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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116451
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】換気システム及び住宅
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/02 20060101AFI20240821BHJP
   F24F 7/08 20060101ALI20240821BHJP
   F24F 13/12 20060101ALI20240821BHJP
   F24F 13/10 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
F24F13/02 D
F24F7/08 Z
F24F13/12
F24F13/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022072
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】能登谷 美和子
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏典
(72)【発明者】
【氏名】熊埜御堂 令
(72)【発明者】
【氏名】夜久 幸希
【テーマコード(参考)】
3L080
3L081
【Fターム(参考)】
3L080AA03
3L081AA03
3L081AA06
3L081AB01
3L081EA01
(57)【要約】
【課題】LDKの換気を促進することができるとともに、LDKからの汚染質の拡散を抑制することができる換気システム及び住宅を提供する。
【解決手段】室内と連通する給気口60と、給気口60と接続される給気ダクト40と、屋外から空気を取り込み当該空気を給気ダクト40及び給気口60を介して室内に供給する給気装置(換気装置10)と、室内と連通する排気口70と、排気口70と接続される排気ダクト50と、排気口70及び排気ダクト50を介して室内の空気を取り込み当該空気を屋外に排出する排気装置(換気装置10)と、を具備し、排気口70は、LDK1の内部に設けられる第一排気グリル71と、個室4及び個室5と連通するように設けられ、ユーザによって開口部分の全開と全閉を切り替え可能な第二排気グリル72と、を具備する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
LDKを備える住宅の室内の換気を行う換気システムであって、
室内と連通する給気口と、
前記給気口と接続される給気ダクトと、
屋外から空気を取り込み、当該空気を前記給気ダクト及び前記給気口を介して室内に供給する給気装置と、
室内と連通する排気口と、
前記排気口と接続される排気ダクトと、
前記排気口及び前記排気ダクトを介して室内の空気を取り込み、当該空気を屋外に排出する排気装置と、
を具備し、
前記排気口は、
前記LDKの内部に設けられる第一排気口と、
前記LDKとは異なる他の部屋と連通するように設けられ、ユーザによって開口部分の全開と全閉を切り替え可能な第二排気口と、
を具備する、
換気システム。
【請求項2】
前記第二排気口は、
前記他の部屋又は前記他の部屋と隣接する廊下の側壁に設けられる、
請求項1に記載の換気システム。
【請求項3】
前記第二排気口の全開時の開口面積は、
所定条件に基づいて設定され、
前記所定条件には、前記住宅の内部の全体の気積に対する前記LDKの気積の割合が含まれる、
請求項1に記載の換気システム。
【請求項4】
前記排気ダクトは、
前記第一排気口と前記排気装置とをつなぐ第一排気ダクトと、
前記第二排気口と前記排気装置とをつなぐ第二排気ダクトと、
を具備し、
前記所定条件には、前記第一排気ダクトの圧力損失と前記第二排気ダクトの圧力損失との差が含まれる、
請求項3に記載の換気システム。
【請求項5】
前記第二排気口は、
開口面積を任意の面積に調整可能に構成される、
