(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116489
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】人員評価システムおよび人員評価方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20230101AFI20240821BHJP
【FI】
G06Q10/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022136
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】521079020
【氏名又は名称】コタエル・ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】松田 良成
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA06
5L049AA06
(57)【要約】
【課題】人員の評価に要する作業負担を軽減しつつ、人員をより適切に評価することが可能な仕組みを提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る人員評価システムは、実施予定のタスクに対応するスキルを保有する人員のスキル習熟度を示すスキル情報を記憶する人員管理データベース20と、タスクに対して予め設定された難易度別の想定作業量を示すタスク計画情報を記憶する業務計画データベース30と、人員により実施されたタスクの難易度別の実績作業量を示すタスク実績情報を記憶する業務実績データベース40とにアクセス可能な人員評価サーバ10のスキル評価部15が、業務計画データベース30に記憶されたタスク計画情報と業務実績データベース40に記憶されたタスク実績情報とに基づいて、人員のスキル習熟度を評価し、人員管理データベース20に記憶されたスキル情報を更新する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実施予定のタスクに対応するスキルを保有する人員のスキル習熟度を示すスキル情報を記憶する第1記憶部と、
前記タスクに対して予め設定された難易度別の想定作業量を示すタスク計画情報を記憶する第2記憶部と、
前記人員により実施された前記タスクの難易度別の実績作業量を示すタスク実績情報を記憶する第3記憶部と、
前記第2記憶部に記憶された前記タスク計画情報と前記第3記憶部に記憶された前記タスク実績情報とに基づいて、前記人員のスキル習熟度を評価し、前記第1記憶部に記憶された前記スキル情報を更新するスキル評価部と、を有することを特徴とする人員評価システム。
【請求項2】
請求項1に記載の人員評価システムにおいて、
複数のタスクを含む業務について、前記第1記憶部に記憶された前記スキル情報に基づいて、前記複数のタスクの各々に対して、そのタスクを実施する人員を割り当てる人員割当部を有することを特徴とする人員評価システム。
【請求項3】
請求項1に記載の人員評価システムにおいて、
複数のタスクを含む業務について、前記第3記憶部に記憶された前記タスク実績情報に基づいて、業務全体に対する各人員の貢献度を評価する貢献度評価部を有することを特徴とする人員評価システム。
【請求項4】
請求項2に記載の人員評価システムにおいて、
前記貢献度評価部は更に、前記業務に関する支給原資を各人員の貢献度に応じて分配した分配金を算出することを特徴とする人員評価システム。
【請求項5】
実施予定のタスクに対応するスキルを保有する人員のスキル習熟度を示すスキル情報を記憶する第1記憶部と、前記タスクに対して予め設定された難易度別の想定作業量を示すタスク計画情報を記憶する第2記憶部と、前記人員により実施された前記タスクの難易度別の実績作業量を示すタスク実績情報を記憶する第3記憶部とにアクセス可能なサーバにより実行される人員評価方法において、
前記サーバが、前記第2記憶部に記憶された前記タスク計画情報と前記第3記憶部に記憶された前記タスク実績情報とに基づいて、前記人員のスキル習熟度を評価し、前記第1記憶部に記憶された前記スキル情報を更新することを特徴とする人員評価方法。
【請求項6】
請求項5に記載の人員評価方法において、
前記サーバは更に、複数のタスクを含む業務について、前記第3記憶部に記憶された前記タスク実績情報に基づいて、業務全体に対する各人員の貢献度を評価することを特徴とする人員評価方法。
【請求項7】
請求項6に記載の人員評価方法において、
前記サーバは更に、前記業務に関する支給原資を各人員の貢献度に応じて分配した分配金を算出することを特徴とする人員評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人員評価システムおよび人員評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
