IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

特開2024-116587液体吐出ヘッド、および液体吐出装置
<>
  • 特開-液体吐出ヘッド、および液体吐出装置 図1
  • 特開-液体吐出ヘッド、および液体吐出装置 図2
  • 特開-液体吐出ヘッド、および液体吐出装置 図3
  • 特開-液体吐出ヘッド、および液体吐出装置 図4
  • 特開-液体吐出ヘッド、および液体吐出装置 図5
  • 特開-液体吐出ヘッド、および液体吐出装置 図6
  • 特開-液体吐出ヘッド、および液体吐出装置 図7
  • 特開-液体吐出ヘッド、および液体吐出装置 図8
  • 特開-液体吐出ヘッド、および液体吐出装置 図9
  • 特開-液体吐出ヘッド、および液体吐出装置 図10
  • 特開-液体吐出ヘッド、および液体吐出装置 図11
  • 特開-液体吐出ヘッド、および液体吐出装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116587
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、および液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20240821BHJP
【FI】
B41J2/14 607
B41J2/14 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022276
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】塩沢 優
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼部 本規
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF09
2C057AG12
2C057AG44
2C057AG73
2C057AG75
2C057AN01
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】液体吐出ヘッドにおいて、封止基板の構成を好適化することが可能な技術を提供する。
【解決手段】液体吐出ヘッドは、圧電体と、圧電体と電気的に接続する上部電極および下部電極と、下部電極の下部に位置し圧電体の駆動によって振動する振動板と、振動板の振動によってノズルから液体を吐出するための圧力が液体に付与される圧力室、および、圧力室に対して隣接し、圧力室から伝搬した液体の振動を吸収する第1吸収室が設けられた圧力室基板と、上部電極の上部に位置し圧電体を覆うようにして設けられた封止基板とを有する。封止基板には、圧力室に対応し下部が開口し大気開放された圧力室側凹部と、第1吸収室に対応し下部が開口し大気開放されていない第1吸収室側凹部と、が設けられる。圧力室側凹部の深さをa、第1吸収室側凹部の深さをbとしたとき、a>bを満たす。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出ヘッドであって、
ノズルと、
電圧が印加されることで駆動される圧電体と、
前記圧電体の上部に位置し、前記圧電体と電気的に接続する上部電極と、
前記圧電体の下部に位置し、前記圧電体と電気的に接続する下部電極と、
前記下部電極の下部に位置し、前記圧電体の駆動によって振動する振動板と、
前記振動板の振動によって前記ノズルから液体を吐出するための圧力が液体に付与される圧力室、および、前記圧力室に対して隣接し、前記圧力室から伝搬した液体の振動を吸収する第1吸収室が設けられた圧力室基板と、
前記上部電極の上部に位置し、前記圧電体を覆うようにして設けられた封止基板と、を有し、
前記封止基板には、前記圧力室に対応し、下部が開口し、大気開放された圧力室側凹部と、前記第1吸収室に対応し、下部が開口し、大気開放されていない第1吸収室側凹部と、が設けられ、
前記圧力室側凹部の深さをa、前記第1吸収室側凹部の深さをbとしたとき、a>bを満たすことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
a>(1.1×b)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
a>(1.3×b)を満たすことを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
a<(1.8×b)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
a<(1.5×b)を満たすことを特徴とする請求項4に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記圧力室と前記圧力室側凹部の間には、前記圧電体、前記上部電極、前記下部電極、前記振動板のすべてが設けられ、
