(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116478
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
G05B 19/18 20060101AFI20240821BHJP
B23Q 11/08 20060101ALI20240821BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
G05B19/18 X
B23Q11/08 Z
B23Q17/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022114
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100125737
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】幸村 数善
(72)【発明者】
【氏名】金城 智久
(72)【発明者】
【氏名】八田 博之
【テーマコード(参考)】
3C011
3C029
3C269
【Fターム(参考)】
3C011DD02
3C029EE01
3C269AB02
3C269AB31
3C269BB12
3C269CC13
3C269CC19
3C269MN27
3C269MN28
3C269PP02
(57)【要約】
【課題】アクチュエータの動作傾向を捉えた予防保全機能を備える工作機械を提供すること。
【解決手段】アクチュエータの伸縮動作に従い所定の働きを行うアクチュエータ駆動部を含む各種駆動部を、制御装置によって自動制御することでワークに対する所定の加工を実行するものであって、前記制御装置は、工場内温度と前記アクチュエータの動作回数とを考慮することにより、前記アクチュエータの動作時間に対応した公差基準データを作成し、実際に測定された前記アクチュエータの動作時間と前記公差基準データとの比較により、当該動作の異常を判定する予防保全部を備えた工作機械。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータの伸縮動作によって所定の働きを行うアクチュエータ駆動部を含む各種駆動部を、制御装置によって自動制御することでワークに対する所定の加工を実行する工作機械であって、
前記制御装置は、工場内温度と前記アクチュエータの動作回数とを考慮することにより、前記アクチュエータの動作時間に対応した公差基準データを作成し、実際に測定された前記アクチュエータの動作時間と前記公差基準データとの比較により、当該動作の異常を判定する予防保全部を備えた工作機械。
【請求項2】
前記制御装置は、前記アクチュエータの伸長動作および収縮動作の一方または双方の動作時間に対応した前記公差基準データを作成して動作の異常を判定するものである請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記制御装置は、工場内温度と前記アクチュエータの動作回数とを考慮することにより算出した前記アクチュエータの基準時間に対し、一定の時間差を許容することにより前記公差基準データを作成する請求項1または請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記制御装置は、前記予防保全部を一または二以上の前記アクチュエータ駆動部に対応して備えたものである請求項1または請求項2に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータを備えた駆動部についてその動作の傾向を正確に捉えた予防保全機能を備える工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
NC旋盤やマシニングセンタなどの工作機械は、コンピュータの数値制御によってワーク加工における一連の駆動制御が行われる。そうした工作機械に故障が生じた場合には部品交換などが必要であるが、駆動部の異常停止が生じてしまうことがあり、そのような場合には機器の交換などが大掛かりなものになってしまうことがある。そのため、工作機械が異常停止してしまう前に、その異常を生じさせる状態を予め検知し、それに対処できるようにする予防保全が必要である。そこで、下記特許文献1には異常を検知することを可能にする予防保全機能を備えた工作機械が開示されている。
【0003】