業務上のタスクに対する各人員の割り当てや、各人員に対する業務収益の分配などを適切に行うためには、その前提として、各人員のスキルや業務実績を適切に評価する必要がある。人員を評価する技術に関し、以下のような発明が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、評価対象者による自身の第1の評価の入力を受け付ける評価受付部と、評価対象者を評価する複数の評価者による第1の評価の変更を受け付ける変更受付部と、変更後の複数の第1の評価の平均に基づいて、評価対象者の第2の評価を決定する評価決定部と、第2の評価に基づいて、評価対象者の給与を決定する給与決定部と、を有する人材管理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された発明は、評価対象者および複数の評価者から、評価対象者の評価に関する入力を受け付ける必要があるため、評価に要する全体的な作業負担が大きいという問題がある。また、評価対象者の評価またはその変更を人が入力する仕組みであるため、各人の個人的な見解や思い込みが評価に反映されることを排除できず、最終的な評価が妥当性を欠くものとなる可能性もある。
【0006】
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みて為されたものであり、人員の評価に要する作業負担を軽減しつつ、人員をより適切に評価することが可能な仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る人員評価システムは、実施予定のタスクに対応するスキルを保有する人員のスキル習熟度を示すスキル情報を記憶する第1記憶部と、前記タスクに対して予め設定された難易度別の想定作業量を示すタスク計画情報を記憶する第2記憶部と、前記人員により実施された前記タスクの難易度別の実績作業量を示すタスク実績情報を記憶する第3記憶部と、前記第2記憶部に記憶された前記タスク計画情報と前記第3記憶部に記憶された前記タスク実績情報とに基づいて、前記人員のスキル習熟度を評価し、前記第1記憶部に記憶された前記スキル情報を更新するスキル評価部と、を有することを特徴とする。
【0008】
ここで、上記の人員評価システムにおいて、複数のタスクを含む業務について、前記第1記憶部に記憶された前記スキル情報に基づいて、前記複数のタスクの各々に対して、そのタスクを実施する人員を割り当てる人員割当部を有する構成としてもよい。
【0009】
また、上記の人員評価システムにおいて、複数のタスクを含む業務について、前記第3記憶部に記憶された前記タスク実績情報に基づいて、業務全体に対する各人員の貢献度を評価する貢献度評価部を有する構成としてもよい。
【0010】
また、上記の人員評価システムにおいて、前記貢献度評価部は更に、前記業務に関する支給原資を各人員の貢献度に応じて分配した分配金を算出する構成としてもよい。
【0011】
本発明の別の態様に係る人員評価方法は、実施予定のタスクに対応するスキルを保有する人員のスキル習熟度を示すスキル情報を記憶する第1記憶部と、前記タスクに対して予め設定された難易度別の想定作業量を示すタスク計画情報を記憶する第2記憶部と、前記人員により実施された前記タスクの難易度別の実績作業量を示すタスク実績情報を記憶する第3記憶部とにアクセス可能なサーバにより実行される人員評価方法において、前記サーバが、前記第2記憶部に記憶された前記タスク計画情報と前記第3記憶部に記憶された前記タスク実績情報とに基づいて、前記人員のスキル習熟度を評価し、前記第1記憶部に記憶された前記スキル情報を更新することを特徴とする。
【0012】
ここで、上記の人員評価方法において、前記サーバは更に、複数のタスクを含む業務について、前記第3記憶部に記憶された前記タスク実績情報に基づいて、業務全体に対する各人員の貢献度を評価してもよい。
【0013】
また、上記の人員評価方法において、前記サーバは更に、前記業務に関する支給原資を各人員の貢献度に応じて分配した分配金を算出してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、人員の評価に要する作業負担を軽減しつつ、人員をより適切に評価することが可能な仕組みを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る人員評価システムの概要を示す図である。
【
図2】人員管理データベースに対する人員データの登録例を示す図である。
【
図3】業務計画データベースに登録する業務計画の設定例を示す図である。
【
図4】業務計画データベースに登録する必要スキルの設定例を示す図である。
【
図5】タスク難易度別の想定作業量と実績作業量の比較例を示す図である。
【
