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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011649
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】幹細胞増殖促進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/07 20060101AFI20240118BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 8/97 20170101ALI20240118BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240118BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20240118BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20240118BHJP
   C12N 5/074 20100101ALI20240118BHJP
   A23L 19/00 20160101ALI20240118BHJP
   A23L 31/00 20160101ALI20240118BHJP
   A23L 2/52 20060101ALN20240118BHJP
   A23L 2/39 20060101ALN20240118BHJP
【FI】
A61K36/07
A61P43/00 107
A61P17/00
A61K8/97
A61Q19/00
A61Q1/02
A61Q19/10
C12N5/074
A23L19/00 101
A23L31/00
A23L2/00 F
A23L2/52
A23L2/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113841
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】深田 紘介
(72)【発明者】
【氏名】坂井田 勉
(72)【発明者】
【氏名】眞田 歩美
【テーマコード(参考)】
4B016
4B018
4B065
4B117
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4B016LC07
4B016LG14
4B016LP02
4B018LB01
4B018LB08
4B018LE01
4B018LE05
4B018MD84
4B018ME02
4B018ME10
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF13
4B065AA93X
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA22
4B065BB28
4B065BD43
4B065CA41
4B065CA44
4B117LC04
4B117LE01
4B117LG05
4B117LG23
4B117LK08
4B117LK12
4B117LK16
4B117LL02
4C083AA031
4C083AA032
4C083AA082
4C083AA122
4C083AB032
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB312
4C083AB352
4C083AB432
4C083AB442
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC242
4C083AC302
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4C083AC422
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC482
4C083AC542
4C083AC842
4C083AD092
4C083AD112
4C083AD272
4C083AD352
4C083AD512
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC07
4C083CC12
4C083CC25
4C083DD16
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE12
4C083FF01
4C088AA06
4C088AC15
4C088BA05
4C088CA05
4C088CA06
4C088CA08
4C088MA52
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZB22
(57)【要約】
【課題】幹細胞増殖促進作用が優れた素材を提供することを課題とする。
【解決手段】マンネンタケを栽培する過程において、バガスが特定量含有する培地で栽培することにより得られたマンネンタケは、従来のマンネンタケと比較して、顕著に優れた幹細胞増殖促進作用を有することを見出した。本発明のマンネンタケの抽出物を有効成分として含有する皮膚外用剤、医薬品、食品は再生医療や再生美容等の分野において大きく貢献できるものであり、組織恒常性維持、損傷組織の修復・再生の用途に極めて有効である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バガスが乾燥重量で10~80重量%含有する培地で栽培したマンネンタケの抽出物を含有することを特徴とする幹細胞増殖促進剤。
【請求項2】
マンネンタケの抽出物が水、低級アルコール及び液状多価アルコールから選ばれる一種又は二種以上の溶媒による抽出物であることを特徴とする請求項1記載の幹細胞増殖促進剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載のマンネンタケの抽出物を含有する培地で幹細胞を培養する工程を含む、幹細胞の増殖促進方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載のマンネンタケの抽出物を幹細胞増殖の有効成分として含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項5】
請求項1又は2記載のマンネンタケの抽出物を幹細胞増殖の有効成分として含有することを特徴とする医薬品。
【請求項6】
請求項1又は2記載のマンネンタケの抽出物を幹細胞増殖の有効成分として含有することを特徴とする食品。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バガス含有培地を使用した栽培方法によって得られたマンネンタケの抽出物を含有することを特徴とする、幹細胞増殖促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
