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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116517
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】照明空間、および照明方法
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20240821BHJP
   H05B 45/10 20200101ALI20240821BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240821BHJP
【FI】
F21S2/00 625
F21S2/00 434
F21S2/00 444
H05B45/10
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022185
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】翁 宇峰
(72)【発明者】
【氏名】中村 恒三
(72)【発明者】
【氏名】井上 洸一
【テーマコード(参考)】
3K244
3K273
【Fターム(参考)】
3K244AA05
3K244BA16
3K244BA48
3K244CA03
3K244DA01
3K244EA02
3K244EA12
3K244EA34
3K273PA10
3K273QA01
3K273RA02
3K273RA04
3K273TA03
3K273TA09
3K273TA21
3K273UA22
(57)【要約】
【課題】視認の異方性を有する照明空間および照明方法を提供すること。
【解決手段】本照明空間は、面照明装置と、前記面照明装置によって区画された第1空間および第2空間と、を有し、前記面照明装置は、光源から入射される光を導光して光取出面から取り出す導光部材を有し、前記光取出面から取り出された光によって前記第2空間を照明し、前記第1空間に位置する第1物体の輝度をC、前記光取出面の輝度をA、前記第2空間に位置する第2物体の輝度をD、前記導光部材における前記光取出面とは反対側の面の輝度をBとすると、(A/C)/(B/D)は1よりも大きい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
面照明装置と、
前記面照明装置によって区画された第1空間および第2空間と、を有し、
前記面照明装置は、光源から入射される光を導光して光取出面から取り出す導光部材を有し、前記光取出面から取り出された光によって前記第2空間を照明し、
前記第1空間に位置する第1物体の輝度をC、前記光取出面の輝度をA、前記第2空間に位置する第2物体の輝度をD、前記導光部材における前記光取出面とは反対側の面の輝度をBとすると、(A/C)/(B/D)は1よりも大きい、照明空間。
【請求項2】
(A/C)/(B/D)は2以上である、請求項1に記載の照明空間。
【請求項3】
A/Cは5以上である、請求項1に記載の照明空間。
【請求項4】
B/Dは5以下である、請求項1に記載の照明空間。
【請求項5】
側面視において、前記面照明装置は、極角が90±30度以内の配光で前記第2空間を照明する、請求項1に記載の照明空間。
【請求項6】
側面視において、前記面照明装置は、極角が45度未満または135度よりも大きい配光で前記第1空間を照明する、請求項1または請求項2に記載の照明空間。
【請求項7】
前記第1物体および前記第2物体の少なくとも一方の輝度に応じて、前記光源に供給する電力を可変する可変部をさらに有する、請求項1に記載の照明空間。
【請求項8】
面照明装置によって区画された第1空間および第2空間と、を有する照明空間を前期面照明装置により照明する照明方法であって、前期面照明装置が、
導光部材により、光源から入射される光を導光して光取出面から取り出し、
前記光取出面から取り出された光により前記第2空間を照明し、
前記第1空間に位置する第1物体の輝度をC、前記光取出面の輝度をA、前記第2空間に位置する第2物体の輝度をD、前記導光部材における前記光取出面とは反対側の面の輝度をBとすると、(A/C)/(B/D)は1よりも大きい、照明方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明空間、および照明方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導光板の内部を導光され、該導光板の光取出面から取り出された光により照明する面照明装置が知られている。また、該照明装置を有する照明空間が知られている。
【0003】
