(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116500
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240821BHJP
【FI】
H02M7/48 R
H02M7/48 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022160
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高野 幸雄
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA11
5H770DA03
5H770EA01
5H770HA02Y
5H770HA02Z
5H770HA03Z
5H770HA14Z
5H770HA15Z
5H770JA11Z
5H770JA13Z
5H770JA17Z
5H770KA01Y
(57)【要約】
【課題】電力系統に実際に出力される電圧が電圧指令値からずれることを防止することが
可能な電電力変換装置を提供する。
【解決手段】リアクトル及びコンデンサを含むフィルタを介して電力系統に電力を供給す
る電力変換装置であって、前記リアクトルに流れる第1電流の測定値と、前記コンデンサ
の電圧を目標電圧とするための前記第1電流の電流指令値との第1の差を計算する第1減
算部と、前記第1の差に応じた値と、前記コンデンサの電圧の電圧指令値とを加算する加
算部と、前記加算部の加算結果に応じた出力電圧を、前記フィルタに出力する電圧出力部
と、を含む電力変換装置。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアクトル及びコンデンサを含むフィルタを介して電力系統に電力を供給する電力変換
装置であって、
前記リアクトルに流れる第1電流の測定値と、前記コンデンサの電圧を目標電圧とする
ための前記第1電流の電流指令値との第1の差を計算する第1減算部と、
前記第1の差に応じた値と、前記コンデンサの電圧の電圧指令値とを加算する加算部と
、
前記加算部の加算結果に応じた出力電圧を、前記フィルタに出力する電圧出力部と、
を含む電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記コンデンサの前記目標電圧の振幅、周波数、及び位相に基づいて、前記電圧指令値
を出力する電圧指令値出力部と、
前記目標電圧の微分結果の振幅、周波数、及び位相と、前記コンデンサの容量とに基づ
いて、前記コンデンサに流れる第2電流を計算する計算部と、
前記リアクトル及び前記コンデンサが接続されたノードから前記電力系統に流れる第3
電流の測定値と、前記第2電流の目標値とに基づいて、前記第1電流の前記電流指令値を
出力する電流指令値出力部と、
を更に含む電力変換装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電力変換装置であって、
前記目標電圧の振幅の目標値と、前記コンデンサの電圧の振幅との第2の差に基づいて
、前記目標電圧の振幅を計算する振幅計算部と、
を更に含む電力変換装置。
【請求項4】
リアクトル及びコンデンサを含むフィルタを介して電力系統に電力を供給する電力変換
装置であって、
前記コンデンサの電圧の電圧指令値と、前記コンデンサの電圧の測定値との差を計算す
る第1減算部と、
前記コンデンサの電圧が前記電圧指令値である場合における前記コンデンサに流れる第
1電流の目標値と、前記リアクトル及び前記コンデンサが接続されたノードから前記電力
系統に流れる第2電流の測定値と、前記第1減算部の減算結果に応じた第1の値とに基づ
いて、前記コンデンサの電圧を目標電圧とするための前記リアクトルに流れる第3電流の
電流指令値を出力する電流指令値出力部と、
前記電流指令値と、前記第3電流の測定値との差を計算する第2減算部と、
前記第2減算部の減算結果に応じた第2の値と、前記コンデンサの電圧の測定値とを加
算する加算部と、
前記加算部の加算結果に応じた出力電圧を、前記フィルタに出力する電圧出力部と、
を含む電力変換装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電力変換装置であって、