脊椎動物(特に哺乳動物)の組織は、傷害若しくは疾患、又は加齢等に伴い細胞・臓器の損傷が起こった場合、再生系が働き、細胞・臓器の損傷を回復しようとする。この作用に、当該組織に備わる幹細胞が大きな役割を果たしている。幹細胞は、様々な細胞・臓器に分化する多能性を有しており、この性質により細胞・臓器の損傷部を補うことで回復に導くと考えられている。このような幹細胞を応用した、次世代の医療である再生医療に期待が集まっている。
【0003】
幹細胞は、骨髄、皮膚、肝臓、膵臓、脂肪等、多くの臓器・組織に存在することが明らかにされ、各臓器・組織の再生及び恒常性維持を司っていることがわかってきた(非特許文献1~4)。また、各組織に存在する幹細胞は可塑性に優れており、今まで自己複製が不可能であった臓器や組織の再生にも利用できる可能性がある。
【0004】
一方で、これらの幹細胞のうちのいくつかは、加齢とともに減少することが知られており、各組織の恒常性維持のために幹細胞の減少を防ぐ技術の研究が積極的になされている(非特許文献5)。また、近年、幹細胞の能力(多能性)を、臓器や組織の再生へ応用するため、細胞移植治療や組織工学(再生医療や再生美容)の分野において幹細胞を生体組織から分離した後に培養し増殖させる技術の開発が進められている(非特許文献6、7)。
【0005】
マンネンタケは、生薬「霊芝」に用いられる担子菌であり、幅広い生理活性を有し、漢方としても汎用されている。例えば、マンネンタケが有する効果としては、幹細胞の増殖作用が知られている(特許文献1)。
【0006】
マンネンタケには、β-グルカン等の多糖類や、ガノデリン酸等のトリテルペン類といった有効成分が含有されていることが知られている。β-グルカンは、抗癌作用や免疫賦活作用等を有することが知られている。また、ガノデリン酸は、抗癌作用、血圧降下作用、コレステロール低下作用等、多くの効果が報告されている。トリテルペン類を多く含むマンネンタケを栽培する方法としては、赤色光を照射する方法が報告されている(特許文献2)。
【0007】
現在、流通するマンネンタケはほとんどが人工栽培であり、その栽培方法としては、主に原木栽培と菌床栽培の二つの方法が用いられている。これらの方法を用いて、収穫量の増加を目的として、様々な栽培方法が検討されている。例えば、クロレラ熱水抽出残渣やコッコミクサ乾燥粉末を培地成分として使用する方法が知られている(特許文献3)。マンネンタケの栽培品として、子実体発生前の菌糸体が利用されているが、子実体と菌糸体とでは成分や生理活性等が全く異なり、これらは本質的に異なるものである。
【0008】
バガスとは、サトウキビを用いた製糖過程における、必要な糖汁を搾汁した後の残渣のことであり、その年間排出量は、世界中で1億トン以上にのぼる。バガスの利用方法としては、燃料、土壌改良材、家畜飼料、紙の原料及び建築資材等に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008-301726号公報
【特許文献2】特開2006-25765号公報
【特許文献3】特開2014-158441号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Goodell M.A.ら, Nat. Med., 1997年, Vol. 3, pp. 1337-1345
【非特許文献2】Zulewski H.ら, Diabetes, 2001年, Vol. 50, pp. 521-533
【非特許文献3】Suzuki A.ら, Hepatology, 2000年, Vol. 32, pp. 1230-1239
【非特許文献4】Zuk P.A.ら, Tissue Engineering, 2001年, Vol. 7, pp. 211-228
【非特許文献5】長谷川靖司,Aesthetic Dermatology, 2013年, Vol. 23, pp. 1-11
【非特許文献6】馬渕 洋 他, 日本再生医療学会誌, 2007年, Vol. 6, pp. 263-268
【非特許文献7】北川 全 他, 日本再生医療学会誌, 2008年,Vol. 7, pp. 14-18
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
幹細胞増殖促進作用に優れた素材が望まれているが、未だ十分満足し得る素材が提供されていないのが現状である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、この問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、マンネンタケの栽培において、バガスを特定量含有する培地で栽培することにより、バガスを含有しない培地と比較して、得られたマンネンタケの抽出物が、優れた幹細胞増殖促進作用を有することを発見し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)バガスが乾燥重量で10~80重量%含有する培地で栽培したマンネンタケの抽出物を含有することを特徴とする幹細胞増殖促進剤。
(2)マンネンタケの抽出物が水、低級アルコール及び液状多価アルコールから選ばれる一種又は二種以上の溶媒による抽出物であることを特徴とする(1)記載の幹細胞増殖促進剤。
(3)(1)又は(2)記載のマンネンタケの抽出物を含有する培地で幹細胞を培養する工程を含む、幹細胞の増殖促進方法。
(4)(1)又は(2)記載のマンネンタケの抽出物を幹細胞増殖の有効成分として含有することを特徴とする皮膚外用剤。
(5)(1)又は(2)記載のマンネンタケの抽出物を幹細胞増殖の有効成分として含有することを特徴とする医薬品。
(6)(1)又は(2)記載のマンネンタケの抽出物を幹細胞増殖の有効成分として含有することを特徴とする食品。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、幹細胞を効率的に増殖させることができる。従って、本発明は、再生医療や再生美容等の分野において大きく貢献できるものであり、組織恒常性維持、損傷組織の修復・再生の用途に極めて有効である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明について詳細に述べる。
【0016】
