(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116420
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】シンチレータスクリーンの製造方法、シンチレータスクリーン及び対応する画像検出器
(51)【国際特許分類】
G21K 4/00 20060101AFI20240820BHJP
G01T 1/20 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G21K4/00 A
G01T1/20 A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024102159
(22)【出願日】2024-06-25
(62)【分割の表示】P 2021534184の分割
【原出願日】2019-12-18
(31)【優先権主張番号】201811549118.4
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201811600892.3
(32)【優先日】2018-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】517065220
【氏名又は名称】北京納米維景科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】NANOVISION TECHNOLOGY (BEIJING) CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】ヤン カイ
(72)【発明者】
【氏名】チャン チャオ
(72)【発明者】
【氏名】ルオ ジエ
(57)【要約】
【課題】 シンチレータスクリーンの製造方法を提供する。
【解決手段】 本出願は、シンチレータスクリーンの製造方法に関する。前記製造方法は、高い可視光線反射率または高い可視光線吸収率を有する少なくとも1つの表面を備える、フレキシブル基板を提供するステップ(1)と、フレキシブル基板の、高い可視光線反射率または高い可視光線吸収率を有する側面と対向する他の側面が、均一に充填された熱伝導性接着剤によって、剛性の熱伝導基板に固定されるステップ(2)と、フレキシブル基板の、高い可視光線反射率または高い可視光線吸収率を有する側面に、シンチレータ層を製造するステップ(3)とを含む。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブル基板に基づくシンチレータスクリーンの製造方法であって、
高い可視光線反射率または高い可視光線吸収率を有する少なくとも1つの表面を備える、フレキシブル基板を提供するステップ(1)と、
前記フレキシブル基板の、高い可視光線反射率または高い可視光線吸収率を有する側面と対向する他の側面が、均一に充填された熱伝導性接着剤によって、剛性の熱伝導基板に固定されるステップ(2)と、
前記フレキシブル基板の、高い可視光線反射率または高い可視光線吸収率を有する側面に、シンチレータ層を製造するステップ(3)とを含む、ことを特徴とするシンチレータスクリーンの製造方法。
【請求項2】
前記剛性の熱伝導基板と前記熱伝導性接着剤とを剥離除去するステップ(4)をさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載のシンチレータスクリーンの製造方法。
【請求項3】
前記シンチレータ層を少なくとも完全にカバーするように、上述構造の外部に防水保護層を製造するステップ(5)をさらに含む、ことを特徴とする請求項1または2に記載のシンチレータスクリーンの製造方法。
【請求項4】
前記剛性の熱伝導基板の熱伝導係数は10W/mKよりも大きく、前記熱伝導性接着剤の熱伝導係数は1W/mKよりも大きく、前記熱伝導性接着剤の熱膨張係数は、前記フレキシブル基板の熱膨張係数と前記剛性の熱伝導基板の熱膨張係数の間に介在する、ことを特徴とする請求項1に記載のシンチレータスクリーンの製造方法。
【請求項5】
前記剛性の熱伝導基板は、アルミニウム合金、銅合金またはステンレスである、ことを特徴とする請求項1に記載のシンチレータスクリーンの製造方法。
【請求項6】
前記熱伝導性接着剤は、接着剤または両面テープであり、前記接着剤の充填方法は、流延法、チョクラルスキー法、スクリーン印刷及びスプレーの何れか1つである、ことを特徴とする請求項1に記載のシンチレータスクリーンの製造方法。
【請求項7】
前記フレキシブル基板の少なくとも1つの表面の可視光線反射率は、80%~100%または0~20%である、ことを特徴とする請求項1に記載のシンチレータスクリーンの製造方法。
【請求項8】
前記フレキシブル基板は、透明なフレキシブル基板を選択使用しており、前記フレキシブル基板の1つの側面に、光反射層または光吸收層を製造する、ことを特徴とする請求項7に記載のシンチレータスクリーンの製造方法。
【請求項9】
