(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116456
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】車両自動運転装置用キャリア
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20240821BHJP
【FI】
G01M17/007 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022079
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】兒玉 安紀彦
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 伸夫
(57)【要約】
【課題】トランスミッションアクチュエータユニット103の各アクチュエータ111,112やグリップハンド113が搬送中に不用意に動くことがないようにする。
【解決手段】車両自動運転装置を分解して積載・搬送するキャリア1は、キャスタ3を有する四角形の底部フレーム2と、底部フレーム2を2分するように略中央にある中央フレーム5と、中間高い位置に設けられたトランスミッションアクチュエータ支持台28と、を有する。セレクト用アクチュエータ111とシフト用アクチュエータ112を組み合わせてなるトランスミッションアクチュエータユニット103は、トランスミッションアクチュエータ支持台28の上に積載される。キャリア1は、積載時にグリップハンド113が把持する模擬ノブ部32を有する。この把持により、グリップハンド113の位置が拘束され、アクチュエータ111,112が動かなくなる。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席のシート上に配置される本体部と、車両のシフトノブを把持するグリップハンドを可動部先端に有し、車両幅方向に動作する第1のアクチュエータおよび車両前後方向に動作する第2のアクチュエータを組み合わせてなるトランスミッションアクチュエータユニットと、を含む車両自動運転装置を、上記トランスミッションアクチュエータユニットを上記本体部から分解した状態で積載・搬送する車両自動運転装置用キャリアであって、
キャスタを有する移動可能なキャリアの中間高さ位置に設けられて、上記トランスミッションアクチュエータユニットが積載されるトランスミッションアクチュエータ支持台と、
このトランスミッションアクチュエータ支持台の上方に配置され、トランスミッションアクチュエータユニットの積載時に上記グリップハンドが把持するように構成された模擬ノブ部と、
を備えてなる車両自動運転装置用キャリア。
【請求項2】
上記模擬ノブ部は、上記トランスミッションアクチュエータ支持台の上方に位置する垂直な壁面から突出した略球状に形成されている、
請求項1に記載の車両自動運転装置用キャリア。
【請求項3】
上記トランスミッションアクチュエータ支持台は、先端に上記グリップハンドを備えた第2のアクチュエータの可動ロッドが当該トランスミッションアクチュエータ支持台の側縁から側方へ突出した状態に、上記トランスミッションアクチュエータユニットが積載されるように構成されている、
請求項1に記載の車両自動運転装置用キャリア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばシャシダイナモメータ上で車両の走行試験を行う際に、車両のペダル操作やシフトレバー操作を運転者に代わって行う車両自動運転装置の分野に関し、特に、車両自動運転装置を複数の構成要素に分解した状態で積載・搬送するキャリアに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の走行試験の際に車両のペダル操作やシフトレバー操作を運転者に代わって行う車両自動運転装置は、特許文献1や特許文献2に記載されているように、一般に、車両のシート上に配置される本体部と、この本体部から前方へ延びて車両のペダルを操作するペダルアクチュエータと、本体部上に搭載されて車両のシフトレバーを操作するトランスミッションアクチュエータユニットと、を含んで構成される。
【0003】
このような車両自動運転装置は、例えば、シャシダイナモメータを備えた試験室内において検査対象である車両にセットされる。
【0004】
