IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社 Eu−BSの特許一覧

<>
  • 特開-空気浄化方法及び空気清浄機 図1
  • 特開-空気浄化方法及び空気清浄機 図2
  • 特開-空気浄化方法及び空気清浄機 図3
  • 特開-空気浄化方法及び空気清浄機 図4
  • 特開-空気浄化方法及び空気清浄機 図5
  • 特開-空気浄化方法及び空気清浄機 図6
  • 特開-空気浄化方法及び空気清浄機 図7
  • 特開-空気浄化方法及び空気清浄機 図8
  • 特開-空気浄化方法及び空気清浄機 図9
  • 特開-空気浄化方法及び空気清浄機 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116447
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】空気浄化方法及び空気清浄機
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/16 20060101AFI20240821BHJP
   B01D 47/00 20060101ALI20240821BHJP
   B01D 47/02 20060101ALI20240821BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20240821BHJP
   C01G 55/00 20060101ALI20240821BHJP
   F24F 8/133 20210101ALI20240821BHJP
   F24F 8/15 20210101ALI20240821BHJP
   F24F 8/108 20210101ALI20240821BHJP
【FI】
A61L9/16 Z
B01D47/00 A
B01D47/02 B
A61L9/01 B
C01G55/00
F24F8/133
F24F8/15
F24F8/108 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022066
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】510101527
【氏名又は名称】株式会社 Eu-BS
(74)【代理人】
【識別番号】100092842
【弁理士】
【氏名又は名称】島野 美伊智
(74)【代理人】
【識別番号】100166578
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 芳光
(72)【発明者】
【氏名】露無 慎二
(72)【発明者】
【氏名】露無 慎也
(72)【発明者】
【氏名】露無 隆二
【テーマコード(参考)】
4C180
4D032
4G048
【Fターム(参考)】
4C180AA07
4C180AA16
4C180AA17
4C180CB06
4C180EA02X
4C180EA04X
4C180EA05X
4C180EA06X
4C180EA23X
4C180EA24X
4C180EA33X
4C180EA56Y
4C180EB05Y
4C180HH05
4D032AA21
4D032AE01
4D032DA01
4G048AA03
4G048AA06
4G048AB02
4G048AB08
4G048AD03
4G048AE05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡易な構成により効果的かつ安全に汚染空気の浄化を行うことができる空気浄化方法及び空気清浄機を提供すること。
【解決手段】ウイルス、病原菌、又は、アレルゲンなどのバイオハザード、または、原子力発電所における事故や廃炉作業で生じた放射性ストロンチウム、放射性セシウム、放射性セシウム等の放射性ハザード物質を含む汚染空気を金属ナノ粒子液19中に通過させて、上記金属ナノ粒子液により上記汚染空気の浄化を行う方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ナノ粒子液中に空気を通過させることを特徴とする空気浄化方法。
【請求項2】
請求項1記載の空気浄化方法において、
上記空気を上記金属ナノ粒子液中に通過させる前にフィルターに通過させて異物を除去することを特徴とする空気浄化方法。
【請求項3】
請求項1記載の空気浄化方法において、
上記金属ナノ粒子液内を通過した空気を外部に放出する前にフィルターに通過させて上記金属ナノ粒子液中の金属ナノ粒子の外部への漏出を防止することを特徴とする空気浄化方法。
