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特開2024-116434粉粒体供給装置の制御パラメータの算出方法および粉粒体供給装置
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  • 特開-粉粒体供給装置の制御パラメータの算出方法および粉粒体供給装置 図1
  • 特開-粉粒体供給装置の制御パラメータの算出方法および粉粒体供給装置 図2
  • 特開-粉粒体供給装置の制御パラメータの算出方法および粉粒体供給装置 図3A
  • 特開-粉粒体供給装置の制御パラメータの算出方法および粉粒体供給装置 図3B
  • 特開-粉粒体供給装置の制御パラメータの算出方法および粉粒体供給装置 図3C
  • 特開-粉粒体供給装置の制御パラメータの算出方法および粉粒体供給装置 図4
  • 特開-粉粒体供給装置の制御パラメータの算出方法および粉粒体供給装置 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116434
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】粉粒体供給装置の制御パラメータの算出方法および粉粒体供給装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 65/40 20060101AFI20240821BHJP
【FI】
B65G65/40 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022047
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田代 崇
(72)【発明者】
【氏名】平嶋 寛士
(72)【発明者】
【氏名】大上 智史
【テーマコード(参考)】
3F075
【Fターム(参考)】
3F075AA08
3F075BA01
3F075BB01
3F075CA02
3F075CA06
3F075CA09
3F075CB01
3F075CB04
3F075CB12
3F075CC05
(57)【要約】
【課題】粉粒体の定量供給において、供給精度を向上することができる粉粒体供給装置の制御パラメータの算出方法および粉粒体供給装置を提供する。
【解決手段】粉粒体Gが投入されるホッパ11と、粉粒体Gを装置外に排出するフィーダ12とを備える粉粒体供給装置100において、粉粒体Gの排出量を制御するために用いる制御パラメータの算出方法である。運転初期において初めて投入される粉粒体Gをフィーダ12内において所定速度で搬送することによって、粉粒体Gをフィーダ12内に非充填領域を発生させずに充填する充填工程S12と、充填された粉粒体Gをフィーダ12内において上述の所定速度より高速で搬送することによって、粉粒体Gをフィーダ12内で圧密状態とする圧密工程S13と、圧密状態にある粉粒体Gの排出量を用いて制御パラメータを算出するパラメータ算出工程S16とを具備する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体が投入されるホッパと、ホッパからの粉粒体をスクリュにより搬送して装置外に排出するフィーダと、を備える粉粒体供給装置において、粉粒体の排出量を制御するために使用される制御パラメータの算出方法であって、
運転初期において初めて投入される粉粒体をフィーダ内において所定速度で搬送することによって、粉粒体をフィーダ内に非充填領域を発生させずに充填する充填工程と、
前記充填された粉粒体をフィーダ内において前記所定速度より高速で搬送することによって、粉粒体をフィーダ内で圧密状態とする圧密工程と、
前記圧密状態にある粉粒体の排出量を用いて制御パラメータを算出するパラメータ算出工程と、を有すること
を特徴とする制御パラメータの算出方法。
【請求項2】
前記パラメータ算出工程が、
前記圧密状態にある粉粒体の排出量の時間軸波形から求めたむだ時間および時定数を用いて、制御のゲイン定数を算出するものであり、さらに前記圧密状態にある粉粒体の最大排出量を用いて、前記ゲイン定数を補正すること