特許文献1には、導光板に凹凸面を設けたり、導光板に光散乱要素を備えた光拡散フィルムを配置したりして、導光板から光を取り出す照明装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-75352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された照明装置と、該照明装置により区画された第1空間および第2空間と、を有する照明空間は、第1空間から照明装置を通して第2空間を視認でき、かつ第2空間から照明装置を通して第1空間をほぼ視認できないという、視認の異方性を有していない。
【0006】
本発明は、視認の異方性を有する照明空間および照明方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る照明空間は、面照明装置と、前記面照明装置によって区画された第1空間および第2空間と、を有し、前記面照明装置は、光源から入射される光を導光して光取出面から取り出す導光部材を有し、前記光取出面から取り出された光によって前記第2空間を照明し、前記第1空間に位置する第1物体の輝度をC、前記光取出面の輝度をA、前記第2空間に位置する第2物体の輝度をD、前記導光部材における前記光取出面とは反対側の面の輝度をBとすると、(A/C)/(B/D)は1よりも大きい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、視認の異方性を有する照明空間および照明方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る照明空間の利用シーンの一例を第1図である。
図2】実施形態に係る照明空間の利用シーンの一例を第2図である。
図3】実施形態に係る面照明装置の一例を模式的に示す正面図である。
図4図3におけるIV-IV線の断面図である。
図5図3における領域Vの拡大図である。
図6図4における領域VIの拡大図である。
図7】実施形態に係る面照明装置による側面視での照明状態例を示す図である。
図8】実施形態に係る面照明装置による上面視での照明状態例を示す図である。
図9】第2空間から第1空間を視認した結果の一例を示す図である。
図10】第1空間から第2空間を視認した結果の一例を示す図である。
図11】実施例に係る第2空間から第1空間の視認性評価の様子を示す図である。
図12】実施例に係る第1空間から第2空間の視認性評価の様子を示す図である。
図13】実施例に係る照明条件と視認性評価結果の一例を示す図である。
図14】実施例に係る輝度と視認性評価結果の関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。各図面において、同一構成要素には同一符号を付与し、重複した説明を適宜省略する。
【0011】
以下に示す実施形態は、本開示の技術思想を具体化するための照明空間および照明方法を例示するものであって、本開示を以下に示す実施形態に限定するものではない。以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本開示の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張している場合がある。
【0012】
各図面において、方向表現として、X軸、Y軸およびZ軸を有する直交座標を用いる。X軸、Y軸およびZ軸は、互いに略直交する。Z軸に沿うZ方向は、実施形態に係る面照明装置が有する導光部材の主面の法線方向を示すものとする。X軸の矢印が向く方向を+X方向、+X方向とは反対方向を-X方向と表記する。Y軸の矢印が向く方向を+Y方向、+Y方向とは反対方向を-Y方向と表記する。Z軸の矢印が向く方向を+Z方向、+Z方向とは反対方向を-Z方向と表記する。本明細書において、Z方向から対象を視ることを平面視という。また+Y方向から対象を視ることを上面視という。またZ方向およびY方向のそれぞれに略直交する方向から対象を視ることを側面視という。但し、これらの方向表現は、実施形態の方向を限定するものではない。
【0013】
<照明空間100の利用シーン例>
図1~2を参照して、照明空間100の利用シーンについて説明する。図1~2は、照明空間100の利用シーンの一例を示す図である。図1~2に示すように、照明空間100は、面照明装置30と、面照明装置30によって区画された第1空間10および第2空間20と、を有する。図1~2において、天井1は、建物の内側における天井を表している。床2は、建物の内側における床を表している。
【0014】