前記ステップ(4)で使用する剥離方法は、機械的剥離、光照射剥離、レーザー剥離の何れか1つである、ことを特徴とする請求項2に記載のシンチレータスクリーンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、シンチレータスクリーンの製造方法に関し、同時に前記製造方法を用いて得られたシンチレータスクリーンに関し、さらに、前記シンチレータスクリーンを採用した画像検出器に関し、X線放射イメージング分野に属する。
【背景技術】
【0002】
工業及び医療分野において、X線検出器が広く使用されており、X線検出器に欠かせない部分であるシンチレータスクリーンもますます重要になっている。現在、一般的に使用されているシンチレータスクリーンは、結晶柱状シンチレータスクリーン及びセラミックシンチレータスクリーンに分けられている。結晶柱状シンチレータスクリーンは、ヨウ化セシウムやヨウ化ナトリウム等のシンチレータ材料で表され、高輝度と高解像度等の利点がある。ただし、セラミックシンチレータスクリーン(硫酸化ガドリニウム、ゲルマニウム酸ビスマス)に比べて、結晶柱状シンチレータスクリーンは2つの大きな欠点がある。一方、結晶柱状シンチレータは湿気が発生しやすい材料であり、空気に曝露されると水分を吸収して潮解し、よって、シンチレータスクリーンの性能が低下し、特に、画像の解像度の低下を招く。他の一方、結晶柱状シンチレータは、密度が低く、結晶柱の空隙率が高い。残留のX線は、シンチレータを透過しやすく、さらにX線イメージセンサにおける電子回路に影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明により解決する主な技術問題は、シンチレータスクリーンの製造方法を提供することである。
【0004】
本発明により解決する他の技術問題は、上述の製造方法を用いて得られたシンチレータスクリーンを提供することである。
【0005】
本発明により解決する別の技術問題は、上述のシンチレータスクリーンを使用した画像検出器を提供することである。
【0006】
上述の目的を実現するために、本発明は以下の技術案を採用する。
【0007】
本発明の実施例の第1の方面により、シンチレータスクリーンの製造方法が提供され、前記製造方法は、
基板の所定の表面に結晶柱状シンチレータ層を作製するスッテップと、
前記結晶柱状シンチレータ層が形成されている前記基板の周辺に、防潮層を作製するステップと、
前記防潮層の、X線の受信に用いられる表面以外の残り表面に、X線吸収層を作製するステップと、
前記X線吸収層の外面と、前記防潮層のX線の受信に用いられる表面に、保護層を作製するステップとを含む。
【0008】
本発明の実施例の第2の方面により、シンチレータスクリーンの製造方法が提供され、前記製造方法は、
基板の所定の表面に結晶柱状シンチレータ層を作製するスッテップと、
前記結晶柱状シンチレータ層が形成されている前記基板の周辺に、防潮層を作製するステップと、
前記防潮層の、X線の受信に用いられる表面以外の残り表面に、第1の中間層を作製するステップと、
前記第1の中間層の外面に、X線吸収層を作製するステップと、
前記X線吸收層の外面に、第2の中間層を作製するステップと、
前記第2の中間層の外面と、前記防潮層のX線の受信に用いられる表面に、保護層を作製するステップとを含む。
【0009】
好ましくは、前記基板の所定の表面に結晶柱状シンチレータ層を作製するには、
前記基板と形成待ちの前記結晶柱状シンチレータ層の原材料を選択するサブステップと、
真空蒸着法を用いて、形成待ちの前記結晶柱状シンチレータ層の原材料で、前記基板に、前記結晶柱状シンチレータ層を形成するサブステップとを含む。
【0010】
好ましくは、前記基板は、高い可視光線反射率とX線透過率を有する基板から選択される。
【0011】
好ましくは、形成待ちの前記結晶柱状シンチレータ層の原材料は、X線を可視光線に変換するX線変換材料から選択される。
【0012】
好ましくは、前記防潮層及び前記保護層は、それぞれ化学気相成長法を用いて得られた透明な有機膜である。
【0013】
好ましくは、前記X線吸收層は、真空マグネトロンスパッタリング法を用いて、高原子番号の材料から得られた酸化膜である。
【0014】
好ましくは、前記第1の中間層及び前記第2の中間層は、それぞれ真空マグネトロンスパッタリング法を用いて得られた無機反射防止膜である。
【0015】
本発明の実施例の第3の方面により、フレキシブル基板に基づくシンチレータスクリーンの製造方法が提供され、前記製造方法は、
高い可視光線反射率または高い可視光線吸収率を有する、少なくとも1つの表面を備える基板を提供するステップと、
高い可視光線反射率または高い可視光線吸収率を有する、前記フレキシブル基板の側面に対応する他の側面が、均一に充填された熱伝導性接着剤によって、熱伝導剛性基板に固定されるステップと、
高い可視光線反射率または高い可視光線吸収率を有する前記フレキシブル基板の側面に、シンチレータ層を製造するステップとを含む。
【0016】
好ましくは、前記剛性の熱伝導基板及び前記熱伝導性接着剤を剥離除去するステップをさらに含む。
【0017】
好ましくは、前記シンチレータ層を少なくとも完全にカバーするように、上述構造の外部に、防水保護層を製造するステップをさらに含むとによって、フレキシブル基板に基づく完全なシンチレータスクリーンを得る。
