(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116530
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】試料ホルダ
(51)【国際特許分類】
G01N 23/2204 20180101AFI20240821BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20240821BHJP
G01N 23/223 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
G01N23/2204
G01N1/28 W
G01N23/223
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022206
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000250339
【氏名又は名称】株式会社リガク
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡 要平
(72)【発明者】
【氏名】青柳 光一
(72)【発明者】
【氏名】山田 康治郎
【テーマコード(参考)】
2G001
2G052
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA04
2G001CA01
2G001KA01
2G001QA02
2G052DA22
2G052DA33
2G052GA18
2G052JA04
2G052JA16
(57)【要約】
【課題】樹脂部材を用いることで試料の交換作業を簡便にするとともに、当該樹脂部材のX線による劣化を抑えることのできる試料ホルダを提供する。
【解決手段】蛍光X線分析用の試料ホルダであって、上端面に部分的に設けられた穴を有し、下端が開口する筒状体と、筒状体の内側に配置され、試料が載置される受け皿と、受け皿を上方に付勢する弾性体と、弓部を有し、弾性体の下端と接する樹脂部材と、樹脂部材の下側に配置される底板と、を有し、筒状体、受け皿及び底板は、金属で形成され、弓部は、端部に設けられる爪部と内側に押圧される押圧部とを有し、押圧部に対する押圧により内側に弾性変形し、筒状体は、爪部が嵌合する嵌合部と、押圧部が外側に露出する露出部と、が形成され、樹脂部材は、受け皿と底板の間に配置され、押圧部以外の部分が筒状体、受け皿及び底板により囲われる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端面に部分的に設けられた穴を有し、下端が開口する筒状体と、
前記筒状体の内側に配置され、試料が載置される受け皿と、
前記受け皿を上方に付勢する弾性体と、
弓部を有し、前記弾性体の下端と接する樹脂部材と、
前記樹脂部材の下側に配置される底板と、
を有し、
前記筒状体、前記受け皿及び前記底板は、金属で形成され、
前記弓部は、端部に設けられる爪部と内側に押圧される押圧部とを有し、前記押圧部に対する押圧により内側に弾性変形し、
前記筒状体は、前記爪部が嵌合する嵌合部と、前記押圧部が外側に露出する露出部と、が形成され、
前記樹脂部材は、前記受け皿と前記底板の間に配置され、前記押圧部以外の部分が前記筒状体、前記受け皿及び前記底板により囲われる、
ことを特徴とする蛍光X線分析用の試料ホルダ。
【請求項2】
前記筒状体は、円筒状の筒体と、穴が設けられた上面体と、を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の試料ホルダ。
【請求項3】
前記筒状体は、一体的に形成される、ことを特徴とする請求項1に記載の試料ホルダ。
【請求項4】
前記受け皿は、さらに、前記試料が載置される面に、該試料が載置される凹部を有する、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の試料ホルダ。
【請求項5】
前記受け皿は、底面に凸部を有し、
前記弾性体の上端は、前記受け皿の前記凸部と嵌合する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の試料ホルダ。
【請求項6】
前記樹脂部材は、かぎづめ状の係止部を有し、
前記弾性体の下端は、前記樹脂部材の前記係止部によって係止される、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の試料ホルダ。
【請求項7】
前記筒状体、前記受け皿及び前記底板は、アルミニウムを主成分とする合金で形成される、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の試料ホルダ。
【請求項8】