特許文献2には、試験室内等において車両自動運転装置を複数の構成要素に分解した状態で積載・搬送する手押しの台車が開示されている。この台車は、底面にキャスターを備えた箱状のボディ部を主体とし、ボディ部の上面に車両自動運転装置の本体部が載置されるとともに、ボディ部の前面に3つの脚部(ペダルアクチュエータ)が取り付けられる。また箱状のボディ部の内部空間に、トランスミッションアクチュエータユニットが収容されるようになっており、この空間の上面を開閉する扉が上記本体部の載置面を兼ねている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-148613号公報
【特許文献2】特開2020-190462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車両自動運転装置のトランスミッションアクチュエータユニットは、一般に、車両幅方向に動作する第1のアクチュエータと車両前後方向に動作する第2のアクチュエータとを組み合わせて構成されており、これらのアクチュエータにより動く可動部の先端に車両のシフトノブを把持するグリップハンドを備えている。アクチュエータに通電されていない状態(換言すれば台車に積載されている状態)では、各アクチュエータが自由に動き得る状態にある。従って、特許文献2の構成では、例えば台車が傾いたときや段差を乗り越えるとき、などに、グリップハンドの自重によりアクチュエータが台車の中で変位してしまい、収容空間の内壁面に衝突する、といった不具合があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、運転席のシート上に配置される本体部と、車両のシフトノブを把持するグリップハンドを可動部先端に有し、車両幅方向に動作する第1のアクチュエータおよび車両前後方向に動作する第2のアクチュエータを組み合わせてなるトランスミッションアクチュエータユニットと、を含む車両自動運転装置を、上記トランスミッションアクチュエータユニットを上記本体部から分解した状態で積載・搬送する車両自動運転装置用キャリアであって、
キャスタを有する移動可能なキャリアの中間高さ位置に設けられて、上記トランスミッションアクチュエータユニットが積載されるトランスミッションアクチュエータ支持台と、
このトランスミッションアクチュエータ支持台の上方に配置され、トランスミッションアクチュエータユニットの積載時に上記グリップハンドが把持するように構成された模擬ノブ部と、
を備えている。
【0008】
このような構成では、車両自動運転装置を分解してキャリアに搭載する際に、トランスミッションアクチュエータユニットは、トランスミッションアクチュエータ支持台の上に積載される。そして、可動部先端のグリップハンドが、作業員の手動操作によって模擬ノブ部を把持した状態とされる。このようにグリップハンドが模擬ノブ部を把持することで、当該グリップハンドが拘束されることとなり、傾斜等によって可動部が不用意に動かなくなる。
【0009】
本発明の好ましい一つの態様では、上記模擬ノブ部は、上記トランスミッションアクチュエータ支持台の上方に位置する垂直な壁面から突出した略球状に形成されている。このように模擬ノブ部が垂直な壁面から突出した略球状の構成であることで、種々の形式のトランスミッションアクチュエータユニットに広く対応することが可能となる。また、模擬ノブ部が異形である場合よりも、グリップハンドを模擬ノブ部に固定する作業が容易である。
【0010】
また、本発明の好ましい一つの態様では、上記トランスミッションアクチュエータ支持台は、先端に上記グリップハンドを備えた第2のアクチュエータの可動ロッドが当該トランスミッションアクチュエータ支持台の側縁から側方へ突出した状態に、上記トランスミッションアクチュエータユニットが積載されるように構成されている。このような構成では、先端にグリップハンドを備えた第2のアクチュエータの可動ロッドがトランスミッションアクチュエータ支持台と干渉しにくくなる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、キャリアにトランスミッションアクチュエータユニットを積載して搬送する際に、グリップハンドを備えた可動部が拘束されるため、不用意に動いて他部品と衝突したりすることがない。また、キャリア側に複雑なロック機構を要さず、積載されるトランスミッションアクチュエータユニット自体が有するグリップハンドを利用して実質的なロック作用が得られるので、構成が簡単である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施例のキャリアを車両自動運転装置を積載した状態で示す斜視図。
【
図2】
図1とは異なる方向から示す積載状態のキャリアの斜視図。
【
図4】車両自動運転装置を積載していない状態のキャリアを
図1と同じ方向から示す斜視図。
【
図5】非積載状態のキャリアを
図2と同じ方向から示す斜視図。
【
図6】非積載状態のキャリアを
図3と同じ方向から示す正面図。
【
