(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116503
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】苗植機
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20240821BHJP
【FI】
A01C11/02 350M
A01C11/02 351Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022165
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀田 直岐
(72)【発明者】
【氏名】飛田 秀平
(72)【発明者】
【氏名】山田 佳菜子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 学
【テーマコード(参考)】
2B064
【Fターム(参考)】
2B064AA05
2B064AA07
2B064AB01
2B064AC01
2B064DB03
2B064DB06
2B064DB08
2B064DB11
2B064DB13
2B064DC02
2B064DC10
2B064EA20
2B064EB05
2B064EC18
2B064FA02
2B064FA40
(57)【要約】
【課題】苗載台に載置したマット状苗の使用量を検出する田植機がある。然しながら、マット状苗の底面に食い込んで回転して使用量を検出する使用量センサを設けており、構成や使用量算出の制御が複雑であった。そこで、簡潔な構成でマット状苗の圧縮率を算出し、適正な苗使用量が算出できる苗植機を提供する。
【解決手段】左右往復移動する苗載台41に載置されたマット状苗Nの下端部から一株分の苗を取り出して圃場に植付ける苗植付装置を装備した苗植機において、苗載台41の往復回数を算出するための苗載台センサを設けると共に、苗載台41上端部側に供給されたマット状苗を検出する苗検出センサ45を設け、該苗検出センサ45が苗植付け作業開始時にマット状苗Nを検出してから苗検出センサ45がマット状苗Nを検出しなくなるまでの苗載台41の往復回数を算出してマット状苗Nの圧縮率を算出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右往復移動する苗載台(41)に載置されたマット状苗(N)の下端部から一株分の苗を取り出して圃場に植付ける苗植付装置(42)を装備した苗植機において、苗載台(41)の往復回数(a)を算出するための苗載台センサ(32)を設けると共に、苗載台(41)上端部側に供給されたマット状苗(N)を検出する苗検出センサ(45)を設け、該苗検出センサ(45)が苗植付け作業開始時にマット状苗(N)を検出してから苗検出センサ(45)がマット状苗(N)を検出しなくなるまでの苗載台(41)の往復回数(a)を算出してマット状苗(N)の圧縮率(p)を算出することを特徴とする苗植機。
【請求項2】
圧縮率(p)から圧縮係数(m)を算出して、苗載台(41)の往復回数(a)から苗の苗使用量(g)を算出することを特徴とする請求項1に記載の苗植機。
【請求項3】
所定の植付け面積毎に使用する設定苗使用量(g’)を入力する入力装置(37)を設け、該設定苗使用量(g’)と実際に苗植付け作業で使用した苗使用量(g)が異なる場合に苗使用量(g)が設定苗使用量(g’)と同じになるように苗取り量(h)を調節することを特徴とする請求項2に記載の苗植機。
【請求項4】
機体に装備したGPS(29)により測位衛星からの信号を受信して衛星測位システムにて位置情報を算出して作業が終了した作業距離(c)から作業面積(d)を算出し、該作業面積(d)が所定の植付け面積に達すると設定苗使用量(g’)と実際に苗植付け作業で使用した苗使用量(g)を比較することを特徴とする請求項3に記載の苗植機。
【請求項5】
設定苗使用量(g’)と実際に苗植付け作業で使用した苗使用量(g)がマット状苗(N)1枚以上異なる場合に圧縮率(p)を再設定するように警告を出すことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の苗植機。
【請求項6】
左右往復移動する苗載台(41)に載置されたマット状苗(N)の下端部から一株分の苗を取り出して圃場に植付ける苗植付装置(42)を装備した苗植機において、苗載台(41)上端部側に供給されたマット状苗(N)を検出する苗検出センサ(45)を設けると共に、所定の植付け面積毎に使用する設定苗使用量(g’)を入力する入力装置(37)を設け、機体に装備したGPS(29)により測位衛星からの信号を受信して衛星測位システムにて位置情報を算出して作業が終了した作業距離(c)から作業面積(d)を算出し、該作業面積(d)が所定の植付け面積に達すると設定苗使用量(g’)と苗検出センサ(45)が検出した苗使用量(g)を比較し、設定苗使用量(g’)と苗使用量(g)が異なる場合に苗使用量(g)が設定苗使用量(g’)と同じになるように苗取り量(h)を調節することを特徴とする苗植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗載台に載置された苗を圃場に植付ける苗植機に関する。
