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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116585
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】電気光学装置および電子機器
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/3233 20160101AFI20240821BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
G09G3/3233
G09G3/20 611H
G09G3/20 624B
G09G3/20 642A
G09G3/20 680A
G09G3/20 642F
G09G3/20 642P
G09G3/20 611A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022274
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】窪田 岳彦
【テーマコード(参考)】
5C080
5C380
【Fターム(参考)】
5C080AA06
5C080AA10
5C080BB05
5C080CC03
5C080DD05
5C080DD26
5C080FF11
5C080FF12
5C080JJ01
5C080JJ02
5C080JJ03
5C080JJ04
5C080JJ06
5C080KK07
5C080KK49
5C380AA01
5C380AB06
5C380AB21
5C380AB34
5C380AC02
5C380AC10
5C380AC12
5C380BA01
5C380BA39
5C380BA42
5C380BA43
5C380BB02
5C380CA12
5C380CA32
5C380CB01
5C380CC04
5C380CC07
5C380CC26
5C380CC33
5C380CC64
5C380CC72
5C380CD014
5C380CF09
5C380CF13
5C380CF43
5C380CF48
5C380CF67
5C380CF68
5C380DA02
5C380DA44
5C380EA02
5C380EA11
(57)【要約】
【課題】電気光学装置においてデータ線の寄生容量で消費される電力を低減する。
【解決手段】 画素回路110は、アノードからカソードに流れる電流に応じた輝度で発光するOLEDと、ゲートノードおよびソースノードの間の電圧に応じた電流をOLEDに流すトランジスターと、を含む。制御回路30は、光センサーの検出結果である情報Ambおよび温度センサーの検出結果で検出である情報Tmpに応じて、リセット動作または非リセット動作を実行する。リセット動作は、アノードに、データ線14を介して所定の電位を供給する動作であり、非リセット動作は、データ線14に蓄積された電荷を、アノードに分配させる動作である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周辺光の輝度を検出する光センサー、または、温度を検出する温度センサーと、
データ線と走査線とに対応して設けられる画素回路と、
前記画素回路を制御する制御回路と、
を含み、
前記画素回路は、
二つの電極の間に流れる電流に応じた輝度で発光する発光素子と、
ゲートノードの電位およびソースノードの電位の間の電圧に応じた電流を前記発光素子に流す駆動トランジスターと、
を含み、
前記制御回路は、
書込期間において、
前記ゲートノードに階調レベルに応じた電位を、前記データ線を介して供給し、
前記書込期間よりも前の第1初期化期間において、
第1動作または第2動作を、前記光センサーの検出結果、または、前記温度センサーの検出結果に応じて実行し、
前記第1動作は、
前記発光素子の一方の電極に、前記データ線を介して所定の電位を供給する動作であり、
前記第2動作は、
前記データ線に蓄積された電荷を、前記一方の電極に分配させる動作である
ことを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記光センサーおよび前記温度センサーの双方を有し、
前記制御回路は、
前記第1初期化期間において、
第1動作または第2動作を、前記光センサーの検出結果および前記温度センサーの検出結果に応じて実行する
請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記制御回路は、
前記第1初期化期間において前記第1動作を実行する場合、
前記第1初期化期間よりも前の第2初期化期間において、前記ゲートノードに前記駆動トランジスターをオフ状態にさせるオフ電位を、前記データ線を介して供給し、
前記第1初期化期間において前記第2動作を実行する場合、
前記第2初期化期間において、
前記データ線の電荷を、前記ゲートノードに分配させる
ことを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項4】
一端および他端を有し、一端が前記データ線に電気的に接続され、他端がオン電位を給電する給電線に電気的に接続されたスイッチング素子を有し、
前記制御回路は、
前記第1初期化期間後であって前記書込期間前の第3初期化期間において、前記スイッチング素子をオン状態に制御し、
前記オン電位は、
前記ゲートノードに供給されれば、前記駆動トランジスターをオン状態にさせる電位である
請求項3に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記制御回路は、
前記第3初期化期間後であって前記書込期間よりも前の補償期間において、前記駆動トランジスターのゲートノードを当該駆動トランジスターの閾値に相当する電位に収束させる
請求項4に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記制御回路は、
前記書込期間において、
前記ゲートノードに階調レベルに応じた電位を、カップリング容量および前記データ線を介して供給する
請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の電気光学装置を有する電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode、以下「OLED」という)素子などの発光素子を用いた電気光学装置(表示装置)が各種提案されている。電気光学装置では、走査線とデータ線との交差に対応して、上記発光素子や駆動トランジスターなどを含む画素回路が、表示すべき画像の画素に対応して設けられる構成が一般的である。
【0003】
このような構成において、画素の階調レベルに応じた電位のデータ信号が駆動トランジスターのゲートノードに供給されると、当該駆動トランジスターは、ゲートノードおよびソースノードの間の電圧に応じた電流を発光素子に供給する。これにより、当該発光素子は、階調レベルに応じた輝度で発光する。
画素回路としては、駆動トランジスターを含めて4つのトランジスターを有する構成が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-179628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気光学装置では、小型化されて携帯機器に適用される場合、電池等の関係で低消費電力化が強く要求される。しかしながら、上記構成では、低消費電力化が十分でない、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る電気光学装置は、周辺光の輝度を検出する光センサー、または、温度を検出する温度センサーと、データ線と走査線とに対応して設けられる画素回路と、前記画素回路を制御する制御回路と、を含み、前記画素回路は、二つの電極の間に流れる電流に応じた輝度で発光する発光素子と、ゲートノードの電位およびソースノードの電位の間の電圧に応じた電流を前記発光素子に流す駆動トランジスターと、を含み、前記制御回路は、書込期間において、前記ゲートノードに階調レベルに応じた電位を、前記データ線を介して供給し、前記書込期間よりも前の第1初期化期間において、第1動作または第2動作を、前記光センサーの検出結果、または、前記温度センサーの検出結果に応じて実行し、前記第1動作は、前記発光素子の一方の電極に、前記データ線を介して所定の電位を供給する動作であり、前記第2動作は、前記データ線に蓄積された電荷を、前記一方の電極に分配させる動作である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る電気光学装置が適用されたヘッドマウントディスプレイ・システムの電気的な構成を示すブロック図である。