図7】本体部を車両シートにセットした段階での説明図。
【
図8】さらにペダルアクチュエータとトランスミッションアクチュエータユニットをセットした段階での説明図。
【
図9】トランスミッションアクチュエータ支持台とトランスミッションアクチュエータユニットとを分離した状態で示した斜視図。
【
図10】トランスミッションアクチュエータユニットをトランスミッションアクチュエータ支持台上に積載した状態で示す斜視図。
【
図11】同じくトランスミッションアクチュエータユニットをトランスミッションアクチュエータ支持台上に積載した状態で示す正面図。
【
図12】同じくトランスミッションアクチュエータユニットをトランスミッションアクチュエータ支持台上に積載した状態で示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1~
図3は、一実施例のキャリア1を車両自動運転装置を積載した状態で示している。
図4~
図6は、一実施例のキャリア1を車両自動運転装置を積載していない状態で示している。
【0014】
初めに、キャリア1の全体的な構成を
図4~
図6に基づいて説明する。一実施例のキャリア1は、底部に、平面視でほぼ正方形に近い四角形をなす底部フレーム2を有する。底部フレーム2は、四辺を構成する4本の底部フレーム部材2a~2dを四角形をなすように接続した構成であり、四角形の中に、平行な一対の補強フレーム部材2e,2fを備え、さらに、この一対の補強フレーム部材2e,2f同士が中間部の短い補強フレーム部材2gによって互いに接続されている。これらのフレーム部材2a~2gは、いずれも断面長方形の中空金属部材からなる。なお、以下では、説明の便宜のために、一対の補強フレーム部材2e,2fの長手方向に沿った方向をキャリア1の「左右方向」とし、補強フレーム部材2gの長手方向に沿った方向をキャリア1の「前後方向」とする。従って、2本の底部フレーム部材2a,2cはキャリア1の前後方向に沿って延びており、2本の底部フレーム部材2b,2dはキャリア1の左右方向に沿って延びている。
【0015】
底部フレーム2の四隅の底面には、キャリア1の移動を容易とするためのキャスタ3がそれぞれ旋回可能に取り付けられている。キャスタ3は、キャリア1が段差を乗り越える際の衝撃を緩和するために図示せぬ緩衝スプリングを内蔵した構成であることが望ましい。
【0016】
底部フレーム2の前後方向の略中央には、底部フレーム2から垂直に立ち上がった長方形をなす中央フレーム5が設けられている。中央フレーム5は、底部フレーム部材2aの略中央に下端が接続されて該底部フレーム部材2aから上方に垂直に延びた縦フレーム部材5aと、底部フレーム部材2cの略中央に下端が接続されて該底部フレーム部材2cから上方に垂直に延びた縦フレーム部材5bと、これら一対の縦フレーム部材5a,5bの上端にそれぞれ接続されて水平方向に延びた横フレーム部材5cと、を備え、これらが縦長の長方形の三辺に沿って配置されている。長方形の中には、一対の縦フレーム部材5a,5b同士を中間の高さ位置において互いに接続する水平方向に沿った第2横フレーム部材5dが設けられている。第2横フレーム部材5dは、縦フレーム部材5a,5bの上下方向中央よりもやや上方となる高さ位置に設けられている。さらに、この第2横フレーム部材5dと下方の補強フレーム部材2gとの間に垂直に延びる第2縦フレーム部材5eを備えており、この第2縦フレーム部材5eの中間高さ位置と縦フレーム部材5bとの間に水平方向に延びる第3横フレーム部材5fを備えている。これらの各フレーム部材5a~5fは、やはり断面長方形の中空金属部材からなる。
【0017】
一方の縦フレーム部材5aの上端部には、移動時に作業員が把持できるように、一対のグリップ7が取り付けられている。一対のグリップ7は、それぞれ縦フレーム部材5aの前後方向の面に固定されており、互いに対称をなすように前後方向に突出している(
図6参照)。
【0018】
上記のように中央フレーム5が底部フレーム2の前後方向の略中央に設けられていることで、底部フレーム2は、平面視で第1の区画11と第2の区画12とに2分される。図示例では、底部フレーム部材2b側が第1の区画11となり、底部フレーム部材2d側が第2の区画12となる。
【0019】
底部フレーム2の第1の区画11には、後述する車両自動運転装置の本体部を支持しかつ位置決めするために、一対の合成樹脂性のブロック状部材14が設けられている。この一対のブロック状部材14は、第1の区画11に積載した本体部の下端と係合するL字形の切欠部15を備えている。このL字形の切欠部15は、
図6に示すように、中央フレーム5の方を指向するように、斜めに傾いている。ブロック状部材14は、底部フレーム2の左右方向に延びた底部フレーム部材2bとこれに平行な補強フレーム部材2eとの間に挟まれた形に支持されている(
