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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116527
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】携帯用加工機
(51)【国際特許分類】
   B24B 23/03 20060101AFI20240821BHJP
   F04D 29/62 20060101ALI20240821BHJP
   F04D 29/66 20060101ALI20240821BHJP
   B24B 55/10 20060101ALI20240821BHJP
   B25F 5/00 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
B24B23/03
F04D29/62 F
F04D29/66 M
B24B55/10
B25F5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022201
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒田 豪
【テーマコード(参考)】
3C047
3C064
3C158
3H130
【Fターム(参考)】
3C047FF07
3C047JJ16
3C064AA08
3C064AB02
3C064AC03
3C064BA01
3C064BA08
3C064BA11
3C064BA33
3C064BA34
3C064BB42
3C064BB48
3C064BB82
3C064CA04
3C064CA06
3C064CA30
3C064CB13
3C064CB14
3C064CB17
3C064CB32
3C064CB37
3C064CB39
3C064CB54
3C064CB63
3C064CB72
3C064CB82
3C158AA04
3C158AA11
3C158AA16
3C158AC03
3C158AC05
3C158CB06
3H130AA13
3H130AB06
3H130AB26
3H130AB47
3H130AB62
3H130AC08
3H130BA13C
3H130BA73C
3H130CA05
3H130CB01
3H130CB09
3H130DA02Z
3H130DD01Z
3H130DJ08Z
3H130EA06C
3H130EA07C
3H130EB01C
3H130ED02C
(57)【要約】
【課題】 偏心運動を伴う携帯用加工機において、騒音および/または粉塵の蓄積を抑制する。
【解決手段】 携帯用加工機は、モータと、軸線方向に延在し、モータの回転駆動力によって回転可能な出力シャフトと、出力シャフトの回転に伴って偏心円運動するように構成された工具アクセサリと、出力シャフトを周方向に取り囲むように出力シャフトに対して固定された集塵ファンと、モータの回転駆動力によって回転するように構成されたモータ冷却ファンと、集塵ファンおよびモータ冷却ファンのうちの少なくとも一方のファンに取り付けられるバランサと、を備える。少なくとも一方のファンの周方向におけるバランサが取り付けられる位置であって、少なくとも一方のファンのうちの、軸線方向におけるバランサと反対側の縁部と、バランサと、の間の位置に、少なくとも一方のファンに向けて軸線方向に流れる空気を径方向外側に排出するように流路が形成される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯用加工機であって、
モータと、
軸線方向に延在し、前記モータの回転駆動力によって回転可能な出力シャフトと、
前記出力シャフトの回転に伴って偏心円運動するように構成された工具アクセサリと、
前記出力シャフトを周方向に取り囲むように前記出力シャフトに対して固定された集塵ファンと、
前記モータの前記回転駆動力によって回転するように構成されたモータ冷却ファンと、
前記集塵ファンおよび前記モータ冷却ファンのうちの少なくとも一方のファンに取り付けられるバランサと
を備え、
前記少なくとも一方のファンの周方向における前記バランサが取り付けられる位置であって、前記少なくとも一方のファンのうちの、前記軸線方向における前記バランサと反対側の縁部と、前記バランサと、の間の位置に、前記少なくとも一方のファンに向けて前記軸線方向に流れる空気を径方向外側に排出するように流路が形成された
携帯用加工機。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯用加工機であって、
前記少なくとも一方のファンは、主板と、前記主板の一方の面上を少なくとも部分的に略放射状に延在する複数の羽根と、を備え、
前記一方の面は、前記主板に対して前記バランサが位置する側の面であり、
前記流路は、前記主板の前記一方の面と、前記バランサと、の間に形成された
携帯用加工機。
