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特開2024-116502制御装置、空調システム及び制御方法
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  • 特開-制御装置、空調システム及び制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116502
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】制御装置、空調システム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/48 20180101AFI20240821BHJP
   F24F 11/50 20180101ALI20240821BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20240821BHJP
【FI】
F24F11/48
F24F11/50
F24F11/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022164
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】西川 尚希
(72)【発明者】
【氏名】森川 純次
(72)【発明者】
【氏名】新井 健太
(72)【発明者】
【氏名】加藤 隆博
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260BA02
3L260BA22
3L260CA12
3L260CA32
3L260CB63
3L260CB67
3L260DA02
3L260FA14
3L260GA17
(57)【要約】
【課題】ユーザの快適性と省エネルギー性を両立することができる空調機の制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置は、空調対象空間の設定温度と設定温度を達成すべき設定時刻の設定を受け付ける設定受付部と、設定温度の達成に必要な時間を予測する予測部と、設定時刻よりも予測時間だけ遡った時刻よりも前に、前記設定に基づく空調を実行するかどうかを問い合わせる問い合わせ情報を送信する問合部と、前記問い合わせ情報に対する回答に基づいて、前記空調を実行するように空調機を制御する制御部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調対象空間の設定温度と前記設定温度を達成すべき設定時刻の設定を受け付ける設定受付部と、
前記設定温度の達成に必要な空調予測時間を予測する予測部と、
前記設定時刻よりも前記空調予測時間だけ遡った時刻よりも前に、前記空調対象空間に対する前記設定に基づく空調を実行するかどうかを問い合わせる問い合わせ情報を送信する問合部と、
前記問い合わせ情報に対する回答に基づいて、前記設定に基づく空調を実行するように空調機を制御する制御部と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記予測部は、前記設定に基づく空調の開始時刻よりも、前記空調予測時間の予測に影響がないと考えられる時間だけ前に前記予測を行い、
前記問合部は、当該予測の結果を含んだ前記問い合わせ情報を、前記設定に基づく空調の開始時刻よりも前に送信する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記問合部は、前記設定時刻よりも所定の時間だけ前に、最初の前記問い合わせを行う、
請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記問合部は、前記問い合わせを行ったときに予測された前記空調予測時間が変更になる可能性が生じると、前記問い合わせを行う、
請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記問合部は、前記最初の前記問い合わせを行ったときから所定の時間が経過すると、前記問い合わせを行う、
請求項3に記載の制御装置。
【請求項6】
前記予測部は、前記空調対象空間の温度と、外気温度と、前記設定時刻と、空調対象の月と、前記設定温度と、に基づいて、前記設定温度の達成に必要な時間を予測する、
請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項7】
前記問合部は、前記問い合わせ情報とともに前記空調予測時間を送信する、
請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項8】
前記問合部は、前記問い合わせ情報とともに前記設定温度又は前記設定時刻の変更を案内する情報を送信する、