図2】ヘッドセットを示す斜視図である。
図3】ヘッドセットの光学構成を示す図である。
図4】電気光学装置を示す斜視図である。
図5】電気光学装置の電気的な構成を示すブロック図である。
図6】電気光学装置における制御回路のブロック図である。
図7】制御回路における動作モードの指定を示す図である。
図8】電気光学装置の画素回路を示す図である。
図9】電気光学装置の動作を示すタイミングチャートである。
図10】電気光学装置の動作を示す図である。
図11】電気光学装置の動作を示す図である。
図12】電気光学装置の動作を示す図である。
図13】電気光学装置の動作を示す図である。
図14】電気光学装置の動作を示す図である。
図15】電気光学装置の動作を示す図である。
図16】電気光学装置の動作を示す図である。
図17】初期化期間おけるデータ線電位の遷移を示す図である。
図18】ヘッドセットを装着したユーザーで視認される像の一例を示す図である。
図19】第2実施形態に係る電気光学装置における制御回路のブロック図である。
図20】電気光学装置の動作を示すタイミングチャートである。
図21】電気光学装置の動作を示す図である。
図22】初期化期間おけるデータ線電位の遷移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態に係る電気光学装置について図面を参照して説明する。なお、各図において、各部の寸法および縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0009】
図1は、第1実施形態に係る電気光学装置を適用したヘッドマウントディスプレイ・システム1の構成を示すブロック図である。なお、ヘッドマウントディスプレイ・システム1は、電気光学装置を適用した電子機器の一例である。
図に示されるように、ヘッドマウントディスプレイ・システム1は、メインコントローラー20とヘッドセット300とを含む。
【0010】
メインコントローラー20は、映像データVid_L、Vid_Rおよび同期信号Syncを、ケーブル18を介してヘッドセット300に出力する。映像データVid_Lは、左眼用の映像を構成する各画素の階調レベルをR(赤)、G(緑)、B(青)毎に例えば8ビットで指定する。映像データVid_Rは、右眼用の映像を構成する各画素の階調レベルを同様にRGB毎に8ビットで指定する。
同期信号Syncには、映像データVid_LまたはVid_Rの垂直走査開始を指示する垂直同期信号や、水平走査開始を指示する水平同期信号、および、映像データの1画素分のタイミングを示すドットクロック信号が含まれる。
【0011】
ヘッドセット300は、電気光学装置10L、10Rおよび光センサー330を含む。電気光学装置10Lは左眼用であり、電気光学装置10Rは右眼用であり、それぞれカラー画像を表示するマイクロディスプレイである。電気光学装置10Lおよび10Rは、半導体基板に複数の画素回路や、当該画素回路を駆動する駆動回路などが集積される。半導体基板としては、典型的にはシリコン基板であるが、他の半導体基板であってもよい。
【0012】
本実施形態では、電気光学装置10Lおよび10Rに異なる映像、具体的には視差を伴う映像を表示させることで、奥行きや立体感を装着者に知覚させることができる。ただし、立体感等を知覚させる必要がない場合には、映像データVid_LおよびVid_Rが共通化されて、電気光学装置10Lおよび10Rに、同じ映像が表示される。
【0013】
光センサー330は、ヘッドセット300の周辺光の輝度を検出する。より具体的には、光センサー330は、ヘッドセット300の装着者が電気光学装置10Lおよび10Rによる表示画像を、外の様子と重ね合わせたシースルー状態で観察する場合に、当該表示画像と重ね合わされる外の輝度を検出する。
なお、光センサー330によって検出された輝度は、例えばデジタルに変換され、情報Ambとして電気光学装置10Lおよび10Rにそれぞれ供給される。
【0014】
図2は、ヘッドマウントディスプレイ・システム1におけるヘッドセット300を示す斜視図であり、図3は、ヘッドセット300の光学構成を示す図である。
図2に示されるように、ヘッドセット300は、外観的には、一般的な眼鏡と同様にテンプル310や、ブリッジ320、レンズ301L、301Rを有する。また、ヘッドセット300は、図3に示されるように、ブリッジ320近傍であってレンズ301L、301Rの奥側(図において下側)には、左眼用の電気光学装置10Lと右眼用の電気光学装置10Rとが設けられる。
【0015】
電気光学装置10Lの画像表示面は、図3において左側となるように配置している。これによって電気光学装置10Lによる表示画像は、光学レンズ302Lを介して図において9時の方向に出射する。ハーフミラー303Lは、電気光学装置10Lによる表示画像を6時の方向に反射させる一方で、12時の方向から入射した光を透過させる。電気光学装置置10Rの画像表示面は、電気光学装置10Lとは反対の右側となるように配置している。これによって電気光学装置10Rによる表示画像は、光学レンズ302Rを介して図において3時の方向に出射する。ハーフミラー303Rは、電気光学装置10Rによる表示画像を6時方向に反射させる一方で、12時の方向から入射した光を透過させる。
この構成により、ヘッドセット300の装着者は、電気光学装置10Lおよび10Rによる表示画像を、シースルー状態で観察することができる。
【0016】
なお、電気光学装置10Lおよび10Rの電気的な構成において差はない。このため、電気光学装置10Lおよび10Rついては、左眼用および右眼用と区別して説明する必要がない場合、映像データVidが供給される電気光学装置10として一般化して説明する。
【0017】
図4は、電気光学装置10の構成を示す斜視図である。この図に示されるように、電気光学装置10は、表示領域100で開口する枠状のケース192に収納される。電気光学装置10は、FPC基板194の一端に接続される。なお、FPCとは、Flexible Printed Circuitsの略称である。FPC基板194の他端は、ヘッドセット30における中継基板(図示省略)に接続される。当該中継基板には、メインコントローラー20からケーブル18を介して映像データVid_L、Vid_Rおよび同期信号Syncが供給されて、電気光学装置10Rおよび10Lに分配される。
【0018】
すなわち、電気光学装置10Lには、映像データVid_Lおよび同期信号Syncがメインコントローラー20からケーブル18、中継基板、FPC基板194を順に介して供給される。また、電気光学装置10Rには、映像データVid_Rおよび同期信号Syncがメインコントローラー20からケーブル18、中継基板、FPC基板194を順に介して供給される。
【0019】
なお、図4において、X方向は、電気光学装置10における走査線の延在方向を示し、Y方向は、データ線の延在方向を示す。X方向およびY方向で定まる二次元平面が半導体基板の基板面である。Z方向は、X方向およびY方向に垂直であって、OLEDから発せられる光の出射方向である。
【0020】
図5は、電気光学装置10の電気的な構成を示すブロック図である。図に示されるように、電気光学装置10は、制御回路40、データ信号出力回路50、補助回路60、n個の容量素子70、初期化回路80、温度センサー90、表示領域100および走査線駆動回路120を含む。
【0021】
表示領域100では、m行の走査線12が図においてX方向に沿って設けられ、n列のデータ線14が、Y方向に沿って、かつ、各走査線12と互いに電気的に絶縁を保つように設けられる。なお、m、nは、2以上の整数である。
【0022】
表示領域100には、画素回路110が、m行の走査線12とn列のデータ線14との交差に対応して設けられる。このため、画素回路110は、縦m行×横n列でマトリクス状に配列する。マトリクス配列のうち、行(ロウ)を区別するために、図において上から順に1、2、3、…、(m-1)、m行目と呼ぶことがある。同様にマトリクスの列(カラム)を区別するために、図において左から順に1、2、3、…、(n-1)、n列目と呼ぶことがある。
走査線12を一般化して説明するために、1以上m以下の整数(i-1)およびiが用いられる。また、データ線14を一般化して説明するために、1以上n以下の整数jが用いられる。