【請求項4】
請求項1記載の空気浄化方法において、
上記金属ナノ粒子液は白金ナノコロイド液であることを特徴とする空気浄化方法。
【請求項5】
請求項1記載の空気浄化方法において、
上記金属ナノ粒子液は白金ナノコロイドヨウ素液、白金ナノコロイドセシウム液、又は、白金ナノコロイドストロンチウム液であることを特徴とする空気浄化方法。
【請求項6】
金属ナノ粒子液が入った浄化用水槽と、
外部から空気を取り込んで上記金属ナノ粒子液に上記空気を送り込むエアーポンプと、
を具備したことを特徴とする空気清浄機。
【請求項7】
請求項6記載の空気清浄機において、
上記エアーポンプの吸入口側に異物の侵入を防止する吸入側フィルターが設置されていることを特徴とする空気清浄機。
【請求項8】
請求項6記載の空気清浄機において、
上記金属ナノ粒子液で処理された上記空気を通過させて上記金属ナノ粒子液中の金属ナノ粒子の外部への漏出を防止する排出側フィルターが設置されていることを特徴とする空気清浄機。
【請求項9】
請求項6記載の空気清浄機において、
上記金属ナノ粒子液は白金ナノコロイド液であることを特徴とする空気清浄機。
【請求項10】
請求項6記載の空気清浄機において、
上記金属ナノ粒子液は白金ナノコロイドヨウ素液、白金ナノコロイドセシウム液、又は、白金ナノコロイドストロンチウム液であることを特徴とする空気清浄機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ウイルス、病原菌、及び、アレルゲンなどのバイオハザード、または、原子力発電所における事故や廃炉作業で生じた放射性ストロンチウム、放射性セシウム等の放射性ハザード物質を含む汚染空気を浄化する空気浄化方法及び空気清浄機に係り、特に、簡易な構成により効果的かつ安全に汚染空気の浄化を行うことができるように工夫したものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空気浄化方法及び空気清浄機として、例えば、特許文献1に記載されたようなものがある。この特許文献1は本願出願人によるものである。特許文献1による抗ウイルス・菌剤と抗ウイルス・菌剤担持体と抗ウイルス・菌剤製造方法と空中ウイルス・菌処理方法では、金属ナノ粒子を有機酸及びポリマーによってダブルキャッピングして抗ウイルス・菌剤とし、この抗ウイルス・菌剤をガラス板、ステンレス板、不織布、又は、綿布等の担持体に担持させて抗ウイルス・菌剤担持体としている。また、特許文献1には上記抗ウイルス・菌剤を空中に散布して、空中に漂うウイルスや菌を処理することも記載されている。
【0003】
なお、上記金属ナノ粒子としては、例えば、白金(Pt)ナノ粒子又は金(Au)ナノ粒子又はイリジウム(Ir)ナノ粒子等が用いられる。上記金属ナノ粒子は、例えば、上記クロロ金属酸にクエン酸(C)を所定の濃度となるように混合し、上記クロロ金属酸を上記クエン酸(C)で還元しながらキャッピングすることで調整される。また、上記金属ナノ粒子をグルコマンナン溶液に混合して、更にグルコマンナンによってもキャッピングすることもできる。
【0004】
また、従来の空気浄化方法及び空気清浄機として、例えば、特許文献2に記載されたようなものもある。
この特許文献2による空気清浄機は、本体内にフィルターが設置されていて、上記フィルターによって本体内に吸引された空気より塵埃を捕集する。上記本体内には上記フィルターに薬液を噴霧する噴霧ノズルと、上記噴霧ノズルに上記薬液を供給する2つの薬液タンクが設置されている。上記2つの薬液タンクにはそれぞれ別の種類の薬液が保持されていて、上記複数の薬液を別々に上記噴霧ノズルから噴霧させることも、上記複数の薬液を混合して調製した薬液を噴霧させることもできるようになっている。
【0005】
上記フィルターは、ポリプロピレンおよびポリエチレン等のポリオレフィンの繊維、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレート等のポリエステルの繊維、並びに、ナイロン繊維等から構成され、放電処理や、フィルター繊維への摩擦および液滴の衝突等によってエレクトレット処理が行われる。
上記薬液は白金ナノ粒子分散液で、上記薬液を上記フィルターに噴霧することで、白金ナノ粒子を上記フィルターに担持させるようになっている。特許文献1に記載されているように抗ウイルス・菌剤を空中に散布すると、人や動物が呼吸時に吸い込んでしまい、何らかの健康被害が生じてしまうことが懸念されるが、このようにして白金ナノ粒子を上記フィルターに担持させることで空気中への上記白金ナノ粒子の放出を防止できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-150765号公報