図1~2において、第1空間10および第2空間20は、ともに建物の内側の空間である。面照明装置30は、例えばパーティションとして建物内に配置される。面照明装置30は、建物内において第1空間10と第2空間20とを区画する。図1は、第1空間10に位置する第1物体M1を、第2空間20に位置する観察者Uが視認する様子を示している。一方、図2は、第2空間20に位置する第2物体M2を、第1空間10に位置する観察者Uが視認する様子を示している。第1物体M1および第2物体M2は、図1~2に示した円柱形状のものに限らず、空間内に存在する任意の物体であってよい。物体には、人間や、建物の壁、床、天井等も含まれる。
【0015】
本実施形態では、面照明装置30は、面照明装置30が有する導光部材31の光取出面315から取り出された光によって第2空間20を照明する。図1に示すように、第1空間10に位置する第1物体M1の輝度をC、光取出面315の輝度をAとし、図2に示すように、第2空間20に位置する第2物体M2の輝度をD、対向面314の輝度をBとすると、(A/C)/(B/D)は1よりも大きい。なお、対向面314は、導光部材31における光取出面315とは反対側の面に対応する。
【0016】
図1に示すように、第2空間20に位置する観察者Uが面照明装置30を介して第1空間10を観察すると、観察者Uは、第1物体M1よりも輝度が高い光取出面315を主に視認でき、第1物体M1をほぼ視認できない。一方、図2に示すように、第1空間10に位置する観察者Uが面照明装置30を介して第2空間20を観察すると、光取出面315と比較して対向面314の輝度が低いため、観察者Uは、第2空間20に位置する第2物体M2を視認することができる。このように、照明空間100は、面照明装置30を用いることで、第1空間10から第2空間20を視認でき、第2空間20から第1空間10をほぼ視認できないという、視認の異方性を有することができる。
【0017】
例えば、眺めや見通し等をよくする観点では、第1空間10から第2空間20を視認できることが求められる場合がある。一方、セキュリティ等の観点では、第2空間20から第1空間10を視認できないようにすることが求められる場合がある。照明空間100は、このような視認の異方性を要求される場合に好適である。例えば、本実施形態では、第2空間20から第1空間10を見えなくする目隠し効果を得ることができる。
【0018】
本実施形態では、照明空間100が視認の異方性を好適に有する観点では、(A/C)/(B/D)は2以上であると、よりいっそう好ましい。また上記観点では、A/Cは5以上であると、さらに好ましい。また上記観点では、B/Dは5以下であると、特に好ましい。
【0019】
また、本実施形態では、面照明装置30への電力供給を停止すれば、面照明装置30はほぼ透明になるため、第1空間10から第2空間20を視認できるとともに、第2空間20から第1空間10を視認できる状態になる。つまり、面照明装置30は、電力供給の停止により視認の異方性をなくすことができる。なお、上記の「透明」は、可視光透過率が80%以上であることを意味する。本実施形態では、面照明装置30への電力供給のオンまたはオフの切替により、視認の異方性有無を簡単に切り替えることができる。
【0020】
また、本実施形態では、面照明装置30は簡単に移動可能であるため、面照明装置30を移動させることで、視認の異方性を有する照明空間100を、任意の位置に簡単に作り出すことができる。この結果、照明空間100の利便性を高くし、また照明空間100の利用シーンを多様化することができる。
【0021】
本明細書において、輝度とは、第1物体M1、第2物体M2、光取出面315、対向面314等の対象を仮想光源とみなした場合に、対象から発せられる光の明るさを意味する。対象の反射率や、対象が位置する空間内の明るさ等に応じて、輝度は異なるものとなる。本実施形態では、照明空間100は、対象の反射率、空間内の明るさ等を足し合わせた総合的な輝度において、(A/C)/(B/D)は1よりも大きいという条件を満足する場合に、視認の異方性を有することができる。なお、輝度A~Dのそれぞれは、輝度A~Dの間で統一されていれば、輝度における最大値、最小値、平均値等の特性値のいずれであってもよい。
【0022】
<面照明装置30の構成例>
図3~6を参照して、面照明装置30の構成について説明する。図3は、面照明装置30の一例を模式的に示す正面図である。図4は、図3におけるIV-IV線の断面図である。図5は、図3における領域Vの拡大図である。図6は、図4における領域VIの拡大図である。
【0023】
図3~4に示すように、面照明装置30は、導光部材31を有する。図3~4に示す例では、導光部材31は、平面視において略矩形の外形形状を有する板状部材である。導光部材31は、導光板311と、エアキャビティフィルム312と、を有する。
【0024】