同文献の従来例は、例えば工具を支持する主軸やATCシャッタなど工作機械の駆動部に振動センサが取り付けられている。工作機械の稼働中はその振動センサによって振動が検出され、予め取得されている正常時の振動データとの比較が行われる。その結果、異常判定部によって工作機械の異常の有無が判定される。工作機械の稼働中は、こうした振動検出部のほか、音検出部やサーボモータ電流値検出部で振動、音波、サーボモータ電流値も測定される。そうした測定データも異常判定部で基準データ等との比較が行われ、予め設定された閾値を超えていれば異常が発生していると判定される。そして、異常発生時には工作機械の駆動が停止され、警告灯を点灯させるなどの警告が発せられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来は、振動検出のほか音検出やサーボモータ電流値検出によって機器の異常を判断するように構成されたものであるが、エアシリンダや油圧シリンダなどのアクチュエータに関して適応できるものではない。しかし、工作機械にはアクチュエータの往復動作を利用した駆動装置が多く設けられており、稼働中の移動判断として無視できるものではなくその予防保全が必要である。また、アクチュエータは、環境の変化に影響を受けるなど一定の条件で判断することができないため、動作傾向を捉える必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、アクチュエータの動作傾向を捉えた予防保全機能を備える工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る工作機械は、アクチュエータの伸縮動作に従い所定の働きを行うアクチュエータ駆動部を含む各種駆動部を、制御装置によって自動制御することでワークに対する所定の加工を実行するものであって、前記制御装置は、工場内温度と前記アクチュエータの動作回数とを考慮することにより、前記アクチュエータの動作時間に対応した公差基準データを作成し、実際に測定された前記アクチュエータの動作時間と前記公差基準データとの比較により、当該動作の異常を判定する予防保全部を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
前記構成によれば、制御装置の予防保全部がアクチュエータの動作時間から当該アクチュエータの異常判定を行うものであるが、特にエアなどの作動流体が温度変化によって受ける影響および、アクチュエータ自体が伸縮を繰り返すことにより受ける影響といった動作傾向を捉え、比較対象とする公差基準データを作成するので、正確な異常判定による予防保全が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】複合加工機の一実施形態の主要な構造を示した斜視図である。
【
図2】複合加工機の一実施形態の主要な構造を示した側面図である。
【
図3】分離シャッタ15の構造を示した斜視図である。
【
図4】分離シャッタ15の構造を示した側面図である。
【
図5】実施形態の複合加工機を制御する制御システムを示したブロック図である。
【
図6】エアシリンダの伸長動作における圧力変化をグラフで示した図である。
【
図7】エアシリンダが伸長動作する場合の予防保全プログラムの流れを示したフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る工作機械の一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。本実施形態の工作機械は、NC旋盤とマシニングセンタの両方の機能を持った複合加工機である。
図1および
図2は、本実施形態の複合加工機の主要な構造を示した斜視図および側面図である。この複合加工機1は、把持したワークWに回転を与える第1ワーク主軸装置3および第2ワーク主軸装置4と、ワークWの加工に対応した複数の工具Tを有する第1タレット装置5および第2タレット装置6とが、それぞれ左右対称に配置された対向2軸旋盤である。また、複合加工機1は、それに加えて旋盤では難しい加工を実行するための工具主軸装置2が機体中央に設けられている。
【0011】
第1および第2ワーク主軸装置3,4(以下、両装置共通の構成を説明する場合はワーク主軸装置3,4とする)は同じ構造であり、ワーク主軸装置3,4は、円筒形状の主軸台22にスピンドルが回転自在に組み込まれ、そこに加工対象であるワークWを把持するチャック機構21が組付けられている。スピンドルにはスピンドルモータ23の回転が伝達され、チャック機構21に把持されたワークWに対する加工時の位相決めや、所定速度での回転が与えられるようになっている。
【0012】