図4参照)。
【0020】
底部フレーム2の第2の区画12には、後述する車両自動運転装置の3つのペダルアクチュエータを並べて積載することができるように、ペダルアクチュエータ支持部21が設けられている。このペダルアクチュエータ支持部21は、ペダルアクチュエータを乗せる支持板22と、この支持板22に植設された複数の位置決めピン23と、から構成されている。支持板22は、平らな金属板からなり、上端が中央フレーム5の第3横フレーム部材5fの第2の区画12側の面に取り付けられており、下端が底部フレーム2の底部フレーム部材2dと補強フレーム部材2fとの間に位置している。詳しくは、底部フレーム部材2dの上面と補強フレーム部材2fの上面とに亘る底板24に、支持板22の下端が接続されている。つまり、支持板22は、下端位置が上端位置に比較してキャリア1の前後方向外側へ位置するように傾斜している(
図6参照)。例えば、垂直線に対して20~40°程度の角度で傾斜している。
【0021】
円柱状をなす複数の位置決めピン23は、ペダルアクチュエータと接する外周面に合成樹脂性スリーブを備えた構成であり、各ペダルアクチュエータの先端(積載状態では下端)に当接してペダルアクチュエータの荷重を受ける位置と、ペダルアクチュエータの両側でペダルアクチュエータを左右方向に拘束する位置と、にそれぞれ配置されている。
【0022】
なお、底部フレーム2の補強フレーム部材2e,2fの間には、小物を収容するためのトレー26が設けられている。このトレー26は、補強フレーム部材2e,2fの下面側に固定されており、上面つまり2つの補強フレーム部材2e,2fの間から収容物の出し入れが可能である。
【0023】
第2の区画12の上方には、後述するトランスミッションアクチュエータユニットを積載するための棚状のトランスミッションアクチュエータ支持台28が設けられている。トランスミッションアクチュエータ支持台28は、平面視で左右方向に長い長方形をなし、中央フレーム5の第2横フレーム部材5dおよび縦フレーム部材5aによって片持ち状に支持されている。つまり、トランスミッションアクチュエータ支持台28は、ペダルアクチュエータ支持部21の上方を覆うように中央フレーム5から張り出している。なお、
図6に示すように、平面視においては、前後方向について、底部フレーム2の底部フレーム部材2dの外縁とトランスミッションアクチュエータ支持台28の外縁とがほぼ同一の位置にある。換言すれば、トランスミッションアクチュエータ支持台28は、底部フレーム2よりは外側へ突出しておらず、壁等にトランスミッションアクチュエータ支持台28のみが衝突することはない。
【0024】
トランスミッションアクチュエータ支持台28の下面側には、前後方向に引き出し可能な引き出し29が設けられており、付属品類の収容が可能である。
【0025】
次に、
図1~
図3に基づいて車両自動運転装置をキャリア1に積載した状態について説明する。図示例の車両自動運転装置は、例えば特開2021-148613号公報(上述した特許文献1)や特開2021-188913号公報によって公知となっている構成であるので、詳しい説明は省略するが、後述する
図8に示すように、運転席のシート100上に配置される本体部101と、この本体部101の前端から車両前方へ延びる3つのペダルアクチュエータ102と、本体部101の長手方向中間部に支持されるトランスミッションアクチュエータユニット103と、から大略構成される。キャリア1に積載する際には、これら3つの構成要素に分解した状態で積載される。なお、具体的な公報番号を挙げたが、本発明のキャリア1の積載対象が上記公報に記載の車両自動運転装置のみに限定される趣旨ではない。
【0026】
図1に示すように、本体部101は、キャリア1の第1の区画11の側に積載される。一例の本体部101は、シート100の上に斜めに配置されるように緩く湾曲したハシゴ状の形状をなしており、第1の区画11の上に斜めに立てかけられた状態となる。詳しくは、シート100にセットしたとき(以下、車両セット状態という)に後端部となる端部が上方となり、車両セット状態で前端部となる端部が下方となるようにして、車両セット状態での傾斜をより急峻にしたような形で第1の区画11に立てかけられる。このとき、下方となる本体部101の端部が一対のブロック状部材14の上に乗り、かつ切欠部15に係合する。従って、本体部101の荷重は基本的に一対のブロック状部材14によって支持される。そして、切欠部15との係合によって本体部101の下方の端部が前後方向に位置決めされる。また、中央フレーム5の第2横フレーム部材5dに本体部101の上部がもたれかかった状態となる。このような状態において、本体部101の重心位置は、平面視において、第2横フレーム部材5dと切欠部15との間にある。そのため、他のロック機構等を要さずに、本体部101は自重によりキャリア1上で傾斜姿勢を保持する。