【背景技術】
【0002】
苗載台に載置したマット状苗の使用量を検出する田植機がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記田植機はマット状苗の底面に食い込んで回転して使用量を検出する使用量センサを設けており、構成や使用量算出の制御が複雑であった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡潔な構成でマット状苗の圧縮率を算出し、適正な苗使用量が算出できる苗植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、左右往復移動する苗載台41に載置されたマット状苗Nの下端部から一株分の苗を取り出して圃場に植付ける苗植付装置42を装備した苗植機において、苗載台41の往復回数aを算出するための苗載台センサ32を設けると共に、苗載台41上端部側に供給されたマット状苗Nを検出する苗検出センサ45を設け、該苗検出センサ45が苗植付け作業開始時にマット状苗Nを検出してから苗検出センサ45がマット状苗Nを検出しなくなるまでの苗載台41の往復回数aを算出してマット状苗Nの圧縮率pを算出する苗植機である。
【0007】
請求項1記載の発明によれば、苗載台41の往復回数aを算出するための苗載台センサ32を設けると共に、苗載台41上端部側に供給されたマット状苗Nを検出する苗検出センサ45を設け、該苗検出センサ45が苗植付け作業開始時にマット状苗Nを検出してから苗検出センサ45がマット状苗Nを検出しなくなるまでの苗載台41の往復回数aを算出してマット状苗Nの圧縮率pを算出するので、簡潔な構成と制御で圧縮率pを算出することができる。
【0008】
請求項2記載の発明は、圧縮率pから圧縮係数mを算出して、苗載台41の往復回数aから苗の苗使用量gを算出する請求項1に記載の苗植機である。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、圧縮率pから圧縮係数mを算出して、苗載台41の往復回数aから苗の苗使用量gを算出するので、簡潔な構成と制御で苗使用量gを算出することができる。
【0010】
請求項3記載の発明は、所定の植付け面積毎に使用する設定苗使用量g’を入力する入力装置37を設け、該設定苗使用量g’と実際に苗植付け作業で使用した苗使用量gが異なる場合に苗使用量gが設定苗使用量g’と同じになるように苗取り量hを調節する請求項2に記載の苗植機である。
【0011】
請求項4記載の発明は、機体に装備したGPS29により測位衛星からの信号を受信して衛星測位システムにて位置情報を算出して作業が終了した作業距離cから作業面積dを算出し、該作業面積dが所定の植付け面積に達すると設定苗使用量g’と実際に苗植付け作業で使用した苗使用量gを比較する請求項3に記載の苗植機である。
【0012】
請求項5記載の発明は、設定苗使用量g’と実際に苗植付け作業で使用した苗使用量gがマット状苗N1枚以上異なる場合に圧縮率pを再設定するように警告を出す請求項3または請求項4に記載の苗植機である。
【0013】
請求項5記載の発明によれば、設定苗使用量g’と実際に苗植付け作業で使用した苗使用量gがマット状苗N1枚以上異なる場合に圧縮率pを再設定するように警告を出すので、田植作業中に田植作業開始初期とマット状土付き苗Nの圧縮率pが異なっているような場合、設定苗使用量g’と実際に苗植付け作業で使用した苗使用量gが大幅にずれることが防止できる。
【0014】
請求項6記載の発明は、左右往復移動する苗載台41に載置されたマット状苗Nの下端部から一株分の苗を取り出して圃場に植付ける苗植付装置42を装備した苗植機において、苗載台41上端部側に供給されたマット状苗Nを検出する苗検出センサ45を設けると共に、所定の植付け面積毎に使用する設定苗使用量g’を入力する入力装置37を設け、機体に装備したGPS29により測位衛星からの信号を受信して衛星測位システムにて位置情報を算出して作業が終了した作業距離cから作業面積dを算出し、該作業面積dが所定の植付け面積に達すると設定苗使用量g’と苗検出センサ45が検出した苗使用量gを比較し、設定苗使用量g’と苗使用量gが異なる場合に苗使用量gが設定苗使用量g’と同じになるように苗取り量hを調節する苗植機である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態にかかる乗用型田植機の側面図である。
【
図4】同上田植機のマット状土付き苗の平面図である。
【
