(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116513
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】固体燃料の製造方法
(51)【国際特許分類】
C10L 5/48 20060101AFI20240821BHJP
B09B 3/35 20220101ALI20240821BHJP
B09B 5/00 20060101ALI20240821BHJP
B09B 3/40 20220101ALI20240821BHJP
B29B 17/04 20060101ALI20240821BHJP
B02C 13/286 20060101ALI20240821BHJP
B02C 23/26 20060101ALI20240821BHJP
B09B 101/75 20220101ALN20240821BHJP
【FI】
C10L5/48 ZAB
B09B3/35
B09B5/00 Q
B09B3/40
B29B17/04
B02C13/286
B02C23/26
B09B101:75
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022179
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武藤 恭宗
(72)【発明者】
【氏名】竹本 智典
(72)【発明者】
【氏名】明戸 剛
(72)【発明者】
【氏名】福田 誠司
【テーマコード(参考)】
4D004
4D065
4D067
4F401
4H015
【Fターム(参考)】
4D004AA07
4D004AC04
4D004BA02
4D004BA03
4D004CA04
4D004CA08
4D004CA12
4D004CA22
4D004CB13
4D004DA03
4D004DA20
4D065BB02
4D065BB12
4D065EB14
4D065ED23
4D065ED24
4D065EE02
4D067EE17
4D067EE22
4D067GA04
4D067GA16
4D067GB03
4F401BA04
4F401CA14
4F401CA25
4F401CA28
4F401CA69
4F401CB40
4F401FA03Z
4F401FA20Z
4H015AA01
4H015AA17
4H015AB01
4H015BB03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】粗大粒子の混入が抑制された固体燃料の製造方法を提供すること。
【解決手段】含プラスチック廃棄物を加熱する加熱工程と、加熱後の含プラスチック廃棄物を破砕する破砕工程と、破砕物を軽量物と重量物とに分離する風力選別工程と、軽量物を篩上と篩下とに分離する篩選別工程と、を含む、固体燃料の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
含プラスチック廃棄物を加熱する加熱工程と、
加熱後の含プラスチック廃棄物を破砕する破砕工程と、
破砕物を軽量物と重量物とに分離する風力選別工程と、
軽量物を篩上と篩下とに分離する篩選別工程と、
を含む、固体燃料の製造方法。
【請求項2】
前記破砕工程において、破砕機の排出部のクリアランスを、下記式(1)に示される関係を満たすように調整し、前記排出部から破砕物を排出する、請求項1記載の固体燃料の製造方法。
【数1】
〔式(1)中、
Aは、破砕機の排出部のクリアランス(mm)を示し、
D
maxは、含プラスチック廃棄物の最大径(mm)を示す。〕
【請求項3】
前記破砕機の排出部のクリアランスに基づいて、前記風力選別工程における風速、及び前記分級工程における篩目を調整する、請求項2記載の固体燃料の製造方法。
【請求項4】
前記風力選別工程において、風速を下記式(2)に示される関係を満たすように調整する、請求項3記載の固体燃料の製造方法。
【数2】
〔式(2)中、
Vは、風速(m/s)を示し、
Aは、破砕機の排出部のクリアランス(mm)を示す。〕
【請求項5】
前記篩選別工程において、篩目を下記式(3)に示される関係を満たすように調整する、請求項3記載の固体燃料の製造方法。
【数3】
〔式(3)中、
Asは、篩目(mm)を示し、
Aは、破砕機の排出部のクリアランス(mm)を示す。〕
