(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116407
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】電気コネクタ及び回路基板付電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/6471 20110101AFI20240820BHJP
【FI】
H01R13/6471
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024100428
(22)【出願日】2024-06-21
(62)【分割の表示】P 2021075876の分割
【原出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138140
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 努
(72)【発明者】
【氏名】山田 彰太
(72)【発明者】
【氏名】玉井 暢洋
(72)【発明者】
【氏名】相本 大樹
(72)【発明者】
【氏名】菅原 学史
(57)【要約】
【課題】クロストークを良好に防止できる電気コネクタ及び回路基板付電気コネクタを提供する。
【解決手段】信号伝送路は、単一の伝送路であり、信号伝送路の配列方向に配列された信号伝送路は信号伝送路列を形成し、信号伝送路列は、回路基板の実装面に対し平行かつ上記配列方向に対し直角な幅方向で間隔をもって複数設けられており、隣接する二つの信号伝送路列のうち、一方の信号伝送路列の信号接続部は、他方の信号伝送路列の信号接続部に対して上記配列方向でずれて位置しており、グランド部材のグランド接続部は、上記幅方向で、グランド接続部の両端位置間の幅範囲が信号伝送路の信号接続部の幅範囲を超えて及んでいる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板の実装面に平行な一方向を配列方向として該配列方向で間隔をもった複数位置で回路基板の信号回路部へ半田接続される複数の信号伝送路と、
回路基板のグランド回路部へ半田接続される少なくとも一つのグランド部材とを備え、
上記信号伝送路が、上記信号回路部に半田接続される信号接続部を有し、
上記グランド部材が、上記グランド回路部に半田接続されるグランド接続部を有し、
該グランド接続部が、上記配列方向で、隣接する上記信号伝送路の信号接続部同士間に位置している電気コネクタにおいて、
上記信号伝送路は、単一の伝送路であり、
上記配列方向に配列された上記信号伝送路は信号伝送路列を形成し、
上記信号伝送路列は、上記実装面に対し平行かつ上記配列方向に対し直角な幅方向で間隔をもって複数設けられており、
隣接する二つの信号伝送路列のうち、一方の信号伝送路列の信号接続部は、他方の信号伝送路列の信号接続部に対して上記配列方向でずれて位置しており、
上記グランド部材のグランド接続部は、上記幅方向で、上記グランド接続部の両端位置間の幅範囲が上記信号伝送路の信号接続部の幅範囲を超えて及んでいることを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
上記信号伝送路は、単一の端子であることとする請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
上記グランド接続部は、上記グランド部材としてのグランド板の一部であることとする請求項1又は請求項2に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
上記グランド接続部は、上記グランド部材としてのグランド端子の一部であることとする請求項1又は請求項2に記載の電気コネクタ。
【請求項5】
上記グランド接続部は、上記信号接続部同士間にて上記幅方向で複数配列されていることとする請求項1から請求項4のいずれかに記載の電気コネクタ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の電気コネクタと、該電気コネクタにおける信号伝送路の信号接続部が半田接続される信号回路部及びグランド部材のグランド接続部が半田接続されるグランド回路部が設けられた回路基板とを有し、上記電気コネクタが上記回路基板に実装されていることを特徴とする回路基板付電気コネクタ。
【請求項7】
上記グランド接続部は、上記信号接続部同士間にて上記幅方向で複数配列されており、
上記回路基板のグランド回路部は、複数の上記グランド接続部に対応して回路基板の実装面に位置する複数の実装面部を有し、
複数の上記グランド接続部は、上記実装面部に半田接続されていることとする請求項6に記載の回路基板付電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気コネクタ及び回路基板付電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
信号端子と、グランド部材としてのグランド端子及びグランド板とがハウジングに保持され、回路基板に実装される電気コネクタが特許文献1にて知られている。
【0003】
特許文献1では、電気コネクタは、回路基板に実装されるレセプタクルコネクタと、他の回路基板に実装される相手側のコネクタとしてのプラグコネクタとを有し、レセプタクルコネクタへプラグコネクタを嵌合接続することにより両回路基板間で電気信号を伝送している。レセプタクルコネクタもプラグコネクタも信号端子とグランド端子及びグランド板とを有している点では、基本構成は同じである。信号端子は、一端側に回路基板へ半田実装される信号接続部、他端側に相手コネクタの信号端子と接触接続される信号接触部とを有している。グランド端子は信号端子と同一の形態そして寸法をなし、一端側にグランド接続部、他端側にグランド接触部を有しており、また、グランド端子はグランド板と導通している。
【0004】
特許文献1では、信号端子とグランド端子は同じ形状で形成されており、二つの信号端子が信号伝送路としてペア伝送路をなすペア信号端子を形成し、一つのグランド端子が、隣接するペア信号端子同士間にて、ペア信号端子の配列されているのと同一直線上に位置している。また、ペア信号端子とグランド端子とで形成される端子列は、端子配列方向に対し直角な方向に複数設けられ、隣接する端子列間にはグランド板が配置されている。このような構成を有する特許文献1の電気コネクタは、各ペア信号端子によって高速作動信号を伝送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の電気コネクタにあっては、隣接するペア信号端子同士間にグランド端子が位置しており、高速差動信号をペア信号端子で伝送する場合、両ペア信号端子同士間でのクロストーク防止を期待できる。しかしながら、特許文献1では、グランド端子は、ペア信号端子を構成する二つの信号端子の一方と同じ形状で、ペア信号端子と同一直線上に一つだけ配置されている。したがって、隣接するペア信号端子同士間でグランド端子をまわり込むようにして、クロストークが少なからず発生するおそれがあり、この点において改善の余地がある。
【0007】
本発明は、かかるクロストークをもさらに防止できる電気コネクタ及び回路基板付電気コネクタを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、上述の課題は、第一発明に係る電気コネクタ及び第二発明に係る回路基板付電気コネクタにより解決される。
【0009】
<第一発明>
第一発明に係る電気コネクタは、回路基板の実装面に平行な一方向を配列方向として該配列方向で間隔をもった複数位置で回路基板の信号回路部へ半田接続される複数の信号伝送路と、回路基板のグランド回路部へ半田接続される少なくとも一つのグランド部材とを備え、上記信号伝送路が、上記信号回路部に半田接続される信号接続部を有し、上記グランド部材が、上記グランド回路部に半田接続されるグランド接続部を有し、該グランド接続部が、上記配列方向で、隣接する上記信号伝送路の信号接続部同士間に位置している。
【0010】
かかる電気コネクタにおいて、本発明では、上記グランド部材のグランド接続部は、上記実装面に対し平行かつ上記配列方向に対し直角な幅方向で、上記グランド接続部の両端位置間の幅範囲が上記信号伝送路の信号接続部の幅範囲を超えて及んでいることを特徴としている。