【請求項3】
請求項2に記載の携帯用加工機であって、
前記主板および前記バランサの一方は、他方に向けて延在して前記他方に当接する凸部を備え、
前記流路として機能する隙間が前記凸部によって前記主板と前記バランサとの間に形成された
携帯用加工機。
【請求項4】
請求項3に記載の携帯用加工機であって、
前記凸部は、前記流路での前記空気の流れを径方向外側に方向付ける整流部として機能する形状を有する
携帯用加工機。
【請求項5】
請求項4に記載の携帯用加工機であって、
前記複数の羽根の各々は、径方向に対して交差するように、少なくとも部分的に略放射状に延在し、
前記凸部は、前記複数の羽根と同じ方向に前記径方向に対して交差するように配置された
携帯用加工機。
【請求項6】
請求項3ないし請求項5のいずれか一項に記載の携帯用加工機であって、
前記バランサが前記凸部を備える
携帯用加工機。
【請求項7】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の携帯用加工機であって、
前記集塵ファンおよび前記モータ冷却ファンは、第1の面と、前記第1の面と反対側の第2の面と、を有する主板と、前記第1の面上を少なくとも部分的に放射状に延在する複数の第1の羽根と、前記第2の面上を少なくとも部分的に放射状に延在する複数の第2の羽根と、を備える一体化された単一のファンの形態である
携帯用加工機。
【請求項8】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の携帯用加工機であって、
前記バランサは金属製であり、
前記少なくとも一方のファンは、前記バランサよりも比重が小さい
携帯用加工機。
【請求項9】
請求項6に記載の携帯用加工機であって、
前記少なくとも一方のファンは、前記バランサに向けて突出するネジボスを備え、
前記バランサは、前記ネジボスに対応する位置に形成された貫通孔を備え、
前記凸部は、前記貫通孔の周囲において前記少なくとも一方のファンに向けて突出し、前記ネジボスの外周が嵌まり込む形状および大きさを有し、
前記少なくとも一方のファンと前記バランサとは、前記貫通孔および前記ネジボスに挿入されるネジ部材によって互いに固定される
携帯用加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯用加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯用加工機として、オービタルサンダが従来から知られている。オービタルサンダは、出力シャフト(例えば、モータシャフト)の一端に連結されたパッドを偏心円運動(オービタル運動)させる。パッドにはサンディングペーパーが装着される。サンディングペーパーを被加工物に押しつけることによって、サンディング作業を行うことができる
【0003】
このようなオービタルサンダでは、パッドの偏心円運動に伴って振動が発生する。下記の特許文献1は、そのような振動の発生を低減するために、出力シャフトの周囲に固定されたファン(集塵ファンとモータ冷却ファンとが一体化されたファン)の周方向の一部分にバランサを取り付けて、静アンバランスや偶アンバランスを解消する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第9545712号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のサンダは、改良の余地を残している。例えば、ファンの周方向の羽根が配置された領域では、出力シャフトに沿って流れる空気は、ファンの主板に当たって、羽根によって径方向外側に導かれる。径方向外側に導かれた空気は、集塵ファンの場合には、ハウジング内の流路に入って流通し、集塵バッグに導かれ、モータ冷却ファンの場合には、ハウジングに形成された排気口に導かれる。一方、ファンの周方向のバランサが配置された領域では、出力シャフトに沿って流れる空気は、バランサが障壁となることに起因して、径方向外側に流れることができない。このことは、ファンの回転位置に応じて、ハウジング内の流路または排気口への空気の導入が円滑に行われる期間と、阻害される期間と、が存在することを意味する。このような現象は空気の圧力の急激な変動を招き、その変動に起因する騒音が問題となる恐れがある。あるいは、ファンの周方向のバランサが配置された領域では、空気が径方向外側に流れることができないので、バランサとファンとの間の僅かな隙間に粉塵が蓄積しやすい。
【0006】
