像として格納してもよい。
「状態」列は、上記運転データが示す運転制御が行われ、上記センサ値データが得られているときの二軸混練押出機1の状態を示す情報が格納される。例えば、正常であることを示す情報、スクリュ軸11の摩耗が生じている異常状態を示す情報、上記スクリュ軸11に適合しない樹脂原料が使用されている異常状態を示す情報、過負荷異を示す情報等が格納されている。
「品質評価」列は、上記運転データが示す運転制御が行われ、上記センサ値データが得られているときの二軸混練押出機1が製造する成形品の品質評価を示す情報を格納する。例えば、成形品が正常であるか否か、寸法異常等を示す情報を格納する。
「寿命」列は、上記情報を得るために使用された二軸混練押出機1の寿命を示す情報を格納する。寿命はトータルの製品寿命であっても良いし、上記データが得られている時点からの残り寿命であっても良い。
【0032】
データベース6に格納される上記各種データは、例えば二軸混練押出機1を試験的に動作させ、二軸混練押出機1の動作状態を確認し、成形品を評価することによって得られる。また、シミュレータにより二軸混練押出機1の動作状態をシミュレーションし、上記各種データを用意してもよい。本実施形態1では、データベース6は、試験的又は実験的に二軸混練押出機1を動作させて得られた上記データ、あるいはシミュレーションにより得られた上記データを格納しているものとする。
【0033】
<異常の例>
異常検知装置3及び診断装置5による検知又は診断対象となる異常には、例えば、減速機13の異常振動、過負荷、成形品の寸法異常、スクリュ軸11のキズ、亀裂、摩耗、腐食、減速機13及びその各部の摩耗による性能劣化あるいはオイルの異常、非効率的運転状態(消費エネルギーの増大等)、品質異常を招く運転状態(無理な立ち上げなど)、ストランドの異常(寸法、異物、色、とぐろ(ねじれ)等の不良)、樹脂粘度(品質)異常等がある。
本実施形態1においては、異常検知装置3は、センサ値データに基づいて、減速機13の異常振動、過負荷、成形品の寸法異常、ストランドの異常、樹脂粘度異常等を検出する。具体的には、異常検知装置3は、当該センサ値の平均、分散、2乗平均平方根等の統計量を算出し、算出された統計量に基づく負荷の小さな処理で、減速機13の異常振動、過負荷、成形品の寸法異常、ストランドの異常、樹脂粘度異常等を検出する。
一方、診断装置5は、異常検知装置3を介して制御装置14から取得する運転データ及びセンサ値データ、並びにデータベース6に蓄積された過去のセンサ値データ等を用いて、スクリュ軸11のキズ、亀裂、摩耗、腐食、減速機13の性能劣化あるいはオイルの異常、非効率的運転状態、品質異常を招く運転状態といった異常の有無等を診断する。また、診断装置5は、減速機13の故障箇所、例えばベアリング、ギア等を特定する処理等も行う。
なお、異常検知装置3が行う異常検知処理と、診断装置5が行う診断処理の分担は、一例であり、異常検知装置3が処理可能であれば、異常検知装置3側で実行するように構成してもよい。
【0034】
<異常検知処理の全体の流れ>
図6及び
図7は実施形態1に係る二軸混練押出機1の異常検知及び診断に係る処理手順を示すフローチャートである。制御装置14は、二軸混練押出機1の運転制御の状態を示す運転データを異常検知装置3へ送信する(ステップS11)。
【0035】
異常検知装置3の処理部31は、制御装置14から送信された運転データを通信部33にて受信する(ステップS12)。
【0036】
処理部31はセンサ2から出力される時系列のセンサ値データを取得する(ステップS13)。そして、処理部31はセンサ値データに基づいて、当該センサ値の平均、分散、2乗平均平方根等の統計量を算出し(ステップS14)、算出された統計量に基づいて、二軸混練押出機1の異常判定処理を実行する(ステップS15)。
【0037】
次いで処理部31は、二軸混練押出機1の異常の有無を示す判定結果と、ステップS14で算出した統計量を通信部33にて制御装置14へ送信する(ステップS16)。
【0038】
制御装置14は、異常検知装置3から送信された判定結果及び統計量を受信し(ステップS17)、受信した判定結果又は統計量に基づいて、二軸混練押出機1の動作を監視する(ステップS18)。例えば、判定結果が所定の異常を示している場合、制御装置14は、二軸混練押出機1の運転制御を停止させる。
【0039】
次いで、制御装置14は、受信した判定結果及び統計量等を表示部に表示させる(ステップS19)。
【0040】
次に、判定結果及び統計量を送信した異常検知装置3の処理を説明する。ステップS16の処理を終えた異常検知装置3の処理部31は、ステップS12で受信した運転データと、ステップS13で取得したセンサ値データとを通信部33にて診断装置5へ送信する(ステップS20)。
【0041】
診断装置5は、異常検知装置3から送信された運転データ及びセンサ値データを受信し(ステップS21)、診断処理部51は、受信した運転データ及びセンサ値データ、並びにデータベース6に蓄積された過去のセンサ値データ等を用いて、二軸混練押出機1の異常診断処理を実行する(ステップS22)。また、診断処理部51は、二軸混練押出機1の寿命診断処理を実行する(ステップS23)。診断処理部51は、例えば、軸トルクの波形から材料疲労を評価し、余寿命を算出する。
【0042】
ステップS22及びステップS23の処理を終えた診断処理部51は、通信部53にて診断結果を異常検知装置3へ送信する(ステップS24)。