【0011】
本発明では、グランド部材のグランド接続部の両端位置間の幅範囲が信号伝送路の信号接続部の幅範囲を超えて及んでいるので、従来のような、信号端子とグランド端子が互いに同じ形状をなし、隣接する信号端子の信号接続部同士間にグランド端子の接続部が一つだけ位置している場合と比較して、グランド接続部の幅範囲が信号接続部の幅範囲よりも大きく形成される。この結果、グランド接続部を挟んで隣接する信号接続部同士間でグランド接続部をまわり込むようなクロストークが低減させることができる。
【0012】
第一発明において、上記信号伝送路は、単一の端子であってもよいし、上記配列方向で間隔をもって隣接するペア端子であってもよい。
【0013】
第一発明において、上記グランド接続部は、上記グランド部材としてのグランド板の一部であってもよいし、上記グランド部材としてのグランド端子の一部であってもよい。また、上記グランド接続部は、上記信号接続部同士間にて上記幅方向で複数配列されていてもよい。
【0014】
<第二発明>
第二発明に係る回路基板付電気コネクタは、第一発明に係る電気コネクタと、該電気コネクタにおける信号伝送路の信号接続部が半田接続される信号回路部及びグランド部材のグランド接続部が半田接続されるグランド回路部が設けられた回路基板とを有し、上記電気コネクタが上記回路基板に実装されていることを特徴としている。
【0015】
第二発明において、上記グランド接続部は、上記信号接続部同士間にて上記幅方向で複数配列されており、上記回路基板のグランド回路部は、複数の上記グランド接続部に対応して回路基板の実装面に位置する複数の実装面部を有し、複数の上記グランド接続部は、上記実装面部に半田接続されていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、グランド部材のグランド接続部の両端位置間の幅範囲が信号伝送路の信号接続部の幅範囲を超えて及んでいるので、グランド接続部の幅範囲が信号接続部の幅範囲よりも大きく形成され、その結果、隣接する信号接続部同士間でグランド接続部をまわり込むようなクロストークを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る中継電気コネクタを相手コネクタとともに示した斜視図であり、嵌合前の状態を示している。
【
図2】(A)は
図1の中継電気コネクタのブレードを単体で示す斜視図であり、(B)は(A)のブレードのペア信号端子及びグランド端子のみを示す正面図である。
【
図3】
図1の中継電気コネクタにおける一部のブレードの底面図であり、一部を拡大して示している。
【
図4】(A)は
図1の相手コネクタの端子保持体を単体で示す斜視図であり、(B)は(A)の端子保持体の各部材を分離して示した斜視図である。
【
図5】
図1の相手コネクタにおける一部の端子保持体の底面図であり、一部を拡大して示している。
【
図6】相手コネクタが実装される回路基板における一部のビアのみを示した底面図である。
【
図7】(A)は変形例における中継電気コネクタの中継回路基板を単体で示す斜視図であり、(B)は(A)の中継回路基板の導電パターン及びグランドビアを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る第一の電気コネクタとしての中継電気コネクタ1(以下、「中継コネクタ1」という)を、第二の電気コネクタとしての相手側の電気コネクタ2,3(以下、それぞれ「相手コネクタ2」、「相手コネクタ3」という)とともに示した斜視図であり、嵌合前の状態を示している。本実施形態では、中継コネクタ1及び相手コネクタ2,3は高速差動信号を伝送するコネクタ組立体を構成する。相手コネクタ2,3は、それぞれ異なる回路基板(図示せず)上に配される回路基板用電気コネクタであり、各回路基板の面が上下方向、換言するとコネクタ高さ方向(Z軸方向)に対して直角をなす姿勢で中継コネクタ1に嵌合される。具体的には、中継コネクタ1に対して上方(Z1側)から相手コネクタ2が嵌合され、下方(Z2側)から相手コネクタ3が嵌合接続されることにより、相手コネクタ2,3同士が中継コネクタ1を介して接続される。本実施形態では、相手コネクタ2,3は、全く同じ形状をなす電気コネクタとして構成されている。
【0020】
中継コネクタ1は、
図1に見られるように、板状をなす後述の複数のブレード20(
図2(A)も参照)と、複数のブレード20をその板厚方向(X軸方向)で所定間隔をもって配列して支持する樹脂等の電気絶縁材製のハウジング10と、後述の二つの金属板製の連結部材30とを有している。
【0021】
ハウジング10は、ブレード20の配列方向(X軸方向)を長手方向(以下、「コネクタ長さ方向」という)とする略直方体外形をなしている。ハウジング10は、ブレード20の上側部分を支持する上側ハウジング11と、ブレード20の下側部分を支持する下側ハウジング12とを有している。後述するように、上側ハウジング11と下側ハウジング12とは連結部材30を介して連結されている。
【0022】
上側ハウジング11は、上方から見て四角枠状をなし複数のブレード20を包囲する周壁11Aと、複数のブレード20をコネクタ長さ方向(X軸方向)で所定間隔をもって位置させるための複数の中間壁(図示せず)とを有している。周壁11Aは、コネクタ長さ方向(X軸方向)に延びる二つの側壁11Bと、コネクタ長さ方向に対して直角なコネクタ幅方向(Y軸方向)に延び上記二つの側壁11Bの端部同士を連結する二つの端壁11Cとを有している。中間壁は、周壁11Aに囲まれた空間内にて、コネクタ長さ方向に対して直角な板面をもつ板状をなして二つの側壁11Bの内壁面同士を連結しており、コネクタ長さ方向で所定間隔をもって配列形成されている。
【0023】
隣接する中間壁同士の間あるいは中間壁と端壁11Cとの間で上下方向に貫通して形成されるスリット状の空間は、ブレード20の上側部分を収容するためのブレード収容空間(図示せず)をなしている。また、側壁11Bの下部には、側壁11Bをその壁厚方向(Y軸方向)に貫通する上側係止孔部11B-1が、コネクタ長さ方向(X軸方向)で所定間隔をもって複数形成されている。上側係止孔部11B-1は、連結部材30の後述の上側係止片と係止可能となっている。
【0024】
周壁11Aは、中間壁の上端よりも上方に延びている。この上方に延びた部分に囲まれる空間、すなわち上方に開口するとともに上記ブレード収容空間と連通する空間は、相手コネクタ2を上方から受け入れるための上側受入部11Dとして形成されている。ブレード収容空間内にブレード20が収容された状態では、
図1に見られるように、ブレード20の上端側部分がブレード収容空間の上端開口から突出し、上側受入部11D内に位置している。
【0025】
下側ハウジング12は、既述した上側ハウジング11と同形状をなしており、上側ハウジング11に対して上下対称となる姿勢で設けられており、スリット状のブレード収容空間(図示せず)でブレード20の下側部分を収容している。下側ハウジング12において上側ハウジング11の各部と対応する部分には、上側ハウジング11における符号に「1」を加えた符号を付し、また、下側ハウジング12の各部名称については、上側ハウジング11の各部名称における「上側」を「下側」と読み替えることにより、下側ハウジング12の説明を省略する。
【0026】
連結部材30は、金属板部材を打ち抜くとともに部分的に屈曲して作られている。連結部材30は、コネクタ長さ方向(X軸方向)を長手方向として延び、その板厚方向がコネクタ幅方向(Y軸方向)に一致した姿勢で、コネクタ幅方向でのブレード20の両側に1つずつ設けられている。連結部材30の上端側には、コネクタ長さ方向で上側ハウジング11の上側係止孔部11B-1に対応する位置に、上側係止孔部11B-1に進入して上下方向(Z軸方向)で係止する上側係止片(図示せず)が、連結部材30の一部を切り起こして形成されている。連結部材30の下端側には、上側係止片(図示せず)と同様に、下側ハウジング12の下側係止孔部12B-1に上下方向(Z軸方向)で係止する下側係止片(図示せず)が設けられている。
【0027】
図2(A)はブレード20を単体で示す斜視図であり、
図2(B)は
図2(A)のブレード20に設けられた後述のペア信号端子22,24及びグランド端子26のみを示す正面図である。ブレード20は、