を特徴とする請求項1に記載の制御パラメータの算出方法。
【請求項3】
粉粒体が投入されるホッパと、
ホッパからの粉粒体をスクリュにより搬送して装置外に排出するフィーダと、
粉粒体の排出量を制御するコントローラと、を備える粉粒体供給装置であって、
前記コントローラは、
フィーダ内で粉粒体を搬送するためにスクリュの回転速度を制御する速度制御部と、
粉粒体の排出量に基づいて制御パラメータを算出するパラメータ算出部と、を有し、
前記速度制御部は、
スクリュの回転速度を所定の回転速度に制御することによって粉粒体をフィーダ内に非充填領域を発生させずに充填し、前記回転速度を前記所定の回転速度より高速に制御することによって前記充填された粉粒体をフィーダ内で圧密状態とし、
前記パラメータ算出部は、
前記圧密状態にある粉粒体の排出量を用いて制御パラメータを算出すること
を特徴とする粉粒体供給装置。
【請求項4】
前記パラメータ算出部が、
前記圧密状態にある粉粒体の排出量の時間軸波形から求めたむだ時間および時定数を用いて、制御のゲイン定数を算出するものであり、さらに前記圧密状態にある粉粒体の最大排出量を用いて、前記ゲイン定数を補正すること
を特徴とする請求項3に記載の粉粒体供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
粉粒体供給装置の制御パラメータの算出方法および粉粒体供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉粒体を定量供給などする、いわゆるフィーダとも称される粉粒体供給装置は、既に広く知られている。この種の粉粒体供給装置は、粉粒体が投入されるホッパと、ホッパからの粉粒体をスクリュにより搬送して装置外へ排出するフィーダなどを備える。
【0003】
粉粒体の定量供給は、粉粒体の装置外への排出量(時間当たりの排出質量)を制御することで行われる。具体的には、粉粒体の排出質量をモニタして取得した粉粒体の排出量と予め設定した設定排出量との差分に応じて、粉粒体の排出量をフィードバック制御する。前記のような制御を行う手段を備えた粉粒体供給装置としては、例えば特許文献1に記載の発明がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2023-003898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の粉粒体供給装置において、フィーダ内に初めて粉粒体が投入されたとき、その粉粒体の流動状態を一様とし、短時間で安定供給が可能な状態とするには、熟練を要する。詳細には、粉粒体とスクリュとの間に、或いは粉粒体とフィーダ内周面との間に空隙が存在する状態は安定な状態とはいえない。空隙発生の有無は、装置の運転条件や手順などに拠る。
【0006】
さらにユーザが初めて使用する粉粒体に対しては、粉粒体排出量の制御に用いる制御パラメータを調整する必要がある。粉粒体の種別が異なると、制御対象となるシステムの特性が異なり、最適な制御パラメータが異なるためである。制御パラメータの調整は、粉粒体の安定供給が可能な状態で行われる必要がある。不安定な状態で制御パラメータの調整が行われたとき、得られたパラメータの精度は低くなる。
【0007】
ここで、制御パラメータの調整は試行錯誤を必要とするため、それ自体も熟練を要する。熟練者によって調整が行われないとき、制御パラメータの精度は低くなる。これらの制御パラメータの精度の低下は、粉粒体供給装置としての定量供給精度の低下につながり、延いては粉粒体の原料ロスにもつながる。
【0008】