請求項4に記載の換気システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の換気システムを具備する住宅。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、換気を行う換気システム及び住宅の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、換気を行う換気システム及び住宅の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、居住空間としてLDK(リビング・ダイニング・キッチン)、和室及び浴室が横並びに設けられ、浴室の天井裏に換気装置が設けられた住戸が記載されている。換気装置は排気ファンを備えており、換気装置には、浴室の天井部に設けられた排気グリル(吸込グリル)と、外壁部に向けて延びる排気ダクトと、が接続されている。換気装置の排気ファンを作動させると、浴室の空気が吸込グリルを介して換気装置内に取り込まれ、その取り込まれた空気が排気ダクトを通じて屋外に排出される。このようにして、居住空間の換気を行うことができる。
【0004】
ここで、LDKには来客等により一時的に多人数が集まる場合があるため、人体から発生する臭気やCOなどの濃度の上昇が懸念される。このような場合には、LDKの換気量を一時的に増加させることが望まれる。
【0005】
また、LDKにおいては、料理等が行われるため、臭気など様々な汚染質が発生する。特許文献1の住戸においては、LDKにおいて発生した汚染質が浴室の天井部に設けられた排気グリルに吸い込まれる間に、他の部屋に拡散するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-203547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、LDKの換気を促進することができるとともに、LDKからの汚染質の拡散を抑制することができる換気システム及び住宅を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、LDKを備える住宅の室内の換気を行う換気システムであって、室内と連通する給気口と、前記給気口と接続される給気ダクトと、屋外から空気を取り込み、当該空気を前記給気ダクト及び前記給気口を介して室内に供給する給気装置と、室内と連通する排気口と、前記排気口と接続される排気ダクトと、前記排気口及び前記排気ダクトを介して室内の空気を取り込み、当該空気を屋外に排出する排気装置と、を具備し、前記排気口は、前記LDKの内部に設けられる第一排気口と、前記LDKとは異なる他の部屋と連通するように設けられ、ユーザによって開口部分の全開と全閉を切り替え可能な第二排気口と、を具備するものである。
【0010】
請求項2においては、前記第二排気口は、前記他の部屋又は前記他の部屋と隣接する廊下の側壁に設けられるものである。
【0011】
請求項3においては、前記第二排気口の全開時の開口面積は、所定条件に基づいて設定され、前記所定条件には、前記住宅の内部の全体の気積に対する前記LDKの気積の割合が含まれるものである。
【0012】
請求項4においては、前記排気ダクトは、前記第一排気口と前記排気装置とをつなぐ第一排気ダクトと、前記第二排気口と前記排気装置とをつなぐ第二排気ダクトと、を具備し、前記所定条件には、前記第一排気ダクトの圧力損失と前記第二排気ダクトの圧力損失との差が含まれるものである。
【0013】
請求項5においては、前記第二排気口は、開口面積を任意の面積に調整可能に構成されるものである。
【0014】
請求項6においては、請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の換気システムを具備するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0016】
請求項1においては、LDKの換気を促進することができるとともに、LDKからの汚染質の拡散を抑制することができる。
【0017】
請求項2においては、ユーザによって第二排気口の開口部分の開閉を切り替え易くすることができる。
【0018】
請求項3においては、LDKの気積を考慮して、LDKの排気量を設定することができる。
【0019】
請求項4においては、第一排気ダクトの圧力損失と第二排気ダクトの圧力損失との差を考慮して、LDKの排気量を設定することができる。
【0020】
請求項5においては、住宅の間取りの変更等があった場合に、第二排気口の開口面積を容易に変更することができる。
【0021】
