(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116504
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】液滴吐出装置、液滴吐出方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20240821BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
B41J2/175 501
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022167
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒須 重隆
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA26
2C056EB15
2C056EB34
2C056EC03
2C056EC15
2C056EC20
2C056EC26
2C056FA13
2C056FA14
2C056KB04
2C056KB08
2C056KB09
2C056KB16
2C056KB37
2C056KC02
(57)【要約】
【課題】液滴吐出装置の大型化及び液体の変性を抑制しながら送液不良時の送液補助が可能な液滴吐出装置、液滴吐出方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】液滴吐出装置1は、液体を貯留する液体貯留部41と、ノズルから液体を吐出する液滴吐出ヘッド24aと、液体貯留部41から液滴吐出ヘッド24aに液体を送出する単一の液体流路421に設けられた複数の液体送出部422と、複数の液体送出部422の動作を制御する制御部50と、を備え、制御部50は、所定の条件成立時に複数の液体送出部422のうち2以上の液体送出部422を同時稼働させる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留する液体貯留部と、
ノズルから液体を吐出する液滴吐出ヘッドと、
前記液体貯留部から前記液滴吐出ヘッドに液体を送出する単一の液体流路に設けられた複数の液体送出部と、
前記複数の液体送出部の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、所定の条件成立時に複数の液体送出部のうち2以上の液体送出部を同時稼働させる液滴吐出装置。
【請求項2】
前記複数の液体送出部のうち第1の液体送出部の送液量を検知可能な検知部を備え、
前記制御部は、前記検知部が前記第1の液体送出部の送液量の低下を検知した場合、当該第1の液体送出部よりも送液方向上流側に設けられている第2の液体送出部を前記第1の液体送出部と同時稼働させる請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記複数の液体送出部は、前記液滴吐出ヘッドよりも送液方向上流側に設けられている請求項2に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記液体貯留部は、メインタンクと、前記メインタンクから供給される液体を一時的に貯留する第1サブタンクと、を備え、
前記第1サブタンクは、前記メインタンクと前記液滴吐出ヘッドとの間に設けられ、
前記第1の液体送出部は、前記第1サブタンクの液体を下流に送出する送液ポンプを備え、
前記第2の液体送出部は、前記第1サブタンク内を加圧する空圧ポンプを備える請求項3に記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記液体貯留部は、メインタンクと、前記メインタンクから供給される液体を一時的に貯留する第1サブタンクと、を備え、
前記第1サブタンクは、前記メインタンクと前記液滴吐出ヘッドとの間に設けられ、
前記第1の液体送出部は、前記第1サブタンクの液体を下流に送出する送液ポンプを備え、
前記第2の液体送出部は、前記メインタンクの液体を前記第1サブタンクに供給する供給ポンプを備える請求項3に記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
前記液体貯留部は、前記送液ポンプと前記液滴吐出ヘッドとの間に、前記ノズルの圧力を調整する第2サブタンクを備え、
前記第2サブタンクは、その内部の圧力値を測定する第2圧力測定部を備え、
前記第2圧力測定部は、前記検知部であり、測定した前記圧力値の単位時間あたりの変化量に基づいて前記送液ポンプの送液量を検知する請求項4又は5に記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
前記液体貯留部は、前記送液ポンプと前記液滴吐出ヘッドとの間に、前記ノズルの圧力を調整する第2サブタンクを備え、
前記第2サブタンクは、その内部の液面高さを測定する液面測定部を備え、
前記液面測定部は、前記検知部であり、測定した前記液面高さの単位時間あたりの変化量から前記送液ポンプの送液量を検知する請求項4又は5に記載の液滴吐出装置。
【請求項8】
前記送液ポンプは、その送液方向下流側に流量計を備え、
前記流量計は、前記検知部であり、その測定値に基づいて前記送液ポンプの送液量を検知する請求項4又は5に記載の液滴吐出装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記検知部が検知した前記送液ポンプの送液量に基づいて、前記第1サブタンク内の圧力値を逐次修正する請求項4又は5に記載の液滴吐出装置。
【請求項10】
前記送液ポンプは、ダイアフラムポンプである請求項4又は5に記載の液滴吐出装置。
【請求項11】
前記第1サブタンクは、可塑性部材からなる袋状である請求項4又は5に記載の液滴吐出装置。
【請求項12】
前記複数の液体送出部が同時稼働している場合にその旨を報知する報知部を備える請求項4又は5に記載の液滴吐出装置。
【請求項13】