【0018】
好ましくは、前記剛性の熱伝導基板の熱伝導係数は10W/mKよりも大きく、前記熱伝導性接着剤の熱伝導係数は1W/mKよりも大きく、前記熱伝導性接着剤の熱膨張係数は、前記フレキシブル基板の熱膨張係数と前記剛性の熱伝導基板の熱膨張係数の間に介在すべきである。
【0019】
好ましくは、前記剛性の熱伝導基板は、アルミニウム合金、銅合金またはステンレスである。
【0020】
好ましくは、前記熱伝導性接着剤は接着剤または両面テープであり、前記接着剤の充填方法は、流延法、チョクラルスキー法、スクリーン印刷及びスプレーの何れか1つである。
【0021】
好ましくは、前記フレキシブル基板の少なくとも1つの表面の可視光線反射率は、80%~100%または0~20%である。
【0022】
好ましくは、 前記フレキシブル基板は透明なフレキシブル基板を選択使用しており、前記フレキシブル基板の少なくとも1つの表面に、光反射層または光吸收層が製造する。
【0023】
好ましくは、前記剥離方法は、機械的剥離、光照射剥離、レーザー剥離の何れか1つである。
【0024】
本発明の実施例の第4の方面により、シンチレータスクリーンの製造方法で製造したシンチレータスクリーンが提供される。
【0025】
本発明の実施例の第5の方面により、上述のシンチレータスクリーンを使用しており、前記シンチレータスクリーンの底部に、X線イメージセンサが設置されているX線画像検出器が提供される。
【0026】
本発明により提供されるシンチレータスクリーンの製造方法は、結晶柱状シンチレータ層、防潮層、X線吸收層及び保護層を順番に作製することによって、形成されたシンチレータスクリーンのX線吸収率、変換された可視光線の透過率及び耐湿性を向上させる。また、結晶柱状シンチレータ層によって完全に吸収されないX線を吸収する、X線吸收層を増加することによって、X線イメージセンサの電子回路に対するX線シールドを実現し、X線イメージセンサに対するX線の放射干渉を低減する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施例により提供されるシンチレータスクリーンの製造方法のフロー
図1である。
【
図2】本発明の実施例により提供されるシンチレータスクリーンの製造方法のフロー
図2である。
【
図8】本発明の実施例により提供されるシンチレータスクリーンの主な製造工程のステップの断面構造を順番に示す模式図である。
【
図3】基板の下面に作製した結晶柱状シンチレータ層の断面構造の模式図である。
【
図4】結晶柱状シンチレータ層が形成されている基板の周辺に、作製した防潮層の断面構造の模式図である。
【
図5】防潮層の上面を除く残り表面に、作製したX線吸收層の断面構造の模式図である。
【
図6】X線吸收層の外面と防潮層の上面に、作製した保護層の断面構造の模式図である。
【
図7】防潮層の上面を除く残り表面に、順番に作製した第1の中間層、X線吸收層及び第2の中間層の断面構造の模式図である。
【
図8】第2の中間層の外面及び防潮層の上面に、作製した保護層の断面構造の模式図である。
【
図9】本発明の実施例により提供されるシンチレータスクリーンから構成されたX線画像検出器の構造の模式図である。
【
図12】本発明の実施例により提供されるフレキシブル基板に基づくシンチレータスクリーンの製造方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面及び特定の実施例を参照しながら、本発明の技術内容をさらに詳細に説明する。
【0029】
本発明の実施例において、シンチレータスクリーンは結晶柱状シンチレータスクリーンを指す。前記結晶柱状シンチレータスクリーンは、入射されたX線を可視光線に変換した後、X線イメージセンサに伝送して、X線イメージセンサ及びX線イメージセンサにおける電子回路が受信した可視光線をアナログ信号に変換することを便利にし、A/D変換器(アナログ/デジタル変換器)を介してデジタル信号に変換して、コンピューターに伝送しX線の初期デジタル画像を得る。
【0030】
図1に示すように、前記シンチレータスクリーンの製造方法は、基板の所定の表面に結晶柱状シンチレータ層を作製するステップS1を含む。
【0031】
前記ステップは、基板及び形成待ちの結晶柱状シンチレータ層の原材料を選択するサブステップS11を含む。
【0032】
X線が結晶柱状シンチレータスクリーンに照射された後、より良く結晶柱状シンチレータ層に吸収され、且つ可視光線に変換されることを確保するために、高い可視光線反射率及びX線透過率を有する基板を選択できる。前記基板は、X線のみを透過でき、可視光線は透過できず、例えば、基板は、厚さが予備設定された高反射率のPET(ポリエチレンテレフタレート)製基板、AI(アルミニウム)製基板、C(グラファイト)製基板、Be(ベリリウム)製基板等から選択できる。
【0033】
結晶柱状シンチレータ層がX線を吸収して可視光線に変換するために、形成待ちの結晶柱状シンチレータ層の原材料は、X線を可視光線に変換できるX線変換材料を選択することができ、例えば、形成待ちの結晶柱状シンチレータ層の原材料は、Tl(タリウム)またはNa(ナトリウム)がドープされたCsI(ヨウ化セシウム)、Tl(タリウム)がドープされたNaI(ヨウ化ナトリウム)等の材料であってよい。