よって本発明では、粉粒体供給装置の定量供給精度を向上することができる粉粒体供給装置の制御パラメータの算出方法および粉粒体供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、第1の発明に係る粉粒体供給装置の制御パラメータの算出方法は、粉粒体が投入されるホッパと、ホッパからの粉粒体をスクリュにより搬送して装置外に排出するフィーダと、を備える粉粒体供給装置において、粉粒体の排出量を制御するために使用される制御パラメータの算出方法であって、運転初期において初めて投入される粉粒体をフィーダ内において所定速度で搬送することによって、粉粒体をフィーダ内に非充填領域を発生させずに充填する充填工程と、前記充填された粉粒体をフィーダ内において前記所定速度より高速で搬送することによって、粉粒体をフィーダ内で圧密状態とする圧密工程と、前記圧密状態にある粉粒体の排出量を用いて制御パラメータを算出するパラメータ算出工程と、を有するものである。
【0010】
また、第2の発明に係る粉粒体供給装置の制御パラメータの算出方法は、前記パラメータ算出工程が、前記圧密状態にある粉粒体の排出量の時間軸波形から求めたむだ時間および時定数を用いて、制御のゲイン定数を算出するものであり、さらに前記圧密状態にある粉粒体の最大排出量を用いて、前記ゲイン定数を補正するものである。
【0011】
また、第3の発明に係る粉粒体供給装置は、粉粒体が投入されるホッパと、ホッパからの粉粒体をスクリュにより搬送して装置外に排出するフィーダと、粉粒体の排出量を制御するコントローラと、を備える粉粒体供給装置であって、前記コントローラは、フィーダ内で粉粒体を搬送するためにスクリュの回転速度を制御する速度制御部と、粉粒体の排出量に基づいて制御パラメータを算出するパラメータ算出部と、を有し、前記速度制御部は、スクリュの回転速度を所定の回転速度に制御することによって粉粒体をフィーダ内に非充填領域を発生させずに充填し、前記回転速度を前記所定の回転速度より高速に制御することによって前記充填された粉粒体をフィーダ内で圧密状態とし、前記パラメータ算出部は、前記圧密状態にある粉粒体の排出量を用いて制御パラメータを算出するものである。
【0012】
さらに、第4の発明に係る粉粒体供給装置は、前記パラメータ算出部が、前記圧密状態にある粉粒体の排出量の時間軸波形から求めたむだ時間および時定数を用いて、制御のゲイン定数を算出するものであり、さらに前記圧密状態にある粉粒体の最大排出量を用いて、前記ゲイン定数を補正するものである。
【発明の効果】
【0013】
発明者らによる調査の結果、粉粒体を安定的に装置外に排出するためには、空隙が無いことに加え、粉粒体がフィーダ内で圧密状態であることが必要だと分かった。ここで、圧密とは、加圧力による粉粒体の体積減少挙動で、粒子の破壊はともなわない挙動である。そして調査を重ねた結果、流動状態を安定化し、圧密状態とできる手法を見出した。その上で、制御パラメータの算出を行う方法を一連のシーケンスとして行えるようにした。
【0014】
よって、本発明による粉粒体供給装置の制御パラメータの算出方法および粉粒体供給装置によれば、粉粒体の状態を圧密状態として安定化した上で、制御パラメータを算出する。これにより、制御パラメータの精度を向上できるため、粉粒体供給装置としての定量供給精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係る粉粒体供給装置の構成を模式的に示す図である。
図2】同粉粒体供給装置の制御パラメータの算出方法の工程を示すフロー図である。
図3A】同粉粒体供給装置の制御パラメータの算出方法の工程のうち原料投入工程を示す一部断面図である。
図3B】同粉粒体供給装置の制御パラメータの算出方法の工程のうち充填工程を示す一部断面図である。
図3C】同粉粒体供給装置の制御パラメータの算出方法の工程のうち圧密工程を示す一部断面図である。
図4】同粉粒体供給装置の制御パラメータの算出方法におけるパラメータ算出工程の内容を示すフロー図である。
図5】同粉粒体供給装置の制御パラメータの算出方法におけるパラメータ算出工程の内容を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図中、同一又は相当部分については、同一の参照符号を付すことで、説明を繰り返さない。
【0017】
[粉粒体供給装置の構成]
まず、図1を参照して、本発明の実施の形態に係る粉粒体供給装置100の構成について説明する。