請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項9】
空調機と、
請求項1又は請求項2に記載の制御装置と、
前記問い合わせ情報の送信先である端末装置と、
を備える空調システム。
【請求項10】
空調対象空間の設定温度と前記設定温度を達成すべき設定時刻の設定を受け付けるステップと、
前記設定温度の達成に必要な空調予測時間を予測するステップと、
前記設定時刻よりも前記空調予測時間だけ遡った時刻よりも前に、前記空調対象空間に対する前記設定に基づく空調を実行するかどうかを問い合わせる問い合わせ情報を送信するステップと、
前記問い合わせ情報に対する回答に基づいて、前記設定に基づく空調を実行するように空調機を制御するステップと、
を有する制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、空調システム及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザが指定する設定時刻よりも前に自動的に空調機の運転を開始し、設定時刻までに室温が設定温度となるように冷房運転を行う予冷モードと呼ばれる機能が提供されている(例えば、特許文献1)。この機能を利用すると、設定時刻にユーザの帰宅時刻を指定することで、帰宅時の自宅を所望の設定温度に冷房しておくことができる。しかし、仕事の状況等によって、ユーザの帰宅時刻は変動する。設定時刻よりも前に帰宅する場合、室温が設定温度になる前に帰宅することになり快適性が損なわれる。設定時刻よりも遅れて帰宅する場合、必要以上に電力を消費することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-94505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザが指定した設定に基づく空調を実際に実行するかどうかを適切なタイミングでユーザに確認し、変更等できるようにすれば、快適性と省エネルギー性を両立することができる。
【0005】
上記課題を解決することができる制御装置、空調システム及び制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の制御装置は、空調対象空間の設定温度と前記設定温度を達成すべき設定時刻の設定を受け付ける設定受付部と、前記設定温度の達成に必要な空調予測時間を予測する予測部と、前記設定時刻よりも前記空調予測時間だけ遡った時刻よりも前に、前記空調対象空間に対する前記設定に基づく空調を実行するかどうかを問い合わせる問い合わせ情報を送信する問合部と、前記問い合わせ情報に対する回答に基づいて、前記設定に基づく空調を実行するように空調機を制御する制御部と、を備える。
【0007】
また、本開示の空調システムは、空調機と、上記の制御装置と、前記問い合わせ情報の送信先である端末装置と、を備える。
【0008】
また、本開示の制御方法は、空調対象空間の設定温度と前記設定温度を達成すべき設定時刻の設定を受け付けるステップと、前記設定温度の達成に必要な空調予測時間を予測するステップと、前記設定時刻よりも前記空調予測時間だけ遡った時刻よりも前に、前記空調対象空間に対する前記設定に基づく空調を実行するかどうかを問い合わせる問い合わせ情報を送信するステップと、前記問い合わせ情報に対する回答に基づいて、前記設定に基づく空調を実行するように空調機を制御するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0009】
上述の制御装置、空調システム及び制御方法によれば、ユーザの快適性と空調機の省エネルギー性を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態における空調システムの一例を示す図である。
図2】実施形態における空調システムの制御方法を説明する図である。
図3】実施形態における問い合わせ情報の一例を示す図である。
図4】実施形態における空調システムの制御方法の一例を示すフローチャートである。
図5】実施形態における空調システムのハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
以下、本開示の一実施形態による空調システムの制御方法について図1図5を参照して説明する。
【0012】
(空調システムの構成)
図1は、本開示の一実施形態における空調システムの一例を示す図である。図1に示すように空調システム100は、空調機1と、サーバ20と、ユーザ端末装置30と、を含む。空調機1は、外気温度センサ2と、室内温度センサ3と、制御装置10と、を備える。外気温度センサ2および室内温度センサ3と制御装置10は接続されていて、制御装置10は外気温度センサ2、室内温度センサ3が計測した温度を取得する。制御装置10と、サーバ20と、ユーザ端末装置30とは、ネットワークNWを介して通信可能に接続されている。