【0027】
なお、車両自動運転装置をキャリア1に積載したまま長期間保管するような場合には、車両セット状態で本体部101をシート100に締め付けるためのストラップ105(
図8参照)を利用して、中央フレーム5と本体部101とを互いに拘束するようにしてもよい。
【0028】
図示例の本体部101は、車両セット状態で前端部となる位置に車体フロアに先端が接する一対の円柱状の脚部107(
図7,
図8参照)を備えている。キャリア1に積載した状態では、この一対の脚部107の先端部が、底部フレーム2の一対の補強フレーム部材2e,2fの間に位置し、これらと干渉しない。従って、車両に合わせて長さ調整した脚部107を備えたまま本体部101の積載が可能である。
【0029】
なお、本体部101が接する第2横フレーム部材5d等の表面に、滑り止めと緩衝とを兼ねたゴムシートを貼り付けておくようにしてもよい。
【0030】
図2に示すように、3つのペダルアクチュエータ102とトランスミッションアクチュエータユニット103は、キャリア1の第2の区画12の側に積載される。
【0031】
ペダルアクチュエータ102は、車両セット状態と同様の順序に並べた形でペダルアクチュエータ支持部21に積載される。傾斜した支持板22の上に置くことで、各ペダルアクチュエータ102は、斜めに立てかけられたような姿勢となる。積載状態では、車両セット状態で本体部101に接続される側の端部が上方となる。また、図示例のペダルアクチュエータ102は、箱状のモータユニットが下面側(車両セット状態での下面側)に突出しているので、平坦な上面が支持板22に接するように、上下を反転させた形で支持板22上に積載される。支持板22上に積載されたペダルアクチュエータ102は、下側および左右両側の複数の位置決めピン23によって囲まれるので、自重により保持された状態となる。なお、ペダルアクチュエータ102が接する支持板22表面に、滑り止めと緩衝とを兼ねたゴムシートを貼り付けておくようにしてもよい。
【0032】
トランスミッションアクチュエータユニット103は、トランスミッションアクチュエータ支持台28の上に積載される。図示例のトランスミッションアクチュエータユニット103は、シフトレバーを車両幅方向に沿って操作(いわゆるセレクト操作)するセレクト用アクチュエータ111と、シフトレバーを車両前後方向に沿って操作(いわゆるシフト操作)するシフト用アクチュエータ112と、を組み合わせた構成となっている。詳しくは、シフトレバー頭部のノブないしグリップを把持するグリップハンド113がシフト用アクチュエータ112のロッド112a先端に設けられており、このシフト用アクチュエータ112全体がセレクト用アクチュエータ111によって左右に移動するように構成されている。そして、セレクト用アクチュエータ111を支持するベースプレート103aに、詳細には図示しないが、本体部101の支持台115(
図1,
図7参照)上にトランスミッションアクチュエータユニット103を固定するためのロック機構114が設けられており、キャリア1に積載した状態では、このロック機構114を利用してトランスミッションアクチュエータユニット103がトランスミッションアクチュエータ支持台28に固定される。
【0033】
ロック機構114は、例えばロックピンを手指で90°ないし180°回転することでロックされる形式であり、ロックピンに対応するグロメットがトランスミッションアクチュエータ支持台28に設けられている。なお、本発明のキャリア1においては、トランスミッションアクチュエータ支持台28に積載したトランスミッションアクチュエータユニット103のロック機構は必須のものではなく、また、他の適当な形式のロック機構を利用してもよい。
【0034】
キャリア1の縦フレーム部材5aと第2縦フレーム部材5eとの間のスペースには、シート100の背面に配置されてストラップ105による締め付け荷重を受けるためのリテーナ106(
図7参照)を積載することが可能である。
【0035】
上記実施例のキャリア1は、上記のように車両自動運転装置の構成要素を積載した状態で、作業員が押したり引いたりして例えば車両試験室内で自由に移動させることが可能である。
図1~
図3に示したように、中央フレーム5を挟んで背中合わせとなるように本体部101とペダルアクチュエータ102とが積載されるため、上方から見たときの投影面積ないし接地面積が小さくなる。そのため、例えばシャシダイナモメータを備えた車両試験室内での取り回しが良好となる。
【0036】