前記第1吸収室と前記第1吸収室側凹部の間には、前記圧電体、前記上部電極、前記下部電極と同じ材料で形成され前記下部電極と電気的に接続しない介在部材、前記振動板の少なくとも1つが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記第1吸収室と前記第1吸収室側凹部の間には、前記圧電体、前記上部電極、前記介在部材、前記振動板の全てが設けられていることを特徴とする請求項6に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記圧力室基板には、前記圧力室から伝搬した液体の振動を吸収する第2吸収室が更に設けられ、
前記封止基板には、前記第2吸収室に対応し、下部が開口し、大気開放されていない第2吸収室側凹部が更に設けられ、
前記圧力室と前記第1吸収室の並ぶ方向を第1方向としたとき、
前記圧力室と前記第1吸収室の前記第1方向における離間距離は、前記圧力室と前記第2吸収室の前記第1方向における離間距離よりも短いことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記圧力室、前記ノズル、前記第1吸収室、前記第2吸収室を有する個別流路を複数備え、
前記圧力室基板には、前記複数の個別流路に共通に連通し、前記第1吸収室に液体を供給する供給側共通流路と、前記複数の個別流路に共通に連通し、前記第2吸収室から液体を排出する排出側共通流路と、が更に設けられていることを特徴とする請求項8に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記第2吸収室側凹部の深さをcとしたとき、a>c>bを満たすことを特徴とする請求項8に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項11】
前記圧力室と前記第1吸収室の並ぶ方向を第1方向とし、前記第1方向と交差し、前記第1吸収室側凹部が延在する方向を第2方向としたとき、
前記第1吸収室側凹部の底面の一部の領域においてa>bを満たし、前記一部の領域は、前記第2方向に沿った前記第1吸収室側凹部の開口幅の中央部を含まないことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項12】
前記圧力室と前記第1吸収室の並ぶ方向を第1方向とし、前記第1方向と交差し、前記第1吸収室側凹部が延在する方向を第2方向としたとき、
前記第1吸収室側凹部は前記第2方向において複数に分割されて設けられ、前記第1吸収室側凹部の底面の一部の領域においてa>bを満たし、前記一部の領域は、前記第2方向に沿った前記第1吸収室側凹部の開口幅の中央部を含まないことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドから液体を吐出させる吐出動作を制御する制御部と、
を有することを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体吐出ヘッド、および液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の液体吐出ヘッドでは、圧力室と、圧力室内の液体の振動を吸収する吸収室とが、互いに別基板の離間した位置に設けられているため、圧力室における液体振動の吸収効率が低い。これに対し同一の圧力室基板の近接する位置に圧力室と吸収室を設ける構成が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-153926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成において、圧力室基板の上に積層される封止基板には、吸収室に対応する凹部と、圧力室に対応する凹部と、を設ける必要がある。このような構成において、封止基板の構成を好適化する技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本開示の第1の形態によれば、液体吐出ヘッドが提供される。この液体吐出ヘッドは、ノズルと、電圧が印加されることで駆動される圧電体と、前記圧電体の上部に位置し、前記圧電体と電気的に接続する上部電極と、前記圧電体の下部に位置し、前記圧電体と電気的に接続する下部電極と、前記下部電極の下部に位置し、前記圧電体の駆動によって振動する振動板と、前記振動板の振動によって前記ノズルから液体を吐出するための圧力が液体に付与される圧力室、および、前記圧力室に対して隣接し、前記圧力室から伝搬した液体の振動を吸収する第1吸収室が設けられた圧力室基板と、前記上部電極の上部に位置し、前記圧電体を覆うようにして設けられた封止基板と、を有し、前記封止基板には、前記圧力室に対応し、下部が開口し、大気開放された圧力室側凹部と、前記第1吸収室に対応し、下部が開口し、大気開放されていない第1吸収室側凹部と、が設けられ、前記圧力室側凹部の深さをa、前記第1吸収室側凹部の深さをbとしたとき、a>bを満たすことを特徴とする。
