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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116462
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】測量装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20240821BHJP
【FI】
G01C15/00 103D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022095
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083563
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 祥二
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 太一
(57)【要約】      (修正有)
【課題】光学系の小型化を図る測量装置を提供する。
【解決手段】測定対象物に測距光35を射出する発光素子28を有する測距光射出部23と、前記測定対象物からの反射測距光47を受光する受光部39を有する測距光受光部24と、前記測距光射出部を制御し、前記受光部に対する前記反射測距光の受光結果に基づき前記測定対象物迄の距離を演算する演算制御部とを具備し、前記測距光受光部は、前記反射測距光を同一平面内で少なくとも1回内部反射させる受光プリズム44を有し、該受光プリズムは前記反射測距光の入射面と反対側の面に、前記入射面側に窪んだ凹部63が形成され、該凹部に前記受光部が配設される様構成された。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に測距光を射出する発光素子を有する測距光射出部と、前記測定対象物からの反射測距光を受光する受光部を有する測距光受光部と、前記測距光射出部を制御し、前記受光部に対する前記反射測距光の受光結果に基づき前記測定対象物迄の距離を演算する演算制御部とを具備し、前記測距光受光部は、前記反射測距光を同一平面内で少なくとも1回内部反射させる受光プリズムを有し、該受光プリズムは前記反射測距光の入射面と反対側の面に、前記入射面側に窪んだ凹部が形成され、該凹部に前記受光部が配設される様構成された測量装置。
【請求項2】
前記受光部は受光ファイバであり、該受光ファイバは上方に延出し、前記入射面に向って屈曲される様構成された請求項1に記載の測量装置。
【請求項3】
前記受光ファイバに受光される前記反射測距光の光軸が、前記反射測距光の入射面と反対側の面と平行又は略平行となる様に構成された請求項2に記載の測量装置。
【請求項4】
前記受光プリズムは、第1プリズムと、該第1プリズムと接合された第2プリズムと、該第2プリズムと接合された第3プリズムとで構成され、前記凹部は前記第1プリズムと前記第2プリズムとで形成され、前記反射測距光は前記第2プリズムと前記第3プリズムとの接合面に形成された分離面により前記凹部に向って反射される様構成された請求項1に記載の測量装置。
【請求項5】
前記測定対象物に前記測距光と同軸で追尾光を射出する追尾発光素子を有する追尾光射出部と、前記測定対象物からの反射追尾光を前記反射測距光と同軸で受光する追尾光受光部とを更に具備し、該追尾光受光部は前記分離面の透過側に配設されたセンサ基板に設けられた追尾受光素子を有し、前記受光プリズムは、同軸で入射した前記反射測距光と前記反射追尾光を前記分離面で分離させ、前記反射追尾光を前記追尾受光素子に受光される様構成された請求項4に記載の測量装置。
【請求項6】
前記第1プリズムの角部に面取り加工を施し、面取り部が形成され、該面取り部に反射防止塗料が塗布された請求項5に記載の測量装置。
【請求項7】
前記受光プリズムの前記反射追尾光の射出面に前記反射追尾光の光束と同径又は略同径のバンドパスフィルタが設けられ、前記射出面の前記バンドパスフィルタ以外の箇所に反射防止塗料が塗布された請求項6に記載の測量装置。
【請求項8】
前記面取り部と前記受光部と前記センサ基板の前記入射面と反対側の端部が略同一平面上に配置される様構成された請求項7に記載の測量装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の3次元座標を取得可能な測量装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザスキャナやトータルステーション等の測量装置は、測定対象物として再帰反射性を有するプリズムを用いたプリズム測距、反射プリズムを用いないノンプリズム測距により測定対象物迄の距離を検出する光波距離測定装置を有している。
【0003】
測量装置では、測定対象物に向けて射出される測距光の光軸と、測定対象物から反射される反射測距光の光軸とを合致させる為に、測距光や反射測距光の光軸がミラー等により偏向される。又、測量装置の光学系を小型化する為、測距光や反射測距光の光軸を複数回偏向させる場合もある。
【0004】
測距光や反射測距光の光軸を複数回偏向させる場合、偏向方向によって発光素子や受光素子の配置が変化する。この為、発光素子や受光素子の配置によっては、測量装置の光学系の大型化を招く虞れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-25993号公報
【特許文献2】特開2021-101155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、光学系の小型化を図る測量装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、測定対象物に測距光を射出する発光素子を有する測距光射出部と、前記測定対象物からの反射測距光を受光する受光部を有する測距光受光部と、前記測距光射出部を制御し、前記受光部に対する前記反射測距光の受光結果に基づき前記測定対象物迄の距離を演算する演算制御部とを具備し、前記測距光受光部は、前記反射測距光を同一平面内で少なくとも1回内部反射させる受光プリズムを有し、該受光プリズムは前記反射測距光の入射面と反対側の面に、前記入射面側に窪んだ凹部が形成され、該凹部に前記受光部が配設される様構成された測量装置に係るものである。
【0008】
又本発明は、前記受光部は受光ファイバであり、該受光ファイバは上方に延出し、前記入射面に向って屈曲される様構成された測量装置に係るものである。
【0009】
又本発明は、前記受光ファイバに受光される前記反射測距光の光軸が、前記反射測距光の入射面と反対側の面と平行又は略平行となる様に構成された測量装置に係るものである。