【0043】
異常検知装置3の処理部31は、診断装置5から送信された診断結果を受信し(ステップS25)、受信した診断結果を通信部33にて制御装置14へ送信する(ステップS26)。
【0044】
制御装置14は、異常検知装置3から送信された診断結果を受信し(ステップS27)、受信した診断結果を表示部に表示する(ステップS28)。
【0045】
なお、異常検知装置3は、端末装置7からの要求に応じて、処理部31による異常判定結果、算出したセンサ値データの統計量、診断処理部51による診断結果等を端末装置7へ送信することができる。端末装置7は、受信した異常判定結果、統計量及び診断結果を表示する。
【0046】
<異常検知装置3による異常検知処理>
図8は異常判定の処理手順を示すフローチャートである。異常検知装置3は、大量のセンサ値データを記憶することができないため、当日の運転データ及びセンサ値データを用いて二軸混練押出機1の異常の有無を判定する処理を実行する。
【0047】
処理部31は、ステップS12で受信した運転データに基づいて、二軸混練押出機1の異常の有無を判定するための判定基準の閾値を特定する(ステップS51)。例えば、軸トルクと、スクリュ軸11の回転数は反比例関係にあるため、トルクの過負荷を検知する閾値は、運転データの一つであるスクリュ軸11の回転数に依存する。このように、処理部31は、運転データにより、異常を検知するための閾値を特定することができる。
具体的には、異常検知装置3は、運転データと、異常の種類と、判定基準の閾値とを対応付けたテーブルを記憶部32に記憶する。処理部31は運転データを用いて当該テーブルを参照することによって閾値を読み出すことによって、運転データに応じた各種異常の判定基準である閾値を特定することができる。
【0048】
次いで処理部31は、減速機13の振動を示すセンサ値データの統計量と、ステップS51で特定した閾値とに基づいて、減速機13の異常振動の有無を判定する(ステップS52)。なお、処理部31は、減速機13の振動を示すセンサ値データを時間周波数成分に変換し、当該時間周波数成分のデータに基づいて減速機13の異常の有無を判定するように構成してもよい。
【0049】
また、処理部31は、軸トルク、スクリュ軸11の温度、スクリュ軸11の回転中心の変位を示すセンサ値データの統計量と、ステップS51で特定した閾値とに基づいて、過負荷の有無を判定する(ステップS53)。
【0050】
更に、処理部31は、成形品の寸法を示す統計量と、ステップS51で特定した閾値とに基づいて、成形品の寸法異常の有無を判定する(ステップS54)。
【0051】
処理部31は、ストランドを撮像して得た画像と、正常画像との差分を示す統計量と、ステップS51で特定した閾値とに基づいて、ストランドの異常の有無を判定する(ステップS55)。なお、処理部31は、撮像画像に含まれるストランドの画像のピクセルサイズ(ピクセルの数)によって、ストランド径を測定することができる。また、処理部31は、撮像画像に含まれる画像部分の色を判定することによって異物の有無を判定することもできる。
【0052】
処理部31は、センサ2、例えば樹脂圧センサにて検出された樹脂圧の時間平均と、ステップS51で特定した閾値とに基づいて、樹脂粘度の異常の有無を判定し(ステップS56)、異常判定処理を終える。
【0053】
<診断装置5による異常診断処理>
図9は異常診断の処理手順を示すフローチャートである。診断処理部51は、スクリュ軸11の回転中心の変位を示すセンサ値データ、又は当該センサ値データの時間周波数解析によって得られる時間周波数データを学習モデル54に入力することによって、スクリュ軸11の異常診断を行う(ステップS61)。
ステップS61で用いる学習モデル54は、例えば時系列データであるセンサ値データを画像で表した後述の時系列データ画像が入力された場合、当該時系列データ画像の特徴を抽出し、抽出された特徴量を出力する畳み込みニューラルネットワークモデルである。学習モデル54は、CNN(Convolutional Neural Network)の特徴抽出層を有するモデル、例えば1クラス分類モデルである。診断処理部51は、ステップS12で受信した運転データと同一又は類似の運転データに対応付けられ、かつ二軸混練押出機1が正常に動作しているときのセンサ値データから得られる特徴量と、診断対象の特徴量とを比較することによって、スクリュ軸11の異常の有無を診断することができる。学習モデル54の生成方法及び構成の詳細は後述する。
【0054】
また、診断処理部51は、減速機13に設置したセンサ2、例えば振動センサから得られる振動センサデータ、又は当該センサ値データの時間周波数解析によって得られる時間周波数データを学習モデル54に入力することによって、減速機13及びその各部の摩耗による性能劣化あるいはオイルの異常の有無を診断する(ステップS62)。
ステップS62で用いる学習モデル54は、例えばサポートベクタマシンである。当該サポートベクタマシンは、正常な減速機13に係る振動センサデータの時間周波数解析によって得られる時間周波数成分と、異常な減速機13に係る振動センサデータの時間周波数解析によって得られる時間周波数成分とを学習し、正常な減速機13に係る正常クラスと、異常な減速機13に係る異常クラスとに分類する分類器である。なお、解析対象の周波数成分は、例えば減速機13から得られる主要周波数成分、故障時に表れる故障周波数成分等、特定の周波数成分であってもよい。診断処理部51は、例えば、振動センサデータの時間周波数解析によって得られる主要周波数成分、故障周波数成分等を特定する。そして、診断処理部51は、振動センサデータの時間周波数成分、例えば主要周波数成分及び故障周波数成分をサポートベクタマシンに入力することによって、減速機13が正常であるか否かを診断する。