【0023】
温度センサー90は、電気光学装置10(半導体基板)に形成され、周辺温度を検出する。なお、温度センサー90によって検出された温度は、例えばデジタルに変換され、情報Tmpとしては、制御回路40に供給される。
制御回路40は、情報Amb、Tempのほか、メインコントローラー20から供給される映像データVidや同期信号Syncに応じて各部を制御する。
【0024】
実施形態において表示すべき画像の画素と表示領域100における画素回路110とは一対一に対応する。
ホスト装置から供給される映像データVidにおいて階調レベルで示される明るさの特性と、画素回路110に含まれるOLEDの輝度の特性とは、必ずしも一致しない。そこで、制御回路40は、映像データVidで指定される階調レベルに対応した輝度でOLEDを発光させるために、映像データVidの8ビットを、実施形態では例えば10ビットにアップコンバージョンして、映像データVdataとして出力する。このため、10ビットの映像データVdataについても、階調レベルを指定することになる。すなわち、映像データVdataは、映像データVidで指定される階調レベルを変換した階調レベルを指定することになる。
【0025】
なお、アップコンバージョンには、入力である映像データVidの8ビットと、出力である映像データVdataの10ビットとの対応関係を予め記憶したルックアップテーブルが用いられる。
また、制御回路40は、各部を制御するために各種の制御信号を生成するが、詳細については後述する。
【0026】
走査線駆動回路120は、各種の信号を出力して、制御回路40による制御にしたがって、m行n列で配列する画素回路110を1行毎に駆動するための回路である。例えば走査線駆動回路120は、1、2、3、…、(m-1)、m行目の走査線12に、順に走査信号/Gwr(1)、/Gwr(2)、…、/Gwr(m-1)、/Gwr(m)を供給する。一般的には、(i-1)行目の走査線12に供給される走査信号が/Gwr(i-1)と表記される。走査線駆動回路120は、走査信号/Gwr(1)~/Gwr(m)の他にも各種の制御信号を出力する。
【0027】
データ信号出力回路50は、走査線駆動回路120によって選択(水平走査)された行に位置する画素回路110に向けて、輝度に応じた電圧の信号を出力する回路である。詳細には、データ信号出力回路50は、選択回路群52、第1ラッチ回路群54、第2ラッチ回路群56およびn個のDA変換回路500を含む。
選択回路群52は、n列と一対一に対応した選択回路520を含み、第1ラッチ回路群54は、n列と一対一に対応した第1ラッチ回路L1を含み、第2ラッチ回路群56は、n列と一対一に対応した第2ラッチ回路L2を含む。また、n個のDA変換回路500は、n列に一対一に対応する。
【0028】
すなわち、各例に対応して、選択回路520、第1ラッチ回路L1、第2ラッチ回路L2およびDA変換回路500の組が設けられる。ここで、j列目の選択回路520は、制御回路40から出力される映像データVdataのうち、j列目の映像データの選択をj列目の第1ラッチ回路L1に指示し、j列目の第1ラッチ回路L1は、当該指示にしたがって映像データVdataをラッチする。j列目の第2ラッチ回路L2は、j列目の第1ラッチ回路L1によりラッチされた映像データVdataを、制御回路40による制御にしたがって、後述する書込期間(C)においてj列目のDA変換回路500に出力する。
【0029】
j列目のDA変換回路500は、j列目の第2ラッチ回路L2から出力された10ビットの映像データVdataをアナログの信号に変換し、j列目のデータ信号出力線14cに出力する。換言すれば、データ信号出力線14cはデータ線14と一対一に対応して設けられ、j列目のDA変換回路500における出力端は、j列目のデータ信号出力線14cに接続される。
【0030】
補助回路60は、データ信号出力線14cと一対一に対応して設けられたトランジスター62の集合体である。j列目に対応するトランジスター62のソースノードは電位Vrefの給電線に接続され、トランジスター62のドレインノードは当該j列目のデータ信号出力線14cに接続される。また、各列におけるトランジスター62のゲートノードには、制御回路40から出力される制御信号/Grefが共通に供給される。
【0031】
n個の容量素子70は、データ信号出力線14cおよびデータ線14の組と一対一に対応して設けられる。詳細には、j列目の容量素子70の一端はj列目のデータ信号出力線14cに接続され、j列目の容量素子70の他端はj列目のデータ線14に接続される。
なお、映像データVdataは、映像データVidで指定される階調レベルに対応し、DA変換回路500は、当該映像データVdataをアナログ信号に変換し、当該アナログ信号が容量素子70を介し、データ信号としてデータ線14に供給される。このため、データ線14に供給されるデータ信号の電位は、映像データVidおよび映像データVdataで指定される階調レベルに対応することになる。
【0032】
初期化回路80は、データ線14に一対一に対応して設けられた、トランジスター82、84および86の組の集合体である。
j列目に対応するトランジスター82のソースノードは電位Velの給電線に接続され、トランジスター82のドレインノードは当該j列目のデータ線14に接続される。また、各列におけるトランジスター82のゲートノードには、制御回路40から出力される制御信号/Drstが共通に供給される。なお、電位Velは、電源電圧の高位電位として用いられる。
【0033】
j列目に対応するトランジスター84のソースノードは電位Viniの給電線に接続され、トランジスター84のドレインノードは当該j列目のデータ線14に接続される。また、各列におけるトランジスター84のゲートノードには、制御回路40から出力される制御信号/Giniが共通に供給される。
【0034】
j列目に対応するトランジスター86のソースノードは電位Vorstの給電線に接続され、トランジスター86のドレインノードは当該j列目のデータ線14に接続される。また、各列におけるトランジスター86のゲートノードには、制御回路40から出力される制御信号/Grstが共通に供給される。なお、電位Vorstは、例えば電位Gnd、または、当該電位Gndに近い低位の電位である。具体的には、電位Vorstは、仮にOLEDのアノードに給電された場合に、当該OLEDに電流が流れない程度の電位である。
【0035】
各列のデータ線14にはそれぞれ容量成分が寄生する。図では、当該容量成分が寄生容量72として表記されている。すなわち、当該寄生容量72は、電気的にみれば一端がデータ線14に接続され、他端が電位一定の給電線に接続された容量素子として表されている。
また、図において1、2、…、(n-1)、n列目におけるデータ線14の電位が、順にVd(1)、Vd(2)、…、Vd(n-1)、Vd(n)と表記される。一般的には、j列目におけるデータ線14の電位はVd(j)と表記される。
【0036】
図6は、電気光学装置10における制御回路40の構成を示すブロック図である。なお、図6では、制御回路40のうち、各種の制御信号を生成するための構成だけが示されており、映像データVidを映像データVdataに変換して出力するための構成や、データ信号出力回路50および走査線駆動回路120を制御するための構成が省略されている。
【0037】
この図に示されるように制御回路40は、判定部402、生成制御部404、信号生成部412、414、416および422を含む。
判定部402は、情報Ambで示される輝度および情報Tmpで示される温度に応じて、リセット動作を実行するか、または、リセット動作を実行しない(非リセット動作を実行する)かを判定し、当該判定内容を制御信号Crstの論理レベルで指定する。リセット動作は、特許請求の範囲でいう第1動作に相当し、非リセット動作は、特許請求の範囲でいう第2動作に相当する。
生成制御部404は、信号生成部412、414、416および422による制御信号の生成を制御する。詳細には、信号生成部412は制御信号/Drstを生成し、信号生成部414は制御信号/Giniを生成し、信号生成部416は、制御信号/Grstを生成し、信号生成部422は制御信号/Grefを生成する。ただし、信号生成部416は、制御信号CrstがHレベルであれば、制御信号/Grstを強制的にHレベルとする。また、制御信号/Drst、/Gini、/Grstおよび/Grefの具体的な信号波形については後述する。
【0038】