請求項6においては、LDKの換気を促進することができるとともに、LDKからの汚染質の拡散を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る住宅を示す正面図。
図2】第二排気グリルの開口部分を全閉にした状態を示した正面図。
図3】(a)LDK気積:その他気積=3.5:6.5の場合の第二排気グリルの開度を示した図。(b)LDK気積:その他気積=3:7の場合の第二排気グリルの開度を示した図。
図4】(a)LDK気積:その他気積=4:6の場合の第二排気グリルの開度を示した図。(b)LDK気積:その他気積=4.5:5.5の場合の第二排気グリルの開度を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、図1及び図2を用いて、本発明の一実施形態に係る換気システム100及び住宅200について説明する。
【0024】
換気システム100は、住宅200に設けられ、住宅200の室内(内部空間)の換気を行うものである。本実施形態において、住宅200は、2階建ての一戸建て住宅である。
【0025】
住宅200は、1階及び2階それぞれに複数の部屋を有する。具体的には、住宅200は、1階部分に、リビング・ダイニング・キッチン1(以下、LDK1と称する)、廊下2及び非居室3を有する。LDK1及び非居室3は、廊下2を隔てて設けられる。また、住宅200は、2階部分に、個室4、個室5及び廊下6を有する。個室4及び個室5は、互いに隣接して設けられる。個室5及び廊下6は互いに隣接して設けられ、個室5と廊下6の間の一部には空間7が設けられる。
【0026】
このように構成された住宅200には、換気システム100が設けられる。換気システム100は、主として換気装置10、給気管20、排気管30、給気ダクト40、排気ダクト50、給気口60及び排気口70を具備する。
【0027】
換気装置10は、住宅200の室内への給気、及び屋外への排気を行うためのものである。換気装置10は、2階の天井裏の適宜の場所に設けられる。本実施形態においては、換気装置10は、廊下6の天井裏に設けられる。換気装置10には、屋外と連通する給気管20及び排気管30の一端が接続される。
【0028】
換気装置10は、図示せぬ給気ファン及び排気ファンを備える。換気装置10は、前記給気ファンを回転させることにより、給気管20を介して屋外から外気を取り込み、後述する給気ダクト40を介して室内に外気を供給(送風)する給気運転を行うことができる。また、換気装置10は、前記排気ファンを回転させることにより、後述する排気ダクト50を介して室内の空気を取り込み、排気管30を介して屋外へ空気を排出する排気運転を行うことができる。
【0029】
また、換気装置10は、排気運転時には室内から取り込んだ空気の熱を回収し、給気運転時には屋外から取り込んだ空気に熱を伝達可能な熱回収式のものが望ましい。これにより省エネルギー性及び室内快適性の向上を図ることができる。
【0030】
給気ダクト40は、換気装置10から室内へ空気を供給するための給気経路を構成するものである。給気ダクト40は、内部に空気が流通可能な筒状に形成される。給気ダクト40の一端は、換気装置10に接続される。給気ダクト40の他端は、後述する給気口60に接続される。給気ダクト40は、換気装置10から、適宜屈曲しながら後述する各給気口60まで延びるように形成される。給気ダクト40は、第一給気ダクト41、第二給気ダクト42、第三給気ダクト43及び第四給気ダクト44を具備する。
【0031】
第一給気ダクト41は、換気装置10に接続される部分である。第一給気ダクト41は、換気装置10から個室5及び個室4に向けて延びるように設けられる。
【0032】
第二給気ダクト42は、第一給気ダクト41から分岐し、2階の個室4に向けて延びるように設けられる。第二給気ダクト42は、個室4に設けられた後述する第一給気グリル61に接続される。
【0033】
第三給気ダクト43は、第一給気ダクト41から分岐し、2階の個室5に向けて延びるように設けられる。第三給気ダクト43は、個室5に設けられた後述する第二給気グリル62に接続される。
【0034】
第四給気ダクト44は、第一給気ダクト41から分岐し、適宜屈曲しながら1階のLDK1に向けて延びるように設けられる。第四給気ダクト44は、LDK1に設けられた後述する第三給気グリル63及び第四給気グリル64に接続される。
【0035】