前記電流指令値出力部から出力された前記電流指令値を所定の範囲内に制限し、前記第
2減算部に出力する制限部
を更に含む電力変換装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電力変換装置であって、
前記コンデンサの前記目標電圧の振幅、周波数、及び位相に基づいて、前記電圧指令値
を出力する電圧指令値出力部と、
前記目標電圧の微分結果の振幅、周波数、及び位相と、前記コンデンサの容量とに基づ
いて、前記コンデンサに流れる前記第1電流を計算する計算部と、
を更に含む電力変換装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電力変換装置であって、
前記第1減算部の減算結果に所定の定数の逆数を乗ずることによって前記第1の値を出
力する第1出力部と、
前記第2減算部の減算結果に前記定数を乗ずることによって前記第2の値を出力する第
2出力部と、
を更に含む電力変換装置。
【請求項8】
請求項4~7の何れか1項に記載の電力変換装置であって、
前記目標電圧の振幅の目標値と、前記コンデンサの電圧の振幅との差に基づいて、前記
目標電圧の振幅を計算する振幅計算部と、
を更に含む電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
同期発電機は、回転体が有する慣性により、電力系統の周波数の維持に貢献する。近年
、同期発電機が有する回転体を模擬する処理を行いつつインバータの出力を制御する擬似
同期発電機が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般的に擬似同期発電機は、電流の高調波成分を除去するためのフィルタを
介して電力系統に設けられる。このような場合、フィルタが介在することによって、電力
系統に実際に出力される電圧が電圧指令値から大きくずれる場合がある。
【0005】
特許文献1に記載された擬似同期発電機においては、このような電圧指令値からのズレ
を抑制するための対策は開示されていない。
【0006】
本発明はこのような課題を鑑みてなされたものであり、電力系統に実際に出力される電
圧が、電圧指令値からずれることを防止することが可能な電力変換装置を提供することを
目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための一の発明は、リアクトル及びコンデンサを含むフィルタを介
して電力系統に電力を供給する電力変換装置であって、前記リアクトルに流れる第1電流
の測定値と、前記コンデンサの電圧を目標電圧とするための前記第1電流の電流指令値と
の第1の差を計算する第1減算部と、前記第1の差に応じた値と、前記コンデンサの電圧
の電圧指令値とを加算する加算部と、前記加算部の加算結果に応じた出力電圧を、前記フ
ィルタに出力する電圧出力部と、を含む電力変換装置である。
【0008】
また、リアクトル及びコンデンサを含むフィルタを介して電力系統に電力を供給する電
力変換装置であって、前記コンデンサの電圧の電圧指令値と、前記コンデンサの電圧の測
定値との差を計算する第1減算部と、前記コンデンサの電圧が前記電圧指令値である場合
における前記コンデンサに流れる第1電流の目標値と、前記リアクトル及び前記コンデン
サが接続されたノードから前記電力系統に流れる第2電流の測定値と、前記第1減算部の
減算結果に応じた第1の値とに基づいて、前記コンデンサの電圧を目標電圧とするための
前記リアクトルに流れる第3電流の電流指令値を出力する電流指令値出力部と、前記電流
指令値と、前記第3電流の測定値との差を計算する第2減算部と、前記第2減算部の減算
結果に応じた第2の値と、前記コンデンサの電圧の測定値とを加算する加算部と、前記加
算部の加算結果に応じた出力電圧を、前記フィルタに出力する電圧出力部と、を含む電力
変換装置である。本発明の他の特徴については、本明細書の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電力系統に実際に出力される電圧が、電圧指令値からずれることを防
止することが可能な電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】電力変換装置2(5~7)が設けられた電力系統1の一例を説明する図である。
【