【0013】
(制御装置の構成)
制御装置10は、センサ情報取得部11と、設定受付部12と、制御部13と、通信部14と、を備える。
センサ情報取得部11は、外気温度センサ2が計測した外気温度、室内温度センサ3が計測した室内温度を取得する。
設定受付部12は、空調対象空間の設定温度と設定温度を達成すべき設定時刻の設定などを受け付ける。
制御部13は、空調機1が備える不図示の圧縮機、バルブ等を制御して、設定時刻に設定温度が達成できるよう空調を実行する。例えば、制御部13は、設定時刻よりも空調に必要な時間だけ遡った時刻よりも少し前に空調を開始し、設定時刻までに設定温度を達成できるよう冷房運転や暖房運転を行う。
通信部14は、サーバ20やユーザ端末装置30と通信を行う。例えば、通信部14は、センサ情報取得部11が取得した外気温度や室内温度、設定受付部12が取得した設定時刻や設定温度をサーバ20へ送信し、サーバ20から設定温度の達成に必要な空調時間の予測値(空調予測時間と称する。)を取得する。
【0014】
(サーバの構成)
サーバ20は、予測モデル作成部21と、予測部22と、問合部23と、通信部24と、を備える。
予測モデル作成部21は、空調対象空間の室内温度を設定温度にするために必要な空調時間を予測するための予測モデルを作成する。例えば、予測モデル作成部21は、空調機1の過去の運転データに基づいて、どのような室内温度および外気温度のときに、どれぐらいの空調時間で設定温度を達成できるかを解析して、室内温度、外気温度、設定温度、設定温度の達成に必要な空調時間の関係を規定したテーブルや関数等を作成する。あるいは、予測モデル作成部21は、室内温度、外気温度、設定温度、設定時刻、月(8月等)、天気などを説明変数、設定温度の達成に必要な空調時間を目的変数とする予測モデルを機械学習等により作成する。
予測部22は、空調機1にて計測された外気温度および室内温度等と、予測モデル作成部21が作成した予測モデルやテーブル、関数等に基づいて、設定温度の達成に必要な空調時間(空調予測時間)を予測する。
問合部23は、設定時刻よりも空調予測時間だけ遡った時刻よりも前に、設定受付部12が受け付けた設定温度および設定時刻に基づく空調を実行するかどうかを問い合わせる問い合わせ情報を生成し、生成した問い合わせ情報を、通信部24を通じてユーザ端末装置30へ送信する。
通信部24は、制御装置10やユーザ端末装置30、インターネット上の各種サーバ等と通信を行う。例えば、通信部24は、制御装置10から室内温度や外気温度を受信し、これらの値を予測部22へ出力する。また、例えば、通信部24は、天気の予報や実績を配信するサーバから天気の予報情報や実績情報を取得して、これらの情報を予測部22へ出力する。予測部22は、通信部24を通じて取得した温度や天気の情報を記憶する。これらの情報は、空調予測時間の予測に用いられる。
【0015】
(ユーザ端末装置の構成)
ユーザ端末装置30は、スマートフォン等の携帯端末で構成され、ユーザによる設定温度、設定時刻の設定などに用いられる。ユーザ端末装置30は、表示部31を備える。表示部31は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどの表示装置である。表示部31には、設定温度や設定時刻の設定画面のほか、問合部23が送信した問い合わせ情報が表示される。表示部31の表面には、接触を検知するタッチパネルが設置されており、表示部31は入力機能を有している。表示部31は、設定温度や設定時刻の入力、あるいは、問い合わせ情報に対する回答の入力を受け付ける。ユーザによって入力された設定情報や回答は、ユーザ端末装置30から制御装置10へ送信される。又は、回答等はサーバ20を経由して制御装置10へ送信されてもよい。制御装置10の設定受付部12は、送信された回答を、通信部14を通じて取得し、取得した回答に基づいて、空調を開始する時刻である空調開始時刻を設定する。制御部13は、設定受付部12が設定した空調開始時刻となると、設定時刻に設定温度を達成できるよう空調機1を制御して空調を開始する。
【0016】
図1に例示する構成は一例である。例えば、予測部22と問合部23を制御装置10に設け、計算量が多い予測モデルの作成のみをサーバ20で行い、空調予測時間の算出やユーザへの問い合わせは制御装置10が行うようにしてもよい。
【0017】
(問い合わせ機能)