【特許文献2】特開2020-96794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の構成によると次のような問題があった。
例えば、特許文献1に記載されているように、抗ウイルス・菌剤を空中に散布して空中に漂うウイルスや菌を処理すると、気流により上記抗ウイルス・菌剤が散逸してしまうことや、時間経過により上記抗ウイルス・菌剤が下に落ちてしまうことや、上記抗ウイルス・菌剤が壁などに付着して空中に漂うウイルスや菌の処理が効果的に行われないことや、頻繁に上記抗ウイルス・菌剤の散布を行わなければならないことが懸念される。
【0008】
また、特許文献2に記載されているように、空気清浄機のフィルターに白金ナノ粒子を担持させて、上記空気清浄機内に吸引することで空中に漂うウイルスや菌の処理を行う場合では、フィルターへの薬液の噴霧により上記フィルターへ白金ナノ粒子を再担持させることができるようになっているが、上記フィルターに汚れが蓄積されれば上記フィルターを交換しなければならない。また、上記フィルターに薬液を噴霧した後に乾燥させる必要があり、加熱用のヒーターが設置されているため、構成が複雑になっている。
【0009】
本発明は、このような点に基づいてなされたもので、その目的とするところは、例えば、簡易な構成により効果的かつ安全に汚染空気の浄化を行うことができる空気浄化方法及び空気清浄機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するべく請求項1に記載された空気浄化方法は、金属ナノ粒子液中に空気を通過させることを特徴とするものである。
また、請求項2に記載された空気浄化方法は、請求項1記載の空気浄化方法において、上記空気を上記金属ナノ粒子液中に通過させる前にフィルターに通過させて異物を除去することを特徴とするものである。
また、請求項3に記載された空気浄化方法は、請求項1記載の空気浄化方法において、上記金属ナノ粒子液内を通過した空気を外部に放出する前にフィルターに通過させて上記金属ナノ粒子液中の金属ナノ粒子の外部への漏出を防止することを特徴とするものである。
また、請求項4に記載された空気浄化方法は、請求項1記載の空気浄化方法において、上記金属ナノ粒子液は白金ナノコロイド液であることを特徴とするものである。
また、請求項5に記載された空気浄化方法は、請求項1記載の空気浄化方法において、上記金属ナノ粒子液は白金ナノコロイドヨウ素液であることを特徴とするものである。
また、請求項6に記載された空気清浄機は、金属ナノ粒子液が入った浄化用水槽と、外部から空気を取り込んで上記金属ナノ粒子液に上記空気を送り込むエアーポンプと、を具備したことを特徴とするものである。
また、請求項7に記載された空気清浄機は、請求項6記載の空気清浄機において、上記エアーポンプの吸入口側に異物の侵入を防止する吸入側フィルターが設置されていることを特徴とするものである。
また、請求項8に記載された空気清浄機は、請求項6記載の空気清浄機において、上記金属ナノ粒子液で処理された上記空気を通過させて上記金属ナノ粒子液中の金属ナノ粒子の外部への漏出を防止する排出側フィルターが設置されていることを特徴とするものである。
また、請求項9に記載された空気清浄機は、請求項6記載の空気清浄機において、上記金属ナノ粒子液は白金ナノコロイド液であることを特徴とするものである。
また、請求項10に記載された空気清浄機は、請求項6記載の空気清浄機において、上記金属ナノ粒子液は白金ナノコロイドヨウ素液、白金ナノコロイドセシウム液、又は、白金ナノコロイドストロンチウム液であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
以上述べたように、請求項1記載の空気浄化方法によると、金属ナノ粒子液中に空気を通過させるため、簡易な構成により効果的かつ安全に汚染空気の浄化を行うことができる。
また、請求項2記載の空気浄化方法によると、請求項1記載の空気浄化方法において、上記空気を上記金属ナノ粒子液中に通過させる前にフィルターに通過させて異物を除去するため、より効果的に汚染空気の浄化を行うことができる。
また、請求項3記載の空気浄化方法によると、請求項1記載の空気浄化方法において、上記金属ナノ粒子液内を通過した空気を外部に放出する前にフィルターに通過させて上記金属ナノ粒子液中の金属ナノ粒子の外部への漏出を防止するため、外部への上記金属ナノ粒子の放出を防止し、より安全に汚染空気の浄化を行うことができる。