【0034】
ステップS 12:真空蒸着法を用いて、基板に、形成待ちの結晶柱状シンチレータ層の原材料で結晶柱状シンチレータ層を形成する。
【0035】
ステップS11で選択した基板と形成待ちの結晶柱状シンチレータ層の原材料を真空蒸着装置に配置し、真空条件下で、形成待ちの結晶柱状シンチレータ層の原材料を加熱蒸発させ、蒸発して得られた原子または分子が基板の所定の面に吸着され薄膜を形成し、前記薄膜は結晶柱状シンチレータ層である。うち、真空蒸着法は従来の慣用技術であり、ここでは詳細には言及しない。
【0036】
以下、基板は高反射率のPET製基板(例えば、厚さが188μm)を選択し、形成待ちの結晶柱状シンチレータ層の原材料は、ビーズ状のヨウ化タリウム粒子と粉末状のヨウ化セシウム材料を選択することを例として、本ステップにおいて、基板に結晶柱状シンチレータ層を形成するプロセスについて説明する。
【0037】
図3に示すように、高反射率のPET製基板11、ビーズ状のヨウ化タリウム粒子及び粉末状のヨウ化セシウム材料を真空蒸着装置に入れ、真空条件下で、共蒸着法を用いて、ビーズ状のヨウ化タリウム粒子と粉末状のヨウ化セシウム材料を加熱蒸発させ、蒸発して得られた原子または分子を、高反射率のPET製基板11の下面に付着させることによって、結晶柱状のヨウ化セシウム層12を形成する。前記結晶柱状ヨウ化セシウム層12がX線を可視光線に変換する。
【0038】
ステップS2:結晶柱状シンチレータ層が形成されている基板の周辺に防潮層を作製する。
【0039】
結晶柱状シンチレータ層(例えば、上述の結晶柱状ヨウ化セシウム層12)は吸湿性が高いため、結晶柱状シンチレータ層を直接空気中に露出すると、結晶柱状シンチレータ層が空気中の水蒸気と相互作用し、シンチレータスクリーンの結晶柱が潮解し、結晶柱の間に付着が発生され、画像の解像度効果に影響を与える。また、結晶柱状シンチレータ層の結晶柱の間に一定のギャップが存在するため、結晶柱状シンチレータ層の下面はでこぼこしており、また、結晶柱状シンチレータ層を透過してX線イメージセンサの電子回路に影響を与える残留のX線も存在する。したがって、化学気相成長法を用いて、ステップS1で形成された結晶柱状シンチレータ層を備える基板の周辺に、防潮層を堆積することができる。
【0040】
うち、防潮層は、化学気相成長法を用いて、ポリパラジクロロトルエン、ポリパラキシリレン、ポリテトラクロロパラキシリレン、ポリジメチルパラキシリレン等の材料から得られた透明な有機膜であってよい。
【0041】
結晶柱状ヨウ化セシウム層12が形成されている高反射率のPET製基板11の周辺に、ポリパラジクロロトルエン膜を形成することを例として、
図4に示すように、結晶柱状ヨウ化セシウム層12が形成されている高反射率のPET製基板11を、化学気相成長装置に配置し、化学気相成長装置を通じて、高反射率のPET製基板11及び結晶柱状ヨウ化セシウム層12の周辺に、厚さが予備設定された第1のポリパラジクロロトルエン膜13を形成する。好ましくは、高反射率のPET製基板11及び結晶柱状ヨウ化セシウム層12の周辺に、厚さが10μmの第1のポリパラジクロロトルエン膜13を形成するのが最適である。第1のポリパラジクロロトルエン膜13によって、結晶柱状ヨウ化セシウム層12に対する空気中の水蒸気の影響を効果的に低減することができると共に、第1のポリパラジクロロトルエン膜13を使用して、結晶柱状ヨウ化セシウム層12の結晶柱の間に存在するギャップを充填し、緻密なバリア層を形成することによって、結晶柱状ヨウ化セシウム層12の下面を平坦にする。
【0042】
ステップS3:ステップS2で作製した防潮層の、X線の受信に用いられる表面以外の残り表面に、X線吸収層を作製する。
【0043】
ステップS2で作製した防潮層の、X線の受信に用いられる表面以外の、残り表面に作製したX線吸収層の作用は、結晶柱状シンチレータ層により完全に吸収されないX線を吸収することによって、X線イメージセンサに対するX線の放射干渉を低減するという点にある。真空マグネトロンスパッタリング法を用いて、防潮層のX線の受信に用いられる表面以外の残り表面に、厚さが予備設定されたX線吸収層を作製し、好ましくは、X線の放射線量及び結晶柱状シンチレータ層に基づいて、X線吸收層の厚さを適切に調整し、X線吸收層の厚さの調整範囲は300nm~500nmであることが最適である。また、真空マグネトロンスパッタリング法は、従来の慣用技術であり、ここでは言及しない。
【0044】
うち、X線吸收層は、真空マグネトロンスパッタリング法を用いて、PbO(酸化鉛)、Bi2O3(酸化ビスマス)、PbxOy(鉛酸化物)、WO3(三酸化タングステン)等の高原子番号Z材料から得られた酸化膜であってよい。
【0045】
X線吸收層が酸化鉛膜であることを例として、
図5に示すように、ステップS2で作製した結晶柱状ヨウ化セシウム層12及び第1のポリパラジクロロトルエン膜13を備える高反射率のPET製基板11を、真空マグネトロンスパッタ装置に配置し、真空条件下で、真空マグネトロンスパッタリング法を用いて、第1のポリパラジクロロトルエン膜13の上面以外の、残り表面に厚さ500nmの酸化鉛膜15を形成する。