図2】一般的な電力変換装置2における制御装置20の機能ブロックの一例を説明する図である。
【
図3】実施形態の電力変換装置5における制御装置50の機能ブロックの一例を説明する図である。
【
図4】実施形態の電力変換装置6における制御装置60の機能ブロックの一例を説明する図である。
【
図5】実施形態の電力変換装置7における制御装置70の機能ブロックの一例を説明する図である。
【
図6】電力変換装置6及び電力変換装置7についてのシミュレーション結果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
==一般的な電力変換装置==
実施形態の電力変換装置の説明をする前に、先ず、一般的な電力変換装置2について説
明し、一般的な電力変換装置2が有する課題を明確にする。
【0012】
図1は、電力系統1に設けられた一般的な電力変換装置2の一例を説明する図である。
電力系統は、配電線10を介して発電所で発電された交流電力を需要家の設備に供給する
システムである。
【0013】
電力変換装置2は、フィルタ3を介して電力系統1に設けられている。フィルタ3と電
力系統1との間には、スイッチ4が設けられている。以下、フィルタ3、電力変換装置2
、スイッチ4の順に説明する。
【0014】
<<フィルタ3>>
フィルタ3は、電力変換装置2から電力系統1に流れる電流の高調波成分を除去するた
めに設けられている。フィルタ3には、電力変換装置2から出力された電流Isが入力さ
れる。そして、フィルタ3は、電流Isから高調波成分が除去された電流Ibを電力系統
1に出力する。
【0015】
フィルタ3は、リアクトルL及びコンデンサCを含む。リアクトルLは、一端が電力変
換装置2の出力に接続され、他端が電力系統1に接続されている。コンデンサCは、一端
がリアクトルLと電力系統1との間に接続されている。
【0016】
以下の説明では、コンデンサCの一端がリアクトルLと電力系統1との間に接続される
点を、「ノードN」と称する。
【0017】
<<電力変換装置2>>
電力変換装置2は、回転体を有する同期発電機を模擬する所謂擬似同期発電機である。
電力変換装置2は、制御装置20と、電力変換部23とを備える。以下、それぞれについ
て説明する。
【0018】
<制御装置20>
以下では、先ず、制御装置20のハードウェア構成について説明し、次いで、制御装置
20の機能ブロックについて説明する。
【0019】
・制御装置20のハードウェア構成
制御装置20は、DSP(Digital Signal Processor)20
0と、記憶装置201とを備える(
図1)。
【0020】
[DSP200]
DSP200は、記憶装置201に記憶された所定のプログラムを実行することにより
、制御装置20が有する様々な機能を実現する。
【0021】
[記憶装置201]
記憶装置201は、DSP200によって実行又は処理される各種データを格納する非
一時的な(例えば不揮発性の)記憶装置を含む。
【0022】
記憶装置201は、更に、例えばRAM(Random-Access Memory)等を有し、様々なプ
ログラムやデータ等の一時的な記憶領域として用いられる。
【0023】
・制御装置20の機能ブロック
図2は、制御装置20の機能ブロックを説明する図である。制御装置20は、振幅計算
部210と、電圧指令値出力部211と、PWMパルス生成部212と、を含む。以下、
それぞれについて説明する。
【0024】
[振幅計算部210]
振幅計算部210は、ノードNにおける目標電圧の振幅Vamp
**を計算する。振幅
計算部210としては、所謂自動電圧調整器を用いることができる。
【0025】
振幅Vamp
**は具体的には、ノードNにおける目標電圧の振幅の目標値Vamp
*
と、コンデンサの電圧の振幅の実測値Vampとの差に基づいて計算される。
【0026】
振幅計算部210は、減算部210a及び計算部210bを含む。減算部210aは、
ノードNにおける目標電圧の振幅の目標値Vamp
*と、コンデンサの電圧の振幅の実測
値Vampとの差を計算する。計算部210bは、減算部210aの減算結果が0(零)
に近づくよう目標電圧の振幅Vamp
**を計算する。
【0027】
[電圧指令値出力部211]
電圧指令値出力部211は、コンデンサCの目標電圧の振幅Vamp