ワーク主軸装置3,4は、主軸台22やスピンドルモータ23が主軸スライド24に搭載され、その主軸スライド24がベッド10上を移動するよう構成されている。特に、スラント型をしたベッド10は、前側に低くなるよう傾斜した前側傾斜面11が形成され、そこに主軸スライド24が設けられている。本実施形態では、機体幅方向で且つ水平な主軸の中心線と平行な方向をZ軸とし、前側傾斜面11にはZ軸方向に沿って2本のガイドレール25が固定されている。ワーク主軸装置3,4は、そのガイドレール25に組み付けられた主軸スライド24が、Z軸サーボモータとボールネジ機構によってZ軸方向に移動するよう構成されている。
【0013】
次に、第1タレット装置5および第2タレット装置6(以下、両装置共通の説明する場合はタレット装置5,6とする)は、複数の工具T(タレット工具)の中から該当するものを旋回割出しによって選択し、ワークWに対する切削など所定の加工を行うものである。タレット装置5,6は、円盤状のタレット27に複数の工具Tが円周方向に等間隔で取り付けられ、割出し用サーボモータ28の回転制御によって、任意の工具Tを円周上の加工位置に位置決めできるよう構成されている。
【0014】
タレット装置5,6は、工具Tを加工位置へと移動させるため、タレット27をZ軸に直交するXY平面上であって、水平方向および鉛直方向に対して45度の角度をもったYL軸方向とXL軸方向に移動するよう構成されている。ベッド10の後側傾斜面12にYL軸ガイドレール31が固定され、略三角形状のベーススライド32が摺接可能に組み付けられ、そのベーススライド32に設けられたXL軸ガイドレール33に対してタレット27が摺接可能に組み付けられている。ベーススライド32およびタレット27は、それぞれサーボモータとボールネジ機構とによって、YL軸方向またはXL軸方向の往復移動が可能な構成となっている。
【0015】
次に、工具主軸装置2は、主軸ヘッド35内に主軸用サーボモータや工具スピンドルが内蔵され、その下端部に設けられた工具装着部に対して、図示しない自動工具交換装置に収められた様々な工具T(主軸ヘッド工具)の取り替えが行われるようになっている。主軸ヘッド35は、Y軸と平行な回転軸によって回転するよう主軸スライド36に取り付けられ、回転伝達機構を介してモータの回転が伝達されるよう構成されている。
【0016】
工具主軸装置2は、主軸ヘッド35を移動させる構成として、ベーススライド37が水平なY軸方向のガイドレールに沿ってベッド10上を摺接するよう構成され、そのベーススライド37の前側に設けられた鉛直なX軸方向のレール部に主軸スライド36が摺接可能に組付けられている。そして、ベーススライド37と主軸スライド36とは、それぞれサーボモータとボールネジ機構とによってY軸方向またはX軸方向の往復移動が可能な構成となっている。
【0017】
複合加工機1は、更に工具主軸装置2に対する工具の交換を行う自動工具交換装置および、第1ワーク主軸装置3および第2ワーク主軸装置4へとワークWを搬送するワーク自動搬送装置が設けられている。そうした複合加工機1は、機体カバーによって全体が覆われ、機内の空間は、
図1の一点鎖線で示すように2枚の分離シャッタ15によって仕切られている。2枚の分離シャッタ15は、工具主軸装置2を挟んだ左右両側において対称的に配置され、閉じることで第1ワーク主軸装置3側が第1加工室として、第2ワーク主軸装置4側が第2加工室として構成されるようになっている。更に、2枚の分離シャッタ15が閉じることにより、加工中であっても工具主軸装置2が影響を受けずに工具交換が可能な空間が構成されるようになっている。
【0018】
図3および
図4は、分離シャッタ15の構造を示した斜視図と側面図である。複合加工機1にはベッド10にコの字形のシャッタフレーム51が固定され、ガイドローラ52を介して分離シャッタ15が機体前後方向に移動できるように支えられている。ベッド10側には支持用ブラケット53が固定され、鉛直に起立した支持プレート54には2個のガイド部材55がY軸方向の2箇所に固定されている。一方、分離シャッタ15側にはガイドレール56が固定され、そのガイドレール56が2箇所のガイド部材55に対して摺接可能に嵌め込まれている。
【0019】
分離シャッタ15は、下側で摺接するガイドレール56と上側で転動するガイドローラ52とによって支持され、起立した姿勢が維持された状態でY軸方向の水平な移動が可能になっている。そうした分離シャッタ15には、支持用金具57に固定されたエアシリンダ58のピストンロッド581が連結され、その伸縮動作によって開閉可能になっている。すなわち、
図3において実線で示す位置に退避した開状態と、一点鎖線(
図4の実線)で示す位置まで前進した閉状態とに切り換えられるようになっている。
【0020】