本発明に用いられるマンネンタケの菌株は、生薬「霊芝」に用いられる担子菌であり、マンネンタケ科(Ganodermataceae)、マンネンタケ属(Ganoderma)に属する。マンネンタケ属のキノコについては、中国の薬学古書である「本草綱目」や「神農本草経」に赤霊芝(霊芝)、黒霊芝(黒芝)、紫霊芝(紫芝)、青霊芝(青芝)、黄霊芝(黄芝)及び白霊芝(白芝)が存在すると記載されている。赤霊芝の学名は(Ganoderma lucidum)であり、黒霊芝の学名は(Ganoderma sinense、Ganoderma japonicum、Ganoderma atrum)である。その他のマンネンタケ属のキノコとしては、マゴジャクシ(Ganoderma neojaponicum)が知られている。これらの菌株は、中国や日本市場等で流通しているものを用いることができるし、マンネンタケの組織等から分離培養して作製されたものであっても良い。
【0017】
本発明のマンネンタケの栽培方法は、培地成分の一つとしてバガスを用いること以外は、一般的に利用される栽培方法を用いることができる。その一例を以下に示す。
【0018】
本発明のマンネンタケの栽培方法は、例えば菌床栽培にて行うことができ、マンネンタケの菌株を菌床に植菌後、菌を活着させて全体に繁殖させる培養工程と、マンネンタケ子実体を得る発生工程とを有する。
【0019】
培養工程の菌床に用いられる培地は、バガス以外に、マンネンタケの菌糸が生育し得るのに必要な炭素源、窒素源、無機物、及びその他必要な栄養素を適宜含有する培地であれば良い。例えば、バガスと、公知の培地基材、栄養材、又はそれらの混合物が用いられ、更に添加材を添加することもできる。
【0020】
本発明に用いられるバガスは、製糖過程において、搾汁したサトウキビの残渣をそのまま用いることができ、また、洗浄、乾燥及び粉砕等により処理されたものであっても良い。バガスの形状は、特に限定されないが、繊維構造を形成するバガスを所定の大きさ(幅、長さ)に粉砕又は解繊して用いることが好ましい。中でも、幅が5mm以下に解繊されたもの又は長さが50mm以下のものがより好ましく、幅が5mm以下に解繊され、且つ長さが50mm以下のものが特に好ましい。更に、その長さは10~50mmが最も好ましい。培地中のバガスの含有量は、乾燥重量で10~80重量%が好ましく、15~60重量%が更に好ましく、20~30重量%が最も好ましい。
【0021】
培地基材としては、例えば、おが粉(例えば、クヌギ、コナラ、ブナ等の広葉樹、又はマツ、モミ、ツガ等の針葉樹から作られる)、コーンコブ、モミガラ、ビート、コットンハル、そば殻等が用いられ、好適にはおが粉及び/又はコーンコブが用いられる。培地基材の大きさは特に限定されないが、10mmメッシュパス品(目開き10mmのメッシュを通過したもの)を用いることが好ましい。培地中の培地基材の含有量は、その他の培地組成にもよるが、例えば、乾燥重量で10~90重量%が好ましく、30~80重量%が更に好ましく、40~70重量%が特に好ましく、50~65重量%が最も好ましい。
【0022】
栄養材としては、小麦フスマ、米糠、コーンブラン、オカラ、豆皮、マイロ等が用いられ、好適には小麦フスマ、米糠又はコーンブランから選択して用いられる。大きさは特に限定されないが、5mmメッシュパス品を用いることが好ましい。培地中の栄養材の含有量は、その他の培地組成にもよるが、乾燥重量で1~30重量%が好ましく、5~10重量%が更に好ましい。
【0023】
以上のことを総じていえば、バガスが乾燥重量で20~30重量%、おが粉が乾燥重量で50~65重量%、小麦フスマが乾燥重量で5~10重量%含有する培地が最も好ましい。
【0024】
添加材は、pH調整や成長促進等の目的で必要に応じて添加することができ、炭酸カルシウム、硫酸アンモニウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸水素二カルシウム等を用いることができる。
【0025】
培地中の水分含量は特に限定されないが、培地全量に対して例えば40~80重量%が好ましく、50~75重量%がより好ましく、60~70重量%が更に好ましい。ただし、培地中のマンネンタケの菌糸の生育が可能な程度の空隙と水分であり、且つ培地が乾燥しない水分含量に適宜調整することが好ましい。
【0026】
上記の培地を、菌床栽培用の市販のポリ袋やポリポット等の容器に入れ、公知の方法により殺菌や滅菌等の処理を施すことができる。培地を入れる容器、殺菌及び滅菌等の方法については、本発明の効果を奏する方法であれば、適宜選択して良い。このようにして菌床が得られる。
【0027】
マンネンタケの菌株を菌床に植菌する。植菌方法は、公知の方法を用いればよい。
【0028】
培養工程は、暗所にて行うことが好ましいが、暗所に限らない。温度は、例えば、15~35℃が好ましく、20~30℃が更に好ましい。湿度は、特に限定されないが、培地が乾燥しない程度であれば良い。例えば、相対湿度は、40~80%が好ましく、50~65%が更に好ましい。培養工程の期間は、例えば、30~80日が好ましい。菌糸の生育が進むと二酸化炭素濃度が上昇し、生育不良を起こすことがあるので、必要に応じて換気を行う。二酸化炭素濃度は、1000ppm未満が好ましい。上記の条件で培養し、培地の全体が菌糸により白く覆われた時点で培養工程を完了させれば良いが、培地の一部が菌糸により覆われていなくても良く、また、白く覆われた後に培養を続けても良い。栽培条件は、上記の範囲に限らず、本発明の効果を奏する範囲であれば、培養工程における温度、相対湿度及び期間等を適宜選択して良い。
【0029】
発生工程は、例えば、温度は15~35℃が好ましく、25~30℃が更に好ましい。相対湿度は70%以上が好ましく、90%以上が更に好ましい。照度は、50~3000ルクスが好ましく、100~2000ルクスが更に好ましく、300~1000ルクスが最も好ましい。発生を促すため、菌かきや電気等による刺激を与えても良い。発生工程における栽培条件は、上記の範囲に限らず、本発明の効果を奏する栽培条件であれば、温度、相対湿度及び照度を適宜選択して良い。このように栽培を行うことにより、本発明のマンネンタケが得られる。
【0030】
本発明に用いられるマンネンタケは、子実体のことであり、子実体発生前の菌糸体とは、外観や含有成分等によって明確に区別されるものである。
【0031】
本発明のマンネンタケは、例えば、収穫後生のまま用いることもできるし、洗浄、乾燥、粉砕及び抽出等により加工することもできる。
【0032】
抽出溶媒としては、例えば、水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等)、液状多価アルコール類(1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、流動パラフィン等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)が挙げられる。好ましくは、水、低級アルコール及び液状多価アルコール等の極性溶媒が良く、特に好ましくは、水、エタノール、1,3-ブチレングリコール及びプロピレングリコールが良い。これらの溶媒は一種でも二種以上を混合して用いても良く、例えば30~70重量%のエタノール水溶液を使用することもできる。また、上記抽出溶媒に酸やアルカリを添加して、pH調整した溶媒を使用することもできる。