排気ダクト50は、室内の空気を換気装置10へ供給するための排気経路を構成するものである。排気ダクト50は、内部に空気が流通可能な筒状に形成される。排気ダクト50の一端は、後述する各排気口70に接続される。排気ダクト50の他端は、換気装置10に接続される。排気ダクト50は、各排気口70から、適宜屈曲しながら換気装置10まで延びるように形成される。排気ダクト50は、第一排気ダクト51、分岐チャンバ52、第二排気ダクト53及び第三排気ダクト54を具備する。
【0036】
第一排気ダクト51は、換気装置10に接続される部分である。第一排気ダクト51は、その一端が換気装置10に接続され、個室5と廊下6との間の空間7に向けて延びるように設けられる。
【0037】
分岐チャンバ52は、排気ダクト50を2股に分岐するためのものである。分岐チャンバ52は、空間7に設けられる。分岐チャンバ52は、第一排気ダクト51の他端(換気装置10と接続される端部と反対側の端部)に接続される。
【0038】
第二排気ダクト53は、その一端が分岐チャンバ52に接続され、2階の廊下6に向けて延びるように設けられる。第二排気ダクト53の他端は、廊下6に設けられた後述する第二排気グリル72に接続される。
【0039】
第三排気ダクト54は、その一端が分岐チャンバ52に接続され、その他端が1階のLDK1に向けて延びるように設けられる。第三排気ダクト54の他端は、LDK1に設けられた後述する第一排気グリル71に接続される。
【0040】
給気口60は、給気ダクト40を介して送り込まれた空気の出口(吹出口)である。給気口60は、各部屋の天井部分に設けられる。給気口60は、給気ダクト40の他端(換気装置10の反対側)に接続される。給気口60は、第一給気グリル61、第二給気グリル62、第三給気グリル63及び第四給気グリル64を具備する。
【0041】
第一給気グリル61は、2階の個室4と連通する給気口である。第一給気グリル61は、個室4の天井に設けられる。第一給気グリル61は、第二給気ダクト42に接続される。
【0042】
第二給気グリル62は、2階の個室5と連通する給気口である。第二給気グリル62は、個室5の天井に設けられる。第二給気グリル62は、第三給気ダクト43に接続される。
【0043】
第三給気グリル63及び第四給気グリル64は、1階のLDK1と連通する給気口である。第三給気グリル63及び第四給気グリル64は、LDK1の天井に設けられる。第三給気グリル63及び第四給気グリル64は、第四給気ダクト44に接続される。
【0044】
これにより、換気装置10から送風される空気は、給気ダクト40を介して給気口60から各部屋(LDK1、個室4及び個室5)に給気される。
【0045】
排気口70は、室内の空気の排気ダクト50への入口(吸込口)である。排気口70は、排気ダクト50の他端(換気装置10の反対側)に接続される。排気口70は、第一排気グリル71及び第二排気グリル72を具備する。
【0046】
第一排気グリル71は、1階に設けられ、1階の室内(LDK1など)と連通する排気口である。第一排気グリル71は、1階のLDK1の天井に設けられLDK1と連通している。また、第一排気グリル71は、LDK1の扉下の隙間(アンダーカット)を介して廊下2と連通しており、また非居室3の扉下の隙間(アンダーカット)を介して非居室3と連通している。第一排気グリル71の開口部分は、常時全開となるように形成される。
【0047】
第二排気グリル72は、2階に設けられ、2階の室内(個室4、個室5など)と連通する排気口である。第二排気グリル72は、2階の廊下6の側壁(廊下6と個室5との間の壁)に設けられ、個室4及び個室5の扉下の隙間(アンダーカット)を介して個室4及び個室5と連通している。
【0048】
第二排気グリル72は、ユーザ(例えば、住宅200の住人)によって開口部分の全開と全閉とを切り替え可能に形成される。具体的には、第二排気グリル72の開口部分を全閉可能な閉鎖蓋72aが、例えば廊下6の側壁に掛けられており、ユーザは閉鎖蓋72aを第二排気グリル72の開口部分を塞ぐように配置することで、第二排気グリル72の開口部分を全閉することができる。
【0049】
また、第二排気グリル72は、閉鎖蓋72aとは別に、第二排気グリル72の開口部分を任意の面積に調整可能な絞り機構72bを備えている。絞り機構72bは、主に住宅メーカ側によって操作されることを想定している。絞り機構72bは、例えば、第二排気グリル72の開口部分に対してスライド可能な部材(シャッタ)を有し、当該部材をスライドさせることにより第二排気グリル72の開口部分を絞るように形成される。