【0010】
又本発明は、前記受光プリズムは、第1プリズムと、該第1プリズムと接合された第2プリズムと、該第2プリズムと接合された第3プリズムとで構成され、前記凹部は前記第1プリズムと前記第2プリズムとで形成され、前記反射測距光は前記第2プリズムと前記第3プリズムとの接合面に形成された分離面により前記凹部に向って反射される様構成された測量装置に係るものである。
【0011】
又本発明は、前記測定対象物に前記測距光と同軸で追尾光を射出する追尾発光素子を有する追尾光射出部と、前記測定対象物からの反射追尾光を前記反射測距光と同軸で受光する追尾光受光部とを更に具備し、該追尾光受光部は前記分離面の透過側に配設されたセンサ基板に設けられた追尾受光素子を有し、前記受光プリズムは、同軸で入射した前記反射測距光と前記反射追尾光を前記分離面で分離させ、前記反射追尾光を前記追尾受光素子に受光される様構成された測量装置に係るものである。
【0012】
又本発明は、前記第1プリズムの角部に面取り加工を施し、面取り部が形成され、該面取り部に反射防止塗料が塗布された測量装置に係るものである。
【0013】
又本発明は、前記受光プリズムの前記反射追尾光の射出面に前記反射追尾光の光束と同径又は略同径のバンドパスフィルタが設けられ、前記射出面の前記バンドパスフィルタ以外の箇所に反射防止塗料が塗布された測量装置に係るものである。
【0014】
更に又本発明は、前記面取り部と前記受光部と前記センサ基板の前記入射面と反対側の端部が略同一平面上に配置される様構成された測量装置に係るものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、測定対象物に測距光を射出する発光素子を有する測距光射出部と、前記測定対象物からの反射測距光を受光する受光部を有する測距光受光部と、前記測距光射出部を制御し、前記受光部に対する前記反射測距光の受光結果に基づき前記測定対象物迄の距離を演算する演算制御部とを具備し、前記測距光受光部は、前記反射測距光を同一平面内で少なくとも1回内部反射させる受光プリズムを有し、該受光プリズムは前記反射測距光の入射面と反対側の面に、前記入射面側に窪んだ凹部が形成され、該凹部に前記受光部が配設される様構成されたので、該受光部が前記受光プリズムから前記反対側の面側に突出することが防止され、前記測距光受光部の光学系の小型化及び装置全体の小型化を図ることができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施例に係る測量装置を示す正断面図である。
図2】(A)は、第1の実施例に係る距離測定部を示す構成図であり、(B)は反射プリズムの側面図である。
図3】(A)は、反射追尾光に生じる位相差について説明する説明図であり、(B)は位相差を有する状態で取得された追尾像を示す説明図である。
図4】第1の実施例に係る受光プリズムを示す展開図である。
図5】反射又は透過時に反射追尾光に生じる位相差を説明する表である。
図6】第2の実施例に係る距離測定部を示す構成図である。
図7】第2の実施例に係る受光プリズムを示す展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0018】
先ず、図1に於いて、本発明の第1の実施例に係る測量装置について説明する。
【0019】
測量装置1は、例えばレーザスキャナであり、三脚(図示せず)に取付けられる整準部2と、該整準部2に取付けられた測量装置本体3とから構成される。
【0020】
前記整準部2は整準ネジ10を有し、該整準ネジ10により前記測量装置本体3の整準を行う。
【0021】
該測量装置本体3は、固定部4と、托架部5と、水平回転軸6と、水平回転軸受7と、水平回転駆動部としての水平回転モータ8と、水平角検出部としての水平角エンコーダ9と、鉛直回転軸11と、鉛直回転軸受12と、鉛直回転駆動部としての鉛直回転モータ13と、鉛直角検出部としての鉛直角エンコーダ14と、鉛直回転部である走査ミラー15と、操作部と表示部とを兼用する操作パネル16と、演算制御部17と、記憶部18と、距離測定部19等を具備している。尚、前記演算制御部17としては、本装置に特化したCPU、或は汎用CPUが用いられる。
【0022】
前記水平回転軸受7は前記固定部4に固定される。前記水平回転軸6は鉛直な軸心6aを有し、前記水平回転軸6は前記水平回転軸受7に回転自在に支持される。又、前記托架部5は前記水平回転軸6に支持され、前記托架部5は水平方向に前記水平回転軸6と一体に回転する様になっている。
【0023】
前記水平回転軸受7と前記托架部5との間には前記水平回転モータ8が設けられ、該水平回転モータ8は前記演算制御部17により制御される。該演算制御部17は、前記水平回転モータ8により、前記托架部5を前記軸心6aを中心に回転させる。
【0024】
前記托架部5の前記固定部4に対する相対回転角は、前記水平角エンコーダ9によって検出される。該水平角エンコーダ9からの検出信号は前記演算制御部17に入力され、該演算制御部17により水平角データが演算される。該演算制御部17は、前記水平角データに基づき、前記水平回転モータ8に対するフィードバック制御を行う。
【0025】
又、前記托架部5には、水平な軸心11aを有する前記鉛直回転軸11が設けられている。該鉛直回転軸11は、前記鉛直回転軸受12を介して回転自在となっている。尚、前記軸心6aと前記軸心11aの交点が、測距光の射出位置であり、前記測量装置本体3の座標系の原点となっている。
【0026】
前記托架部5には、凹部22が形成されている。前記鉛直回転軸11は、一端部が前記凹部22内に延出し、前記一端部に前記走査ミラー15が固着され、該走査ミラー15は前記凹部22に収納されている。又、前記鉛直回転軸11の他端部には、前記鉛直角エンコーダ14が設けられている。
【0027】
前記鉛直回転軸11に前記鉛直回転モータ13が設けられ、該鉛直回転モータ13は前記演算制御部17に制御される。該演算制御部17は、前記鉛直回転モータ13により前記鉛直回転軸11を回転させ、前記走査ミラー15は前記軸心11aを中心に回転される。
【0028】
前記走査ミラー15の回転角は、前記鉛直角エンコーダ14によって検出され、検出信号は前記演算制御部17に入力される。該演算制御部17は、検出信号に基づき前記走査ミラー15の鉛直角データを演算し、該鉛直角データに基づき前記鉛直回転モータ13に対するフィードバック制御を行う。
【0029】
又、前記演算制御部17で演算された水平角データ、鉛直角データや測定結果は、前記記憶部18に保存される。該記憶部18としては、磁気記憶装置としてのHDD、光記憶装置としてのCD、DVD、半導体記憶装置としてのメモリカード、USBメモリ等種々の記憶手段が用いられる。該記憶部18は、前記托架部5に対して着脱可能であってもよく、或は図示しない通信手段を介して外部記憶装置や外部データ処理装置にデータを送出可能としてもよい。