【0018】
図1は、粉粒体供給装置100の構成を示す模式図である。粉粒体供給装置100は、粉粒体が投入されるホッパ11と、ホッパ11からの粉粒体Gをスクリュ12aにより排出部12bまで搬送して装置外へ排出するフィーダ12と、スクリュ12aを駆動するモータ13とを少なくとも備える。
【0019】
粉粒体供給装置100は、さらに粉粒体供給装置100の質量をモニタする計量部14と、モニタした粉粒体供給装置100の質量を粉粒体の排出量(単位時間当たりの粉粒体の排出質量)に変換する質量変換部20と、粉粒体の排出条件を設定する設定部30と、粉粒体の排出量を制御するコントローラ40とを備える。粉粒体の排出量の制御は、モニタした粉粒体排出量の現在値を用いたPI制御により行う。なお質量変換部20は、コントローラ40に含まれる。
【0020】
質量変換部20は、粉粒体供給装置100の質量を排出量に変換する。具体的には、質量変換部20は、計量部14でモニタされた粉粒体供給装置100の質量を用いて、その単位時間毎の差分から粉粒体の排出量を求める。設定部30は液晶等によるユーザインターフェースと操作キーなどを備える。ユーザはこれらを操作してコントローラ40との通信を行い、運転条件の設定などを行う。本発明が課題とする定量供給運転では、運転条件として排出量を設定する(以下、設定した排出量を設定排出量Frと称する)。
【0021】
コントローラ40は、粉粒体排出量の現在値が設定排出量Frとなるようにスクリュ12aにつながるモータ13の回転速度を制御する速度制御部41と、速度制御部41からの指令値に基づいてモータ13を駆動するモータ駆動部42と、時計43とを少なくとも備える。
【0022】
コントローラ40は、さらに制御パラメータを算出するパラメータ算出部44と、パラメータの算出にあたって必要となる粉粒体Gの分量を算出する分量算出部45と、記憶部46とを備える。
【0023】
パラメータ算出部44は、PI制御で用いるゲイン定数として比例ゲインKpおよび積分ゲインKiを算出する。また、パラメータ算出部44は、前記ゲイン定数を補正する補正係数kを算出する。補正係数kによって補正された前記ゲイン定数を、それぞれ修正比例ゲインKp´および修正積分ゲインKi´と称する。各パラメータの算出方法の詳細は後述する。
【0024】
速度制御部41は、粉粒体排出量の現在値と設定排出量Frとの偏差に応じてPI制御を行う。すなわち、前記偏差に修正比例ゲインKp´を掛けた値と、前記偏差の時間積分値に修正積分ゲインKi´を掛けた値の和を用いてモータ目標回転速度Ntを決定し、その値をモータ駆動部42に指示する。
【0025】
モータ駆動部42は、モータの回転速度がモータ目標回転速度Ntとなるようにモータを制御する。モータの制御は、例えば、センシングしたモータ回転数をフィードバックして駆動電圧を制御する。以上の構成によって、粉粒体Gを設定排出量Frで定量供給運転するように制御する。
【0026】
[粉粒体供給装置の制御パラメータの算出方法]
次に、図2を参照して、制御パラメータの算出方法について説明する。図2は粉粒体供給装置100の制御パラメータの算出方法を説明する図である。制御パラメータの算出は、6つの工程から構成される。
【0027】
前半の第1から第3までの工程は、制御パラメータの算出に必要となる排出量データの取得に先立って、制御系を安定化するために行われる工程である。なお、制御系とは、フィードバックループを構成する粉粒体供給装置100全体を指す。勿論、制御系には、粉粒体Gが含まれる。この制御系の安定を阻害する要素として、上述した粉粒体Gの流動状態がある。よって、前半の工程では粉粒体Gの流動状態を安定化させる。後半の第4から第6までの工程は、制御系を安定化させた後に、制御パラメータの算出に必要な排出量データを取得し、その結果を用いて各パラメータを算出する工程である。
【0028】
以下では、図3を参照して、図2における前半の工程について説明する。図3A図3Bおよび図3Cは、それぞれ図2の第1、第2および第3工程の状態を示す。
【0029】