このような問題は、オービタルサンダに限らず、偏心円運動を伴う種々の携帯用加工機に共通する。このようなことから、偏心運動を伴う携帯用加工機において、騒音の発生および/または粉塵の蓄積を抑制することが期待される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、携帯用加工機を開示する。この携帯用加工機は、モータと、軸線方向に延在し、モータの回転駆動力によって回転可能な出力シャフトと、出力シャフトの回転に伴って偏心円運動するように構成された工具アクセサリと、出力シャフトを周方向に取り囲むように出力シャフトに対して固定された集塵ファンと、モータの回転駆動力によって回転するように構成されたモータ冷却ファンと、集塵ファンおよびモータ冷却ファンのうちの少なくとも一方のファンに取り付けられるバランサと、を備えていてもよい。少なくとも一方のファンの周方向におけるバランサが取り付けられる位置であって、少なくとも一方のファンのうちの、軸線方向におけるバランサと反対側の縁部と、バランサと、の間の位置に、少なくとも一方のファンに向けて軸線方向に流れる空気を径方向外側に排出するように流路が形成されてもよい。
【0008】
上記の構成によれば、少なくとも一方のファンの周方向のバランサが配置された領域においても、出力シャフトに沿って流れる空気を、少なくとも一方のファンのうちの、軸線方向におけるバランサと反対側の縁部と、バランサと、の間の流路を介して、径方向外側に導くことができる。したがって、少なくとも一方のファンの回転に伴う空気の圧力の変動が緩和される。その結果、騒音の発生が抑制される。しかも、この流路によって、空気と共に粉塵も径方向外側に導かれるので、バランサと、少なくとも一方のファンと、の間の隙間に粉塵が蓄積することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態によるサンダの斜視図である。
図2】サンダの平面図である。
図3】サンダの左側面図である。
図4図2のA-A線に沿った部分拡大断面図である。
図5図2のA-A線に沿った部分拡大断面図である。
図6】集塵ファン側を見たファンの斜視図である。
図7】モータ冷却ファン側を見たファンの斜視図である。
図8】集塵ファンの底面図である。
図9】集塵ファンの底面図であり、バランサの反対側の構造を点線で示している。
図10】集塵ファンの分解斜視図である。
図11】集塵ファン用のバランサの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本発明の代表的かつ非限定的な具体例について、図面を参照して詳細に説明する。この詳細な説明は、本発明の好ましい例を実施するための詳細を当業者に示すことを単純に意図しており、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。また、以下に開示される追加的な特徴ならびに発明は、さらに改善された装置、その製造方法および使用方法を提供するために、他の特徴や発明とは別に、または共に用いることができる。
【0011】
また、以下の詳細な説明で開示される特徴や工程の組み合わせは、最も広い意味において本発明を実施する際に必須のものではなく、特に本発明の代表的な具体例を説明するためにのみ記載されるものである。さらに、上記および下記の代表的な具体例の様々な特徴、ならびに、独立および従属クレームに記載されるものの様々な特徴は、本発明の追加的かつ有用な実施形態を提供するにあたって、ここに記載される具体例のとおりに、あるいは列挙された順番のとおりに組合せなければならないものではない。
【0012】
本明細書および/または特許請求の範囲に記載された全ての特徴は、実施形態および/または特許請求の範囲に記載された特徴の構成とは別に、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、個別に、かつ互いに独立して開示されることを意図するものである。さらに、全ての数値範囲およびグループまたは集団に関する記載は、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、それらの中間の構成を開示する意図を持ってなされている。
【0013】
1つまたはそれ以上の実施形態において、少なくとも一方のファンは、主板と、主板の一方の面上を少なくとも部分的に略放射状に延在する複数の羽根と、を備えていてもよい。一方の面は、主板に対してバランサが位置する側の面であってもよい。流路は、主板の一方の面と、バランサと、の間に形成されてもよい。この構成によれば、簡素な構成で、出力シャフトに沿って流れる空気を径方向外側に排出する流路を形成できる。「少なくとも部分的に略放射状に延在する」とは、周方向の少なくとも一部の角度位置で略放射状に延在することを意味する。「略」放射状とは、複数の羽根の延在方向が厳密な径方向に対して角度付けられていてもよいことを意図している。
【0014】
1つまたはそれ以上の実施形態において、主板およびバランサの一方は、他方に向けて延在して他方に当接する凸部を備えていてもよい。流路として機能する隙間が凸部によって主板とバランサとの間に形成されてもよい。この構成によれば、より簡素な構成で、出力シャフトに沿って流れる空気を径方向外側に排出する流路を形成できる。
【0015】
