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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116519
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】抜針検出システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20240821BHJP
   A61B 5/053 20210101ALI20240821BHJP
【FI】
A61M1/36 145
A61B5/053
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022190
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】509352897
【氏名又は名称】ジーニアルライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】下北 良
(72)【発明者】
【氏名】藤田 達之
(72)【発明者】
【氏名】澤田 貴
(72)【発明者】
【氏名】山本 佳厚
【テーマコード(参考)】
4C077
4C127
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077DD22
4C077EE01
4C077HH04
4C077HH20
4C077HH21
4C077KK17
4C127AA06
4C127BB05
(57)【要約】
【課題】配線によるインピーダンス測定への影響を低減して、抜針を精度良く検出する。
【解決手段】動脈側穿刺針14aに接続された動脈側チューブ14bに取り付けられる動脈側電極2と、静脈側穿刺針15aに接続された静脈側チューブ15bに取り付けられる静脈側電極3と、動脈側電極2又は静脈側電極3の一方にケーブルK1を介して高周波電圧を印加する電圧印加部4と、動脈側電極2又は静脈側電極3の他方の電圧信号を検出する電圧検出部5と、電圧検出部5の電圧信号に基づいて動脈側穿刺針14a又は静脈側穿刺針15aの抜脱を検出する抜脱検出部6とを備え、電圧検出部5は、動脈側電極2又は静脈側電極3の他方に芯線K2aが接続され、外部導体K2bが接地された同軸ケーブルK2と、同軸ケーブルK2の芯線K2aが接続され、電圧信号を出力するトランスインピーダンスアンプ51とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液透析装置の動脈側穿刺針又は静脈側穿刺針が患者から抜脱したことを検出する抜針検出システムであって、
前記動脈側穿刺針に接続された動脈側チューブに取り付けられる動脈側電極と、
前記静脈側穿刺針に接続された静脈側チューブに取り付けられる静脈側電極と、
前記動脈側電極又は前記静脈側電極の一方にケーブルを介して高周波電圧を印加する電圧印加部と、
前記動脈側電極又は前記静脈側電極の他方の電圧信号を検出する電圧検出部と、
前記電圧検出部の電圧信号に基づいて前記動脈側穿刺針又は前記静脈側穿刺針の抜脱を検出する抜脱検出部とを備え、
前記電圧検出部は、
前記動脈側電極又は前記静脈側電極の他方に芯線が接続され、外部導体が接地された同軸ケーブルと、
前記同軸ケーブルの芯線が接続され、前記電圧信号を出力するトランスインピーダンスアンプとを有する、抜針検出システム。
【請求項2】
前記電圧検出部の電圧信号から所定の周波数成分を抽出する周波数成分抽出部をさらに備え、
前記抜脱検出部は、前記周波数成分抽出部により得られた抽出信号に基づいて、前記動脈側穿刺針又は前記静脈側穿刺針の抜脱を検出する、請求項1に記載の抜針検出システム。
【請求項3】
前記血液透析装置による透析開始から所定時間経過するまでに前記周波数成分抽出部により抽出された抽出信号を用いて基準値を設定する基準値設定部をさらに備え、
前記抜脱検出部は、前記所定時間経過後において、前記周波数成分抽出部により得られた抽出信号と基準値とを比較することにより、前記動脈側穿刺針又は前記静脈側穿刺針の抜脱を検出する、請求項2に記載の抜針検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抜針検出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、血液透析装置において動脈側穿刺針又は静脈側穿刺針が患者から抜脱したことを検出するシステムとしては、非特許文献1に示すものが考えられている。