【0033】
その抽出方法は特に限定されず、加熱抽出、常温抽出、冷却抽出、撹拌抽出、加圧抽出及びカラム抽出等の方法により行うことができる。また、その抽出物とマンネンタケ自体を併用することもできる。
【0034】
上記抽出物は、抽出した溶液のまま用いても良いが、必要に応じて、本発明の効果を奏する範囲で、濃縮、希釈、濾過、脱色、脱臭、乾燥、エタノール沈殿等の処理を行ってから用いても良い。更には、カラム精製等を行って有効成分を濃縮や単離して用いても良い。
【0035】
本発明に用いるマンネンタケの抽出物は、幹細胞を効率的に増殖させる作用を有するため、幹細胞の増殖促進剤として使用できる。更に、本発明の幹細胞の増殖促進剤は、幹細胞を効率的に増殖させるための細胞培養用添加剤、研究用試薬としても使用することができる。
【0036】
本発明に係るマンネンタケの抽出物を、ヒトを含めた哺乳動物の幹細胞に適用することで、幹細胞の増殖を促進することができる。本発明に係る幹細胞の増殖促進剤を適用する幹細胞としては、本発明の目的に沿うものであれば特に限定されず、例えば胚性の幹細胞(ES細胞);骨髄、血液、皮膚(表皮、真皮、皮下組織)、脂肪、毛包、脳、神経、肝臓、膵臓、腎臓、筋肉やその他の組織に存在する体性の幹細胞;遺伝子導入等により人工的に作製された幹細胞(人工多能性幹細胞:iPS細胞)が挙げられる。好ましくは、骨髄、血液、皮膚又は脂肪組織由来の幹細胞に対してより効果を発揮する。より好ましくは、間葉系幹細胞に対して最も効果を発揮する。
【0037】
更に、本発明に係るマンネンタケの抽出物が有する幹細胞増殖促進効果は、例えば、ヒト、サル、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ等の哺乳動物の幹細胞に対して効果を発揮することができる。
【0038】
本発明に係るマンネンタケの抽出物の幹細胞への適用は、生体外であっても生体内であっても良く、いずれの場合もその幹細胞増殖促進作用を発揮できる。従って、本発明に係るマンネンタケの抽出物は、その有効量を添加した幹細胞培養用培地にて幹細胞を培養することによって、又は、ヒトを含む哺乳動物に投与することによって、幹細胞の増殖を促進することができる。
【0039】
本発明に係るマンネンタケの抽出物を生体内に投与する場合は、そのまま投与することも可能であるが、本発明の効果を損なわない範囲で適当な添加物と共に含有した皮膚外用剤、医薬品、飲食品等の各種組成物として提供することができる。尚、本発明の医薬品には、動物に用いる薬剤、即ち獣医薬も包含されるものとする。
【0040】
本発明に係るマンネンタケの抽出物は、優れた幹細胞の増殖促進作用を有するため、皮膚、骨髄、軟骨、筋肉、神経、脂肪、肝臓等の生体内の組織又は臓器の幹細胞に作用して当該組織又は臓器の障害又は損傷を治療、改善、及び予防するのにも有効である。また、幹細胞は、加齢等に伴い減少又は機能低下することから、本発明に係るマンネンタケの抽出物は、上記生体内の組織又は臓器の幹細胞の減少や機能低下に関連する疾患又は老化を治療、改善、及び予防するのに有効である。ここで、組織又は臓器の障害又は損傷、幹細胞の減少や機能低下に関連する疾患又は老化としては、例えば、皮膚関連では、シワ、タルミ、シミ、くすみ、肌荒れ、皮膚の肥厚、毛穴の開き、ニキビ痕、創傷、褥瘡、熱傷、瘢痕、ケロイド等が挙げられ、薄毛や脱毛等の頭皮や毛髪の損傷も含まれる。また、骨関連では、骨粗しょう症、骨折(脊椎圧迫骨折、大腿骨頚部骨折等)等、軟骨疾患では、変形性関節症、関節リウマチ、椎間板ヘルニア等、神経関連では、脊髄損傷、顔面神経麻痺、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、加齢に伴う記憶低下等、血液関連では、再生不良性貧血、白血病等、心血管関連では心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症等、歯科関連では歯周病、歯槽膿漏による歯槽骨損傷等、眼科関連では、網膜色素変性症、加齢黄斑変性症、緑内障等、肝臓・膵臓関連では肝炎、肝硬変、糖尿病等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
本発明に係るマンネンタケの抽出物を含有する、皮膚外用剤の剤形は、水溶液系、可溶化系、乳化系、粉末系、粉末分散系、油液系、ゲル系、軟膏系、エアゾール系、水-油二相系、又は水-油-粉末三相系等のいずれでも良い。また、当該皮膚外用剤は、マンネンタケの抽出物と共に、皮膚外用組成物において通常使用されている各種成分、添加剤、基剤等をその種類に応じて選択し、適宜配合し、当分野で公知の手法に従って製造することができる。その形態は、液状、乳液状、クリーム状、ゲル状、ペースト状、スプレー状等のいずれであっても良い。配合成分としては、例えば、油脂類(オリーブ油、ヤシ油、月見草油、ホホバ油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油等)、ロウ類(ラノリン、ミツロウ、カルナウバロウ等)、炭化水素類(流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、ワセリン等)、脂肪酸類(ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等)、高級アルコール類(ミリスチルアルコール、セタノール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等)、エステル類(ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、トリオクタン酸グリセリン、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸ステアリル等)、有機酸類(クエン酸、乳酸、α-ヒドロキシ酢酸、ピロリドンカルボン酸等)、糖類(マルチトール、ソルビトール、キシロビオース、N-アセチル-D-グルコサミン等)、蛋白質及び蛋白質の加水分解物、アミノ酸類及びその塩、ビタミン類、植物・動物抽出成分、種々の界面活性剤、保湿剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、安定化剤、防腐剤、殺菌剤、香料等が挙げられる。
【0042】