【0050】
住宅メーカーは、第二排気グリル72の設置時に、絞り機構72bを操作することによって、開口部分の全開時の開口面積を任意の面積に調整する(絞る)ことができる。これにより、同じ第二排気グリル72を用いて、間取りの異なる様々な住宅に対応することができる。また、住宅200の間取りの変更等があった場合に、第二排気グリル72を取り替える等の工事を行うことなく、第二排気グリル72の開口面積を容易に変更することができる。第二排気グリル72の開口部分の全開時の開口面積は、後述する方法によって設定される。
【0051】
このように構成された換気システム100を備える住宅200において、換気装置10は、給気運転することにより、給気管20を介して屋外の空気を取り込み、当該空気を給気ダクト40及び各給気口60を介して各部屋に給気(供給)する。より詳細には、換気装置10の給気運転によって屋外から取り込まれた空気の一部は、第一給気ダクト41及び第二給気ダクト42を流通し、第一給気グリル61から2階の個室4に供給される。また、換気装置10の給気運転によって屋外から取り込まれた空気の一部は、第一給気ダクト41及び第三給気ダクト43を流通し、第二給気グリル62から2階の個室5に供給される。また、換気装置10の給気運転によって屋外から取り込まれた空気の一部は、第一給気ダクト41及び第四給気ダクト44を流通し、第三給気グリル63及び第四給気グリル64から1階のLDK1に供給される。
【0052】
また、換気装置10は、排気運転することにより、各排気口70及び排気ダクト50を介して各部屋内の空気を取り込み、当該空気を排気管30を介して屋外に排気(排出)する。より詳細には、換気装置10が排気運転すると、個室4及び個室5の室内の空気は個室4及び個室5のアンダーカット等を介して第二排気グリル72に吸い込まれる。第二排気グリル72から取り込まれた空気は、第二排気ダクト53、分岐チャンバ52及び第一排気ダクト51を介して換気装置10に取り込まれ、排気管30から屋外に排出される。また、換気装置10が排気運転すると、LDK1の室内の空気は第一排気グリル71に吸い込まれる。また、非居室3及び廊下2の室内の空気は、非居室3及びLDK1のアンダーカット等を介してLDK1内に供給され、第一排気グリル71に吸い込まれる。第一排気グリル71から取り込まれた空気は、第三排気ダクト54、分岐チャンバ52及び第一排気ダクト51を介して換気装置10に取り込まれ、排気管30から屋外に排出される。
【0053】
このようにして、換気装置10が排気運転及び給気運転を行うことにより、住宅200の室内の換気を行うことができる。
【0054】
ここで、LDK1においては、来客等により一時的に多人数が集まることにより、人体から発生する臭気やCO等の濃度が上昇する場合がある。このような場合、LDK1の換気量を一時的に増加させることが有効となる。
【0055】
このようにLDK1の換気量を一時的に増加させたい場合には、図2に示すように、ユーザは、閉鎖蓋72aを用いて2階の第二排気グリル72(の開口部分を)を全閉する。換気システム100においては、換気装置10が排気運転時に室内から取り込む空気量は一定である。すなわち、換気装置10の排気運転時の第一排気グリル71を介した排気量及び第二排気グリル72を介した排気量の合計は一定である。このため、2階の第二排気グリル72を全閉すると、その分、1階の第一排気グリル71を介して排気される空気量は増加する。これにより、LDK1の換気量を一時的に増加させることができ、ひいてはLDK1の換気を一時的に促進することができる。
【0056】
このように、2階の第二排気グリル72の開口部分を閉じるだけで、複雑な制御を行うことなく、また高価なダンパーを設けることなく、一時的にLDK1の換気を促進することができる。また、給気ダクト40や給気口60の開度は制御しないので、各部屋への給気量の減少を抑制できる。
【0057】
また、一般的には、排気グリルは居室ではなく廊下の天井に設けられていることが多い。一方、本実施形態に係る換気システム100においては、1階の第一排気グリル71は、廊下2ではなくLDK1の内部(天井)に設けられている。このため、LDK1の臭気やCO等が廊下2や非居室3などに拡散するのを抑制することができる。
