(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116453
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】車両の情報提示方法および装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240821BHJP
【FI】
G08G1/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022076
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】上島 宏幸
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC24
5H181CC27
5H181FF04
5H181FF12
5H181FF13
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF33
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL15
(57)【要約】
【課題】見通しが悪い交差点20の左折時に、習熟度が低い運転者であっても円滑かつ安全に左折できるように音声や画像による適当な情報提示を行う。
【解決手段】
交差点20において現在走行している第1の道路21から複数車線を有する第2の道路22へと左折するときに、第1の道路21から進入すべき第2の道路22の車線入口部を停止線24位置から運転者が視認できるかどうかを、地図データに基づいて判定する。運転者の習熟度を判定し、車線入口部を視認できずかつ運転者の習熟度が所定レベルよりも低い場合は、車線入口部を運転者が視認できる位置に車両が達するまでに、目標進入速度や安全進路等に関する情報を運転者に提示する、
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在走行している第1の道路から当該第1の道路に対し折れ曲がっている複数車線を有する第2の道路へと左折するときに、
第1の道路から進入すべき第2の道路の車線入口部を第1の道路における停止線位置から運転者が視認できるかどうかを、地図データないし他の情報に基づいて判定し、
運転者の習熟度を判定し、
上記車線入口部を視認できずかつ運転者の習熟度が所定レベルよりも低い場合は、上記車線入口部を運転者が視認できる位置に車両が達するまでに、安全な左折操作に寄与する情報を運転者に提示する、
車両の情報提示方法。
【請求項2】
左折するときの目標進入速度を求め、
上記情報として、この目標進入速度に関する情報を提示する、
請求項1に記載の車両の情報提示方法。
【請求項3】
左折するときの安全進路を求め、
上記情報として、この安全進路に関する情報を提示する、
請求項1に記載の車両の情報提示方法。
【請求項4】
上記情報の提示として、左折開始後に見える上記車線入口部を含む画像を提示する、
請求項1に記載の車両の情報提示方法。
【請求項5】
上記情報の提示として、上記車線入口部を上記停止線位置から視認できないことを警告する、
請求項1に記載の車両の情報提示方法。
【請求項6】
運転者の習熟度が低いほど早期に情報の提示を行う、
請求項1に記載の車両の情報提示方法。
【請求項7】
運転者の習熟度が所定レベルよりも高い場合に、さらに運転中の運転者の負荷の大小を判定し、
負荷が大きい場合は情報の提示を行う、
請求項1に記載の車両の情報提示方法。
【請求項8】
運転者の習熟度が低いほど上記目標進入速度を低くする、
請求項2に記載の車両の情報提示方法。
【請求項9】
運転者の習熟度が所定レベルよりも高い場合に、さらに運転中の運転者の負荷の大小を判定し、
負荷が大きい場合は情報の提示を行うとともに、
負荷が大きいほど上記目標進入速度を低くする、
請求項2に記載の車両の情報提示方法。
【請求項10】
左折箇所における、路面凍結箇所、路面湿潤箇所、路面ペイント箇所、の有無の情報を取得し、
いずれかがある場合は、上記目標進入速度を相対的に低くするとともに、スリップの警告を発する、
請求項2に記載の車両の情報提示方法。
【請求項11】