図7は、判定部402における判定を示す図である。判定部402は、情報Ambで示される輝度および情報Tmpで示される温度を判定して、次のような論理レベルの制御信号Crstを出力する。すなわち、判定部402は、情報Ambで示される輝度が閾値Lth未満であって、かつ、情報Tmbで示される温度が閾値Tth未満であれば、制御信号CrstをLレベルとし、それ以外であれば、制御信号CrstをHレベルとする。
【0039】
ここで、制御信号Crstは、リセット動作を実行するか、または、非リセット動作を実行するか指定する。すなわち、検出された輝度が閾値Lthよりも暗く、かつ、検出された温度が閾値Tth未満であれば、リセット動作が指定され、それ以外であれば、非リセット動作が指定される。
【0040】
図8は、画素回路110を示す回路図である。m行n列で配列する画素回路110は電気的にみれば互いに同一である。このため、画素回路110については、i行j列に位置する画素回路110で代表させて説明する。
【0041】
図に示されるように、画素回路110は、OLED130と、p型のトランジスター121~124と、容量素子140とを含む。トランジスター121~124は、例えばMOS型である。なお、MOSとは、Metal-Oxide-Semiconductor field-effect transistorの略称である。
また、i行目の画素回路110には、当該i行目に対応した走査信号/Gwr(i)のほか、制御信号/Gel(i)、/Gcmp(i)が、走査線駆動回路120から供給される。
【0042】
制御信号/Gel(i)とは、1、2、…、(m-1)、m行目に対応して順に供給される制御信号/Gel(1)、/Gel(2)、…、/Gel(m-1)、/Gel(m)を一般化して表記したものである。同様に、制御信号/Gcmp(i)は、1、2、…、(m-1)、m行目に対応して順に供給される制御信号/Gcmp(1)、/Gcmp(2)、…、/Gcmp(m)、/Gcmp(m)を一般化して表記したものである。
【0043】
OLED130は、画素電極131と共通電極133とで発光機能層132を挟持した発光素子である。画素電極131はアノードとして機能し、共通電極133はカソードとして機能する。共通電極133は光透過性を有する。
OLED130において、アノードからカソードに向かって電流が流れると、アノードから注入された正孔とカソードから注入された電子とが発光機能層132で再結合して励起子が生成され、白色光が発生する。
【0044】
カラー表示とする場合、発生した白色光が、例えば図示省略された反射層と半反射半透過層とで構成された光共振器にて共振し、R(赤)、G(緑)、B(青)のいずれかの色に対応して設定された共振波長で出射する。光共振器から光の出射側には当該色に対応したカラーフィルターが設けられる。したがって、OLED130からの出射光は、光共振器およびカラーフィルターによる着色を順に経て、観察者に視認される。なお、光共振器は図示省略されている。また、電気光学装置10が単に明暗のみの単色画像を表示する場合には、上記光共振器およびカラーフィルターが省略される。
【0045】
i行j列における画素回路110のトランジスター121にあっては、ゲートノードgがトランジスター122のドレインノードに接続され、ソースノードsが、電位Velが供給される給電線116に接続され、ドレインノードdがトランジスター123のソースノードおよびトランジスター124のソースノードに接続される。容量素子140にあっては、一端がトランジスター121のゲートノードgに接続され、他端が給電線116に接続される。このため、容量素子140は、トランジスター121におけるゲートノードgおよびソースノードsの間の電圧を保持する。
なお、容量素子140の他端は、電位がほぼ一定に保たれていればよいので、電位Velの給電線116以外の、他の電位の給電線に接続されてもよい。
【0046】
実施形態において、容量素子140として、例えばトランジスターの半導体層(下部電極)とゲート電極層(上部電極)とでトランジスターのゲート絶縁層を挟持することによって形成される、いわゆるMOS容量が用いられる。なお、容量素子140としては、トランジスター121のゲートノードgの寄生容量を用いてもよいし、半導体基板において互いに異なる導電層で絶縁層を挟持することによって形成される、いわゆるメタル容量を用いてもよい。
【0047】
i行j列における画素回路110のトランジスター122にあっては、ゲートノードがi行目の走査線12に接続され、ソースノードが当該j列目のデータ線14に接続される。i行j列における画素回路110のトランジスター123にあっては、ゲートノードに制御信号/Gcmp(i)が供給され、ドレインノードが当該j列目のデータ線14に接続される。i行j列における画素回路110のトランジスター124にあっては、ゲートノードに制御信号/Gel(i)が供給され、ドレインノードがOLED130のアノードである画素電極131に接続される。
OLED130のカソードとして機能する共通電極133には、電位Vctが給電される。なお、電位Vctは、例えば電位Gnd、または、当該電位Gndに近い低位の電位である。
【0048】
本説明において「電気的に接続され」または単に「接続され」とは、2以上の要素間の直接的または間接的な接続または結合を意味し、例えば半導体基板において2以上の要素間が直接的ではなくても、異なる配線層およびコンタクトホールを介して結合されることも含む。
【0049】
制御回路40は、データ信号出力回路50、補助回路60、初期化回路80および走査線駆動回路120を介して画素回路110の駆動を制御する。このため、制御回路40、データ信号出力回路50、補助回路60、初期化回路80および走査線駆動回路120を含めて、画素回路110を制御する、広義の制御回路と呼ぶことがある。
【0050】
次に、電気光学装置10における動作について説明する。
【0051】
図9は、電気光学装置10の動作を説明するためのタイミングチャートである。電気光学装置10では、m行の走査線12が1つのフレーム(V)において1、2、3、…、m行目という順番で1行ずつ水平走査される。フレーム(V)とは、映像データVidで指定される画像の1コマを表示するのに要する期間をいう。フレーム(V)の時間的な長さは、垂直同期期間と同じであれば、例えば同期信号Syncに含まれる垂直同期信号の周波数が60Hzであれば、当該垂直同期信号の1周期分に相当する16.7ミリ秒である。また、1行分の水平走査に要する期間が水平走査期間(H)である。
【0052】
各行における水平走査期間(H)の動作は、画素回路110において共通である。また、ある水平走査期間(H)において走査される行の1~n列目の画素回路110の動作についても、ほぼ共通である。そこで以下については、i行j列における画素回路110について着目して説明する。
【0053】
電気光学装置10において、水平走査期間(H)は、時間の順で、初期化期間(A)、補償期間(B)および書込期間(C)に分けられる。このうち、初期化期間(A)は、さらに3つの初期化期間(A1)、(A2)および(A3)に分けられる。また、画素回路110の動作としては、初期化期間(A)、補償期間(B)および書込期間(C)とは別に、さらに発光期間(D)が加わる。
【0054】
初期化期間(A1)は、トランジスター121をオフ状態に設定するための期間である。初期化期間(A2)は、制御信号CrstがLレベルであり、リセット動作が指定されていれば、OLED130におけるアノード電位をリセットするための期間である。なお、制御信号CrstがHレベルであり、非リセット動作が指定されていれば、初期化期間(A2)において、OLED130のアノード電位はリセットされない。
初期化期間(A3)は、トランジスター121をオン状態にさせるための電位Viniを、ゲートノードgに供給するための期間である。
補償期間(B)は、トランジスター121のゲートノードgを、当該トランジスター121の閾値電圧に応じた電位に収束させるための期間である。
書込期間(C)は、トランジスター121のゲートノードgに、階調レベルに応じた電位を保持させる(書き込む)期間であり、詳細には、当該トランジスター121のゲートノードgを、閾値電圧に対応した電位からOLED130に流す電流に応じた電圧分だけ変化させるための期間である。
発光期間(D)は、書込期間(C)に保持されたゲートノードgの電位に応じた電流をOLED130に流して発光させるための期間である。
【0055】
本説明において、トランジスターの「オン状態」とは、当該トランジスターにおけるソースノードおよびドレインノードの間が電気的に閉じて低インピーダンス状態になることをいう。また、トランジスターの「オフ状態」とは、ソースノードおよびドレインノードの間が電気的に開いて高インピーダンス状態になることをいう。