次に図2図3を参照して、本実施形態の問い合わせ機能および空調制御について説明する。問い合わせ機能とは、ユーザ自身が設定した設定温度及び設定時刻に基づく空調を実行するかどうかをユーザに確認する機能である。この問い合わせに対し、設定どおりに空調を行う場合、ユーザは、設定どおりの空調を実行するよう回答し、設定温度や設定時刻に変更があれば変更し、空調を行わない場合には設定をキャンセルすることができる。例えば、ユーザが、設定温度に24℃、設定時刻に10時を設定したとする。問合部23は、例えば、設定時刻である10時よりも十分に余裕を持って設定された所定時間だけ前(例えば、半日以上前)になると1回目の問い合わせを行う。図3に問合部23がユーザ端末装置30へ送信した問い合わせ情報の一例を示す。問い合わせ情報は、表示部31に出力される。図3に例示するように、問い合わせ情報には、現在の日時(5/18 16:04)、現在の室内温度(29℃)、現在の外気温度(31℃)、設定温度(24℃)、設定時刻(10時00分)、設定温度までの空調予測時間(30分)が表示される。空調予測時間の「30分」は、予測部22が、当日(5/18)の9~10時ごろの室内温度および外気温度、月(5月)、天気(例えば、翌日(5/19)の9~10時ごろの天気予報値)、設定温度(24℃)、設定時刻(10時)等を予測モデル作成部21が作成した予測モデルに入力した場合に予測モデルが出力した時間である。この問い合わせに対し、ユーザが、「実行」をタッチすると、ユーザ端末装置30は、空調予測時間の30分と実行するという回答を制御装置10へ送信する。制御装置10では、設定受付部12が、「空調予測時間30分」と「実行する」の回答を取得し、設定時刻の10時から30分以上、かつ、空調の消費電力が無駄にならない程度(図3の“空調予測時間+α”)遡った時刻(例えば、35分遡った翌日の9時25分)に、設定時間に設定温度を達成できるような空調を開始することを設定する(図3の“空調開始時刻”)。この設定により、翌日の9時25分になると、制御部13が空調を開始する。
【0018】
ユーザが、「変更」をタッチすると、ユーザ端末装置30は、設定温度と設定時刻の設定画面(図示せず)を表示する。例えば、空調対象空間に到着する時刻に変更があると、ユーザは、この設定画面で設定時刻を変更することができる。設定時刻の変更に伴い、設定温度に変更があれば、ユーザは、この設定画面で設定温度を変更することができる。設定温度又は設定時刻が更新されると、ユーザ端末装置30は、更新された設定時刻や設定温度を制御装置10とサーバ20へ送信する。制御装置10では、設定受付部12が更新された設定時刻等を取得し、これまでの設定温度や設定時刻を更新された情報で上書きする。サーバ20では予測部22が、更新後の設定温度や設定時刻を取得し、更新後の設定温度や設定時刻等を予測モデルへ入力し、空調予測時間を予測し直す。問合部23は、更新後の設定温度、設定時刻、空調予測時間を含んだ問い合わせ情報を生成し、生成した問い合わせ情報をユーザ端末装置30へ送信する。これにより、ユーザに新たな設定や空調時間等をリマインドする。
【0019】
ユーザが、「キャンセル」をタッチすると、ユーザ端末装置30は、設定温度および設定時刻に基づく空調のキャンセルを制御装置10へ送信する。制御装置10では、設定受付部12がこの情報を取得し、設定時刻までに設定温度を達成する空調を実行しないことを設定する。これにより、次回(5/19)の空調は実行されない。そして、翌日になると、再度、翌日の10時に室温を24度とする運転を行うかどうかの問い合わせ情報が送信される。
【0020】
ユーザは、「実行」、「変更」、「キャンセル」の何れもタッチすることなく、図3に例示する問合せ画面を閉じることができる。この場合、制御装置10では、設定温度および設定時刻に基づく空調の実行が保留される(即ち、このままでは実行されない)。
【0021】
次に問合部23は、1回目の問い合わせを行ってから所定時間が経過すると、あるいは、空調開始時刻や設定時刻から所定時間だけ遡った時刻となると、2回目の問い合わせを行う。予測部22は、2回目の問い合わせ時点における、設定時刻付近の室内温度、外気温度、天気の予測値などを予測モデルに入力し、空調予測時間を算出する。例えば、1回目の問い合わせを行った日が晴れで9~10時ごろの外気温度が高く、空調を行う当日は曇りで9~10時ごろの外気温が前日よりも低い場合、1回目の問い合わせ時に予測された空調時間30分は実際よりも長い可能性がある。予測部22は、例えば、最新の曇りの日の9~10時ごろの室内温度や外気温度(例えば、日々取得している天気の情報において前々日が曇りであれば、前々日の9~10時ごろに外気温度センサ2、室内温度センサ3が計測した外気温度や室内温度)などを予測モデルに入力し、空調予測時間を更新する。問合部23は、更新後の空調予測時間を含む問い合わせ情報をユーザ端末装置30へ送信する。ユーザ端末装置30は、問い合わせ情報を取得すると、表示部31に出力する。
【0022】