図6】業務全体に対する各人員の貢献度評価に使用するデータ例を示す図である。
【
図7】人員評価に係る処理の流れを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る人員評価システムの概要を示してある。本例の人員評価システムは、株式会社を含む各種の法人が実施する業務について、その業務に携わる各人員を評価するシステムである。本明細書における「法人」は、組合等の団体(法人格の有無を問わない)を含むものとする。本システムで扱う業務は、各人員が遂行すべき複数のタスクに細分化される。各タスクは、その遂行に必要なスキルを有する人員に割り当てられ、実施される。本明細書における「タスク」は、仕事、職務、役割などの概念を含む用語であり、本明細書における「スキル」は、技能、能力、技術などの概念を含む用語である。
【0017】
本システムで扱う業務は、1つの法人が単独で実施する業務だけでなく、複数の法人が共同で実施する業務も含まれる。複数の法人が共同で業務を実施する形態としては、A法人の業務をB法人が下請けとして共同で実施する形態、A法人の業務をB法人が受注して実施する形態、A法人のシステムを利用してB法人が業務の管理から評価まで実施する形態などが挙げられるが、これに限定されない。また、複数の法人が共同で業務を実施する場合、営業、業務分析・タスク分解、人員の募集・割当、業務遂行、人員評価などの各工程をどの法人が担ってもよく、各工程と法人の組み合わせは特に限定されない。本システムは、同じ業務に携わる全ての人員を、所属する法人にかかわらずに同一基準に従って評価することが可能である。
【0018】
図1に示す人員評価システムは、人員評価サーバ10と、人員管理データベース20と、業務計画データベース30と、業務実績データベース40と、支給原資データベース50と、ユーザ端末60A,60Bとを備えている。以下では、情報処理関係の業務(例えば、システム構築)に関して人員評価システムを適用した場合を例にして説明する。
【0019】
人員評価サーバ10は、人員評価システムの主要部を構成する装置であり、人員登録部11、業務計画設定部12、人員募集・割当部13、業務実績更新部14、スキル評価部15、貢献度評価部16などの機能部を有する。人員評価サーバ10は、例えば、プロセッサやメモリなどのハードウェア資源を備えたコンピュータにより実現され、所定のプログラムをメモリから読み出してプロセッサにより実行することで、上記の各機能部11~16を実装するように構成される。人員評価サーバ10は、単体の装置として実現されてもよいし、互いに連携して動作する複数台の装置によって実現されてもよい。
【0020】
人員管理データベース20、業務計画データベース30、業務実績データベース40、および支給原資データベース50は、人員評価サーバ10の処理で使用される各種のデータを記憶・管理するデータベースであり、人員評価サーバ10からアクセス可能に構成されている。これらデータベース20、30、40、50は、
図1のように別々の装置として実現されてもよいし、これらを統合した単体の装置として実現されてもよい。また、これらデータベース20、30、40、50の一部又は全てを、人員評価サーバ10と同じ装置に実装してもよい。人員評価サーバ10および各データベース20、30、40、50は、例えば、LAN(Local Area Network)やインターネット等のネットワーク上に設けられる。
【0021】
ユーザ端末60Aは、業務の全体的な管理を行う人員である管理ユーザによって使用される端末である。ユーザ端末60Bは、業務を実施する人員(例えば、ITエンジニア)である一般ユーザによって使用される端末である。以下では、ユーザ端末60Aとユーザ端末60Bを区別せずに説明する場合、単に「ユーザ端末60」と表記する。
【0022】
ユーザ端末60は、人員評価サーバ10に対して有線または無線の通信回線を通じて通信可能に接続される。ユーザ端末60は、据置型のコンピュータであってもよいし、ラップトップやタブレットなどの可搬型のコンピュータであってもよい。また、ユーザ端末60は、スマートフォンやiPhone(登録商標)などの携帯電話端末であってもよい。各ユーザは、ユーザ端末60上で動作する汎用ブラウザや専用アプリケーションなどを通じて、人員評価サーバ10によって提供されるサービスを利用することができる。
図1では、ユーザ端末60として2台のみ示しているが、本システムには任意の台数のユーザ端末60が接続され得る。
【0023】
次に、人員評価サーバ10が有する各機能部11~16について説明する。
人員登録部11は、業務を実施する人員である一般ユーザに関する人員データをユーザ端末60から受信し、人員管理データベース20に登録する処理を行う。
図2には、人員管理データベース20に対する人員データの登録例を示してある。人員データは、人員IDや氏名などの基礎的な情報だけでなく、各人員が保有するスキルに関するスキル情報を含むデータである。