導光板311は、平面視において略矩形の外形形状を有する板状部材である。エアキャビティフィルム312は、導光板311の主面310に貼り付けられたフィルム状の部材である。主面310は、導光板311の厚み方向に略直交する面である。また主面310は、導光板311の側面に交差する面である。
【0025】
導光板311は、可視光に対する透過率が高い材料で形成される。導光板311は、例えば、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ガラス(例えば、ソーダガラス、石英ガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス)で形成される。導光板311の屈折率は、例えば、1.40以上1.80以下である。なお屈折率は、特に断らない限り、波長550nmにおいてエリプソメーターで測定した屈折率をいう。導光板311の厚さは用途に応じて適宜設定され得る。導光板311の厚さは、例えば、0.05mm以上50mm以下である。
【0026】
光取出面315は、エアキャビティフィルム312における主面310に接触または近接する面とは反対側の面である。対向面314は、導光部材31における光取出面315とは反対側の面である。また対向面314は、導光板311における主面310とは反対側の面である。
【0027】
図3~4において、導光板311の側面に対応する光入射面313に向き合う位置には、光源32が配置されている。光源32は、光入射面313を介して導光部材31の内部に入射させる光を発する。光源32は、例えば発光ダイオード(LED:Light Eemitting Diode)である。但し、光源32は、発光ダイオード以外の光源を含んでもよい。光源32の配置位置は、導光板311の側面に向き合う位置に限らず、任意であってよい。光ファイバ等の導光体を通して光源32からの光が導光部材31の内部に入射されてもよい。光入射面313は、導光板311の側面に限らず、光取出面315の一部および対向面314の一部の少なくとも一方に設けられてもよい。
【0028】
エアキャビティフィルム312は、内部に複数のエアキャビティ331を含む。エアキャビティ331は、空気等の気体が充填された空洞部である。図3に示す例では、複数のエアキャビティ331は、平面視において千鳥格子状に配置されている。また図4に示す例では、複数のエアキャビティ331は、側面視において、主面310に沿う方向に直線状に配置されている。但し、複数のエアキャビティ331は、図3~4に例示したものに限定されず、照明空間100の用途等に応じて適宜変更できる。
【0029】
エアキャビティフィルム312は、賦形フィルム等として構成できる。この賦形フィルムは、例えば、特表2013-524288号公報に記載された方法に従って製造可能である。具体的には、ポリメタクリル酸メチルフィルムの表面をラッカー(三洋化成工業社製ファインキュアーRM-64)でコーティングし、該ラッカーを含むフィルム表面上に光学パターンをエンボス加工し、その後ラッカーを硬化させることによって目的の凹凸賦形フィルムを製造できる。凹凸賦形フィルムの総厚さは、例えば130μmである。
【0030】
図3において、ピッチPxは、導光部材31の法線方向と略直交する方向(X方向)における、隣接するエアキャビティ331の中心間距離である。ピッチPyは、導光部材31の法線方向およびピッチPxに沿う方向のそれぞれと略直交する方向(Y方向)における、隣接するエアキャビティ331の中心間距離である。
【0031】
図5に示すように、エアキャビティ331は、平面視において、略弓形の外形形状を有する。エアキャビティ331は、曲面部331aと平面部331bとを含む。曲面部331aは、平面視において、弓形形状における曲線部分に対応する。平面部331bは、平面視において、弓形形状における直線部分に対応する。平面視において、弓形形状の直線部分が延びる方向(例えば図5のX方向)におけるエアキャビティ331の長さをLとする。一方、弓形形状の直線部分が延びる方向とは直交する方向(例えば図5のY方向)におけるエアキャビティ331の長さをWとする。弓形形状の直線部分が延びる方向は、例えば水平方向である。弓形形状の直線部分が延びる方向と直交する方向は、例えば鉛直方向である。
【0032】
図6に示すように、エアキャビティ331は、側面視において、略三角形の外形形状を有する。この略三角形において、曲面部331aに対応する辺および平面部331bに対応する辺以外の辺を、辺部331cとする。導光部材31の法線方向(Z方向)におけるエアキャビティ331の長さをHとする。上記の長さWは、側面視では、導光部材31の法線方向と直交する方向におけるエアキャビティ331の長さに対応する。角度θaは、側面視において、曲面部331aに対応する辺と辺部331cとがなす角度である。角度θbは、側面視において、平面部331bに対応する辺と辺部331cとがなす角度である。