また、請求項4記載の空気浄化方法によると、請求項1記載の空気浄化方法において、上記金属ナノ粒子液は白金ナノコロイド液であるため、ウイルス、病原菌、及び、アレルゲンなどのバイオハザードに対してより効果的に汚染空気の浄化を行うことができる。
また、請求項5記載の空気浄化方法によると、請求項1記載の空気浄化方法において、上記金属ナノ粒子液は白金ナノコロイドヨウ素液、白金ナノコロイドセシウム液、又は、白金ナノコロイドストロンチウム液であるため、放射性ハザード物質に対してより効果的に汚染空気の浄化を行うことができる。
また、請求項6記載の空気清浄機によると、金属ナノ粒子液が入った浄化用水槽と、外部から空気を取り込んで上記金属ナノ粒子液に上記空気を送り込むエアーポンプと、を具備したため、簡易な構成により効果的かつ安全に汚染空気の浄化を行うことができる。
また、請求項7記載の空気清浄機によると、請求項6記載の空気清浄機において、上記エアーポンプの吸入口側に異物の侵入を防止する吸入側フィルターが設置されているため、より効果的に汚染空気の浄化を行うことができる。
また、請求項8記載の空気清浄機によると、請求項6記載の空気清浄機において、上記金属ナノ粒子液で処理された上記空気を通過させて上記金属ナノ粒子液中の金属ナノ粒子の外部への漏出を防止する排出側フィルターが設置されているため、外部への金属ナノ粒子の放出を防止し、より安全に汚染空気の浄化を行うことができる。
また、請求項9記載の空気清浄機によると、請求項6記載の空気清浄機において、上記金属ナノ粒子液は白金ナノコロイド液であるため、ウイルス、病原菌、及び、アレルゲンなどのバイオハザードに対してより効果的に汚染空気の浄化を行うことができる。
また、請求項10記載の空気清浄機によると、請求項6記載の空気清浄機において、上記金属ナノ粒子液は白金ナノコロイドヨウ素液、白金ナノコロイドセシウム液、又は、白金ナノコロイドストロンチウム液であるため、放射性ハザード物質に対してより効果的に汚染空気の浄化を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施の形態を示す図で、空気清浄機の模式的な図である。
図2】本発明の第2の実施の形態を示す図で、第1の実験により、空気清浄機によって塩化ストロンチウムを含んだ空気を処理する前の浄化用水槽内の金属ナノ粒子液を示す写真である。
図3】本発明の第2の実施の形態を示す図で、第1の実験により、空気清浄機によって塩化ストロンチウムを含んだ空気を処理した浄化用水槽内の金属ナノ粒子液を示す写真である。
図4】本発明の第2の実施の形態を示す図で、第1の実験において、浄化用水槽内の金属ナノ粒子液から排出された空気を蒸留水に通過させて得られた液を白金ナノコロイドヨウ素液と混合した写真である。
図5】本発明の第2の実施の形態を示す図で、第2の実験により、空気清浄機によって塩化セシウムを含んだ空気を処理した浄化用水槽内の金属ナノ粒子液を示す写真である。
図6】本発明の第2の実施の形態を示す図で、第2の実験において、浄化用水槽内の金属ナノ粒子液から排出された空気を蒸留水に通過させて得られた液を白金ナノコロイドヨウ素液と混合した写真である。
図7】本発明の第3の実施の形態を示す図で、第1の実験により、空気清浄機によって塩ヨウ素を含んだ空気を処理した浄化用水槽内の金属ナノ粒子液を示す写真である。
図8】本発明の第3の実施の形態を示す図で、第1の実験において、浄化用水槽内の金属ナノ粒子液から排出された空気を蒸留水に通過させて得られた液を白金ナノコロイドセシウム液と混合した写真である。
図9】本発明の第3の実施の形態を示す図で、第2の実験により、空気清浄機によってヨウ素を含んだ空気を処理した浄化用水槽内の金属ナノ粒子液を示す写真である。
図10】本発明の第3の実施の形態を示す図で、第2の実験において、浄化用水槽内の金属ナノ粒子液から排出された空気を蒸留水に通過させて得られた液を白金ナノコロイドストロンチウム液と混合した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1を参照しながら、本発明の第1の実施の形態について説明する。
この第1の実施の形態による空気清浄機1には筐体3がある。上記筐体3には空気吸入口5と空気排出口7が設けられている。上記空気吸入口5には吸入側フィルター9が設置されている。上記吸入側フィルター9は、例えば、細孔ガラス製、又は、ナイロン製等であり、上記空気吸入口5から上記空気清浄機1内に取り込まれる空気から異物を除去するようになっている。