図6】同上田植機の符号の説明及び数式等を示す参考図である。
【
図7】同上田植機の符号の説明及び数式等を示す参考図である。
【
図8】本発明の他の実施形態を示す延長苗載せ具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0017】
<全体構成>
図1は、本発明の苗移植機の一実施形態である施肥装置を装着した乗用型田植機の側面図である。この施肥装置付き乗用型田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。そして、苗植付部4の前部には整地ロータ6が設けられている。また、走行車体2の前部左右両側には、予備苗載台Yが設けられ、走行車体2の前端中央にはセンターマーカCMが設けられている。なお、乗用型田植機1の前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右といい、前進方向と後進方向をそれぞれ前、後という。
【0018】
<走行車体2>
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪7,7及び左右一対の後輪8,8を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース9が配置され、そのミッションケース9の左右側方に前輪ファイナルケース10,10が設けられ、該左右前輪ファイナルケース10,10の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部10a,10aから外向きに突出する左右前輪車軸10b,10bに左右前輪7,7が各々取り付けられている。
【0019】
また、ミッションケース9の背面部にメインフレーム11の前端部が固着されており、そのメインフレーム11の後端部に左右サスペンションを介して左右後輪ギヤケース12,12が各々独立して上下動自在に支持され、その左右後輪ギヤケース12,12から外向きに突出する左右後輪車軸13,13に後輪8,8が取り付けられている。
【0020】
エンジン14はメインフレーム11の上に搭載されており、該エンジン14の回転動力が、ベルト伝動装置及びHST15を介してミッションケース9に伝達される。
【0021】
ミッションケース9に伝達された回転動力は、該ミッションケース9内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。
【0022】
そして、走行動力は、一部が左右前輪ファイナルケース10,10に伝達されて左右前輪7,7を駆動すると共に、残りが左右後輪駆動軸を介して左右後輪ギヤケース12,12に伝達されて左右後輪8,8を駆動する。
【0023】
また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケースに伝達され、それから植付伝動軸によって苗植付部4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構によって施肥装置5へ伝動される。
【0024】
エンジン14の上部はエンジンカバー16で覆われており、その上に座席17が設置されている。
【0025】
座席17の前方には各種操作機構を内蔵し後上部に操作パネル18aを設けたフロントカバー18があり、その上方に前輪7,7を操向操作する操向操作装置としてのハンドル19が設けられている。
【0026】
エンジンカバー16及びフロントカバー18の下端左右両側は水平状のフロアステップ20になっている。フロアステップ20は一部格子状になっており、該フロアステップ20を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ20上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ21となっている。
【0027】
昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク22aと左右一対の下リンク22b,22bを備えている。
【0028】
これらリンク22a,22b,22bは、その基部側がメインフレーム11の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム23に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク24が連結されている。
【0029】
そして、縦リンク24の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸25が挿入連結され、連結軸25を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。
【0030】