学習モデル54は、畳み込みニューラルネットワークモデルを用いた分類器であってもよい。学習モデル54は、例えば、振動センサデータ、又は当該センサ値データの時間周波数解析によって得られる時間周波数データが入力された場合、減速機13の異常箇所、異常レベルを示すデータを出力するように学習するとよい。異常箇所は、例えば減速機13のベアリング、ギア等である。
【0055】
また、診断処理部51は、センサ2から得られる軸トルク、スクリュ軸11の回転中心の変位、振動等を示すセンサ値データ、又は当該センサ値データの時間周波数解析によって得られる時間周波数データを学習モデル54に入力することによって、非効率的運転状態にあるか否かを診断する(ステップS63)。
ステップS63で用いる学習モデル54は、例えば時系列データであるセンサ値データを画像で表した後述の時系列データ画像が入力された場合、当該時系列データ画像の特徴を抽出し、抽出された特徴量を出力する畳み込みニューラルネットワークモデルである。学習モデル54は、CNNの特徴抽出層を有するモデル、例えば1クラス分類モデルである。
診断処理部51は、ステップS12で受信した運転データと同一又は類似の運転データに対応付けられ、かつ二軸混練押出機1が効率的運転状態にあるときのセンサ値データから得られる特徴量と、診断対象の特徴量とを比較することによって、非効率的運転状態にあるか否かを診断することができる。
【0056】
また、診断処理部51は、センサ2から得られる軸トルク、スクリュ軸11の回転中心の変位、振動等を示すセンサ値データ、又は当該センサ値データの時間周波数解析によって得られる時間周波数データを学習モデル54に入力することによって、品質異常を招く運転状態にあるか否かを診断する(ステップS64)。
ステップS64で用いる学習モデル54は、例えば時系列データであるセンサ値データを画像で表した後述の時系列データ画像が入力された場合、当該時系列データ画像の特徴を抽出し、抽出された特徴量を出力する畳み込みニューラルネットワークモデルである。学習モデル54は、CNNの特徴抽出層を有するモデル、例えば1クラス分類モデルである。
診断処理部51は、ステップS12で受信した運転データと同一又は類似の運転データに対応付けられ、かつ二軸混練押出機1が品質異常を招く運転状態に無い正常な運転状態にあるときのセンサ値データから得られる特徴量と、診断対象の特徴量とを比較することによって、品質異常を招く運転状態にあるか否かを診断することができる。
【0057】
なお、診断処理部51は、異常検知装置3を介して制御装置14から得られる通電データを監視し、一定時間の稼動率を算出することによって、稼動率を監視するように構成してもよい。診断処理部51、稼動率に基づいて二軸混練押出機1の異常の有無を診断するように構成してもよい。
【0058】
以下、1クラス分類モデルの一例として、スクリュ軸異常診断について詳述する。
図10はスクリュ軸11の異常診断の処理手順を示すフローチャートである。診断処理部51は、複数のセンサ値データを画像で表した一又は複数の時系列データ画像に変換し(ステップS71)、変換された時系列データ画像が複数の場合、当該複数の時系列画像データを1枚の時系列データ画像に合成する(ステップS72)。例えば、センサ値データが2本のスクリュ軸11それぞれの2方向における変位を示すデータである場合、診断処理部51は、第1のスクリュ軸11の回転中心軸の2方向における変位を画像で表した第1時系列データ画像と、第2のスクリュ軸11の回転中心軸の2方向における変位を画像で表した第2時系列データ画像とを合成する。
【0059】
図11は2本のスクリュ軸11の変異を示す時系列データ画像である。第1時系列データ画像は、第1のスクリュ軸11の変位を示している。第1時系列データ画像は略正方形の画像であり、スクリュ軸11の回転中心に対して直交するX軸方向及びY軸方向の変位量が、X軸及びY軸の座標値として、プロットされる。第1時系列データ画像は、3回転分の変位をプロットしたものである。第2時系列データ画像も同様にして作成することができる。
合成された時系列データ画像は、第1時系列データ画像の2倍の大きさ(面積は4倍)を有する略正方形の画像である。時系列データ画像は、第1及び第2時系列データ画像の縦横比を変更することなく、元の画像が有する情報をそのまま包含する。具体的には、時系列データ画像は、
図11中上側左右に並べ配した第1及び第2時系列データ画像と、時系列データ画像を略正方形にするために下側に配したブランク画像とを有する。なお、第1及び第2時系列データ画像及びブランク画像の配置方法は特に限定されるものではなく、第1及び第2時系列データ画像をそのまま含む限り、その配置方法は特に限定されるものではない。
【0060】
なお、その他の複数のセンサ値データについても同様にして時系列データ画像に変換し、合成すればよい。
図11に示す例では、合計8つのセンサ値データを画像で表すことができるが、縦横3×3の9枚の時系列データ画像を合成する場合、18つのセンサ値データを1枚の時系列データ画像で表すことができる。
【0061】