個々の運転者の運転中に少なくとも左折時における操舵角の増加操作およびブレーキ追加操作の情報を取得し、それぞれの累積回数、頻度、1トリップ中の発生回数、のいずれかに基づいて、運転者の習熟度を算出する、
請求項1に記載の車両の情報提示方法。
【請求項12】
個々の運転者の走行履歴における上記第1の道路から上記第2の道路へと左折する箇所の走行回数に基づいて、運転者の習熟度を算出する、
請求項1に記載の車両の情報提示方法。
【請求項13】
第2の道路の車線入口部の幅方向中央の第1の点から視線を遮ることとなる左角の構造物の第2の点を通って延びる仮想の視線判定線を描いたときに、この視線判定線が第1の道路の停止線と交わらない場合に、当該左折点は視認できないものとする、
請求項1に記載の車両の情報提示方法。
【請求項14】
走行中の自車位置を求める自車位置算出部と、
第1の道路から当該第1の道路に対し折れ曲がっている複数車線を有する第2の道路へと左折するときに、第1の道路から進入すべき第2の道路の車線入口部を第1の道路における停止線位置から運転者が視認できるかどうかを、地図データないし他の情報に基づいて判定する、目視不可箇所判定部と、
運転者の習熟度を判定する習熟度判定部と、
上記車線入口部を視認できずかつ運転者の習熟度が所定レベルよりも低い場合は、上記車線入口部を運転者が視認できる位置に車両が達するまでに、安全な左折操作に寄与する情報を運転者に提示する情報提示部と、
を備えてなる車両の情報提示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、見通しが悪い箇所での左折時に、安全な左折操作に寄与する情報を運転者に提示する車両の情報提示方法および情報提示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在走行している第1の道路から当該第1の道路に対し折れ曲がっている複数車線を有する第2の道路へと左折するときに、第2の道路のセンターライン(あるいは中央分離帯)や各車線を区分する車線境界線の端部が奥まっていると、第1の道路から進入すべき第2の道路の車線入口部の見通しが悪くなる。例えば、第1の道路の停止線を越えた位置まで進行しないと運転者が目視で車線入口部を視認できないことが生じる。
【0003】
特許文献1には、車両の運転支援機能の一つとして、車両が交差点に近付いたときに横方向から自車両に接近する車両と前方から自車両に接近する車両とがあるような場合に、優先度が高い車両を選択して、この車両に対する注意喚起制御を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
見通しの悪い箇所で円滑かつ安全に左折できるかどうかは、運転者の習熟度に大きく影響される。例えば、日常的に運転していて左折操作等に慣れている運転者や同じ交差点を繰り返し通る運転者にとっては停止線位置で車線入口部が視認できなくても円滑に左折できる箇所であっても、初心者には運転支援が必要な場合があり得る。
【0006】
特許文献1の技術においては、運転者の習熟度が何ら考慮されていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る車両の情報提示方法は、
現在走行している第1の道路から当該第1の道路に対し折れ曲がっている複数車線を有する第2の道路へと左折するときに、
第1の道路から進入すべき第2の道路の車線入口部を第1の道路における停止線位置から運転者が視認できるかどうかを、地図データないし他の情報に基づいて判定し、
運転者の習熟度を判定し、
上記車線入口部を視認できずかつ運転者の習熟度が所定レベルよりも低い場合は、上記車線入口部を運転者が視認できる位置に車両が達するまでに、安全な左折操作に寄与する情報を運転者に提示する。
【0008】
運転者の習熟度が所定レベルよりも低い場合は、車線入口部を視認できない左折箇所に車両が近付いたときに、例えば、車線入口部を停止線位置から視認できないことの警告、安全に左折するための目標進入速度に関する情報、左折するときの安全進路に関する情報、等の情報が、音声情報や視覚情報等の形で提示される。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、習熟度が低い運転者に対して見通しが悪い左折箇所で情報提示がなされるので、より円滑かつ安全に左折操作を行うことができる。そして、習熟度が高い運転者にとっては、不要な情報提示による煩わしさを排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施例の情報提示装置のシステム構成を示す説明図。