また、本体部101と、ペダルアクチュエータ102ならびにトランスミッションアクチュエータユニット103とが、背中合わせに配置されることで、キャリア1を180°反転させて各々の車両への取付・取り外し作業を行うことができ、作業性が向上する。例えば、車両への取付作業においては、
図7の説明図に示すように、最初に本体部101をキャリア1から下ろし、シート100にセットすることとなる。このとき、
図7のように、キャリア1の第1の区画11が車両のドア開口部ならびに作業員の方に向いた姿勢としておくことで、作業員が本体部101を持ってシート100上まで動かす距離が最短となる。しかも、本体部101はキャリア1上で極端に高い位置に積載されずに、シート100と同程度の高さ位置に積載されるので、重量物である本体部101の取り扱いが容易となる。
【0037】
本体部101をシート100上にセットした後にペダルアクチュエータ102を本体部101前端部に接続し、かつトランスミッションアクチュエータユニット103を本体部101上に取り付けることになるが、このときには、
図8の説明図に示すように、
図7の状態からキャリア1の向きを180°反転させて、キャリア1の第2の区画12が車両のドア開口部ならびに作業員の方に向いた姿勢とすることができる。これにより、ペダルアクチュエータ102やトランスミッションアクチュエータユニット103の取付作業が容易となる。
【0038】
車両からの取り外し作業の際には逆の順序となり、トランスミッションアクチュエータユニット103およびペダルアクチュエータ102を取り外してキャリア1に積載した後、キャリア1の向きを180°反転させた状態で、本体部101をシート100から取り外してキャリア1に積載することができる。いずれも近い位置で作業を行うことができる。
【0039】
次に、
図9~
図12に基づいて、本発明の要部であるトランスミッションアクチュエータユニット103の支持構造について、より詳細に説明する。
【0040】
図9は、トランスミッションアクチュエータユニット103をトランスミッションアクチュエータ支持台28から分離した状態で示している。換言すれば、トランスミッションアクチュエータ支持台28に載せる直前のトランスミッションアクチュエータユニット103を示している。
【0041】
前述したように、図示例のトランスミッションアクチュエータユニット103は、車両のシフトレバーを車両幅方向に沿って操作するセレクト用アクチュエータ111と、シフトレバーを車両前後方向に沿って操作するシフト用アクチュエータ112と、を組み合わせた構成となっており、これら2つのアクチュエータ111,112は、いずれもピニオン・ラック形式の直線運動型アクチュエータからなる。セレクト用アクチュエータ111は、モータを収容したハウジング111bから突出するロッド(ラック軸)111aを有し、このロッド111aの先端にシフト用アクチュエータ112のハウジング112bが上下揺動可能に取り付けられている。シフト用アクチュエータ112のロッド(ラック軸)112aは、モータを収容したハウジング112bから車両前方へ向かうように延びており、先端にグリップハンド113が取り付けられている。ハウジング112bのグリップハンド113とは反対側には、ロッド112aの後端部を収容する円筒部112cが設けられている。グリップハンド113は、手動のネジ機構113aによって左右のフィンガーが開閉する構成となっている。
【0042】
図9に示すように、キャリア1の第2横フレーム部材5dに棚状に設けられた平面視で長方形をなすトランスミッションアクチュエータ支持台28は、キャリア1の左右の一方の側、詳しくは縦フレーム部材5aの側に片寄って設けられている。換言すれば、トランスミッションアクチュエータ支持台28の左右方向の寸法は第2横フレーム部材5dに沿った中央フレーム5の幅寸法よりも短く、縦フレーム部材5bとトランスミッションアクチュエータ支持台28の側縁28aとの間に切欠部ないし空間31が残存している。
【0043】
そして、トランスミッションアクチュエータ支持台28の上方には、トランスミッションアクチュエータユニット103のグリップハンド113を把持させるために、車両のシフトノブを模した模擬ノブ部32が設けられている。詳しくは、模擬ノブ部32は、キャリア1の左右方向の位置として、トランスミッションアクチュエータ支持台28の直上にはなく、上述した側方の空間31の上方に配置されている。一実施例の模擬ノブ部32は、短い円柱部32aと、この円柱部32aに対し径が拡大した略球状の頭部32bと、を有し、中央フレーム5の横フレーム部材5cの側面に固定されている。つまり、横フレーム部材5cの垂直面から水平方向に突出している。
【0044】
図10~