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体燃料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメント焼成設備は大型の燃焼施設が必要であり、燃料として石炭等の化石燃料が大量に消費されてきた。しかし、地球温暖化防止や市場価格の不安定化により、廃プラスチック廃棄物などを原料にした固形燃料が代替燃料として定着しつつある。この固体燃料は、自然界に放置しても分解しない廃プラスチックを有効利用することが可能であり、また同じ発熱量で比較した場合、石炭に比べてCO2の排出量が少ないなど多くの利点がある。
【0003】
従来、固体燃料の製造方法として、例えば、炭素繊維強化プラスチックを、300~500℃の範囲内に設定し、設定した加熱温度に応じて10分~12時間の範囲内で加熱処理し、処理後の炭素繊維強化プラスチックを粉砕する方法が報告されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
セメント焼成設備においては、セメントキルン内に固体燃料を窯前部から空気流に乗せて吹き込んで燃焼させ、主バーナーにおいて使用する微粉炭の使用量を削減する技術が採用されている。本発明者らは、石炭とともに石炭ミルで粉砕して細かい粒子状にすべく、固形燃料をセメント焼成設備の石炭ミルへ投入したところ、粉砕性が著しく低下するという課題が存在することを見出した。本発明者らは、その要因について詳細に検討したところ、固形燃料中に所定の粒径を超える粗大粒子が存在すると、粉砕性が著しく悪化することを確認した。また、この粗大粒子は、アスペクト比が高く、比較的高比重であることから、窯前部から空気流に乗せて吹き込むと、セメントキルン内のセメントクリンカ上に着地しやすくなる。そのため、セメントクリンカ表面で燃焼を継続する現象(以下、「着地燃焼」と称する)により、着地点周辺のセメントクリンカが還元焼成されて色調が変化し、セメントクリンカの品質を低下させるおそれがある。加えて、粗大粒子がバーナーポートや空送配管内で詰まり、運転トラブルを惹起するおそれもある。
本発明の課題は、粗大粒子の混入が抑制された固体燃料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
含プラスチック廃棄物を加熱して熱分解し、加熱後の含プラスチック廃棄物を破砕したうえで、破砕物を風力選別により軽量物と重量物とに分離した後、軽量物を篩選別により篩上と篩下とに分離し、篩下を回収することで、粗大粒子の混入が抑制された固体燃料の製造できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔5〕を提供するものである。
〔1〕含プラスチック廃棄物を加熱する加熱工程と、
加熱後の含プラスチック廃棄物を破砕する破砕工程と、
破砕物を軽量物と重量物とに分離する風力選別工程と、
軽量物を篩上と篩下とに分離する篩選別工程と、
を含む、固体燃料の製造方法。
〔2〕前記破砕工程において、破砕機の排出部のクリアランスを、下記式(1)に示される関係を満たすように調整し、前記排出部から破砕物を排出する、前記〔1〕記載の固体燃料の製造方法。
【0008】
【0009】
〔式(1)中、
Aは、破砕機の排出部のクリアランス(mm)を示し、
Dmaxは、含プラスチック廃棄物の最大径(mm)を示す。〕
【0010】
〔3〕前記破砕機の排出部のクリアランスに基づいて、前記風力選別工程における風速、及び前記分級工程における篩目を調整する、前記〔2〕記載の固体燃料の製造方法。
〔4〕前記風力選別工程において、風速を下記式(2)に示される関係を満たすように調整する、前記〔2〕又は〔3〕記載の固体燃料の製造方法。
【0011】
【0012】
〔式(2)中、
Vは、風速(m/s)を示し、
Aは、破砕機の排出部のクリアランス(mm)を示す。〕
【0013】
〔5〕前記篩選別工程において、篩目を下記式(3)に示される関係を満たすように調整する、前記〔2〕~〔4〕のいずれか一に記載の記載の固体燃料の製造方法。
【0014】
【0015】
〔式(3)中、
Asは、篩目(mm)を示し、
Aは、破砕機の排出部のクリアランス(mm)を示す。〕