【0056】
各水平走査期間(H)の初期化期間(A1)では、制御信号/DrstがLレベルであり、制御信号/GiniがHレベルであり、制御信号/GrefがLレベルである。このため、各列のトランジスター82がオン状態になり、各列のトランジスター84がオフ状態になり、各列のトランジスター62がオン状態になる。
初期化期間(A1)では、制御信号Crstに関係なく、制御信号/GrstがHレベルである。このため、各列のトランジスター86がオフ状態になる。
【0057】
また、i行目における水平走査期間(H)の初期化期間(A1)では、走査信号/Gwr(i)がLレベルであり、制御信号/Gcmp(i)がHレベルであり、制御信号/Gel(i)がHレベルである。このため、初期化期間(A1)では、i行j列の画素回路110においてトランジスター122がオン状態であり、トランジスター123がオフ状態であり、トランジスター124がオフ状態である。
【0058】
したがって、初期化期間(A1)では、図10に示されるように、i行j列の画素回路110では、電位Velが、トランジスター82、j列目のデータ線14およびトランジスター122を順に介して、容量素子140の一端、および、トランジスター121のゲートノードgに供給される。ゲートノードgが電位Velになると、ゲートノードgおよびソースノードsの間の電圧がゼロになるので、トランジスター121は強制的にオフ状態になる。
【0059】
なお、初期化期間(A1)において、j列目のデータ信号出力線14cは、トランジスター62のオン状態によって電位Vrefになる。
j列目のデータ線14が電位Velになるので、容量素子70の両端電圧は|Vel-Vref|になり、寄生容量72の一端は電位Velに保持される。電位Velは電源電圧の高位であるので、j列目における容量素子70および寄生容量72は、充電されることになる。
【0060】
各水平走査期間(H)において初期化期間(A2)では、制御信号/DrstがHレベルに変化し、制御信号/GiniがHレベルを維持し、制御信号/GrefがLレベルを維持する。このため、各列のトランジスター82がオフ状態に変化し、各列のトランジスター84がオフ状態を維持し、各列のトランジスター62がオン状態を維持する。
初期化期間(A2)において、制御信号/Grstのレベルは制御信号Crstによって指定される。具体的には、初期化期間(A2)において、制御信号CrstがLレベルであり、リセット動作が指定されれば、制御信号/GrstがLレベルに変化する。このため、各列のトランジスター86がオン状態に変化する。
【0061】
また、i行目における水平走査期間(H)の初期化期間(A2)では、走査信号/Gwr(i)がHレベルに変化し、制御信号/Gcmp(i)がLレベルに変化し、制御信号/Gel(i)がLレベルに変化する。このため、i行j列の画素回路110においてトランジスター122がオフ状態に変化し、トランジスター123がオン状態に変化し、トランジスター124がオン状態に変化する。
【0062】
リセット動作が指定された初期化期間(A2)では、トランジスター86がオン状態によって、j列目のデータ線14が電位Vorstになる。したがって、リセット動作が指定された初期化期間(A2)では、図11に示されるように、i行j列の画素回路110におけるOLED130のアノードが、トランジスター124、123、j列目のデータ線14およびトランジスター86を順に介して電位Vorstにリセットされる(リセット動作)。換言すれば、当該OLED130のアノードに、トランジスター124、123、j列目のデータ線14およびトランジスター86を順に介して所定の電位である電位Vorstが供給される。
【0063】
なお、初期化期間(A2)において、j列目のデータ信号出力線14cは、トランジスター62のオン状態が維持されることによって初期化期間(A1)から引き続いて電位Vrefである。
また、j列目のデータ線14が電位Vorstになるので、容量素子70の両端電圧は|Vorst-Vref|になり、寄生容量72の一端は電位Vorstに保持される。電位VelおよびVorstは、
Vel>Vorst
という関係にあるので、j列目における容量素子70および寄生容量72は放電されることになる。
【0064】
一方、初期化期間(A2)において、制御信号CrstがHレベルであり、非リセット動作が指定されれば、制御信号/GrstがHレベルに維持される。このため、各列のトランジスター86がオフ状態を維持する。
直前の初期化期間(A1)では、データ線14が電位Velであり、当該電位Velは容量素子70の他端および寄生容量72の一端に保持されている。このため、i行j列の画素回路110におけるOLED130には、図12に示されるように、容量素子70および寄生容量72から電荷が流出して、データ線14、トランジスター123、124を順に介してOLED130に向かう(非リセット動作)。
【0065】
容量素子70および寄生容量72から流出した電荷によって、OLED130の寄生容量が満充電になると、電荷が溢れてOLED130(の発光機能層132)に流れるので、当該OLED130が発光することがある。
【0066】
なお、電荷の流出によってj列目における容量素子70および寄生容量72は放電になるので、データ線14は電位Velから低下する。なお、この放電は、j列目のデータ線14を介してOLED130の寄生容量に電荷を分配する程度であり、微量である。
このため、i行目の水平走査期間のうち、非リセット動作が指定された初期化期間(A2)では、j列目のデータ線14およびi行j列におけるアノードは、厳密にいえば電位Vorstおよび電位Velの間の電位になるが、ほぼ電位Velであるといって差し支えない。
【0067】
各水平走査期間(H)において初期化期間(A3)では、制御信号/DrstがHレベルを維持し、制御信号/GiniがLレベルに変化し、制御信号/GrefがLレベルを維持する。このため、各列のトランジスター82がオフ状態を維持し、各列のトランジスター84がオン状態に変化し、各列のトランジスター62がオン状態を維持する。
初期化期間(A3)以降では、制御信号Crstに関係なく、制御信号/GrstがHレベルである。このため、各列のトランジスター86がオフ状態になる。
【0068】
また、i行目における水平走査期間(H)の初期化期間(A3)では、走査信号/Gwr(i)がLレベルに変化し、制御信号/Gcmp(i)がHレベルに変化し、制御信号/Gel(i)がHレベルに変化する。このため、i行j列の画素回路110においてトランジスター122がオン状態に変化し、トランジスター123がオフ状態に変化し、トランジスター124がオフ状態に変化する。
【0069】
したがって、初期化期間(A3)では、図13に示されるように、i行j列の画素回路110において、電位Viniが、トランジスター84、j列目のデータ線14およびトランジスター122を順に介して、容量素子140の一端、および、トランジスター121のゲートノードgに供給される。
【0070】
なお、初期化期間(A3)において、j列目のデータ信号出力線14cは、トランジスター62のオン状態が維持されることによって初期化期間(A1)から引き続いて電位Vrefである。
また、j列目のデータ線14が電位Viniになるので、容量素子70の両端電圧は|Vini-Vref|になり、寄生容量72の一端は電位Viniに保持される。電位ViniおよびVorstは、
(Vel>)Vini>Vorst
という関係にある。
このため、容量素子70および寄生容量72は、初期化期間(A2)においてリセット動作が指定されていれば、充電されることになり、非リセット動作が指定されていれば、ほぼ充放電なしである。
なお、図13では、容量素子70および寄生容量72が充電される場合を示している。
【0071】
初期化期間(A3)が終了すると補償期間(B)になる。各水平走査期間(H)において補償期間(B)では、制御信号/DrstがHレベルを維持し、制御信号/GiniがHレベルに変化し、制御信号/GrefがLレベルを維持する。このため、各列のトランジスター82がオフ状態を維持し、各列のトランジスター84がオフ状態に変化し、各列のトランジスター62がオン状態を維持する。
補償期間(B)では、制御信号Crstに関係なく、制御信号/GrstがHレベルである。このため、各列のトランジスター86がオフ状態を維持する。
【0072】