図12は、トランスミッションアクチュエータユニット103をトランスミッションアクチュエータ支持台28の上に積載した状態を示している。これらの図に示すように、積載状態においては、セレクト用アクチュエータ111のハウジング111bを備えたベースプレート103aがトランスミッションアクチュエータ支持台28の上に載っており、セレクト用アクチュエータ111のロッド111aの先端部および該先端部に支持されたシフト用アクチュエータ112のハウジング112bは、トランスミッションアクチュエータ支持台28の側縁28aから側方に突出している。そして、シフト用アクチュエータ112のハウジング112bから斜め上方へ延びたロッド112aの先端のグリップハンド113が、上方の模擬ノブ部32を把持した状態となっている。
【0045】
つまり、非通電状態においては、セレクト用アクチュエータ111およびシフト用アクチュエータ112の双方が自由に動き得る状態であるので、作業員は、グリップハンド113が模擬ノブ部32に対応した位置となるようにした上で、グリップハンド113のネジ機構113aを介してグリップハンド113が模擬ノブ部32を把持した状態とすればよい。なお、図示例では、セレクト用アクチュエータ111は、グリップハンド113が模擬ノブ部32を把持したときに、ロッド111aが最も交代した位置となる。
【0046】
このように、トランスミッションアクチュエータユニット103の積載時にグリップハンド113が模擬ノブ部32を把持した状態とすることで、グリップハンド113の位置が拘束され、ひいては、シフト用アクチュエータ112およびセレクト用アクチュエータ111の自由な動きが制限される。
【0047】
従って、キャリア1が傾斜したときや段差を乗り越えるときなどに、グリップハンド113や各アクチュエータ111,112が不用意に動いてしまうことがなく、他部品との接触や損傷を回避することができる。
【0048】
また、図示例では、シフト用アクチュエータ112のロッド112aが垂直に近い上下の傾斜姿勢となるので、
図11に明らかなように、シフト用アクチュエータ112の全体がキャリア1の底部フレーム2の投影面積内に収まるようになる。つまり、シフト用アクチュエータ112の一部例えば円筒部112cが底部フレーム2の投影面積から外へはみでるようなことがない。
【0049】
上記のようにシフト用アクチュエータ112が傾斜姿勢で積載されると、グリップハンド113とは反対側へ延びる円筒部112c等がトランスミッションアクチュエータ支持台28の上面よりも下方へ位置することとなる。しかし、図示例では、トランスミッションアクチュエータ支持台28がキャリア1の中間高さ位置にあり、またトランスミッションアクチュエータ支持台28の側方に空間31が設けられているので、
図12に明らかなように、円筒部112c等が他部品に干渉することがない。換言すれば、空間31を有効利用してシフト用アクチュエータ112をコンパクトに収容することができる。
【0050】
以上、この発明の一実施例を説明したが、この発明は上記実施例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、積載される車両自動運転装置は、図示例の構成に限られず、また、キャリア1の細部は、積載される車両自動運転装置の構成に対応して適宜に変更され得る。
【0051】
上記実施例ではトランスミッションアクチュエータユニット103として、先端にグリップハンド113を備えたシフト用アクチュエータ112がセレクト用アクチュエータ111のロッド111aを揺動中心として上下に揺動できる形式のものを説明したが、他の形式のトランスミッションアクチュエータユニットであっても本発明は適用できる。例えば、X軸方向に動作する第1のアクチュエータとY軸方向に動作する第2のアクチュエータとを、基本的に水平面に沿って動作するように組み合わせ、第2のアクチュエータの先端におけるグリップハンドがZ軸方向に自由に動くようにすることでシフトノブのZ軸方向の変位を吸収するようにしたトランスミッションアクチュエータユニットに対しても、本発明は適用が可能である。
【0052】
また、模擬ノブ部の形状は、上記のような球状のものに限らず、グリップハンドが把持できる形状であれば、どのようなものであってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…キャリア
2…底部フレーム
3…キャスタ
5…中央フレーム
14…ブロック状部材
21…ペダルアクチュエータ支持部
28…トランスミッションアクチュエータ支持台
32…模擬ノブ部
100…シート
101…本体部
102…ペダルアクチュエータ
103…トランスミッションアクチュエータユニット
111…セレクト用アクチュエータ
112…シフト用アクチュエータ
113…グリップハンド