問合部23は、2回目以降又は2回目以前にもユーザへの問い合わせを行ってもよい。例えば、天気や外気温が急変する等、前回問い合わせを行ったときに予測された空調予測時間が変更になる可能性が生じると、問合部23は、予測部22による最新の空調予測時間を含んだ問い合わせ情報をユーザ端末装置30へ送信する。例えば、予測部22は、所定の時間間隔で、9~10時ごろの室内温度および外気温度、月、天気、設定温度、設定時刻等を予測モデルに入力し、空調予測時間を予測する。問合部23は、今回予測された空調予測時間と前回予測された空調予測時間との差が所定時間以上となると問い合わせを行う。これにより、より精度の高い空調予測時間に基づいて、空調を開始することができる。
【0023】
なお、1回目の問い合わせについて、上記の例では、半日以上前に実行することとしたが、空調開始時刻の少し前に1回目の問い合わせを行うようにしてもよい。また、1回目や2回目の問い合わせを行うタイミングについては、ユーザが任意に設定できてもよい。例えば、ユーザは、1回目、2回目の問い合わせ時刻を、ユーザ端末装置30を用いて設定する。設定受付部12は、問い合わせ時刻の設定を受け付け、ユーザが設定した問い合わせ時刻の情報をサーバ20へ送信する。サーバ20では、問合部23がこの情報を取得し、ユーザが設定した時刻になると問い合わせを行う。なお、問い合わせの回数は1回でもよいし、3回以上であってもよい。ユーザは、各問い合わせのタイミングを設定することができてもよい。例えば、ユーザが都合の良い時刻を、1回目や2回目の問い合わせタイミングとして設定することで利便性を向上することができる。
【0024】
また、ユーザが問い合わせ時刻を設定しない場合、問合部23は、空調開始時刻の少し前(空調の実行による消費電力が無駄にならないよう定められた空調開始時刻よりもさらに少し前、例えば5~10分前)になると自動的に1回目の問い合わせを行うよう構成されていてもよい。あるいは、予測部22は、空調開始時刻や設定時刻よりも、空調予測時間の予測に影響がないと考えられる範囲の時間(気温などの変更がこれ以上ないと考えられる時間範囲、例えば10~30分前など)だけ前に空調予測時間の予測を行い、その直後に、問合部23が、直前に予測部22が予測した空調予測時間を含んだ問い合わせ情報を送信してもよい。
【0025】
なお、ユーザが「実行」、「変更」、「キャンセル」の何れもタッチすることなく、問合せ画面を閉じ続けた場合、空調開始時刻になっても空調は開始されない。その場合、問合部23は、空調開始時刻の後も問い合わせを行ってもよい。例えば、問合部23は、空調開始時刻の直前にn回目の問い合わせを実行し、空調開始時刻から所定時間が経過したときにn+1回目の問い合わせを実行してもよい。もし、n+1回目の問い合わせに対し、ユーザが「実行」を選択すれば、設定時刻には間に合わないが室内温度を設定温度に近づけた状態とすることができる。
【0026】
(動作)
次に図4を参照して、問い合わせ及び空調制御の流れについて説明する。
図4は、実施形態における空調システムの制御方法の一例を示すフローチャートである。
最初に予測モデル作成部21が、空調予測時間を出力する予測モデルを作成する(ステップS1)。予測モデル作成部21は、空調機1の過去の運転データ、室内温度、外気温度、天気情報などに基づいて予測モデルを作成する。予測モデル作成部21は、作成した予測モデルを予測部22へ出力する。次にユーザが、ユーザ端末装置30へ設定温度と設定時刻を設定する(ステップS2)。ユーザ端末装置30は、設定された設定温度と設定時刻を制御装置10へ送信し、設定受付部12は、設定温度と設定時刻を取得、記憶する。次に予測部22が、設定時刻のX時間前(例えば、半日前など)となると、空調予測時間を予測する(ステップS3)。次に問合部23は、ステップS3で予測された空調予測時間などを含む1回目の問い合わせを実行する(ステップS4)。問合部23は、ユーザ端末装置30へ問い合わせ情報を送信する。ユーザ端末装置30問い合わせ情報を表示する。ユーザは、1回目の問い合わせに対する回答をユーザ端末装置30に入力する。制御装置10の設定受付部12は、1回目の問い合わせに対する回答を取得する(ステップS5)。「実行」を取得した場合、設定受付部12は、空調開始時刻を設定する。「変更」を取得した場合、設定受付部12は、変更された設定温度や設定時刻で、前に設定されていた設定温度や設定時刻を更新する。「キャンセル」を取得した場合、設定受付部12は、空調を行わないことを設定する。これらはn回目の問い合わせについても同様である。
【0027】