また、i行目の水平走査期間(H)の補償期間(B)では、走査信号/Gwr(i)がLレベルを維持し、制御信号/Gcmp(i)がLレベルに変化し、制御信号/Gel(i)がHレベルを維持する。このため、i行j列の画素回路110においてトランジスター122がオン状態を維持し、トランジスター123がオン状態に変化し、トランジスター124がオフ状態を維持する。
【0073】
補償期間(B)の始期においてi行目の画素回路110では、容量素子140によってトランジスター121のゲートノードgが電位Viniに保持されている。ゲートノードgが電位Viniになっているときに、トランジスター123がオン状態になると、トランジスター121がダイオード接続になる。
【0074】
したがって、補償期間(B)では、図14に示されるように、当該トランジスター121におけるゲートノードgおよびソースノードsの間の電圧は、当該トランジスター121の閾値電圧Vth(に近い電圧)に収束する。すなわち、トランジスター121におけるゲートノードgおよびデータ線14の電位は閾値相当電位(Vel-Vth)に収束する。
【0075】
i行目の補償期間(B)では、各列のトランジスター62がオン状態を維持するので、各列のデータ信号出力線14cが電位Vrefに保たれる。
また、データ線14が閾値相当電位(Vel-Vth)に収束するので、容量素子70の両端電圧は|Vel-Vth-Vref|になり、寄生容量72の一端は閾値相当電位(Vel-Vth)に保持される。
【0076】
補償期間(B)が終了すると書込期間(C)になる。各水平走査期間(H)において書込期間(C)では、制御信号/DrstがHレベルを維持し、制御信号/GiniがHレベルを維持し、制御信号/GrefがHレベルに変化する。このため、各列のトランジスター82がオフ状態を維持し、各列のトランジスター84がオフ状態を維持し、各列のトランジスター62がオフ状態に変化する。
また、書込期間(C)では、制御信号Crstに関係なく、制御信号/GrstがHレベルである。このため、各列のトランジスター86がオフ状態を維持する。
【0077】
i行目の水平走査期間(H)の書込期間(C)では、走査信号/Gwr(i)がLレベルを維持し、制御信号/Gcmp(i)がHレベルに変化し、制御信号/Gel(i)がHレベルを維持する。このため、i行j列の画素回路110においてトランジスター122がオン状態を維持し、トランジスター123がオフ状態に変化し、トランジスター124がオフ状態を維持する。
【0078】
書込期間(C)において、各列のトランジスター62がオフ状態に変化する一方で、各列のDA変換回路500には、i行目であって、列に対応する10ビットの映像データVdataが供給される。このため、j列目のDA変換回路500は、i行j列の階調レベルに応じた電位のデータ信号をデータ信号出力線14cに出力する。
【0079】
したがって、書込期間(C)では、図15に示されるように、j列目の容量素子70の一端は、電位Vrefから、i行j列に対応した階調レベルの電位に上昇する。この電位上昇は、当該容量素子70、データ線14およびトランジスター122を順に介してトランジスター121のゲートノードgに到達する。
【0080】
書込期間(C)におけるゲートノードgの電位変化分は、容量素子70の一端における電位上昇分に、「合成容量値」に対する容量素子70の容量値の比を、乗じた値である。ここでいう「合成容量値」とは、容量素子70、寄生容量72および容量素子140による合成容量の容量値である。なお、容量素子140の容量値は、他の容量値と比較して十分に小さい場合には、無視することができる。
【0081】
走査信号/Gwr(i)がHレベルに変化したときに、i行目の書込期間(C)が終了する。走査信号/Gwr(i)がHレベルになると、i行j列の画素回路110ではトランジスター122がオフ状態になるが、ゲートノードgの電位と電位Velとの差の電圧は、容量素子140に保持される。
【0082】
書込期間(C)の終了後、発光期間(D)になる。
i行目の発光期間(E)に至ると、制御信号/Gel(i)がLレベルに反転するので、トランジスター124がオン状態になる。
したがって、発光期間(D)では、図16に示されるように、OLED130には、容量素子140による保持されたゲートノードgの電位に応じた電流Ielがトランジスター121によって流れる。このため、当該OLED130が、当該電流Ielに応じた輝度で発光する。
【0083】
なお、図16は、i行目の書込期間(C)の終了後、直ちにi行目の発光期間(D)が開始する例であるが、i行目の書込期間(C)の終了後であって所定期間経過に、例えば1水平走査期間(H)経過後に、i行目の発光期間(D)が開始してもよい。
また、図9は、発光期間(D)が連続した例であるが、制御信号/Gel(i)がLレベルになる期間は、間欠的であってもよいし、輝度の調整に応じて変化させてもよいし、情報Ambで示される輝度に応じて調整されてもよい。また、発光期間(D)における制御信号/Gel(i)のレベルについては、HレベルとLレベルとの中間的なレベルを用いてもよい。
【0084】
i行目の水平走査期間(H)において、1~n列の画素回路110について同様な動作が実行される。また、図16では、i行目の水平走査期間(H)について着目し、当該水平走査期間(H)の動作について説明したが、同様な動作は、1、2、3、…、m行目の水平走査期間(H)について順次実行される。
【0085】
i行j列の画素回路110にけるゲートノードgの電位は、補償期間(B)における閾値相当電位から、i行j列の階調レベルに応じて変化させた電位である。同様な動作が他の画素回路110でも実行されるので、実施形態では、m行n列のすべての画素回路110にわたってトランジスター121の閾値が補償された状態で、OLED130に階調レベルに応じた電流が流れることになる。したがって、本実施形態では、輝度のばらつきが小さくなる結果、高品位な表示が可能になる。
【0086】
OLED130のアノードを放電させるリセット動作が行われる理由は主に次の通りである。OLED130では、アノードである画素電極131とカソードである共通電極133とで発光機能層132が挟持されるので、当該OLED130には容量が寄生する。上述したように補償期間(B)においてトランジスター121のゲートノードgおよびドレインノードd(トランジスター124のソースノード)は、閾値相当電位になる。次に、書込期間(C)において、トランジスター121のゲートノードgに、階調レベルに応じた電位が供給される。
【0087】
仮に、最低階調の黒レベル(最も暗いレベル)がゲートノードgに供給された場合、当該ゲートノードgは、電位Velであることが理想であるが、実際には、電位Velよりも低い電位になる。このため、発光期間(D)においてトランジスター124がオン状態になると、トランジスター121ではソースノードsからドレインノードdに向かってリーク電流が流れる。OLED130の寄生容量に蓄積された電荷を予めリセットしておかないと、リーク電流によって、やがて当該寄生容量が満充電になり、OLED130に電流が流れ始めて、発光してしまう現象が発生する。この現象は、黒レベルが指定、すなわち発光しない輝度が指定されているにもかかわらず、わずかに発光して、あたかも黒が浮いたように視認されることから、黒浮きと呼ばれる。
【0088】
そこで、発光期間(D)よりも前の初期化期間(A2)において、OLED130のアノードを電位Vorstにして、予めアノードを放電させ、当該OLED130の寄生容量に蓄積された電荷をリセットしている。これにより、発光期間(D)においてトランジスター121にリーク電流が流れても、当該リーク電流によってOLED130の寄生容量が満充電にならず、発光しないので、いわゆる黒浮きを抑えることできる。
しかしながら、リセット動作が行われる構成は、低消費電力化を阻害する要因になり得る。
【0089】
図17は、データ線14の電位が、書込期間(C)、初期化期間(A1)、(A2)および(A3)においてどのように変化するかについて、リセット動作が指定される場合(制御信号CrstがLレベルである場合)と、非リセット動作が指定される場合(制御信号CrstがHレベルである場合)とで分けて示す図である。
リセット動作が指定される場合、データ線14は、初期化期間(A1)、(A2)および(A3)において順に、電位Vel、VorstおよびViniなる。上述したように、電位は、 Vel>Vini>Vorst
という関係にある。
また、初期化期間(A1)の前におけるデータ線14の電位は、書込期間(C)における1つ前の行の階調レベルに応じた電位であって、電位Viniと電位Velとの間の電位である。
