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特開2024-116514MRIのデータベースから体動による画質劣化を定量分析するシステム
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  • 特開-MRIのデータベースから体動による画質劣化を定量分析するシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116514
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】MRIのデータベースから体動による画質劣化を定量分析するシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20240821BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240821BHJP
【FI】
A61B5/055 380
G06T7/00 612
G06T7/00 350C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022180
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】502285457
【氏名又は名称】学校法人順天堂
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】臼井 桂介
(72)【発明者】
【氏名】室 伊三男
(72)【発明者】
【氏名】後藤 政実
(72)【発明者】
【氏名】渋川 周平
(72)【発明者】
【氏名】堀 拳輔
(72)【発明者】
【氏名】京極 伸介
(72)【発明者】
【氏名】代田 浩之
【テーマコード(参考)】
4C096
5L096
【Fターム(参考)】
4C096AB12
4C096AB44
4C096AD14
4C096DC15
4C096DC35
4C096DE07
5L096BA06
5L096BA13
5L096DA02
5L096FA02
5L096GA08
5L096GA30
5L096HA11
5L096JA16
5L096KA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】既に存在するデータベース上のMRI画像の体動による画質劣化を定量分析するシステムを提供する。
【解決手段】磁気共鳴画像のデータベース中の原画像をアウトプットする手段、前記原画像を用いてシミュレーションで擬似体動有画像を作成する手段、前記原画像と前記擬似体動有画像を教師データに使用して深層学習することにより体動アーチファクト画像をデータベースから検出する手段、前記原画像と前記擬似体動有画像を教師データに使用して深層学習することにより体動補正画像を作成する手段、及び前記体動アーチファクト画像と体動補正画像を定量分析する手段を有することを特徴とする、前記データベース画像の体動による画質劣化を定量分析するシステム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴画像のデータベース中の原画像をアウトプットする手段、前記原画像を用いてシミュレーションで擬似体動有画像を作成する手段、前記原画像と前記擬似体動有画像を教師データに使用して深層学習することにより体動アーチファクト画像をデータベースから検出する手段、前記原画像と前記擬似体動有画像を教師データに使用して深層学習することにより体動補正画像を作成する手段、及び前記体動アーチファクト画像と体動補正画像を定量分析する手段を有することを特徴とする、前記データベース画像の体動による画質劣化を定量分析するシステム。
【請求項2】
前記深層学習が、畳み込みニューラルネットワークである請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記深層学習が、敵対的生成ネットワークを備える畳み込みニューラルネットワークである請求項1記載のシステム。
【請求項4】
前記原画像を用いてシミュレーションで擬似体動有画像を作成する手段が、前記原画像を少なくとも2次元平面で縦、横、斜めへの移動及び回転移動させた移動画像を作成し、k空間の縦及び横方向の擬似位相エンコードへ移動後データを再配置して、縦及び横方向への擬似体動有画像を作成する手段である、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
磁気共鳴画像のデータベース中の原画像をアウトプットする工程、前記原画像を用いてシミュレーションで擬似体動有画像を作成する工程、前記原画像と前記擬似体動有画像を教師データに使用して深層学習することにより公開データベースから検出する手段、前記原画像と前記擬似体動有画像を教師データに使用して深層学習することにより体動補正画像を作成する手段、及び前記体動アーチファクト画像と体動補正画像を定量分析する手段を有することを特徴とする、前記データベース画像の体動による画質劣化を定量分析する方法。
【請求項6】
前記深層学習が、畳み込みニューラルネットワークである請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記深層学習が、敵対的生成ネットワークを備える畳み込みニューラルネットワークである請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記原画像を用いてシミュレーションで疑似体動有画像を作成する工程が、前記原画像を少なくとも2次元平面で縦、横、斜めへの移動及び回転移動させた移動画像を作成し、k空間の縦及び横方向の疑似位相エンコードへ移動後データを再配置して、縦及び横方向への擬似体動有画像を作成する手段である、請求項5記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴画像(MRI)のデータベースから体動による劣化画像を検出し、その画質劣化を定量分析するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
MRIは、放射線を使用することなく、体内の各種臓器及び血管の状態を撮像することができるため広く利用されている。しかし、MRI取得時間は、一般に長いことから、患者の動きによって生じるアーチファクトは、MRIの臨床用途におけるMRIの画像劣化の最も多い原因である。このアーチファクトの検出及び判断は、通常、経験を積んだ放射線科医による手作業が必要になり、その手段として機械学習や深層学習を用いる方法が報告されている(非特許文献1~3及び特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2021-501015号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J Magn Reson Imaging.2022Feb;55(2):480-490.