前記嵌合部は、前記爪部が嵌合する窪みである、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の試料ホルダ。
【請求項9】
前記露出部は、前記押圧部が外側に露出する切欠きである、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の試料ホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
試料に含まれる元素や当該元素の濃度を測定する装置として、蛍光X線分析装置がある。蛍光X線分析装置を用いた測定を行う際に、試料ホルダを用いることがある。例えば、ケース内の受け皿に載置された試料を固定するために、試料の上から押え蓋を被せた構成を有する試料ホルダが知られている(下記、特許文献1乃至特許文献3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭59-80739号公報
【特許文献2】実開昭56-009042号公報
【特許文献3】実開平6-58350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の試料ホルダは、ケースと押え蓋とを固定する方法として、螺着する方法(上記特許文献1)や、ねじ止めする方法(上記特許文献2)や、プランジャを溝に嵌合する方法(上記特許文献3)が採用されていた。
【0005】
螺着やねじ止めにより固定する構成の場合、試料を交換するたびに押え蓋やねじを何度も回転させる必要があり、手間がかかっていた。また、螺着やねじ止めは振動により緩みが生じ、蛍光X線分析装置の内部で試料ホルダがばらけてしまう可能性があった。プランジャを溝に嵌合する構成の場合も、蛍光X線分析装置の内部でプランジャが溝から外れ、試料ホルダがばらけてしまう可能性があり、部品価格が高いという問題もあった。
【0006】
本開示は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、樹脂部材を用いることで試料の交換作業を簡便にするとともに、当該樹脂部材のX線による劣化を抑えることのできる試料ホルダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示の一側面に係る蛍光X線分析用の試料ホルダは、上端面に部分的に設けられた穴を有し、下端が開口する筒状体と、前記筒状体の内側に配置され、試料が載置される受け皿と、前記受け皿を上方に付勢する弾性体と、弓部を有し、前記弾性体の下端と接する樹脂部材と、前記樹脂部材の下側に配置される底板と、を有し、前記筒状体、前記受け皿及び前記底板は、金属で形成され、前記弓部は、端部に設けられる爪部と内側に押圧される押圧部とを有し、前記押圧部に対する押圧により内側に弾性変形し、前記筒状体は、前記爪部が嵌合する嵌合部と、前記押圧部が外側に露出する露出部と、が形成され、前記樹脂部材は、前記受け皿と前記底板の間に配置され、前記押圧部以外の部分が前記筒状体、前記受け皿及び前記底板により囲われる、ことを特徴とする。
【0008】
(2)本開示の上記態様において、前記筒状体は、円筒状の筒体と、穴が設けられた上面体と、を有する、ことを特徴とする。
【0009】
(3)本開示の上記態様において、前記筒状体は、一体的に形成される、ことを特徴とする。
【0010】
(4)本開示の上記態様において、前記受け皿は、さらに、前記試料が載置される面に、該試料が載置される凹部を有する、ことを特徴とする。
【0011】
(5)本開示の上記態様において、前記受け皿は、底面に凸部を有し、前記弾性体の上端は、前記受け皿の前記凸部と嵌合する、ことを特徴とする。
【0012】
(6)本開示の上記態様において、前記樹脂部材は、かぎづめ状の係止部を有し、前記弾性体の下端は、前記樹脂部材の前記係止部によって係止される、ことを特徴とする。
【0013】
(7)本開示の上記態様において、前記筒状体、前記受け皿及び前記底板は、アルミニウムを主成分とする合金で形成される、ことを特徴とする。
【0014】
(8)本開示の上記態様において、前記嵌合部は、前記爪部が嵌合する窪みである、ことを特徴とする。
【0015】
(9)本開示の上記態様において、前記露出部は、前記押圧部が外側に露出する切欠きである、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、試料の交換作業が簡便であり、蛍光X線分析装置の内部でばらけてしまうおそれのない試料ホルダを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図4】試料ホルダのIV-IV断面を示す図である。
【
図6】試料ホルダを上面照射型の蛍光X線分析装置の試料台に設置した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための好適な実施の形態(以下、実施形態という)を図を参照しつつ説明する。