【0030】
前記記憶部18には、測距作動を制御するシーケンスプログラム、測距作動により距離を演算する演算プログラム、水平角データ及び鉛直角データに基づき角度を演算する演算プログラム、距離と角度に基づき所望の測定点の3次元座標を演算するプログラム等の各種プログラムが格納される。又、前記演算制御部17により各種プログラムが実行されることで、各種処理が実行される。
【0031】
前記操作パネル16は、例えばタッチパネルであり、測距の指示や測定条件、例えば測定点間隔の変更等を行う操作部と、測距結果や画像等を表示する表示部とを兼用している。
【0032】
次に、図2(A)を参照して、前記距離測定部19について説明する。
【0033】
該距離測定部19は、測距光射出部23と測距光受光部24と追尾光射出部25と追尾光受光部26とを有している。尚、前記測距光射出部23と前記測距光受光部24とにより測距部が構成され、前記追尾光射出部25と前記追尾光受光部26とにより追尾部が構成される。
【0034】
前記測距光射出部23は、測距光軸27を有している。又、前記測距光射出部23は、発光側から順に、前記測距光軸27上に設けられた発光素子28、例えばレーザダイオード(LD)と、平行平面板29と、コリメータレンズ31と、ダイクロイックミラー32とを有している。又、該ダイクロイックミラー32の反射光軸上に偏向光学部材としての反射プリズム33が設けられ、該反射プリズム33の反射光軸上には前記走査ミラー15が設けられている。更に、該走査ミラー15の反射光軸上には、透明材料で形成され、前記走査ミラー15と一体に回転する窓部34が設けられている。
【0035】
尚、前記平行平面板29、前記コリメータレンズ31、前記ダイクロイックミラー32、前記反射プリズム33等は投光光学系30を構成する。又、本実施例では、前記測距光軸27と、前記ダイクロイックミラー32で反射された前記測距光軸27と、前記反射プリズム33で反射された前記測距光軸27とを総称して、該測距光軸27としている。
【0036】
前記平行平面板29は、例えば所定の板厚を有するガラス板であり、入射面及び射出面が前記測距光軸27と直交する様に配置される。又、前記平行平面板29は、図示しないソレノイド等の駆動機構により、前記測距光軸27に対して挿脱可能となっており、測定対象物に応じて適宜前記平行平面板29が挿脱される。即ち、測定対象物が再帰反射性を有するプリズム等であるプリズム測定を実行する場合は、前記平行平面板29を前記測距光軸27上に挿入し、測定対象物がプリズム以外のノンプリズム測距を実行する場合は、前記平行平面板29を前記測距光軸27上から取除く様構成される。
【0037】
前記平行平面板29を前記測距光軸27上へと挿入することで、前記発光素子28より発せられた測距光35の広がり角が前記平行平面板29を介して拡大する様構成される。該平行平面板29により拡大される広がり角φは、2~20分の間で適宜設定される。本実施例では、前記平行平面板29による前記測距光35の広がり角φは、6分となっている。
【0038】
前記コリメータレンズ31は、前記測距光軸27上に前記平行平面板29が挿入されていない状態では、前記測距光35を平行光束とする。又、前記測距光軸27上に前記平行平面板29が挿入された状態では、前記測距光35を僅かに発散させる。
【0039】
前記ダイクロイックミラー32は、前記測距光35を反射し、追尾光36(後述)を透過する光学特性を有している。又、前記ダイクロイックミラー32は、前記測距光35と前記追尾光36の共通光路上(前記測距光軸27と追尾光軸37(後述)の交差位置)に設けられ、前記測距光軸27が前記追尾光軸37と合致する様に前記測距光軸27を偏向(反射)する。従って、前記測距光35と前記追尾光36とは同軸で測定対象物に向って照射される。
【0040】
前記反射プリズム33は、2つの台形上のプリズムを接合させて形成される。2つのプリズムが接合された状態では、前記反射プリズム33は直方体形状となる。前記測距光35の入射面は前記測距光軸27に対して直交し、前記反射プリズム33の接合面38は前記測距光軸27に対して所定角度傾斜している。更に、前記反射プリズム33の射出面は、前記接合面38で反射された前記測距光軸27が僅かに、例えば2.5°程度傾斜して入射する様構成されている。従って、前記反射プリズム33の射出面で内部反射された前記測距光35が受光部としての受光ファイバ(光ファイバ)39に受光されるのを防止している。尚、前記接合面38の傾斜角は、前記測距光軸27が受光光軸41(後述)及び前記軸心11aと合致する様、前記測距光軸27を偏向(反射)させる角度となっている。又、前記受光部としては、アバランシェフォトダイオード(APD)、或は同等の光電変換素子であってもよい。
【0041】
図2(B)に示される様に、前記接合面38の中心部にはビームスプリッタ膜42が形成される。前記ビームスプリッタ膜42は、前記測距光35の光束に合わせて楕円形状となっている。又、前記ビームスプリッタ膜42の大きさは、前記平行平面板29により発散された前記測距光35の光束径と同等又は該光束よりも僅かに大きくなっている。更に、前記ビームスプリッタ膜42は、例えば80%の光を反射し、20%の光を透過する光学特性を有している。
【0042】
尚、前記ビームスプリッタ膜42に於ける反射率と透過率の割合は、用途や測定対象物迄の距離に応じて適宜設定される。例えば、測定対象物迄の距離が近い場合には、前記ビームスプリッタ膜42を例えば反射率50%~70%、透過率30%~50%の範囲から選択するのが望ましい。又、測定対象物迄の距離が遠い場合には、前記ビームスプリッタ膜42を例えば反射率70%~90%、透過率10%~30%の範囲から選択するのが望ましい。
【0043】
前記測距光受光部24は、前記受光光軸41を有している。又、前記測距光受光部24は、受光側から順に、前記受光光軸41上に設けられた受光部としての受光ファイバ39と、受光プリズム44を有すると共に、該受光プリズム44で反射された前記受光光軸41上に設けられた所定のNA(Numerical Aperture)を有する受光レンズ45を有している。
【0044】
前記受光プリズム44は、分離面としてのダイクロイック膜46(後述)を有している。前記受光プリズム44は、測定対象物で反射された前記測距光35(反射測距光47)と、前記反射測距光47と同軸で入射した前記追尾光36(反射追尾光48)を同一平面内で少なくとも1回反射させる様構成されている。又、前記ダイクロイック膜46は、前記反射測距光47を反射し、前記反射追尾光48を透過する光学特性を有している。
【0045】