【0003】
この抜針検知システムは、抜針検知電極、電気抵抗、ファンクションジェネレータ、オシロスコープで構成されており、電気抵抗に流れる電流による電圧降下をオシロスコープで記録することにより、電極間に流れる電流を検出して、抜針を検出するものである。
【0004】
しかしながら、実際の測定環境では、抜針検知電極とオシロスコープ等の検出部との距離を離す必要があり、正確なインピーダンス測定が困難である。具体的には図4に示すように、測定対象のインピーダンスZを検出抵抗Rsの電位差により測定する場合、測定対象に接続される配線間の容量性リアクタンスXc1の影響により、測定対象のインピーダンスを正確に測定することができない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】中谷直史、他13名、「静電結合を用いた抜針検知システムに関する検討」第28回バイオメディカル・フィジ・システム学会年次大会講演論文集(2015年11月21日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、配線によるインピーダンス測定への影響を低減して、抜針を精度良く検出することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係る抜針検出システムは、血液透析装置の動脈側穿刺針又は静脈側穿刺針が患者から抜脱したことを検出する抜針検出システムであって、前記動脈側穿刺針に接続された動脈側チューブに取り付けられる動脈側電極と、前記静脈側穿刺針に接続された静脈側チューブに取り付けられる静脈側電極と、前記動脈側電極又は前記静脈側電極の一方にケーブルを介して高周波電圧を印加する電圧印加部と、前記動脈側電極又は前記静脈側電極の他方の電圧信号を検出する電圧検出部と、前記電圧検出部の電圧信号に基づいて前記動脈側穿刺針又は前記静脈側穿刺針の抜脱を検出する抜脱検出部とを備え、前記電圧検出部は、前記動脈側電極又は前記静脈側電極の他方に芯線が接続され、外部導体が接地された同軸ケーブルと、前記同軸ケーブルの芯線が接続され、前記電圧信号を出力するトランスインピーダンスアンプとを有することを特徴とする。
【0008】
この抜針検知システムによれば、電圧検出部に同軸ケーブルを用いているので、電極と電圧印加部とを接続するケーブルとの間に生じる容量性リアクタンスの影響を低減することができる。また、同軸ケーブルの外部導体を接地するとともに芯線をトランスインピーダンスアンプに接続しているので、芯線と外部導体との寄生容量の電位差をゼロにすることができ、寄生容量の影響を低減することができる。したがって、各電極と電圧印加部及び電圧検出部とを接続する配線によるインピーダンス測定への影響を低減することができる。その結果、抜針を精度良く検出することができる。また、配線の取り回しによる測定値の変動が低減され、ロバスト性を向上することができる。さらに、各穿刺針と電圧印加部及び電圧検出部との距離を離すことが可能となり、血液透析装置等への組み込みが容易となる。
【0009】
また、本発明の抜針検知システムは、前記電圧検出部の電圧信号から所定の周波数成分を抽出する周波数成分抽出部をさらに備え、前記抜脱検出部は、前記周波数成分抽出部により得られた抽出信号に基づいて、前記動脈側穿刺針又は前記静脈側穿刺針の抜脱を検出することが望ましい。
この構成であれば、電圧検出部により得られた検出信号から所定の周波数成分を抽出し、その抽出信号に基づいて、動脈側穿刺針又は静脈側穿刺針の抜脱を検出するので、検出信号の重畳するノイズを除去して、動脈側穿刺針又は静脈側穿刺針の抜脱を精度良く検出することができる。その他、血液透析装置の血液ポンプの振動により生じるノイズの影響、又は、人がチューブに触れることにより生じるノイズの影響を低減することもできる。
【0010】
本発明に係る抜針検出システムは、各種透析用のチューブに適用可能であり、動脈側電極及び静脈側電極の取り付け自由度が高いシステムである反面、透析用のチューブの種類及び各電極の取付位置によって測定対象のインピーダンスZが変化するため、電圧検出部により得られる検出信号の信号強度は一定とはならない。