【0033】
図3~4において、光源32から発せられた光は、光入射面313を通って導光部材31の内部に入射する。図4に示す導光部材31の内部への入射光Riは、導光部材31の内部を導光される。図4に示す例では、入射光Riは、導光部材31の内部を-Y方向側に導光される。導光部材31の内部を導光される入射光Riのうちの一部は、エアキャビティフィルム312内における複数のエアキャビティ331の曲面部331a(図5~6参照)により、+Z方向側に全反射される。曲面部331aにより全反射された光は、光取出面315を通り、出射光Roとして導光部材31から取り出される。出射光Roは、面照明装置30による照明光となる。エアキャビティフィルム312は、導光部材31の内部を導光される光を導光部材31の外部に取り出す光取出部の一例である。
【0034】
導光部材31の内部を導光される入射光Riが曲面部331aにより全反射される方向は、+Z方向のみ、すなわち導光部材31の法線方向のみではなく、導光部材31の法線方向以外の方向、例えば導光部材31の法線方向に交差する方向を含む。導光部材31からの出射光Roの出射方向も、導光部材31の法線方向のみではなく、導光部材31の法線方向以外の方向を含む。
【0035】
<面照明装置30による照明状態の一例>
図7~8は、面照明装置30による照明状態の一例を示す図である。図7~8は、面照明装置30による照明状態を極角により表している。図7~8における照明状態は、照明光の照明角度および光量を主に表している。図7は、側面視における照明状態を示している。図8は上面視における照明状態を示している。
【0036】
図7~8において、略楕円形の図形で表した出射光Roは、図4に示したように、光取出面315から取り出された光を指している。略楕円形の図形で表した逆出射光Ro'は、対向面314から出射された光を指している。換言すると、出射光Roは、面照明装置30から+Z方向側に出射された光である。逆出射光Ro'は、面照明装置30から-Z方向側に出射された光である。
【0037】
90度の軸に沿って出射光Roの略楕円形を切り出した長さに該当する矢印Ro1の長さは、90度方向における出射光Roの光量に対応する。矢印Ro1の長さが長いほど、出射光Roの光量が多い。同様に、90度の軸に沿って逆出射光Ro'の略楕円形を切り出した長さに該当する矢印Ro1'の長さは、90度方向における逆出射光Ro'の光量に対応する。矢印Ro1'の長さが長いほど、逆出射光Ro'の光量が多い。図8は、図7の90度方向における出射光Roおよび逆出射光Ro'を上面視したものに対応する。
【0038】
図7に示すように、出射光Roにおける矢印Ro1の長さと、逆出射光Ro'における矢印Ro1'の長さは、ほぼ同じであるため、出射光Roの光量と逆出射光Ro'の光量はほぼ同じである。しかしながら、出射光Roによる照明角度は、逆出射光Ro'による照明角度と異なっている。出射光Roによる+Z方向側の照明角度は、90度近傍である。一方、逆出射光Ro'による-Z方向側の照明角度は、30度近傍である。従って図8に示すように、略90度方向に進む出射光Roの光量は、略90度方向に進む逆出射光Ro'の光量よりも多くなる。
【0039】
図1に示した照明空間100において、図7~8の照明状態にある面照明装置30を+Z方向側から平面視すると、第1対象物M1からの光の光量と比較して、光取出面315からの出射光Roの光量が多くなる。これにより、観察者Uは、第1対象物M1をほぼ視認できなくなる。一方、図2に示した照明空間100において、図7~8の照明状態にある面照明装置30を-Z方向側から平面視すると、対向面314からの光の光量と比較して、第2対象物M2からの光の光量が多くなる。これにより、観察者Uは、第2対象物M2を視認できる。
【0040】
鋭意検討の結果、側面視において、極角が90±30度以内の配光で面照明装置30が第2空間20を照明すると、第2空間20に位置する観察者Uは、第1空間10に位置する第1対象物M1をほぼ視認できなくなることが分かった。一方、側面視において、極角が45度未満または135度よりも大きい配光で面照明装置30が第1空間10を照明すると、第1空間10に位置する観察者Uは、第2空間20に位置する第2対象物M2を視認できることが分かった。従って、例えば、極角が90±30度以内の配光で面照明装置30が第2空間20を照明し、極角が45度未満または135度よりも大きい配光で面照明装置30が第1空間10を照明すると、照明空間100は、異方性を有することができる。
【0041】
<照明空間100における視認結果例>
図9~10を参照して、照明空間100における視認結果について説明する。図9は、第2空間20から第1空間10を視認した結果の一例を示す図である。図10は、第1空間10から第2空間20を視認した結果の一例を示す図である。