液体を貯留する液体貯留部と、ノズルから液体を吐出する液滴吐出ヘッドと、前記液体貯留部から前記液滴吐出ヘッドに液体を送出する単一の液体流路に設けられた複数の液体送出部と、を備える液滴吐出装置の液滴吐出方法であって、
所定の条件成立時に複数の液体送出部のうち2以上の液体送出部を同時稼働させるステップを含む液滴吐出方法。
【請求項14】
液体を貯留する液体貯留部と、ノズルから液体を吐出する液滴吐出ヘッドと、前記液体貯留部から前記液滴吐出ヘッドに液体を送出する複数の液体送出部と、を備える液滴吐出装置のコンピューターを、前記複数の液体送出部の動作を制御する制御部として機能させるプログラムであって、所定の条件成立時に前記複数の液体送出部のうち2以上の前記液体送出部を同時稼働させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置、液滴吐出方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録媒体の記録面に液滴を吐出して画像を記録する液滴吐出装置が知られている。液滴吐出装置は、液体の入ったタンクを備える。液滴吐出装置は、当該タンク内の液体をポンプにより液滴吐出ヘッドに送出する。そして、液滴吐出ヘッドに送出された液体は、ノズルから適切なタイミングで吐出される。
【0003】
液体を送出するポンプは、弁にゴミや固着物が付着すると、圧力をうまく形成できず、送液不良となる。そこで、例えば特許文献1には、複数の流路とポンプを備えるインクジェット記録装置が記載されている。当該発明は、分岐点からタンクを繋ぐ第1の流路のインクを第1のポンプにより送出する。そして、第1のポンプが送液不良となった場合は、分岐点で延設されて第1の流路の接続点で接続する第2の流路に設けられた第2のポンプを動作させる。特許文献1の発明は、当該制御により、第1のポンプの送液不良を解消する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の発明は、第1のポンプの送液不良を解消するためだけに第2の流路を設ける必要があり、インクジェット記録装置が大型化する。また、第2の流路内のインクは、平時は流動しないため、成分の分離、析出、沈降等により、不均一化や変性を起こしやすい。結果、特許文献1の発明は、画像劣化や弁への異物付着、あるいは流路詰まり等の更なる問題を起こし得る。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものである。その目的は、液滴吐出装置の大型化並びに液体の変性を抑制しながら、送液不良時の送液補助が可能な液滴吐出装置、液滴吐出方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、液滴吐出装置であって、
液体を貯留する液体貯留部と、
ノズルから液体を吐出する液滴吐出ヘッドと、
前記液体貯留部から前記液滴吐出ヘッドに液体を送出する単一の液体流路に設けられた複数の液体送出部と、
前記複数の液体送出部の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、所定の条件成立時に複数の液体送出部のうち2以上の液体送出部を同時稼働させる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の液滴吐出装置であって、
前記複数の液体送出部のうち第1の液体送出部の送液量を検知可能な検知部を備え、
前記制御部は、前記検知部が前記第1の液体送出部の送液量の低下を検知した場合、当該第1の液体送出部よりも送液方向上流側に設けられている第2の液体送出部を前記第1の液体送出部と同時稼働させる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の液滴吐出装置であって、
前記複数の液体送出部は、前記液滴吐出ヘッドよりも送液方向上流側に設けられている。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の液滴吐出装置であって、
前記液体貯留部は、メインタンクと、前記メインタンクから供給される液体を一時的に貯留する第1サブタンクと、を備え、
前記第1サブタンクは、前記メインタンクと前記液滴吐出ヘッドとの間に設けられ、
前記第1の液体送出部は、前記第1サブタンクの液体を下流に送出する送液ポンプを備え、
前記第2の液体送出部は、前記第1サブタンク内を加圧する空圧ポンプを備える。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の液滴吐出装置であって、
前記液体貯留部は、メインタンクと、前記メインタンクから供給される液体を一時的に貯留する第1サブタンクと、を備え、
前記第1サブタンクは、前記メインタンクと前記液滴吐出ヘッドとの間に設けられ、
前記第1の液体送出部は、前記第1サブタンクの液体を下流に送出する送液ポンプを備え、
前記第2の液体送出部は、前記メインタンクの液体を前記第1サブタンクに供給する供給ポンプを備える。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の液滴吐出装置であって、
前記液体貯留部は、前記送液ポンプと前記液滴吐出ヘッドとの間に、前記ノズルの圧力を調整する第2サブタンクを備え、
前記第2サブタンクは、その内部の圧力値を測定する第2圧力測定部を備え、
前記第2圧力測定部は、前記検知部であり、測定した前記圧力値の単位時間あたりの変化量に基づいて前記送液ポンプの送液量を検知する。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項4又は5に記載の液滴吐出装置であって、
前記液体貯留部は、前記送液ポンプと前記液滴吐出ヘッドとの間に、前記ノズルの圧力を調整する第2サブタンクを備え、
前記第2サブタンクは、その内部の液面高さを測定する液面測定部を備え、