次に問合部23は、問合せ条件が成立したかどうかを判定する(ステップS6)。例えば、問合部23は、n回目の問い合わせ時刻となると問合せ条件が成立したと判定する。また、例えば、予測部22が定期的に予測する空調予測時間が大きく変動すると、問合部23は、問合せ条件が成立したと判定する。問合せ条件が成立していないと判定された場合(ステップS6;No)、ステップS10の処理に進む。問合せ条件が成立したと判定すると(ステップS6;Yes)、予測部22は、最新の温度や天気の情報などに基づいて、空調予測時間を再予測する(ステップS7)。問合部23は、再予測された空調予測時間を含む問い合わせ情報をユーザ端末装置30へ送信し、n回目の問い合わせを行う(ステップS8)。ユーザは、n回目の問い合わせに対する回答をユーザ端末装置30に入力する。制御装置10の設定受付部12は、n回目の問い合わせに対する回答を取得する(ステップS9)。
【0028】
次に制御部13は、空調開始時刻が到来したかどうかを判定する(ステップS10)。制御部13は、ユーザの「実行」の回答に対して、設定受付部12が設定した空調開始時刻が到来したかどうかを判定する。空調開始時刻が到来した場合(ステップS10;Yes)、制御部13は、ユーザが設定した設定温度および設定時刻に基づく空調を開始する(ステップS11)。空調開始時刻が到来していない場合(ステップS10;No)、あるいは、ユーザから「実行」の回答が無く、空調開始時刻が設定されていない場合、ステップS6からの処理が繰り返し実行される。
【0029】
(効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、設定時刻よりも前に自動的に空調を開始し、設定時刻までに室内温度を設定温度とする空調制御(例えば、予冷モード)において、ユーザの快適性を損なわずに、不要な電力消費を抑えることができる。また、室内温度を設定温度とするまでに必要な時間を把握することができるのでユーザの利便性が向上する。また、ユーザに自らが設定した設定温度や設定時刻をリマインドすることにより、それらの設定を行ったことを忘れてしまうことを防ぐことができ、さらに設定の変更やキャンセルが必要な場合には、設定の変更やキャンセルする機会を与えることができる。
【0030】
また、上記実施形態の予測モデルでは、空調機1の能力を100%使用して、空調予測時間が最小となるような時間を予測することを前提としたが、説明変数に消費電力の実績値を与えるなどして、消費電力が最小となるような空調予測時間を予測するような予測モデルを作成するようにしてもよい。これにより、例えば図3の例において30分と予測された空調予測時間が、例えば、90分(空調能力の50%のみを使用)と予測されれば、10時00分の90分前に空調を開始することで、快適性を損なうことなく、消費電力の最小化を実現することができる。また、このような予測モデルを、1台の室外機に対して複数台の室内機が接続されるマルチエアコンの空調に対して利用すると以下のような効果が得られる。マルチエアコンでは、例えば、150%能力相当の数の室内機の接続を許容しているような場合がある。この場合、実際に150%能力相当の数の室内機が接続されると、各室内機には十分な能力が割り当てられずに、各室内機の空調負荷によっては、ユーザの快適性が損なわれる可能性がある。これに対し、消費電力の最小化を実現する空調予測時間を出力する予測モデルを使って、本実施形態の問い合わせ機能を適用すると、空調時間は長くなるものの、各室内機に割り当てられる能力が抑えられる。従って、150%能力相当の数の室内機を接続しても、各室内機について設定された設定時刻までに設定温度を達成することができ、ユーザの快適性を損なうことがない。
なお上記の実施形態では、本実施形態の制御方法を空調システムに適用する場合について説明したが、給湯機によって湯を沸かしたり、冷凍機によって対象を冷却したりする場合の制御にも本実施形態を適用することができる。
【0031】
図5は、各実施形態に係る空調システムのハードウェア構成の一例を示す図である。
コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、入出力インタフェース904、通信インタフェース905を備える。上述の制御装置10,サーバ20は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各機能は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、記憶領域を主記憶装置902に確保する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。
【0032】
制御装置10,サーバ20の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各機能部による処理を行ってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、CD、DVD、USB等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行しても良い。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0033】