図3Aは、第1工程の原料投入工程S11が終了した時点の状態を示している。本工程は、運転初期において、ユーザが初めて粉粒体Gをホッパ11に投入する工程である。その際、図2における全工程を完了するために必要な粉粒体Gの分量以上の分量をホッパ11に投入する。必要となる粉粒体Gの分量は、分量算出部45にて算出され、設定部30においてユーザに指示される。分量算出部45は、設定排出量Frと、予め記憶部46に記憶してある各工程の運転条件(モータ回転速度および、そのモータ回転速度における運転時間)から必要となる粉粒体Gの分量を算出し、設定部30に表示する。
【0030】
この工程が終了した時点では、フィーダ12内における粉粒体Gは図示のようにホッパ11直下のフィーダ12の内部に積み上げられたのみとなる。よって、フィーダ12内では不規則に空隙部分が存在する。
【0031】
なお、ホッパ11内やフィーダ12への供給口でブリッジ(粉詰まり)を起こしやすい粉粒体を扱う場合は、その防止のためにホッパ11内に攪拌機構などを備えていても良い。
【0032】
図3Bは、第2工程の充填工程S12が終了した時点の状態を示している。粉粒体Gはスクリュ12aによってフィーダ12内を徐々に搬送されて、非充填領域が発生しないように充填される。すなわち、粉粒体Gとスクリュ12aとの間に、または、粉粒体Gとフィーダ12の内周面との間に空隙部分が発生しないように充填される。
【0033】
スクリュ12aの運転条件としては、モータ13の回転速度を比較的低速とし、できるだけ短い運転時間を設定する。具体的な運転条件は、スクリュ12aの口径やスクリュ12aの長さ、モータ13の定格回転速度などに拠って異なる。しかし概ね、モータ13の回転速度は、モータ13の定格回転速度の10%以上40%以下の範囲内で好適である。
【0034】
ここで運転時間は、本工程においてモータ13を前記好適な範囲内の回転速度で運転する場合に、フィーダ12内に粉粒体Gを非充填領域が発生しないように充填するために必要となる最小限の時間であり、概ね5s以上50s以下の範囲内で好適である。これにより、必要最小限の粉粒体Gによりフィーダ12内に粉粒体Gを充填することができる。従って、制御パラメータの算出に要する粉粒体Gの原料ロスを抑えることができる。
【0035】
モータ13の回転速度を上記のように比較的低速に設定することにより、粉粒体Gとスクリュ12aとの接触部位周辺および粉粒体Gとフィーダ12の内周面との接触部位周辺における流動性を良くし、徐々に空隙を埋めながら粉粒体Gをフィーダ12における排出部12bに送り出していくことができる。フィーダ12内に空隙がある状態でスクリュ12aを高速回転すると、粉粒体の流動性が悪くなり、粉粒体Gがホッパ11からフィーダ12内に流動しない状況となり得る。あるいは不規則に空隙が存在する状態で粉粒体Gを搬送する結果、粉粒体Gが脈動を伴って排出される状況ともなり得る。
【0036】
図3Cは、第3工程の圧密工程S13が終了した状態を示す。本工程では、充填された粉粒体Gをフィーダ12内で圧密状態とする。ここで、圧密とは、加圧力により粉粒体の体積が減少する挙動であって、粉粒体粒子の破壊をともなわない。粉粒体は固定と気体の混合体であるため、加圧されることで、気体の混合比率が減少し得る。
【0037】
スクリュ12aの運転条件としては、モータ13の回転速度を比較的高速とし、できるだけ短い運転時間を設定する。具体的な運転条件は、スクリュ12aの口径やスクリュ12aの長さ、モータ13の定格回転数などに拠って異なる。しかし概ね、モータ13の回転速度は、モータ13の定格回転速度の60%以上100%以下の範囲内で好適である。
【0038】
ここで運転時間は、本工程においてモータ13を前記好適な範囲内の回転速度で運転した場合に、フィーダ12内を圧密状態とするために必要となる最小限の時間であり、概ね2s以上15s以下の範囲内で好適である。これにより、必要最小限の粉粒体Gによりフィーダ12内を圧密状態とすることができる。従って、制御パラメータの算出に要する粉粒体Gの原料ロスを抑えることができる。粉粒体Gの種類によっては再利用ができないものもあるため、粉粒体Gの原料ロスはできるだけ少なくすることが望ましい。