【0058】
また、2階の第二排気グリル72は天井ではなく側壁に設けられている。このため、ユーザは、第二排気グリル72の開口部分の全開と全閉を切り替える際に、台などに載って作業する必要がないので、第二排気グリル72の全開と全閉の切り替えをし易くすることができる。
【0059】
ここで、換気装置10は2階の天井裏に設けられているため、換気装置10から1階の第一排気グリル71までの距離は、換気装置10から2階の第二排気グリル72までの距離よりも長い。このため、1階の第一排気グリル71につながる第三排気ダクト54の長さ(空気の流通方向の長さ)は、2階の第二排気グリル72につながる第二排気ダクト53の長さよりも長い。また、第二排気ダクト53は直線状に延設されているのに対して、第三排気ダクト54は屈曲しながら延設されている。したがって、第三排気ダクト54の圧力損失の方が第二排気ダクト53の圧力損失よりも大きくなり易い。
【0060】
このため、第二排気グリル72の全開時の開口面積を第一排気グリル71の開口面積と同じとすると、換気装置10による全体の排気量に対して、第二排気グリル72及び第二排気ダクト53を介して排気される2階の排気量が占める割合が大きくなり、第一排気グリル71及び第三排気ダクト54を介して排気される1階のLDK1の排気量の割合が小さくなる。このため、LDK1の気積に対して、LDK1の排気量が比較的小さくなってしまうという問題がある。
【0061】
そこで、本実施形態に係る換気システム100においては、第二排気ダクト53の圧力損失と第三排気ダクト54の圧力損失との差、及び住宅200の内部の全体の気積に対するLDK1の気積が占める割合に基づいて、第二排気グリル72の全開時の開口面積を調整(設定)する。第二排気グリル72の全開時の開口面積は、例えば、第二排気グリル72の設置時(設置後)に住宅メーカが絞り機構72bを操作することにより調整される。以下、第二排気グリル72の開口面積の決定方法について説明する。
【0062】
図3(a)は、LDK気積:その他気積=3.5:6.5の場合の第二排気グリル72の開度を示している。ここで、「LDK気積」とは、LDK1の気積を示すものであり、LDK1の床面積×高さで求められる。また、「その他気積」とは、LDK気積を除く住宅200の換気対象空間の気積を示している。また、第二排気グリル72の「開度」とは、第二排気グリル72の絞り機構72bによる調整前の開口面積に対する絞り機構72bによる調整後の開口面積の割合を示している。
【0063】
図3(a)は、「第三排気ダクト54及び第二排気ダクト53の長さの差/曲がり数の差」ごとに「第二排気グリル72の開度」を示している。例えば、「5m/1曲がり」とは、第三排気ダクト54及び第二排気ダクト53の長さの差が5mであり、第三排気ダクト54及び第二排気ダクト53の曲がり数(略直角に屈曲している部分の数)の差が1であることを示している。なお、ここでは、第三排気ダクト54の長さの方が第二排気ダクト53の長さより長く、第三排気ダクト54の曲がり数の方が第二排気ダクト53の曲がり数より多く、第三排気ダクト54の圧力損失の方が第二排気ダクト53の圧力損失より大きいことを前提としている。
【0064】
上述のように、第三排気ダクト54及び第二排気ダクト53は、長さが長くなるほど圧力損失が大きくなり、また曲がり数が多くなるほど圧力損失が大きくなる。ここでは、「5m/2曲がり」の場合の圧力損失の差は「5m/1曲がり」の場合の圧力損失の差より大きく、「6m/2曲がり」の場合の圧力損失の差は「5m/2曲がり」の場合の圧力損失の差より大きく、「7m/2曲がり」の場合の圧力損失の差は「6m/2曲がり」の場合の圧力損失の差より大きく、「8m/2曲がり」の場合の圧力損失の差は「7m/2曲がり」の場合の圧力損失の差より大きく、「9m/2曲がり」の場合の圧力損失の差は「8m/2曲がり」の場合の圧力損失の差より大きく、「8m/3曲がり」の場合の圧力損失の差は「9m/2曲がり」の場合の圧力損失の差より大きく、「9m/3曲がり」の場合の圧力損失の差は「8m/3曲がり」の場合の圧力損失の差より大きいものとする。
【0065】