図5は、複合加工機1を制御する制御システムを示したブロック図である。複合加工機1の制御装置7は、マイクロプロセッサ(CPU)41、ROM42、RAM43、不揮発性メモリ44がバスラインを介して接続されている。CPU41は、制御装置全体を統括制御するものであり、ROM42にはCPU41が実行するシステムプログラムや制御パラメータ等が格納され、RAM43には一時的な計算データや表示データ等が格納される。
【0021】
不揮発性メモリ44にはCPU41が行う処理に必要な情報が記憶され、複合加工機1のシーケンスプログラムなどが格納されている。特に、本実施形態にはアクチュエータの異常状態を報知するための予防保全プログラムが格納されている。制御装置7にはI/Oポート45が設けられ、第1及び第2ワーク主軸装置3,5、第1および第2タレット装置4,6、自動工具交換装置8およびワーク自動搬送装置9など、各装置の駆動モータが各々ドライバ回路47を介して接続されている。
【0022】
複合加工機1は、複数の駆動部において動作が繰り返される。そして、これらの駆動部が設定通りに動作することによって安定した精度の高い加工が実行される。しかし、工作機械は部品の経年劣化などもあり、動作不良を引き起こしてしまうような故障を避けることはできない。そこで、前記従来例では稼働中のサーボモータから電流値を検出するなどし、基準データとの比較によって振動異常などの判定が行われている。この点、本実施形態の複合加工機1でも、前述した分離シャッタ15などに使用される伸縮可能なアクチュエータを対象とし、その異常を検知する予防保全プログラムが制御装置7に格納されている。
【0023】
複合加工機1のアクチュエータにはエアシリンダ58以外にも例えば、工具主軸装置2に対する工具の交換を行う自動工具交換装置に、エアシリンダの伸縮を利用することで対象とする工具を段階的に移動させる複数の駆動装置が設けられている。また、複合加工機1に使用するアクチュエータにはエアシリンダ以外に、例えばワーク主軸装置3,4のチャック機構21は、油圧シリンダによってワークの把持動作が行われる。こうして、エアシリンダや油圧シリンダのような伸縮可能なアクチュエータが複数使用されている複合加工機1は、個々のアクチュエータについても同様の予防保全機能が施されている。
【0024】
エアシリンダ58の異常には例えばピストンパッキンの劣化があり、シール性の低下によって動作不良を引き起こされる。従って、エアやオイルなどの作動流体の漏れが生じると、ピストンが所定の流体圧によって設定通りの動作が行えず、動作時間が長くなってしまう。しかし、エアシリンダ58などアクチュエータの動作変化は、部品の劣化だけではなく、ほかの要因を無視しては正確な異常検出を行うことはできない。アクチュエータの動作は、それ自体の動作回数や工場内の温度変化に影響を受け、伸長動作時間や収縮動作時間が変化するからである。
【0025】
例えば、エアの温度が上がるとシリンダ内ではエアの膨張によって圧力が上昇する。そのため、ピストンに対するエア圧が大きくなってしまい、それに比例してピストンの移動速度が増大することになる。また、動作回数が増えた場合にもアクチュエータの動作が初期に比べて滑らかになり、ピストンの移動速度が増大する。従って、本来なら部品の劣化などで動作時間が長くなってしまうはずが、状況の変化によって正常な動作時間と判断されてしまうようなおそれがある。
【0026】
ここで、
図6は、エアシリンダ58の伸長動作(分離シャッタ15を閉じる場合)における圧力変化をグラフで示したものであり、工場内温度と動作回数に差のある2つの測定データが表示されている。実線で示すグラフAは、工場内が低温時の環境で最初の動作が測定されたものであるのに対し、一点鎖線で示すグラフBは工場内温度が時間とともに高くなり、所定回数の動作が繰り返された時点で測定されたものである。両者を比較すると、分離シャッタ15が閉じるまでの時間(エアシリンダ58へエアを供給開始してからエア圧がPxに達するまでの時間)TL,THに差が生じることが分かった。
【0027】
このことから、アクチュエータの動作時間が工場内温度や動作回数に影響を受けていることが分かる。そこで、本実施形態では、個々のアクチュエータの動作時間について、そのアクチュエータの動作回数や工場内温度を基に動作傾向をとらえ、そこから導出したデータにより異常判定のための基準時間を決定するようにした。基準時間は、所定の駆動制御に際して、該当するアクチュエータが一定の条件(工場内温度、動作回数)の下で伸長動作(または収縮動作)する場合に要する時間である。例えば、エアシリンダ58の場合は、その伸長動作によって分離シャッタ15を閉じるのに要する時間である。
【0028】
本願発明者は、アクチュエータの基準時間を動作回数および工場内温度との因果関係に基づき次のように設定することとした。先ず、工場内温度がy1度であって動作回数1で測定された動作時間が、該当するアクチュエータの基準時間T11=X(y1)とする。そして、この基準時間T11を基に工場内温度やアクチュエータの動作回数に応じた基準時間が適宜算出される。