前記液面測定部は、前記検知部であり、測定した前記液面高さの単位時間あたりの変化量から前記送液ポンプの送液量を検知する。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項4又は5に記載の液滴吐出装置であって、
前記送液ポンプは、その送液方向下流側に流量計を備え、
前記流量計は、前記検知部であり、その測定値に基づいて前記送液ポンプの送液量を検知する。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項4又は5に記載の液滴吐出装置であって、
前記制御部は、前記検知部が検知した前記送液ポンプの送液量に基づいて、前記第1サブタンク内の圧力値を逐次修正する。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項4又は5に記載の液滴吐出装置であって、
前記送液ポンプは、ダイアフラムポンプである。
【0017】
請求項11に記載の発明は、請求項4又は5に記載の液滴吐出装置であって、
前記第1サブタンクは、可塑性部材からなる袋状である。
【0018】
請求項12に記載の発明は、請求項4又は5に記載の液滴吐出装置であって、
前記複数の液体送出部が同時稼働している場合にその旨を報知する報知部を備える。
【0019】
請求項13に記載の発明は、
液体を貯留する液体貯留部と、ノズルから液体を吐出する液滴吐出ヘッドと、前記液体貯留部から前記液滴吐出ヘッドに液体を送出する単一の液体流路に設けられた複数の液体送出部と、を備える液滴吐出装置の液滴吐出方法であって、
所定の条件成立時に複数の液体送出部のうち2以上の液体送出部を同時稼働させるステップを含む。
【0020】
請求項14に記載の発明は、
液体を貯留する液体貯留部と、ノズルから液体を吐出する液滴吐出ヘッドと、前記液体貯留部から前記液滴吐出ヘッドに液体を送出する複数の液体送出部と、を備える液滴吐出装置のコンピューターを、前記複数の液体送出部の動作を制御する制御部として機能させるプログラムであって、所定の条件成立時に前記複数の液体送出部のうち2以上の前記液体送出部を同時稼働させる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、液滴吐出装置の大型化及び液体の変性を抑制しながら、送液不良時の送液補助が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図3】インクジェット記録装置のブロック図である。
【
図4】供給ポンプによる送液ポンプの送液補助処理のフローチャートである。
【
図5】送液ポンプの稼働時間と、第2サブタンクの液面の高さの関係を示すグラフである。
【
図6】第1サブタンク内の圧力とインク流量との関係を示すグラフである。
【
図7】供給ポンプによって送液ポンプの送液を補助する場合の圧力の動きを示す送液部の概略構成図である。
【
図8】空圧ポンプによる送液ポンプの送液補助処理のフローチャートである。
【
図9】空圧ポンプによって送液ポンプの送液を補助する場合の圧力の動きを示す送液部の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態に係る液滴吐出装置について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有するものについては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0024】
[インクジェット記録装置の全体構成]
図1は、本発明の液滴吐出装置の一実施形態である、インクジェット記録装置1の主要構成を示す側断面図である。インクジェット記録装置1は、給紙部10、画像形成部20、排紙部30、送液部40(
図2参照)、制御部50、報知部60及び操作部70(いずれも
図3参照)等を備える。
【0025】
(給紙部)
給紙部10は、画像形成前の記録媒体Pを格納する。給紙部10は、制御部50の制御下で、記録媒体Pを画像形成部20に搬送する。給紙部10は、給紙トレー11及び搬送部12等を備える。
【0026】
{給紙トレー}
給紙トレー11は、記録媒体Pを格納する板状部材である。給紙トレー11は、一又は複数の記録媒体Pを載置可能に設けられる。給紙トレー11は、載置された記録媒体Pの量に応じて上下動する。給紙トレー11は、当該上下動方向により、最上の記録媒体Pが搬送部12によって搬送される位置で保持される。
【0027】
{搬送部}
搬送部12は、給紙トレー11から画像形成部20へ記録媒体Pを搬送する。搬送部12は、搬送機構を備える。搬送機構は、ベルト123を駆動して、ベルト123上の記録媒体Pを搬送する。ベルト123は、輪状であり、当該輪の内側が複数のローラー121、122により担持される。
【0028】
搬送部12は、供給部を備える。供給部は、給紙トレー11に載置された最上の記録媒体Pをベルト123上に受け渡す。搬送部12は、当該供給部により、記録媒体Pをベルト123に沿わせるように搬送する。
【0029】
(画像形成部)
画像形成部20は、送液部40と協働して、制御部50の制御下で記録媒体Pに記録動作をする。画像形成部20は、画像形成ドラム21、受け渡しユニット22、用紙加熱部23、ヘッドユニット24、照射部25及びデリバリー部26等を備える。
【0030】
{画像形成ドラム}
画像形成ドラム21は、円筒状の外周面に沿って記録媒体Pを担持し、回転に伴って当該記録媒体Pを搬送する。画像形成ドラム21の搬送面は、用紙加熱部23、ヘッドユニット24及び照射部25と対向し、搬送される記録媒体Pに対して画像形成処理をする。
【0031】
{受け渡しユニット}
受け渡しユニット22は、搬送部12と画像形成ドラム21の間に介在する位置に設けられる。受け渡しユニット22は、爪部221及び受け渡しドラム222等を備える。
【0032】
爪部221は、搬送部12により搬送された記録媒体Pの一端を担持する円筒状部材である。受け渡しドラム222は、爪部221に担持された記録媒体Pを誘導する部材である。
【0033】