1つまたはそれ以上の実施形態において、凸部は、流路での空気の流れを径方向外側に方向付ける整流部として機能する形状を有していてもよい。この構成によれば、流路における径方向外側に向けた空気の流れが促進される。したがって、騒音の発生、および、粉塵が蓄積をいっそう抑制できる。
【0016】
1つまたはそれ以上の実施形態において、複数の羽根の各々は、径方向に対して交差するように、少なくとも部分的に略放射状に延在していてもよい。凸部は、複数の羽根と同じ方向に径方向に対して交差するように配置されてもよい。この構成によれば、流路における径方向外側に向けた空気の流れがいっそう促進される。したがって、騒音の発生、および、粉塵が蓄積をいっそう抑制できる。
【0017】
1つまたはそれ以上の実施形態において、バランサが凸部を備えていてもよい。この構成によれば、少なくとも一方のファンの主板が凸部を備える構成と比べて、バランサの重量が大きくなる。したがって、軸線方向に直交する水平面上でのバランサの設置面積をコンパクトにできる。
【0018】
1つまたはそれ以上の実施形態において、集塵ファンおよびモータ冷却ファンは、第1の面と、第1の面と反対側の第2の面と、を有する主板と、第1の面上を少なくとも部分的に放射状に延在する複数の第1の羽根と、第2の面上を少なくとも部分的に放射状に延在する複数の第2の羽根と、を備える一体化された単一のファンの形態であってもよい。この構成によれば、携帯用加工機の部品点数および組立工数を低減できる。
【0019】
1つまたはそれ以上の実施形態において、バランサは金属製であってもよい。少なくとも一方のファンは、バランサよりも比重が小さくてもよい。この構成によれば、少なくとも一方のファンとバランサとの重量差を大きくできるので、静アンバランスや偶アンバランスを効率的に解消できる。あるいは、比較的小さいバランサの容量で必要な重量差を確保できるので、バランサをコンパクト化できる。
【0020】
1つまたはそれ以上の実施形態において、少なくとも一方のファンは、バランサに向けて突出するネジボスを備えていてもよい。バランサは、ネジボスに対応する位置に形成された貫通孔を備えていてもよい。凸部は、貫通孔の周囲において少なくとも一方のファンに向けて突出し、ネジボスの外周が嵌まり込む形状および大きさを有していてもよい。少なくとも一方のファンとバランサとは、貫通孔およびネジボスに挿入されるネジ部材によって互いに固定されてもよい。この構成によれば、簡素な構成で、空気を径方向外側に排出する流路を形成できるとともに、少なくとも一方のファンに対してバランサを正確かつ容易に位置決めできる。つまり、凸部が二つの機能を両立できる。
【0021】
以下、図面を参照して、例示的な一実施形態としてのサンダ10についてより詳細に説明する。サンダ10は、ランダムオービットサンダとも称される。
【0022】
図4および図5に示すように、サンダ10は、電動モータ60とモータシャフト61と工具アクセサリ40とを備えている。モータシャフト61の一端は、他の部材を介して、工具アクセサリ40に連結されている。詳しくは後述するが、サンダ10は、電動モータ60(モータシャフト61)の回転によって工具アクセサリ40がサンディング運動を行うように構成されている。
【0023】
以下の説明では、モータシャフト61が延在する方向をサンダ10の上下方向と定義する。上下方向のうち、工具アクセサリ40が位置する側を下側と定義し、その反対側を上側と定義する。また、上下方向と直交するサンダ10の長手方向を、サンダ10の前後方向と定義する。前後方向のうち、工具アクセサリ40が位置する側を前側と定義し、その反対側を後側と定義する。また、前後方向と上下方向とに直交する方向を、サンダ10の左右方向と定義する。左右方向のうち、後側から前側を見たときの右側をサンダ10の右側と定義し、その反対側をサンダ10の左側と定義する。
【0024】
図1~3に示すように、サンダ10はハウジング20を備えている。ハウジング20は、フロントハウジング部21とグリップ部22とリアハウジング部23とを備えている。フロントハウジング部21とリアハウジング部23とは、上下に離間する二股形状によって前後方向に連結されており、上側の連結部分は、グリップ部22として機能する。リアハウジング部23の後端からは、電動モータ60に電力を供給するための電源コード26が延出している。
【0025】
図4に示すように、リアハウジング部23の下部には、コントローラ65が収容されている。コントローラ65は、電源コード26と電動モータ60とに電気的に接続されており、電動モータ60へ供給される電力を制御することによって、電動モータ60の動作を制御する。図1に示すように、フロントハウジング部21の前部には、電動モータ60の起動および停止のための操作を行うためにスイッチボタン27が設けられている。スイッチボタン27の後方にはスイッチユニット48が連携可能に配置している。スイッチユニット48は、コントローラ65に電気的に接続されている。
【0026】