リンクベースフレーム23と縦リンク24との間に昇降油圧シリンダ26が設けられており、該昇降油圧シリンダ26を油圧で伸縮させることにより、昇降リンク装置3が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0031】
走行車体2前部左右中央には、基部を機枠に固定した支柱28の上端部にGPS29が設けられている。
【0032】
フロントカバー18内に設けた制御装置27は、地図データベースに登録された圃場の地図データが記憶されている。制御装置27は、圃場にてGPS29により測位衛星からの信号を受信して衛星測位システムにて位置情報を算出しながらフロントカバー18上面の操作パネル18aに設けたタッチパネル式の入力装置を兼用したモニタ37に圃場での作業が終了した作業経路と現在位置を表示すると共に、作業が終了した作業距離cから作業面積d(d=作業距離c×作業幅k)を算出する。
【0033】
<苗植付部4>
苗植付部4は6条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース40、マット状苗の一例であるマット状土付き苗Nを載せて苗受け板41aに沿って左右往復動し苗を一株分ずつ苗受け板41aの各条の苗取出口41a’に供給すると共に苗送りベルト41bにより横一列分の苗を全て苗受け板41aに移送する苗載台41、苗受け板41aの苗取出口41a’に供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置42を備えている。
【0034】
苗植付部4の下部には中央にセンター整地フロート43、その左右両側にサイド整地フロート44,44がそれぞれ設けられている。
【0035】
これら整地フロート43,44,44を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、整地フロート43,44,44が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置42により苗が植付けられる。
【0036】
各整地フロート43,44,44は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンター整地フロート43の前部の上下動が迎角制御センサ(図示せず)により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ26を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0037】
苗植付部4の前部には、整地フロート43,44,44に先立って泥面を整地する整地ロータ6が設けられている。
【0038】
ここで、
図2~
図7に基づいて、苗載台41の詳細構成を説明する。
【0039】
苗載台41は、マット状土付き苗Nを載置する底面41cと左右側壁41dと簀子状の延長苗載せ具41eよりなる苗載置部41fを6条植えなので6つ左右方向に配置して構成される。
【0040】
各苗載置部41fには、苗載台41が左右移動端に移動した時に載置されたマット状土付き苗Nを下方の苗取出口41a’に向けて送る左右一対の苗送りベルト41bが設けられている。
【0041】
苗載台41は、伝動ケース40内のギヤ変速される横送り変速装置を介して駆動される横送り駆動機構にて左右往復移動し、横送り変速装置は制御装置27の指令で作動する横送り変速用電動モータ30にて変速される。
【0042】
なお、横送り変速用電動モータ30は、操作パネル18aに設けた横送り設定ダイヤル31でも作動し、該横送り設定ダイヤル31の手動操作にても苗載台41の横送り速度を変更して苗植付装置42の苗取り量の変更が行える。
【0043】
伝動ケース40の上面には、苗載台41が左右往復移動端に移動したことを検出する苗載台センサ32が設けられており、制御装置27が該苗載台センサ32の検出にて苗載台41の往復回数a(苗載台41が左右一端側から他端側に移動した時の苗載台センサ32検出回数)を算出する。
【0044】
苗送りベルト41bは、ステッピングモータ33で駆動され、苗載台41が左右移動端に達したことを苗載台センサ32が検出すると制御装置27の指令でステッピングモータ33が作動して苗載置部41fに載置されたマット状土付き苗Nを所定量だけ苗受け板41aに向けて移送する。
【0045】
苗受け板41aは、苗載台41下端部に対して制御装置27の指令で作動する苗取量調節用電動モータ34にて遠近移動調節自在である。
【0046】
なお、苗取量調節用電動モータ34は、操作パネル18aに設けた苗取量設定ダイヤル35でも作動し、該苗取量設定ダイヤル35の手動操作にても苗受け板41aの苗載台41下端部に対する遠近位置調節をして苗植付装置42の苗取り量の変更が行える。
【0047】
そして、所定の苗載置部41f(本実施形態では、左から4番目の苗載置部41f)の延長苗載せ具41e下端部には、マット状土付き苗Nを検出するリミットスイッチに構成される苗検出センサ45が設けられている。