【0014】
上記筐体3内にはエアーポンプ13が設置されている。上記エアーポンプ13の吸入側は上記空気吸入口5に接続されていて、上記エアーポンプ13の排出側には泡排出部15が設けられている。上記泡排出部15は多孔質からなり、上記エアーポンプ13によって上記空気吸入口5から吸入された空気を泡として放出するものである。
【0015】
上記筐体3内には浄化用水槽17が設置されている。上記浄化用水槽17内には金属ナノ粒子液としての白金ナノコロイド液19が保持されている。上記泡排出部15は上記浄化用水槽17内の底部(図1中下側)に配置されており、上記白金ナノコロイド液19内に上記吸入された空気を泡21として吹き込むようになっている。
【0016】
上記浄化用水槽17の図1中上側の開口部23は上記空気排出口7側に連通されている。また、上記空気排出口7には排出側フィルター25が設置されている。上記排出側フィルター25は、例えば、不織布製、又は、CNF(Cellulose Nano Fiber)製等である。
上記泡21として上記白金ナノコロイド液19内に吹き込まれて処理された空気は上記排出側フィルター25を通して上記筐体3外部に放出される。上記白金ナノコロイド液19に含まれる金属ナノ粒子としての白金ナノ粒子が上記処理された空気に混入されることはほとんどない。しかし、仮に、上記白金ナノ粒子が上記処理された空気に混入してしまっても上記排出側フィルター25によって上記白金ナノ粒子が上記排出側フィルター25によって担持されて捕集され、上記筐体3外部に放出される空気に上記白金ナノ粒子が含まれないようになっている。
【0017】
上記白金ナノコロイド液19は、金属酸としてのヘキサクロロ白金(IV)酸6水和物をクエン酸(C)で還元したものであり、次のようにして調整される。まず、例えば、ヘキサクロロ白金(IV)酸6水和物に蒸留水を加える。その後、上記金属酸としてのヘキサクロロ白金(IV)酸6水和物と同じモル濃度となるようにクエン酸ナトリウム(Na(C)・2HO)、又は、クエン酸(C)を混合する。
【0018】
例えば、市販のヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物(H(PtCl)・(HO))に蒸留水を加えて10mMのヘキサクロロ白金(IV)酸(H(PtCl))水溶液を得て、その後、上記ヘキサクロロ白金(IV)酸水溶液と10mMクエン酸ナトリウム(Na(C)・2HO)水溶液を1:1の割合で混合し、よく撹拌した後に一週間静置する。上記白金ナノコロイド液19は常温でも保存できるが、冷蔵庫で保存するのが望ましい。
【0019】
次に、この第1の実施の形態による作用について説明する。
エアーポンプ13によって、空気吸入口5から吸入側フィルター9を通して空気が取り込まれ、泡排出部15から浄化用水槽17内に泡21として放出される。上記吸入側フィルター9により上記空気から異物が除去され、上記泡排出部15の目詰まりなどが防止される。
【0020】
上記泡21は白金ナノコロイド液19中を図1中下側から上側に浮上して移動していき、その間に上記泡21内に含まれるウイルス、菌、及び、アレルゲン等が上記白金ナノコロイド液19に含まれる白金によって無害化される。このようにして上記浄化用水槽17内で処理された空気は空気排出口7から排出される。上記処理された空気は上記空気排出口7から排出される際、排出側フィルター25を通過される。上記浄化用水槽17内の白金ナノコロイド液19によって処理された空気に白金ナノコロイドが混入されることはほとんどない。しかし、稀に上記白金ナノコロイドが上記浄化された空気に混入してしまったとしても上記排出側フィルター25に捕集され外部には排出されない。
【0021】
次に、この第1の実施の形態による第1の実験について説明する。この第1の実験では、浄化用水槽17内に200mlの白金ナノコロイド液19が保持された上記空気清浄機1を用いた。上記空気清浄機1により1mlあたり109のウイルス(T4ファージ)が含まれる培地を毎日500μlずつ16日間処理し続け、処理後の空気を滅菌蒸留水中に通過させた。上記処理後の空気を送り込んだ滅菌蒸留水を上記ウイルスの宿主大腸菌(E.coli K-12)と混合し、重層寒天法により培養し、形成された溶菌斑の数を測定して記録した。