皮膚外用剤の種類としては、例えば、化粧水、乳液、ジェル、美容液、一般クリーム、日焼け止めクリーム、パック、マスク、洗浄剤、化粧石鹸、ファンデーション、おしろい、浴用剤、ボディローション、ボディシャンプー、ヘアシャンプー、ヘアコンディショナー、育毛剤等が挙げられる。
【0043】
本発明に係るマンネンタケの抽出物を含有する医薬品は、薬理学的及び製剤学的に許容しうる添加物と混合し、患部に適用するのに適した製剤形態の各種製剤に製剤化することができる。薬理学的及び製剤学的に許容しうる添加物としては、その剤形、用途に応じて、適宜選択した製剤用基剤や担体、賦形剤、希釈剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、崩壊剤又は崩壊補助剤、安定化剤、保存剤、防腐剤、増量剤、分散剤、湿潤化剤、緩衝剤、溶解剤又は溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、噴射剤、着色剤、甘味剤、矯味剤、香料等を適宜添加し、公知の種々の方法にて経口又は非経口的に全身又は局所投与することができる各種製剤形態に調製すれば良い。本発明の医薬品を上記の各形態で提供する場合、通常当業者に用いられる製法、例えば日本薬局方の製剤総則[2]製剤各条に示された製法等により製造することができる。
【0044】
本発明の医薬品の形態としては、特に制限されるものではないが、例えば錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤、トローチ剤、顆粒剤、散剤、液剤、丸剤、乳剤、シロップ剤、懸濁剤、エリキシル剤等の経口剤、注射剤(例えば、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤)、点滴剤、座剤、軟膏剤、ローション剤、点眼剤、噴霧剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤、貼付剤等の非経口剤等が挙げられる。また、使用する際に再溶解させる乾燥生成物にしても良く、注射用製剤の場合は単位投与量アンプル又は多投与量容器の状態で提供される。
【0045】
本発明に係るマンネンタケの抽出物を、前記皮膚関連の損傷や疾患の治療、改善、及び予防するための医薬品として用いる場合に適した形態は外用製剤であり、例えば、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、液剤、貼付剤等が挙げられる。軟膏剤は、均質な半固形状の外用製剤をいい、油脂性軟膏、乳剤性軟膏、水溶性軟膏を含む。ゲル剤は、水不溶性成分の抱水化合物を水性液に懸濁した外用製剤をいう。液剤は、液状の外用製剤をいい、ローション剤、懸濁剤、乳剤、リニメント剤等を含む。
【0046】
本発明の医薬品は、上記疾患の発症を抑制する予防薬として、及び/又は、正常な状態に改善する治療薬として機能する。本発明の医薬品を前述の疾患の治療、改善、及び予防用医薬品として用いる場合、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ等の哺乳動物に対して経口的に又は非経口的に投与することができる。
【0047】
本発明の皮膚外用剤、医薬品及び食品におけるマンネンタケの抽出物の含有量は特に限定されないが、製剤(組成物)全重量に対して、マンネンタケの抽出物の乾燥固形分に換算して、0.0001~30重量%が好ましく、0.001~10重量%がより好ましく、0.02~2重量%が最も好ましい。0.0001重量%未満では効果が低く、また30重量%を超えても効果に大きな増強はみられにくい。上記の量はあくまで例示であって、組成物の種類や形態、一般的な使用量、効能・効果等を考慮して適宜設定・調整すれば良い。また、製剤化における有効成分の添加法については、予め加えておいても、製造途中で添加しても良く、作業性を考えて適宜選択すれば良い。
【0048】
また、本発明において、食品とは、一般的な飲食品のほか、医薬品や医薬部外品以外で健康の維持や増進を目的として摂取できる食品、例えば、健康食品、機能性食品、保健機能食品又は特別用途食品を含む意味で用いられる。健康食品には、栄養補助食品、健康補助食品、栄養調整食品、サプリメント等の名称で提供される食品を含む。保健機能食品は食品衛生法又は健康増進法により定義され、特定の保健の効果や栄養成分の機能、疾病リスクの低減等を表示できる、特定保健用食品、栄養機能食品及び機能性表示食品が含まれる。
【0049】
食品の形態は、食用に適した形態、例えば、固形状、液状、顆粒状、粒状、粉末状、カプセル状、クリーム状、ペースト状のいずれであっても良い。特に、上記の健康食品等の場合の形状としては、例えば、タブレット状、丸状、カプセル状、粉末状、顆粒状、細粒状、トローチ状、液状(シロップ状、乳状、懸濁状を含む)等が好ましい。
【0050】
食品の種類としては、茶飲料(緑茶、ウーロン茶、紅茶等)、清涼飲料(スポーツドリンク、ミネラルウォーター、ニアウォーター等)、炭酸飲料、乳飲料、コーヒー飲料、果汁・野菜汁入り飲料、栄養ドリンク、ゼリー飲料等の各種飲料、粉末スープ、菓子類(キャンディー、グミ、ガム、錠菓等)、麺類、パン類、乳製品、水産・畜産加工食品、油脂及び油脂加工食品等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0051】
本発明の食品は、その種類に応じて通常使用される添加物を適宜配合しても良い。添加物としては、食品衛生法上許容されうる添加物であればいずれも使用できるが、例えば、ブドウ糖、ショ糖、果糖、異性化液糖、アスパルテーム、ステビア等の甘味料;クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等の酸味料;デキストリン、デンプン等の賦形剤;結合剤、希釈剤、香料、着色料、緩衝剤、増粘剤、ゲル化剤、安定化剤、保存剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤等が挙げられる。
【0052】
本発明の食品が一般的な飲食品の場合は、その飲食品の通常の製造工程においてマンネンタケの抽出物を添加する工程を含めることによって製造することができる。また、健康食品の場合は、前記の医薬品の製造方法に準じれば良く、例えば、タブレット状のサプリメントでは、マンネンタケの抽出物に、賦形剤等の添加物を添加、混合し、打錠機等で圧力をかけて成形することにより製造することができる。また、必要に応じてその他の材料(例えば、ビタミンC、ビタミンB2、ビタミンB6等のビタミン類、カルシウム等のミネラル類、食物繊維等)を添加することもできる。
【0053】
本発明の食品におけるマンネンタケの抽出物の含有量は、幹細胞の増殖促進効果を発揮できる量であれば良いが、対象食品の一般的な摂取量、食品の形態、効能・効果、呈味性、嗜好性及びコスト等を考慮して適宜設定すれば良い。
【0054】