【
図3】一実施例の情報提示装置の基本的な処理の流れを示したフローチャート。
【
図4】車線入口部を視認できない左折箇所の例の説明図。
【
図5】車線入口部を視認できる左折箇所の例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
図1は、一実施例の車両の情報提示装置のシステム構成を示した説明図である。一実施例の車両は内燃機関もしくはモータを走行駆動源として走行する一般的な自動車であり、運転者がステアリングホイールを介した操舵およびブレーキペダル・アクセルペダルを介した加減速操作を行う自動車を前提としている。
【0013】
一実施例の情報提示装置は、走行中の車両の情報を取得する種々のセンサ(例えば、車速センサ1a、ジャイロセンサ1b、ステアリングセンサ1c、アクセル開度センサ1d、ブレーキセンサ1e、等)を含む車両情報取得部1と、GPS2aやVICS(登録商標)2bからの情報を取得するための通信部2と、車両周辺の外部情報を取得する車外カメラ3a、レーダー3b、ソナー3c、LiDAR3d等の外部情報取得デバイス3と、習熟度に関する運転者個々の情報を蓄えている運転者データベース4と、地図情報を蓄えている地図データベース5と、CPU6a、RAM6b、入出力インタフェース6c、等を含む演算処理装置6と、を備えて構成されている。また、情報提示装置は、最終的に運転者に対し情報提示を行うためのディスプレイ7やオーディオ装置8等の必要な出力装置を備えている。なお、本発明においては、
図1に示した要素の全てが必ずしも必須なものではない。
【0014】
通信部2は、GPS2aやVICS2bとの通信のほかに、各左折箇所の視認性に関する情報を提供する路車間通信や車車間通信を行うものであってもよい。運転者データベース4や地図データベース5は、各車両の情報提示装置が個々に備えていてもよく、車両外部のサーバ例えばクラウドサーバに構成されていてもよい。これらのデータベースが車両外部にある場合は、車両がいわゆるコネクテッドカーとしてインターネットに常時接続されており、インターネットを介して必要な情報が取得される。
【0015】
地図データベース5には、本発明が対象とする第1の道路から第2の道路へと左折する左折地点(これを便宜上、交差点と呼ぶ)の詳細な情報が含まれている。例えば、第1の道路の停止線位置、第2の道路のセンターラインないし中央分離帯および車線境界線の位置、左折時に視線を遮る要因となる左角の構造物の位置、等の詳細な情報が含まれている。後述するように、これらの情報に基づいて、当該交差点が目視不可箇所であるか否かが判定されるのであるが、車両側において例えばある交差点に方向指示器を点滅させながら近付いたときに当該交差点が目視不可箇所であるかどうかを上記の情報の演算処理によって判定するようにしてもよく、あるいは、地図データベース5の情報に当該交差点が目視不可箇所であることの情報を予め含めておくようにしてもよい。
【0016】
図2は、一実施例の情報提示装置を機能ブロック図として示した説明図であり、主に演算処理装置6において動作するソフトウェアによって各機能が実現される。図示するように、一実施例の情報提示装置は、外部情報取得部11と、自車位置算出部12と、目視不可箇所判定部13と、習熟度判定部14と、情報提示部15と、を備える。
【0017】
外部情報取得部11は、外部情報取得デバイス3や通信部2を介して周囲の状況や天候あるいは交差点の状況等の外部情報を取得する。自車位置算出部12は、主にGPS2aおよびジャイロセンサ1bの信号に基づいて自車位置を求める。目視不可箇所判定部13は、主に地図データベース5の情報に基づいて、自車両が接近している次の交差点が左折に際して目視不可箇所であるか否かの判定を行う。路車間通信や車車間通信により得られる情報から目視不可箇所の判定を行うようにしてもよい。習熟度判定部14は、主に運転者データベース4の情報に基づいて、現在運転している運転者の習熟度を判定する。情報提示部15は、左折を行う交差点が目視不可箇所であってかつ運転者の習熟度が所定レベルよりも低い場合に、ディスプレイ7(いわゆるセンターインフォメーションディスプレイやヘッドアップディスプレイ)やオーディオ装置8等を介して安全な左折操作に寄与する情報を運転者に提示する。