尚、前記受光プリズム44、前記受光レンズ45、前記反射プリズム33等で受光光学系49が構成される。又、本実施例では、前記受光光軸41と、前記受光プリズム44及び前記ダイクロイック膜46で反射された前記受光光軸41とを総称して、該受光光軸41としている。
【0046】
前記追尾光射出部25は、前記追尾光軸37を有している。又、前記追尾光射出部25は、発光側から順に、前記追尾光軸37上に設けられた追尾発光素子51、コリメータレンズ52、前記ダイクロイックミラー32を有すると共に、該ダイクロイックミラー32の反射光軸上に設けられた前記反射プリズム33を有している。
【0047】
尚、本実施例では、前記追尾光軸37と前記反射プリズム33によって反射された前記追尾光軸37とを総称して、該追尾光軸37としている。又、前記ダイクロイックミラー32の反射側に前記測距光35を発する前記発光素子28が設けられ、前記ダイクロイックミラー32の透過側に前記追尾光36を発する前記追尾発光素子51が設けられているが、前記ダイクロイックミラー32の反射側に前記追尾発光素子51を設け、前記ダイクロイックミラー32の透過側に前記発光素子28を設けてもよい。
【0048】
前記追尾発光素子51は、例えばレーザダイオード(LD)であり、前記測距光35とは波長の異なる近赤外波長の前記追尾光36を射出する様構成されている。又、前記コリメータレンズ52は、前記追尾発光素子51から発せられた前記追尾光36を平行光束とする様構成される。
【0049】
前記追尾光受光部26は、追尾受光光軸53を有している。又、前記追尾光受光部26は、受光側から順に、前記追尾受光光軸53上に設けられた追尾受光素子54、バンドパスフィルタ64、受光プリズム44及び該受光プリズム44の反射光軸上に設けられた前記受光レンズ45を有している。
【0050】
尚、本実施例では、前記追尾受光光軸53と前記受光プリズム44で反射された前記追尾受光光軸53とを総称して、該追尾受光光軸53としている。
【0051】
前記追尾受光素子54は、画素の集合体であるCCD、或はCMOSセンサであり、各画素は前記追尾受光素子54上での位置が特定できる様になっている。例えば、各画素は、前記追尾受光素子54の中心を原点とした画素座標を有し、該画素座標によって前記追尾受光素子54上での位置が特定される。
【0052】
前記距離測定部19は、前記演算制御部17により制御される。前記発光素子28から前記測距光軸27上にパルス状の前記測距光35が射出されると、該測距光35は前記コリメータレンズ31に入射する。又、前記測距光軸27上に前記平行平面板29が存在している場合には、前記測距光35は前記平行平面板29を介して広がり角が僅かに広がりながら前記コリメータレンズ31に入射する。
【0053】
該コリメータレンズ31は、前記発光素子28から直接前記測距光35が入射した場合には、該測距光35を平行光束とする。又、前記コリメータレンズ31は、前記平行平面板29を介して前記測距光35が入射した場合には、該測距光35を僅かに発散させる。
【0054】
前記コリメータレンズ31を透過した前記測距光35は、前記反射プリズム33の入射面に対して直角に入射し、該反射プリズム33内部を透過して前記接合面38(ビームスプリッタ膜42)で前記受光光軸41及び前記軸心11aと同軸になる様反射される。前記反射プリズム33から射出される前記測距光35は、前記走査ミラー15によって直角に偏向され、前記窓部34を介して測定対象物に照射される。前記走査ミラー15が前記軸心11aを中心に回転することで、前記測距光35は前記軸心11aと直交し、且つ前記軸心6aを含む平面内で回転(走査)される。
【0055】
尚、前記窓部34は、該窓部34で反射された前記測距光35が前記受光ファイバ39に入射しない様、前記測距光軸27の光軸に対して所定角度傾斜して設けられている。
【0056】
測定対象物で反射された前記反射測距光47は、前記走査ミラー15で直角に反射され、前記受光光学系49を経て前記受光ファイバ39で受光される。
【0057】
前記演算制御部17は、前記発光素子28の発光タイミングと、前記受光ファイバ39の受光タイミングの時間差(即ち、パルス光の往復時間)と光速に基づき、前記測距光35の1パルス毎に測距を実行し(Time Of Flight)、測定対象物迄の距離を演算する。尚、前記発光素子28の発光のタイミング、即ちパルス間隔は、前記操作パネル16を介して変更可能となっている。又、測距結果と前記水平角エンコーダ9及び前記鉛直角エンコーダ14で得られた水平角データ及び鉛直角データに基づき、測定対象物の3次元座標を演算できる。
【0058】
又、前記測距光35を所定のパルス間隔で射出しつつ、前記托架部5と前記走査ミラー15とをそれぞれ定速で回転させることで、該走査ミラー15の鉛直方向の回転と、前記托架部5の水平方向の回転との協動により、前記測距光35が2次元に走査される。又、各パルス光毎に前記鉛直角エンコーダ14、前記水平角エンコーダ9により鉛直角、水平角を検出することで、鉛直角データ、水平角データが取得できる。鉛直角データ、水平角データ、測距データとにより、測定対象物の3次元座標及び測定対象物に対応する3次元の点群データが取得できる。
【0059】
尚、前記距離測定部19には内部参照光光学系55が設けられている。該内部参照光光学系55は、前記走査ミラー15の下方に設けられたリファレンスプリズム56を有し、前記発光素子28から前記リファレンスプリズム56迄の光路長と、該リファレンスプリズム56から前記受光ファイバ39の受光面迄の光路長は既知となっている。従って、前記リファレンスプリズム56で反射された前記測距光35を内部参照光とし、該内部参照光と前記反射測距光47の受光タイミングの時間差と光速に基づき測距を行うことで、より高精度な測距が可能となる。
【0060】
又、測距作動と並行して、追尾発光素子51から前記測距光35とは異なる波長の前記追尾光36が射出されると、前記コリメータレンズ52で平行光束とされた後、前記ダイクロイックミラー32により前記測距光35と同軸となる様に偏向される。
【0061】
前記測距光35と同軸で測定対象物に照射され、測定対象物で反射された反射追尾光48は、前記受光光学系49を通過する過程で、前記ダイクロイック膜46で前記反射測距光47と分離され、前記追尾受光素子54で受光される。
【0062】
前記演算制御部17は、前記追尾受光素子54の中心と、該追尾受光素子54に対する前記反射追尾光48の受光位置との位置偏差に基づき、前記水平回転モータ8と前記鉛直回転モータ13を駆動させ、測定対象物を追尾する様に構成される。
【0063】
次に、前記受光光学系49の詳細について説明する。前記受光プリズム44は、第1プリズム58と第2プリズム59と第3プリズム60とから構成されている。尚、以下の説明では、図2(A)中、紙面に対して上側を上、紙面に対して下側を下、紙面に対して右側を右、紙面に対して左側を左、紙面に対して奥側を奥、紙面に対して手前側を手前として説明する。