第三排気ダクト54及び第二排気ダクト53の圧力損失の差が大きいほどLDK1からの排気量が小さくなるので、図3(a)に示すように、圧力損失の差が大きくなるに従い、第二排気グリル72の開度を小さくする。これにより、圧力損失の差が大きいほど第二排気グリル72からの通常時(全開時)における排気量の減少量を大きくし、これに伴い、LDK1に設けられた第一排気グリル71からの排気量の増加量を大きくすることができる。これにより、LDK1の換気を一時的に促進することができる。
【0066】
なお、第二排気グリル72の開度は、住宅200の内部の全体の排気量に対するLDK1の排気量が、住宅200の内部の全体の気積に対するLDK1の気積の割合となるように設定される。例えば、設計排気量(換気装置10による排気量の合計、すなわち1階の第一排気グリル71からの排気量と、2階の第二排気グリル72からの排気量との合計)が160[m/hr]であって、LDK気積:その他気積=4:6の場合、第一排気グリル71からの排気量が64(=160×(4/10))[m/hr]、第二排気グリル72からの排気量が96(=160×(6/10))[m/hr]となるように、第二排気グリル72の開度が設定される。
【0067】
このように、第二排気グリル72の開度をLDK1の気積に応じて設定することにより、LDK1の排気量が給気量に対して不足しないように(LDK1の給気量と排気量が概ね同じと)することができる。
【0068】
図3(b)は、LDK気積:その他気積=3:7の場合の第二排気グリル72の開度を示している。LDK気積:その他気積=3:7の場合においても、LDK気積:その他気積=3.5:6.5の場合(図3(a))と同様に、基本的には、第三排気ダクト54及び第二排気ダクト53の圧力損失の差が大きいほど、第二排気グリル72の開度を小さくする。但し、図3(a)の場合と比べて、住宅200の内部の全体の気積に対するLDK1の気積の割合が小さいので、図3(a)の場合ほどLDK1の排気量を増加させる必要はない。このため、図3(b)に示す例においては、図3(a)に示す例と比べて、第二排気グリル72の開度を大きく設定している。そして、「5m/1曲がり」、「5m/2曲がり」、「6m/2曲がり」及び「7m/2曲がり」の場合には、第二排気グリル72の開度を初期の開度のままとしている。
【0069】
図4(a)は、LDK気積:その他気積=4:6の場合の第二排気グリル72の開度を示している。LDK気積:その他気積=4:6の場合においても、図3(a)及び図3(b)に示す例と同様に、第三排気ダクト54及び第二排気ダクト53の圧力損失の差が大きいほど、第二排気グリル72の開度を小さくする。また、図3(a)及び図3(b)に示す例と比べて、住宅200の内部の全体の気積に対するLDK1の気積の割合が大きいので、図4(a)に示す場合においては、図3(a)及び図3(b)に示す例と比べて、第二排気グリル72の開度を小さく設定し、LDK1の排気量を増加させている。
【0070】
図4(b)は、LDK気積:その他気積=4.5:5.5の場合の第二排気グリル72の開度を示している。LDK気積:その他気積=4.5:5.5の場合においても、図3(a)、図3(b)及び図4(a)に示す例と同様に、第三排気ダクト54及び第二排気ダクト53の圧力損失の差が大きいほど、第二排気グリル72の開度を小さくする。また、図3(a)及び図3(b)に示す例と比べて、住宅200の内部の全体の気積に対するLDK1の気積の割合が大きいので、図4(b)に示す場合においては、図3(a)、図3(b)及び図4(a)に示す場合と比べて、第二排気グリル72の開度を小さく設定し、LDK1の排気量を増加させている。
【0071】
このようにして、第二排気グリル72の開度を絞ってLDK1の給気量と排気量が概ね同じとすることにより、給気過多によるLDK1から他の部屋への汚染質の拡散を抑制することができる。
【0072】
以上の如く、本実施形態に係る換気システム100は、
LDK1を備える住宅200の室内の換気を行う換気システム100であって、
室内と連通する給気口60と、
前記給気口60と接続される給気ダクト40と、
屋外から空気を取り込み、当該空気を前記給気ダクト40及び前記給気口60を介して室内に供給する換気装置10(給気装置)と、
室内と連通する排気口70と、
前記排気口70と接続される排気ダクト50と、
前記排気口70及び前記排気ダクト50を介して室内の空気を取り込み、当該空気を屋外に排出する換気装置10(排気装置)と、
を具備し、
前記排気口70は、
前記LDK1の内部に設けられる第一排気グリル71(第一排気口)と、