**、周波数f*
、及び位相2πf*tに基づいて、電圧指令値VC
*を出力する。
【0028】
電圧指令値V
C
*は、具体的には次式で計算される。
【数1】
ここで、f
*はノードNにおける電圧V
Cの周波数の指令値であり、tは時間である。
【0029】
[PWMパルス生成部212]
PWMパルス生成部212は、例えば三角波で実現される搬送波と、基本波としての正
弦波との交点を検出する。これによって、PWMパルス生成部212は、PWMパルスの
デューティ比を決定し、決定したデューティ比を有するPWMパルス信号VPWMを生成
する。
【0030】
PWMパルス信号VPWMは、電力変換部23に出力され、電力変換部23のインバー
タ回路が駆動される。
【0031】
<電力変換部23>
電力変換部23は、直流電源と、複数のスイッチング素子を含むインバータ回路(図示
せず)とを有する。インバータ回路は、直流電源からの直流電圧を交流電圧に変換し、電
力系統1にフィルタ3を介して出力する。
【0032】
このとき、インバータ回路は、PWMパルス生成部212からの出力であるPWMパル
ス信号VPWMに基づいて生成された電圧を出力する。ここで出力される電圧は、ノード
Nにおける電圧指令値Vである。
【0033】
<<スイッチ4>>
スイッチ4は、電力系統1と電力変換装置2との間に接続されている。スイッチ4は、例
えば遮断器である。
【0034】
電力系統1が通常の状態であればスイッチはオンであり、電力変換装置2は電力系統1
と電力のやり取りが可能である。電力系統1に故障等の異常が発生した場合にはスイッチ
はオフに切り替わり、電力変換装置2は電力系統1と切り離される。
【0035】
一般的な電力変換装置2は、電力変換部23の出力電圧Vを制御するが、フィルタを介
して電力系統に設けられるため、ノードNにおける電圧VCには目標値からのズレが生じ
る。そのため、電力変換装置2は、電力系統1と所望の電力をやり取りできない場合があ
る。
【0036】
後述する実施形態の電力変換装置5~7は、ノードNの電圧が電圧指令値からずれるこ
とを抑制することが可能な装置である。
【0037】
==第1実施形態==
<<電力変換装置5>>
前述のように、一般的な電力変換装置2においては、ノードNの電圧が電圧指令値から
ずれるという課題があった。本実施形態の電力変換装置5は、ノードNの電圧を電圧指令
値からずれることを抑制することが可能な装置である。
【0038】
図3は、本実施形態の電力変換装置5の一例を説明する図であって、特に制御装置50
の機能ブロックの一例を説明する図である。
【0039】
詳細は後述するが、制御装置50は、振幅計算部210と、ブロックB1と、ブロック
B2と、加算部217と、PWMパルス生成部212とを含む。
【0040】
ここで、ブロックB1は、電力変換装置5から出力される電圧を制御するための信号を
生成するブロックである。また、ブロックB2は、電力変換装置5から出力される電流を
制御するための信号を生成するブロックである。
【0041】
本実施形態では、ブロックB1は、上述した一般的な電力変換装置2の電圧指令値出力
部211から構成される。従って、制御装置50は、一般的な電力変換装置2の制御装置
20と比べると、ブロックB2を更に含む点で異なっている。
【0042】
ブロックB2を更に含むことによって、電力変換装置5は、ノードNの電圧のズレを抑
制することが可能となる。以下、詳細に説明する。
【0043】
なお、電力変換部23とフィルタ3については一般的な電力変換装置2において説明し
たものと同じであるため、以下では説明を省略する。
【0044】
<制御装置50>
制御装置50は、振幅計算部210と、ブロックB1と、ブロックB2と、加算部21
7と、PWMパルス生成部212と、を含む(
図3)。
【0045】
振幅計算部210と、PWMパルス生成部212とについては一般的な電力変換装置2
において説明したものと同じであるため、説明を省略する。また、ブロックB1について
も、ブロックB1を構成する電圧指令値出力部211は一般的な電力変換装置2において
説明したものと同じであるため、説明を省略する。
【0046】
・ブロックB2
ブロックB2は、計算部213と、電流指令値出力部214と、減算部215と、出力
部216とを含む。以下、それぞれについて説明する。
【0047】
[計算部213]