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、粗大粒子の混入が抑制された固体燃料を製造することができる。したがって、本発明の方法により製造された固体燃料を用いることで、セメント焼成設備の石炭ミルへ投入したときに粉砕性に優れ、また着地燃焼や空送配管の詰まりによる運転トラブルを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の固体燃料の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図2】破砕物が風力選別機内で軽量物と重量物とに分離される様子を模式的に示す図である。
【
図3】風力選別機内の風速の測定例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の固体燃料の製造方法は、加熱工程と、破砕工程と、風力選別工程と、篩選別工程を含むものであり、好適な一実施形態のフローチャートを
図1に示す。
【0019】
<加熱工程>
本工程は、含プラスチック廃棄物を加熱する工程である。これにより、含プラスチック廃棄物に熱が伝達して熱分解し脆化するため、その後の物理選別を効率的に行うことができる。
【0020】
(含プラスチック廃棄物)
本工程においては、原料として含プラスチック廃棄物を使用する。
含プラスチック廃棄物としては、廃棄物中にプラスチックが含まれていれば特に限定されないが、例えば、シュレッダーダスト、建築廃プラスチック、農業廃プラスチック、漁業廃プラスチック、海洋廃プラスチック、工場等でのプラスチックの製造・加工時に生じる屑や不良品を挙げることができる。ここで、本明細書において「シュレッダーダスト」とは、工業用シュレッダーで産業廃棄物又は一般廃棄物を破砕し、金属を回収した後に廃棄される破片の混合物をいう。廃棄物としては、例えば、廃自動車、廃家電、自動販売機、OA機器、家具、建具が挙げられる。シュレッダーダストの具体例としては、例えば、自動車シュレッダーダスト、廃電子基板シュレッダーダストを挙げることができる。
廃棄物中のプラスチックとしては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を挙げることができるが、土砂、ガラス、木くず、紙、コンクリート、陶磁器等のプラスチック以外の異物が含まれていても構わない。
なお、本工程においては、2以上の廃プラスチック廃棄物を混合しても構わない。
【0021】
廃プラスチック廃棄物の大きさは、熱分解促進の観点から、粒子径が150mm以下であることが好ましく、50mm以下が更に好ましい。ここでいう「粒子径」とは、試料がすべて通過する篩の最小の篩目で表した粒子径をいう。なお、廃プラスチック廃棄物の粒子径の下限値は特に限定されない。
【0022】
含プラスチック廃棄物を所望の粒度に調整するために、加熱工程前において、前処理工程として、破砕工程及び篩選別工程から選択される1以上の物理選別を行うことができる。更に、加熱工程前の前処理工程として、熱分解促進、異物除去の観点から、破砕工程及び篩選別工程から選択される1以上の工程とともに、これらの工程に代えて、含プラスチック廃棄物を、風力選別工程、磁力選別工程、渦電流選別工程及び比重選別工程から選択される1以上の物理選別に供しても構わない。なお、各物理選別工程の具体的な操作は、従来公知の方法を採用することができる。
【0023】
(加熱)
含プラスチック廃棄物の加熱は、加熱炉を使用することができる。
加熱炉の方式は問わない。例えば、固定炉、ストーカー炉、ロータリーキルン炉、流動床炉、堅型炉、多段炉等を使用することができる。また、加熱炉の形状は特に限定されず、例えば、筒状、横断面矩形状等の適宜の形状を取り得る。なお、加熱炉内には、廃プラスチック廃棄物の供給部から排出部に向かって廃プラスチック廃棄物を搬送するためのコンベヤを装着してもよい。
【0024】
加熱炉の加熱源としては、所望の温度に制御できれば特に限定されないが、例えば、燃焼バーナー、熱風ヒーター、電気ヒーターを挙げることができる。なお、加熱方式は、外熱式でも、内熱式でも構わない。
【0025】
加熱炉内の温度は、廃プラスチック廃棄物を熱分解して脆化することができれば特に限定されないが、300℃以上が好ましく、350℃以上がより好ましく、400℃以上が更に好ましく、また廃棄物中の金属アルミニウムの融解を防止する観点から、650℃以下が好ましく、600℃以下がより好ましく、550℃以下が更に好ましい。
【0026】
加熱炉内における廃プラスチック廃棄物の炉内滞留時間は、廃プラスチック廃棄物の熱分解促進の観点から、10分以上180分以下が好ましく、30分以上150分以下がより好ましく、60分以上120分以下が更に好ましい。
【0027】