この問題を好適に解決するためには、本発明に係る抜針検出システムは、前記血液透析装置による透析開始から所定時間経過するまでに前記周波数成分抽出部により抽出された抽出信号を用いて基準値を設定する基準値設定部をさらに備え、前記抜脱検出部は、前記所定時間経過後において、前記周波数成分抽出部により得られた抽出信号と基準値とを比較することにより、前記動脈側電極又は前記静脈側電極の抜脱を検出することが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、配線によるインピーダンス測定への影響を低減して、抜針を精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る抜針検出システムの構成を模式的に示す図である。
図2】同実施形態の検出回路の構成を示す模式図である。
図3】同実施形態における抜針検出方法のフローチャートである。
図4】従来の検出回路の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る抜針検出システムの一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0014】
本実施形態の抜針検出システム100は、血液透析装置の動脈側穿刺針又は静脈側穿刺針が患者から抜脱したことを検出するものである。
【0015】
ここで、血液透析装置10は、血液透析を行う透析器(ダイアライザ)11と、当該透析器11に接続されるとともに血液を流通させる血液回路12と、透析器11に接続されて透析液を流通させる透析液回路13とを備えている。血液回路12は、動脈側流路14と、静脈側流路15とを有している。動脈側流路14は、動脈側穿刺針14aと、当該動脈側穿刺針14aに接続されるとともに透析器11に接続される動脈側チューブ14bと、当該動脈側チューブ14bに設けられた血液ポンプ14cとを有している。また、静脈側流路15は、静脈側穿刺針15aと、当該静脈側穿刺針15aに接続されるとともに透析器11に接続される静脈側チューブ15bと、血液から空気を排除するドリップチャンバ15cとを有している。
【0016】
具体的に抜針検出システム100は、図1に示すように、動脈側チューブ14bに着脱可能に取り付けられる動脈側電極2と、静脈側チューブ15bに着脱可能に取り付けられる静脈側電極3と、動脈側電極2にケーブルを介して高周波電圧を印加する電圧印加部4と、静脈側電極3の電圧信号を検出する電圧検出部5と、電圧検出部5の電圧信号に基づいて動脈側穿刺針14a又は静脈側穿刺針15aの抜脱を検出する制御演算装置6とを備えている。
【0017】
本実施形態では、動脈側電極2は、動脈側アタッチメント部7により動脈側チューブ14bに着脱可能に取り付けられる。具体的に動脈側電極2は、動脈側チューブ14bにおいて血液ポンプ14cよりも動脈側穿刺針14a側に着脱可能に取り付けられる。なお、動脈側アタッチメント部7は、例えば一対の挟持片を用いたクリップ構造を用いて構成される。
【0018】
また、静脈側電極3は、静脈側アタッチメント部8により静脈側チューブ15bに着脱可能に取り付けられる。具体的に静脈側電極3は、静脈側チューブ15bにおいてドリップチャンバ15cよりも静脈側穿刺針15a側に着脱可能に取り付けられる。なお、静脈側アタッチメント部8は、例えば一対の挟持片を用いたクリップ構造を用いて構成される。
【0019】
また、動脈側電極2は、動脈側チューブ14bの外形形状に合わせて変形可能に構成されている。具体的に動脈側電極2は、例えば薄板状をなすもの(例えば銅箔)であり、アタッチメント部7により動脈側チューブ14bの外側周面に押し付けられることにより、動脈側チューブ14bの外形形状に合わせて変形する。
【0020】
また、静脈側電極3は、静脈側チューブ15bの外形形状に合わせて変形可能に構成されている。具体的に静脈側電極3は、例えば薄板状をなすもの(例えば銅箔)であり、アタッチメント部8により静脈側チューブ15bの外側周面に押し付けられることにより、静脈側チューブ15bの外形形状に合わせて変形する。
【0021】
電圧印加部4は、動脈側電極2及び静脈側電極3の間に高周波電圧を印加するものであり、例えばファンクションジェネレータを用いて構成することができる。また、電圧印加部4と動脈側電極2とはケーブルK1により接続されている。本実施形態の電圧印加部4は、周波数10kHzであり、電圧10Vp-pの高周波電圧を印加するように構成されている。なお、高周波電圧はこれに限られず、例えば、周波数5~100kHzであり、電圧5~15Vp-pの高周波電圧であれば良い。
【0022】
電圧検出部5は、高周波電圧が印加された動脈側電極2と静脈側電極3との間に流れる電流を電圧に変換するものである。