次いで、診断処理部51は、ステップS72で合成した時系列データ画像を学習モデル54に入力することによって、時系列データ画像の特徴量を算出する(ステップS73)。
【0062】
また、診断処理部51は、データベース6から、ステップS12で受信した運転データと同一又は類似の運転データに対応付けられ、かつ二軸混練押出機1が正常に動作しているときのセンサ値データを読み出し(ステップS74)、同様にして時系列データ画像に変換し(ステップS75)、合成し(ステップS76)、合成された時系列データ画像を学習モデル54に入力することによって、正常動作時の時系列データ画像の特徴量を算出する(ステップS77)。
【0063】
次いで、診断処理部51は、ステップS73で算出した時系列データ画像の特徴量の外れ値スコアを算出する(ステップS78)。外れ値スコアは、正常な二軸混練押出機1の動作時に得られた時系列データ画像の特徴量(以下、サンプル特徴量と呼ぶ)に対する、ステップS77で算出された時系列データ画像の特徴量の外れ値の度合いを評価して数値化したものである。外れ値スコアは、例えばLOF(Local Outlier Factor)である。LOFは、異常検知対象である特徴量の局所密度ld(P)と、当該特徴量の近傍群(当該特徴量に対する最近傍のk個のサンプル特徴量)の局所密度平均<ld(Q)>との比<ld(Q)>/ld(P)で表すことができる。LOFが1より大きい程、外れ値としての度合いが大きくなる。なお、Pは異常検知対象である特徴量を示し、Qは上記サンプル特徴量を示している。
【0064】
そして、処理部31は、算出した外れ値スコアが所定の閾値以上であるか否かを判定することによって、二軸混練押出機1の異常の有無を判定する(ステップS79)。外れ値スコアが上記のLOFである場合、閾値は1以上の値である。LOFが閾値以上である場合、診断処理部51は異常ありと判定し、LOFが閾値未満である場合、正常と判定する。
【0065】
なお、上述したLOFを用いた異常判定は一例でありk近傍法、SVMにより二軸混練押出機1が異常であるか否かを判定してもよい。また、ホテリング法により、異常検知対象の特徴量が、正常時のサンプル特徴量からかけ離れたものであるか否かを判定することにより、二軸混練押出機1が異常であるか否かを判定するように構成してもよい。
【0066】
図12は、時系列データ画像の特徴量及び異常検知結果を示す概念図である。
図12は、時系列データ画像の高次元の特徴量を2次元の特徴量に次元削減して2次元平面にプロットしたものである。
図12に示すグラフの横軸及び縦軸は、次元削減された時系列データ画像の第1特徴量及び第2特徴量を示している。なお、特徴量の次元圧縮は、例えばt-SNE等の次元削減アルゴリズムによって行うことができる。
図12に示すように学習モデル54は、当該学習モデル54から出力される正常時の特徴量の局所密度が高くなるように学習されている。
破線の円は閾値のイメージを示したものである。異常検知対象である時系列データ画像の特徴量(例えば、星型六角形プロット)と、正常時の時系列データ画像の特徴量群との統計距離が短く(局所密度が相対的に高く)、LOF値が小さい場合、二軸混練押出機1は正常な状態であると推定される。異常検知対象である時系列データ画像の特徴量(例えば、X印プロット)と、正常時の時系列データ画像の特徴量群との統計距離が長く(局所密度が相対的に低く)、LOF値が大きい場合、二軸混練押出機1は異常な状態であると推定される。
スクリュ軸11の回転中心軸の変位を用いた異常診断により、スクリュ軸11の摩耗等の異常の有無を診断することができる。
【0067】
なお、スクリュ軸11の変位に基づく異常検知を主に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、減速機13の振動を示すセンサ値データに基づいて、周波数スペクトルを算出し、当該周波数スペクトルを画像で表した時系列データ画像を生成し、生成した時系列データ画像を用いて減速機13の振動異常を診断することができる。
また、スクリュ軸11に加わる軸トルクを示すセンサ値データを画像で表した時系列データ画像を生成し、生成した時系列データ画像を用いて過負荷の有無を診断することができる。
【0068】
図13は寿命診断の処理手順を示すフローチャートである。診断処理部51は、複数のセンサ値データを画像で表した一又は複数の時系列データ画像に変換し(ステップS91)、変換された時系列データ画像が複数の場合、当該複数の時系列画像データを1枚の時系列データ画像に合成する(ステップS92)。センサ値データは、例えば、軸トルク又はスクリュ軸11の回転中心の変位を示すデータである。次いで、診断処理部51は、ステップS92で合成した時系列データ画像を学習モデル54に入力することによって、時系列データ画像の特徴量を算出する(ステップS93)。
【0069】
また、診断処理部51は、データベース6から、特定のセンサ値データ、例えばステップS12で受信した運転データと同一又は類似の運転データに対応付けられ、かつ正常な寿命を有する二軸混練押出機1のセンサ値データを読み出し(ステップS94)、同様にして時系列データ画像に変換し(ステップS95)、合成し(ステップS96)、合成された時系列データ画像を学習モデル54に入力することによって、正常寿命を有する二軸混練押出機1に係る時系列データ画像の特徴量を算出する(ステップS97)。
【0070】