【0046】
ステップS4:ステップS3で作製したX線吸收層の外面と、ステップS2で作製した防潮層のX線の受信に用いられる表面に、保護層を作製する。
【0047】
ステップS3で作製したX線吸收層とステップS2で作製した防潮層が、引っかかれたり剥がれたりするのを防止し、また、防潮層に対する空気中の水蒸気の影響をさらに低減するために、化学気相成長法を用いて、ステップS3で作製したX線吸收層の外面と、ステップS2で作製した防潮層のX線の受信に用いられる表面に、保護層を堆積する。
【0048】
うち、保護層は、化学気相成長法を用いて、ポリパラジクロロトルエン、ポリパラキシリレン、ポリテトラクロロパラキシリレン、ポリジメチルパラキシリレン等の材料から得られた透明な有機膜であってよい。
【0049】
保護層がポリパラジクロロトルエン膜であることを例として、
図6に示すように、ステップS3で作製した結晶柱状ヨウ化セシウム層12、第1のポリパラジクロロトルエン膜13及び酸化鉛膜15を備える高反射率のPET製基板11を、化学気相成長装置に配置し、化学気相成長装置によって、第1のポリパラジクロロトルエン膜13の上面及び酸化鉛膜15の外面に、厚さが予備設定された第2のポリパラジクロロトルエン膜17を形成する。好ましくは、第1のポリパラジクロロトルエン膜13の上面及び酸化鉛膜15の外面に、厚さが10μmの第2のポリパラジクロロトルエン膜17を形成することが最適である。第2のポリパラジクロロトルエン膜17によって、第1のポリパラジクロロトルエン膜13及び酸化鉛膜15が、引っかかれたり剥がれたりするのを防止すると共に、結晶柱状ヨウ化セシウム層12に対する空気中の水蒸気の影響を効果的に低減することができる。
【0050】
上記のステップS1~S4を用いて、結晶柱状シンチレータスクリーンを製造することができる。結晶柱状シンチレータスクリーンにおける防潮層とX線吸收層の結合効果を向上させ、結晶柱状シンチレータ層の耐湿性と、それが変換した可視光線の透過率を向上させるために、
図2に示すように、本シンチレータスクリーンの製造方法が以下のステップを含む、以下の好ましい技術案をさらに提供する。
【0051】
ステップS10:基板の所定の表面に結晶柱状シンチレータ層を作製する。該ステップは、上述のステップS1とステップS1のサブステップの説明と同じである。
【0052】
ステップ20:結晶柱状シンチレータ層が形成されている基板の周辺に、防潮層を作製する。該ステップは、上述のステップS2の説明と同じである。
【0053】
ステップS30:ステップS20で作製した防潮層の、X線の受信に用いられる表面以外の残り表面に、第1の中間層を作製する。
【0054】
ステップS20で作製した防潮層の、X線の受信に用いられる表面以外の残り表面に、作製した第1の中間層の作用は、防潮層と後のステップで作製したX線吸收層との結合効果を向上させると共に、結晶柱状シンチレータ層の耐湿性と、それが変換した可視光線の透過率を向上させることもできる、という点にある。真空マグネトロンスパッタリング法を用いて、除防潮層の、X線の受信に用いられる表面以外の残り表面に、厚さが予備設定された第1の中間層を作製し、好ましくは、光出力の要求に応じて、第1の中間層の厚さを適切に調整し、第1の中間層の厚度の調整範囲は50nm~200nmであることが最適である。
【0055】
うち、第1の中間層は、真空マグネトロンスパッタリング法を用いて、SiO2(シリカ)、TIO2(二酸化チタン)、SiN(窒化シリコン)、MgF2(フッ化マグネシウム)及びSiNO(オキシ窒化ケイ素)等の材料から得られた無機反射防止膜であってよい。
【0056】
第1の中間層がシリカ膜であることを例として、
図7に示すように、ステップS20で作製した結晶柱状ヨウ化セシウム層12と第1のポリパラジクロロトルエン膜13とを備える高反射率のPET製基板11を、真空マグネトロンスパッタリング装置に配置し、真空条件下で、真空マグネトロンスパッタリング法を用いて、第1のポリパラジクロロトルエン膜13の上面以外の残り表面に、厚さが100nmの第1のシリカ膜14を形成する。
【0057】
ステップS40:ステップS30で作製した第1の中間層の外面に、X線吸収層を作製する。
【0058】
ステップS30で作製した第1の中間層の外面に作製されたX線吸收層の作用は、結晶柱状シンチレータ層により完全に吸収されないX線を吸収することによって、X線イメージセンサに対するX線の放射干渉を低減する、という点にある。真空マグネトロンスパッタリング法を用いて、第1の中間層の外面に厚さが予備設定されたX線吸収層を作製し、好ましくは、X線放射線量及び結晶柱状シンチレータ層に応じて、X線吸收層の厚さを適切に調整し、X線吸收層の厚さの調整範囲は300nm~500nmであることが最適である。
【0059】
うち、X線吸收層は、真空マグネトロンスパッタリング法を用いて、PbO(酸化鉛)、Bi2O3(酸化ビスマス)、PbxOy(鉛酸化物)、WO3(三酸化タングステン)等の原子番号Zの材料から得られた酸化膜であってよい。
【0060】