なお、上記重層寒天法は次のように行った。まず、下層として1.5%寒天LB培地(1%ペプトン、0.5%酵母エキス)を流し込んで固化させた後、上層として、0.8%の寒天LB培地(1%ペプトン、0.5%酵母エキス)を100℃に加熱して溶解させた後55℃まで冷却して上記ウイルス(103-8個/ml)と上記宿主大腸菌(108個/ml)をそれぞれ100μlずつ加えて混合したものを流し込んで固化させた。その後、37度で12時間以上恒温器内において培養を行った。
この実験により、表1に示すような結果が得られた。
【表1】
【0022】
表1に示す結果から、上記空気清浄機1により2週間の間、ウイルスを不活性化させることができたと言える。
【0023】
次に、この第1の実施の形態による第2の実験について説明する。この第2の実験では、ウイルス(T4ファージ)が全く含まれない空気を、上記第1の実験と同様に上記空気清浄機1の浄化用水槽17内の白金ナノコロイド液19によって処理させ、排出側フィルター25に通過される前の空気を滅菌蒸留水に通過させ、この滅菌蒸留水をウイルスが含まれる懸濁液(105-8(個/ml))と混合し、この混合溶液を上記第1の実験と同様に重層寒天法により培養して、溶菌斑が見られるかを確認した。結果を表2に示す。溶菌斑が重なり合って溶菌斑の数を数えられない状態を+++で示し、個々の溶菌斑を数えることができる場合を++で示し、溶菌斑が見られない場合を---で示す。なお、この実験は17日間行った。
【表2】
【0024】
表2に示すように、1日目から17日目まで全ての場合において多数の溶菌斑が見られ、浄化用水槽17内の白金ナノコロイド液19によって処理され排出側フィルター25を通過される前の空気を通過させた滅菌蒸留水によっては、ウイルスが無害化されていなかった。
すなわち、この結果から、上記空気清浄機1の浄化用水槽17で処理され排出側フィルター25を通過していない空気であっても上記浄化用水槽17内の白金ナノコロイド液19から白金ナノコロイドが漏れ出しておらず、安全に空気の浄化が行われていると言える。加えて、上記空気清浄機1の浄化用水槽17で処理された空気を排出側フィルター25に通過させれば、上記白金ナノコロイドが上記白金ナノコロイド液19から漏れ出した場合であっても上記排出側フィルター25によって捕集され、安全性はさらに高められると言える。
【0025】
次に、この第1の実施の形態による効果について説明する。
白金ナノコロイド液19が保持された浄化用水槽17と、外部から空気を取り込んで上記浄化用水槽17内に上記空気を泡21として排出するエアーポンプ13と、を具備したため、簡易な構成により効果的かつ安全に汚染空気の浄化を行うことができる。特に、上記泡21が上記白金ナノコロイド液19中での図1中下側から上側へ上昇していくので、例えば、上記浄化用水槽17内を撹拌する構成を設けなくてもよく、より簡易な構成とし、空気清浄機1を安価に提供できる。
上記空気吸入口5に吸入側フィルター9が設置されているため、異物の侵入を防止して、より効果的に汚染空気の浄化を行うことができる。
また、空気排出口7には排出側フィルター25が設置されているため、外部への白金ナノコロイドの放出を完全に防止し、より安全に汚染空気の浄化を行うことができる。
【0026】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
この第2の実施の形態の場合は、前記した第1の実施の形態による空気清浄機1を用いるが、浄化用水槽17内には金属ナノ粒子液として白金ナノコロイド液にヨウ素(I2)・ヨウ化カリウム(KI)溶液を添加した白金ナノコロイドヨウ素液が保持されている。この白金ナノコロイドヨウ素液中の白金ナノコロイドにより、空気中に含まれる放射性ストロンチウムや放射性セシウム等の放射性ハザード物質を反応させて結晶化させ上記浄化用水槽17内に沈殿させることで、上記空気を浄化するようになっている。
【0027】
上記白金ナノコロイドヨウ素液は、次のようにして調製される。
まず、前記した第1の実施の形態と同様、白金ナノコロイド液を調整する。次に、ヨウ素・ヨウ化カリウム溶液を調整する。このヨウ素・ヨウ化カリウム溶液は、ヨウ化カリウム水溶液に、所定の濃度となるようにヨウ素を溶かして調製されたものである。なお、このヨウ素・ヨウ化カリウム溶液は、例えば、褐色瓶中に保管する。
【0028】
次に、上記白金ナノコロイド液と上記ヨウ素・ヨウ化カリウム溶液を、ポリスチレン容器13内にて混合させて白金ナノコロイドヨウ素液を作成する。なお、この白金ナノコロイドヨウ素液も、例えば、褐色瓶中に保管する。
使用時には、上記白金ナノコロイドヨウ素液を上記浄化用水槽17に入れる。
【0029】