受け渡しユニット22は、搬送部12上の記録媒体Pを爪部221で取り上げて受け渡しドラム222の外周面に沿わせる。受け渡しユニット22は、当該動作により、記録媒体Pを画像形成ドラム21に受け渡す。
【0034】
{用紙加熱部}
用紙加熱部23は、例えば、電熱線等を備え、通電に応じて発熱する。用紙加熱部23は、制御部50により制御され、その近傍を通過する記録媒体Pが所定の温度となるように発熱する。用紙加熱部23は、画像形成ドラム21の外周面の近傍であり、かつ、記録媒体Pの搬送方向について、ヘッドユニット24の上流側に位置するよう設けられる。
【0035】
用紙加熱部23の近傍には、不図示の温度センサーが設けられる。制御部50は、当該温度センサーにより用紙加熱部23付近の温度を検知する。制御部50は、当該検知した温度に基づいて、用紙加熱部23の発熱を制御する。
【0036】
{ヘッドユニット}
ヘッドユニット24は、記録媒体Pに対してインクを吐出して画像を形成する。ヘッドユニット24は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)及びK(ブラック)の各色に対応するものがそれぞれ設けられている。
図1では、記録媒体Pの搬送方向に対して、上流からY、M、C、Kの各色に対応したヘッドユニット24が順番に設けられている。
【0037】
ここで、平面視において記録媒体Pの搬送方向に垂直な方向を幅方向とする。本実施形態のヘッドユニット24は、幅方向につき、記録媒体Pの全体をカバーする長さ(幅)で複数配列されるように設けられている。すなわち、インクジェット記録装置1は、ワンパス方式のラインヘッド型インクジェット記録装置である。ヘッドユニット24は、液滴吐出ヘッドであるインクジェットヘッド24a(
図2参照)が複数配列されて構成されている。
【0038】
なお、画像形成部20に設けられるヘッドユニット24の数は3つ以下であっても5つ以上であってもよい。また、単一のインクジェットヘッド24aがヘッドユニット24を構成する構成であってもよい。
【0039】
ヘッドユニット24が吐出するインクは、例えば紫外線硬化型インクである。紫外線硬化型インクは、照射部25から紫外線が照射されない状態では、温度に応じてゲル状態と液体(ゾル)状態との間で相変化するゲル状インクである。紫外線硬化型インクは、例えば40~100℃程度の相変化温度を有し、相変化温度以上に加熱上昇されることで一様に液化(ゾル化)する。紫外線硬化型インクは、一方で、通常の室温程度、すなわち0~30℃程度である場合はゲル化する。
【0040】
{照射部}
照射部25は、例えば、低圧水銀ランプ等の蛍光管を備える。照射部25は、当該蛍光管の発光により、紫外線等のエネルギー線を照射する。照射部25は、画像形成ドラム21の外周面の近傍に設けられる。また、照射部25は、記録媒体Pの搬送方向について、ヘッドユニット24の下流側に位置するよう設けられる。照射部25は、インクが吐出された記録媒体Pに対してエネルギー線を照射する。記録媒体P上のインクは、当該エネルギー線の作用により硬化する。
【0041】
なお、紫外線を発する蛍光管は低圧水銀ランプに限られない。蛍光管は、例えば数百Pa~1MPa程度の動作圧力を備える水銀ランプであってよい。また、蛍光管は、殺菌灯として利用可能な光源、例えば、冷陰極管、紫外線レーザー光源、メタルハライドランプあるいは発光ダイオード等であってよい。この中でも、蛍光管は、紫外線をより高照度で照射可能であって省電力な光源であることが望ましい。蛍光管は、例えば、発光ダイオード等である。なお、エネルギー線は紫外線に限られず、インクの性質に応じてインクを硬化させる性質を有するエネルギー線であれば良い。そして、光源もエネルギー線に応じて置換される。
【0042】
上記においてはヘッドユニット24が紫外線硬化型のインクを吐出する場合を例示したが、これに限定されない。ヘッドユニット24が吐出するインクは、水性インクやその他の物性を有するインクであっても良い。
【0043】
{デリバリー部}
デリバリー部26は、搬送機構を備える。搬送機構は、内側が複数のローラー261、262に担持された輪状のベルト263を駆動して、記録媒体Pを搬送する。デリバリー部26は、円筒状の受け渡しローラー264を備える。受け渡しローラー264は、記録媒体Pを画像形成ドラム21から当該搬送機構に受け渡す。デリバリー部26は、受け渡しローラー264によりベルト263上に受け渡された記録媒体Pを搬送して排紙部30に送り出す。
【0044】
(排紙部)
排紙部30は、画像形成部20で画像形成された記録媒体Pが排紙される。
排紙部30は、板状の排紙トレー31等を備える。デリバリー部26により画像形成部20から送り出された記録媒体Pは、排紙トレー31に載置される。排紙部30は、当該記録媒体Pを、ユーザーが取り出すまで格納する。
【0045】
(送液部)
図2は、送液部40の概略構成図である。
図2では、複数のインクジェットヘッド24aを省略して1つのインクジェットヘッド24aのみを示している。
送液部40は、液体貯留部41、液体流通部42、空圧制御部43及び背圧制御部44(いずれも
図3参照)等を備える。
【0046】
{液体貯留部}
液体貯留部41は、インクジェットヘッド24aが吐出するインクを貯留する。液体貯留部41は、例えば金属製の剛体密閉タンクである。液体貯留部41は、メインタンク411、第1サブタンク412及び第2サブタンク413等を備える。
【0047】
〔メインタンク〕
メインタンク411は、送液部40の各部に供給されるインクが収容されるタンクである。当該インクは、後述する供給弁4211aの開放時に、供給ポンプ4221により、供給管4211を介して、第1サブタンク412に供給される。メインタンク411は、その全体を交換可能となっており、供給ポンプ4221の動作状況に拘わらず、供給管4211と着脱可能に形成されている。
【0048】
〔第1サブタンク〕
第1サブタンク412は、メインタンク411から供給されるインクを一時的に貯留する。第1サブタンク412を設けると、供給ポンプ4221がメインタンク411のインクを供給する際の脈動による圧力変化が緩和される。第1サブタンク412の容量は、通常メインタンク411より小さいか略同一である。