図4および図5に示すように、フロントハウジング部21には電動モータ60が収容されている。電動モータ60のモータシャフト61は、上下方向に延在しており、フロントハウジング部21に対して固定された軸受62,63によって回転可能に支持されている。軸受62は、モータシャフト61の上端を支持しており、軸受63は、モータシャフト61の下端付近を支持している。
【0027】
軸受63の下方には、ファン70が配置されている。ファン70は、モータシャフト61を周方向に取り囲むようにモータシャフト61に対して固定されている。本実施形態では、ファン70は、モータ冷却ファンの機能と集塵ファンの機能とを併せ持っている。具体的には、ファン70の上側部分はモータ冷却ファンとして機能し、ファン70の下側部分は集塵ファンとして機能する。このため、以下の説明では、ファン70の上側部分をモータ冷却ファン100とも呼び、ファン70の下側部分を集塵ファン200とも呼ぶ。
【0028】
図6および図7に示すように、ファン70は、円盤状の主板71を備えている。主板71の中央には、ファン70を上下方向に貫通するシャフト挿入孔76が形成されている。シャフト挿入孔76には、モータシャフト61が挿入される。主板71は、上向きの第1の面72を有する上側部分73と、下向きの第2の面74を有する下側部分75と、を備えている。モータ冷却ファン100の一部分として機能する上側部分73を主板110とも呼ぶ。集塵ファン200の一部分として機能する下側部分75を主板210とも呼ぶ。本実施形態では、上側部分73および下側部分75は、二次接着や機械的接合を用いずに一体形成された一部品であるが、任意の手法によって接着、または、機械的に接合されていてもよい。本実施形態では、下側部分75の半径は、上側部分73の半径よりも僅かに大きい。それによって形成される段差に部分に、フロントハウジング部21の内面から水平方向に延在するリブが配置されることによって、主板71の上下の空間の間での空気の流通が抑制される。
【0029】
図7に示すように、モータ冷却ファン100の主板110(第1の面72)上には、複数の第1の羽根120が部分的に(換言すれば、所定の角度位置で)略放射状に延在している。本実施形態では、第1の羽根120の延在方向は、径方向に対して角度付けられている。
【0030】
モータシャフト61の回転に伴い、ファン70(モータ冷却ファン100)が回転すると、グリップ部22に形成された吸入口24(図1および図3参照)を介して、ハウジング20の外部から内部に空気が流入する。この空気は、電動モータ60を通って軸線方向(モータシャフト61が延在する方向)に流れ、モータ冷却ファン100に至る。モータ冷却ファン100では、下方に向けた空気流は、主板110に衝突して、第1の羽根120の作用によって径方向外側に方向付けられ、その後、フロントハウジング部21に形成された排気口25(図1および図3参照)から、ハウジング20の外部に排出される。このような空気の流れによって、電動モータ60が冷却される。排気口25は、上下方向において、モータ冷却ファン100に対応する位置に形成されている。
【0031】
図6に示すように、集塵ファン200は軸部230を備えている。軸部230は、主板210の中央付近で、主板210から下側に円筒状に突出する。軸部230の内部には、シャフト挿入孔76が形成されている。集塵ファン200の主板210(第2の面74)上には、複数の第2の羽根220が、軸部230よりも径方向外側で、部分的に(換言すれば、所定の角度位置で)略放射状に延在している。本実施形態では、第2の羽根220の延在方向は、径方向に対して角度付けられている。
【0032】
図5に示すように、軸部230は、回転可能に軸受64によって支持される。モータシャフト61には、その下端から上側に向けて延在するネジ孔66が形成されている。モータシャフト61の下端がシャフト挿入孔76内に挿入された状態で、プレート67が、軸部230の下方に配置される。このとき、プレート67は、軸受64の下端に当接する。プレート67には、ネジ孔66に対応する位置に貫通孔が形成されている。この貫通孔およびネジ孔66に下方からボルト68を挿入して締め付けることで、軸受64の内輪と軸受63の内輪とがファン70を上下方向に挟み込む。これによって、モータシャフト61とファン70と軸受63と軸受64との位置関係が固定される。
【0033】
このような取付状態において、図5に示すように、集塵ファン200の軸部230は、モータシャフト61に対して偏心している。このため、軸受64は、モータシャフト61に対して偏心している。
【0034】
図4および図5に示すように、フロントハウジング部21内の集塵ファン200の収容空間28は、リアハウジング部23の下部を前後方向に延在する集塵通路29と連通している。収容空間28と集塵通路29とは、収容空間28の最後部に位置する入口29aを介して接続される。図4に示すように、集塵通路29は、集塵ノズル30に連通している。集塵ノズル30は、リアハウジング部23の下側かつ後側の縁部から後側に向けて円筒状に延在している。図1および図4に示すように、集塵ノズル30には、ダストバッグ31が取り外し可能に装着される。