計算部213は、コンデンサCに流れる電流ICの目標値IC
*を計算する。目標値I
C
*は、目標電圧の微分結果の振幅Vamp
**、周波数f*、及び位相2πf*t、コ
ンデンサCの容量Cとに基づいて計算される。
【0048】
電流I
Cの目標値I
C
*は、具体的には次式を用いて計算される。
【数2】
ここで、2つ目の等号では数式1を用いた。
【0049】
[電流指令値出力部214]
電流指令値出力部214は、リアクトルLに流れる電流の電流指令値Is
*を出力する
。電流指令値Is
*は、ノードNにおける電圧VCが、電圧指令値VC
*となる場合にリ
アクトルLに流れる電流である。
【0050】
電流指令値Is
*は、リアクトルL及びコンデンサCが接続されたノードNから電力系
統に流れる電流の測定値Ibと、電流Icの目標値IC
*とに基づいて出力される。
【0051】
電流指令値Is
*は、具体的には、電流の測定値Ibと、電流の目標値IC
*との加算
値である。
【0052】
[減算部215]
減算部215は、リアクトルLに流れる電流の測定値Isと、電流指令値出力部214
から出力された電流指令値Is
*との差を計算する。
【0053】
[出力部216]
出力部216は、減算部215の減算結果に所定の定数Gを乗ずることによって出力値
V*を出力する。
【0054】
出力値V
*は、具体的には次式で計算される。
【数3】
【0055】
[加算部217]
加算部217は、減算部215が計算した差に応じた値と、電圧指令値出力部211が
出力したコンデンサCの電圧の電圧指令値VC
*とを加算する。
【0056】
ここで、「減算部215が計算した差に応じた値」とは、本実施形態では数式3に示し
た出力部216からの出力値V*としている。
【0057】
加算部217の加算結果V**は、数式3のV*に対してVC
*を加算することにより
、次式で表わされる。
【0058】
【0059】
加算部217の加算結果V**(数式3)は、PWMパルス生成部212に入力される
。これ以降の制御装置50の処理は、上述の制御装置20の処理と同じである。
【0060】
以上説明した電力変換装置5によれば、ノードNにおける電圧VCを電圧指令値VC
*
になるよう制御することができる。
【0061】
これは、ブロックB2により、リアクトルLに流れる電流Isが、電流指令値Is
*と
なるように制御されることによる。リアクトルLに流れる電流Isが、電流指令値Is
*
となると、ノードNにおける電圧VCは、電圧指令値VC
*となる。
【0062】
ノードNにおける電圧VCが電圧指令値VC
*となることにより、電力系統1に実際に
出力される電圧は電圧指令値VC
*となる。
【0063】
なお、本実施形態の制御装置50では振幅計算部210を含むこととしたが、これは任
意の構成であって、含まれなくてもよい。
【0064】
<<対応関係>>
ここで、本実施形態の電力変換装置5の対応関係を整理する。先ず、本実施形態の電力
変換装置5は、加算部217において、出力部216からの出力値V*に対し、電圧指令
値VC
*が加算されることに留意する。
【0065】
これに対し、詳細は後述するが、他の実施形態の電力変換装置6及び7は、加算部21
7において、出力部216からの出力値V*に対し、コンデンサCの電圧の測定値VCが
加算される。
【0066】
本実施形態のように、加算部217において電圧指令値Vc
*が加算される電力変換装
置においては、以下の対応関係に従うこととする。
【0067】
減算部215は「第1減算部」に相当する。リアクトルLに流れる電流は、「第1電流
」に相当する。コンデンサCに流れる電流ICは、「第2電流」に相当する。ノードNか
ら電力系統に流れる電流は、「第3電流」に相当する。
【0068】
リアクトルLに流れる電流の測定値Isと、コンデンサCの電圧を目標電圧とするため
の電流の電流指令値Is
*との差は、「第1の差」に相当する。ノードNにおける目標電
圧の振幅の目標値Vamp
*と、コンデンサの電圧の振幅の実測値Vampとの差は、「
第2の差」に相当する。出力部216の出力値V*は、「第1の値」に相当する。
【0069】
また、PWMパルス生成部212と、電力変換部23とを合わせたものは、「電圧出力
部」に相当する。つまり、電圧出力部は、加算部217の加算結果に応じた出力電圧を、