【0049】
第1サブタンク412には、インク貯留部及び気体貯留部が設けられる。インク貯留部には、インクが貯留される。気体貯留部は、インク液面よりも上方であり、空気等の気体が貯留される。そのため、第1サブタンク412は、密閉された状態でインク又は気体が排出されると、その内部が減圧される。
【0050】
第1サブタンク412には、第1サブタンク412内のインクを適温に保持する不図示のインク加熱部が設けられる。インク加熱部は、ヒーターやヒーターからの熱を伝える伝熱部材等により構成される。インク加熱部を構成するヒーターとしては、例えば、通電されることによりジュール熱を生じる電熱線が用いられる。インク加熱部を構成する伝熱部材としては、熱伝導率の高い部材、例えば、各種金属(合金)で形成された熱伝導板が用いられる。
【0051】
なお、第1サブタンク412は、そのインク貯留部が可塑性を有する、例えば袋状の部材であり、剛体の密閉容器内に格納される構成であってもよい。
【0052】
〔第2サブタンク〕
第2サブタンク413は、第1サブタンク412から送液されたインクが一時的に貯留される小型のインク室である。第2サブタンク413の容量は、特に限定されないが、第1サブタンク412の容量より小さいか略同一程度である。第2サブタンク413内は、第1サブタンク412と同様に、インク貯留部と気体貯留部とで構成される。したがって、第2サブタンク413は、密閉された状態でインク又は気体が供給されると、その内部が加圧される。
【0053】
第1サブタンク412及び第2サブタンク413には、内部の圧力を測定可能な圧力計である第1圧力測定部412aと第2圧力測定部413aがそれぞれ設けられる。第1圧力測定部412a及び第2圧力測定部413aは、各タンク内の圧力値を取得して制御部50に出力する。
【0054】
第1サブタンク412及び第2サブタンク413には、フロートセンサーである液面測定部412b、413bがそれぞれ設けられる。液面測定部412b、413bは、各タンク内のインクの液面位置に係る測定データを取得して制御部50に出力する。制御部50は、当該測定データから各タンク内のインク残量を取得し、送液方向上流側のタンクから適宜インクを送液させる。
【0055】
{液体流通部}
液体流通部42は、液体貯留部41及びインクジェットヘッド24aとの間のインクの流通を制御する。液体流通部42は、液体流路421(
図3参照)を備える。液体流路421は、液体送出部422(
図3参照)を備える。
【0056】
〔液体流路〕
液体流路421は、液体貯留部41の各タンク同士、あるいは液体貯留部41のいずれかのタンクとインクジェットヘッド24aとを連通させるインクの流路である。液体流路421は、供給管4211、送液管4212、供給路4213及び回収路4214等により構成された単一の液体流路である。供給管4211、送液管4212、供給路4213及び回収路4214は、中空の円環状のチューブ構造を有する。また、供給管4211、送液管4212、供給路4213及び回収路4214は、インクの種類にもよるが、耐インク性を有しているのが好ましい。
【0057】
<供給管>
供給管4211は、メインタンク411のインク貯留部と、第1サブタンク412のインク貯留部とを連通する流路である。メインタンク411内のインクは、供給管4211を通過して第1サブタンク412に送液される。供給管4211には、供給弁4211aが設けられる。
【0058】
〈供給弁〉
供給弁4211aは、供給管4211のうち、供給ポンプ4221よりも第1サブタンク412側に設けられる。供給弁4211aは、電磁弁であり、制御部50の制御の下、供給管4211を選択的に開閉する。
【0059】
<送液管>
送液管4212は、第1サブタンク412のインク貯留部と、第2サブタンク413のインク貯留部とを連通するインク流路である。第1サブタンク412内のインクは、送液管4212を通過して第2サブタンク413に送液される。送液管4212には、脱気モジュール4212aと、送液弁4212bと、逆止弁4212cと、流量計4212dが設けられる。
【0060】
〈脱気モジュール〉
脱気モジュール4212aは、例えば複数の中空糸膜の内側が脱気され、当該中空糸膜の外側にインクが流通する、外部還流型の中空糸膜脱気モジュールである。脱気モジュール4212aにより、インクに溶存した、あるいは含まれた気泡が除去される。
【0061】
インクに空気が混入していると、いわゆる「エア噛み」により、後述する送液ポンプ4223が送液不良ないし送液不能になるおそれがある。そのため、脱気モジュール4212aは、送液ポンプ4223よりも送液方向上流側に設けられる。なお、脱気モジュール4212aは、中空糸内の中空部にインクを還流させる内部還流型であってもよい。
【0062】
〈送液弁〉
送液弁4212bは、送液管4212において、脱気モジュール4212a及び送液ポンプ4223よりも第2サブタンク413側に設けられる。送液弁4212bは、電磁弁であり、制御部50の制御の下、液面測定部413bの検知結果に応じて送液管4212を選択的に開閉する。
【0063】
〈逆止弁〉
逆止弁4212cは、
図2に示すように、第1サブタンク412と第2サブタンク413とを連通するインク流路のうち、供給管4211とは異なるインク流路に設けられる。逆止弁4212cは、当該インク流路において、送液方向下流側から送液方向上流側へのインクの流動のみを許可する。そのため、第1サブタンク412内のインクの脱気制御において、制御部50は、初めに供給弁4211a、送液弁4212b及び後述する循環弁4214aを閉鎖状態とする。次いで、制御部50は、送液ポンプ4223を駆動させる。すると、第1サブタンク412内のインクは、脱気モジュール4212aを通過して脱気された後、逆止弁4212cを通過して第1サブタンク412内に循環する。
また、逆止弁4212cを設けると、故障等で送液弁4212bが開放状態とできなくなった場合に、インク圧力の過剰な上昇を抑制できる。