【0035】
図1~3に示すように、工具アクセサリ40は、サンダ10の最下部に位置しており、パッド41を備えている。パッド41は、上下方向に見て円形を有している。パッド41は、サンディングペーパー(図示せず)を取り付けるための平坦面42を備えている。平坦面42は、パッド41の底面であり、水平方向(上下方向に直交する方向)に広がっている。図5に示すように、パッド41は、ボルト43によって、軸受64を支持するベアリングボックス69に連結されている。
【0036】
図4および図5に示すように、パッド41の底面には、上方に向けて延在する複数の孔44が形成されている。複数の孔44は、パッド41の上部で水平方向に広がる空間45に連通している。この空間45は、パッド41の頂面に形成された連通孔46に連通している。連通孔46は、フロントハウジング部21の底面の開口に向けて開口している。フロントハウジング部21の底面の開口は、集塵ファン200を収容する収容空間28に連通している。パッド41の底面には、サンディングペーパー(図示せず)が貼り付けられる。このサンディングペーパーには、パッド41の孔44に対応する位置に孔が形成されている。
【0037】
モータシャフト61の回転に伴い、ファン70(集塵ファン200)が回転すると、粉塵を含む空気が、サンディングペーパーの孔、孔44、空間45、連通孔46を通って収容空間28に流入する。このとき、空気は、集塵ファン200の主板210に衝突して、集塵ファン200の第2の羽根220の作用によって、径方向外側に向けて導かれる。そのように方向付けられた空気は、入口29aから集塵通路29に入り、集塵ノズル30を通ってダストバッグ31に流入する。この空気の流れによって、サンディング作業時に発生した粉塵をダストバッグ31に回収することができる。
【0038】
上述したサンダ10は、以下のように動作する。まず、ユーザがスイッチボタン27を操作して電動モータ60を駆動させると、モータシャフト61が回転を開始する。モータシャフト61の回転は、モータシャフト61に対して偏心している軸受64を介して、軸受64を支持するベアリングボックス69に伝達される。このため、ベアリングボックス69、および、ベアリングボックス69に連結された工具アクセサリ40は、偏心円運動および回転運動を行う。この状態で、パッド41の平坦面42に貼り付けられたサンディングペーパーを被加工物に押しつけると、サンディングが行われる。
【0039】
工具アクセサリ40のこのような偏心円運動は、振動発生の原因となる。このため、サンダ10は、モータ冷却ファン100および集塵ファン200にバランサ140およびバランサ240をそれぞれ取り付けることによって、静アンバランスや偶アンバランスを解消して、振動の発生を低減するための構成を備えている。以下、そのような構成について説明する。
【0040】
図7に示すように、モータ冷却ファン100には、周方向の一部分(第1の羽根120が形成されていない領域)に、バランサ140が取り付けられる。具体的には、主板71には、ネジボス150が形成されている。図5に示すように、ネジボス150は、モータ冷却ファン100側および集塵ファン200側の両方で上方および下方に向けてそれぞれ突出している。このネジボス150に、ボルト160を上方から、バランサ140の貫通孔を貫通するように挿入し、締め付けることによって、図7に示すようにバランサ140がモータ冷却ファン100に固定される。図5に示すように、バランサ140は、ネジボス150の上方に向けて突出する部分に嵌合する凹部を備えている。このため、バランサ140を主板110に対して容易に位置決めできる。バランサ140がモータ冷却ファン100に取り付けられた状態では、図7に示すように、バランサ140と主板110の第1の面72との間には、隙間は形成されていない。
【0041】
図6に示すように、集塵ファン200には、周方向の一部分(第2の羽根220が形成されていない領域)に、バランサ240が取り付けられる。具体的には、主板71には、ネジボス250が形成されている。図7および図10に示すように、ネジボス250は、集塵ファン200側およびモータ冷却ファン100側の両方で下方および上方に向けてそれぞれ突出している。集塵ファン200側で下方に向けて突出したネジボス250をネジボス251とも呼ぶ(図10参照)。モータ冷却ファン100側で上方に向けて突出したネジボス250をネジボス252とも呼ぶ(図7参照)。
【0042】
図11に示すように、バランサ240は、2つの貫通孔265を備えている。貫通孔265は、集塵ファン200の2つのネジボス251に対応する位置に形成されている。バランサ240は、さらに、その上面に、上方に向けて(集塵ファン200に向けて)突出する凸部261,262を備えている。凸部261は、略径方向に向けて細長く延在している。凸部262は、嵌合凸部263と整流凸部264とを備えている。嵌合凸部263は、貫通孔265の周囲を取り囲むように環状に形成されており、集塵ファン200のネジボス251の外周が嵌まり込む形状および大きさを有している。整流凸部264は、嵌合凸部263から略径方向に延在している。