加熱時の雰囲気は、廃プラスチック廃棄物に含まれる樹脂やセルロース等から構成される動植物由来の繊維の熱量を加熱後の固体燃料に固定化し、かつ加熱処理後の破砕や粉砕、物理選別を容易とする点で、低酸素雰囲気とすることが好ましい。ここで、本明細書において「低酸素雰囲気」とは、大気中よりも酸素濃度が低い雰囲気をいう。低酸素雰囲気での連続的な加熱と、加熱後に得られる固形燃料中の熱量を多く残存させ、含プラスチック廃棄物の有する燃料としての価値を最大限活用する観点を踏まえると、外熱式ロータリーキルン炉を用いた低酸素雰囲気下での処理が好ましい。加熱時の雰囲気を低酸素とするために、窒素や水蒸気で炉内を充満させても、また含プラスチック廃棄物自身の熱分解により発生するガス成分(H2O、CO2、低級炭化水素等の可燃性ガスなど)で炉内を充満させてもよい。
【0028】
(冷却)
加熱工程後、
図1に示されるように、廃プラスチック廃棄物を冷却することができる。例えば、加熱後の廃プラスチック廃棄物を加熱炉からスクリューコンベヤで間接式ロータリークーラーや冷却スクリューコンベヤに搬送し冷却すればよい。なお、空気の存在下で加熱後の廃プラスチック廃棄物を冷却すると、着火、燃焼することがあるため、不活性ガス雰囲気下で冷却してもよい。不活性ガスとしては、例えば、ヘリウム、アルゴン、窒素を挙げることができる。
【0029】
<破砕工程>
本工程は、加熱後の含プラスチック廃棄物を破砕する工程である。これにより、加熱により脆化した含プラスチック廃棄物に衝撃力を加えて細粒化するとともに、被覆銅線や実装基板等のような金属が付着した樹脂から金属を剥離し、また電子基板や繊維強化プラスチックの多層構造を単層に剥離することができる。即ち、本工程の破砕は、可燃成分を燃料利用に適した粒子径に調整することを目的とする。
【0030】
廃プラスチック廃棄物の破砕は、破砕機を使用することができる。破砕機は、工業用の装置を使用することが可能である。破砕方式は特に限定されないが、固体燃料への粗大粒子の混入抑制の観点から、衝撃型破砕機が好ましい。例えば、ハンマークラッシャー、インパクトミルを挙げることができる。本工程は、2回以上行ってもよい。2回以上行う場合には、同一又は異なる破砕機を使用することができる。
【0031】
破砕機の機構としては、金属や熱分解が不十分な可燃成分が過度に破砕されることを抑制するために、一定の粒度範囲の粒子が破砕機外に排出される機構を設けることが好ましい。例えば、破砕機の排出部にクリアランスを設けることが挙げられる。
破砕機の排出部にクリアランスを設ける方法としては、例えば、破砕物の排出口にスクリーンを設置するか、あるいは破砕物の排出部自体に隙間を設けることが挙げられる。より具体的には、例えば、破砕機としてスイングハンマー式横型ハンマークラッシャーやハンマーミルを使用する場合、破砕機の排出部にスクリーンを設置し、破砕物が落下するスクリーンの開口径によってクリアランスを調整することができる。また、破砕機としてスイングハンマー式竪型ハンマークラッシャーを使用する場合、破砕物が落下するテーブルと側壁との隙間の間隔によってクリアランスを調整することができる。他の破砕機においても、上記と同様の方法でクリアランスを調整すればよい。
【0032】
破砕機の排出部のクリアランスA(mm)は、可燃成分を燃料利用に適した粒子径に調整する観点から、加熱工程に投入される含プラスチック廃棄物の最大径Dmax(mm)に対して、 下記式(1)に示される関係を満たすことが好ましい。
【0033】
【0034】
〔式(1)中、
Aは、破砕機の排出部のクリアランス(mm)を示し、
Dmaxは、含プラスチック廃棄物の最大径(mm)を示す。〕
【0035】
破砕機の排出部にスクリーンを設置する場合、スクリーンの開口形状によってクリアラスA(mm)を制御することができる。例えば、破砕物の排出部にパンチングスクリーン(パンチ穴を空けたスクリーン)を設置する場合、クリアランスA(mm)は孔径である。ロストル(スクリーンバー)を設置する場合はスリット幅がクリアランスA(mm)であり、またスクリーンメッシュを設置する場合はメッシュの目開きがクリアランスA(mm)である。但し、一の開口において隣接する2つの辺の長さが異なる場合は、短い方をクリアランスA(mm)とする。
【0036】
破砕機の排出部のクリアランスA(mm)は、可燃成分を燃料利用に適した粒子径に精度よく調整する観点から、加熱工程に投入される含プラスチック廃棄物の最大径D
max(mm)に対して、下記式(1-1)に示される関係を満たすことが好ましい。