【0023】
具体的に電圧検出部5は、図2に示すように、静脈側電極3に芯線K2aが接続され、外部導体K2bが接地された同軸ケーブルK2と、同軸ケーブルK2の芯線K2aが接続され、電圧信号を出力するトランスインピーダンスアンプ(TIA)51とを有している。
【0024】
トランスインピーダンスアンプ51の基本構成は、図2に示すように、差動増幅器(オペアンプ)51aと、当該差動増幅器51aの反転入力端子と出力端子との間に接続された帰還抵抗51bとを有している。また、差動増幅器51aの非反転入力端子には、参照電位として接地電位が与えられる。このトランスインピーダンスアンプ51において、同軸ケーブルK2の芯線K2aが、差動増幅器51aの反転入力端子及び帰還抵抗51bに電気的に接続されている。なお、帰還抵抗51bの抵抗値は、例えば100kΩであるが、これ以外であっても良い。
【0025】
制御演算装置6は、CPU、内部メモリ、入出力インターフェイス、AD変換器等を有するコンピュータにより構成され、内部メモリに格納された検査用プログラム基づいて、CPU及び周辺機器が協働することにより、図1に示すように、周波数成分抽出部61、抜脱検出部62、基準値設定部63等としての機能を発揮する。その他、制御演算装置6は、抜針検出システム100全体の制御を行うものでもある。この制御演算装置6の機能は、物理的に1つのコンピュータにより構成されても良いし、物理的に分離した複数のコンピュータにより構成されても良い。
【0026】
周波数成分抽出部61は、電圧検出部5により得られた電圧信号から所定の周波数、すなわち電圧印加部4の発振周波数成分を抽出するものであり、例えばロックインアンプ又はバンドパスフィルタを用いて構成することができる。本実施形態の周波数成分抽出部61は、電圧印加部4により印加される高周波電圧と同じ周波数の成分を抽出するものであり、具体的には、電圧信号から50kHzの周波数成分を抽出する。
【0027】
抜脱検出部62は、周波数成分抽出部61により得られた抽出信号に基づいて、動脈側穿刺針14a又は静脈側穿刺針15aの抜脱を検出するものである。具体的に抜脱検出部62は、周波数成分抽出部61により得られた抽出信号が示す信号強度と、予め定められた基準値とを比較することにより、動脈側穿刺針14a又は静脈側穿刺針15aの抜脱を検出する。なお、本実施形態の基準値は、基準値設定部63により設定されたものである。
【0028】
ここで、抜脱検出部62による抜脱の検出方法としては、例えば、(1)基準値を信号強度が基準値を下回った場合、(2)基準値の所定割合(例えば80%)を信号強度が下回った場合、又は、(3)前記(1)又は(2)において、信号強度が所定回数又は所定時間連続して下回った場合等が考えられる。
【0029】
基準値設定部63は、血液透析装置10による透析開始から所定時間経過するまでに周波数成分抽出部61により抽出された抽出信号を用いて基準値を設定するものである。本実施形態の基準値設定部63は、透析開始直後に基準値を設定する。なお、基準値設定部63により基準値が設定されるまでは、抜脱検出部62による抜針検知は行われない。そして、抜脱検出部62は、所定時間経過後(基準値が設定された後)において、周波数成分抽出部61により得られた抽出信号と基準値とを比較することにより、動脈側穿刺針14a又は静脈側穿刺針15aの抜脱を検出する。
【0030】
<抜針検出方法>
次に、本実施形態の抜針検出システム100を用いた抜針検出方法について、図3を参照して説明する。
【0031】
(a)電極2、3の取り付け
まず、患者に動脈側穿刺針14a及び静脈側穿刺針15aを穿刺し、血液透析の準備を完了する(ステップS1)。この状態で、アタッチメント部7、8により動脈側チューブ14bに動脈側電極2を取り付け、アタッチメント部7、8により静脈側チューブ15bに静脈側電極3を取り付ける(ステップS2)。
【0032】
(b)キャリブレーション(基準値の設定)
各チューブ14b、15bに各電極2、3が取り付けられた後に、血液透析装置10による透析開始(ステップS3)と同時に、キャリブレーション動作を行う(ステップS4)。具体的には、電圧印加部4により動脈側電極2及び前記静脈側電極3に高周波電圧を印加して、電圧検出部5により静脈側電極3に流れる電流を電圧信号に変換して検出する。また、周波数成分抽出部61が電圧検出部5により得られた電圧信号から所定の周波数成分を抽出する。そして、基準値設定部63が、周波数成分抽出部61により抽出された抽出信号を用いて基準値を設定する。