【0048】
苗検出センサ45が苗載置部41fの上端部である延長苗載せ具41eに設けられているので、苗載置部41fに供給されるマット状土付き苗Nを適切に検出し、苗使用枚数fの検出が確実に行える。
【0049】
苗載置部41fは、2枚のマット状土付き苗Nが載置できる長さに設定されており、苗検出センサ45の上下位置は、苗載置部41fに載置した一枚目のマット状土付き苗N(最も下に載置したマット状土付き苗N)よりも上方でニ枚目のマット状土付き苗N(最も下に載置したマット状土付き苗Nの上方に載置したマット状土付き苗N)の上端よりも下方である。即ち、マット状土付き苗の長さが580mmであるから、苗載置部41f下端部から580mmよりも上方で1160mmよりも下方位置に苗検出センサ45が設けられている。
【0050】
従って、田植作業開始時に苗載置部41fに2枚のマット状土付き苗Nを載置すると、苗検出センサ45の上方に所定長さXmmのマット状土付き苗Nがあることになる。
【0051】
なお、この田植作業開始時にマット状土付き苗Nを苗載置部41f上部から供給するので、苗検出センサ45はマット状土付き苗Nを2枚載置したことを検出し、制御装置27がマット状土付き苗Nを2枚使用と記憶する。
【0052】
そして、6つの苗載置部41fの全てに2枚のマット状土付き苗Nを供給して田植作業を開始する。
【0053】
すると、苗載置部41fに載置されたマット状土付き苗Nは、苗載台41が左右移動端に達する度に苗送りベルト41bにて下方の苗受け板41aに向けて移送され、苗検出センサ45上のマット状土付き苗N上端が苗検出センサ45を過ぎて下降した時に、苗検出センサ45がマット状土付き苗N無しの情報を制御装置27に送り、制御装置27は該マット状土付き苗N無しの情報を受け取った時の苗載台41の往復回数aを記憶する。
【0054】
図4に示すように、マット状土付き苗Nは、上下長さが580mmであるが、苗載台41の左右往復移動や機体の振動等で圧縮されて上下長さが580mmよりも短くなる。
【0055】
マット状土付き苗Nの圧縮率pは、マット状土付き苗Nが圧縮せずに苗検出センサ45よりも上方にある長さXmmのマット状土付き苗N上端部が苗検出センサ45を過ぎるまでの苗載台41の往復回数a’と上記実際に苗載台41の往復回数aの比により算出できる。
【0056】
そこで、制御装置27は、マット状土付き苗Nが圧縮せずに苗検出センサ45よりも上方にある長さXmmのマット状土付き苗N上端部が苗検出センサ45を過ぎるまでの苗載台41の往復回数a’を苗植付装置42が取り出す苗取り量をhとしてa’=X/hの式で算出し、圧縮率pをp=a’/aの式で算出し、記憶する。
【0057】
従って、マット状土付き苗Nの圧縮率pが苗載置部41fに設けた苗検出センサ45と苗載台41の左右往復移動回数を検出する苗載台センサ32で算出できるので、簡潔な構成と制御で圧縮率pを算出することができる。
【0058】
また、制御装置27は、
図7に示す試験田植作業における実測値から算出した圧縮係数m(m=0.05p+0.98)を用いて、
図6の式にて苗使用量g(g=条数l×条当たり苗使用枚数f=l×(苗消費量b/580)×圧縮係数m=l×((2×往復回数a×苗取り量h)/580)×m)を算出する。
【0059】
一方、作業者は、操作パネル18aに設けたモニタ37にて、10アールごとに使用する設定苗使用量g’(マット状土付き苗Nの設定使用枚数)を入力し、制御装置27は該設定苗使用量g’を記憶する。
【0060】
そして、苗載台41の各苗載置部41fに2枚のマット状土付き苗Nを供給して機体を前進させて田植作業を行なう。
【0061】
なお、田植作業時に苗載置部41f上のマット状土付き苗Nが残り少なくなると順次苗載置部41f上部から供給するので、苗検出センサ45はマット状土付き苗Nを順次検出し、該検出回数により制御装置27がマット状土付き苗Nの使用枚数を記憶する。
【0062】
田植作業中、制御装置27は、圃場にてGPS29により測位衛星からの信号を受信して衛星測位システムにて位置情報を算出しながら作業距離cから作業面積d(d=作業距離c×作業幅k)を算出し、作業面積dが所定の植付け面積としての10アール(1反)になると、上記モニタ37にて入力した10アールごとに使用する設定苗使用量g’と実際に田植作業で使用した苗使用量gを比較する。
【0063】
そして、モニタ37にて入力した10アールごとに使用する設定苗使用量g’と実際に田植作業で使用した苗使用量gが異なる場合は、苗使用量gが設定苗使用量g’と同じ(g’=g)になるように、苗取量調節用電動モータ34を作動させて苗受け板41aを苗載台41下端部に対して遠近移動調節して苗取り量hを変更する。
【0064】
例えば、苗使用量gが設定苗使用量g’よりも少ない場合は、少ない量を勘案して10アールで使用する苗使用量gが設定苗使用量g’と同じになるように苗取り量hに逆換算して、苗取り量hを多くする。