フィルタ3に出力する。
【0070】
==第2実施形態==
【0071】
図4は、本実施形態の電力変換装置6の一例を説明する図であって、特に制御装置60
の機能ブロックの一例を説明する図である。
【0072】
制御装置60の機能ブロックは第1実施形態の制御装置50の機能ブロックとは異なる
が、仮に電力系統1の状態が同一である場合に、同一のPWMパルス信号を出力する。つ
まり、制御装置60は、制御装置50と等価な装置である。
【0073】
制御装置60は、第1実施形態の制御装置50と比べると、減算部218と、出力部2
19とを更に含む。また、制御装置60は、電流指令値出力部220の構成が異なってい
る。また、制御装置60は、加算部217に入力される信号が異なっている。
【0074】
[減算部218]
減算部218は、コンデンサCの電圧の電圧指令値VC
*と、コンデンサCの電圧の測
定値VCとの差を計算する。
[出力部219]
出力部219は、減算部218の減算結果に所定の定数Gの逆数を乗ずることによって
出力値I*を出力する。ここで定数Gは、出力部216において減算部215の減算結果
に乗じられる定数である。
【0075】
[電流指令値出力部220]
電流指令値出力部220は、リアクトルLに流れる電流の電流指令値Is
*を出力する
。電流指令値Is
*は、コンデンサCの電圧VCを目標電圧VC
*とするためのリアクト
ルLに流れる電流である。
【0076】
電流指令値Is
*は、電流ICの目標値IC
*と、電流の測定値Ibと、減算部218
の減算結果に応じた値とに基づいて出力される。
【0077】
ここで、電流ICは、コンデンサCの電圧VCが電圧指令値VC
*である場合における
コンデンサCに流れる電流である。また、電流の測定値Ibは、リアクトルL及びコンデ
ンサCが接続されたノードNから電力系統1に流れる電流の測定値である。また、「減算
部218の減算結果に応じた値」とは、本実施形態では出力部219からの出力値I*で
ある。
【0078】
電流指令値Is
*は、具体的には、電流の測定値Ibと、電流ICの目標値IC
*と、
出力値I*との加算値である。
【0079】
[加算部217]
加算部217は、本実施形態では、減算部215の減算結果に応じた値と、コンデンサ
Cの電圧の測定値VCとを加算する。
【0080】
ここで「減算部215の減算結果に応じた値」とは、本実施形態では出力部216から
の出力値V*である。
【0081】
出力値V
*は、具体的には次式で表わされる。
【数5】
【0082】
従って、加算部217の加算結果V
**は、数式5のV
*に対してV
Cを加算すること
により、次式で表わされる。
【数6】
【0083】
本実施形態の加算結果V**は、第1実施形態における加算結果V**(数式4)に等
しい。つまり、制御装置60は、第1実施形態の制御装置50と等価であることが示され
た。
【0084】
加算部217の加算結果V**(数式5)は、PWMパルス生成部212に入力される
。これ以降の制御装置60の処理は、上述の制御装置50の処理と同じである。
【0085】
以上説明した電力変換装置6によれば、電力変換装置5と同様に、ノードNにおける電
圧VCを電圧指令値VC
*になるよう制御することができる。
【0086】
更に、本実施形態の制御装置60においては、コンデンサCの電圧の測定値VCが入力
される。このことから、本実施形態の電力変換装置6においては、測定値VCをフィード
バックした上で電圧指令値Vが出力されると言える。
【0087】
なお、本実施形態では、出力部216で入力値に乗じる定数(G)と、出力部219で
入力値に乗じる定数(1/G)とは互いに逆数の関係とした。このような関係とすれば、
制御装置60は、制御装置50と等価となる。
【0088】
しかし、出力部216で入力値に乗じる定数と、出力部219で入力値に乗じる定数と
の関係はこれに限られず、適宜好ましい値が設定されればよい。
【0089】
<<対応関係>>
ここで、本実施形態の電力変換装置6の対応関係を整理する。先ず、本実施形態の電力
変換装置6は、加算部217において、出力部216からの出力値V*に対し、コンデン
サCの電圧の測定値VCが加算されることに留意する。
【0090】
これに対し、前述のように、第1実施形態の電力変換装置5は、加算部217において
、出力部216からの出力値V