【0064】
〈流量計〉
流量計4212dは、送液ポンプ4223よりも第2サブタンク413側に設けられる。流量計4212dは、送液ポンプ4223の送液量を検知する。流量計4212dは、検知した送液ポンプ4223の送液量を、制御部50に出力する。
【0065】
第2圧力測定部413a、液面測定部413b及び流量計4212dは、後述する第1の液体送出部である送液ポンプ4223の送液量を検知可能な検知部として機能する。検知部の詳細な機能については、後述する。
【0066】
<供給路>
供給路4213は、第2サブタンク413のインク貯留部と、インクジェットヘッド24aのインレットと、を連通するように設けられる。第2サブタンク413内のインクは、供給路4213を通過してインクジェットヘッド24aに送液される。
【0067】
<回収路>
回収路4214は、インクジェットヘッド24aのアウトレットと、供給管4211のうち、供給弁4211aと第1サブタンク412との間とを連通するように設けられる。回収路4214には、循環弁4214aが設けられる。インクジェットヘッド24aで吐出されなかったインクは、回収路4214を通過して第1サブタンク412に回収される。インクジェット記録装置1は、回収路4214を備えることで、インクを循環させて異物や気泡等を除去するインク循環処理が可能になる。
【0068】
〈循環弁〉
循環弁4214aは、電磁弁であり、制御部50の制御の下、回収路4214を開閉する。メンテナンス時等にインクジェットヘッド24aからインクを抜く必要がある場合、循環弁4214aを開くことで、インクを無駄なく回収できる。
【0069】
〔液体送出部〕
液体送出部422は、タンク内に貯留されたインクをインクジェットヘッド24aに向けて送出する部材である。液体送出部422は、第1の液体送出部である送液ポンプ4223を備える。液体送出部422は、第1の液体送出部よりも送液方向上流側に設けられた第2の液体送出部である供給ポンプ4221及び空圧ポンプ4222を備える。
【0070】
<供給ポンプ>
供給ポンプ4221は、供給管4211に設けられる。供給ポンプ4221は、制御部50の制御の下、メインタンク411内のインクを第1サブタンク412に送液する。
【0071】
<空圧ポンプ>
空圧ポンプ4222は、後述する送気管431に設けられる。空圧ポンプ4222は、制御部50により、第1サブタンク412内の気体を第2サブタンク413内に送気するよう稼働制御される。これにより、第1サブタンク412内の減圧並びに第2サブタンク413内の加圧ができる。インクジェットヘッド24aのインクを循環させる際は、当該減圧により、アウトレットから第1サブタンク412に送液する。また、インクジェットヘッド24aをメンテナンスする際は、当該加圧により、インクジェットヘッド24aからインクを排出させる。
【0072】
<送液ポンプ>
送液ポンプ4223は、送液管4212に設けられる。送液ポンプ4223は、例えばダイアフラムポンプであり、制御部50の制御の下、第1サブタンク412内のインクを第2サブタンク413に送液する。これにより、第1サブタンク412内の減圧並びに第2サブタンク413内の加圧ができる。
【0073】
インクジェット記録装置1においては、送液ポンプ4223に送液不良が生じた場合、送液方向上流側の供給ポンプ4221又は空圧ポンプ4222が送液を補助する。供給ポンプ4221又は空圧ポンプ4222による送液補助の詳細については、後述する。
【0074】
{空圧制御部}
空圧制御部43は、第1サブタンク412及び第2サブタンク413内の加圧及び減圧を制御する。空圧制御部43は、送気管431及びバッファタンク432等を備える。
【0075】
〔送気管〕
送気管431は、中空の円環状のチューブ構造を有し、第1サブタンク412内の気体貯留部と第2サブタンク413内の気体貯留部とを連通するように設けられる。これにより、第1サブタンク412内の気体を第2サブタンク413内に送気できる。送気管431は、共通大気開放弁4311、第1大気開放弁4312及び第2大気開放弁4313等を備える。送気管431は、後述する送液補助処理の際に、第1サブタンク412内を加圧する送気流路となる加圧管4314と、補助出力弁4315を備える。
【0076】
<共通大気開放弁>
共通大気開放弁4311は、送気管431のうち、空圧ポンプ4222とバッファタンク432の間に設けられる。共通大気開放弁4311は、電磁弁であり、制御部50の制御下で、第1サブタンク412及び第2サブタンク413を大気に対して選択的に開放又は閉鎖する。なお、共通大気開放弁4311は、インクジェットヘッド24aの稼働中には閉鎖状態となり、インクジェット記録装置1のメンテナンス時に開放状態となる。
【0077】
<第1大気開放弁>
第1大気開放弁4312は、送気管431のうち、空圧ポンプ4222と第1サブタンク412の間に設けられる。第1大気開放弁4312は、電磁弁であり、制御部50の制御下で、第1サブタンク412を大気に対して選択的に開放又は閉鎖する。第1大気開放弁4312及び第1サブタンク412の気体貯留部は、通常大気開放されている。
【0078】
<第2大気開放弁>
第2大気開放弁4313は、送気管431のうち、共通大気開放弁4311と第2サブタンク413の間に設けられる。第2大気開放弁4313は、電磁弁であり、制御部50の制御下で、第2サブタンク413を大気に対して選択的に開放又は閉鎖する。
【0079】
第1サブタンク412内の気体を第2サブタンク413に送気する際、第2大気開放弁4313を開放することで、第1サブタンク412のみを減圧できる。同様に、第1大気開放弁4312を開放して第1サブタンク412内の気体を第2サブタンク413に送気することで、第2サブタンク413のみを加圧できる。このように、第1大気開放弁4312と第2大気開放弁4313を設けると、第1サブタンク412内と第2サブタンク413内とのいずれか一方のみの圧力調整が可能となる。
【0080】