【非特許文献2】Sci Data.2019Apr11;6(1):30.
【非特許文献3】PLoS One.2017Sep25;12(9):e0184661.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記いずれの手段でも、各医療機関等のMRIのデータベースやインターネット上で世界に公開されたMRIのデータベース上の画像の画質劣化を定量分析するものでなく、アーチファクトレベルを定量表示できるものではない。そのため、評価の対象となる画像劣化が正しいか評価できるものではない。種々のデータベースのMRIの画像には、コントロールとなるべきである体動のないMRIの画像は存在しないことから、種々のデータベース上のMRIの画像の体動による画質劣化を定量分析するシステムが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、既に存在する種々のデータベース上のMRI画像の体動による画質劣化を正確に検出し定量するシステムを開発すべく検討した結果、データベース上の体動の無いMRIの原画像を用いてシミュレーション演算処理で擬似体動有画像を作成し、前記原画像と前記擬似体動有画像を教師データに使用して深層学習することにより体動アーチファクト画像を検出し、さらに体動補正画像を合成する。ついで前記体動アーチファクト画像と体動補正画像を定量分析すれば、データベース画像の体動による画質劣化を定量分析できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の発明[1]~[8]を提供するものである。
[1]磁気共鳴画像のデータベース中の原画像をアウトプットする手段、前記原画像を用いてシミュレーションで擬似体動有画像を作成する手段、前記原画像と前記擬似体動有画像を教師データに使用して深層学習することにより体動アーチファクト画像をデータベースから検出する手段、前記原画像と前記擬似体動有画像を教師データに使用して深層学習することにより体動補正画像を作成する手段、及び前記体動アーチファクト画像と体動補正画像を定量分析する手段を有することを特徴とする、前記データベース画像の体動による画質劣化を定量分析するシステム。
[2]前記深層学習が、畳み込みニューラルネットワークである[1]記載のシステム。
[3]前記深層学習が、敵対的生成ネットワークを備える畳み込みニューラルネットワークである[1]記載のシステム。
[4]前記原画像を用いてシミュレーションで擬似体動有画像を作成する手段が、前記原画像を少なくとも2次元平面で縦、横、斜めへの移動及び回転移動させた移動画像を作成し、空間の縦及び横方向の擬似位相エンコードへ移動後データを再配置して、縦及び横方向への擬似体動有画像を作成する手段である、[1]記載のシステム。
[5]磁気共鳴画像のデータベース中の原画像をアウトプットする工程、前記原画像を用いてシミュレーションで擬似体動有画像を作成する工程、前記原画像と前記擬似体動有画像を教師データに使用して深層学習することにより体動アーチファクト画像をデータベースから検出する工程、前記原画像と前記擬似体動有画像を教師データに使用して深層学習することにより体動補正画像を作成する工程、及び前記体動アーチファクト画像を定量分析する工程を有することを特徴とする、前記データベース画像の体動による画質劣化を定量分析する方法。
[6]前記深層学習が、畳み込みニューラルネットワークである[5]記載の方法。
[7]前記深層学習が、敵対的生成ネットワークを備える畳み込みニューラルネットワークである[5]記載の方法。
[8]前記原画像を用いてシミュレーションで擬似体動有画像を作成する工程が、前記原画像を少なくとも2次元平面で縦、横、斜めへの移動及び回転移動させた移動画像を作成し、縦及び横方向の擬似位相エンコードへ移動後データを再配置して、縦及び横方向への擬似体動有画像を作成する手段である、[5]記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コントロールとなるべきである、既に存在する種々のデータベース上のMRI画像の体動による画質劣化を定量分析することができる。これにより、データベースに存在する画像ビックデータを用いた医学研究において、その正確性を高めることに寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】MRIのデータベース画像の体動による画質劣化を定量分析する方法の一例を示す図である。