*に対し、電圧指令値V
c
*が加算される(
図3)。
【0091】
本実施形態のように、加算部217においてコンデンサCの電圧の測定値VCが加算さ
れる電力変換装置においては、以下の対応関係に従うこととする。
【0092】
減算部215は、「第2減算部」に相当する。減算部218は、「第1減算部」に相当
する。出力部219は、「第1出力部」に相当する。出力部216は、「第2出力部」に
相当する。
【0093】
電流ICは、「第1電流」に相当する。リアクトルL及びコンデンサCが接続されたノ
ードNから電力系統1に流れる電流Ibは、「第2電流」に相当する。リアクトルLに流
れる電流Isは「第3電流」に相当する。
【0094】
「減算部218の減算結果に応じた値」は、「第1の値」に相当する。「減算部215
の減算結果に応じた値」は、「第2の値」に相当する。
【0095】
なお、後述する第3実施形態においても、本実施形態の対応関係と同じである。
【0096】
==第3実施形態==
図5は、本実施形態の電力変換装置7の一例を説明する図であって、特に制御装置70
の機能ブロックの一例を説明する図である。本実施形態の電力変換装置7は、過電流の発
生を抑制することができる装置である。
【0097】
電力変換装置7は、第2実施形態と比べると、制御装置70が制限部221を更に含む
点で異なっている。他の構成については第2実施形態と同様であるため、説明を省略する
。なお、本実施形態の電力変換装置7の対応関係も、第2実施形態の電力変換装置6と同
じである。
【0098】
[制限部221]
制限部221は、電流指令値出力部220から出力された電流指令値Is
*を所定の範
囲内に制限し、制限された電流指令値Is
**を減算部215に出力する。
【0099】
ここで「所定の範囲内」とは、電力変換装置7の定格電流の範囲内の所定の範囲内とす
ればよい。
【0100】
以上説明した電力変換装置7によれば、電力変換装置6と同様に、ノードNにおける電
圧VCを電圧指令値VC
*になるよう制御した上で、過電流の発生を抑制することができ
る。
【0101】
<数値シミュレーション結果>
本実施形態の電力変換装置7及び第2実施形態の電力変換装置6を想定した数値シミュ
レーションの結果について説明する。
【0102】
図6は、電力変換装置6及び7を想定したシミュレーションの結果を説明する図である
。この図において、(a)は電力系統1に仮定した周波数の時系列、(b)は第2実施形
態の電力変換装置6の出力電流の計算結果、(c)は本実施形態の電力変換装置7の出力
電流の計算結果である。
【0103】
この計算では、ステップ状の周波数変動を仮定した(
図6(a))。時刻t=10.0
[s]前及び時刻t=10.06[s]後においては平常時の周波数である50[Hz]
と仮定した。時刻t=10.00~10.06[s]においては、50.8[Hz]と仮
定した。
【0104】
図6(b)及び(c)は、縦軸は出力電流であり、電力変換装置6及び7の定格電流が
1に相当するように単位化されている。また、これらの図において、三相のそれぞれの交
流電流が示されている。
【0105】
これらの結果から、本実施形態の電力変換装置7によれば、電力系統1の周波数変動が
生じた後において、出力電流が定格電流を超えずに推移していることがわかる。従って、
本実施形態の電力変換装置7によれば、過電流の発生を防止することが可能となる。
【0106】
==まとめ==
以上、第1実施形態の電力変換装置5は、リアクトルL及びコンデンサCを含むフィル
タ3を介して電力系統1に電力を供給する電力変換装置であって、リアクトルLに流れる
第1電流の測定値と、コンデンサCの電圧を目標電圧とするための第1電流の電流指令値
との第1の差を計算する減算部215と、第1の差に応じた値と、コンデンサCの電圧の
電圧指令値とを加算する加算部217と、加算部217の加算結果に応じた出力電圧を、
フィルタに出力する電圧出力部と、を含む。
【0107】
このような構成によれば、電力変換装置5がフィルタ3を介して電力系統1に設けられ
ている場合に、電力系統1に実際に出力される電圧がフィルタ3によってずれることを抑
えることができる。つまり、電力系統1に実際に出力される電圧を所望の値に制御するこ
とができる。
【0108】