【0042】
図9は、図1に示したように、観察者Uが第2空間20から第1空間10を視た眺めに対応する撮影画像を表している。図9に示すように、観察者Uは、面照明装置30の導光部材31における光取出面315を視認でき、面照明装置30の奥側(-Z方向側)に位置する第1対象物M1を視認できない。つまり、観察者Uは、第2空間20から第1空間10を視認できない。
【0043】
図10は、図2に示したように、観察者Uが第1空間10から第2空間20を視た眺めに対応する撮影画像を表している。図10に示すように、観察者Uは、面照明装置30の導光部材31における対向面314を視認できるとともに、面照明装置30の奥側(+Z方向側)に位置する第2対象物M2を、導光部材31を透過して視認できる。つまり、観察者Uは、第1空間10から第2空間20を視認できる。
【0044】
以上のように、照明空間100は、第1空間10から第2空間20を視認でき、第2空間20から第1空間10をほぼ視認できないという、視認の異方性を有することができる。
【0045】
<実施例、比較例>
以下、照明空間100の具体的な実施例および比較例について説明する。但し、本発明は、これらに何ら限定されない。実施例および比較例では、面照明装置30における光源32の駆動電力を変化させた複数の条件ごとにおいて、第2空間20から第1空間10への視認性と、第1空間10から第2空間20への視認性と、を評価した。
【0046】
(視認性評価方法)
図11は、第2空間20から第1空間10を視る場合における視認性評価の様子の一例を示す図である。図12は、第1空間10から第2空間20を視る場合における視認性評価の様子の一例を示す図である。
【0047】
図11に示すように、第2空間20から第1空間10への視認性評価では、第2空間20に配置した2次元分光放射計200により、面照明装置30における導光部材31の光取出面315の輝度(輝度A)を計測した。2次元分光放射計200には、株式会社トプコン製の2次元分光放射計SR5000HSを用いた。また、第1空間10に配置した輝度計300により、第1空間10に位置する第1物体M1の輝度(輝度B)を計測した。輝度計300には、コニカミノルタ株式会社製の輝度計LS-160を用いた。観察距離による影響はほとんど無視できるが、本計測では、2次元分光放射計200と面照明装置30との距離は1.5m以上離して計測した。輝度計300と第1物体M1との距離は0.3m以上離して計測した。
【0048】
図12に示すように、第1空間10から第2空間20への視認性評価では、第1空間10に配置した2次元分光放射計200により、面照明装置30における導光部材31の対向面314の輝度(輝度C)を計測した。また、第2空間20に配置した輝度計300により、第2空間20に位置する第2物体M2の輝度(輝度D)を計測した。2次元分光放射計200は、輝度Aを測定した際に配置した2次元分光放射計の反対側、つまり、側面視反対側且つ平面視反対側に配置して測定した。観察距離による影響はほとんど無視できるが、本計測では、2次元分光放射計200と面照明装置30との距離は1.5m以上離して計測した。輝度計300と第2物体M2との距離は0.3m以上離して計測した。
【0049】
図11~12に示すように、照明空間100は、電源400と可変部500とを有する。電源400は、光源32に電力を供給する電源である。可変部500は、第1物体M1および第2物体M2の少なくとも一方の輝度に応じて、光源32に供給する電力を可変する。例えば可変部500は、電源400から光源32に供給される電力を可変する。図11~12に示す視認性評価では、可変部500によって光源32の駆動電力を変化させることで、面照明装置30による照明の光量を変化させた。
【0050】
実施例における面照明装置30の詳細構成を以下に示す。
・導光部材31:
可視光透過率が80%以上、ヘイズ値が5%以下であるものを用いた。
・導光板311:
ポリメチルメタクリレート(PMMA)を含んで構成された厚さ5mmの板状部材を用いた。
・エアキャビティフィルム312:
図5~6における長さLが80μm、長さWが20μm、長さHが10μm、角度θaが49度、角度θbが85度のエアキャビティ331を有するものを用いた。また、図3におけるピッチPxが120μm、ピッチPyが140μmで複数のエアキャビティ331が配置されているものを用いた。
【0051】
(視認性評価結果)
図13および図14を参照して、視認性の評価結果について説明する。図13は、実施例に係る照明条件と視認性評価結果の一例を示す図である。図14は、実施例に係る輝度と視認性評価結果の関係の一例を示す図である。
【0052】