次いで、診断処理部51は、ステップS97で算出した時系列データ画像の特徴量の外れ値スコアを算出する(ステップS98)。そして、処理部31は、算出した外れ値スコアが所定の閾値以上であるか否かを判定することによって、診断対象の二軸混練押出機1の寿命が、正常寿命を有するか否かを判定する(ステップS99)。外れ値スコアが上記のLOFである場合、閾値は1以上の値である。LOFが閾値以上である場合、診断処理部51は寿命が短いと判定し、LOFが閾値未満である場合、正常な寿命を有すると判定する。
【0071】
なお、ここでは寿命が正常か否かを診断する例を説明したが、特定を寿命を有する二軸混練押出機1から得られたセンサ値データの特徴量と、現在のセンサ値データの特徴量とを比較することによって、二軸混練押出機1が特定の寿命を有するか否かを判定することができる。
【0072】
<学習モデル生成方法>
診断装置5による診断処理に利用した学習モデル54の生成方法を説明する。
図14は学習モデル54の生成方法の概要を示す概念図である。二軸混練押出機1の動作が正常であるか否かを判定するための学習モデル54の生成方法について説明する。以下、診断装置5の診断処理部51が学習モデル54を機械学習させる例を説明する。
【0073】
まず1クラス分類モデルを生成するために必要な学習用データセットとして、二軸混練押出機1が正常に動作しているときに検出して得られた複数の時系列データ画像と、時系列データ画像と無関係な任意の複数の参考画像A,B,Cとを用意する。参考画像A,B,Cは、例えばImage Net等の学習用データセットから選択した複数クラスの画像データである。
図14に示す例では、ラベル0、ラベル1、ラベル2が付された参考画像A,B,Cが用意されている。
【0074】
そして、画像の特徴を抽出する複数の畳み込み層及びプーリング層からなる特徴抽出層を有する学習モデル54に、正常動作時の時系列データ画像と、参考画像A,B,Cとを機械学習させる。具体的には診断処理部51は、各画像の特徴を判別することが可能な特徴量、つまり、
図14右図に示すように時系列データ画像の特徴量の局所密度が高く、しかも参考画像A,B,Cの特徴量との識別性が高くなるような特徴量を出力するように、学習モデル54を学習させる。
以下、1クラス分類モデルの生成方法の詳細を説明する。
【0075】
図15は学習フェーズにおける学習モデル54を示す概念図である。まず、第1のニューラルネットワーク(リファレンスネットワーク)54aと、第2のニューラルネットワーク(セカンダリネットワーク)54aとを用意する。
【0076】
第1のニューラルネットワーク54aは、入力層、特徴抽出層及び分類層を有するCNNである。特徴抽出層は、複数の畳み込み層及びプーリング層の繰り返し構造を有する。分類層は、例えば一又は複数層の全結合層を有する。第1のニューラルネットワーク54aは、例えばImage Net等の学習用データセットを用いて予備学習されている。
第2のニューラルネットワーク54aは第1のニューラルネットワーク54aと同じネットワーク構成であり、特徴抽出層及び分類層を特徴付ける各種パラメータ(重み係数)も同じである。以下、第1及び第2のニューラルネットワーク54a,54aの学習フェーズにおいて、特徴抽出層及び分類層の各種パラメータは同じ値を共有する。
【0077】
そして、診断処理部51は、第1のニューラルネットワーク54aに参考画像Aを入力し、損失関数である記述的ロス(descriptiveness loss)を算出する。一方で、診断処理部51は、第2のニューラルネットワーク54aに正常時の時系列データ画像を入力し、損失関数であるコンパクトロス(compactness loss)を算出する。記述的ロスは、分類器の学習で一般的に使用される損失関数であり、例えば交差エントロピー誤差である。コンパクトロスは下記式(1)、(2)、(3)で表される。コンパクトロスは、バッチ内、つまり学習用データセットにおける第2のニューラルネットワーク54aの出力の分散に相当するような値である。
【0078】
【0079】
そして、診断処理部51は記述的ロスと、コンパクトロスに基づくトータルロスを算出する。トータルロスは、例えば下記式(4)で表される。
【0080】
【0081】
診断処理部51は、上記(4)で表されるトータルロスが小さくなるように誤差逆伝播法等を用いて第1及び第2のニューラルネットワーク54a,54aの各種パラメータの最適化を行うことにより、第1及び第2のニューラルネットワーク54a,54aを学習させる。なお、機械学習させる際、前段の各種パラメータを固定し、後段の複数層のパラメータを調整するとよい。
【0082】
このようにして学習された第1及び第2のニューラルネットワーク54a,54aの特徴抽出層から出力される特徴量は、
図14に示すように、二軸混練押出機1が正常時に得られる時系列データ画像の特徴量の局所密度が高くなり、他の任意画像の特徴量との局所密度が低くなる。
【0083】
図16はテストフェーズにおける学習モデル54を示す概念図である。
図16に示すように、本実施形態1に係る学習モデル54は、上記のように学習した第2のニューラルネットワーク54aの入力層及び特徴抽出層を用いて構成することができる。従って、
図15に示す分類層は、本実施形態1に係る学習モデル54の必須の構成ではない。ただし、
図15に示す第2のニューラルネットワーク54aをそのまま学習モデル54として利用し、特徴抽出層から出力される特徴量を用いることもできる。
なお、