図2(A)に示されるように、板状をなす樹脂製の基材21と、基材21に配列保持された複数の第一の信号伝送路としての第一のペア伝送路をなすペア信号端子22,24と、ペア信号端子22,24と同列をなして基材21に配列保持された複数のグランド端子26と、基材21の両側の板面(YZ方向に拡がった面)に取り付けられた金属板製の第一グランド板27及び第二グランド板28(以下、両者を区別する必要がない場合は「グランド板27,28」と総称する)とを有している。
図2(A)には基材21のX1側の板面に取り付けられる第一グランド板27が示されている。また、
図1には、基材21のX2側の板面に取り付けられる第二グランド板28が示されている。
【0028】
基材21には、上下方向に延びる両側端縁の中央寄り位置に2つの被支持突部21Aが突出形成されている。被支持突部21Aは、上側ハウジング11の側壁11B及び下側ハウジング12の側壁12Bのそれぞれの内壁面に形成された段部(図示せず)によって上下方向で支持されるようになっている。基材21には、グランド板27,28を保持するための保持突部21Bが、コネクタ幅方向(Y軸方向)でのグランド端子26と同位置にて、上下方向での複数位置で、基材21の両側の板面から突出して形成されている。
図2(A)には、第一グランド板27を保持する保持突部21Bが示されている。
【0029】
ペア信号端子22,24及びグランド端子26は、
図2(B)に見られるように、金属板を板厚方向に打ち抜くとともに部分的に屈曲して作られており、全体形状が上下方向(Z軸方向)で延びた帯片状をなしている。ペア信号端子22,24は、ストレートペア22とクロスペア24の二種のペアを有している。本実施形態では、
図2(B)に見られるように、ストレートペア22とクロスペア24とがコネクタ幅方向(Y軸方向)で交互に配置されており、さらに、ストレートペア22とクロスペア24との間の位置、及び、ストレートペア22とクロスペア24との配列範囲の両方の外側の位置にグランド端子26が配置されている。つまり、
図2(B)に見られるように、Y1側から、グランド端子26、クロスペア24、グランド端子26、ストレートペア22と、順に繰り返し配置されており、端子列の両端側にグランド端子26が位置している。
【0030】
ストレートペア22は、上下方向で一端側から他端側までの全範囲にわたり互いに間隔をもって延びる一対のストレート端子23を有している。
図2(B)に示されるように、一対のストレート端子23は、ストレート端子23の板厚方向(X軸方向)に見たとき、互いに左右対称でかつ上下対称な形状をなしている。ストレート端子23は、上下方向での両端部に、相手コネクタ2,3の後述の相手ストレート端子53との接続のための信号接続部23Aを有している。
【0031】
クロスペア24は、一対のクロス端子25を有している。一対のクロス端子25は、クロス端子25の板厚方向(X軸方向)に見たとき、上下方向での一端側と他端側との間に位置する中間部がコネクタ幅方向(Y軸方向)で互いに近づくように屈曲することで重複して位置している。一対のクロス端子25は、この重複する位置にて、板厚方向(X軸方向)で互いに離れるように該板厚方向に屈曲されており、互いに接触せずに交差している。
図2(B)に見られるように、一対のクロス端子25は、クロス端子25の板厚方向(X軸方向)に見たとき、互いに左右対称でかつ上下対称な形状をなしている。クロス端子25は、上下方向での両端部に、相手コネクタ2,3の後述の相手ストレート端子53との接続のための信号接続部25Aを有している。
【0032】
グランド端子26は、
図2(B)に見られるように、ストレート端子23及びクロス端子25よりもコネクタ幅方向(Y軸方向)で幅広に形成されている。グランド端子26は、上下方向での両端部に、相手コネクタ2,3の後述の第一相手グランド板54との接続のためのグランド接続部26Aを有している。
【0033】
ストレートペア22、クロスペア24、グランド端子26は、
図2(B)の順序で配列された状態で、一体モールド成形により基材21に保持されている。ストレートペア22、クロスペア24、グランド端子26が基材21に保持された状態において、信号接続部23A,25A及びグランド接続部26Aは、
図2(A)に見られるように基材21のX1側の板面から露呈しており、その露呈面で相手コネクタ2,3の相手ストレート端子53あるいは第一相手グランド板54と接触可能となっている。
【0034】
グランド板27,28は、基材21の板面のほぼ全域を覆うようにして、例えば超音波融着により基材21に取り付けられている。本実施形態では、第一グランド板27は、上下方向で基材21よりも若干短く形成されており、その結果、
図2(A)に見られるように、上側及び下側の信号接続部23A,25A及びグランド接続部26Aが基材21のX1側の板面から露呈している。一方、第二グランド板28は、上下方向で基材21とほぼ同じ長さで、換言すると、第一グランド板27よりも長く形成されており、第二グランド板28の上端及び下端は、基材21の上端及び下端とほぼ同位置に位置している。グランド板27,28には、コネクタ幅方向(Y軸方向)でのグランド端子26と同位置で、ブレード20の厚さ方向(X軸方向)でグランド端子26へ向けて突出するとともに上下方向(Z軸方向)に延びる突条部27A,28Aが屈曲形成されており、該突条部27A,28Aの突出頂部でグランド端子26の板面に接触して電気的に導通可能となっている。
図2(A)には、第一グランド板27の突条部27Aが示されており、
図1には、第二グランド板28の突条部28Aが示されている。
【0035】
中継コネクタ1にてコネクタ長さ方向(X軸方向)に配列された複数のブレード20は、隣接するブレード20同士がコネクタ幅方向(Y軸方向)で互いにずれて位置している。
図3は、三つのブレード20についてコネクタ幅方向(Y軸方向)での中間部を拡大して示している。本実施形態では、
図3に見られるように、各ブレード20において、隣接するペア信号端子22,24同士は、ピッチPの距離をもって配置されている。ここで、ピッチPは、ストレートペア22におけるストレート端子23同士の中央位置と、これに隣接するクロスペア24におけるクロス端子25同士の中央位置との距離である。
【0036】
また、グランド端子26は、
図3に見られるように、該グランド端子26の中央位置の距離と該グランド端子26に隣接するペア信号端子22,24の中央位置との距離が、一つ分のピッチPの半分である0.5P(半ピッチ)となる位置に配置されている。換言すると、ストレート端子23、クロス端子25及びグランド端子26は、0.5P(半ピッチ)の間隔をもって、すなわち等間隔で配列されている。本実施形態では、各ブレード20におけるペア信号端子22,24の配列を「信号伝送路列」という。
【0037】
本実施形態では、各信号伝送路列において、ストレートペア22とクロスペア24が交互に配置されており、これによって、遠端漏話(FEXT)の低減が図られている。
【0038】
図3に見られるように、本実施形態では、コネクタ長さ方向(X軸方向)で隣接する任意の二つの信号伝送路列における一方の信号伝送路列のペア信号端子22,24が、コネクタ幅方向(Y軸方向)にて、他方の信号伝送路列のペア信号端子22,24同士間の中央位置に配置されている。つまり、一方の信号伝送路列のペア信号端子22,24が他方の信号伝送路列のペア信号端子22,24に対して、0.5P(半ピッチ)分、ずれて位置している。
【0039】
例えば、
図3に示される上段、中断、下段の三つの信号伝送路列において、「一方の信号伝送路列」を中段の信号伝送路列、「他方の信号伝送路列」を上段の信号伝送路列としたとき、中段の信号伝送路列のペア信号端子22,24は、上段の信号伝送路列のペア信号端子22,24に対してコネクタ幅方向でY2側へ0.5P(半ピッチ)分、ずれて位置している。
【0040】
例えば、
図3に示される中段の信号伝送路列において任意に特定された一つのペア信号端子であるストレートペア22(ここでは、「特定ペアS」という)に着目したとき、上段の信号伝送路列において、特定ペアSに近接するペア信号端子22,24は二つ存在する。ここでは、この二つのペア信号端子22,24をそれぞれ「第一近接ペアT1」、「第二近接ペアT2」という。
図3では、特定ペアS、第一近接ペアT1、第二近接ペアT2のそれぞれが一点鎖線で囲まれて示されている。
【0041】