例えば、放射性ハザード物質がストロンチウムの場合、上記浄化用水槽17内の白金ナノコロイドヨウ素液中に灰黒色の結晶(SrPtI)5が生成される。この結晶を自然沈殿、遠心分離、又は、濾過によって回収して、例えば、ガラスに封入して保管することができるようになっている。
【0030】
また、上記ヨウ素・ヨウ化カリウム溶液の代わりに臭素(Br)液を用いることもできる。この場合には結晶(SrPtBr)が生成される。
【0031】
また、放射性ストロンチウムのほか、放射性セシウムに対しても同様に適用できる。この場合、上記ヨウ素・ヨウ化カリウム溶液を用いた場合は濃紫色の結晶(CsPtI)が生成され、臭素(Br)液を用いた場合には結晶(CsPtBr)が生成される。
【0032】
次に、この第2の実施の形態の第1の実験について説明する。
この第1の実験では、浄化用水槽17内の金属ナノ粒子液として、0.4mM白金ナノコロイド液と0.025mMヨウ素ヨウ化カリウム液による白金ナノコロイドヨウ素液を用い、8mMの塩化ストロンチウム溶液500μlを空気とともに吹き込んで処理した。処理時間は一時間である。
上記処理前の白金ナノコロイドヨウ素液は、図2に示すように、沈殿が見られない状態であった。上記処理を行うと、上記浄化用水槽17内の白金ナノコロイドヨウ素液には図3の写真に示すような濃紫色の結晶(SrPtBr)による沈殿31が生じた。すなわち、上記浄化用水槽17内の白金ナノコロイドヨウ素液によって、ストロンチウムが上記沈殿として回収されたことになる。
また、この第2の実験によって上記浄化用水槽17で処理された空気を1mlの蒸留水中に送り込んで、上記蒸留水と上記白金ナノコロイドヨウ素液を混合して処理したが、図4の写真に示すように結晶は生じなかった。このことから、上記浄化用水槽17での処理によってストロンチウムが完全に回収され、排出される空気中にはストロンチウムが含まれていないと言える。
【0033】
次に、この第2の実施の形態の第2の実験について説明する。
この第2の実験では、浄化用水槽17内の金属ナノ粒子液として、0.4mM白金ナノコロイド液と0.5mMヨウ素ヨウ化カリウムによる白金ナノコロイドヨウ素液を用い、1.6mMの塩化セシウム溶液500μlを空気とともに吹き込んで処理した。処理時間は一時間である。
上記処理を行うと、上記浄化用水槽17内の白金ナノコロイドヨウ素液には図5の写真に示すような濃紫色の結晶(CsPtI)による沈殿33が生じた。すなわち、上記浄化用水槽17内の白金ナノコロイドヨウ素液によって、セシウムが回収されたことになる。
また、この第3の実験によって上記浄化用水槽17で処理された空気を1mlの蒸留水中に送り込んで、上記蒸留水と上記白金ナノコロイドヨウ素液を混合して処理したが、図6の写真に示すように結晶は生じなかった。このことから、上記浄化用水槽17での処理によってセシウムが完全に回収され、排出される空気中にはセシウムが含まれていないと言える。
【0034】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
この第3の実施の形態の場合は、前記した第1の実施の形態による空気清浄機1を用いるが、浄化用水槽17内には金属ナノ粒子液として白金ナノコロイド液に塩化セシウム溶液を添加した白金ナノコロイドセシウム液、又は、白金ナノコロイド液に塩化ストロンチウム溶液を添加した白金ナノコロイドストロンチウム液が保持されている。この白金ナノコロイドセシウム液及び白金ナノコロイドストロンチウム液中の白金ナノコロイドにより、空気中に含まれる放射性ヨウ素や放射性臭素等の放射性ハザード物質を反応させて結晶化させ、上記空気を浄化するようになっている。
【0035】
上記白金ナノコロイドセシウム液は、第1の実施の形態と同様に白金ナノコロイド液を調整し、塩化セシウムが最終的に所定の濃度(例えば、10mM)となるように上記白金ナノコロイド液に塩化セシウムを加えて調整される。なお、この白金ナノコロイドセシウム液も、例えば、褐色瓶中に保管され、使用時には上記浄化用水槽17に入れられる。
【0036】
上記白金ナノコロイドストロンチウム液は、第1の実施の形態と同様に白金ナノコロイド液を調整し、塩化ストロンチウムが最終的に所定の濃度(例えば、10mM)となるように上記白金ナノコロイド液に塩化ストロンチウムを加えて調整される。なお、この白金ナノコロイドストロンチウム液も、例えば、褐色瓶中に保管され、使用時には上記浄化用水槽17に入れられる。
【0037】
例えば、放射性ハザード物質がヨウ素の場合、白金ナノコロイドセシウム液を用いた場合は濃紫色の結晶(CsPtI)が、白金ナノコロイドストロンチウム液を用いた場合は暗紫色の結晶(SrPtI)が生成される。この結晶を自然沈殿、遠心分離、又は、濾過によって回収して、例えば、ガラスに封入して保管することができるようになっている。