また、共通大気開放弁4311が閉鎖状態であっても、第1大気開放弁4312及び第2大気開放弁4313が開放状態であれば、第2サブタンク413を大気開放できる。更にこの状態で空圧ポンプ4222を稼働させることで、第2サブタンク413内を加圧できる。同様に、第1大気開放弁4312が閉鎖状態であっても、第2大気開放弁4313が開放状態であれば、第1サブタンク412を大気開放できる。更にこの状態で、空圧ポンプ4222を稼働させることで、第1サブタンク412内を減圧できる。
【0081】
〔バッファタンク〕
バッファタンク432は、送気管431と連通して設けられる。バッファタンク432は、空圧ポンプ4222によって加圧された空気を貯留する。
【0082】
{背圧制御部}
背圧制御部44は、背圧管441及び背圧ポンプ442等を備える。背圧制御部44は、第2サブタンク413内の圧力を調整することで、インクジェットヘッド24aのノズルに適切な負圧を掛けてヘッドメニスカスを生成させる。背圧制御部44は、ノズルの圧力を負圧状態とすることで、画像形成時や各種のメンテナンス時を除くタイミングで、ノズルからインクが漏れ出すことを防止する。また、背圧制御部44の上記効果により、第2サブタンク413をインクジェットヘッド24aより下方に配置してその水頭差によりノズルの背圧を制御する必要が無い。結果、第2サブタンク413をインクジェットヘッド24aに対して任意の箇所に配置でき、送液部40及びインクジェット記録装置1を小型化できる。
【0083】
〔背圧管〕
背圧管441は、中空の円環状のチューブ構造を有し、第2サブタンク413の気体貯留部を大気開放可能となるように設けられる。背圧管441は、背圧弁4411と、背圧大気開放弁4412とを備え、制御部50の制御の下、第2サブタンク413を大気に対して選択的に開放又は閉鎖する。
【0084】
〔背圧ポンプ〕
背圧ポンプ442は、第2サブタンク413内の圧力を負圧とすることで、供給路4213を介してインクジェットヘッド24aのノズルを負圧状態とする。
【0085】
(制御部)
図3は、インクジェット記録装置1の内部構成を示すブロック図である。
制御部50は、インクジェット記録装置1を構成する各部を制御する。制御部50は、
図3に示すように、上記インクジェット記録装置1を構成する各部と接続される。制御部50は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)52及びROM(Read Only Memory)53等を備える。
【0086】
CPU51は、ROM53等の記憶装置から処理内容に応じた各種のプログラムやデータ等を読み出して実行する。CPU51は、実行された処理内容に応じてインクジェット記録装置1の各部の動作を制御する。RAM52は、CPU51により処理される各種のプログラムやデータ等を一時的に記憶する。ROM53は、CPU51等により読み出される各種のプログラムやデータ等を記憶する。
【0087】
(報知部)
報知部60は、制御部50の制御下で、種々の情報を報知する。報知部60は、例えば画面を有する表示部である。この場合、報知部60の報知の対象は、インクジェット記録装置1のユーザーである。あるいは、報知部60は、ネットワークを介して他の装置と通信可能な通信部である。この場合、報知部60の報知の対象は、インクジェット記録装置1を管理するオペレーターやサービスマン等である。
【0088】
報知部60は、送液補助処理において、複数の液体送出部422を稼働制御する際に、その旨を報知する。当該構成により、送液ポンプ4223の送液不良発生時に、送液ポンプ4223の送液を補助しつつ、オペレーターやサービスマンに送液ポンプ4223の修理を依頼できる。
【0089】
(操作部)
操作部70は、操作キー等の入力デバイスを備える。操作部70は、当該入力デバイスに対する入力操作を操作信号に変換して、制御部50に出力する。なお、報知部60が表示部である場合、操作部70は、報知部の画面に重ねられたタッチパネルでもよい。
【0090】
[送液補助処理]
上記のように構成されたインクジェット記録装置1における、送液ポンプ4223の送液補助処理について、
図4を参照して説明する。
図4は、送液補助処理の一例を示すフローチャートである。
【0091】
まず、制御部50は、所定の条件が成立するか否かを判定する(ステップS101)。本実施形態において、所定の条件とは、送液ポンプ4223に送液不良が生じたこと、すなわち、制御部50が送液ポンプ4223の送液量の低下を検知したことである。
【0092】
制御部50による、送液ポンプ4223に送液不良が生じているか否かの判定は、検知部の検知内容に基づく。例えば、検知部が液面測定部413bである場合、検知部は、送液ポンプ4223の稼働時間と、第2サブタンク413の液面高さの変化を検知して、制御部50に出力する。そして、制御部50は、当該出力内容から、送液ポンプ4223に送液不良が生じているか否かを判定する。
【0093】
図5は、送液ポンプ4223の稼働時間と、第2サブタンク413の液面高さの関係を示すグラフである。
図5において、横軸は送液ポンプ4223の稼働時間、縦軸は第2サブタンク413の液面高さをそれぞれ示す。
図5において、直線t1及びt2で囲われた領域は、送液ポンプ4223が正常稼働している場合の範囲を示す。制御部50は、液面測定部413bの検知結果が、直線t1及びt2で囲われた領域よりも下方に位置する場合、送液ポンプ4223に送液不良が生じていると判定する。
【0094】
なお、検知部は液面測定部413bに限られない。例えば、検知部は第2圧力測定部413aであってもよい。この場合、制御部50は、検知部が検知した第2サブタンク413の圧力値の変化量に基づいて、送液ポンプ4223に送液不良が生じているか否かを判定する。あるいは、検知部は流量計4212dであってもよい。この場合、制御部50は、検知部の測定値に基づいて、送液ポンプ4223に送液不良が生じているか否かを判定する。
【0095】