図3に見られるように、第一近接ペアT1と第二近接ペアT2とは同じ信号伝送路列(上段の信号伝送路列)にて互いに隣接して位置しており、第一近接ペアT1は、特定ペアSに対してコネクタ幅方向(Y軸方向)でY1側へ0.5P(半ピッチ)分ずれて位置し、第二近接ペアT2は、特定ペアSに対してコネクタ幅方向でY2側へ0.5P(半ピッチ)分ずれて位置している。つまり、特定ペアSは、コネクタ幅方向で第一近接ペアT1と第二近接ペアT2との間の中央に位置している。したがって、特定ペアSと第一近接ペアT1との距離と、特定ペアSと第二近接ペアT2との距離とは等しい。
【0042】
第一近接ペアT1はストレートペア22であり、第二近接ペアT2はクロスペア24である。つまり、第一近接ペアT1は特定ペアSと同種のペアであり、第二近接ペアT2は特定ペアSと異種のペアである。各ペア信号端子22,24で信号が伝送されると、異種のペア信号端子22,24同士間では極性が反転し、同種のペア信号端子22,22同士間では極性が反転しない。つまり、特定ペアSにおいて、第二近接ペアT2との間では極性が互いに反転した関係となり、第一近接ペアT1との間では極性が互いに反転しない関係となる。したがって、本実施形態では、特定ペアSと第一近接ペアT1及び第二近接ペアT2とで信号伝送方向が互いに逆である場合に、第一近接ペアT1からの近端漏話(NEXT)の信号と第二近接ペアT2からのNEXTの信号は、それらの信号の波形のピークが互いにずれた状態で、特定ペアSと及ぶこととなる。したがって、第一近接ペアT1及び第二近接ペアT2からのNEXTの信号の波形のピークが重畳することが回避され、その分、特定ペアSにおける近端漏話(NEXT)が低減される。
【0043】
また、本実施形態では、特定ペアSはコネクタ幅方向で第一近接ペアT1と第二近接ペアT2との間の中央に位置しており、特定ペアSと第一近接ペアT1との距離と特定ペアSと第二近接ペアT2との距離とは等しいので、特定ペアSに対する第一近接ペアT1及び第二近接ペアT2からのNEXTの信号の波形のピークを最大限にずらすことができ、特定ペアSにおけるNEXTを、より良好に低減できる。
【0044】
次に、相手コネクタ2,3の構成について説明する。
図1に見られるように、相手コネクタ2,3は全く同じ構成であるので、以下、相手コネクタ3の構成を中心に説明し、相手コネクタ2の説明は相手コネクタ3と同じ符号を付して省略する。
図1に見られるように、相手コネクタ3は、中継コネクタ1の下側ハウジング12の下側受入部(図示せず)に適合した直方体外形で形成されたハウジング40と、ハウジング40に配列保持される複数の端子保持体50と、後述の二つの金属板製の固定部材60とを有している。
【0045】
ハウジング40は、樹脂等の電気絶縁材製であり、端子保持体50の配列方向(X軸方向)を長手方向(コネクタ長さ方向)とする略直方体外形をなしている。ハウジング40は、上下方向に分割して形成された上側ハウジング41と下側ハウジング42とを有している。上側ハウジング41と下側ハウジング42とは固定部材60を介して連結されている。ハウジング40は、コネクタ長さ方向に配列された複数の端子保持体50を収容して保持している。
【0046】
上側ハウジング41は、上下方向に見て四角枠状をなす周壁41Aと、周壁41Aに囲まれた空間でコネクタ幅方向(Y軸方向)に延びる複数の中間壁41Dとを有している。周壁41Aは、コネクタ長さ(X軸方向)に延びる二つの側壁41Bと、コネクタ長さ方向に対して直角な短手方向であるコネクタ幅方向に延び二つの側壁41Bの端部同士を連結する二つの端壁41Cとを有している。複数の中間壁41Dは、コネクタ幅方向に延びて二つの側壁41Bの内壁面同士を連結している。側壁41Bには、コネクタ長さ方向で所定間隔をもった複数位置に、上下方向に貫通する溝状の上側連結溝部(図示せず)が形成されている。
【0047】
下側ハウジング42は、コネクタ長さ方向(X軸方向)で等間隔に配列された複数の端子保持体50を保持している。下側ハウジング42の二つの側壁42Aには、コネクタ長さ方向での上側ハウジング41の上側連結溝部と同位置に、上下方向に貫通して上側連結溝部に連通する溝状の下側連結溝部(図示せず)形成されている。
【0048】
固定部材60は、コネクタ長さ方向(X軸方向)に延びる金属板部材を打ち抜くとともに板厚方向に屈曲して作られている。固定部材60は、コネクタ長さ方向で端子保持体50の配列範囲の全域にわたって延び、コネクタ幅方向(Y軸方向)で相手コネクタ3の両端側位置に配置されている。固定部材60は、コネクタ幅方向に対して直角な板面をもつ側板部(図示せず)に、上側ハウジング41の上側連結溝部及び下側ハウジング42の下側連結溝部と同位置に圧入部(図示せず)を有しており、該圧入部が上側連結溝部及び下側連結溝部の両方へ下方から圧入されことにより、ハウジング40に保持される。また、固定部材60の下部には、板厚方向に屈曲されてコネクタ幅方向で外側へ延びる固定部61が形成されており、回路基板の実装面の対応部へ半田接続により固定可能となっている。
【0049】
図4(A)は相手コネクタ3の端子保持体50を単体で示す斜視図であり、
図4(B)は
図4(A)の端子保持体50の各部材を分離して示した斜視図である。
図4(A),(B)に見られるように、端子保持体50は、樹脂等の電気絶縁材製の保持部材51と、コネクタ幅方向(Y軸方向)に配列されて保持部材51に保持された複数の金属板製の第二の信号伝送路としての第二のペア伝送路をなすペア信号端子52と、保持部材51の両側の板面(YZ方向に拡がった面)に取り付けられたグランド部材としての金属板製の第一相手グランド板54及び第二相手グランド板55(以下、両者を区別する必要がない場合は「相手グランド板54,55」と総称する)とを有している。
【0050】
保持部材51は、コネクタ幅方向(Y軸方向)で端子配列範囲にわたって延びる板状をなしている。保持部材51には、相手グランド板54,55を保持するための保持突部及び保持孔部51Bが形成されている。保持突部は、コネクタ幅方向における相手グランド板54,55の後述の被保持孔部54A-1,55A-1と同位置にて、保持部材51の両側の板面から突出して形成されている。
図4(B)には、第一相手グランド板54を保持するための保持突部51Aが示されている。保持孔部51Bは、コネクタ幅方向における相手グランド板54,55の後述の被保持突部54A-2,55A-2と同位置にて、保持部材51をX軸方向に貫通して形成されている。
【0051】
複数のペア信号端子52は、第一の電気コネクタとしての中継コネクタ1に設けられた第一のペア信号端子であるペア信号端子22,24と対応する第二のペア信号端子であり、コネクタ幅方向(Y軸方向)で所定間隔をもって配置されている。各ペア信号端子52は、
図4(B)に見られるように、上下方向で一端側から他端側までの全範囲にわたり互いに間隔をもって延びるストレートペアをなす一対の相手ストレート端子53を有している。相手ストレート端子53は、保持部材51に一体モールド成形により保持される直状の被保持部53Aと、被保持部53Aから上方へ延びる信号弾性腕部53Bと、被保持部53Aから下方へ延びる信号接続部53Cとを有している。
【0052】
信号弾性腕部53Bは、
図4(B)に見られるように、被保持部53Aより広い端子幅寸法(Y軸方向での幅寸法)で形成されており、その板厚方向(X軸方向)で弾性変位可能となっている。信号弾性腕部53Bの上端部には、中継コネクタ1に設けられたペア信号端子22,24の信号接続部23Aに接触するための信号接触部53B-1が、X2側へ突出するように湾曲して形成されている。信号接続部53Cは、
図4(B)に見られるように、被保持部53Aと同じ端子幅寸法で直状に形成されている。信号接続部53Cは、回路基板の信号回路部に半田接続される。
【0053】
第一相手グランド板54は、保持部材51のX1側の板面に取り付けられており、該板面に沿って延びる第一基部54Aと、コネクタ幅方向(Y軸方向)での複数位置で第一基部54Aから上方に延びる第一グランド弾性腕部54Bと、コネクタ幅方向での複数位置で第一基部54Aから下方に延びる第一グランド接続部54Cとを有している。
【0054】
第一基部54Aには、