【0038】
また、放射性ヨウ素のほか、放射性臭素に対しても同様に適用できる。この場合、上記白金ナノコロイドセシウム液を用いた場合は濃紫色の結晶(CsPtBr)が生成され、上記白金ナノコロイドストロンチウム液を用いた場合には結晶(SrPtBr)が生成される。
【0039】
次に、この第3の実施の形態の第1の実験について説明する。
この第1の実験では、浄化用水槽17内の金属ナノ粒子液として、4mM白金ナノコロイド液と10mMの塩化セシウムによる白金ナノコロイドセシウム液を用い、ヨウ素100mMをヨウ化カリウム200mMに溶解させたヨウ素溶液500μlを空気とともに浄化用水槽17に吹き込んで一時間処理した。
その結果、図7に示すように、上記浄化用水槽17内には濃紫色の結晶(CsPtI)による沈澱41が生じた。すなわち、上記浄化用水槽17内の白金ナノコロイドセシウム液によって、ヨウ素が回収されたことになる。
また、この第1の実験によって上記浄化用水槽17で処理された空気を1mlの蒸留水中に送り込んで、上記蒸留水と上記白金ナノコロイドセシウム液を混合して処理したが、図8の写真に示すように結晶は生じなかった。このことから、上記浄化用水槽17での処理によってヨウ素が完全に回収され、排出される空気中にはヨウ素が含まれていないと言える。
【0040】
次に、この第3の実施の形態の第2の実験について説明する。
この第1の実験では、浄化用水槽17内の金属ナノ粒子液として、4mM白金ナノコロイド液と10mMの塩化ストロンチウムによる白金ナノコロイドストロンチウム液を用い、ヨウ素100mMをヨウ化カリウム200mMに溶解させたヨウ素溶液500μlを空気とともに浄化用水槽17に吹き込んで一時間処理した。
その結果、図9に示すように、上記浄化用水槽17内には濃紫色の結晶(SrPtBr)による沈澱43が生じた。すなわち、上記浄化用水槽17内の白金ナノコロイドストロンチウム液によって、ヨウ素が回収されたことになる。
また、この第2の実験によって上記浄化用水槽17で処理された空気を1mlの蒸留水中に送り込んで、上記蒸留水と上記白金ナノコロイドストロンチウム液を混合して処理したが、図10の写真に示すように結晶は生じなかった。このことから、上記浄化用水槽17での処理によってヨウ素が完全に回収され、排出される空気中にはヨウ素が含まれていないと言える。
【0041】
なお、本発明は前述の第1の実施の形態から第3の実施の形態に限定されない。
まず、ヨウ素・ヨウ化カリウム溶液の代わりに、ヨウ化カリウム水溶液やヨウ素水溶液を用いてもよい。
また、排出側フィルターとしてグルコマンナンを用いても良い。その他にも、吸入側フィルターや排出側フィルターとして様々なものが考えられる。
また、金属ナノ粒子としては、白金ナノ粒子以外にも、銀ナノ粒子、金ナノ粒子、チタンナノ粒子、又は、イリジウムナノ粒子を用いる場合が考えられる。対象によって上記金属ナノ粒子を使い分けることが考えられ、例えば、ウイルスや細菌には白金ナノ粒子が効果的であるが、糸状菌には銀ナノ粒子が効果的である。
また、用いられる金属ナノ粒子液の成分には様々な場合が考えられる。
また、金属ナノ粒子、ヨウ素・ヨウ化カリウム溶液の濃度についても様々な場合が考えられる。
また、特許文献1による金属ナノ粒子を有機酸及びグルコマンナンなどのポリマーによってダブルキャッピングした抗ウイルス・菌剤を金属ナノ粒子液に用いてもよい。
また、浄化用水槽内を攪拌して処理の効率を高めることも考えられる。
その他、図示した構成はあくまで一例でありそれに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、例えば、ウイルス、病原菌、及び、アレルゲンなどのバイオハザード、または、原子力発電所における事故や廃炉作業で生じた放射性ストロンチウム、放射性セシウム、放射性セシウム等の放射性ハザード物質を含む汚染空気を浄化する空気浄化方法及び空気清浄機に係り、特に、簡易な構成により効果的かつ安全に汚染空気の浄化を行うことができるように工夫したものに関し、例えば、病院での空気の除菌や原子力事故後の除染作業に好適である。
【符号の説明】
【0043】
1 空気清浄機
9 吸入側フィルター
13 エアーポンプ
17 浄化用水槽
19 白金ナノコロイド液(金属ナノ粒子液)
21 泡
25 排出側フィルター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10