X線吸收層が酸化鉛膜であることを例として、
図7に示すように、ステップS30で作製した結晶柱状ヨウ化セシウム層12、第1のポリパラジクロロトルエン膜13及び第1のシリカ膜14を備える高反射率のPET製基板11を、真空マグネトロンスパッタリング装置に配置し、真空条件下で、真空マグネトロンスパッタリング法を用いて、第1のシリカ膜14の外面に、厚さが500nmの酸化鉛膜15を形成する。
【0061】
ステップS50:ステップS40で作製したX線吸收層の外面に、第2の中間層を作製する。
【0062】
ステップS40で作製したX線吸收層の外面に作製された第2の中間層の作用は、結晶柱状シンチレータ層の耐湿性と、それが変換した可視光線の透過率を向上させる、という点にある。真空マグネトロンスパッタリング法を用いて、X線吸收層の外面に、厚さが予備設定された第2の中間層を作製し、好ましくは、光出力の要求に応じて、第2の中間層の厚さを適切に調整し、第2の中間層の厚さの調整範囲は50nm~200nmであることが最適である。
【0063】
うち、第2の中間層は、真空マグネトロンスパッタリング法を用いて、SiO2(シリカ)、TIO2(二酸化チタン)、SiN(窒化シリコン)、MgF2(フッ化マグネシウム)及びSiNO(オキシ窒化ケイ素)等の材料から得られた無機反射防止膜であってよい。
【0064】
第2の中間層がシリカ膜であることを例として、
図7に示すように、ステップS40で作製した結晶柱状ヨウ化セシウム層12、第1のポリパラジクロロトルエン膜13、第1のシリカ膜14及び酸化鉛膜15を備える高反射率のPET製基板11を、真空マグネトロンスパッタリング装置に配置し、真空条件下で、真空マグネトロンスパッタリング法を用いて、酸化鉛膜15の外面に、厚さが100nmの第2のシリカ膜16を形成する。
【0065】
ステップS60:ステップS50で作製した第2の中間層の外面と、ステップS20で作製した防潮層のX線の受信に用いられる表面に、保護層を作製する。
【0066】
ステップS50で作製した第2の中間層とステップS20で作製した防潮層が、引っかかれたり剥がれたりするのを防止すると共に、防潮層に対する空気中の水蒸気の影響をさらに低減するために、化学気相成長法を用いて、ステップS50で作製した第2の中間層の外面と、ステップS20で作製した防潮層のX線の受信に用いられる表面に、保護層を堆積する。
【0067】
うち、保護層は、化学気相成長法を用いて、ポリパラジクロロトルエン、ポリパラキシリレン、ポリテトラクロロパラキシリレン、ポリジメチルパラキシリレン等の材料から得られた透明な有機膜であってよい。
【0068】
保護層がポリパラジクロロトルエン膜であることを例として、
図8に示すように、ステップS50で作製した結晶柱状ヨウ化セシウム層12、第1のポリパラジクロロトルエン膜13、第1のシリカ膜14、酸化鉛膜15及び第2のシリカ膜16を備える高反射率のPET製基板11を、化学気相成長装置に配置し、化学気相成長装置を通じて、第1のポリパラジクロロトルエン膜13の上面と第2のシリカ膜16の外面に、厚さが予備設定された第2のポリパラジクロロトルエン膜17を形成する。好ましくは、第1のポリパラジクロロトルエン膜13の上面と第2のシリカ膜16の外面に、厚さが10μmの第2のポリパラジクロロトルエン膜17を形成することが最適である。第2のポリパラジクロロトルエン膜17によって、第1のポリパラジクロロトルエン膜13と第2のシリカ膜16が、引っかかれたり剥がれたりするのを防止すると共に、結晶柱状ヨウ化セシウム層12に対する空気中の水蒸気の影響を効果的に低減することができる。
【0069】
上記ステップS10~S60を用いて、他の結晶柱状シンチレータスクリーンを作製することができる。
図9に示すように、上述の2種の結晶柱状シンチレータスクリーンの何れか1種の底部に、X線イメージセンサ20を設置し、X線画像検出器を構成する。結晶柱状シンチレータスクリーンを介して、入射されたX線を可視光線に変換した後、X線イメージセンサに伝送することによって、X線イメージセンサ及びX線イメージセンサの電子回路が、受信した可視光線をアナログ信号に変換することを便利にし、A/D変換器(アナログ/デジタル変換器)を介してデジタル信号に変換して、コンピューターに伝送し、X線の初期デジタル画像を得ることができる。
【0070】
上述の実施例に提供されるシンチレータスクリーンの製造方法は、結晶柱状シンチレータ層、防潮層、X線吸收層及び保護層を順番に作製することによって、形成されたシンチレータスクリーンのX線吸収率、変換した可視光線の透過率及び耐湿性を向上させる。また、結晶柱状シンチレータ層によって完全に吸収されないX線を吸収する、X線吸收層を増加することによって、X線イメージセンサの電子回路に対するX線シールドを実現し、X線イメージセンサに対するX線の放射干渉を低減する。
【0071】
また、フレキシブル基板で成長したヨウ化セシウムスクリーンは、薄くて軽く、曲げに強く、防水性が優れている。しかし、軟化温度の低い一部の大型フレキシブル基板に、ヨウ化セシウムを加熱蒸着すると、蒸着プロセスにおいて基板が変形しやすくなり、また、コーティングプロセスにおいて、基板の異なる部分の放熱能力差により、基板の異なる部分の温度差が大きくなり、コーティングの均一性に影響を与える。