また、第1実施形態の電力変換装置5は、コンデンサCの目標電圧の振幅、周波数、及
び位相に基づいて、電圧指令値を出力する電圧指令値出力部211と、目標電圧の微分結
果の振幅、周波数、及び位相と、コンデンサCの容量とに基づいて、コンデンサCに流れ
る第2電流を計算する計算部213と、リアクトルL及びコンデンサCが接続されたノー
ドNから電力系統1に流れる第3電流の測定値と、第2電流の目標値とに基づいて、第1
電流の電流指令値を出力する電流指令値出力部214と、を更に含む。このような構成に
よれば、リアクトルの電流の指令値を正確に計算できるため、電力系統1に出力される電
圧の精度が向上する。
【0109】
また、第1実施形態の電力変換装置5は、目標電圧の振幅の目標値と、コンデンサCの
電圧の振幅との第2の差に基づいて、目標電圧の振幅を計算する振幅計算部210と、を
更に含む。このような構成によれば、コンデンサCの電圧指令値を精度良く計算すること
ができるため、電力系統1に出力される電圧の精度が更に向上する。
【0110】
第2及び第3実施形態の電力変換装置6及び7は、リアクトルL及びコンデンサCを含
むフィルタ3を介して電力系統1に電力を供給する電力変換装置であって、コンデンサC
の電圧の電圧指令値と、コンデンサCの電圧の測定値との差を計算する減算部218と、
コンデンサCの電圧が電圧指令値である場合におけるコンデンサCに流れる第1電流の目
標値と、リアクトルL及びコンデンサCが接続されたノードNから電力系統1に流れる第
2電流の測定値と、減算部218の減算結果に応じた第1の値とに基づいて、コンデンサ
Cの電圧を目標電圧とするためのリアクトルLに流れる第3電流の電流指令値を出力する
電流指令値出力部220と、電流指令値と、第3電流の測定値との差を計算する減算部2
15と、減算部215の減算結果に応じた第2の値と、コンデンサCの電圧の測定値とを
加算する加算部217と、加算部217の加算結果に応じた出力電圧を、フィルタ3に出
力する電圧出力部と、を含む。
【0111】
このような構成によれば、電力変換装置6又は7がフィルタ3を介して電力系統1に設
けられている場合に、電力系統1に実際に出力される電圧がフィルタ3によってずれるこ
とを抑えることができる。つまり、電力系統1に実際に出力される電圧を所望の値に制御
することができる。
【0112】
また、第3実施形態の電力変換装置7は、電流指令値出力部220から出力された電流
指令値を所定の範囲内に制限し、減算部215に出力する制限部221を更に含む。この
ような構成によれば、過電流の発生を防止することができる。
【0113】
また、第2及び第3実施形態の電力変換装置6及び7は、コンデンサの目標電圧の振幅
、周波数、及び位相に基づいて、電圧指令値を出力する電圧指令値出力部211と、目標
電圧の微分結果の振幅、周波数、及び位相と、コンデンサの容量とに基づいて、コンデン
サに流れる第1電流を計算する計算部213と、を更に含む。このような構成によれば、
リアクトルLの電流の指令値を正確に計算できるため、電力系統1に出力される電圧の精
度が向上する。
【0114】
また、第2及び第3実施形態の電力変換装置6及び7は、減算部218の減算結果に所
定の定数の逆数を乗ずることによって第1の値を出力する出力部219と、減算部215
の減算結果に定数を乗ずることによって第2の値を出力する出力部216と、を更に含む
。このような構成によれば、第1実施形態と等価になる。
【0115】
また、第2及び第3実施形態の電力変換装置6及び7は、目標電圧の振幅の目標値と、
コンデンサCの電圧の振幅との差に基づいて、目標電圧の振幅を計算する振幅計算部21
0と、を更に含む。このような構成によれば、コンデンサCの電圧指令値を精度良く計算
することができるため、電力系統1に出力される電圧の精度が更に向上する。
【符号の説明】
【0116】
電力系統 1
電力変換装置 2
制御装置 20
DSP 200
記憶装置 201
振幅計算部 210
電圧指令値出力部 211
PWMパルス生成部 212
計算部 213
電流指令値出力部 214
減算部 215
出力部 216
加算部 217
減算部 218
出力部 219
電流指令値出力部 220
制限部 221
電力変換装置 5
制御装置 50
電力変換装置 6
制御装置 60
電力変換装置 7
制御装置 70
フィルタ 3
スイッチ 4