図2に示す例では、スキル情報として、スキルの種類を示すスキル大項目およびスキル中項目、スキル習熟度、検証済みフラグなどが設定されている。スキル習熟度は、一例として、習熟度が高いほど大きくなるX段階の数値で表現される。検証済みフラグは、後述するように、スキル習熟度が検証済みか否かを表すフラグである。検証済みフラグには、初期値として、未検証であることを表す値(例えば、「0」)が設定される。人員管理データベース20の人員データは、後述するスキル評価部15によって更新される。
【0024】
人員データは、例えば、履歴書、職務経歴書、スキル診断書などの提出書類に基づいて生成される。本システムでは、各人員(一般ユーザ)が保有するスキルおよびその習熟度を処理に使用するので、これらの情報が記載されたスキル診断書の提出を一般ユーザに求めることが好ましいが、これに限定されない。例えば、管理ユーザが、各人員から得た履歴書および職務経歴書と、各人員と行った面談の結果とに基づいて、ユーザ端末60Aを操作してスキル診断書の情報を入力するようにしてもよい。人員データは、各一般ユーザから提出書類を受け取った管理ユーザがユーザ端末60Aを操作して生成してもよいし、各々の一般ユーザがユーザ端末60Bを操作して生成してもよい。提出書類の情報をユーザ端末60Aに入力する作業は、手入力により行ってもよいが、OCR(Optical Character Recognition)により提出書類の情報を取り込む方式を利用した方が効率的である。
【0025】
業務計画設定部12は、ユーザ端末60Aを通じて、管理ユーザから実施予定の業務に関する業務計画の設定を受け付けて、業務計画データベース30に登録する処理を行う。
図3には、業務計画データベース30に登録する業務計画の設定例を示してある。管理ユーザは、例えば、実施予定の業務の内容を精査・分析し、業務を複数のタスクに分解し、各タスクの想定作業量や期間を整理した上で、ユーザ端末60Aを操作して、業務計画に関する各種の設定データを業務計画設定部12に送信する。
図3に示す例では、実施予定の業務に含まれる各タスクに関する情報として、タスクの種類を示すタスク大項目およびタスク中項目、想定作業量(人月)、目安期間などが設定されている。なお、
図3では省略しているが、人員を募集する際の参考情報として提示できるように、他の情報(例えば、予定報酬額、獲得が期待されるスキル、等)を追加で設定してもよい。
【0026】
業務計画設定部12は、上記の設定の後、管理ユーザから各タスクの実施に要求される必要スキルの設定を受け付けて、業務計画データベース30に登録する処理を行う。
図4には、各タスクの実施に要求される必要スキルの設定例を示してある。
図4に示す例では、タスク大項目の単位で、その実施に要求される必要スキルに関する情報として、スキルの種類を示すスキル大項目およびスキル中項目、スキル習熟度などが設定されている。各タスクに対する必要スキルの設定は、管理ユーザが手作業で入力してもよいし、予め用意しておいた変換テーブルを用いて自動的に設定してもよいし、自動設定の後に管理ユーザが修正できるようにしてもよい。変換テーブルは、例えば、IPA(情報処理推進機構)により公開されている「iコンピテンシディクショナリ」に基づいて用意することができる。また、IPAにより公開されている「ITSS」(ITスキル標準)や「ETSS」(組み込みスキル標準)などの任意のスキル標準を使用することもできる。
【0027】
各タスクの実施に要求される必要スキルの設定には、タスク難易度別の想定作業量の設定も含まれる。タスク難易度は、タスクの実施に要求される専門性、タスクの特異性、タスクの新規性、事前トレーニングの必要性、必要スキルの習得に要する時間などの観点に基づいて設定することができる。
図4に示す例では、タスク中項目の単位で、タスク難易度、想定作業量(人月)などが設定されている。タスク難易度は、一例として、難易度が高いほど大きくなるY段階の数値で表現される。本例では、タスク難易度とスキル習熟度をともに10段階の数値で表現している。つまり、タスク難易度とスキル習熟度を1対1に対応させている。これは、タスクを実施するためには、その難易度と同じ又はそれ以上の習熟度のスキルが要求されることを意味している。タスク難易度やスキル習熟度は、職種やタスク粒度によっては100段階や1000段階となることも想定される。なお、本例では、説明の簡略化のために、タスク難易度とスキル習熟度の関係が分かり易いように1対1に対応させているが、これに限定されない。タスク難易度とスキル習熟度を1対1に対応させない場合には、タスク難易度とスキル習熟度の関係を表す対応表などを用いればよい。
【0028】