【0039】
モータ13の回転速度を上記のように比較的高速に設定することにより、スクリュ12aで粉粒体Gに加圧力を与えることができる。その結果、図示するように、ホッパ11の出口からフィーダ12における排出部12bに至るまでの排出筒12c内が圧密状態となる。そして圧密状態となった後に、粉粒体Gは装置外に排出される。圧密状態となることで、粉粒体Gの密度の変動と流動性の変動とが少なくなり、これらは安定化する。従って、排出量の変動が少なくなり、排出量が安定化する。
【0040】
以上の工程によって、粉粒体Gがフィーダ12内において圧密状態となり、排出量を安定化できる。すなわち、制御系を安定化することができる。
【0041】
再び図2を参照して、後半の第4から第6までの工程について説明する。第4工程は、最大排出量測定工程S14である。本工程では、粉粒体供給装置100の最大排出量Fmを測定する。具体的には、スクリュ12aの駆動モータ13が定格回転速度であるときの、粉粒体の排出量を取得する。詳細は後述するが、制御パラメータの算出において必要となる値である。前工程で粉粒体Gが圧密状態となり排出量が安定化しているため、精度の高い値が取得できる。
【0042】
なお、低融点の粉粒体Gを扱う場合であって、粉粒体Gの温度上昇を抑える目的や、粉粒体Gの原料ロスを抑制する目的で、定格回転速度以下のモータ回転速度で前記最大排出量Fmを取得しても良い。例えば、定格回転速度の50%の回転速度で排出量を取得した場合には、その値を2倍したものが最大排出量Fmとなる。
【0043】
第5工程は、排出量波形測定工程S15である。詳細は後述するが、制御パラメータの算出に用いる排出量のステップ応答波形(モータに単位ステップ入力を指示したときに、それに応答する粉粒体排出量の時間軸波形)を、PI制御を用いずに、すなわち開ループ状態で取得する。ここでも同じく、前工程で粉粒体Gが圧密状態となり排出量が安定化しているため、精度の高い波形が取得できる。
【0044】
第6工程は、パラメータ算出工程S16である。第4および第5工程で取得した結果から、制御パラメータを算出する。
【0045】
以下では、図4を参照して、前記パラメータ算出工程S16で行う内容を説明する。図4は、この工程で対象とする制御パラメータを示している。図示するうち、ゲイン定数として比例ゲインKp、積分ゲインKiおよび、これらのゲイン定数を補正する補正係数kが対象となる。なお、同じく図示する比例定数αについては、後述する。
【0046】
ゲイン定数は、対象とする制御系の物理モデルを構築できれば計算により求まる。しかし、本発明で扱うような粉粒体の挙動は、その特性を物理モデルで表現することが困難である。このような場合に、ゲイン定数を実験的に求める手法がこれまでにいくつか提案されている。
【0047】
例えば、制御系のステップ応答波形からゲイン定数を求める手法(以下、ステップ応答法と称する)として、Ziegler-Nichols法やCHR法などがある。なお、本発明におけるステップ応答波形とは、モータに単位ステップ入力(所定のモータ回転速度の過渡的な入力)を指示したとき、それに応答する粉粒体排出量の時間軸波形である。
【0048】
上述のようなステップ応答法では、ステップ応答波形から特性値として時定数Tおよびむだ時間Lを読み取る。そして、これらの特性値を変数とする経験式を用いてゲイン定数を算出する。つまり、f(x)、g(x)を、xを変数とする関数とする場合、例えばZiegler-Nichols法では、Kp=f(T,L)、Ki=g(L)と表せられる。読み取った特性値をこれらの経験式に代入してゲイン定数を算出する。
【0049】
図5を参照して、ステップ応答波形から特性値を読み取る手順について説明する。但し、ここで説明する読み取り手順は一例であって、決定的なものではない。まず、ステップ応答波形として、粉粒体排出量の時間軸波形をプロットする。次に、この波形の変曲点における接線を引き、接線とX軸との交点(時間)から、原点からのむだ時間Lが求まる。次に、粉粒体の排出量が最終的に収束する値(K)の63.2%となるときの原点からの時間を求める。この時間からむだ時間Lを差し引いた値が時定数Tである。