図4(B)に見られるように、コネクタ幅方向で所定間隔をもって被保持孔部54A-1と被保持突部54A-2とが交互に形成されている。被保持孔部54A-1は、四角状に貫通した孔部であり、コネクタ幅方向で隣接する第一グランド弾性腕部54Bの間に対応する位置に形成されている。被保持突部54A-2は、被保持孔部54A-1の両側位置でX2側へ向けて四角形状に突出している。被保持孔部54A-1と被保持突部54A-2は、それぞれ保持部材51の保持突部51A及び保持孔部51Bと係合した状態で一体モールド成形により保持される。
【0055】
第一グランド弾性腕部54Bは、
図4(A),(B)に見られるように、第一基部54Aの上縁から上方へ延びており、相手ストレート端子53の信号弾性腕部53Bと同じ長さで形成されている。互いに隣接して対をなす二つの第一グランド弾性腕部54Bは、コネクタ幅方向で一対の信号弾性腕部53Bの両側に位置している。第一グランド弾性腕部54Bは、その板厚方向(X軸方向)で弾性変位可能となっている。第一グランド弾性腕部54Bの上端部には、中継コネクタ1のブレード20のグランド端子26に接触するための二つの第一グランド接触部54B-1が、X2側へ突出するように湾曲して形成されている。第一グランド接触部54B-1は、
図4(A)に見られるように、一対の相手ストレート端子53の信号接触部53B-1とコネクタ幅方向で同列をなして位置している。
【0056】
第一グランド接続部54Cは、
図4(B)に見られるように、コネクタ幅方向での第一グランド弾性腕部54Bと同位置で第一基部54Aの下縁から下方へ延出している。第一グランド接続部54Cは、コネクタ幅方向でペア信号端子52の二つの信号接続部52C両側に位置している(
図5も参照)。第一グランド接続部54Cは、回路基板のグランド回路部に半田接続される。
【0057】
第二相手グランド板55は、保持部材51のX2側の板面に取り付けられており、該板面に沿って延びる第二基部55Aと、コネクタ幅方向(Y軸方向)での複数位置で第二基部55Aから上方に延びる二つの第二グランド弾性腕部55Bと、コネクタ幅方向での複数位置で第二基部55Aから下方に延びる第二グランド接続部55Cとを有している。
【0058】
第二基部55Aには、
図4(B)に見られるように、コネクタ幅方向で所定間隔をもって被保持孔部55A-1と被保持突部55A-2とが交互に形成されている。被保持孔部55A-1は、円形状に貫通した孔部であり、コネクタ幅方向での第二グランド弾性腕部55Bの中央位置に対応する位置にて、上下方向での二位置に配列形成されている。被保持突部55A-2は、被保持孔部55A-1の両側位置でX1側へ向けて四角形状に突出している。被保持孔部55A-1と被保持突部55A-2は、それぞれ保持部材51の保持突部(図示せず)及び保持孔部51Bと係合した状態で一体モールド成形により保持される。また、本実施形態では、相手グランド板54,55が保持部材51に保持された状態において、第一相手グランド板54の被保持突部54A-2と第二相手グランド板55の被保持突部55A-2とが直接接触して、電気的に導通可能となっている。
【0059】
第二グランド弾性腕部55Bは、
図4(B)に見られるように、第二基部55Aの上縁から上方へ延びている。互いに隣接して対をなす二つの第二グランド弾性腕部55Bは、下端部同士よりも上端部同士が互いに近接して位置しているとともに、上下方向での二位置でコネクタ幅方向に延びる連結部55Dによって連結されている。第二グランド弾性腕部55Bは、その板厚方向(X軸方向)で弾性変位可能となっている。第二グランド弾性腕部55Bの上端部には、中継コネクタ1のブレード20の第二グランド板28に接触するための二つの第二グランド接触部55B-1が、X1側へ突出するように湾曲して形成されている。この二つの第二グランド接触部55B-1は、一対の信号弾性腕部53Bの信号接触部53B-1とコネクタ幅方向及び上下方向で同位置にあり、
図4(A)に見られるように、二つの信号接触部53B-1と対向している。
【0060】
第二グランド接続部55Cは、
図4(B)に見られるように、コネクタ幅方向での一対の第二グランド弾性腕部55Bの両側に対応する位置で第二基部55Aの下縁から下方へ延出している。第二グランド接続部55Cは、コネクタ幅方向で、ペア信号端子52の二つの信号接続部53Cの両側に位置しているとともに、第一相手グランド板54の第一グランド接続部54Cと同位置に位置している(
図5も参照)。第二グランド接続部55Cは、回路基板のグランド回路部に半田接続される。
【0061】
相手コネクタ3に設けられた端子保持体50は、コネクタ長さ方向(X軸方向)で隣接する端子保持体50同士がコネクタ幅方向(Y軸方向)で互いにずれて位置している。
図5は、三つの端子保持体50についてコネクタ幅方向(Y軸方向)での中間部を拡大して示している。
図5では、半田ボールBが取り付けられている信号接続部53C、第一グランド接続部54C、第二グランド接続部55Cが、それぞれ破線で示されている。本実施形態では、
図5に見られるように、各端子保持体50において、隣接するペア信号端子52同士は、ピッチPの距離をもって配置されている。ここで、ピッチPは、一つのペア信号端子52における相手ストレート端子53同士の中央位置と、これに隣接するペア信号端子52における相手ストレート端子53同士の中央位置との距離である。
【0062】
また、相手グランド板54,55のグランド接続部54C,55Cは、
図5に見られるように、該グランド接続部54C,55Cの中央位置の距離と該グランド接続部54C,55Cに隣接するペア信号端子52の中央位置との距離が、一つ分のピッチPの半分である0.5P(半ピッチ)となる位置に配置されている。換言すると、相手ストレート端子53及びグランド接続部54C,55Cは、0.5P(半ピッチ)の間隔をもって、すなわち等間隔で配列されている。端子保持体50についても、既述した中継コネクタ1のブレード20と同様に、各端子保持体50におけるペア信号端子52の配列を「信号伝送路列」という。
【0063】
図5に見られるように、各端子保持体50では、コネクタ幅方向(Y軸方向)において、二つのペア信号端子52同士の間に、一つの第一グランド接続部54Cと一つの第二グランド接続部55Cがコネクタ長さ方向、換言すると、端子保持体50の幅方向(X軸方
向)に並んで位置している。また、第一グランド接続部54Cと第二グランド接続部55Cとは、ペア信号端子52が配列されている直線(Y軸方向に延びる仮想線)に対して線対称をなして位置している。したがって、
図5に見られるように、上記幅方向(X軸方向)にて、グランド接続部54C,55Cの両端位置間の幅範囲WGが信号接続部53Cの幅範囲WSを超えて及んでいる。
【0064】
このように、本実施形態では、グランド接続部54C,55Cの幅範囲WGが信号接続部53Cの幅範囲WSを超えて及んでいるので、従来のような、信号端子とグランド端子とが互いに同じ形状をなし、隣接する信号端子の信号接続部同士間にグランド端子のグランド接続部が一つだけ位置している場合と比較して、グランド接続部の幅範囲が信号接続部の幅範囲よりも大きく形成される。この結果、グランド接続部を挟んで隣接する信号接続部同士間でグランド接続部をまわり込むようなクロストークを低減させることができる。
【0065】
また、本実施形態では、相手コネクタ3の各信号伝送路列における複数のペア信号端子52は中継コネクタ1にて交互に配列された二種のペア信号端子22,24、すなわち、ストレートペア22及びクロスペア24に接続されるようになっており、これによって、遠端漏話(FEXT)の低減が図られている。
【0066】
図5に見られるように、本実施形態では、コネクタ長さ方向(X軸方向)で隣接する任意の二つの信号伝送路列における一方の信号伝送路列のペア信号端子52が、コネクタ幅方向(Y軸方向)にて、他方の信号伝送路列のペア信号端子52同士間の中央位置に配置されている。つまり、一方の信号伝送路列のペア信号端子52が他方の信号伝送路列のペア信号端子52に対して、0.5P(半ピッチ)分、ずれて位置している。
【0067】
例えば、
図5に示される上段、中断、下段の三つの信号伝送路列において、「一方の信号伝送路列」を中段の信号伝送路列、「他方の信号伝送路列」を上段の信号伝送路列としたとき、中段の信号伝送路列のペア信号端子52は、上段の信号伝送路列のペア信号端子52に対してコネクタ幅方向でY2側へ0.5P(半ピッチ)分、ずれて位置している。
【0068】