【0064】
前記第1プリズム58は、所定の屈折率を有し、4つの反射面、即ち第1面58a、第2面58b、第3面58c、第4面58dを有する多角形のプリズムとなっている。前記第1面58aは、前記反射測距光47及び前記反射追尾光48の入射面であり、前記第1プリズム58に入射する前記受光光軸41及び追尾受光光軸53と直交する様構成されている。又、前記第1面58aには全面に亘って反射防止膜(ARコート)が設けられている。
【0065】
前記第2面58bは、前記第1面58aと対向し、該第1面58aよりも面積が小さくなっており、前記第2面58bの上端は前記第1面58aの上端よりも下側に位置し、前記第2面58bの下端は前記第1面58aの下端よりも上側に位置している。更に、前記第2面58bは、下方から上方に向って前記第1面58aから離反する様に所定角度傾斜する様構成されている。又、前記第2面58bは、例えば鏡面加工が施されたミラーとなっている。
【0066】
前記第3面58cは、前記第1面58aの上端と前記第2面58bの上端との間に形成され、前記第1面58aから前記第2面に向って下方に所定角度傾斜する様に構成される。更に第4面58dは、前記第1面58aの下端と前記第2面58bの下端との間に前記第3面58cと対向して設けられ、前記第1面58aから前記第2面58bに向って上方に所定角度傾斜する様に構成される。又、前記第3面58cは、例えば鏡面加工が施されたミラーとなっている。
【0067】
前記第1面58aと前記第3面58cとで形成される角部には、面取り加工が施され、第1面取り部61が形成される。又、前記第2面58bと前記第3面58cとで形成される角部には、面取り加工が施され、第2面取り部62が形成される。尚、前記第1面取り部61と前記第2面取り部62は、前記第1プリズム58内を内部反射する前記反射測距光47の光路外に形成される。又、前記第1面取り部61と前記第2面取り部62には、反射防止塗料が塗布されている。
【0068】
前記第2プリズム59は、所定の屈折率を有し、5つの面、即ち第1面59aと、第2面59bと、第3面59cと、第4面59dと、第5面59eとを有する5角形のプリズムとなっている。前記第1面59aは、前記第1プリズム58内で反射された反射測距光47が入射角0°で入射する入射面であり、前記第4面58dと同一面積を有し、該第4面58dと接合されている。即ち、前記第4面58dと前記第1面59aは前記第1プリズム58と前記第2プリズム59とを接合させる接合面となる。
【0069】
前記第2面59bは、前記第1面59aの左端から前記第1プリズム58と離反する方向に延出する。又、例えば前記第1面59aと前記第2面59bとの成す角度は例えば直角である。
【0070】
前記第3面59cは、前記第2面59bの下端から右側に向って前記第1面59aと対向する様に延出する。又、例えば前記第2面59bと前記第3面59cとの成す角度は例えば鈍角となる。
【0071】
前記第4面59dは、前記第3面59cの右端から前記第1プリズム58と近接する方向に延出し、前記第5面59eは、前記第4面59dの上端と前記第1面59aの右端との間に形成される。又、前記第1面59aと前記第5面59eとの成す角度は鈍角となっている。
【0072】
前記第4面58dと前記第1面59aとは同一面積の面であり、接合されているので、第1プリズム58の前記第2面58bと前記第2プリズム59の第5面59eは連続する。又、前記第2面58bは接合面を起点として下方から上方に向って前記反射測距光47と前記反射追尾光48の入射面(前記第1面58a)から離反する方向に傾斜し、前記第5面59eは接合面を起点として上方に向って前記第1面58aから離反する方向に傾斜している。従って、前記第2面58bと前記第5面59eとにより、前記第1面58aに向って窪んだ凹部63が形成される。即ち、該凹部63は、前記受光プリズム44の前記反射測距光47と前記反射追尾光48の入射面の反対側の面に形成される。
【0073】
前記第3プリズム60は、所定の屈折率を有し、4つの面、即ち第1面60aと、第2面60bと、第3面60cと、第4面60dとを有する4角形のプリズムとなっている。前記第1面60aは、前記第2プリズム59内を透過した前記反射測距光47の入射面であり、前記第3面59cと同一面積を有し、該第3面59cと接合されている。即ち、該第3面59cと前記第1面60aは前記第2プリズム59と前記第3プリズム60とを接合させる接合面となる。更に、前記第2プリズム59と前記第3プリズム60との接合面には、ダイクロイック膜46が設けられている。
【0074】
前記第2面60bは、前記第1面60aの左端から前記第2プリズム59と離反する方向に延出する。又、前記第2面59bと前記第2面60bとは連続し、且つ面一となる。
【0075】
前記第3面60cは、前記第2面60bの下端から前記反射測距光47と前記反射追尾光48の入射面(前記第1面58a)から離反する方向に延出する。又、例えば前記第2面60bと前記第3面60cとの成す角度は例えば直角であり、該第3面60cは前記第1プリズム58の前記第4面58d及び前記第2プリズム59の前記第1面59aと平行となっている。更に、前記第3面60cの右端と前記第1面60aの右端との間に第4面60dが形成される。
【0076】
又、前記第3面60cの中心には、所定の大きさはバンドパスフィルタ64が設けられ、該バンドパスフィルタ64の周囲には反射防止塗料65が塗布されている。該バンドパスフィルタ64の大きさは、前記ダイクロイック膜46を透過する前記反射追尾光48の光束径と同等又は僅かに大きくなっている。前記バンドパスフィルタ64により、前記追尾光36の波長とは異なる波長の光を前記反射追尾光48から除去することができる。
【0077】
前記第5面59eと対向し、前記ダイクロイック膜46で反射される前記反射測距光47の集光位置には、前記受光ファイバ39の受光面が設けられている。該受光ファイバ39の受光面は前記凹部63に位置し、前記受光ファイバ39は前記受光プリズム44の奥側を通り、該受光プリズム44の入射面側に向って屈曲されている。
【0078】
尚、前記ダイクロイック膜46で反射された前記反射測距光47の前記受光光軸41は、前記第1プリズム58の前記第2面58bと平行又は略平行となっている。前記受光光軸41と前記第2面58bとが平行又は略平行となることで、最も突出する部分(前記受光ファイバ39の曲げ半径だけ突出する部分)が前記受光プリズム44の上方に位置することとなり、屈曲された前記受光ファイバ39が前記第1プリズム58から離反する方向に前記凹部63から突出することを防止できる。即ち、前記受光光学系49が前記受光光軸41方向に拡大することを防止できる。又、前記受光ファイバ39が前記第2面58bに近接し、前記受光ファイバ39の屈曲を妨げることを防止できる。