図2】原画像を用いてシミュレーション演算で擬似体動有画像を作成する手段の一例を示す図である。
図3】畳み込みニューラルネットワークの構造の一例を示す図である。
図4】条件付き敵対生成ネットワークの構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一態様は、磁気共鳴画像のデータベース中の原画像をアウトプットする手段、前記原画像を用いてシミュレーションで擬似体動有画像を作成する手段、前記原画像と前記擬似体動有画像を教師データに使用して深層学習することにより体動アーチファクト画像をデータベースから検出する手段、前記原画像と前記擬似体動有画像を教師データに使用して深層学習することにより体動補正画像を作成する手段、及び前記体動アーチファクト画像を定量分析する手段を有することを特徴とする、前記データベース画像の体動による画質劣化を定量分析するシステムである。
また、本発明の別の一態様は、磁気共鳴画像のデータベース中の原画像をアウトプットする工程、前記原画像を用いてシミュレーションで擬似体動有画像を作成する工程、前記原画像と前記擬似体動有画像を教師データに使用して深層学習することにより体動アーチファクト画像をデータベースから検出する工程、前記原画像と前記擬似体動有画像を教師データに使用して深層学習することにより体動補正画像を作成する工程、及び前記体動アーチファクト画像を定量分析する工程を有することを特徴とする、前記データベース画像の体動による画質劣化を定量分析する方法である。
図1にシステムを動作させる方法の一例を示す。
【0011】
以下、本発明の各手段(及び各工程)について説明する。
まず、本発明においては、MRIのデータベース中の原画像をアウトプットする。
MRI画像のビッグデータは、種々の研究機関のデータベース、例えばAlzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative(https://adni.loni.usc.edu/)やThe cancer imaging archive(https://www.cancerimagingarchive.net/)などに保管されており、そのほとんどは医療機関、研究機関などが利用できるように公開されている。また、本発明で利用できるデータベースには、種々の医療機関、研究機関で集積されたMRI画像のデータベースが含まれる。
これらのMRI画像は、種々の医療機関が取得したものであり、種々の疾患の対照画像として、また研究材料として利用されている。しかし、これらのMRI画像の中で、体動による画質劣化が生じているものとして報告された画像でない画像に、体動による画質劣化が含まれているか否かを研究、評価した報告はされていない。この評価がなされなければ、ビッグデータは対照画像としての意義を失うことになる。そこで、本発明では、これらのビッグデータ中のMRI画像の体動による画質劣化の有無を評価し定量分析しようとするものである。
本発明では、これらのビッグデータ中のMRI画像(原画像)を、本発明の処理をしようとするPCなどにアウトプット(ダウンロード)する。
【0012】
第2の手段は、前記原画像を用いてシミュレーション演算で擬似体動有画像を作成する手段である。
ある特定のMRI画像(原画像)を用いてシミュレーション演算で擬似体動有画像を作成する手段としては、例えば原画像を少なくとも2次元平面で縦、横、斜めへの移動及び回転移動させた移動画像を作成し、k空間の縦及び横方向の擬似位相エンコードへ移動後データを再配置して、縦及び横方向への擬似体動有画像を作成する手段が挙げられる。より具体的には、図2に記載のように、原画像を、縦、横、斜め、及び回転移動させ、例えば移動量を(縦横斜め)±10ピクセルの範囲で1ピクセルずつ、回転量を±5°×0.5°にて計80種類の移動画像を作成し、縦及び横方向の擬似位相エンコードへ移動後データを再配置することにより、縦及び横方向への擬似体動有画像を作成することができる。
【0013】