図1は試料ホルダ100を俯瞰して見た図である。
図2は、試料ホルダ100の各構成部品を示す図であって、試料ホルダを上下方向に分解した図である。
図3(a)は、底板210を取り除いた状態の試料ホルダ100の下面図であり、
図3(b)は、底板210が取り付けられた状態の試料ホルダ100の下面図である。
図4は、
図3(b)のIV-IV断面を示す図である。
図5は、
図3(b)のV-V断面を示す図である。
図2に示すように、試料ホルダ100は、筒状体202と、受け皿204と、弾性体206と、樹脂部材208と、底板210と、を有する。
【0019】
筒状体202は、上端面に部分的に設けられた穴を有し、下端が開口する。また、筒状体202は、爪部218(後述)が嵌合する嵌合部404と、弓部220(後述)の一部が外側に露出する露出部216と、が形成される。具体的には、例えば、筒状体202は、円筒状の筒体212と、穴が設けられた上面体214と、を有し、筒体212の上に配置された上面体214がねじで固定された構成を有する。
図1及び
図2に示すように、上面体214は、中央部に試料402が露出する穴を有し、円板状の形状を有する。上面体214は、試料402の分析しない部分に不必要なX線を照射させないための、いわゆる試料マスクである。筒状体202は、筒体212に穴径の異なる上面体214を交換して取付けたものであってもよい。
図4に示すように、嵌合部404は、例えば、爪部218が嵌合する窪みである。また、
図1及び
図2に示すように、露出部216は、弓部220の一部が外側に露出する切欠きである。なお、
図1及び
図2に示すように、筒体212は、真空環境下で測定を行う際に空気穴として機能する穴が側面に設けられていてもよいが、当該穴が設けられなくてもよい。また、筒状体202は、筒体212と上面体214に分離せず、一体的に形成されてもよい。
【0020】
受け皿204は、筒状体202の内側に配置され、試料402が載置される。具体的には、受け皿204は、筒体212の内径と略同一の外径を有する円板状の形状を有する。また、
図4に示すように、受け皿204は、底面に凸部を有し、弾性体206の上端と嵌合される。さらに、受け皿204は、試料402が載置される面に、該試料402が載置される凹部を有してもよい。なお、
図4では試料402が個体かつ凹部の径より大きいため、試料402と受け皿204の間(凹部の上)に空間が存在する。試料402が粉末である場合や、凹部の径よりも小さい場合、試料402は凹部に載置される。
【0021】
弾性体206は、受け皿204を上方に付勢する。具体的には、例えば、
図2及び
図4に示すように、弾性体206は、ばねである。弾性体206の下端は、樹脂部材208の係止部228によって係止され、弾性体206の上端は、受け皿204の凸部と嵌合する。これにより、弾性体206は、受け皿204を上面体214に向かって付勢する。
【0022】
樹脂部材208は、樹脂で形成され、安価に大量生産することができる。例えば、樹脂部材208は、機械強度が高くX線にも耐性が高いPEEK(Poly Ether Ether Ketone)樹脂で射出成形されてもよい。樹脂部材208は、端部に爪部218が設けられ押圧により内側に弾性変形する弓部220を有し、弾性体206の下端と接する。具体的には、例えば、
図3(a)に示すように、樹脂部材208は、中央近傍の基部222と、基部222から筒状体202の内壁に沿って延伸する弓部220と、を有し、弾性変形可能な樹脂で形成される。また、弓部220は、押圧によって内側に弾性変形する湾曲部224と、湾曲部224の先端に設けられた爪部218と、外部から力が加えられる押圧部226と、を有する。弓部220は、基部222に対して対称に2個配置される。
図4に示すように、筒体212に設けられた窪み(嵌合部404)に2個の爪部218が嵌合することで、樹脂部材208は筒状体202に対して固定される。この時、
図5に示すように、筒体212に設けられた切欠きから2個の押圧部226が露出している。2個の押圧部226は、基部222の中心に対して対向する位置に配置されており、樹脂部材208を筒状体202から取り外すときに使用者によって内側に押圧される。湾曲部224は、押圧により内側に弾性変形するように薄く形成されているため、2個の押圧部226が内側に押圧されると2個の湾曲部224はそれぞれ筒状体202の内側に湾曲する。2個の湾曲部224がそれぞれ筒状体202の内側に湾曲しているとき、爪部218は筒体212に設けられた窪み(嵌合部404)から外れた状態となる。この状態で樹脂部材208と筒状体202を離すことにより、筒状体202から樹脂部材208を取り外すことができる。
【0023】