図16には、2つの学習モデル54を図示しているが、検出対象である時系列データ画像と、サンプルである正常時の時系列データ画像とが入力されている状態を概念的に示したものであり、2つのモデルが存在することを示すものではない。
【0084】
テストフェーズにおいては、診断処理部51は、正常時に得られる時系列データ画像をサンプルデータとして学習モデル54に入力することによって、正常時の時系列データ画像の特徴量を出力させる。一方、異常検知対象の時系列データ画像を学習モデル54に入力することによって、当該時系列データ画像の特徴量を出力させる。そして、診断処理部51は、サンプルデータの特徴量に対する、異常検知対象の特徴量の外れ値スコアを算出し、算出された外れ値スコアと閾値とを比較することによって、異常検知対象の時系列データ画像が異常であるか否か、つまり二軸混練押出機1が異常であるか否かを判別する。
【0085】
なお、
図16では、サンプルデータを学習モデル54に入力して当該サンプルデータの特徴量を算出する例を示しているが、予め算出され複数のサンプルデータの特徴量を記憶部32に記憶しておき、異常検知処理においては、記憶部32が記憶するサンプルデータの特徴量を用いて外れ値スコアを算出してもよい。
【0086】
また、二軸混練押出機1の異常の有無を診断するための学習モデル54を説明したが、正常な寿命を有する二軸混練押出機1から得られるセンサ値データを用いて、学習モデル54を学習させることによって、二軸混練押出機1が正常な寿命を有するか否かを診断するための学習モデル54を生成することができる。
【0087】
なお、上記の説明では正常と異常を分類する例を説明したが、複数の1クラス分類モデルである学習モデル54を用いて、典型的な異常時の時系列画像データを、その他の異常時の時系列データ画像と判別するように構成してもよい。例えば、異常検知装置3は、上記実施形態1と同様、正常時の時系列データ画像を学習させた第1の学習モデル54を備える。また、異常検知装置3は、正常時の時系列データ画像と、第1異常時の時系列データ画像とを学習させた第2の学習モデル54を備える。異常検知装置3は、第1の学習モデル54と、第2の学習モデル54を用いることにより、正常時の時系列データ画像と、第1異常時の時系列データ画像と、その他の異常時の時系列データ画像とを判別することが可能である。同様にして、異常検知装置3に3つ以上の学習モデル54を備えることにより、2つ以上の異常時の時系列データ画像を判別可能に構成することができる。
【0088】
また、スクリュ軸異常診断について詳述したが、ステップS63及びステップS64における非効率運転状態にあるか否かの診断、品質異常を招く運転状態にあるか否かの診断を行う学習モデル54も同様に構成及び生成することができる。
【0089】
更に、学習モデル54の一例として1クラス分類モデルを説明したが、一般的なCNN、U-Net、RNN(Recurrent Neural Network)等のニューラルネットワーク、その他のSVM(Support Vector Machine)、ベイジアンネットワーク、又は回帰木等を用いてもよい。
例えば、正常時のセンサ値データ、各種異常時のセンサ値データが蓄積された場合、二軸混練押出機1の状態を教師データとし、センサ値データ又は時系列データ画像にラベル付けした学習用データセットを作成し、CNN等で構成される学習モデル54を学習させるとよい。二軸混練押出機1の状態には、二軸混練押出機1が正常であることを示す正常状態、スクリュ軸11が摩耗した異常状態、スクリュ軸11に適合しない樹脂原料が使用されている異常状態、過負荷が生じている過負荷異常状態、減速機13の振動異常、寿命が短い異常状態、成形品の寸法等の異常状態等が含まれる。
学習モデル54は、入力層、中間層及び出力層を有する。中間層は、画像の特徴を抽出する複数の畳み込み層及びプーリング層を有する。出力層は、二軸混練押出機1の複数の状態に対応する複数のノードを有し、当該状態にある確信度を出力する。学習モデル54は、センサ値データ、又はセンサ値データに係る時系列データ画像が入力された場合、学習モデル54から出力される二軸混練押出機1の状態が教師データの示す状態に近づくように、中間層の重み係数を最適化する。当該重み係数は、例えばニューロン間の重み(結合係数)などである。パラメータの最適化の方法は特に限定されないが、例えば最急降下法、誤差逆伝播法等を用いて各種パラメータの最適化を行う。
このように生成された学習モデル54によれば、診断対象の二軸混練押出機1から得られたセンサ値データの時系列データ画像を学習モデル54に入力することによって、二軸混練押出機1の状態を診断することができる。例えば、診断処理部51は、二軸混練押出機1は、最も高い確信度を出力するノードに対する状態にあると判定する。
【0090】
また、学習モデル54は、時系列データ画像が入力された場合、より最適な成形条件、又は成形条件の調整量を出力するように構成してもよい。診断装置5は、学習モデル54から出力された成形条件を異常検知装置3へ送信し、異常検知装置3は受信した当該成形条件を制御装置14へ送信する。
【0091】
<診断結果及び判定結果の表示処理>
ステップS19における判定結果及び統計量等の表示例を説明する。