【数5】
【0037】
〔式(1-1)中、A及びDmaxは、上記式(1)と同義である。〕
【0038】
<風力選別工程>
本工程は、破砕機の排出部から排出された破砕物を風力選別し、軽量物と重量物とに分離する工程である。破砕工程から排出された破砕物には、十分に熱分解され破砕により細粒化した可燃成分と、破砕により単体分離された鉄、銅等の有価金属と、熱分解が不十分で破砕において十分に細粒化されず排出された可燃成分と、ガラス、土砂等の無機成分等が含まれているため、これらをそれぞれ個別に回収する。
【0039】
本工程においては、風力選別機を使用することができる。風力選別機は、工業用の装置を使用することが可能であり、方式は特に限定されないが、例えば、ジグザグ式風力選別機、内部循環式風力選別機を挙げることができる。中でも、固体燃料への粗大粒子の混入抑制の観点から、ジグザグ式風力選別装置が好ましい。
【0040】
ジグザグ式風力選別機を用いて、破砕物が風力選別機内で軽量物と重量物とに分離される様子を
図2に示す。破砕物を風力選別機により軽量物と重量物とに分離する際に、被選別粒子のアスペクト比が大きいと、
図2(b)に示されるように、風の流れに対する粒子の向きによって浮上したり沈降したりと挙動が変動するため、所望の粒度よりも大きな粒子が軽量物として回収されてしまう。本発明者らは、粒度の調整方法として、破砕物を直接篩選別する方法が最も精度よく回収できると推測したが、篩選別のみでは、破砕によって細かくなった金属やガラス等の不燃成分を選別することが困難になることを確認した。そこで、可燃成分と不燃成分との選別方法として、風力選別した後、軽量物中に混入する粗大粒子の除去を目的に篩選別することで、両者を選別できることを見出した。なお、破砕物を篩選別後、風力選別した場合、不燃成分の粗大粒子への混入を抑制することは可能であるが、風力選別で分離された重量物に金属の他にゴム、基板、繊維強化プラスチック等が混入するため、回収される金属の品位が低下することを本発明者らは確認した。この場合、風力選別により分離された重量物に対して、更に比重選別等を行うことで金属と他成分とを選別することも考えられるが、重量物は、金属の内、特に被覆銅線と繊維とがそれぞれ濃縮され混ざり合った状態にあるため、銅線と繊維の絡み合いが生じやすく、設備トラブルや選別効率の低下を惹起しやすいことを確認した。
【0041】
本工程においては、軽量物に金属やガラス等の不燃成分が混入しないように、破砕機の排出部のクリアランスに基づいて、風力選別における風速を制御することが好ましい。具体的には、風力選別機内の風速V(m/s)は、破砕機の排出部のクリアランスA(mm)に対して、下記式(2)に示される関係を満たすことが好ましい。
【0042】
【0043】
〔式(2)中、
Vは、風速(m/s)を示し、
Aは、破砕機の排出部のクリアランス(mm)を示す。〕
【0044】
風力選別機内の風速V(m/s)は、軽量物への不燃成分の混入をより一層抑制する観点から、下記式(2-1)に示される関係を満たすことが好ましく、下記式(2-2)に示される関係を満たすことが更に好ましい。
【0045】
【0046】
〔式(2-1)及び(2-2)中、A及びVは、上記式(2)と同義である。〕
【0047】
なお、本工程において風力選別機内の実際の風速V(m/s)を測定する場合、例えば、風力選別機内の水平方向における断面を3以上の等しい面積に分割し、それぞれの中心点における風速を測定し、平均値を算出すればよい。
図3に風力選別機内の風速の測定例を示す。
図3(a)においては、ジグザグ式風力選別機のジグザグ選別部の水平方向における同一断面上において長手方向を等面積で3分割し、それぞれの中心点3箇所について風速を測定した場合を示している。なお、風力選別機内の風速を測定する位置は、選別部の形状により適宜選択することが可能である。例えば、水平方向における断面形状が円形である場合、
図3(b)に示されるように、直径を等間隔となるよう3以上に分割し、それぞれ分割された直径の中心点について風速を測定してもよい。また風速測定に使用する風速計には、熱線式又は風車式の風速計を用いる。
【0048】
なお、回収された重量物は、
図1に示されるように、比重選別により軽産物(未分解の樹脂)と、重産物(例えば、金属)とに分離する比重選別工程に供することができる。比重選別機の形式は特に限定されず、例えば、エアテーブル選別機、重液選別機、流動層選別機、ジグ選別機、薄流選別機など、乾式及び湿式のいずれも適用可能である。なお、軽産物はセメント原料として、また重産物は非鉄原料として、それぞれ使用することができる。