【0065】
逆に、苗使用量gが設定苗使用量g’よりも多い場合は、多い量を勘案して10アールで使用する苗使用量gが設定苗使用量g’と同じになるように苗取り量hに逆換算して、苗取り量hを少なくする。
【0066】
また、モニタ37にて入力した10アールごとに使用する設定苗使用量g’と実際に田植作業で使用した苗使用量gが異なる場合、苗使用量gが設定苗使用量g’と同じ(g’=g)になるように、横送り変速用電動モータ30を作動させて苗載台41の横送り速度を変更して苗取り量の変更を行なっても良い。
【0067】
例えば、苗使用量gが設定苗使用量g’よりも少ない場合は、少ない量を勘案して10アールで使用する苗使用量gが設定苗使用量g’と同じになるように苗載台41の横送り速度を速くして、苗取り量を多くする。
【0068】
逆に、苗使用量gが設定苗使用量g’よりも多い場合は、多い量を勘案して10アールで使用する苗使用量gが設定苗使用量g’と同じになるように苗載台41の横送り速度を遅くして、苗取り量を少なくする。
【0069】
また、モニタ37にて入力した10アールごとに使用する設定苗使用量g’と実際に田植作業で使用した苗使用量gが異なる場合、苗使用量gが設定苗使用量g’と同じ(g’=g)になるように、苗送りベルト41bを駆動するステッピングモータ33の駆動量(駆動回転量)を変更してマット状土付き苗Nを苗受け板41aに向けて移送する量を変更しても良い。
【0070】
例えば、苗使用量gが設定苗使用量g’よりも少ない場合は、少ない量を勘案して10アールで使用する苗使用量gが設定苗使用量g’と同じになるように苗送りベルト41bを駆動するステッピングモータ33の駆動量(駆動回転量)を大きくして、マット状土付き苗Nを苗受け板41aに向けて移送する量を多くする。
【0071】
逆に、苗使用量gが設定苗使用量g’よりも多い場合は、多い量を勘案して10アールで使用する苗使用量gが設定苗使用量g’と同じになるように苗送りベルト41bを駆動するステッピングモータ33の駆動量(駆動回転量)を小さくして、マット状土付き苗Nを苗受け板41aに向けて移送する量を少なくする。
【0072】
また、モニタ37にて入力した10アールごとに使用する設定苗使用量g’と実際に田植作業で使用した苗使用量gが異なる場合で、苗使用量gが設定苗使用量g’と同じ(g’=g)になるように、苗取量調節用電動モータ34を作動させて苗受け板41aを苗載台41下端部に対して遠近移動調節して苗取り量hを変更する時に、同時に、変更した苗取り量hに対応するように苗送りベルト41bを駆動するステッピングモータ33の駆動量(駆動回転量)を変更してマット状土付き苗Nを苗受け板41aに向けて移送する量を変更すると更に適正な補正が行なえる。
【0073】
また、10アールで算出した苗使用量gとモニタ37にて入力した10アールごとに使用する設定苗使用量g’と両者の差をモニタ37に表示すると、作業者が常時苗使用量にずれがあるか否かを認識できて、ずれがある場合に即座に苗取り量hを手動で調節することができ、苗消費量の精度が向上して苗が余るまたは足りなくなる等の問題が発生しなくなる。
【0074】
また、10アールで算出した苗使用量gとモニタ37にて入力した10アールごとに使用する設定苗使用量g’にマット状土付き苗N1枚以上の誤差があれば、モニタ37(他の警告手段でも良い)にマット状土付き苗Nの圧縮率pを再設定するように警告を出す。
【0075】
作業者は、該警告にて前記田植作業開始時と同じ作業状態にして再度圧縮率pを出して田植作業を継続する。
【0076】
従って、田植作業中に田植作業開始初期とマット状土付き苗Nの圧縮率pが異なっているような場合、適切に対応ができて苗使用量が大幅にずれることが防止できる。
【0077】
なお、上記実施形態では左から4番目の苗載置部41fの延長苗載せ具41e下端部にマット状土付き苗Nを検出する苗検出センサ45を設けた例を示したが、複数の苗載置部41f(全苗載置部41fでも良い)に苗検出センサ45を設けて、各苗検出センサ45が検出して算出される値を平均して用いても良い。
【0078】
他の実施形態として、田植作業で使用した苗使用量gを算出する方法として、6条植えであるから、制御装置27が苗検出センサ45の検出するマット状土付き苗Nの枚数を6倍して苗使用量gとして順次記憶しても良い。
【0079】
即ち、苗使用量g=(苗検出センサ45がマット状土付き苗Nを検出する数)×条数l(本実施形態=6)となる。
【0080】
そして、上記方法にて10アールで算出した苗使用量gとモニタ37にて入力した10アールごとに使用する設定苗使用量g’が同じになるように、前記と同様の手法(苗取り量hの変更、苗載台41の横送り速度の変更、苗送りベルト41bの移送する量の変更)にて補正する。
【0081】
図8は、延長苗載せ具41eにマット状土付き苗Nの圧縮率を測るメモリ50a~50iを設けた実施形態を示す。
【0082】