【0079】
前記第3面60cと対向し、前記ダイクロイック膜46を透過する前記反射追尾光48の集光位置には、追尾受光素子54が設けられている。又、該追尾受光素子54は、センサ基板66に設けられている。
【0080】
尚、前記第2面取り部62の右端(下端)と、前記受光プリズム44の入射面に向って屈曲された受光ファイバ39の右端と、前記センサ基板66の右端とは、略同一平面上に位置している。
【0081】
前記受光レンズ45を透過した前記反射測距光47と前記反射追尾光48は、前記第1プリズム58の前記第1面58aに対して直角に同軸で入射する。前記第1プリズム58内に入射した前記反射測距光47と前記反射追尾光48は、前記第2面58b、前記第1面58a、前記第3面58c、前記第1面58aで順次同一平面内で反射され、前記第4面58d(前記第1面59a)に直角に入射する。
【0082】
前記第2プリズム59内に入射した前記反射測距光47と前記反射追尾光48は、前記第3面59c(前記第1面60a)、即ち分離面としての前記ダイクロイック膜46に入射し、前記反射測距光47と前記反射追尾光48に分離される。
【0083】
前記反射測距光47は、前記ダイクロイック膜46で反射され、前記第5面59eに直角に入射し、前記受光ファイバ39に受光される。又、前記反射追尾光48は、前記ダイクロイック膜46を透過し、前記第3面60cに直角に入射し、前記バンドパスフィルタ64を通過する過程で前記追尾光36の波長とは異なる波長の光が除去され、前記追尾受光素子54に受光される。
【0084】
尚、前記窓部34で反射された前記測距光35や前記追尾光36等、前記反射測距光47と前記反射追尾光48の光路外を通過する迷光は、前記第1面取り部61や前記第2面取り部62、或は前記反射防止塗料65で吸収され、遮断される。従って、前記受光ファイバ39や前記追尾受光素子54への迷光の受光が防止される。
【0085】
ここで、前記反射測距光47や前記反射追尾光48等の光は、プリズム等に対して透過又は反射する際、透過面や反射面に対する入射角に対応して位相差(透過位相、反射位相)を生じる。
【0086】
図3(A)、図3(B)は、上記した位相差について説明する為の簡易的な説明図となっている。図3(A)中、67は受光レンズを示し、68は矩形のプリズムを示し、69は2次元の受光センサを示し、71は前記プリズム68に設けられたダイクロイック膜を示している。
【0087】
例えば、前記反射追尾光48が前記受光レンズ45に入射すると、前記反射追尾光48は集光されつつ前記プリズム68及び前記ダイクロイック膜71を透過し、前記受光センサ69に受光される。
【0088】
この時、前記ダイクロイック膜71に入射する前記反射追尾光48は平行光束ではなく、前記ダイクロイック膜71は前記追尾受光光軸53に対して直角ではない。この為、前記反射追尾光48は、光束の面内位置によって前記ダイクロイック膜71に対する入射角θが異なる。従って、前記ダイクロイック膜71を透過した前記反射追尾光48は、面内位置毎に位相差を生じ、図3(B)に示される様な、干渉縞を有する追尾像72が前記受光センサ69に結像する。
【0089】
通常、重心計算又は図心計算により前記追尾像72の中心が演算される。然し乍ら、前記追尾像72が干渉縞を有する場合、演算精度が低下し、中心の位置精度も低下する為、追尾精度が低下する。画像処理により干渉縞の影響を補正することも可能であるが、画像処理では干渉縞による位置精度の誤差を完全に補正することは困難である。又、干渉縞の補正の為に、個々の機械毎に干渉縞を測定し、プリズムのダイクロイック膜の製造時のバラツキにより生じる干渉縞の模様の個体差を校正することも可能であるが、組立てコストが増大する。
【0090】
そこで、本実施例は、前記受光プリズム44の透過面及び反射面に対する入射角、及び膜の位相設定を調整し、前記反射追尾光48に生じる位相差の低減を図っている。
【0091】
図4は、前記受光プリズム44の展開図を示している。尚、図4中、前記反射追尾光48のうち、前記第1面58aに対して入射角が0°となる(直交する)光線を主光線73としている。又、前記反射追尾光48のうち、図4中紙面に対して最も上側の光線をY+光線74とし、図4中紙面に対して最も下側の光線をY-光線75としている。即ち、前記Y+光線74と前記Y-光線75は、前記反射追尾光48のうち、前記主光線73と最も位相差が大きくなる光線となっている。
【0092】
又、図4中、前記主光線73の入射面である前記第1面58aAは、前記主光線73の光軸に対して直交する平面となっている。又、1回目の反射面である前記第2面58b、2回目の反射面である前記第1面58aB、透過面である前記ダイクロイック膜46(前記第4面58d、前記第1面59a)は、前記主光線73の光軸と直交する平面に対して正の傾きを有し、前記第1面58aAに対しても正の傾きを有している。又、3回目の反射面である前記第3面58c及び4回目の反射面である前記第1面58aCは、前記主光線73の光軸と直交する平面に対して負の傾きを有し、前記第1面58aAに対しても負の傾きを有している。
【0093】
前記反射追尾光48は、前記追尾受光素子54に受光される過程で、前記第2面58b、前記第1面58a、前記第3面58c、前記第1面58aで順次反射され、前記ダイクロイック膜46を透過する。即ち、前記反射追尾光48は、前記受光プリズム44内で5回反射面又は透過面を経由する。又、前記反射追尾光48は、各反射面及び透過面を入射する毎に位相差が合算され、前記追尾受光素子54には合計された位相差を有する前記追尾像72が結像される。
【0094】
図5は、前記Y+光線74のp偏光とs偏光、前記Y-光線75のp偏光とs偏光が、前記受光プリズム44の各反射面及び透過面に入射した際の前記主光線73を基準とした相対位相差と、各反射面及び透過面での位相差を合算した合計位相差(位相の角度変化)を示している。
【0095】
尚、図5中、ミラー1回目は1回目の反射である前記第2面58bでの反射を示し、ミラー2回目は3回目の反射である前記第3面58cでの反射を示す。前記第2面58bと前記第3面58cは共に鏡面加工が施されているので、同一又は類似膜質の反射面となる。又、反射防止膜1回目は2回目の反射である前記第1面58aでの全反射を示し、反射防止膜2回目は、4回目の反射である前記第1面58aでの全反射を示す。2回目の反射と4回目の反射は共に前記第1面58aでの反射となるので、2回目と4回目は同一又は類似膜質の反射面となる。
【0096】