図17は制御装置14における異常判定結果等の表示例を示す模式図である。表示部に表示される判定結果等表示画面141は、グラフ表示部141a、警告表示部141b、AI診断表示部141c、処理値表示部141dを有する。グラフ表示部141aは、例えば、軸トルク、スクリュ軸11の振動、変位の統計量の時間変化をグラフで表示する。警告表示部141bは、受信した二軸混練押出機1の異常の有無を示す判定結果を表示し、異常がある場合、警告内容を表示する。AI診断表示部141cは、後述の診断装置5による診断結果を表示する。処理値表示部141dは、受信した統計量の値を表示する。
【0092】
ステップS28における診断結果の表示例を説明する。
図18は端末装置7における異常判定結果等の表示例を示す模式図である。判定結果等表示画面71は、グラフ表示部71a、警告履歴表示部71b、AI診断履歴表示部71c、処理値表示部71d、データ選択部71eを有する。データ選択部71eは、表示するデータの選択を受け付ける。例えば、データ選択部71eは、二軸混練押出機1の運転日時、表示する統計量の種類、診断項目の選択を受け付ける。第1ネットワークに複数の二軸混練押出機1が接続されている場合、データ選択部71eは、二軸混練押出機1の選択を受け付けるように構成してもよい。端末装置7はデータ選択部71eによって選択された運転日時、二軸混練押出機1の識別情報等を異常検知装置3へ送信し、選択された二軸混練押出機1及び運転日時における異常判定結果の履歴、センサ値データの統計量、診断結果の履歴を要求する。端末装置7は、要求に応じて診断装置5から送信されるこれらの情報を受信し、受信した情報を表示する。
グラフ表示部71aは、センサ値データの統計量の時間変化をグラフで表示する。警告履歴表示部71bは、受信した二軸混練押出機1の異常の有無を示す判定結果の履歴を表示する。AI診断履歴表示部71cは、二軸混練押出機1の異常又は寿命に係る診断結果の履歴を表示する。処理値表示部71dは、受信した統計量の値を表示する。
【0093】
<本実施形態1に係る成形機システムの作用効果>
以上、本実施形態1に係る成形機システムによれば、二軸混練押出機1の運転制御を行う制御装置14と、異常検知装置3と、診断装置5とを備え、各装置が協動することによって制御装置14に過度の負荷を与えることなく、二軸混練押出機1の異常を検知し、二軸混練押出機1の異常、寿命等の詳細な状態を診断することができる。
【0094】
また、異常検知装置3はセンサ値データ及び運転データを用いて簡易に二軸混練押出機1の異常を検知し、異常判定結果を制御装置14へ送信することができる。制御装置14は、運転データを異常検知装置3へ送信するのみで、二軸混練押出機1の異常判定結果を受信することができ、異常判定結果に基づいて二軸混練押出機1の動作を監視することができる。
【0095】
更に、異常検知装置3はセンサ値データの統計量を算出して制御装置14へ送信し、統計量のグラフ、及び統計量の値を表示部に表示させることができる。
【0096】
更にまた、異常検知装置3は、減速機13の振動異常、スクリュ軸11に対する過負荷、成形品の寸法異常を検知し、かかる異常を制御装置14へ送信することができる。
【0097】
更にまた、診断装置5は、現在の二軸混練押出機1の運転データ及びセンサ値データと、データベース6に蓄積された過去のセンサ値データとに基づいて、二軸混練押出機1の異常及び寿命を詳細に診断することができる。診断装置5は、異常検知装置3では不可能な二軸混練押出機1の状態診断を行うことができる。
異常検知装置3は、現在の二軸混練押出機1の運転データ及びセンサ値データを診断装置5へ送信して診断を要求することによって、診断結果を取得し、取得した診断結果を制御装置14へ送信することができる。制御装置14は、運転データを異常検知装置3へ送信するのみで、診断装置5による診断結果を受信し、診断結果を表示部に表示することができる。
【0098】
更にまた、診断装置5は、学習モデル54を用いて二軸混練押出機1の異常、寿命等の状態を診断することができる。
【0099】
更にまた、学習モデル54を1クラス分類モデルで構成することにより、異常時の二軸混練押出機1の時系列データ画像を用いることなく、正常な二軸混練押出機1の動作時に得られる時系列データ画像を用いて当該学習モデル54を機械学習させることができる。
【0100】
更にまた、複数のセンサ2から出力されるセンサ値データを1枚の時系列データ画像で表現し、学習モデル54を用いて当該時系列データ画像の特徴量を算出することによって、二軸混練押出機1の状態を精度よく表した特徴量を簡易に得ることができる。このようにして得られた特徴量を用いることにより、二軸混練押出機1の状態を精度良く診断することができる。
【0101】
更にまた、本実施形態1では診断装置5が学習モデル54を機械学習させる例を説明したが、外部の他のコンピュータ又はサーバを用いて学習モデル54を機械学習させてもよい。
【0102】
更にまた、本実施形態1では主に二軸混練押出機1の異常検知及び診断を説明したが、射出成形機、フィルム成形機等の成形機、その他の製造装置の異常検知及び診断を行うように構成してもよい。
【0103】
(変形例)
診断装置5は、学習モデル54を用いた診断処理に対して、課金処理を実行するように構成してもよい。例えば、診断装置5は、二軸混練押出機1の台数、センサ2の数、センサ2の種類、診断処理対象のデータ量、使用する学習モデル54の数等に応じて、診断料金を算出し、算出された診断料金、異常診断システムのユーザID、二軸混練押出機1の識別ID,利用日時、データ量、診断項目を対応付けて記憶部52に記憶するとよい。
【0104】
(実施形態2)