また、ひとつの画像内における擬似位相エンコードに対して、同一の移動後データからの配列数の割合を変えることによって、原画像を用いてシミュレーション演算で体動アーチファクトの大きさが異なる擬似体動有画像を作成することができる。
【0014】
第3の手段は、前記原画像と前記擬似体動有画像を教師データに使用して深層学習することにより体動アーチファクト画像を検出する手段である。この深層学習は、擬似体動有画像から原画像(体動無し)の特徴量を学習することで、体動アーチファクトが存在する画像と体動アーチファクトが存在しない画像に分類することにより行われる。
具体的な深層学習には、例えば畳み込みニューラルネットワークを基本構造とする深層学習を用いることができる。このモデルは複数の畳み込み層を備え、深層の順伝播型おいてシミュレートした擬似体動有画像との間の平均二乗誤差を最小化するように訓練される。
畳み込みニューラルネットワークは大きく3つの構造体から形成され、畳み込み層、プーリング層、全結合層である。畳み込み層では画像内の特徴量を畳み込み動作(例えば3×3のフィルタサイズ)で強調し、その結果を次の層に渡す。プーリング層は、クラスタリングされた特徴量を併合する。例えばmaxプーリングでは、前層の出力の最大値を次の層の入力とする。全結合層は、全ての特徴量を一つの変数として結合する。この過程で畳み込みニューラルネットワークに含まれる重み係数が、確率的勾配降下などの技術を使用して最適化される。
深層畳み込みニューラルネットワークには、画像を分類するネットワークを備えることができる。
【0015】
第4の手段は、前記原画像と前記疑似体動有画像を教師データに使用して深層学習することにより体動補正画像を作成する手段である。この深層学習は、擬似体動有画像から原画像(体動無し)を復元するように画像の特徴量を学習することにより行われる。
具体的な深層学習には、例えば畳み込みニューラルネットワークを基本構造とする深層学習を用いることができる。このモデルは複数の畳み込み層を備え、深層の順伝播型においてシミュレートした擬似体動有画像との間の平均二乗誤差を最小化するように訓練される。
畳み込みニューラルネットワークは大きく3つの構造体から形成され、畳み込み層、プーリング層、全結合層である。畳み込み層では画像内の特徴量を畳み込み動作(例えば3×3のフィルタサイズ)で強調し、その結果を次の層に渡す。プーリング層は、クラスタリングされた特徴量を併合する。例えばmaxプーリングでは、前層の出力の最大値を次の層の入力とする。全結合層は、全ての特徴量を一つの変数として結合する。この過程で畳み込みニューラルネットワークに含まれる重み係数が、確率的勾配降下などの技術を使用して最適化される。
深層畳み込みニューラルネットワークには、2つのネットワークを競合的に作用させた敵対的生成ネットワークを備えることもできる。敵対的生成ネットワークでは、図3に示すように、生成器と識別器の役割を担う2つの深層ニューラルネットワークで構成され、擬似体動有画像と原画像(体動無し)を条件画像として、体動有画像から尤もらしい体動補正画像を合成するための学習を行う。識別器では生成器で作られた合成画像と原画像(体動無し)との比較を行い、原画像(体動無し)と一致している確率を出力する。この生成と識別の過程を帰還して繰り返すことで両者の性能を向上させる結果、合成画像の正確性が向上するため、体動有画像から動きのアーチファクトの影響を排除した体動補正画像を合成することができる。
【0016】
第5の手段は、前記第3の手段によりデータベースから検出した体動アーチファクト画像を定量分析する手段である。
第3の手段により検出した体動アーチファクト画像と第4の手段により生成した体動補正画像を対比し、減算処理すれば、差分画像が得られる。差分画像は、アーチファクト量(体動のレベル)を表しており、差分画像のアーチファクト量は体動の大きさや頻度に比例している。例えば、差分画像を原画像で正規化した正規化絶対値誤差を定量分析に用い、アーチファクト量(レベル)毎に段階表示すれば、データベースのMRI画像のクオリティチェックを実現することができる。
この減算処理は、例えば、アーチファクトを含む体動アーチファクト画像とアーチファクトが補正された体動補正画像に対して、同一位置の画素値を引き算することで、体動アーチファクト成分のみを抽出した差分画像を作成することができる。ただし、この2つの画像は同じサイズである必要がある。