【0018】
次に、
図3は、一実施例の情報提示装置の基本的な処理の流れを示したフローチャートである。なお、左折前に走行している道路を第1の道路と呼び、当該第1の道路に対し折れ曲がっていて左折後に走行する道路を第2の道路と呼ぶ。少なくとも第2の道路は片側に複数の車線を有している。最初のステップ10では、第1の道路を走行している自車両の進行方向前方に左折を行うべき交差点があるかどうかを判定する。NOであればルーチンを終了する。例えば運転者が左側の方向指示器を点滅させながら交差点に接近した場合は、左折を行う交差点であると判定する。あるいは、カーナビゲーションシステムの経路案内に従って左折箇所であれば、左折を行うべき交差点であると判定する。
【0019】
ステップ10でYESであれば、ステップ20に進み、左折後に進入すべき車線(換言すれば運転者が進入していくであろう車線)を決定する。基本的には、最も左側の車線を走行中であれば、そのまま最も左側の車線に進入するものとする。例外的に、カーナビゲーションシステムの経路案内が、左折直後に右折することを示している場合には、右折帯につながる右側の車線を進入すべき車線であるとする。
【0020】
次のステップ30では、左折する交差点の目視可/不可の判定に必要な情報を地図データベース5の情報および通信部2を介して取得する。そして、ステップ40において当該交差点が目視不可箇所であるかどうかの判定を行う。具体的な判定の定義については後述する。NOであればルーチンを終了する。
【0021】
左折すべき交差点が目視不可箇所であると判定した場合は、ステップ50に進み、左折時の目標進入速度および安全進路の情報を、地図データベース5の情報に基づいて、あるいは路車間通信や車車間通信を介して、取得する。そして、ステップ60に進み、自車両が目標進入速度を超過するか否かの判定を行う。この超過判定の具体的な処理については後述する。
【0022】
次にステップ70において、現在運転している運転者の習熟度の情報を運転者データベース4に基づいて取得する。そして、ステップ80に進み、習熟度が所定の閾値未満であるかどうかを判定する。習熟度は、個々の運転者の日常の運転中に少なくとも左折時における操舵角の増加操作およびブレーキ追加操作の情報を取得して、それぞれの累積回数、頻度、1トリップ中の発生回数、のいずれかに基づいて算出される。より詳しくは、過去の運転履歴から運転者の習熟度が予め算出されており、この算出された習熟度が運転者データベース4に蓄えられている。これは、特定の交差点に限定されない習熟度である。つまり、普段の左折時に左折中の操舵角の増加(いわゆる切りまし)や左折途中でのブレーキ操作を頻繁に行う運転者は習熟度が低いとみなされ、これらの無駄な操作がない円滑な左折運転を日常的に行っている運転者は習熟度が高いとみなされる。
【0023】
あるいは、個々の運転者の走行履歴における特定の交差点(これから左折しようとしている交差点)の走行回数に基づいて、当該交差点についての運転者の習熟度を算出するようにしてもよい。つまり、これから左折しようとしている交差点を運転者が毎日のように通っている場合は、当該交差点に対する習熟度が高いものとみなされる。なお、上述した特定の交差点に限定されない基礎的な習熟度に特定の交差点に対する習熟度を加味して最終的な習熟度を決定するようにしてもよい。
【0024】
ステップ80において習熟度が閾値未満である場合は、ステップ90に進み、運転者に対して、安全な左折操作に寄与する適当な情報を提示する。
【0025】
提示される情報としては、例えば、左折しようとしている交差点が見通しの悪い目視不可箇所であることの音声ないし画面表示等による警告、実速度が目標進入速度を超過していることの音声ないし画面表示等による警告、現在の実速度では安全進路に沿った走行が困難であることの音声ないし画面表示等による警告、安全進路を逸脱していることの音声ないし画面表示等による警告、左折開始後に見える車線入口部を含む画像(後述する)の表示、等である。例えば、速度超過により安全進路から外れると判定した場合に、「曲がりきれません」等の音声警告や、安全なステアリングホイールの操舵角増加(いわゆる切り増し)の音声案内、安全な速度の音声案内、等を行うことができる。あるいは、「この速度だと右車線に入ることになります」や「この速度だと左車線に入れません」等の音声案内であってもよい。