【0072】
本発明の実施例は、大型のフレキシブル基板に、柱状結晶ヨウ化セシウムのシンチレータを蒸着する場合、変形しやすく、また、コーティングプロセスにおいて、基板の異なる部分の放熱能力差により、薄膜に顕著な不均一性が存在する問題について、高温コーティングプロセスにおいて、フレキシブル基板の変形を防止し、コーティングの均一性を著しく向上させる、シンチレータスクリーンの製造方法をさらに提供する。
【0073】
上述のフレキシブル基板に基づく、シンチレータスクリーンの製造方法は、
高い可視光線反射率または高い可視光線吸収率を有する少なくとも1つの表面を備える、基板1を提供するステップ(1)と、
フレキシブル基板1の、高い可視光線反射率または高い可視光線吸収率を有する側面と対向する他の側面が、均一に充填された熱伝導性接着剤2によって、剛性の熱伝導基板3に固定されるステップ(2)と、
フレキシブル基板1の、高い可視光線反射率または高い可視光線吸収率を有する側面に、シンチレータ層4を製造するステップ(3)と、
剛性の熱伝導基板4及び熱伝導性接着剤3を剥離除去するステップ(4)と、
シンチレータ層4を少なくとも完全にカバーすることによって、フレキシブル基板に基づく完全なシンチレータスクリーンが得られるように、上述の構造の外部に防水保護層5を製造するステップ(5)とを含む。
【0074】
【0075】
うち、ステップ(1)で提供されるフレキシブル基板1は、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PI(ポリイミド)、PE(ポリエチレン)、PMMA(ポリメチルメタクリレート、有機ガラス)等または表面処理された上述の材料から選択できる。
【0076】
フレキシブル基板1の少なくとも1つの表面の可視光線反射率は、80%~100%または0~20%である。フレキシブル基板1の少なくとも1つの表面の可視光線反射率が80%~100%である場合、フレキシブル基板1は、少なくとも1つの表面が高い可視光線反射率を有することによって、高輝度且つ低解像度を有するシンチレータスクリーンの製造に使用されることができる。フレキシブル基板1の少なくとも1つの表面の可視光線反射率が0~20%である場合、フレキシブル基板1は、少なくとも1つの表面が高い可視光線吸収率を有することによって、高解像度を有するシンチレータスクリーンの製造に使用される。
図10~
図12に示す構造において、フレキシブル基板1の、高い可視光線反射率または高い可視光線吸収率を有する表面が上面である。
【0077】
フレキシブル基板1は、透明なフレキシブル基板を選択して使用することもでき、フレキシブル基板1の少なくとも1つの表面(シンチレータ層4の蒸着に用いられる表面)に、光反射層または光吸收層を製造することによって、高い可視光線反射率または高い可視光線吸収率を有させ、同じ機能を実現することができる。
【0078】
ステップ(2)において、フレキシブル基板1の、高い可視光線反射率または高い可視光線吸収率を有する側面と対向する他の側面(即ち
図10~
図12におけるフレキシブル基板1の下面)を、均一に充填された熱伝導性接着剤2によって、剛性の熱伝導基板3に固定する。
【0079】
うち、剛性の熱伝導基板3は、アルミニウム合金、銅合金またはステンレス等から選択することができ、熱伝導係数は10W/mKよりも大きく、熱伝導性接着剤2は、接着剤または両面テープであってよく、熱伝導係数が1W/mKよりも大きい。熱伝導性接着剤2の熱膨張係数は、フレキシブル基板の熱膨張係数と剛性の熱伝導基板の熱膨張係数の間に介在すべきである。接着剤の充填方法は、流延法、チョクラルスキー法、スクリーン印刷及びスプレー等から選択でき、必要に応じて、高圧または低圧の消泡剤を組合わせることによって、フレキシブル基材1と剛性の熱伝導性基材3との確実な粘着を保証することができる。
【0080】
ステップ(2)において、熱伝導性接着剤2は、高い熱伝導率を有すると共に、フレキシブル基板1と適切な結合強度を持つべきであり、結合強度が低すぎると、後続のコーティングプロセスでは剥離しやすく、熱伝導の役割を果たすことができず、結合強度が高すぎると、シンチレータ層が蒸着された後、剛性の熱伝導基板が剥離しにくいと言う問題が存在する。
【0081】
ステップ(3)において、フレキシブル基板1の、高い可視光線反射率または高い可視光線吸収率を有する側面に、シンチレータ層4を製造する。
図10~
図12に示す構造において、フレキシブル基板1の上面にシンチレータ層4を蒸着する。シンチレータ材料は、タリウムがドープされたヨウ化セシウムCsI(TI)、ナトリウムがドープされたヨウ化セシウムCsI(Na)またはその他がドープされた柱状のヨウ化セシウム結晶から選択使用することができ、製造方法は、加熱蒸着、レーザー蒸着等から選択できる。
【0082】
上述の3つのステップを通じて、
図10に示す構造を得ることができる。
【0083】
ステップ(4)において、剛性の熱伝導基板3と熱伝導性接着剤2とを剥離除去する。
図11は、