図5に示されるように、中段の信号伝送路列において任意に特定された一つのペア信号端子52(ここでは、「特定ペアQ」という)に着目したとき、上段の信号伝送路列において、特定ペアQに近接するペア信号端子52は二つ存在する。ここでは、この二つのペア信号端子52をそれぞれ「第一近接ペアR1」、「第二近接ペアR2」という。
図5では、特定ペアQ、第一近接ペアR1、第二近接ペアR2のそれぞれが一点鎖線で囲まれて示されている。
【0069】
図5に見られるように、第一近接ペアR1と第二近接ペアR2とは同じ信号伝送路列(上段の信号伝送路列)にて互いに隣接して位置しており、第一近接ペアR1は、特定ペアQに対してコネクタ幅方向(Y軸方向)でY1側へ0.5P(半ピッチ)分ずれて位置し、第二近接ペアR2は、特定ペアQに対してコネクタ幅方向でY2側へ0.5P(半ピッチ)分ずれて位置している。つまり、特定ペアQは、コネクタ幅方向で第一近接ペアR1と第二近接ペアR2との間の中央に位置している。したがって、特定ペアQと第一近接ペアR1との距離と、特定ペアQと第二近接ペアR2との距離とは等しい。
【0070】
特定ペアQは、中継コネクタ1のストレートペア22及びクロスペア24のいずれか一種のペアに接続される。また、第一近接ペアR1が、特定ペアQが接続されるペアと同種のペアに接続される場合、第二近接ペアR2は、特定ペアQが接続されるペアとは異種のペアに接続される。したがって、特定ペアQにおいて、第二近接ペアR2との間では極性が互いに反転した関係となり、第一近接ペアR1との間では極性が互いに反転しない関係となる。その結果、本実施形態では、特定ペアQと第一近接ペアR1及び第二近接ペアR2とで信号伝送方向が互いに逆である場合に、第一近接ペアR1からの近端漏話(NEXT)の信号と第二近接ペアR2からのNEXTの信号は、それらの信号の波形のピークが互いにずれた状態で、特定ペアQと及ぶこととなる。したがって、第一近接ペアR1及び第二近接ペアR2からのNEXTの信号の波形のピークが重畳することが回避され、その分、特定ペアQにおける近端漏話(NEXT)が低減される。
【0071】
また、本実施形態では、特定ペアQはコネクタ幅方向で第一近接ペアR1と第二近接ペアR2との間の中央に位置しており、特定ペアQと第一近接ペアR1との距離と特定ペアQと第二近接ペアR2との距離とは等しいので、特定ペアQに対する第一近接ペアR1及び第二近接ペアR2からのNEXTの信号の波形のピークを最大限にずらすことができ、特定ペアQにおけるNEXTを、より良好に低減できる。
【0072】
図6は、相手コネクタ3が実装される回路基板Cにおける一部のビアを示した底面図である。回路基板Cは、相手コネクタ3の相手ストレート端子53が接続される信号回路部と、相手グランド板54,55が接続されるグランド回路部とを有している。信号回路部は、回路基板Cの実装面上に、相手ストレート端子53の信号接続部53Cが半田接続される実装面部としての複数の信号用ランド(図示せず)と、各信号用ランドに対応して回路基板Cの板厚内に位置し該信号用ランドと電気的に導通する複数の信号用ビアVSとを有している。グランド回路部は、回路基板Cの実装面上に、相手グランド板54,55のグランド接続部54C,55Cが半田接続される実装面部としての複数のグランド用ランド(図示せず)と、各グランド用ランドに対応して回路基板Cの板厚内に位置し該グランド用ランドと電気的に導通する複数のグランド用ビアVGとを有している。
【0073】
回路基板Cの実装面上にて、信号用ランド及びグランド用ランドは、それぞれ円形状を成し、回路基板Cの実装面上に、接続部53C,54C,55Cに対応した位置関係で配列形成されている。信号用ビアVS及びグランド用ビアVG(以下、両者を区別する必要がない場合は、「ビアVS,VG」と総称する)は、上下方向に見てそれぞれ対応する信号用ランド及びグランド用ランドの中央に位置しており、回路基板の板厚内部を上下方向に延びる円柱状をなしている。
【0074】
ビアVS,VGは、
図6に見られるように、コネクタ幅方向(Y軸方向)において、二つの信号接続部53Cのペアに対応する二つの信号用ビアVS同士の間に、一つの第一グランド接続部54Cと一つの第二グランド接続部55Cのそれぞれに対応するグランド用ビアVGがコネクタ長さ方向(X軸方向)、換言すると、端子保持体50の幅方向(X軸方向)に並んで位置している。
【0075】
本実施形態では、
図6に見られるように、隣接する信号用ビアVS同士、及び、隣接する信号用ビアVSとグランド用ビアVGとは、コネクタ幅方向(Y軸方向)でピッチPの距離をもって配置されている。以下、一つの端子保持体50に対応するコネクタ幅方向での信号用ビアVSの配列を「ビア列」という。また、各ビア列において、ペア信号端子52に対応する一対の信号用ビアを「ビアペア」という。
【0076】
上記幅方向に並んだ二つのグランド用ビアVGは、信号用ビアVSが配列されている直線(Y軸方向に延びる仮想線)に対して線対称をなして位置している。つまり、上記幅方向(X軸方向)にて、二つのグランド用ビアVGの両端位置間の幅範囲WVGが信号接続部の幅範囲WVSを超えて及んでいる。
【0077】
このように、本実施形態では、グランド用ビアVGの幅範囲WVGが信号用ビアVSの幅範囲WVSを超えて及んでいるので、従来のような、信号用ビアとグランド用ビアとが互いに同じ形状をなし、隣接する信号用ビア同士間にグランド用ビアが一つだけ位置している場合と比較して、グランド用ビアの幅範囲が信号用ビアの幅範囲よりも大きく形成される。この結果、グランド用ビアを挟んで隣接する信号用ビア同士間でグランド用ビアをまわり込むようなクロストークを低減させることができる。
【0078】
また、本実施形態では、各ビア列における複数のビアペアVSは中継コネクタ1にて交互に配列された二種のペア信号端子22,24、すなわち、ストレートペア22及びクロスペア24に対応しているので、これによって、遠端漏話(FEXT)の低減が図られている。
【0079】
図5に見られるように、本実施形態では、コネクタ長さ方向(X軸方向)で隣接する任意の二つのビア列における一方のビア列のビアペアが、コネクタ幅方向(Y軸方向)にて、他方のビア列のビアペア同士間の中央位置に配置されている。つまり、一方のビア列のビアペアが他方のビア列のビアペアに対して、0.5P(半ピッチ)分、ずれて位置している。
【0080】
例えば、
図6に示される上段、中断、下段の三つのビア列において、「一方のビア列」を中段のビア列、「他方のビア列」を上段のビア列としたとき、中段のビア列のビアペアは、上段のビア列のビアペアに対してコネクタ幅方向でY2側へ0.5P(半ピッチ)分、ずれて位置している。
【0081】
図6に示されるように、中段のビア列において任意に特定された一つのビアペア(ここでは、「特定ペアM」という)に着目したとき、上段のビア列において、特定ペアMに近接するビアペアは二つ存在する。ここでは、この二つのビアペアをそれぞれ「第一近接ペアN1」、「第二近接ペアN2」という。
図5では、特定ペアM、第一近接ペアN1、第二近接ペアN2のそれぞれが一点鎖線で囲まれて示されている。
【0082】
回路基板Cのビアペアにおいても、中継コネクタ1及び相手コネクタ3について
図3及び
図5に基づいて説明したのと同様に、特定ペアMは、
図6に見られるように、コネクタ幅方向で第一近接ペアN1と第二近接ペアN2との間の中央に位置しており、特定ペアMと第一近接ペアN1との距離と、特定ペアMと第二近接ペアN2との距離とは等しくなっている。
【0083】
また、特定ペアMにおいて、第一近接ペアN1と第二近接ペアN2のうちの一方(例えば、第一近接ペアN1)との間で極性が互いに反転する関係となっている場合、他方(例えば、第二近接ペアN2)との間では極性が互いに反転しない関係となっている。その結果、中継コネクタ1及び相手コネクタ3について既述したのと同様に、特定ペアMに対する第一近接ペアR1及び第二近接ペアR2の両者からのNEXTの信号の波形のピークが重畳することが回避され、その分、特定ペアMにおける近端漏話(NEXT)が低減される。
【0084】
また、本実施形態では、特定ペアMはコネクタ幅方向で第一近接ペアN1と第二近接ペアN2との間の中央に位置しており、特定ペアMと第一近接ペアN1との距離と特定ペアMと第二近接ペアN2との距離とは等しいので、特定ペアMに対する第一近接ペアN1及び第二近接ペアN2からのNEXTの信号の波形のピークを最大限にずらすことができ、特定ペアQにおけるNEXTを、より良好に低減できる。
【0085】