人員募集・割当部13は、業務計画データベース30に登録されている業務計画や必要タスクなどのデータに基づいて、業務の実施に携わることを希望する人員(一般ユーザ)を募集する処理を行う。人員の募集は任意の方式で行うことができ、例えば、インターネット上に設けた募集サイトを通じて募集する方式でもよいし、SNS(Social Networking Service)を通じて募集する方式でもよいし、各人員に対して電子メールを送付して募集する方式でもよい。また、特定の会員向けのクローズドなコミュニティ(例えば、特定の法人の社員のみがアクセスできるイントラネットなど)で募集を行ってもよい。
【0029】
人員募集・割当部13は、人員を募集した後、人員管理データベース20に登録されている各人員のスキル情報に基づいて、募集した人員に対してタスクを割り当てる処理を行う。各人員に対するタスクの割り当ては、ユーザ端末60Aを通じて管理ユーザが手作業で行ってもよいし、所定の基準に従って自動的に割り当てを行ってもよいし、自動割り当ての後に管理ユーザが修正できるようにしてもよい。所定の基準としては、一例として、タスクを実施可能な日時が限られている人員から優先的に割り当てる基準、保有するスキルの種類数が少ない人員から優先的に割り当てる基準、実施に必要なスキルを保有する人員数が少ないタスクから優先的に割り当てる基準などが挙げられる。また、タスク難易度、経済的条件(単価)、期間などに基づいてタスクの優先順位を予め設定しておき、優先順位の高いタスクから優先的に割り当てる基準を使用してもよい。更に、人員の過不足を想定して、余剰人員を含めて各タスクに割り当て可能な人員の候補をリストアップし、その中から選定した人員をタスクに割り当てるようにしてもよい。また、これら基準を複数組み合わせて使用することも可能である。
【0030】
各人員に対するタスクの割り当て結果は、業務計画データベース30に登録される。業務計画データベース30には、タスクの割り当て結果を示すタスク計画情報として、例えば、人員IDに対応付けて、その人員に割り当てられたタスクの種類、タスク難易度、想定作業量(人月)などが登録される。すなわち、タスクが割り当てられた人員毎に、
図5の左側に示すように、タスク難易度別の想定作業量が登録される。
【0031】
業務実績更新部14は、ユーザ端末60Bを通じて、各人員(一般ユーザ)からタスクの実績入力を受け付けて、業務実績データベース40に記録する処理を行う。業務実績データベース40には、タスク実績情報として、例えば、人員IDに対応付けて、その人員より実施されたタスクの種類、タスク難易度、実績作業量(人月)などが登録される。すなわち、タスクが割り当てられた人員毎に、
図5の右側に示すように、タスク難易度別の実績作業量が登録される。なお、管理ユーザが各人員のタスク実績をユーザ端末60Aにより一括入力する方式でもよい。あるいは、各人員のタスク実績を自動的に収集できる手段がある場合には、その手段を用いることで作業負担を軽減できる。
【0032】
スキル評価部15は、完了した業務に携わった各人員について、業務計画データベース30に登録されているタスク計画情報(タスク難易度別の想定作業量)と、業務実績データベース40に記録されているタスク実績情報(タスク難易度別の実績作業量)とに基づいて、スキル習熟度を評価する処理を行う。一例として、スキル評価部15は、タスク毎に、タスク難易度別の想定作業量をポイント化して合計した計画ポイント合計値と、タスク難易度別の実績作業量をポイント化して合計した実績ポイント合計値とを算出し、これらを比較することでスキル習熟度を評価する。ここでは、タスク難易度と想定作業量の乗算によりポイント化しているが、他の演算によりポイント化を行ってもよい。
【0033】
例えば、
図5に示すように、ある人員Xについて、難易度「6」のタスクを5ヶ月実施することを計画していたが、1ヶ月間は期待以上である難易度「7」相当の成果を出し、2ヶ月間は期待通りの成果を出し、2ヶ月間は期待未満である難易度「5」相当の成果を出したとする。この場合、計画ポイント合計値=6×5=30となり、実績ポイント合計値=7×1+6×2+5×2=32となる。つまり、計画ポイント合計値よりも実績ポイント合計値の方が大きい。したがって、人員Xは難易度「6」相当のタスクを実施できるスキル習熟度(=6)を有すると評価できる。ここで、仮に、実績ポイント合計値が「35」以上となった場合には、人員Xは難易度「7」相当のタスクを実施できるスキル習熟度(=7)を有すると評価される。一方、実績ポイント合計値が「25」以下となった場合には、人員Xは難易度「5」相当のタスクを実施できるスキル習熟度(=5)しか有しないと評価される。
【0034】