図5に示される様に、反射面に於いては、前記主光線73の入射角よりも入射角が大きい場合、p偏光の光とs偏光の光はそれぞれ前記主光線73に対して負の位相差を生じる。又、前記主光線73の入射角よりも入射角が小さい場合、p偏光の光とs偏光の光はそれぞれ前記主光線73に対して正の位相差を生じる。一方で、透過面に於いては、前記主光線73の入射角よりも入射角が大きい場合、p偏光の光とs偏光の光はそれぞれ前記主光線73に対して正の位相差を生じる。又、前記主光線73の入射角よりも入射角が小さい場合、p偏光の光とs偏光の光はそれぞれ前記主光線73に対して負の位相差を生じる。
【0097】
例えば、前記主光線73の光軸と直交する平面に対して正の傾きを有する反射面である前記第2面58bに於いては、前記Y+光線74が前記主光線73に対して負の位相差を生じ、前記Y-光線75が前記主光線73に対して正の位相差を生じる。又、前記主光線73の光軸と直交する平面に対して負の傾きを有する反射面である前記第3面58cに於いては、前記Y+光線74が前記主光線73に対して正の位相差を生じ、前記Y-光線75が前記主光線73に対して負の位相差を生じる。
【0098】
一方で、前記主光線73の光軸と直交する平面に対して正の傾きを有する透過面である前記ダイクロイック膜46に於いては、前記Y+光線74が前記主光線73に対して正の位相差を生じ、前記Y-光線75が前記主光線73に対して負の位相差を生じる。
【0099】
更に、前記主光線73の入射角を基準とした入射角の大きさと、反射面又は透過面の膜質によって位相差が変化する。前記受光プリズム44に於いては、同一膜質であり、傾きの正負が異なる1組の反射面を2組有している。
【0100】
上記した様に、反射面及び透過面が、入射角0°で前記主光線73が入射する前記第1面58a(前記主光線73の光軸に対して直交する平面)に対して正の傾きを有するか負の傾きを有するかにより、前記反射追尾光48は前記主光線73に対して正の位相差又は負の位相差を生じる。即ち、反射面又は透過面が前記第1面58aに対して正の傾きを有する場合に生じる位相差と、反射面又は透過面が前記第1面58aに対して負の傾きを有する場合に生じる位相差とは正負が逆となる。従って、正負の傾きを有する反射面及び透過面を少なくとも1つずつ設けることで、前記反射追尾光48に生じる前記主光線73を基準とした位相差を相殺することができる。
【0101】
ここで、前記主光線73、前記Y+光線74、前記Y-光線75のp偏光に於ける合計位相差(位相の角度変化)をそれぞれδp0、δp+、δp-とし、前記主光線73、前記Y+光線74、前記Y-光線75のs偏光に於ける合計位相差をそれぞれδs0、δs+、δs-とした場合、δp0、δp+、δp-、δs0、δs+、δs-が以下の2つの式を満たす時、即ち所定の閾値の範囲内となる時、前記追尾像72に干渉縞が生じないことがわかっている。
Δp=max{δp0、δp+、δp-}-min{δp0、δp+、δp-}≦180°-(式1)
Δs=max{δs0、δs+、δs-}-min{δs0、δs+、δs-}≦180°-(式2)
【0102】
前記受光プリズム44に於いては、Δp=max{δp0、δp+、δp-}-min{δp0、δp+、δp-}=45°であり、Δs=max{δs0、δs+、δs-}-min{δs0、δs+、δs-}=49°となるので、所定の閾値の範囲内、即ち180°以内となり、(式1)と(式2)の両方を満たす。
【0103】
従って、前記反射追尾光48を前記受光プリズム44内で複数回内部反射させ、前記ダイクロイック膜46を透過させた場合であっても、干渉縞のない前記追尾像72を得ることができる。
【0104】
上述の様に、第1の実施例では、前記受光プリズム44が前記第1プリズム58と前記第2プリズム59と前記第3プリズム60の3つのプリズムから構成され、前記第1プリズム58と第2プリズム59とにより、前記反射測距光47と前記反射追尾光48の入射面(前記第1面58a)と反対側の面に、前記第1面58aに向って窪んだ凹部63を形成している。
【0105】
又、受光部である前記受光ファイバ39は前記凹部63に設けられると共に、前記第2面58bに沿って上方に延出され、更に前記受光プリズム44の奥側を通る様前記第1面58a側へと屈曲されている。
【0106】
従って、前記受光ファイバ39の曲げ半径に拘らず、該受光ファイバ39が前記受光プリズム44から前記入射面の反対側へと突出することがないので、前記走査ミラー15で反射された前記受光光軸41方向(図2中紙面に対して左右方向)の前記受光光学系49の長さを短くすることができ、前記受光光学系49及び前記測量装置1の小型化を図ることができる。
【0107】
又、前記第2面58bは、前記ダイクロイック膜46で反射された前記受光光軸41と平行又は略平行となっており、前記受光ファイバ39も前記第2面58bと平行又は略平行に上方に延出している。従って、前記受光ファイバ39が前記受光プリズム44に接触することがなく、前記受光ファイバ39が前記凹部63より前記反射測距光47と前記反射追尾光48の入射面の反対側に突出することもなく、前記受光光学系49を小型化することができる。更に、前記第2面取り部62、前記受光ファイバ39、前記センサ基板66の右端とを略同一平面内へと配置することができるので、前記受光光学系49を更に小型化することができる。
【0108】
又、前記受光プリズム44に於いて、前記反射追尾光48の前記主光線73の光軸と直交する平面(前記第1面58a)に対する傾斜を調整し、該平面に対して正の傾きと負の傾きを有する面を少なくとも1つずつ設けることで、反射又は透過の際に生じる前記反射追尾光48の位相差を相殺することができる。
【0109】
従って、前記反射追尾光48に生じる位相差を、干渉縞が出ない範囲まで低減させることができ、干渉縞のない前記追尾像72を得ることができるので、該追尾像72の重心の演算精度を向上させることができると共に、追尾精度を向上させることができる。
【0110】
又、前記受光プリズム44内の各反射面及び透過面に於いて、前記主光線73と直交する平面に対して正の傾きを有する面と負の傾きを有する面のうちの少なくとも1つずつが、反射面及び透過面の膜質が同一又は類似となっているので、合計位相差の調整難易度を低減することができる。
【0111】
又、前記反射測距光47と前記反射追尾光48は、前記受光プリズム44により同一平面内で複数回内部反射された後、前記受光ファイバ39と前記追尾受光素子54に受光される様構成されている。従って、前記受光光軸41方向(紙面に対して左右方向)の光路長を短くすることができ、前記距離測定部19の小型化が図れると共に、前記測量装置1の軽量化を図ることができる。
【0112】