また、比重選別時の選別効率を向上させる目的で、重量物に対して篩選別を行い、重量物の粒度を調整した後、各粒群を個別に比重選別してもよい。
【0049】
<篩選別工程>
本工程は、風力選別により分離された軽量物を、篩選別により篩上と篩下とに分離する工程である。これにより、風力選別により分離された軽量物中の可燃成分が篩下に濃縮されるため、篩下を固体燃料として使用することができる。
本工程においては、篩選別機を使用することができる。篩選別機は、工業用の装置を使用することが可能であり、方式は特に限定されないが、例えば、振動篩、トロンメル、波動式篩を挙げることができる。なお、水平方向での振動による搬送のみで篩上を排出する機構を有する一般的な円筒振動篩の場合、篩上で回収される粒子がゴム・基板・繊維強化プラスチック等の薄片、未分解の樹脂を含んでいるため、篩上粒子の滞留・排出不良を生じる恐れがある。その場合、篩選別機の分級面を水平方向に対して、5°以上の傾斜を設けることが好ましく、10°以上の傾斜を設けることがより好ましく、15°以上の傾斜を設けることが更に好ましい。
【0050】
本工程においては、固体燃料への粗大粒子の混入抑制の観点から、篩目(mm)は、下記式(3)に示される関係を満たすことが好ましい。
【0051】
【0052】
〔式(3)中、
Asは、篩目(mm)を示し、
Aは、破砕機の排出部のクリアランス(mm)を示す。〕
【0053】
篩目(mm)は、固体燃料への粗大粒子の混入をより一層抑制する観点から、下記式(3-1)に示される関係を満たすことが好ましい。
【0054】
【0055】
〔式(3-1)中、A及びAsは、上記式(3)と同義である。〕
【0056】
なお、篩上として、未分解の樹脂、実装基板由来のガラス繊維、ゴム屑の濃縮物が回収される。篩上にはセメント主要成分であるケイ素を多く含んでいることから、セメント原料として使用可能である。なお、篩上に未分解の樹脂が多く含まれている場合には、再度加熱工程に投入してもよい。
【0057】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。例えば、
図1に示されるように、破砕機の排出部から排出された破砕物を、風力選別工程前に、磁力選別により磁着物と非磁着物とに分離し、非磁着物を風力選別工程に供することができる。これにより、破砕工程で単体分離された有価金属の内、鉄等の磁着物を回収することができる。磁力選別機の方式は問わず、被選別粒子に印加される磁束密度が500ガウス以上であればよい。回収された鉄は鉄鋼電炉の原料として利用可能である。なお、含プラスチック廃棄物中に金属分が含まれていない場合、磁力選別工程は必ずしも要しない。
【実施例0058】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。但し、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0059】
1.実施例で使用した原料及び装置
(1)含プラスチック廃棄物
電化製品・家具等を解体・破砕して回収されたシュレッダーダストの内、50mm篩を通過したものを使用した。
(2)加熱装置
外熱式ロータリーキルン(内径1.8m、有効長9.0m)を使用した。なお、加熱処理物の冷却には間接式ロータリークーラー、冷却スクリューコンベヤを使用し、搬送はスクリューコンベヤを使用した。
(3)破砕機
ハンマークラッシャーを使用した。なお、ハンマークラッシャー排出部には、所定の開口径を有するスクリーンを装着した。
(4)風力選別機
ジグザグ風力選別機を使用した。
(5)篩選別機
波動式篩を使用した。
【0060】
2.風力選別機の機内風速の測定
風力選別機の機内風速は、
図3(a)に示すように、風力選別機内の水平方向における同一断面上で3点風速を測定し、平均値を機内風速とした。
【0061】
実施例1
(加熱工程)
シュレッダーダストを1000kg/hの速度で50t程度外熱式ロータリーキルンに供給し、炉内温度400℃、炉内滞留時間90分の条件にて加熱を実施した。
(破砕工程)
ロータリーキルンから搬出されたシュレッダーダストを冷却後、ハンマークラッシャーで破砕した。なお、ハンマークラッシャー排出部に設置したスクリーンの開口径は、数式(1)に基づいて10mmに設定した。
(風力選別工程)