本発明はまた、幹細胞を、マンネンタケの抽出物を含有する培地で培養することで、幹細胞の増殖を促進する方法に関する。換言すれば、本発明に係る方法は、幹細胞を、マンネンタケの抽出物を含有する培地で培養する工程を含む、幹細胞の製造方法、幹細胞の増殖促進方法ということができる。
【0055】
本発明に係る方法において、幹細胞の培養には、幹細胞の増殖のために一般的に使用されている培地を用いれば良い。例えば、幹細胞の生存及び増殖に必要な成分(無機塩、炭水化物、ホルモン、必須アミノ酸、非必須アミノ酸、ビタミン、脂肪酸)を含む基本培地、具体的には、Dulbecco’s Modified Eagle Medium(D-MEM)、Minimum Essential Medium(MEM)、RPMI 1640、Basal Medium Eagle(BME)、Dulbecco’s Modified Eagle Medium:Nutrient Mixture F-12(D-MEM/F-12)、Glasgow Minimum Essential Medium(Glasgow MEM)、ハンクス液(Hank’s balanced salt solution)等が挙げられる。また、培地に、増殖因子として塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)及び/又は白血球遊走阻止因子(LIF)が含有されていても良い。更に、必要に応じて、培地は、上皮細胞増殖因子(EGF)、腫瘍壊死因子(TNF)、ビタミン類、インターロイキン類、インスリン、トランスフェリン、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コラーゲン、フィブロネクチン、プロゲステロン、セレナイト、B27-サプリメント、N2-サプリメント、ITS-サプリメント、抗生物質等が含有されていても良い。
【0056】
また、上記以外には、1~20容量%の含有率で血清が培地に含まれることが好ましい。しかしながら、血清はロットの違いにより成分が異なり、その効果にバラツキがあるため、ロットチェックを行った後に使用することが好ましい。
【0057】
市販品の培地としては、Thermo Fisher Scientific社製の間葉系幹細胞基礎培地や、タカラバイオ社製の間葉系幹細胞基礎培地、TOYOBO社製のMF培地、Sigma社製のハンクス液(Hank’s balanced salt solution)等を用いることができる。
【0058】
幹細胞の培養に用いる培養器は、幹細胞の培養が可能なものであれば特に限定されないが、例えば、フラスコ、シャーレ、ディッシュ、プレート、チャンバースライド、チューブ、トレイ、培養バッグ、ローラーボトル等が挙げられる。
【0059】
培養器は、細胞非接着性であっても接着性であっても良く、目的に応じて適宜選択される。細胞接着性の培養器は、細胞との接着性を向上させる目的で、細胞外マトリックス等による細胞支持用基質等で処理したものを用いても良い。細胞外基質としては、例えば、コラーゲン、ゼラチン、ポリ-L-リジン、ポリ-D-リジン、ラミニン、フィブロネクチン等が挙げられる。
【0060】
幹細胞培養に使用される培地に対するマンネンタケの抽出物の添加濃度は、上述の本発明に係る幹細胞の増殖促進剤におけるマンネンタケの抽出物の含有量に準じて適宜決定することができるが、固形分に換算して、例えば1~10000μg/mL、好ましくは10~1000μg/mL、最も好ましくは100~500μg/mLの濃度が挙げられる。また、幹細胞の培養期間中、マンネンタケの抽出物を、定期的に培地に添加しても良い。
【0061】
幹細胞の培養条件は、幹細胞の培養に用いられる通常の条件に従えば良く、特別な制御は必要ではない。例えば、培養温度は、特に限定されるものではないが約30~40℃、好ましくは36~37℃である。COガス濃度は、例えば約1~10%、好ましくは約2~5%である。尚、培地の交換は2~3日に1回行うことが好ましく、毎日行うことがより好ましい。前記培養条件は、幹細胞が生存及び増殖可能な範囲で適宜変動させて設定することもできる。
【0062】
次に本発明を詳細に説明するため、実施例として本発明に用いるマンネンタケの栽培方法や、マンネンタケの抽出物の製造例、実験例及び処方例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、特に指定のない場合は、実施例に示す%とは重量%を示す。
【実施例0063】
(1)マンネンタケの栽培
バガスは幅5mm以下に解繊したもの(長さ10~50mm)を、おが粉はコナラ属の木を粉砕して10mmメッシュをパスしたものを、小麦フスマは5mmメッシュをパスしたものを、培地を入れる容器は通気性及び保湿性を有する雑菌混入防止用のフィルターを付属したポリプロピレン製の袋(市販品)を用いた。上記のポリプロピレン製の袋に、バガス125g(培地の乾燥重量の25重量%)、おが粉325g(培地の乾燥重量の65重量%)、小麦フスマ50g(培地の乾燥重量の10重量%)及び水1000gを混合した培地を入れた。蒸気による加熱殺菌を行い、清浄空間にて常温まで放冷した。その後、市販の赤霊芝の種菌60gを接種した。接種後、袋の口を留め、温度21~27℃(平均温度25℃)、相対湿度40~75%(平均相対湿度51%)にて暗所で培養した。該培養工程を、該培地の全体が菌糸により白く覆われるまで行い、培養工程を終了した。培養工程の期間は、60日間であった。
【0064】
その後、発生工程へと移行し、温度18~35℃(平均温度27℃)、相対湿度68~100%(平均相対湿度97%)、照度3000ルクス以下で発生させた。該発生工程を、マンネンタケの子実体が形成するまで行い、発生工程を終了した。発生工程の期間は、30日間であった。尚、培養工程及び発生工程では、二酸化炭素濃度が1000ppm未満になるように、必要に応じて換気を行った。
【0065】
上記のマンネンタケの栽培方法を栽培例1とした。また、栽培例1のバガス(長さ10~50mm)に替えて、長さ10mm未満のバガスを使用して栽培したマンネンタケの栽培方法を栽培例2とした。更に、表1に示すように、培地の固形分中の組成を替えて栽培したマンネンタケの栽培方法を、それぞれ、栽培例3~6、比較栽培例1~3とし、それぞれのマンネンタケの収穫量を比較栽培例1と比較した。尚、マンネンタケの収穫量は乾燥重量を測定した。
【0066】
【表1】
【0067】
(2)抽出
製造例1A 熱水抽出物
栽培例1で得られたマンネンタケの乾燥物10gに精製水200mLを加え、95~100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥して熱水抽出物を得た(表2)。
【0068】
製造例1B 50%エタノール抽出物