差分画像の正規化絶対値誤差の定量化は、例えば、正規化絶対値誤差の大きさは患者の体動の大きさや頻度に比例した値であるため、正規化絶対値誤差値を知ることで体動アーチファクト画像内に含まれるアーチファクト成分の大きさを知ることができる。これにより、患者自身の体動の大きさをアーチファクト画像自体から定量化することができる。
差分画像の定量化は、患者の体動をレベル別に分類することができる。例えば、正規化絶対値誤差値の大きさを小さい方から3段階に分割することで、患者の体動のレベルを3段階に識別することができる。これにより、患者自身の体動の大きさのレベル別の分類を行うことができ、公開データベース内の画質を分類化することで、医学的解析に用いる画像データの質を高め、その精度を向上させることに貢献できる。
【0017】
本発明のシステム及び方法により、既に存在する種々のデータベース上のMRI画像の体動による画質劣化を検出し定量分析することができる。
【実施例0018】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0019】
実施例1
(1)Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiativeから、脳のMRI画像のビッグデータをダウンロードした。
(2)第2工程の具体例
データベースのMRI画像5,000枚を原画像として、シミュレーション演算で擬似体動有画像を50,000枚作成する。シミュレーションで作成するMRI画像の移動量及び回転量は、例えば±10ピクセル及び回転量を±5°までとし、作成した移動画像からシミュレーション演算で擬似体動有画像を作成する。
(3)第3工程の具体例
第2工程で作成した擬似体動有画像とその原画像を教師とした深層学習を行うことで、MRI画像の体動アーチファクトを検出する学習モデルを作成する。この工程において、深層学習ネットワークのハイパーパラメータは、反復的調整をすることで学習後の出力と原画像との間の差が最小になるように決定される。この際には、学習データに対するオーバーフィットを回避するために、試験及び検証データに対する評価を行うことになる。ここで作成した深層学習モデルにより、体動アーチファクトを補正した画像を作成することができる。
(4)第4工程の具体例
第2工程で作成した擬似体動有画像とその原画像を教師とした深層学習を行うことで、MRI画像の体動アーチファクトを補正する学習モデルを作成する。この工程において、深層学習ネットワークのハイパーパラメータは、反復的調整をすることで学習後の出力と原画像との間の差が最小になるように決定される。この際には、学習データに対するオーバーフィットを回避するために、試験及び検証データに対する評価を行うことになる。ここで作成した深層学習モデルにより、体動アーチファクトを補正した画像を作成することができる。
(5)第5工程の具体例
第2工程で作成した擬似体動有画像と第4工程で作成した深層学習による体動アーチファクト補正画像を用いて、この対比する2画像間の差分画像を作成し正規化絶対値誤差を求める。例えばここでの工程で50,000枚の擬似体動有画像を深層学習により体動補正画像を作成して、各画像での正規化絶対値誤差値を算出する。この正規化絶対値誤差は体動の大きさや頻度に比例したものであるため、正規化絶対値誤差値を例えば3つの分類にわけることで、体動アーチファクトを3つのレベルに分類することができる。
(6)第6工程の具体例
第1から5工程で作成した2つの深層学習モデルと正規化絶対値誤差のレベル値を利用して、対象となる公開画像データベース内のMRI画像に対して、第3工程で作成した患者の体動分類の学習モデルを用いて、体動アーチファクトの有無を分類する。ここで体動有と分類された画像は、第4工程で作成した患者の体動アーチファクト補正の学習モデルを用いて、体動アーチファクト補正画像が作成される。さらにこの体動有画像と体動アーチファクト補正画像の差分処理から得られる正規化絶対値誤差に対して、第5工程で設定した体動アーチファクトのレベル値を利用して、公開画像データベース内に生じているMRI画像の体動アーチファクトの大きさを分類することができる。
図1
図2
図3
図4