図13~14において、例1~20および例24~28は実施例であり、例21~23は比較例である。また、例1~23は、図1に示したように、第2空間20から第1空間10を視認した場合のものである。例24~28は、図2に示したように、第1空間10から第2空間20を視認した場合のものである。
【0053】
図13に示すように、照明条件では、光源32を駆動させる「電流」または「電圧」を例1~28ごとに異ならせることによって、光源32を駆動させる「電力」を異ならせた。「光取出面輝度A」および「対向面輝度B」は、光源32の駆動電力に応じた光取出面315の輝度Aおよび対向面314の輝度Bを、上述した2次元分光放射計200により計測した結果を表している。「第1物体輝度C」および「第2物体輝度D」は、各例において、第1物体M1の輝度Cおよび第2物体M2の輝度Dを、上述した輝度計300により計測した結果を表している。「A/C」は、「光取出面輝度A」および「第1物体輝度C」の計測結果を用いた算出値である。「B/D」は、「対向面輝度B」および「第2物体輝度D」の計測結果を用いた算出値である。
【0054】
図13における「視認性」は、「A/C」および「B/D」の算出値に基づく視認性の評価結果を表している。「A/C」および「B/D」の算出値の範囲と、「視認性」を表す「◎」~「×」の記号と、の関係は以下の通りである。
◎:「A/C」および「B/D」の算出値が30以上の場合
〇:「A/C」および「B/D」が10以上30未満の場合
△:「A/C」および「B/D」が5以上10未満の場合
×:「A/C」および「B/D」が5未満の場合
【0055】
なお、図13における「◎」~「×」は、あくまで「A/C」および「B/D」の算出値の範囲を表す記号であり、視認性の良否を意味するものではない。「◎」、「〇」および「△」は、評価者が位置する空間から面照明装置30を介した反対側の空間に位置する対象物をほぼ視認できないことを意味する。「×」は、評価者が位置する空間から面照明装置30を介した反対側の空間に位置する対象物を視認できることを意味する。
【0056】
図14は、図13における「光取出面輝度A」および「対向面輝度B」の計測値を横軸とし、図13における「A/C」および「B/D」の算出値を縦軸とし、各例の結果をプロットしたマップである。図14におけるマップの右側に、照明空間100において面照明装置30を視認した眺めに対応する撮影画像と、図15における「視認性」の評価結果と、を併せて示した。
【0057】
図13~14に示したように、「視認性」の評価結果は、例1~7では「◎」、例8~15では「〇」、例16~20では「△」、例21~28では「×」となった。従って、例1~20では、第2空間20から第1空間10をほぼ視認できないことが分かった。また、例24~28では、第1空間10から第2空間20を視認できることが分かった。従って、第2空間20から第1空間10を視る場合に例1~20の条件を用い、第1空間10から第2空間20を視る場合に例24~28の条件を用いると、照明空間100は、視認の異方性を有することが分かった。
【0058】
図13~14より、(A/C)/(B/D)が1よりも大きいと、照明空間100は、視認の異方性を有することが分かった。また、照明空間100が視認の異方性を好適に有する観点では、(A/C)/(B/D)は2以上であると、よりいっそう好ましいことが分かった。また上記観点では、A/Cは5以上であると、さらに好ましいことが分かった。また上記観点では、B/Dは5以下であると、特に好ましいことが分かった。
【0059】
<照明空間100の作用効果>
以上説明したように、本実施形態では、視認の異方性を有する照明空間100および照明空間100を用いた照明方法を提供することができる。なお、照明空間100は、第2空間20から第1空間10をほぼ視認できず、第1空間10から第2空間20を視認できるものに限らず、第1空間10から第2空間20をほぼ視認できず、第2空間20から第1空間10を視認できるものであってもよい。
【0060】
また、本実施形態では、照明空間100は、図11~12に示したように、第1物体M1および第2物体M2の少なくとも一方の輝度に応じて、光源32に供給する電力を可変する可変部500を有してもよい。可変部500により光源32に供給する電力を可変することで、面照明装置30から取り出される光の光量を変化させることができる。これにより、第1物体M1および第2物体M2の少なくとも一方の輝度が変化する場合にも、該輝度に応じて面照明装置30から取り出される光の光量を変化させることで、照明空間100に視認の異方性を好適に持たせることができる。
【0061】