栽培例1で得られたマンネンタケの乾燥物10gに50%エタノール200mLを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、50%エタノール抽出物を得た(表2)。
【0069】
製造例1C エタノール抽出物
栽培例1で得られたマンネンタケの乾燥物10gにエタノール200mLを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、エタノール抽出物を得た(表2)。
【0070】
栽培例2~6、比較栽培例1~2のマンネンタケを用いて、上記の製造例1A~1Cと同様に抽出し、製造例2A~6C、比較製造例1A~2Cとした(表2)。
【0071】
【表2】
【実施例0072】
実験例1 幹細胞増殖促進試験
【0073】
(実験例1)幹細胞に対する増殖促進効果の評価
ヒト幹細胞培養液(TOYOBO社製)を用いて培養したヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞(DSファーマバイオメディカル社製)を、6cmディッシュに3×10個播種し、被験物質を表3に示す最終濃度になるように添加し、3日間培養を続けた。
【0074】
3日間の培養後、細胞をPBS(-)にて3回洗浄した後、ラバーポリスマンにて集め、それぞれの細胞数をカウントした。被験物質未添加時の総細胞数をコントロールとし、コントロールを100(%)とした場合の、被験物質添加時の細胞数の増減(%)を算出し、幹細胞増殖促進効果の評価を行った。これらの試験結果を以下の表3に示す。

【0075】
【表3】
【0076】
表3に示すように、本発明のバガスを用いて栽培したマンネンタケの抽出物には、従来のマンネンタケの抽出物より顕著に高い幹細胞増殖促進効果が認められた。特に、熱水抽出物は本発明の抽出物と従来の抽出物との差がより顕著であった。尚、上述のコントロールの値を100%とした場合、培養開始時のヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞数は、25%であった。尚、本実験例で用いた幹細胞以外に、表皮幹細胞、真皮幹細胞及び造血幹細胞についても同様な試験を行ったところ、本発明のバガスを用いて栽培したマンネンタケの抽出物には、従来のマンネンタケの抽出物より顕著に高い幹細胞増殖促進効果が認められた。
【0077】
次に、本発明のマンネンタケの抽出物を用いて調製した処方例を示す。尚、混合抽出物とは、各抽出物を等量混合したものを示す。
【実施例0078】
処方例1 化粧水
処方 含有量(%)
1.製造例1Aの抽出物 1.0
2.1,3-ブチレングリコール 8.0
3.グリセリン 2.0
4.キサンタンガム 0.02
5.クエン酸 0.01
6.クエン酸ナトリウム 0.1
7.エタノール 5.0
8.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
9.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.) 0.1
10.香料 適量
11.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1~6及び11と、成分7~10をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合し濾過して製品とする。
【0079】
処方例1において、製造例1Aの抽出物を製造例2Aの抽出物、製造例3Aの抽出物、製造例4Aの抽出物、製造例5Aの抽出物及び製造例6Aの抽出物に置き換えたものを、それぞれ、処方例2、3、4、5及び6とした。
【0080】
処方例7 クリーム
処方 含有量(%)
1.製造例1A、2A、3A、4A、5A及び6Aの混合抽出物 0.5
2.スクワラン 5.5
3.オリーブ油 3.0
4.ステアリン酸 2.0
5.ミツロウ 2.0
6.ミリスチン酸オクチルドデシル 3.5
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
8.ベヘニルアルコール 1.5
9.モノステアリン酸グリセリン 2.5
10.香料 0.1
11.パラオキシ安息香酸メチル 0.25
12.1,3-ブチレングリコール 8.5
13.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分2~9を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び11~13を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分10を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0081】
処方例7において、製造例1A、2A、3A、4A、5A及び6Aの混合抽出物を製造例1B、2B、3B、4B、5B及び6Bの混合抽出物に置き換えたものを処方例8とした。
【0082】
処方例9 乳液
処方 含有量(%)
1.製造例1Cの抽出物 1.0
2.スクワラン 5.0
3.オリーブ油 5.0
4.ホホバ油 5.0
5.セタノール 1.5
6.モノステアリン酸グリセリン 2.0
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
8.ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(20E.O.) 2.0
9.香料 0.1
10.プロピレングリコール 1.0
11.グリセリン 2.0
12.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
13.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1~8を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分10~13を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分9を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0083】
処方例9において、製造例1Cの抽出物を、製造例2Cの抽出物、製造例3Cの抽出物、製造例4Cの抽出物及び製造例5Cの抽出物に置き換えたものを、それぞれ、処方例10、11、12及び13とした。
【0084】
処方例14 ゲル剤
処方 含有量(%)
1.製造例1C及び2Cの混合抽出物 0.01
2.エタノール 5.0
3.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