【0026】
ステップ80において運転者の習熟度が閾値以上であると判定した場合は、ステップ81に進み、運転者のその時点での運転負荷の情報を取得する。そして、ステップ82において、運転負荷が閾値以上であるか否かを判定する。運転負荷は、換言すれば運転者の疲労状態であり、例えば、現在のトリップの継続時間やどのような状況で運転をしてきたか等によって算出される。あるいは、運転者のまばたきの回数や視線変化の状況あるいは運転動作の緩慢さ等によって運転負荷ないし疲労状態を求めるようにしてもよい。ステップ82の判定がNOであればルーチンを終了する。ステップ82の判定がYESつまり運転負荷が高い場合は、ステップ90に進み、上述したような安全な左折操作に寄与する適当な情報を提示する。つまり習熟度が高い運転者であっても運転負荷が高い場合は、情報提示を行う。
【0027】
図3のフローチャートに示した処理は、実質的に、車両が交差点に近付いたときに実行される。そして、情報提示が必要な場合は、遅くとも車線入口部を運転者が視認できる位置に自車両が達するまでに、情報提示がなされる。このように適当な情報提示を事前に行うことで、習熟度の低い運転者が、見通しの悪い交差点において、より円滑かつ安全に左折することができる。情報提示を行うタイミングは、例えば、運転者の習熟度が低いほど早くするようにしてもよい。
【0028】
次に、
図4および
図5を参照して交差点が目視不可箇所であるかどうかの判定基準について説明する。
図4は、目視不可箇所つまり車線入口部を視認できない左折箇所の例の説明図であり、センターライン21cで仕切られた2つの車線21a,21bを有する第1の道路21と、中央分離帯22eおよび一対のセンターライン22f,22gで仕切られた計4つの車線22a,22b,22c,22dを有する第2の道路22と、が十字に交差しており、いわゆる交差点20が形成されている。車両23が走行している第1の道路21の車線21aは、交差点20に入る前の位置に停止線24を備えている。
【0029】
図中のP1点は、左折により進入しようとする第2の道路22の左側の車線22aの車線入口部の中央点を示している。つまり車線入口部は、センターライン22fの端部とこれに対向する縁石や車線外側線とによって規定され、この車線入口部の車線幅の中央の点がP1点である。一方、図中のP2点は、第1の道路21の停止線付近から車線入口部を視認しようとしたときに視線を遮ることとなる左角の構造物の角の点である。そして、P1点からP2点を通って第1の道路21の方へ延びる仮想の視線判定線L1を描いたときに、この視線判定線L1が停止線24と交わるか否かによって目視不可箇所であるか否かが決定される。
図4の例では、視線判定線L1は停止線24に交わらず、従って、この交差点20は目視不可箇所となる。また、前述したように、経路案内等によって右側の車線22bに進入する場合があるが、この場合は、車線22b両側の中央分離帯22eおよびセンターライン22fの端部によって車線入口部が構成され、その中央点であるP1’点とP2点とによって視線判定線L2が定まる。図示例では、この視線判定線L2も停止線24に交わらないので、右側の車線22bに入る場合でも、当該交差点20は目視不可箇所となる。一般に、車線入口部を規定するセンターラインや中央分離帯の端部が交差点の中心から離れている(つまり、奥まっている)場合に、目視不可箇所となりやすい。
【0030】
これに対し
図5は、車線入口部を視認できる左折箇所の例の説明図であり、P1点からP2点を通って延びる仮想の視線判定線L1が停止線24と交わっている。従って、当該交差点は目視不可箇所ではない。
【0031】
一つの例では、目視の可否を判定するために必要なセンターラインや中央分離帯の端部位置、停止線位置、P1,P2点の位置、等の情報が地図データベース5に格納されており、上述したステップ30においてこれらの情報を取得した上で、視線判定線の算出や停止線との交点の算出等の演算処理を行って、目視の可否を判定する。