【0033】
(c)抜針の検出
上記(b)のキャリブレーションが終了すると同時に、抜脱検出部62は、周波数成分抽出部61により抽出された抽出信号と、基準値設定部63により設定された基準値とを比較して、動脈側穿刺針14a又は静脈側穿刺針15aの抜脱を検出する(ステップS5)。なお、この抜針の検出は、血液透析装置10による血液透析が終了するまで行われる(ステップS6、S7)。上記(b)及び(c)において、電圧印加部4は高周波電圧を両電極2、3に印加し続け、電圧検出部5による電圧信号の検出及び周波数成分抽出部61による周波数成分の抽出は常時行われている。
【0034】
<本実施形態の効果>
本実施形態の抜針検出システム100によれば、電圧検出部5に同軸ケーブルK2を用いているので、芯線K2aとケーブルK1との間に生じる容量性リアクタンスXc1の影響を低減することができる。なお、同軸ケーブルK2の外部導体K2bとケーブルK1との間に生じる容量性リアクタンスXc1bは、電圧印加部4と並列接続となり低インピーダンスでの駆動が可能であるため、測定に影響を与えない。また、同軸ケーブルK2の外部導体K2bを接地するとともに芯線K2aをトランスインピーダンスアンプ51に接続しているので、芯線K2aと外部導体K2bとの寄生容量Xc2の電位差をゼロにすることができ、寄生容量Xc2の影響を低減することができる。したがって、各電極2、3と電圧印加部4及び電圧検出部5とを接続する配線K1、K2によるインピーダンス測定への影響を低減することができる。その結果、抜針を精度良く検出することができる。また、配線K1、K2の取り回しによる測定値の変動が低減され、ロバスト性を向上することができる。さらに、各穿刺針14a、15aと電圧印加部4及び電圧検出部5との距離を離すことが可能となり、血液透析装置10等への組み込みが容易となる。
【0035】
また、本実施形態のように動脈側電極2及び静脈側電極3を着脱可能にするアタッチメント方式では、チューブの肉厚分だけ血液と電極と間の距離が空いてしまうため、容量性リアクタンスを小さくすることができず、検出信号が弱くなってしまう。ここで、本実施形態では、電圧検出部5により得られた電圧信号から所定の周波数成分を抽出し、その抽出信号に基づいて、動脈側穿刺針14a又は静脈側穿刺針15aの抜脱を検出するので、検出信号の重畳するノイズを除去して、動脈側穿刺針14a又は静脈側穿刺針15aの抜脱を精度良く検出することができる。その他、血液ポンプ14cの振動により生じるノイズ、又は人がチューブ14b、15bに触れることにより生じるノイズの影響を低減することもできる。
【0036】
さらに、動脈側穿刺針14a又は静脈側穿刺針15aの抜脱を検出するための動脈側電極2及び静脈側電極3を、動脈側チューブ14b及び静脈側チューブ15bに対して着脱可能にしているので、血液透析装置10に用いられるディスポーザブル品である血液回路12(動脈側穿刺針14a、動脈側チューブ14b、静脈側穿刺針15a及び静脈側チューブ15bを含む。)に検出用の電極を組み込んだ専用品ではなく、検出用の電極が組み込まれていない汎用品を用いることができる。その結果、抜針を簡便に検出するとともに、抜針を検出するためのランニングコストを低減することができる。
【0037】
<本発明の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0038】
また、前記実施形態の例えばキャリブレーションにおいて、電圧検出部5により得られる電圧信号、又は、周波数成分抽出部61により得られる抽出信号の信号強度が所定範囲に含まれていない場合には、各電極2、3の取り付け位置が不適切、取り付け方が間違っているなどの取り付け不良を、音や光等により報知するように構成しても良い。
【0039】
さらに、前記実施形態の基準値は基準値設定部により設定されたものであったが、その他、ユーザが入力して設定できるように構成しても良い。
【0040】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0041】
100・・・抜針検出システム
10・・・血液透析装置
14a・・・動脈側穿刺針
14b・・・動脈側チューブ
15a・・・静脈側穿刺針
15b・・・静脈側チューブ
2・・・動脈側電極
3・・・静脈側電極
4・・・電圧印加部
5・・・電圧検出部
61・・・周波数成分抽出部
62・・・抜脱検出部
63・・・基準値設定部
図1
図2
図3
図4