個室4及び個室5(前記LDK1とは異なる他の部屋)と連通するように設けられ、ユーザによって開口部分の全開と全閉を切り替え可能な第二排気グリル72(第二排気口)と、
を具備するものである。
【0073】
このような構成により、LDK1の換気を促進することができるとともに、LDK1からの汚染質の拡散を抑制することができる。
具体的には、第二排気グリル72を全閉することで第一排気グリル71からの排気量を増加させることができ、ひいてはLDK1の換気を促進することができる。
また、第一排気グリル71をLDK1の内部に設けることにより、LDK1から廊下などに臭気などの汚染質が拡散するのを抑制できる。
【0074】
また、前記第二排気グリル72は、個室5と隣接する廊下6の側壁に設けられるものである。
【0075】
このような構成により、ユーザによって第二排気グリル72の開口部分の全開と全閉を切り替え易くすることができる。
【0076】
また、前記第二排気グリル72の全開時の開口面積は、
所定条件に基づいて設定され、
前記所定条件には、前記住宅200の内部の全体の気積に対する前記LDK1の気積の割合が含まれるものである。
【0077】
このような構成により、LDK1の気積を考慮して、LDK1の排気量を設定することができる。
【0078】
また、前記排気ダクト50は、
前記第一排気グリル71と前記換気装置10とをつなぐ第三排気ダクト54(第一排気ダクト)と、
前記第二排気グリル72と前記換気装置10とをつなぐ第二排気ダクト53(第二排気ダクト)と、
を具備し、
前記所定条件には、前記第三排気ダクト54の圧力損失と前記第二排気ダクト53の圧力損失との差が含まれるものである。
【0079】
このような構成により、第三排気ダクト54の圧力損失と第二排気ダクト53の圧力損失との差を考慮して、LDK1の排気量を設定することができる。
【0080】
また、前記第二排気グリル72は、
開口面積を任意の面積に調整可能に構成されるものである。
【0081】
このような構成により、住宅200の間取りの変更等があった場合に、第二排気グリル72の開口面積を容易に変更することができる。
【0082】
また、本実施形態に係る住宅200は、換気システム100を具備するものである。
【0083】
このような構成により、LDK1の換気を促進することができるとともに、LDK1からの汚染質の拡散を抑制することができる。
【0084】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0085】
例えば、本実施形態においては、1階にLDK1が設けられ、2階に個室4及び個室5が設けられるものとしたが、住宅200の間取りはこれに限定されず、例えば2階にLDK1が設けられ、1階に個室4及び個室5が設けられるものであってもよい。
【0086】
また、本実施形態においては、LDK1に2つの給気口60が設けられるものとしたが、給気口60の配置はこれに限定されず、例えばLDK1に1つの給気口60が設けられるものであってもよい。
【0087】
また、本実施形態においては、第二排気グリル72は、廊下6の側壁に設けられるものとしたが、個室4又は個室5の側壁に設けられるものであってもよい。
【0088】
また、給気ダクト40及び排気ダクト50の配置(延設方向など)は、図1に示す例の配置に限定されず、任意の配置とすることができる。
【0089】
また、本実施形態においては、第二排気グリル72は、絞り機構72bによって開口面積を任意の面積に調整可能に構成されるものとしたが、これに限定されず、開口面積を調整不可なものであってもよい。この場合、上述の方法で設定(算出)された開口面積を有する第二排気グリル72を準備し設置すればよい。
【0090】
また、本実施形態においては、第二排気グリル72は、閉鎖蓋72aにより第二排気グリル72の開口部分を全閉するものとしたが、第二排気グリル72の全開と全閉とを切り替える手段はこれに限定されず、例えば側壁などに設けられたボタンを押すことにより、第二排気グリル72の開口部分が自動で閉まるものであってもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 LDK
10 換気装置
40 給気ダクト
50 排気ダクト
53 第二排気ダクト
54 第三排気ダクト
60 給気口
70 排気口
71 第一排気グリル
72 第二排気グリル
100 換気システム
200 住宅
図1
図2
図3
図4