【0043】
バランサ240を集塵ファン200に取り付けるためには、まず、嵌合凸部263の内側に集塵ファン200のネジボス251が嵌まり込むように、バランサ240が配置される。この手法によれば、集塵ファン200に対してバランサ240を生活かつ容易に位置決めできる。そして、ネジボス251にボルト260を下方から、バランサ240の貫通孔265を貫通するように挿入し、締め付けることによって、図6に示すようにバランサ240が集塵ファン200に固定される。
【0044】
このとき、凸部261,262の上面は、集塵ファン200の主板210の第2の面74に当接する。これによって、図6に示すように、バランサ240と主板210との間には、隙間270が形成される。この隙間270は、集塵のために上述したルートで空気が流れる際の流路として機能する。つまり、バランサ240は配置された周方向の領域においては、パッド41の孔44から収容空間28に流入し、主板210に衝突した空気は、隙間270を介して、径方向外側に排出される。このため、隙間270を流路270とも呼ぶ。
【0045】
このような構成によれば、モータシャフト61(ひいては、集塵ファン200およびバランサ240)が回転して、バランサ240が集塵通路29の入口29aと径方向に対向する位置にあるときであっても、パッド41の孔44から収容空間28に流入して主板210に衝突した空気は、流路270を介して、径方向外側に排出される。したがって、流路270が形成されていない構成と比べて、集塵ファン200の第2の羽根220が入口29aに対向する位置にあるときと、バランサ240が入口29aに対向する位置にあるときと、の間での入口29a付近の空気の圧力変動が緩和される。その結果、騒音の発生が抑制される。しかも、流路270によって、空気と共に粉塵も径方向外側に導かれるので、バランサ240と集塵ファン200との間の隙間に粉塵が蓄積することを抑制できる。
【0046】
しかも、上述の構成によれば、流路270は、バランサ240の凸部261,262を利用して簡素な構成で形成することができる。ただし、バランサ240と集塵ファン200との間の流路270は、任意の手法で形成され得る。例えば、バランサ240と集塵ファン200との間にスペーサが配置されてもよい。
【0047】
さらに、凸部261は、略径方向に延在しており、整流凸部264も、嵌合凸部263の一部分と協働して、凸部261に類似した径方向範囲に延在している。このため、261,262は、流路270での空気の流れを径方向外側に方向付ける整流部としても機能する。したがって、流路270における径方向外側に向けた空気の流れが促進され、騒音の発生、および、粉塵が蓄積をいっそう抑制できる。しかも、図9に示すように、整流部として機能する凸部261,262は、集塵ファン200の第2の羽根220と同じ方向に径方向に対して交差するように配置されている。このため、流路270における径方向外側に向けた空気の流れがいっそう促進される。
【0048】
さらに、上記の構成によれば、モータ冷却ファン100と集塵ファン200とが一体的に形成されているので、サンダ10の部品点数および組立工数を低減できる。ただし、モータ冷却ファン100と集塵ファン200とは、別体であってもよい。この場合、モータ冷却ファン100と集塵ファン200とは、隣接して配置されてもよいし、軸線方向に離間して配置されてもよい。
【0049】
さらに、上記の構成によれば、バランサ240に凸部261,262が形成されているので、バランサ240の水平方向の面積を変えることなく、凸部261,262の重量分だけバランサ240の重量を増大できる。このため、静アンバランスや偶アンバランスを解消するのに必要な遠心力を生じさせるための重量を、バランサ240の水平方向のコンパクトな面積で達成できる。ただし、凸部は、バランサ240に代えて、集塵ファン200の主板210に、凸部261,262と同等の機能を有する凸部(主板210からバランサ240に向けて突出する凸部)が形成されてもよい。
【0050】
上述の実施形態において、ファン70およびバランサ140,240は、任意の材料で形成され得る。例えば、バランサ140,240は、金属製(例えば、重金属製(例えば、鉄、亜鉛、銅、それらのいずれかを含有する合金(例えば、黄銅)など))であってもよい。ファン70は、バランサ140,240の材料よりも比重が小さい材料(例えば、合成樹脂、軽金属製(例えば、アルミニウム、マグネシウム、チタン、それらのいずれかを含有する合金など)など)で形成されていてもよい。こうすれば、ファン70とバランサ140,240との重量差を大きくできるので、静アンバランスや偶アンバランスを効率的に解消できる。あるいは、比較的小さいバランサ140,240の容量で必要な重量差を確保できるので、バランサ140,240をコンパクト化できる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、上述した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各要素の任意の組み合わせ、または、任意の省略が可能である。