スキル評価部15は、上記のようにして各人員のスキル習熟度を評価した後、評価結果に従って、人員管理データベース20に登録されている各人員のスキル習熟度を更新する。また、評価を終えたスキル習熟度に対応する検証済みフラグを、検証済みであることを表す値(例えば、「1」)で更新する。このように、スキル習熟度は、タスクを実施する力量を表す指標でもあるため、タスク実施度と言い換えてもよい。ここで、スキル習熟度の評価は、iコンピテンシディクショナリ、ITSS、ETSSなどの標準的な基準に従って実施してもよい。また、登録時のスキル習熟度とスキル習熟度の評価結果(つまり、更新後のスキル習熟度)とを対応付けて蓄積しておき、この蓄積データの傾向に従って、新たに人員を登録する際のスキル習熟度を補正するようにしてもよい。これにより、登録時のスキル習熟度の精度を向上させることが可能となる。
【0035】
貢献度評価部16は、完了した業務に携わった各人員について、業務実績データベース40に記録されているタスク実績情報(タスク難易度別の実績作業量)に基づいて、その業務に対する各人員の貢献度を評価する処理を行う。貢献度評価部16は更に、その業務に関する支給原資を各人員の貢献度に応じて分配した分配金を算出する処理も行う。各業務の支給原資は、例えば、仕事単位・業務単位・プロジェクト単位などの中から対象範囲の適切な切り口を選定の上、法人全体の支給原資を業務毎の売上・営業利益・粗利等の利益貢献度に応じた割合で案分することで算出される。一例として、全体の支給原資に対応する業務として10個のプロジェクトが存在する中、Aプロジェクトの売上の貢献割合が10%だった場合、Aプロジェクトの支給原資の割合は10%となる。貢献度評価部16による評価結果(貢献度や分配金)は、ユーザ端末60Aを通じて、管理ユーザに提供される。また、ユーザ端末Bを通じて、各一般ユーザに個別に提供されてもよい。
【0036】
ここで、業務に関する支給原資は、その業務に携わった各人員への分配にあてることが可能な資金であり、法人の種別や原資となる金銭の法的性質等を問わない(例えば、労働者協同組合法上の剰余金を含み得る)。本システムでは、支給原資データベース50が、所定長(例えば、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年など)の会計期間別に、その期間に法人が支給できる全体の支給原資を管理している。法人が支給できる全体の支給原資は、仕事単位・業務単位・プロジェクト単位などの様々な切り口で分類できる各種の原資を合計したものである。貢献度評価部16は、支給原資データベース50にアクセスして、業務毎の支給原資を算出する。一例として、貢献度評価部16は、対象の会計期間における全体の支給原資を各業務の利益貢献度で按分することで、対象の会計期間における業務毎の支給原資を算出する。なお、各業務の利益貢献度に代えて、業務の受注金額、業務を発注した顧客の重要度、業務の受注までに要した工数などの別の指標に基づいて、業務毎の支給原資を算出することも可能である。支給原資データベース50は、業務毎の支給原資の算出に必要な情報を記憶しており、貢献度評価部16にて業務毎の支給原資を算出する際に使用される。あるいは、業務毎の支給原資を予め算出して支給原資データベース50に記憶させておき、各人員への分配金を算出する際に使用するようにしてもよい。なお、これらの説明は一例に過ぎず、他の手法により支給原資を算出しても構わない。
【0037】
業務全体に対する各人員の貢献度の評価について、
図6を参照して説明する。
図6には、業務全体に対する各人員の貢献度の評価に使用するデータ例を示してある。
図6において、(表1)は、業務計画データベース30に登録されているタスク計画情報に基づいて算出された、業務全体のタスク難易度別の想定作業量である。(表2)は、業務計画データベース30に登録されているタスク計画情報に基づいて算出された、人員Xのタスク難易度別の想定作業量である。(表3)は、業務実績データベース30に記録されているタスク実績情報に基づいて算出された、業務全体のタスク難易度別の実績作業量である。(表4)は、業務実績データベース30に記録されているタスク実績情報に基づいて算出された、人員Xのタスク難易度別の想定作業量である。
【0038】
貢献度評価部16は、スキル評価部15と同様の手法で、想定作業量や実績作業量をポイント化する。例えば、(表1)に示す業務全体の想定作業量をポイント化(=Σ(タスク難易度×想定作業量))すると「332」となり、(表2)に示す人員Xのタスク難易度別の想定作業量をポイント化すると「30」となる。また、(表3)に示す業務全体の実績作業量をポイント化(=Σ(タスク難易度×実績作業量))すると「382」となり、(表4)に示す人員Xのタスク難易度別の想定作業量をポイント化すると「29」となる。
【0039】
この場合、業務全体で見ると、計画段階では「332」ポイントであったが、実際に業務を完了した時点で「382」ポイントに増加したことが分かる。一方、人員Xに着目すると、計画段階では「30」ポイントであったが、実際には「29」ポイントに減少している。また、業務全体に対する人員Xの貢献度は、計画段階では9.0%(=30/332)であったが、実際には7.6%(=29/382)に減少している。
【0040】