4.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 0.1
5.香料 適量
6.1,3-ブチレングリコール 5.0
7.グリセリン 5.0
8.キサンタンガム 0.1
9.カルボキシビニルポリマー 0.2
10.水酸化カリウム 0.2
11.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1~5と、成分6~11をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合して製品とする。
【0085】
処方例15 パック
処方 含有量(%)
1.製造例1Aの抽出物 0.1
2.製造例1C及び2Cの混合抽出物 0.1
3.ポリビニルアルコール 12.0
4.エタノール 5.0
5.1,3-ブチレングリコール 8.0
6.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
7.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(20E.O.) 0.5
8.クエン酸 0.1
9.クエン酸ナトリウム 0.3
10.香料 適量
11.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1~11を均一に溶解し製品とする。
【0086】
処方例16 ファンデーション
処方 含有量(%)
1.製造例1B、2B、3B、4B、5B及び6Bの混合抽出物 1.0
2.ステアリン酸 2.4
3.ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(20E.O.) 1.0
4.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.0
5.セタノール 1.0
6.液状ラノリン 2.0
7.流動パラフィン 3.0
8.ミリスチン酸イソプロピル 6.5
9.カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1
10.ベントナイト 0.5
11.プロピレングリコール 4.0
12.トリエタノールアミン 1.1
13.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
14.二酸化チタン 8.0
15.タルク 4.0
16.ベンガラ 1.0
17.黄酸化鉄 2.0
18.香料 適量
19.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分2~8を加熱溶解し、80℃に保ち油相とする。成分19に成分9をよく膨潤させ、続いて、成分1及び10~13を加えて均一に混合する。これに粉砕機で粉砕混合した成分14~17を加え、ホモミキサーで撹拌し75℃に保ち水相とする。この油相に水相をかき混ぜながら加え、乳化する。その後冷却し、45℃で成分18を加え、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
【0087】
処方例17 浴用剤
処方 含有量(%)
1.製造例1Aの抽出物 5.0
2.製造例2Aの抽出物 1.0
3.炭酸水素ナトリウム 50.0
4.黄色202号(1) 適量
5.香料 適量
6.硫酸ナトリウムにて全量を100とする
[製造方法]成分1~6を均一に混合し製品とする。
【0088】
処方例18 軟膏
処方 含有量(%)
1.製造例1A、2A、3A、4A、5A及び6Aの混合抽出物 0.5
2.ポリオキシエチレンセチルエーテル(30E.O.) 2.0
3.モノステアリン酸グリセリン 10.0
4.流動パラフィン 5.0
5.セタノール 6.0
6.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
7.プロピレングリコール 10.0
8.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分2~5を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び6~8を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
【0089】
処方例19 散剤
処方 含有量(%)
1.製造例1B、2B、3B、4B、5B及び6Bの混合抽出物 20.0
2.乾燥コーンスターチ 30.0
3.微結晶セルロース 50.0
[製造方法]成分1~3を混合し、散剤とする。
【0090】
処方例20 錠剤
処方 含有量(%)
1.製造例1C、2C、3C、4C、5C及び6Cの混合抽出物 3.0
2.製造例1Aの抽出物 0.1
3.乾燥コーンスターチ 26.9
4.カルボキシメチルセルロースカルシウム 20.0
5.微結晶セルロース 40.0
6.ポリビニルピロリドン 7.0
7.タルク 3.0
[製造方法]成分1~5を混合し、次いで成分6の水溶液を結合剤として加えて顆粒成形する。成形した顆粒に成分7を加えて打錠する。1錠0.52gとする。
【0091】
処方例21 錠菓
処方 含有量(%)
1.製造例1A、2A、3A、4A、5A及び6Aの混合抽出物 0.5
2.乾燥コーンスターチ 50.0
3.エリスリトール 40.0
4.クエン酸 5.0
5.ショ糖脂肪酸エステル 3.0
6.香料 適量
7.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1~4及び7を混合し、顆粒成形する。成形した顆粒に成分5及び6を加えて打錠する。1粒1.0gとする。
【0092】
処方例22 飲料
処方 含有量(%)
1.製造例1A、2A、3A、4A、5A及び6Aの混合抽出物 2.0
2.果糖ブドウ糖液糖 12.5
3.クエン酸 0.1
4.香料 0.05
5.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1~5を混合し、飲料とする。
【0093】
処方例23 粉末飲料
処方 含有量(%)
1.製造例1A、2A、3A、4A、5A及び6Aの混合抽出物 10.0
2.粉糖 65.0
3.粉末ピーチ果汁 15.0
4.L-アスコルビン酸 8.0
5.結晶クエン酸 1.2
6.クエン酸ナトリウム 0.75
7.アスパルテーム 0.02
8.粉末ピーチ香料 0.03
[製造方法]成分1~8を混合し、粉末飲料とする。
【産業上の利用可能性】
【0094】
以上のことから、本発明のマンネンタケの抽出物は、従来の方法により栽培したマンネンタケの抽出物と比較して、より優れた幹細胞増殖促進作用を示した。よって、本発明のマンネンタケの抽出物は、幹細胞増殖促進効果が大変優れていることから、再生医療や再生美容等の分野への応用が期待される。