また、樹脂部材208は、かぎづめ状の係止部228を有し、弾性体206の下端を係止部228によって係止する。具体的には、例えば
図2に示すように、基部222の弾性体206と向かう面の端部近傍に、2個のかぎづめ状の係止部228を有する。2個の係止部228は、ばねである弾性体206の樹脂部材208側の直径とおよそ同じ距離を離して配置される。弾性体206は、樹脂部材208側が係止部228のかぎづめに係止されることで樹脂部材208との位置関係が固定される。
【0024】
さらに、樹脂部材208は、底板210と向かい合う側に底板210を固定するためのねじ穴302を有する。
【0025】
底板210は、樹脂部材208の下側に配置される。具体的には、底板210は、筒状体202の内径と略同じ直径の円板状の形状を有する。また、底板210は、樹脂部材208に設けられたねじ穴302と対応する位置に穴230を有する。底板210に設けられた穴と、樹脂部材208に設けられたねじ穴302と、を通すねじによって、底板210は樹脂部材208に固定される。
【0026】
筒状体202、受け皿204及び底板210は、金属で形成される。具体的には、例えば、筒状体202、受け皿204及び底板210は、アルミニウムを主成分とする合金で形成される。アルミニウムを主成分とする合金は、従来のステンレスで形成された試料ホルダ100よりも軽量であるため、重量を軽減することができる。なお、アルミニウムを主成分とする、との意味は、例えば、筒状体202、受け皿204及び底板210を構成している元素のうちアルミニウムが最も含有率の高い元素であることを意味する。また、例えば筒状体202、受け皿204及び底板210に含まれるアルミニウムの含有率が所定の割合(例えば質量パーセント濃度が10%)以上であることを意味してもよい。
【0027】
以上のように、受け皿204は弾性体206と嵌合され、弾性体206は樹脂部材208に係止され、底板210は樹脂部材208に固定される。そして、筒状体202の窪み(嵌合部404)に樹脂部材208の爪部218が嵌合することで、樹脂部材208は筒状体202に対して固定される。使用者は、押圧部226を押した状態で樹脂部材208と筒状体202を離す作業により筒状体202から樹脂部材208を取り外すことができるため、受け皿204に載置された試料402を取り外すことができる。押圧部226を押した状態で樹脂部材208と筒状体202を離す作業は、ねじや螺着によって固定された試料ホルダ100を分解する作業よりも簡便である。従って、本開示によれば容易に試料402の交換を行うことができる。
【0028】
また、底板210を樹脂部材208の下面に配置することにより、樹脂部材208の劣化を軽減することができる。具体的には、
図6は、本開示に係る試料ホルダ100を上面照射型の蛍光X線分析装置の試料台602に設置した状態を示す図である。試料ホルダ100は、試料台602に設けられた穴に配置されている。樹脂部材208は弾性変形できるように樹脂で形成されているため、金属で形成された他の構成部材よりもX線の被爆による劣化が顕著である。しかしながら本開示によれば、樹脂部材208は、受け皿204と底板210の間に配置され、押圧部226以外の部分が筒状体202、受け皿204及び底板210により囲われる。また、押圧部226は試料ホルダ100の下端に配置されているため、筒状体202から露出する押圧部226は試料台602の穴よりも下側に位置する。蛍光X線分析装置が試料402にX線を照射している間、測定室の内部には様々な方向に進行するX線が存在するが、試料402に照射されるX線が主(強度が強い)であり、試料台602の穴よりも下側に照射されるX線は稀(強度が弱い)であるため、露出した押圧部226に照射されるX線の強度は弱い。従って、本開示も構成により、樹脂部材208のX線による劣化を低減することができる。更に、底板210で試料ホルダ100の下面を覆うことにより、試料402から剥離や欠け落ちた粉末などで蛍光X線分析装置内部の汚染を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0029】
100 試料ホルダ、202 筒状体、204 受け皿、206 弾性体、208 樹脂部材、210 底板、212 筒体、214 上面体、216 露出部、218 爪部、220 弓部、222 基部、224 湾曲部、226 押圧部、228 係止部、230 底板に設けられた穴、302 ねじ穴、402 試料、404 嵌合部、602 試料台。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0003
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0003】
【特許文献1】実開昭59-80738号公報
【特許文献2】実開昭56-009042号公報
【特許文献3】実開平6-58350号公報