ここで、上記の例は、想定作業量や実績作業量などの作業量の単位として、時間的な単位の一例である「人月」を用いているが、他の単位を用いてもよい。例えば、作業量の単位として、数量系の単位(例えば、個数)を用いることができる。また、時間的な単位と数量系の単位を併用してもよい。つまり、タスク難易度別の実績作業量として、例えば、タスクの実施に費やした作業時間と、タスクの実施で得られた成果物の数や量とを記録するようにしてもよい。この場合、業務全体に対する各人員の貢献度を、その人員が実施したタスクの難易度、作業時間、および成果物の数や量に基づいて評価できる。これにより、同じ難易度のタスクを同じ時間だけ作業した複数の人員がいる場合に、各人員の成果物数などに応じて貢献度を異ならせることが可能となる。つまり、例えば、成果物数が多い人員ほど高い貢献度と評価し、成果物数が少ない人員ほど低い貢献度と評価することで、単位時間当たりの生産性により貢献度を評価することができる。
【0041】
ここで、その業務に関する支給原資を1億円とすると、人員Xに対する分配金の当初の期待値は900万円(=1億円×9.0%)であったが、人員Xに対する最終的な分配金は760万円(=1億円×7.6%)となる。なお、上記の例では支給原資を各人員の貢献度に応じた比率で分配しているが、他の方法で分配金を算出してもよい。例えば、各人員の貢献度にかかわらずに支給原資の一部を各人員に均等に分配し、支給原資の残りを各人員の貢献度に応じた比率で分配してもよい。
【0042】
前述のとおり、本システムで扱う業務には、複数の法人が共同で実施する業務も含まれる。この場合、支給原資の分配も、法人をまたがって行うことができる。例えば、一次請け法人と二次請け法人が共同で業務を実施する場合において、一次請けが報奨金を支給する対象に、一次請け法人の人員だけでなく二次請け法人の人員も含めることができる。したがって、人員の所属法人が一次請けか二次請けかにかかわらず、業務に対する貢献度を公平に評価して支給原資を各人員に分配することが可能となる。各人員の分配金は、賞与、一次支給金、手当金、配当金など、任意の形態で支給され得る。
【0043】
次に、
図7を参照して、本システムによる人員評価に係る処理の流れを説明する。本システムの処理は、業務計画段階の処理と、業務遂行段階の処理に大別される。
業務計画段階では、まず、人員登録部11が、履歴書、職務経歴書、スキル診断書などの提出書類に基づいて、人員管理データベース20に各人員のスキル情報を登録する(処理P11)。次いで、業務計画設定部12が、実施予定の業務に関する業務計画や必要タスクなどのデータを業務計画データベース30に登録する(処理P12)。次いで、人員募集・割当部13が、業務計画データベース30に登録されている業務計画や必要タスクなどのデータに基づいて人員を募集し、人員管理データベース20に登録されている各人員のスキル情報に基づいて、各人員に割り当てるタスクを決定し、タスクの割り当て結果を示すタスク計画情報を業務計画データベース30に登録する(処理P13)。なお、上記処理の順序は一例であり、例えば、当初は処理P11を実行せず、処理P13で人員を募集した際に、その人員について処理P11を実行してもよい。
【0044】
業務遂行段階では、各人員によるタスクの実施に伴って、業務実績更新部14が、タスクの実施結果を示すタスク実績情報を業務実績データベース40に記録する(処理P21)。そして、業務が完了した後に、スキル評価部15が、業務計画データベース30に登録されているタスク計画情報と、業務実績データベース40に記録されているタスク実績情報とに基づいて、業務に携わった各人員のスキル習熟度を評価し、人員管理データベース20に登録されている人員データを更新する(処理P22)。次いで、貢献度評価部16が、業務実績データベース40に記録されているタスク実績情報に基づいて、業務全体に対する各人員の貢献度を評価し、業務に関する支給原資を各人員の貢献度に応じて分配した分配金を算出する(処理P23)。
【0045】
なお、上記処理の順序は一例であり、例えば、処理P22と処理P23の順序を逆にしたり、これらを並列で実行してもよい。また、スキル習熟度や貢献度の評価結果を管理ユーザ(例えば、業務の責任者)に提示し、修正を受け付けるようにしてもよい。これにより、タスク計画情報やタスク実績情報だけでは判断できない要素(例えば、業務を受注する前の貢献度、業務を発注した顧客とのインタビュー結果など)を評価結果に反映させることが可能となる。スキル習熟度や貢献度の評価結果の修正は、管理ユーザが単独で行ってもよいし、複数人の管理ユーザが多面的に行ってもよい。
【0046】