【0032】
他の一つの例では、前述したように、各交差点が目視不可箇所であるか否かの情報が予め地図データベース5に格納されており、ステップ30では、この情報を取得する。この場合には、交差点に接近するたびの演算の負荷や演算の遅れといった問題が生じない。
【0033】
図6は、目標進入速度および安全進路に関する説明図である。前述したように、第2の道路22の車線入口部におけるP1点と視線を遮るP2点とによって仮想の視線判定線L1を得ることができる。この視線判定線L1は、車両23がこの視線判定線L1に達したときに運転者が車線入口部のP1点を目視することができるようになる位置といえる。前述したステップ50の目標進入速度Vt(km/h)は、この視線判定線L1に達したときの望ましい車両速度であり、交差点毎に予め設定され、その情報が地図データベース5に格納されている。好ましい実施例では、基本的な目標進入速度の値が地図データベース5に格納されており、実際に使用される目標進入速度Vtは、運転者の習熟度および負荷に応じて基本値を補正することで、可変的に与えられる。習熟度が低いほど目標進入速度Vtは低く与えられ、同様に、運転者の負荷が高いほど目標進入速度Vtは低く与えられる。
【0034】
図示するように、第1の道路21を走行している車両23の現在の速度をv(km/h)、現在位置から視線判定線L1までの距離をd(m)、現在位置から視線判定線L1に達するまでの所要時間をΔt(s)、とすると、ステップ60では、「Vt」と「v-d/Δt」との大小比較によって、目標進入速度を超過するか否かの判定を行う。
【0035】
すなわち、「Vt<v-d/Δt」であれば目標進入速度を超過すると判定し、「Vt>v-d/Δt」であれば目標進入速度を超過しないと判定する。
【0036】
この目標進入速度の超過判定は、車両23の先端が視線判定線L1に達したときになされる。より早期の判定を行うために、視線判定線L1に代えて停止線24までの距離および停止線24に達するまでの所要時間を用いるようにしてもよい。
【0037】
また、安全進路は、図示するように、第1の道路21の車線21aの出口部の中央の点から第2の道路22のP1点を結ぶ一定の曲率半径Rの進路として定められる。換言すれば、走行中の車線21aの中心線と進入すべき車線22aの中心線とがそれぞれ接線となる円弧である。この安全進路は、地図データベース5に予め格納されていてもよく、あるいは、地図データベース5における道路情報から算出するようにしてもよい。
【0038】
なお、車外カメラ3a等の外部情報取得デバイス3や通信部2等を介して、左折箇所における路面凍結箇所、路面湿潤箇所、路面ペイント箇所、の有無の情報を取得し、タイヤが滑りやすいこれらの条件がある場合は、目標進入速度を相対的に低く補正するようにしてもよい。また同時に、音声や画面表示を介してスリップの警告を発することが望ましい。
【0039】
次に
図7は、提示される情報の一例として、左折開始後に見える車線入口部を含む画像を表示する例の説明図である。すなわち、視線判定線L1を越えた付近で見ることができる光景の画像31が予め用意されており、この画像31が視線判定線L1に達する前に車両のディスプレイ7に表示される。画像31には、左折して進入すべき車線の入口部が含まれており、運転者は、事前にこの画像31を見ることで、必要な走路を予測することができる。この画像は、例えば、インターネット上の写真の取得、自車の過去の記録(ドライブレコーダの画像等)の閲覧、他車からの通信による提供(例えば先行車両からの提供)、等によって得ることができる。
【0040】
以上、この発明の一実施例を詳細に説明したが、この発明は、上記実施例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、上記実施例では、左折箇所をいわゆる十字路の交差点として説明したが、T字路や三叉路、五叉路等に広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
11…外部情報取得部
12…自車位置算出部
13…目視不可箇所判定部
14…習熟度判定部
15…情報提示部
21…第1の道路
22…第2の道路
23…車両
24…停止線
L1,L2…視線判定線