実施形態2に係る成形機システムは、診断結果に対するユーザのフィードバックを受け付け、学習モデル54又は診断基準を更新する点が実施形態2と異なる。成形機システムのその他の構成は、実施形態1に係る成形機システムと同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0105】
図19は実施形態2に係る診断結果に関するフィードバック処理手順を示すフローチャートである。異常検知装置3は、制御装置14を介して診断結果の適否、又は二軸混練押出機1の正しい状態を受け付ける(ステップS211)。異常検知装置3の処理部31は、評価対象である診断結果を得る元になった運転データ及びセンサ値データ、並びに二軸混練押出機1の正しい状態を示すデータを含むフィードバック情報を診断装置5へ送信する(ステップS212)。
なお、上記のフィードバック情報の内容は一例である。例えば診断ID、運転データ、センサ値データ及び診断結果がデータベース6に記憶されている場合、異常検知装置3は、受信した診断結果に付された診断IDと、二軸混練押出機1の正しい状態とを含むフィードバック情報を診断装置5へ送信すればよい。また、異常検知装置3は、診断ID及び診断結果の適否を含むフィードバック情報を診断装置5へ送信するように構成しても良い。
【0106】
診断装置5は、異常検知装置3から送信されたフィードバック情報を受信し(ステップS213)、受信したフィードバック情報をデータベース6に記憶する(ステップS214)。つまり、運転データ、センサ値、二軸混練押出機1の正しい状態を記憶する。そして、診断処理装置は、フィードバック情報に基づいて学習モデル54を追加学習させ、又は診断基準を更新する(ステップS215)。
【0107】
例えば、異常との診断結果が誤りで、二軸混練押出機1が正常であった場合、診断結果を誤ったセンサ値データを正常時のデータとして学習用データセットに加えて、学習モデル54を追加学習させることにより、学習モデル54による特徴量の抽出精度を向上させることができる。
【0108】
また、算出されたスコア値に基づいて、二軸混練押出機1の異常を診断するための閾値を変更するように構成してもよい。例えば、異常との診断結果が誤りで、二軸混練押出機1が正常であった場合、診断処理部51は、閾値を増大させる。正常との診断結果が誤りで、二軸混練押出機1が異常であった場合、診断処理部51は、閾値を減少させる。
【0109】
なお、学習モデル54及び診断基準の変更は、複数のフィードバック情報を受信及び蓄積して行うとよい。
【0110】
実施形態2に係る成形機システムによれば、ユーザからのフィードバックにより、診断装置5の診断精度をより向上させることができる。
【0111】
(実施形態3)
実施形態3に係る成形機システムは、現場で得られる運転データ、センサ値データ、二軸混練押出機1の状態を示すデータをデータベース6に蓄積し、学習モデル54を追加学習させる点が実施形態3と異なる。成形機システムのその他の構成は、実施形態1に係る成形機システムと同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0112】
図20は実施形態3に係る二軸混練押出機1の状態に関するフィードバック処理手順を示すフローチャートである。異常検知装置3は、制御装置14を介して二軸混練押出機1の状態を受け付ける(ステップS311)。つまり、異常検知装置3はユーザによって評価された、二軸混練押出機1の現在の状態を受け付ける。そして、異常検知装置3の処理部31は、運転データ、センサ値データ、二軸混練押出機1の状態を含む情報を診断装置5へ送信する(ステップS312)。
また、異常検知装置3は、二軸混練押出機1のスクリュ軸11の構成、樹脂原料の種類、成形品の品質評価、推定寿命等の情報を受け付けて診断装置5へ送信するとよい。
【0113】
診断装置5は、異常検知装置3から送信された、運転データ、センサ値データ、二軸混練押出機1の状態、その他の上記情報を含む情報を受信し(ステップS313)、受信した情報をデータベース6に記憶する(ステップS314)。つまり、診断処理部51は、運転データ、センサ値データ、二軸混練押出機1の状態、その他の上記情報を記憶する。そして、診断処理装置は、データベース6に蓄積されたユーザの評価に基づく、センサ値データを含む学習用データセットを用いて学習モデル54を追加学習させる(ステップS315)。
【0114】
実施形態3に係る異常検知装置3によれば、ユーザの評価を反映させて学習モデル54を追加学習させることにより、診断装置5の診断精度をより向上させることができる。
【0115】
なお、このようにして異常検知装置3から送信される情報によれば、教師あり学習用のデータセットを作成することができる。診断装置5は、実施形態1で説明したように、教師あり学習用データセットを用いて、センサ値データ又は時系列データ画像が入力された場合、二軸混練押出機1の状態に係る情報を出力する学習モデル54を生成し、又は追加学習させるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0116】
1 二軸混練押出機
2 センサ
3 異常検知装置
4 ルータ
5 診断装置
6 データベース
7 端末装置
10 シリンダ
11 スクリュ軸
12 モータ
13 減速機
14 制御装置
31 処理部
33 通信部
34 取得部
51 診断処理部
53 通信部
54 学習モデル
54a ニューラルネットワーク
P1,P2 コンピュータプログラム