図10に示す構造から剛性の熱伝導基板3と熱伝導性接着剤2とを剥離除去した構造を示している。剥離方法は、機械的剥離、光照射剥離、レーザー剥離等から選択でき、具体的な剥離工程は、剛性の熱伝導基板3と熱伝導性接着剤2の性質によって決定することができる。前記剥離プロセスにおいて、フレキシブル基板1及びシンチレータ層4の完全性を保証し、フレキシブル基板1の変形とシンチレータ層4の剥離を防止すべきである。
【0084】
剛性の熱伝導基板3と熱伝導性接着剤2がX線に対して明確な遮断効果を持たない場合、補助材料の除去を行わずにステップ(4)をスキップすることもでき、最終製品は複合基板を備えたシンチレータスクリーンである。
【0085】
ステップ(5)において、従来技術を選択使用して防水保護層5を製造することによって、完全なシンチレータスクリーンを得る。防水保護層5は、シンチレータ層4を少なくとも完全にカバーし、内部にシンチレータ層4を包み込んで、防水及び防湿機能を実現すべきである。使用可能な防水保護層5には、透明なPi膜(ポリイミドフィルム)、PET膜(ポリエステルフィルム)、蒸着パリレンフィルム(parylen)等、または以上の薄膜とSiO2、TIO2、Al2O3等の緻密な無機防水膜とが貼り合わせて構成された複合膜または複合コーティング層が含まれるが、これらに限定されない。
【0086】
図12に示す実施例において、フレキシブル基板1及びシンチレータ層4の外部には、防水保護層5が設置されており、防水保護層5は内部に、フレキシブル基板1及びシンチレータ層4全体を包み込んでいる。図示していない実施例において、防水保護層5は、シンチレータ層4とシンチレータ層4のエッジ付近の特定領域内の基板表面のみをカバーすることができ、同じ防水効果を達成することもできる。
【0087】
上述の製造方法において、フレキシブル基板の、結晶柱状シンチレータが蒸着された側面と対向する他の側面(フレキシブル基板の結晶柱状シンチレータの蒸着に用いられる側面から離れた側面)を、均一に充填された熱伝導性接着剤によって、剛性の熱伝導基板に固定し、高温蒸着過程におけるフレキシブル基板の固定と急速な熱伝導を実現し、重力または加熱ムラによるフレキシブル基板の変形を防止し、且つコーティングの均一性を著しく向上させる。
【0088】
上述の製造方法において、高熱伝導性の剛性の熱伝導基板を補助基板として使用し、高熱伝導性の熱伝導性接着剤を熱伝導接着材料として使用することによって、フレキシブル基板を補助基板に固定し、蒸着プロセスにおけるフレキシブル基板の固定と急速な熱伝導を実現し、フレキシブル基板の変形を防止し、コーティングの均一性を向上させる。
【0089】
上述の製造方法にステップ(4)が含まれる場合、得られたフレキシブル基板に基づくシンチレータスクリーンの構造は、
図12示すようである。フレキシブル基板に基づくシンチレータスクリーンは、フレキシブル基板1、シンチレータ層4及び防水保護層5を含み、うち、フレキシブル基板1の、高い可視光線反射率または高い可視光線吸収率を有する側面に、シンチレータ層4が設置されており、防水保護層5がシンチレータ層4を少なくとも完全にカバーする。
【0090】
また、上述の製造方法にステップ(4)が含まれず、補助材料を除去しない場合、得られた最終製品は、複合基板を備えるシンチレータスクリーンで、フレキシブル基板1、熱伝導性接着剤2、剛性の熱伝導基板3、シンチレータ層4及び防水保護層5を含み、前記フレキシブル基板1の、高い可視光線反射率または高い可視光線吸収率を有する側面に、シンチレータ層4が設置されており、フレキシブル基板1の他の側面は、均一に充填された熱伝導性接着剤2によって、剛性の熱伝導基板4に固定され、防水保護層5がシンチレータ層4を少なくとも完全にカバーする。
【0091】
上述の2種の構造において、防水保護層5は、シンチレータ層4及びシンチレータ層4のエッジ付近の特定領域内の基板表面のみをカバーすることができ、防水保護層5は内部に、シンチレータスクリーンの全体構造を包み込むこともできる。
【0092】
明確に、フレキシブルスクリーンを使用する必要がある場合を除き、ほとんどの応用の場合では、上述の2種の構造を有するシンチレータスクリーンが使用できる。
図9に示す実施例と同様に、上述の2種の構造を有するシンチレータスクリーンの何れか1種の底部に、X線イメージセンサ20を設置することによって、対応するX線画像検出器を構成できる。
【0093】
上記をまとめると、本発明の実施例に提供される、フレキシブル基板に基づくシンチレータスクリーンの製造方法は、フレキシブル基板の、高い可視光線反射率または高い可視光線吸収率を有する側面と対向する他の側面を、均一に充填された熱伝導性接着剤によって、剛性の熱伝導基板に固定することによって、高温蒸着プロセスにおけるフレキシブル基板の固定と急速な熱伝導を実現し、重力または加熱ムラによるフレキシブル基板の変形を防止し、コーティングの均一性を著しく向上させる。
【0094】
以上、本発明に提供されるシンチレータスクリーンの製造方法、シンチレータスクリーン及び画像検出器に対して、詳細に説明した。当業者にとって、本発明の実質的内容から逸脱することなく、本発明に対して行われた如何なる明らかな変更は、何れも本発明の特許権利の保護範囲に含まれる。