【0052】
例えば、集塵ファン200の主板210と、バランサ240と、の間に形成される流路270に代えて、集塵ファン200の周方向におけるバランサ240が取り付けられる位置であって、集塵ファン200のうちの、上下方向におけるバランサ240と反対側の縁部(つまり、上縁部)と、バランサ240と、の間の位置に、空気を径方向外側に排出する任意の形態の流路が形成されてもよい。
例えば、略径方向に延在する凹部が集塵ファン200の主板210に形成され、その凹部上にバランサ240が配置され、凹部の内部が流路として機能してもよい。あるいは、主板210が十分な厚みを有する場合には、バランサ240が配置される周方向位置において、主板210のうちのバランサ240よりも径方向内側の領域に凹部が形成され、この凹部の側面から略径方向にして、主板210の側面において開口する横穴が形成されてもよい。このような横穴も、上述した流路270と同様の機能を果たすことができる。
【0053】
さらに、上述の実施形態のようにモータ冷却ファン100と集塵ファン200とが同軸状に配置される場合には、集塵ファン200に代えて、または、加えて、モータ冷却ファン100が、集塵ファン200と同様の構成(流路270に関する種々の構成)を備えていてもよい。また、モータシャフトと平行に、モータシャフトに連動するスピンドル(出力シャフト)が配置され、モータシャフトにモータ冷却ファンが取り付けられ、スピンドルに集塵ファンが取り付けられる場合には、当該集塵ファンに、集塵ファン200と同様の構成が採用されてもよい。
【0054】
さらに、上述の実施形態は、ランダムオービットサンダに限らず、偏心円運動を伴う種々の携帯用加工機に適用可能である。例えば、上述の実施形態は、オービタルサンダ、ポリッシャなどにも適用可能である。
【0055】
上記実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下に示す。但し、実施形態の各構成要素は単なる一例であって、本発明の各構成要素を限定するものではない。サンダ10は、「携帯用加工機」の一例である。電動モータ60は、「モータ」の一例である。モータシャフト61は、「出力シャフト」の一例である。工具アクセサリ40は、「工具アクセサリ」の一例である。モータ冷却ファン100は、「モータ冷却ファン」の一例である。集塵ファン200は、「集塵ファン」の一例である。バランサ240は、「バランサ」の一例である。流路270は、「流路」の一例である。主板210は、「主板」の一例である。第2の羽根220は、「複数の羽根」および「複数の第2の羽根」の一例である。凸部261,262は、「凸部」の一例である。第1の羽根120は、「第1の羽根」の一例である。第2の羽根220は、「第2の羽根」の一例である。第1の面72は、「第1の面」の一例である。第2の面74は、「第2の面」の一例である。ネジボス251は、「ネジボス」の一例である。貫通孔265は、「貫通孔」の一例である。ボルト260は、「ネジ部材」の一例である。
【符号の説明】
【0056】
10...サンダ
20...ハウジング
21...フロントハウジング部
22...グリップ部
23...リアハウジング部
24...吸入口
25...排気口
26...電源コード
27...スイッチボタン
28...収容空間
29...集塵通路
29a...入口
30...集塵ノズル
31...ダストバッグ
40...工具アクセサリ
41...パッド
42...平坦面
43...ボルト
44...孔
45...空間
46...連通孔
48...スイッチユニット
60...電動モータ
61...モータシャフト
62,63,64...軸受
65...コントローラ
66...ネジ孔
67...プレート
68...ボルト
69...ベアリングボックス
70...ファン
71...主板
72...第1の面
73...上側部分
74...第2の面
75...下側部分
76...シャフト挿入孔
100...モータ冷却ファン
110...主板
120...第1の羽根
140...バランサ
150...ネジボス
160...ボルト
200...集塵ファン
210...主板
220...第2の羽根
230...軸部
240...バランサ
250,251,252...ネジボス
260...ボルト
261,262...凸部
263...嵌合凸部
264...整流凸部
265...貫通孔
270...流路(隙間)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11