例えば第1空間10内全体が明るいこと等により第1物体M1の輝度が高いと、上述したA/Cが5以上であると条件から外れることで、第1空間10に位置する第1物体M1を第2空間20から視認できてしまう場合がある。このような場合に、光源32への供給電力を可変部500により大きくし、面照明装置30から取り出される光の光量を多くすることで、第1空間10に位置する第1物体M1を第2空間20から視認できない状態にすることができる。
【0062】
図11~12に示した可変部500には、例えば、回転動作に応じて電力を可変にするロータリボリューム、またはスライド動作に応じて電力を可変にするスライドボリュームを含む可変抵抗器を使用できる。可変部500による可変動作は、操作者の操作により行われてもよいし、モータ等の駆動部を用いて電動で行われてもよい。
【0063】
実施形態の変形例として、導光部材31は、エアキャビティフィルム312を有することに代えて、導光板311の表面に凹凸形状を有してもよい。導光部材31は、導光板311の表面に設けられた凹凸形状により、導光板311の内部を導光される光を外部に取り出す機能を実現することができる。
【0064】
また、導光部材31は、他の機能層を有していてもよい。例えば、導光部材31は、導光板311とエアキャビティフィルム312との間に屈折率変化層を有してもよい。この屈折率変化層は、光源32から遠ざかるにつれて輝度が減衰することを低減するためのものであり、屈折率の異なる複数の領域を有する。例えば光源32に近づくほど低屈折率領域が多く光源32から遠ざかるほど高屈折領域が多い層である。また、導光部材31は、エアキャビティフィルム312の外側(導光板311側が位置する側とは反対側)にハードコート層等の表面処理層や低屈折率層を有してもよい。
【0065】
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形および置換を加えることができる。
【0066】
実施形態に係る照明空間は、視認の異方性を有する。実施形態に係る照明装置は、新しい用途を提供することができる。
【0067】
本発明の態様は、例えば以下の通りである。
<1> 面照明装置と、前記面照明装置によって区画された第1空間および第2空間と、を有し、前記面照明装置は、光源から入射される光を導光して光取出面から取り出す導光部材を有し、前記光取出面から取り出された光によって前記第2空間を照明し、前記第1空間に位置する第1物体の輝度をC、前記光取出面の輝度をA、前記第2空間に位置する第2物体の輝度をD、前記導光部材における前記光取出面とは反対側の面の輝度をBとすると、(A/C)/(B/D)は1よりも大きい、照明空間である。
<2> (A/C)/(B/D)は2以上である、前記<1>に記載の照明空間である。
<3> A/Cは5以上である、前記<1>または前記<2>に記載の照明空間である。
<4> B/Dは5以下である、前記<1>から前記<3>のいずれか1つに記載の照明空間である。
<5> 側面視において、前記面照明装置は、極角が90±30度以内の配光で前記第2空間を照明する、前記<1>から前記<4>のいずれか1つに記載の照明空間である。
<6> 側面視において、前記面照明装置は、極角が45度未満または135度よりも大きい配光で前記第1空間を照明する、前記<1>から前記<5>のいずれか1つに記載の照明空間である。
<7> 前記第1物体および前記第2物体の少なくとも一方の輝度に応じて、前記光源に供給する電力を可変する可変部をさらに有する、前記<1>から前記<6>のいずれか1つに記載の照明空間である。
<8> 面照明装置によって区画された第1空間および第2空間と、を有する照明空間を前期面照明装置により照明する照明方法であって、前期面照明装置が、導光部材により、光源から入射される光を導光して光取出面から取り出し、前記光取出面から取り出された光により前記第2空間を照明し、前記第1空間に位置する第1物体の輝度をC、前記光取出面の輝度をA、前記第2空間に位置する第2物体の輝度をD、前記導光部材における前記光取出面とは反対側の面の輝度をBとすると、(A/C)/(B/D)は1よりも大きい、照明方法である。
【符号の説明】
【0068】
1 天井
2 床
10 第1空間
20 第2空間
30 面照明装置
31 導光部材
310 主面
311 導光板
312 エアキャビティフィルム
313 光入射面
314 対向面
315 光取出面
331 エアキャビティ
331a 曲面部
331b 平面部
331c 辺部
32 光源
100 照明空間
200 2次元分光放射計
300 輝度計
400 電源
500 可変部
A~D 輝度
L、W、H 長さ
M1 第1物体
M2 第2物体
Px、Py ピッチ
Ri 入射光
Ro 出射光
Ro' 逆出射光
Ro1、Ro1' 矢印
U 使用者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14