即ち、最上部のメモリ50aは、苗載置部41f下端からの距離が1,160mm(=580mm×2)に設定されており、苗載置部41fに2枚のマット状土付き苗Nを載置した時の苗が圧縮していない場合に2枚のマット状土付き苗Nの上端が位置するメモリである。
【0083】
苗載置部41fに2枚のマット状土付き苗Nを載置すると、マット状土付き苗N自体の重みで圧縮して、2枚のマット状土付き苗Nの上端はメモリ50aよりも下方位置のメモリ50b~50iに位置するようになる。
【0084】
例えば、メモリ50a~50iを10mm間隔で設ければ、2枚のマット状土付き苗Nの上端がメモリ50cに位置すると、20mm(=10mm×2)圧縮していることがわかる。
【0085】
そこで、作業者は、該圧縮率から判断して操作パネル18aに設けた苗取量設定ダイヤル35を手動操作して所望の苗取り量に調整することができる。
【0086】
<施肥装置5>
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61によって一定量ずつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62で各整地フロート43,44,44の左右両側に取り付けた施肥ガイド63まで導き、施肥ガイド63の前側に設けた作溝体64によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。ブロア用電動モータで駆動するブロアで発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ65を経由して施肥ホース62に吹き込まれ、施肥ホース62内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0087】
<別実施形態>
【0088】
(1)従来、苗植付けの良否が感性的な判断で行われており、初心者ではむずかしかった。また、苗載台41の横送り量(横送り速度)と苗取り量の違いによる苗植付け状態の差が大きかった。
【0089】
そこで、苗植付け状態を機体に装備したカメラにて画像認識し、AIにより苗植付け良否を判定する。
【0090】
また、苗載台41の横送り量、苗取り量の設定ごとに行った学習内容に基づいて判定を行う。
【0091】
また、苗載台41の横送り量、苗取り量が少ない時と多い時に大別する。
【0092】
圃場に植付けられた苗が設定に基づいた苗本数となっているか、姿勢は良好かを判定する。
【0093】
判定結果の不良傾向の場合、目標値に近づくように補正を行う。
【0094】
1株の苗本数が多い時には苗取り量を減らし、1株の苗本数が少ない時には苗取り量を少なくする
植付け苗の姿勢不良に対しては、車速を落として対応する。
【0095】
連続欠株に対しては、停車して対応する。
【0096】
また、苗植付け不良の原因として、苗受け板41aの泥詰まり、苗植付装置42が圃場に苗を植付ける際に苗を植付けずに持ち上げる(持ち帰る)ことが原因である場合があるので、苗受け板41aの画像認識も行って詰りがないことを確認すると共に苗植付装置42が苗の持ち上げ(持ち帰り)をしていないことも確認し、苗受け板41aの泥詰まりや苗植付装置42が苗を植付けずに持ち上げ(持ち帰り)をしている時は、停車して対応する。
【0097】
以上により、判定を自動化できる。
【0098】
(2)走行車体2に直播装置を装着した直播機は、播種不良を起こす要因として圃場状態による影響が多い。
【0099】
そこで、機体に装備したカメラにて圃場を撮影し、AIにより圃場状態を画像認識することで播種設定を決定する。
【0100】
画像認識にて表土状態、硬軟状態を判別することで、播種設定を決め、電動化された繰り出し量調整機構、覆土機構、フロート感度、溝切深さを決定する。
【0101】
播種状態を最適化できる。
【0102】
(3)機体に装備したカメラにて圃場を撮影し、AIにより圃場状態を画像認識することで苗植付け設定や播種設定を決定する。
【0103】
そして、苗植付け作業後や播種作業後に作業結果をユーザが評価することで重みづけをし、実苗植え状態や実播種状態を学習教材とする。
【0104】
なお、初期状態で学習は行わず、実苗植え状態や実播種状態をユーザが評価することで教師付き学習とする。
【0105】
また、初期状態で学習は行わず、実苗植え状態や実播種状態をドローンなどで撮影し、その評価を反映させる(重み付けする)ことで教師付き学習としても良い。
【0106】
感性的な評価ではなく定量的に評価されたもので自動判定が行え、自動でユーザスタイルに最適化される。
【符号の説明】
【0107】
29 GPS
32 苗載台センサ
37 入力装置(モニタ)
41 苗載台
42 苗植付装置
45 苗検出センサ
a 往復回数
c 作業距離
d 作業面積
g 苗使用量
g’ 設定苗使用量
h 苗取り量
m 圧縮係数
N マット状苗(マット状土付き苗)
p 圧縮率