【0029】
工場内温度がy1度のまま動作回数がmになった場合の基準時間は、Tm1=X(y1)xB(係数Bは1以下の数値でありmに反比例した数値で下限有り)によって求められる。一方、工場内温度がyn度(>y1度)になった動作回数1の動作時間は、T1n=X(yn)=X(y1)xA(係数Aは1以下の数値でありynに反比例した数値で下限有り)によって求められる。そして、工場内温度がyn度で動作回数mの動作時間は、Tmn=X(y1)xAxBによって求められる。
【0030】
ところで、エアシリンダ58を含む各アクチュエータの伸長動作および収縮動作は、所定条件下で基準時間と必ず一致するわけではく多少の誤差が生じる。そのため、動作の異常判断は、
図6に示す基準時間T11,Tmnなどに対し、一定の時間差を許容した公差基準データ(K11,Kmn)で行われる。この公差基準データは、作動流体であるエアやオイル、アクチュエータの大きさなどの影響を考慮して設定される。そして、
図6には、エアシリンダ58の伸縮動作が示されているが、本実施形態の予防保全プログラム48(
図5参照)では伸縮動作の両方向であってもよく、また一方向だけであってもよい。なお、エアシリンダ58を含むアクチュエータの伸長動作時間や収縮動作時間は、個々のアクチュエータに設けられた検出センサなどに基づいて測定される。
【0031】
続いて
図7は、分離シャッタ15を閉じる場合(エアシリンダ58が伸長動作する場合)の予防保全プログラム48の流れを示したフローチャート図である。先ず、エアシリンダ58の動作回数について確認が行われる(S101)。複合加工機1の電源が入れられることによりカウントが開始され、エアシリンダ58の最初の駆動制御は動作回数1である(S101:YES)。そして、工場内温度が測定されてその値が記録される(S102)。一方、動作回数が2以上の場合には(S101:NO)、その都度、工場内温度の変化が確認される(S103)。
【0032】
工場内温度に変化があった場合には(S103:YES)、その記録済みの温度が書き換えられ(S102)、温度変化がなければ(S103:NO)、既に記録されている温度のまま維持される。そして、エアシリンダ58の駆動制御によって分離シャッタ15が閉じられる場合、エア圧の供給開始(バルブの開信号発信)からセンサの検出によってストローク端に達するまでの動作時間Tmが測定される(S104)。
【0033】
また、エアシリンダ58の動作に合わせて、記録された工場内温度ynとカウントされた動作回数mとに従って公差基準データKmnが算出される(S105)。公差基準データKmnは、前述したように工場内温度ynや動作回数mに応じて算出される。そして、動作時間Tmが公差基準データKmn内に含まれているか否かの確認が行われる(S016)。
【0034】
動作時間Tmが公差基準データKmnの範囲内に入っていれば(S106:YES)、エアシリンダ58の動作は正常であり、エアシリンダ58の動作回数mが「1」だけカウントアップされ(S107)、本処理が終了する。しかし、動作時間Tmが公差基準データKmnの範囲を超えてしまっていれば(S106:NO)、機体の操作表示装置38への表示や音声などによる異常警告が行われ(S108)、その後に本処理が終了する。よって、操作表示装置38の表示から該当するアクチュエータ(エアシリンダ58)が作業者により特定され、部品交換などの所定の保全作業が行われる。
【0035】
従って、本実施形態によれば、従来の工作機械がアクチュエータの異常をその動作時間と一定の基準データだけで判定していたのに対し、アクチュエータの動作に影響を与える動作回数や工場内温度の変化を考慮するようにしたため、アクチュエータの異常を正確に判定することが可能になる。また、このような効果を従来の工作機械に対して構造的な設計変更を行うことなく達成することが可能になる。
【0036】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、複合加工機1のアクチュエータ駆動部として分離シャッタ15を例に挙げて説明したが、そのほかの構造も対象とすることができる。
また、前記実施形態では、工作機械の一例として複合加工機1を例に挙げて説明したが、他のタイプの工作機械であってもよい。
【符号の説明】
【0037】
1…複合加工機 2…工具主軸装置 3…第1ワーク主軸装置 4…第2ワーク主軸装置 5…第1タレット装置 6…第2タレット装置 7…制御装置 15…分離シャッタ 48…予防保全プログラム 58…エアシリンダ