以上のように、本例の人員評価システムでは、実施予定のタスクに対応するスキルを保有する人員のスキル習熟度を示すスキル情報を記憶する人員管理データベース20と、タスクに対して予め設定された難易度別の想定作業量を示すタスク計画情報を記憶する業務計画データベース30と、人員により実施されたタスクの難易度別の実績作業量を示すタスク実績情報を記憶する業務実績データベース40とにアクセス可能な人員評価サーバ10のスキル評価部15が、業務計画データベース30に記憶されたタスク計画情報と業務実績データベース40に記憶されたタスク実績情報とに基づいて、人員のスキル習熟度を評価し、人員管理データベース20に記憶されたスキル情報を更新するように構成されている。
【0047】
このように、本例の人員評価システムでは、難易度別の想定作業量を示すタスク計画情報と難易度別の実績作業量を示すタスク実績情報を用いて、そのタスクに対応するスキルを保有する人員のスキル習熟度を評価するので、スキル習熟度の評価のための入力を管理ユーザや一般ユーザに求める必要がなく、スキル習熟度の評価に要する作業負担が軽減される。また、各人の個人的な見解や思い込みがスキル習熟度の評価に反映されることを排除できるので、スキル習熟度をより適切に評価できるようになる。なお、法人をまたいで本システムを利用する場合(つまり、複数の法人が共同で業務を実施する場合)、各人員のスキル習熟度などを含む情報の取り扱いを事前に取り決めて、適切に運用することが求められる。
【0048】
また、本例の人員評価システムでは、人員評価サーバ10の人員募集・割当部13が、人員管理データベース20に記憶されたスキル情報に基づいて、業務に含まれる複数のタスクの各々に対して、そのタスクを実施する人員を割り当てるように構成されている。これにより、タスクを実施する人員の割り当て作業の負担を軽減することができる。
【0049】
また、本例の人員評価システムでは、人員評価サーバ10の貢献度評価部16が、業務実績データベース40に記憶されたタスク実績情報に基づいて、業務全体に対する各人員の貢献度を評価するように構成されている。つまり、各人員が実施したタスクの難易度およびその作業量(作業時間や成果物数など)を適切に考慮して、各人員の貢献度を評価することができる。これにより、業務全体に対する各人員の貢献度をより適切に評価できるようになる。
【0050】
また、本例の人員評価システムでは、人員評価サーバ10の貢献度評価部16が、業務に関する支給原資を各人員の貢献度に応じて分配した分配金を算出するように構成されている。つまり、各人員が実施したタスクの難易度およびその作業量(作業時間や成果物数など)を、各人員の分配金に正確に反映させることができる。これにより、業務に関する支給原資の分配の公平性を高めることができる。なお、各人員の貢献度は、支給原資の分配金の算出だけなく、給与の昇給額の算定などの別の要素に適用しても構わない。
【0051】
ここで、上記の説明では、本発明に係る人員評価システムを情報処理関係の業務や職種に適用しているが、これは例示に過ぎず、業務に含まれる各タスクに難易度を設定できる種々の業務や職種に適用することが可能である。具体例としては、営業、経理、財務、人事、労務、法務、研究開発、マーケティング、企画、カスタマーサポートや、芸能関係、デザイナー関係、美容関係、配達業務関係の職業など、多岐にわたる業務や職種が該当する。また、上記の説明では、作業量を表す単位として、作業の延べ時間を数値表現した人工(人月や人日など)を用いているが、作業量を適切に表現できる別の単位を用いてもよい。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これら実施形態は例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明は、その他の様々な実施形態をとることが可能であると共に、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等の種々の変形を行うことができる。これら実施形態及びその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0053】
また、本発明は、上記の説明で挙げたような装置や、これら装置で構成されたシステムとして提供することが可能なだけでなく、これら装置により実行される方法、これら装置の機能をプロセッサにより実現させるためのプログラム、そのようなプログラムをコンピュータ読み取り可能に記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、業務に含まれる各タスクに難易度を設定できる業務に関する人員評価システムおよび人員評価方法に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
10:人員評価サーバ、 11:人員登録部、 12:事業計画設定部、 13:人員募集・割当部、 14:業務実績更新部、 15:スキル評価部、 16:貢献度評価部、 20:人員管理データベース、 30:業務計画データベース、 40:業務実績データベース、 50:支給原資データベース、 60A,60B:ユーザ端末