このため、容量素子70および寄生容量72は、書込期間(C)から初期化期間(A1)までにおいて上矢印で示されるように充電になる。容量素子70および寄生容量72は、初期化期間(A1)から初期化期間(A2)までにおいて下矢印で示されるように放電になり、初期化期間(A2)から初期化期間(A3)までにおいて充電になる。
【0090】
非リセット動作が指定される場合、データ線14は、初期化期間(A1)、(A2)および(A3)において順に、電位Vel、VelおよびViniなる。
このため、容量素子70および寄生容量72は、書込期間(C)から初期化期間(A1)までにおいて充電になるが、初期化期間(A1)から(A2)までにおいて充放電がほとんど発生せず、初期化期間(A2)から(A3)までにおいて放電になる。
【0091】
したがって、容量素子70およびデータ線14の寄生容量72の充放電で消費される電力は、非リセット動作の方が、リセット動作と比べて少ない。ただし、非リセット動作では、上述したように黒浮きが発生する。
【0092】
この黒浮きがどのように視認されるかについて図18を参照して説明する。
ヘッドセット300の装着者は、電気光学装置10Lおよび10Rによる表示画像Dspを、外の様子Ospと重ね合わせて視認する。なお、表示画像Dspは、様子Ospと比べて狭い範囲で視認される。また、図18は、表示画像Dspとして、電池残量および現在時刻のテキストが表示された例である。
表示画像Dspにテキストが表示される場合、視認性を高めるために、当該テキストの表示色として、例えば白(明)、黒(暗)または背景色に対する補色が選択される。図18では、テキストの表示色として、背景色が黒(暗)であれば白が選択され、背景色が白(明)であれば黒が選択された例である。
【0093】
図18の上欄に示されるように、背景が黒(暗)であって、リセット動作が行われる場合に、黒浮きが発生しないので、表示画像Dspと様子Ospとの差が視認されにくい。
図18の中欄に示されるように、背景が黒(暗)であって、非リセット動作が行われる場合に、黒浮きが発生する。具体的には、表示画像Dspが様子Ospよりも明るくなって、矩形の窓のように、視認される。
なお、図18の下欄に示されるように、背景が白(明)であれば、リセット動作または非リセット動作に関係なく、表示画像Dspと様子Ospとの差が視認されにくい。電気光学装置10Lおよび10Rが明るい画像を表示する場合、黒浮きが発生しても、明度の差として視認されにくいためである。
【0094】
第1実施形態では、情報Ambで示される輝度が閾値Lth未満であって、かつ、情報Tmbで示される温度が閾値Tth以上であれば、非リセット動作が実行され、それ以外であれば、リセット動作が実行される。
このため、第1実施形態によれば、周辺の輝度や温度などの環境に応じてリセット動作または非リセット動作が実行されるので、黒浮きの視認または温度上昇、が適切に抑えられる。
【0095】
第1実施形態では、初期化期間(A2)において各列のトランジスター86をオフ状態にして、非リセット動作を行う構成としたが、これ以外の構成でもよい。そこで、非リセット動作を第1実施形態とは別の動作を行って、低消費電力化を図った第2実施形態について説明する。
【0096】
図19は、第2実施形態に係る電気光学装置10における制御回路40の構成を示すブロック図である。
図19で示される制御回路40が、図6で示される第1実施形態と相違する点は、判定部402による判定内容を示す制御信号Crstが信号生成部416のみならず、信号生成部412にも供給される点である。
【0097】
図20は、第2実施形態に係る電気光学装置10の動作を説明するためのタイミングチャートである。
第2実施形態における信号生成部412は、制御信号CrstがLレベルであれば、第1実施形態と同様に、初期化期間(A1)において制御信号/DrstをLレベルで出力し、他の期間において制御信号/DrstをHレベルで出力する。また、第2実施形態における信号生成部412は、制御信号CrstがHレベルであれば、全期間において制御信号/DrstをHレベルで出力する。
換言すれば、第2実施形態では、制御信号CrstがHレベルであり、非リセット動作が指定された場合に、初期化期間(A1)において制御信号/DrstがHレベルで出力される点においてのみ、第1実施形態と相違する。
そこで、第2実施形態では、主にこの相違点について説明する。
【0098】
第2実施形態において、制御信号CrstがLレベルであれば、i行目の水平走査期間(H)の初期化期間(A1)では、第1実施形態と同様に、各列のトランジスター82がオン状態になり、各列のトランジスター84がオフ状態になり、各列のトランジスター62がオン状態になる。また、第2実施形態の初期化期間(A1)では、制御信号CrstがHレベルであれば、各列のトランジスター86がオフ状態になる。
【0099】
i行目における水平走査期間(H)の初期化期間(A1)の直前は、(i-1)行目の水平走査期間(H)の書込期間(C)である。当該書込期間(C)においてj列目のデータ線14の電位は、i行(j-1)列の階調レベルに応じた電位であって、電位Viniと電位Velとの間の電位である。すなわち、i行目における水平走査期間(H)の初期化期間(A1)の直前において、当該データ線14、容量素子70の他端および蓄積容量72の一端は、i行(j-1)列の階調レベルに応じた電位に保持されている。
【0100】
i行目における水平走査期間(H)の初期化期間(A1)では、i行j列の画素回路110においてトランジスター122がオン状態であり、トランジスター123がオフ状態であり、トランジスター124がオフ状態である。
【0101】
したがって、制御信号CrstがHレベルであり、非リセット動作が指定された初期化期間(A1)において、j列目では、図21に示されるように、容量素子70および寄生容量72から電荷が流出して、j列目のデータ線14、トランジスター122を順に介して、i行j列の画素回路110におけるゲートノードgおよび容量素子140の一端に向かう。
なお、電荷の流出によってj列目における容量素子70および寄生容量72は放電になるので、データ線14の電位は低下する。ただし、この放電は、j列目のデータ線14を介して容量素子140の一端に電荷を分配する程度であり、微量であるので、データ線14の電位は変動しないといって差し支えない。
【0102】
第2実施形態において、制御信号CrstがHレベルである初期化期間(A2)では、第1実施形態と同様に、各列のトランジスター82がオフ状態になり、各列のトランジスター84がオフ状態になり、各列のトランジスター86はオフ状態であり、各列のトランジスター62がオン状態である。
【0103】
したがって、制御信号CrstがHレベルであり、非リセット動作が指定された初期化期間(A2)では、第1実施形態の図12に示されるように、j列目では、容量素子70および寄生容量72から電荷が流出して、j列目のデータ線14、トランジスター123、124を順に介して、OLED130のアノードに向かうが、この放電量は微量であるので、j列目のデータ線14の電位は、初期化期間(A1)からほとんど変化しない。
【0104】
なお、第2実施形態では、i行目の水平走査期間(H)の初期化期間(A3)において、図13に示されるように、電位Viniが、i行目のゲートノードgおよび容量素子140の一端に、トランジスター84、j列目のデータ線14およびトランジスター122を順に介して供給される点は、第1実施形態と同様である。
【0105】
図22は、第2実施形態においてデータ線14の電位が、書込期間(C)、初期化期間(A1)、(A2)および(A3)においてどのように変化するかについて、リセット動作が指定される場合と、非リセット動作が指定される場合とで分けて示す図である。
制御信号CrstがLレベルであってリセット動作が指定される場合、データ線14の電位変動は、第1実施形態と同様である。すなわち、容量素子70および寄生容量72は、書込期間(C)から初期化期間(A1)までにおいて充電になり、初期化期間(A1)から初期化期間(A2)までにおいて放電になり、初期化期間(A2)から初期化期間(A3)までにおいて充電になる。
【0106】
制御信号CrstがHレベルであって非リセット動作が指定される場合、データ線14の電位は、初期化期間(A1)において前の書込期間(C)から変動せず、初期化期間(A2)においても変動せず、初期化期間(A3)において電位Viniになる。