以上のとおり、本開示に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0034】
<付記>
各実施形態に記載の制御装置、空調システム、制御方法は、例えば以下のように把握される。
【0035】
(1)第1の態様に係る制御装置は、空調対象空間の設定温度と前記設定温度を達成すべき設定時刻の設定を受け付ける設定受付部と、前記設定温度の達成に必要な空調予測時間を予測する予測部と、前記設定時刻よりも前記空調予測時間だけ遡った時刻よりも前に、前記空調対象空間に対する前記設定に基づく空調を実行するかどうかを問い合わせる問い合わせ情報を送信する問合部と、前記問い合わせ情報に対する回答に基づいて、前記設定に基づく空調を実行するように空調機を制御する制御部と、を備える。
これにより、ユーザの快適性と省エネルギー性を両立した空調が可能となる。
【0036】
(2)第2の態様に係る制御装置は、(1)の制御装置であって、前記予測部は、前記設定に基づく空調の開始時刻よりも、前記空調予測時間の予測に影響がないと考えられる範囲の時間だけ前に前記予測を行い、前記問合部は、前記設定に基づく空調の開始時刻よりも前に、当該予測の結果を含んだ前記問い合わせ情報を送信する。
空調開始直前の気温などによって空調予測時間を予測し、空調開始時刻を設定することで、ユーザの快適性と省エネルギー性を両立した空調を精度よく実現することができる。
【0037】
(3)第3の態様に係る制御装置は、(1)~(2)の制御装置であって、前記問合部は、前記設定時刻よりも所定の時間だけ前に、最初の前記問い合わせを行う。
例えば、ユーザに都合の良い時間に最初のリマインドを行うよう設定することで、利便性を向上することができる。
【0038】
(4)第4の態様に係る制御装置は、(1)~(3)の制御装置であって、前記問合部は、前記問合せを行ったときに予測された前記空調予測時間が変更になる可能性が生じると、前記問い合わせを行う。
これにより、空調予測時間の予測精度を高め、ユーザの快適性と省エネルギー性を両立した空調を精度よく実現することができる。
【0039】
(5)第5の態様に係る制御装置は、(1)~(4)の制御装置であって、前記問合部は、前記最初の前記問合せを行ったときから所定の時間が経過すると、前記問い合わせを行う。
例えば、ユーザに都合の良い時間間隔でリマインドを行うよう設定することで、利便性を向上することができる。
【0040】
(6)第5の態様に係る制御装置は、(1)~(5)の制御装置であって、前記予測部は、前記空調対象空間の温度と、外気温度と、前記設定時刻と、空調対象の月と、前記設定温度と、に基づいて、前記設定温度の達成に必要な時間を予測する。
これにより、空調予測時間を予測することができる。
【0041】
(7)第7の態様に係る制御装置は、(1)~(6)の制御装置であって、前記問合部は、前記問い合わせ情報とともに前記空調予測時間を送信する。
これにより、室内温度を設定温度とするまでに必要な時間を把握することができるのでユーザの利便性が向上する。
【0042】
(8)第8の態様に係る制御装置は、(1)~(7)の制御装置であって、前記問合部は、前記問い合わせ情報とともに前記設定温度又は前記設定時刻の変更を案内する情報を送信する。
これにより、設定温度や設定時刻を忘れずに変更することができるのでユーザの利便性が向上する。
【0043】
(9)第9の態様に係る空調システムは、空調機と、(1)~(8)に記載の制御装置と、前記問い合わせ情報の送信先である端末装置と、を備える。
【0044】
(10)第10の態様に係る制御方法は、空調対象空間の設定温度と前記設定温度を達成すべき設定時刻の設定を受け付けるステップと、前記設定温度の達成に必要な空調予測時間を予測するステップと、前記設定時刻よりも前記空調予測時間だけ遡った時刻よりも前に、前記空調対象空間に対する前記設定に基づく空調を実行するかどうかを問い合わせる問い合わせ情報を送信するステップと、前記問い合わせ情報に対する回答に基づいて、前記設定に基づく空調を実行するように空調機を制御するステップと、を有する。
【符号の説明】
【0045】
100・・・空調システム
1・・・空調機
2・・・外気温度センサ
3・・・室内温度センサ
10・・・制御装置
11・・・センサ情報取得部
12・・・設定受付部
13・・・制御部
14・・・通信部
20・・・サーバ
21・・・予測モデル作成部
22・・・予測部
23・・・問合部
24・・・通信部
30・・・ユーザ端末装置
31・・・表示部
900・・・コンピュータ
901・・・CPU
902・・・主記憶装置
903・・・補助記憶装置
904・・・入出力インタフェース
905・・・通信インタフェース
図1
図2
図3
図4
図5