また、検知部の形態は上記のいずれか1つに限られず、制御部50は、複数の検知部の検知内容から送液ポンプ4223に送液不良が生じているか否かを判定してもよい。このようにすることで、制御部50は、より高精度に送液ポンプ4223に送液不良が生じているか否かを判定できる。
【0096】
制御部50が、送液ポンプ4223に送液不良が生じていないと判定した場合(ステップS101;No)、ステップS101に遷移する。すなわち、制御部50は、送液ポンプ4223に送液不良が生じるまで待機し続ける。
【0097】
制御部50は、送液ポンプ4223に送液不良が生じていると判定した場合(ステップS101;Yes)、第1サブタンク412内を加圧して、送液ポンプ4223の送液を補助する。初めに、制御部50は、送液ポンプ4223の送液補助に必要な、第1サブタンク412内の圧力値を算出する(ステップS102)。
【0098】
図6は、第1サブタンク412内の圧力値と送液ポンプ4223の送液量との関係を示すグラフである。
図6において、横軸は第1サブタンク412内の圧力値、縦軸はインク流量をそれぞれ示す。当該圧力値は、第1圧力測定部412aが取得する。例えば、送液ポンプ4223の送液量が本来q2必要であり、検知部が検知した送液ポンプ4223の送液量がq1であるとする。この場合、制御部50は、第1サブタンク412内を圧力値がp1からp2になるまで加圧する必要があると判断する。
【0099】
圧力値の算出後、制御部50は、
図7に示すように、第1大気開放弁4312を閉鎖して第1サブタンク412を大気的に閉鎖する。そして、制御部50は、供給弁4211aを開放した上で、送液ポンプ4223の動作と連動するように供給ポンプ4221を稼働させる。すなわち、制御部50は、供給ポンプ4221を送液ポンプ4223と同時稼働させる(ステップS103)。制御部50は、当該制御により、第1サブタンク412内をステップS102で算出した圧力値まで加圧して、送液ポンプ4223の送液を補助する。
【0100】
[実施形態の効果]
以上に示すように、本実施形態に係るインクジェット記録装置1は、単一の液体流路421に設けられた複数の液体送出部422を備える。そして、制御部50は、所定の条件成立時に複数の液体送出部422のうち2以上の液体送出部422を同時稼働させる。
当該構成によれば、平時にインクジェット記録装置1で用いられている液体送出部422により送液不良が解消される。そのため、インクジェット記録装置1の大型化並びに液体の変性が抑制できる。
【0101】
[その他の構成]
以上、本発明に係る実施の形態に基づいて具体的に説明を行ったが、本発明が上述の実施の形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む様々な変更が可能であるのはもちろんである。
【0102】
例えば、上記においては、ステップS101における所定の条件を、送液ポンプ4223に送液不良が生じたこととしたが、これに限られない。例えば、異常を検知したユーザーが、操作部70の操作により、第2の液体送出部の同時駆動を指示したこと等も、所定の条件に含めてよい。
【0103】
また、上記においては、送液ポンプ4223の送液補助方法として、供給ポンプ4221を送液ポンプ4223と同時稼働させる制御を例示したが、これに限られない。空圧ポンプ4222を送液ポンプ4223と同時稼働させてもよい。
【0104】
当該送液補助処理につき、
図8を参照して説明する。
図8におけるステップS101及びステップS102は、
図4のステップS101及びステップS102と同様であるため、その詳細な説明は割愛する。
【0105】
制御部50は、圧力値の算出後、
図9に示すように、補助出力弁4315を開放した上で、送液ポンプ4223の動作と連動するように空圧ポンプ4222を稼働させる(ステップS104)。制御部50は、当該制御により、第1サブタンク412内をステップS102で算出した圧力値まで加圧して、送液ポンプ4223の送液を補助する。
【0106】
当該構成によっても、送液ポンプ4223の送液補助が可能となる。特に、空圧ポンプ4222は、インクと接触する液体送出部422ではない。そのため、当該構成においては、送液ポンプ4223にインクのゴミや析出物等が付着したり、送液ポンプ4223が空気を噛み込んだりするおそれを有さない。
【0107】
また、制御部50は、第2サブタンク413の液面の単位時間移動量から必要な圧力値を随時算出して、リアルタイムに第1サブタンク412内の圧力値を逐次修正してもよい。
【0108】
また、制御部50は、送液ポンプ4223の動作停止中に共通大気開放弁4311及び第1大気開放弁4312を開放して、第1サブタンク412を大気開放させてもよい。当該制御により、残圧によるインクリークを回避できる。
【0109】
また、上記においては液滴吐出装置がインクジェット記録装置1である場合を例示したが、これに限られない。すなわち、本発明は、インク以外の液体の液滴をノズルから吐出する各種の液滴吐出装置であってよい。
【0110】
また、本発明に係るプログラムのコンピューター読み取り可能な媒体としてハードディスクや半導体の不揮発性メモリー等を使用する例を開示したが、これに限定されない。その他のコンピューター読み取り可能な媒体として、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用できる。また、本発明に係るプログラムのデータを、通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【符号の説明】
【0111】
1 インクジェット記録装置(液滴吐出装置)
24a インクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)
41 液体貯留部
411 メインタンク
412 第1サブタンク
413 第2サブタンク
413a 第2圧力測定部
413b 液面測定部
4212d 流量計
422 液体送出部
4221 供給ポンプ(第2の液体送出部)
4222 空圧ポンプ(第2の液体送出部)
4223 送液ポンプ(第1の液体送出部)
50 制御部
60 報知部