中継コネクタ1と相手コネクタ2,3とのコネクタ嵌合動作について説明する。まず、相手コネクタ2,3をそれぞれ異なる回路基板(図示せず)に半田接続して取り付ける。次に、
図1に見られるように、相手コネクタ3を、信号接触部53B-1、グランド接触部54B-1,55B-1が上側に位置するような姿勢とし、中継コネクタ1を相手コネクタ3の上方に位置させる。
【0086】
次に、中継コネクタ1を下方へ移動させて(
図1の矢印参照)、各ブレード20をそれぞれ対応する相手コネクタ3の端子保持体50に上方から挿入して接続させる。中継コネクタ1と相手コネクタ3との嵌合が完了すると、各ブレード20に設けられたペア信号端子22,24の信号接続部23A,25A及びグランド端子26のグランド接続部26Aが、相手コネクタ3に設けられたペア信号端子52の信号接触部53B-1と第一相手グランド板54の第一グランド接触部54B-1と接圧をもって接触して電気的に導通する。また、各ブレード20の第二グランド板28が、相手コネクタ3の第二相手グランド板55の第二グランド接触部55B-1と接圧をもって接触して電気的に導通する。このとき、相手コネクタ3の信号接触部53B-1とグランド接触部54B-1,55B-1は、ブレード20からの押圧力を受け、板厚方向(X軸方向)に弾性変位する。
【0087】
次に、相手コネクタ2を、相手コネクタ3に対して上下反転させた姿勢(
図1に示される姿勢)で中継コネクタ1に対して上方から嵌合接続させる(
図1の矢印参照)。相手コネクタ2の嵌合接続の要領は、相手コネクタ3について既述した要領と同様である。
【0088】
このようにして、相手コネクタ2と相手コネクタ3が中継コネクタ1に嵌合接続されることにより、相手コネクタ2と相手コネクタ3とが中継コネクタ1を介して電気的に接続される。
【0089】
既述した本実施形態における中継コネクタ1には、複数のブレード20がコネクタ長さ方向(X軸方向)に配列されていて、各ブレード20に設けられる信号伝送路が、コネクタ幅方向に配列された複数の端子、すなわちストレート端子23及びクロス端子25であることとした。しかし、本発明における信号伝送路は、端子であることには限定されず、例えば、変形例として
図7(A),(B)に示されるような、中継回路基板に形成された導電パターンであってもよい。
【0090】
図7(A)は、変形例における中継コネクタの中継回路基板を単体で示す斜視図であり、
図7(B)は
図7(A)の中継回路基板の導電パターン及びグランドビアを示す正面図である。この変形例における中継コネクタ(図示せず)では、
図7(A)に示される中継回路基板120がコネクタ長さ方向(X軸方向)で複数配列された状態でハウジング(図示せず)内に収容されている。
【0091】
中継回路基板120は、樹脂等の電気絶縁材製の基材121と、基材121に形成された信号伝送路としてのペア伝送路をなす導電パターン(後述するペア導電パターン122,124)と、ペア導電パターン122,124同士間に位置する複数のグランドビア126と、基材121の両方の板面(板厚方向(Z軸方向)に対して直角な面)を覆うように形成されたグランド層127,128(後述する第一グランド層127及び第二グランド層128)とを有している。
【0092】
基材121には、
図7(A)に見られるように、上下方向に延びる両側端縁の中央寄り位置に2つの被支持突部121Aが突出形成されており、この被支持突部121Aでハウジングに支持されるようになっている。また、基材121には、帯状をなして上下方向に延びる複数の導電パターンがコネクタ幅方向(Y軸方向)に配列されて形成されている(
図7(B)参照)。複数の導電パターンは、ペア伝送路としてのペア導電パターン122,124を有している。ペア導電パターン122,124は、ストレートペア122とクロスペア124の二種のペアを有している。本実施形態では、
図7(B)に見られるように、ストレートペア122とクロスペア124とがコネクタ幅方向(Y軸方向)で交互に配置されている。
【0093】
ストレートペア122は、上下方向で一端側から他端側までの全範囲にわたり互いに間隔をもって延びる一対のストレートパターン123を有している。一対のストレートパターン123は、基材121の板厚方向(
図7(B)にて紙面に直角なX軸方向)に見たとき、互いに左右対称でかつ上下対称な形状をなしている。ストレートパターン123は、相手コネクタ(図示せず)との接続のための信号接続部123Aと、上下方向に分割されて延びる複数の細条部123Bと、基材121の板厚内を板厚方向(X軸方向)に延びる複数の信号用ビア(図示せず)とを有している。
【0094】
信号接続部123Aは、
図7(B)に見られるように、ストレートパターン123の上下方向の両端部に位置し、
図7(A)に見られるように、基材21のX1側の板面から露呈している。本実施形態では、細条部123Bは、基材121の板厚内で二層にわたって形成されている。具体的には、細条部123Bは、
図7(B)に見られるように、上下方向にて分割された三つの部分に分かれており、上側範囲及び下側範囲のそれぞれに位置する長細条部123B-1と、中間範囲に位置する短細条部123B-2を有している。
【0095】
本実施形態では、二つの長細条部123B-1は、基材121の板厚方向(
図7(B)にて紙面に直角なX軸方向)でX1側(
図7(B)にて手前側)に位置する層に形成されており、短細条部123B-2は、X2側(
図7(B)にて奥側)に位置する層に形成されている。
【0096】
信号用ビア(図示せず)は、細条部123Bの上述した三つの部分のそれぞれにおける上下方向での両端部の位置で、円柱状をなして基材121の板厚方向(X軸方向)に延びている。信号用ビアは、細条部123Bの上記三つの部分同士、また、細条部123Bの上端部及び下端部と信号接続部123Aとを連結して電気的に接続している。その結果、信号接続部123A、細条部123B及び信号用ビアで形成される一つのストレートパターン123によって一つの信号伝送路が形成されている。
【0097】
本実施形態では、上述のように、二つの層にわたって延びる信号用ビアをストレートパターン123に含むことにより、ストレートパターン123における信号伝送路がクロスペア124の後述するクロスパターン125における信号伝送路とほぼ同じ長さに調整されている。
【0098】
クロスペア124は、一対のクロスパターン125を有している。一対のクロスパターン125は、上下方向での中間位置にて、基材121の板厚方向(X軸方向)で互いに離れるように該板厚方向に屈曲されており、
図7(B)に見られるように、互いに接触することなく交差している。一対のクロスパターン125は、基材121の板厚方向(
図7(B)にて紙面に直角なX軸方向)に見たとき、互いに左右非対称でかつ上下非対称な形状をなしている。クロスパターン125も、ストレートパターン123と同様に、相手コネクタ(図示せず)との接続のための信号接続部125Aと、上下方向に分割されて延びる複数の細条部125Bと、基材121の板厚内を板厚方向(X軸方向)に延びる複数の信号用ビア(図示せず)とを有している。
【0099】
クロスパターン125においては、細条部125Bを除き、既述のストレートパターン123と構成が共通しているので、この共通の部分については、ストレートパターン123における対応部分の符号に「2」を加えた符号を付して説明を省略する。クロスパターン125の細条部125Bは、信号用ビアで連結された二つの長細条部123B-1及び一つの短細条部123B-2を有している。
【0100】
図7(B)に見られるように、クロスペア124をなす一対のクロスパターン125における長細条部125B-1、すなわち計四つの細条部125B-1のうち、Y2側かつ上側(Z1)側に位置する一つの長細条部125B-1だけが、他の三つの長細条部125B-1よりも若干長く形成されている。具体的には、上記一つの長細条部125B-1は、下端部がY1側へ向けて傾斜するように延びる傾斜部125B-1Aを形成しており、この傾斜部125B-1A分だけ、他の長細条部125B-1よりも長くなっている。
【0101】
一対のクロスパターン125の全ての長細条部125B-1は、基材121の板厚方向(
図7(B)にて紙面に直角なX軸方向)でX1側(
図7(B)にて手前側)に位置する層に形成されている。一方、短細条部125B-2は、X2側(
図7(B)にて奥側)に位置する層に形成されている。
【0102】
本実施形態では、