又、前記反射測距光47及び前記反射追尾光48の光路外に位置する前記受光プリズム44の角部に面取り加工を施し、前記第1面取り部61と前記第2面取り部62を形成している。又、前記第3プリズム60の第3面60cに前記反射追尾光48の光束径と同等又は略同等の大きさの前記バンドパスフィルタ64を設け、前記第3面60cの前記バンドパスフィルタ64が設けられていない部分、即ち前記反射追尾光48の光路外には反射防止塗料が塗布されている。
【0113】
従って、前記受光プリズム44内を通過する迷光を、前記第1面取り部61、前記第2面取り部62、前記バンドパスフィルタ64で遮断することができるので、迷光が前記受光ファイバ39や前記追尾受光素子54に受光され、測距精度や追尾精度の低下を防止することができる。
【0114】
尚、第1の実施例では、前記受光プリズム44は前記反射追尾光48を4回反射させ、1回透過させる構成であり、前記主光線73に直交する平面に対して正又は負の傾きを有する反射面を2つずつ有している。又、第1の実施例では、膜質が同一且つ傾斜方向が異なる反射面を2組有している。
【0115】
一方で、前記受光プリズム44は、前記主光線73に直交する平面に対して正負の傾きを有する反射面が少なくとも1つずつあればよい。例えば、前記主光線73に直交する平面に対して正負の傾きを有する反射面が1つずつであってもよい。或は、前記主光線73に直交する平面に対して正の傾きの反射面が1つ、負の傾きの反射面が2つ以上であってもよいし、前記主光線73に直交する平面に対して正の傾きの反射面が2つ以上、負の傾きの反射面が1つであってもよい。更に、反射面や透過面の膜質は必ずしも同一又は類似である必要はない。
【0116】
即ち、前記受光プリズム44以外にも、前記反射追尾光48が反射面や透過面を順次反射又は透過する過程で合算された合計位相差が、所定の閾値の範囲内となる受光プリズムであれば、本実施例の前記受光光学系49に適用可能である。
【0117】
又、前記受光プリズム44の反射面や透過面に、位相差を抑制する為の膜を別途蒸着してもよい。該膜の蒸着により前記反射追尾光48の位相差を更に低減でき、追尾精度を更に向上させることができる。
【0118】
次に、図6図7に於いて、本発明の第2の実施例について説明する。尚、図6図7中、図2図4中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0119】
第2の実施例に於ける受光プリズム77は、第1プリズム79を有し、該第1プリズム79の第1面79aに入射角0°で入射した反射測距光47及び反射追尾光48を、第2面79b、前記第1面79a、第3面79cで順次同一平面内で反射させた後、第4面79dを介して前記第1プリズム79と接合された第2プリズム81の第1面81aに入射させる。
【0120】
即ち、前記受光プリズム77は、前記反射測距光47と前記反射追尾光48を第1プリズム79内で3回内部反射させ、前記第2プリズム81に入射させる。その後、前記受光プリズム77は、前記反射測距光47を前記第2プリズム81と第3プリズム82の接合面である第3面81cと第1面82aに設けられた前記ダイクロイック膜46に入射させる様構成される。前記反射測距光47は、分離面としてのダイクロイック膜78で反射され、受光ファイバ39で受光される。又、前記反射追尾光48は、前記ダイクロイック膜78、前記第3プリズム82、前記バンドパスフィルタ64を透過し、前記追尾受光素子54に受光される。
【0121】
尚、第1の実施例と同様、前記第1面79aには全面に亘って反射防止膜(ARコート)が設けられ、前記第2面79bと前記第3面79cは、全面に亘って鏡面加工が施されたミラーとなっている。
【0122】
第2の実施例に於いても、前記反射測距光47と前記反射追尾光48の入射面(前記第1面79a)と反対側の面に於いて、前記第1プリズム79は前記第2プリズム81との接合面を起点として下方から上方に向って前記入射面から離反する方向に傾斜する面(前記第2面79b)を有し、前記第2プリズム81は前記第1プリズム79との接合面を基点として上方から下方に向って前記入射面から離反する方向に傾斜する面(第5面81e)を有する。
【0123】
従って、前記第2面79bと前記第5面81eとにより、前記受光プリズム77に前記第1面79a側に窪んだ凹部83が形成される。
【0124】
又、第2の実施例に於いても、第1の実施例と同様に、前記凹部83に前記受光ファイバ39の受光面が配置され、該受光ファイバ39は上方に延出し、前記第1面79a側に屈曲される。一方で、第2の実施例では、前記ダイクロイック膜78で反射された受光光軸41は、前記第2面79bと平行ではなく、前記受光光軸41は前記第2面79bから離反する方向に傾斜している。
【0125】
然し乍ら、前記受光ファイバ39の最も突出する部分は前記受光プリズム77の斜め上方に位置するので、前記受光プリズム77から前記第1面79aに対して反対側への突出量は、前記受光ファイバ39の曲げ半径よりも小さくなる。従って、前記受光光学系49の受光光軸41方向の大きさ(水平方向の大きさ)を小さくすることができ、距離測定部19及び測量装置1の小型化を図ることができる。
【0126】
図7に示される様に、前記受光プリズム77は、前記反射測距光47の主光線73の光軸と直交する平面(第1面79aA)に対して正の傾きを有する反射面である前記第2面79b及び第1面79aBと、前記主光線73の光軸と直交する平面に対して負の傾きを有する反射面である第3面79cとを有している。
【0127】
第2の実施例に於いても、前記受光プリズム77は、前記主光線73の光軸と直交する平面に対して正の傾きを有する反射面と、負の傾きを有する反射面とを少なくとも1つずつ有している。従って、前記反射追尾光48が前記第2面79bと前記第1面79aBでの反射の際に生じた負の位相差を、前記第3面79cで反射する際に生じる正の位相差で相殺し、合計位相差(位相の角度変化)を所定の閾値以下まで低減することができるので、干渉縞のない追尾像72(図3(B)参照)を得ることができ、追尾精度を向上させることができる。
【0128】
又、前記主光線73の光軸と直交する平面に対して正の傾きを有する前記第2面79bと、負の傾きを有する前記第3面79cは、共に鏡面加工が施されたミラーとなっている。即ち、前記第2面79bと前記第3面79cが逆向きの傾きを有する同一又は類似膜仕様面の反射面となっているので、合計位相差の調整の難易度を低減することができる。
【符号の説明】
【0129】
1 測量装置
15 走査ミラー
17 演算制御部
19 距離測定部
23 測距光射出部
24 測距光受光部
25 追尾光射出部
26 追尾光受光部
35 測距光
36 追尾光
39 受光ファイバ
44 受光プリズム
46 ダイクロイック膜
47 反射測距光
48 反射追尾光
63 凹部
77 受光プリズム
78 ダイクロイック膜
83 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7