このため第2実施形態では、書込期間(C)から初期化期間(A1)および(A2)までにおいて充放電がほとんど発生せず、初期化期間(A2)から(A3)までにおいて放電になる。
【0107】
したがって、第2実施形態の非リセット動作では、書込期間(C)から初期化期間(A1)までに充電がほとんど発生しない分だけ、第1実施形態の非リセット動作と比べて低消費電力化を図ることができる。
また、第2実施形態では、第1実施形態と同様に、情報Ambで示される輝度が閾値Lth未満であって、かつ、情報Tmbで示される温度が閾値Tth未満であれば、リセット動作が実行され、それ以外であれば、非リセット動作が実行される。このため、第2実施形態によれば、環境に応じてリセット動作または非リセット動作が実行されるので、黒浮きの視認、または、温度上昇、が適切に抑えられる。
【0108】
上述した第1実施形態および第2実施形態(以下、実施形態等と呼ぶ)では、以下のように種々の変形または応用が可能である。
【0109】
実施形態等では、光センサー330および温度センサー90を有し、情報Ambで示される輝度が閾値Lth未満であって、かつ、情報Tmbで示される温度が閾値Tth未満であれば、リセット動作を実行し、それ以外であれば、非リセット動作を実行する構成とした。この構成に限られず、どちらか一方のセンサーのみを有する構成としてもよい。
【0110】
詳細には、光センサー330を有し、温度センサー90を有しない構成であれば、情報Ambで示される輝度が閾値Lth未満であれば、リセット動作を実行し、輝度が閾値Lth以上であれば、非リセット動作を実行すればよい。この構成によれば、暗環境では、黒浮きの発生が抑えられる一方で、明環境では、消費電力が低減される。
また、光センサー330を有さず、温度センサー90を有する構成であれば、情報Tmbで示される温度が閾値Tth未満であれば、リセット動作を実行し、情報Tmbで示される温度が閾値Tth以上であれば、非リセット動作を実行すればよい。この構成によれば、電気光学装置10において温度上昇が発生していなければ、黒浮きの発生が抑えられる一方で、温度上昇が発生していれば、消費電力が低減されて、温度上昇が抑えられる。
【0111】
温度センサー90は、電気光学装置10に内蔵される構成に限られず、電気光学装置10とは別体の構成であってもよい。
【0112】
実施形態等において、発光素子の一例としてOLED130を例示して説明したが、他の発光素子を用いてもよい。例えば発光素子としてLEDを用いてもよいし、照明機構を併用した液晶素子であってもよい。すなわち、発光素子としては、データ線14の電圧に応じた光学状態になる電気光学素子であればよい。
実施形態等では、DA変換回路500として10ビットの変換例を示したが、これに限られない。
【0113】
トランジスター64、82、84、86、121~124等のチャネル型は、実施形態等に限定されない。また、これらのトランジスター等は、適宜チャネルを変更してもよいし、適宜トランスミッションゲートに置き換えてもよい。
【0114】
また、実施形態等では、電子機器の一例として、電気光学装置10を含むヘッドマウントディスプレイ・システム1を例示したが、これに限られず、ビデオカメラやレンズ交換式のデジタルカメラなどにおける電子式ビューファインダー、携帯情報端末、腕時計の表示部、投写式プロジェクターのライトバルブなどにも適用可能である。
【0115】
以上に例示した形態から、例えば以下の態様が把握される。
【0116】
ひとつの態様(態様1)に係る電気光学装置は、周辺光の輝度を検出する光センサー、または、温度を検出する温度センサーと、データ線と走査線とに対応して設けられる画素回路と、前記画素回路を制御する制御回路と、を含み、前記画素回路は、二つの電極の間に流れる電流に応じた輝度で発光する発光素子と、ゲートノードの電位およびソースノードの電位の間の電圧に応じた電流を前記発光素子に流す駆動トランジスターと、を含み、前記制御回路は、書込期間において、前記ゲートノードに階調レベルに応じた電位を、前記データ線を介して供給し、前記書込期間よりも前の第1初期化期間において、第1動作または第2動作を、前記光センサーの検出結果、または、前記温度センサーの検出結果に応じて実行し、前記第1動作は、前記発光素子の一方の電極に、前記データ線を介して所定の電位を供給する動作であり、前記第2動作は、前記データ線に蓄積された電荷を、前記一方の電極に分配させる動作である。
【0117】
態様1によれば、第1初期化期間において、輝度または温度の環境に応じて第1動作または第2動作が実行される。第1動作では、黒浮きの視認を抑えることができ、また、第2動作では、電力の消費を抑えることができる。
なお、LED130が発光素子の一例であり、画素電極131が二つの電極のうちの一方の電極の一例であり、トランジスター121が駆動トランジスターの一例であり、初期化期間(A2)が第1初期化期間の一例である。
【0118】
態様1の具体的な態様2に係る電気光学装置は、前記光センサーおよび前記温度センサーの双方を有し、前記制御回路は、前記第1初期化期間において、第1動作または第2動作を、前記光センサーの検出結果および前記温度センサーの検出結果に応じて実行する。態様2によれば、輝度および温度の双方の環境に応じて第1動作または第2動作が実行される。
【0119】
態様1の別の具体的な態様3に係る電気光学装置において、前記制御回路は、前記第1初期化期間において前記第1動作を実行する場合、前記第1初期化期間よりも前の第2初期化期間において、前記ゲートノードに前記駆動トランジスターをオフ状態にさせるオフ電位を、前記データ線を介して供給し、前記第1初期化期間において前記第2動作を実行する場合、前記第2初期化期間において、前記データ線の寄生容量に蓄積された電荷を、当該データ線を介して前記ゲートノードに分配させる。
態様3によれば、第2初期化期間に第1動作が実行される場合には、駆動トランジスターを確実にオフ状態にすることができ、また、第2初期化期間に第2動作が実行される場合には、データ線の寄生容量による充放電を抑えることができる。
なお、初期化期間(A1)が、第2初期化期間の一例であり、電位Velがオフ電位の一例である。
【0120】
態様3の具体的な態様4に係る電気光学装置は、一端および他端を有し、一端が前記データ線に電気的に接続され、他端がオン電位を給電する給電線に電気的に接続されたスイッチング素子を有し、前記制御回路は、前記第1初期化期間後であって前記書込期間前の第3初期化期間において、前記スイッチング素子をオン状態に制御し、前記オン電位は、前記ゲートノードに供給されれば、前記駆動トランジスターをオン状態にさせる電位である。
態様4によれば、第3初期化期間において、スイッチング素子がオン状態になることによって、データ線の電位がオン電位になる。
なお、初期化期間(A3)が第3初期化期間の一例であり、トランジスター82がスイッチング素子の一例であり、電位Viniがオン電位の一例である。
【0121】
態様4の具体的な態様5に係る電気光学装置において、前記制御回路は、前記第3初期化期間後であって前記書込期間よりも前の補償期間において、前記駆動トランジスターのゲートノードを当該駆動トランジスターの閾値に相当する電位に収束させる。
態様5によれば、補償期間の前の第3初期化期間において、データ線がオン電位になっているので、補償期間においゲートノードを駆動トランジスターの閾値に相当する電位に収束させることが容易になる。
【0122】
態様1の別の具体的な態様6に係る電気光学装置において、前記制御回路は、前記書込期間において、前記ゲートノードに階調レベルに応じた電位を、カップリング容量および前記データ線を介して供給する。
態様6によれば、データ線の寄生容量のみならず、カップリング容量の放電量についても抑えることができる。なお、容量素子70がカップリング容量の一例である。
【0123】
態様7に係る電子機器では、態様1乃至6のいずれかに係る電気光学装置を含む。
【符号の説明】
【0124】
10…電気光学装置、12…走査線、14…データ線、14c…データ信号出力線、30…制御回路、50…データ信号出力回路、60…補助回路、62…トランジスター、70…容量素子、72…寄生容量、80…初期化回路、82、84、86…トランジスター、90…温度センサー、110…画素回路、120…走査線駆動回路、121~124…トランジスター、130…OLED、330…光センサー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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