【0050】
なお、ステップ応答法は、上記に記載した以外でも、Hazebroek and Waerden法、Wolfe法、Chien ,Hrones and Reswick法などがあり、状況に応じて選択できる。
【0051】
次に補正係数kについて説明する。補正係数kは、比例ゲインKpと積分ゲインKiの値を設定排出量Frの大小に追従して補正するものである。例えば、設定排出量Frが小さい場合には、それに対応してゲイン定数を小さく補正する。これにより、設定排出量Frに拠らず、排出量を早期安定化できる。
【0052】
補正係数kは、最大排出量Fmに対する設定排出量Frの比(k=Fr/Fm)として求める。そして、比例ゲインKpおよび積分ゲインKiと補正係数kとの積が、それぞれ修正比例ゲインKp´、修正積分ゲインKi´となる。以上により、PI制御に用いる制御パラメータが算出される。
【0053】
最後に、比例定数αについて説明する。上述したように、粉粒体供給装置100では、粉粒体排出量をフィードバック制御(PI制御)している。ここで粉粒体供給装置100は、さらに粉粒体排出量の制御性を向上するために、フィードバック制御とフィードフォワード制御を組み合わせた2自由度制御を行うこともできる。
【0054】
フィードバック制御は、粉粒体排出量の現在値と、設定排出量Frとの偏差に応じて制御量を決定する。そのため、運転開始直後は、その偏差が大となり、制御量が過大となることもある。そこで、運転開始直後のみ、フィードフォワード制御を行う。つまり、速度制御部41は、粉粒体排出量の現在値を用いず、設定排出量Frに対応したモータ目標回転数Ntをモータ駆動部42に直接指示する。そして、一旦モータ回転数がモータ目標回転数Ntとなった後は、PI制御に切り替える。これにより、フィードバック制御(PI制御)の高い目標値追従精度と、フィードフォワード制御の速い反応速度を両立できる。
【0055】
ここで、モータ回転数と粉粒体排出量の収束値は比例関係にあることが経験的に分かっている。よって、その比例定数をαとすると、モータ目標回転数Ntは設定排出量Frを用いて、Nt=α×Frとして求まる。比例定数αは、最大排出量Fmに対するモータ定格回転数Nmの比(α=Nm/Fm)として求める。
【0056】
以上述べたように、粉粒体供給装置100では、粉粒体Gの状態を圧密状態として排出量を安定化したうえで、一連のシーケンスにより全ての制御パラメータを導出できる。実際には、ユーザは上記の工程を粉粒体供給装置100からの都度の指示に従って進める。これにより、ユーザが熟練者でないときでも、その使用環境条件に応じて制御パラメータが最適化される。その結果、粉粒体供給装置100としての定量供給精度を向上することができる。
【0057】
[実施例:最大排出量Fm測定結果]
従来手法として、運転初期において、圧密工程S13を入れないシーケンスにて取得した最大排出量Fmの測定値は、十分な運用時間を経過した後に測定した値に対して誤差が34%であった。これに対して、本実施形態の手法により圧密工程S13を含めたシーケンスにて、運転初期に取得した最大排出量Fmの値は、十分な運用時間を経過した後に測定した値に対して誤差が0.11%であった。すなわち運転初期における最大排出量Fmの測定精度が大幅に向上した。
【符号の説明】
【0058】
G 粉粒体
11 ホッパ
12 フィーダ
12a スクリュ
12b 排出部
13 モータ
14 計量部
20 質量変換部
30 設定部
40 コントローラ
41 速度制御部
42 モータ駆動部
43 時計
44 パラメータ算出部
45 分量算出部
46 記憶部
100 粉粒体供給装置
S11 原料投入工程
S12 充填工程
S13 圧密工程
S14 最大排出量測定工程
S15 排出量波形測定工程
S16 パラメータ算出工程
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5