図7(B)に見られるように、既述した傾斜部125B-1Aに連結される一方の短細条部125B-2は、傾斜することなく上下方向に延びて、後述する他方の短細条部125B-2よりも短く形成されている。一方、他方の短細条部125B-2は、基材121の板厚方向(X軸方向)に見て、下方へ向かうにつれてY2側に傾斜するように延びており、傾斜部125B-1Aと交差している。上記他方の短細条部125B-2は、傾斜部125B-1Aよりも若干長く形成されている。
【0103】
一対のクロスパターン125では、このようにして長細条部125B-1の傾斜部125B-1Aと上記他方の短細条部125B-2とが交差することにより、互いに接触することを回避している。また、X2側(
図7(B)にて奥側)に位置する層に上記一方の短細条部125B-2を形成することにより、信号用ビアの数を増やし、その結果、クロスペア124をなす二つのクロスパターン125同士の信号伝送経路の長さをほぼ同じ長さとしている。
【0104】
図7(B)に見られるように、コネクタ幅方向(Y軸方向)でのストレートペア122とクロスペア124との間には、複数のグランド用ビア126が上下方向に配列されて形成されている。グランド用ビア126は、基材121の板厚内を板厚方向(X軸方向)に延びる円柱状をなしており、後述する第一グランド層127と第二グランド層128とを連結している。上下方向に配列されるグランド用ビア126の数が多いほど、隣接するストレートペア122とクロスペア124クロストークを低減させる効果が向上する。
【0105】
グランド層127,128は、金属製の層状をなしており、第一グランド層127が基材の121のX1側の板面を覆うように、また、第二グランド層128が基材の121のX2側の板面を覆うように形成されている。グランド層127,128は、基材121の上端から下端にわたる範囲に形成されているが、グランド層127においては、
図7(A)に見られるように、上端部及び下端部にて、コネクタ幅方向でペア導電パターン122,124の信号接続部123A,125Aに対応する部分が切り欠かれており、その結果、信号接続部123A,125Aが露呈している。第一グランド層127の上端部及び下端部において切り欠かれていない部分は、相手コネクタのグランド部材(図示せず)と接続するためのグランド接続部127Aをなしている。一方、第二グランド層128の上端部及び下端部は、どの部分も切り欠かれておらず、相手コネクタのグランド部材(図示せず)と接続するためのグランド接続部128Aをなしている。
【0106】
図7に示される変形例では、このような構成の中継回路基板120が、コネクタ長さ方向で複数配列されており、隣接する中継回路基板が、
図1ないし
図6に基づいて既述した実施形態におけるブレード20と同様に、コネクタ幅方向で半ピッチずれて設けられることにより、近端漏話(NEXT)が低減される。
【0107】
本実施形態及び変形例では、二つの電気コネクタ(相手コネクタ)同士を一つの中継電気コネクタ(中継コネクタ)を介して電気的に接続する、いわゆる3ピースコネクタに本発明が適用される例を説明したが、接続される電気コネクタは三つに限らない。例えば、互いに嵌合接続される二つのコネクタのみからなる、いわゆる2ピースコネクタに本発明を適用することも可能である。
【0108】
本実施形態では、中継コネクタ1において、ストレート端子23、クロス端子25、グランド端子26及びグランド板27,28は、ハウジング10に保持されるブレード20の一部として構成されている。また、相手コネクタ2,3において、相手ストレート端子53及び相手グランド板54,55は、ハウジング40に保持される端子保持体50の一部として構成されている。また、
図7(A),(B)に示される変形例では、ストレートパターン123、クロスパターン125、グランドビア126及びグランド層127,128は、ハウジングに保持される中継回路基板120の一部として構成されている。つまり、本実施形態及び変形例では、中継コネクタ及び相手コネクタにおいて、信号伝送路及びグランド部材が間接的にハウジングに保持されているが、これに替えて、信号伝送路及びグランド部材がハウジングに直接的に保持されていてもよい。
【0109】
本実施形態では、二つの相手グランド板54,55のグランド接続部54C,55C同士がコネクタ幅方向(Y軸方向)で同位置にあることとしたが、同位置にあることは必須ではない。例えば、二つのグランド板のグランド接続部同士がコネクタ幅方向(Y軸方向)で互いにずれていて、全体として千鳥状をなすように位置していてもよい。
【0110】
また、本実施形態では、相手グランド板54,55のグランド接続部54C,55Cは上下方向(Z軸方向)に対して平行に直状をなして下方へ延びていることとしたが、グランド接続部54C,55Cの形状はこれに限られない。例えば、グランド接続部が上下方向に対して傾斜する直状をなしていてもよく、また、グランド接続部がその中間位置で屈曲された形状をなしていてもよい。このとき、例えば、二つのグランド板のグランド接続部が、互いに離れる側で延びて位置していてもよい。また、二つのグランド板のグランド接続部が互いに近づく側で延びることにより、一方のグランド板のグランド接続部が他方のグランド板側に延びて位置していてもよい。
【0111】
本実施形態では、相手コネクタ2,3には、グランド部材としての相手グランド板54,55を設けることとしたが、変形例として、さらに、グランド部材としてのグランド端子を設けてもよい。例えば、コネクタ幅方向(Y軸方向)でのペア信号端子同士の間にグランド端子を配置することで、グランド板のグランド接続部とグランド端子のグランド接続部が、コネクタ幅方向に対して直角なコネクタ長さ方向(X軸方向)に並んで位置し、これらのグランド接続部により幅範囲(
図5におけるWGに相当する範囲)が形成される。この変形例では、グランド端子のグランド接続部の数が増える分、グランド接続部をまわり込むようなクロストークを低減させることができる。
【0112】
さらに別変形例として、一つのグランド端子においてコネクタ長さ方向に並んで位置する複数のグランド接続部を設けたり、複数のグランド端子をコネクタ長さ方向に設けたりすることで、クロストークを低減させる効果が向上する。また、この別変形例においては、グランド板を設けることは必須ではない。
【0113】
本実施形態では、相手コケクタ2,3のそれぞれには、グランド部材としての二つの相手グランド板、すなわち第一相手グランド板54及び第二相手グランド板55が設けられているが、これに替えて、設けられる相手グランド板が一つであってもよい。この場合、例えば、相手グランド板のグランド接続部において回路基板の実装面部に半田接続される部分が、該実装面に沿って延びて形成され、この部分の幅範囲(X軸方向での範囲)が、信号伝送路の接続部の幅範囲を超えて及ぶようにしてもよい。
【0114】
本実施形態では、信号伝送路がペア伝送路であり、ペア伝送路で高速差動信号を伝送する電気コネクタに本発明を適用する例を説明したが、本発明では、信号伝送路がペア伝送路であることは必須ではなく、単一の伝送路であってもよい。例えば、信号伝送路は、単一の伝送路として、単一の端子や単一の導電パターンであってもよい。
【0115】
本実施形態では、回路基板の実装面部はビアに接続されたランドであることとしたが、実装面部の形態はこれに限られず、例えば、回路基板の実装面に配された、いわゆるパターンに接続されているパッドであってもよい。
【0116】
本実施形態では、各コネクタ1,2,3の各端子、回路基板の回路部が隣接する列同士でコネクタ幅方向にずれて位置している例を説明したが、本発明は、端子及び回路部が隣接する列同士でコネクタ幅方向にずれることなく同位置に設けられているコネクタ及び回路基板に適用可能である。
【符号の説明】
【0117】
1 中継コネクタ
2 相手コネクタ
3 相手コネクタ
10 ハウジング
22,122 ストレートペア
23,123 ストレート端子
24,124 クロスペア
25,125 クロス端子
23A,123A 信号接続部
25A,124A 信号接続部
52 ペア信号端子(信号伝送路)
53 相手ストレート端子(信号伝送路)
53C 信号接続部
54 第一相手グランド板(グランド部材)
54C 第一グランド接続部
55 第二相手グランド板(グランド部材)
55C 第二グランド接続部
C 回路基板
VS 信号用ビア
VG グランド用ビア