破砕物をジグザグ風力選別機により、軽量物(細粒化された樹脂加熱物)と、重量物(破砕により細粒化されない金属)とに分離した。なお、ジグザグ風力選別機の機内風速は、数式(2)に基づいて8m/s前後となるように設定した。機内風速の実測値は、8.2m/sであった。
(分級工程)
軽量物を、波動式篩を用いて分級し、篩下(固体燃料)と、篩上(ゴム・基板・繊維強化プラスチック等の薄片や未分解の樹脂)とに分離した。篩目は、数式(3)に基づいて5.0mmに設定し、分級面の傾斜角度は19°に設定した。
(比重選別工程)
風力選別工程で回収した重量物を比重選別し、重量物(鉄及び非鉄金属の濃縮物)と、軽量物(加熱樹脂の濃縮物)とに分離した。
【0062】
実施例2
破砕工程におけるハンマークラッシャー排出部に設置したスクリーンの開口径と、篩選別工程における篩目を、表1に示す条件に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により固体燃料を得た。なお、ハンマークラッシャー排出部に設置したスクリーンの開口径は、数式(1)に基づいて30mmに設定した。また、篩目は、数式(3)に基づいて7.0mmに設定し、分級面の傾斜角度は19°に設定した。
【0063】
実施例3
破砕工程におけるハンマークラッシャー排出部に設置したスクリーンの開口径を表1に示す条件に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により固体燃料を得た。なお、ハンマークラッシャー排出部に設置したスクリーンの開口径は、数式(1)に基づいて15mmに設定した。
【0064】
実施例4
破砕工程におけるハンマークラッシャー排出部に設置したスクリーンの開口径と、風力選別工程における機内風速を、表1に示す条件に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により固体燃料を得た。なお、ハンマークラッシャー排出部に設置したスクリーンの開口径は、数式(1)に基づいて30mmに設定した。また、機内風速は、数式(2)に基づいて6m/s前後となるように設定し、機内風速の実測値は、6.4m/sであった。
【0065】
実施例5
篩選別工程における篩目を、表1に示す条件に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により固体燃料を得た。なお、篩目は、数式(3)に基づいて7.0mmに設定し、分級面の傾斜角度は19°に設定した。
【0066】
比較例1
篩選別工程を行わなかったこと以外は、実施例1と同様の操作により固体燃料を得た。
【0067】
【0068】
<固体燃料の評価>
実施例及び比較例で得られた固体燃料の回収率を算出し、また品質を確認するため総発熱量について評価した。また、搬送系・粉砕系でのトラブル要因となるゴム・基板・繊維強化プラスチックなどの薄片、未分解の樹脂の混入量を評価するため、実施例及び比較例で得られた固体燃料を、4mm篩を用いて篩選別し篩上残分率を評価した。これらの結果を表2に示す。
【0069】
1.固体燃料の回収率
固体燃料の回収質量を、下記式(i)により加熱工程で得られた加熱物の質量に対する質量百分率を算出し、固体燃料回収率として評価した。
燃料回収率(質量%)=X÷Y×100 (i)
〔式(i)中、Xは固体燃料の回収質量(kg)を示し、Yは加熱工程で得られた加熱物の質量(kg)を示す。〕
【0070】
2.総発熱量
固体燃料の総発熱量をJIS Z 7302-2に準拠して測定し、比較例1において得られた固体燃料の総発熱量を100.0として、各実施例において得られた固体燃料の総発熱量について相対値を示した。
【0071】
3.4mm篩残分率
篩選別工程において得られた篩下をJIS Z 8801適合篩にて篩い分け、下記式(ii)により篩目4mmにおける篩上質量を、試料全量に対する質量百分率を算出した。
【0072】
4mm篩残分率(質量%)= X÷Y ×100 (ii)
〔式(ii)中、Xは4mm篩上質量(kg)を示し、Yは試料(篩選別工程において得られた篩下)質量(kg)を示す。〕
【0073】
【0074】
表2に示されるように、実施例で得られた固体燃料は、4mm篩残分率が低いことから、燃料利用時のトラブル要因となる粗大粒子の混入が抑制されていることがわかる。また、実施例で得られた固体燃料は、燃料として十分な総発熱量を有することから、廃プラスチック廃棄物中の熱量を最大限活用していることがわかる。