【0007】
本開示の第2の形態によれば、液体吐出装置が提供される。この液体吐出装置は、上記第1の形態における液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドから液体を吐出させる吐出動作を制御する制御部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の第1実施形態における液体吐出装置の概略構成を示す説明図である。
図2】液体吐出装置を示すブロック図である。
図3】液体吐出ヘッドの一部断面図である。
図4】液体吐出ヘッドの断面図であって、図3におけるIV-IV線断面図である。
図5】液体吐出ヘッドの断面図であって、図3におけるV-V線断面図である。
図6】液体吐出ヘッドの断面図であって、図3におけるVI-VI線断面図である。
図7】振動板と圧電素子、およびその近傍の一部を拡大した断面図である。
図8図7におけるVIII-VIII線断面模式図であって、第1コンプライアンスの撓みについて説明する図である。
図9図7におけるIX-IX線断面模式図であって、第1コンプライアンスの撓みについて説明する図である。
図10】振動板と圧電素子、およびその近傍の一部を拡大した断面図である。
図11】第2実施形態の液体吐出ヘッドにおいて、第1吸収室の周辺構成を模式的に示す断面図である。
図12】第3実施形態の液体吐出ヘッドにおいて、第1吸収室の周辺構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
A1.液体吐出装置1の構成:
図1は、本開示の第1実施形態としての液体吐出装置1の概略構成を示す説明図である。本実施形態において、液体吐出装置1は、液体の一例としてのインクを印刷媒体である印刷用紙PA(以下、単に「用紙PA」という)に吐出して画像を形成するインクジェット式プリンターである。液体吐出装置1は、用紙PAに代えて、樹脂フィルム、布帛等の任意の種類の媒体を、インクの吐出対象としてもよい。
【0010】
液体吐出装置1は、インクを吐出する液体吐出ヘッド10、インクを貯留する液体容器2、液体吐出ヘッド10を搭載するキャリッジ3、キャリッジ3を搬送するキャリッジ搬送機構4、用紙PAを搬送する媒体搬送機構5、及び、制御部30を備える。制御部30は、液体の吐出を制御する制御部である。
【0011】
液体容器2の具体的な態様としては、例えば、液体吐出装置1に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、及び、インクを補充可能なインクタンクが挙げられる。なお、液体容器2に貯留されるインクの種類は任意である。液体吐出装置1は、例えば、4色のインクに対応して複数の液体容器2を備える。4色のインクとしては、例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、及び、ブラックがある。液体容器2は、キャリッジ3に搭載されるものでもよい。
【0012】
液体吐出装置1は、インクを循環させる循環機構8を備える。循環機構8は、液体吐出ヘッド10にインクを供給する供給流路81と、液体吐出ヘッド10から排出されたインクを回収する回収流路82と、インクを移送するポンプ83と、を含む。
【0013】
キャリッジ搬送機構4は、キャリッジ3を搬送するための搬送ベルト4a及びモーターを有する。媒体搬送機構5は、用紙PAを搬送するための搬送ローラー5a及びモーターを有する。キャリッジ搬送機構4及び媒体搬送機構5は、制御部30によって制御される。液体吐出装置1は、媒体搬送機構5によって用紙PAを搬送させながら、キャリッジ搬送機構4によってキャリッジ3を搬送させて、用紙PAにインク滴を吐出して印刷する。
【0014】
図2は、液体吐出装置1を示すブロック図である。液体吐出装置1は、図2に示すように、リニアエンコーダー6を備える。キャリッジ3の位置を検出可能な位置に設けられている。リニアエンコーダー6は、キャリッジ3の位置に関する情報を取得する。リニアエンコーダー6は、キャリッジ3の移動に伴って、制御部30にエンコーダー信号を出力する。
【0015】
制御部30は、1又は複数のCPU31を含む。制御部30は、CPU31の代わりに、又は、CPU31に加えて、FPGAを備えるものでもよい。制御部30は、記憶部35を含む。記憶部35は、例えばROM36及びRAM37を備える。記憶部35は、EEPROM、又はPROMを備えていてもよい。記憶部35は、ホストコンピューターから供給される印刷データImgを記憶できる。記憶部35は、液体吐出装置1の制御プログラムを記憶する。
【0016】
CPUは、Central Processing Unitの略称である。FPGAは、field-programmable gate arrayの略称である。RAMは、Random Access Memoryの略称である。ROMは、Read Only Memoryの略称である。EEPROMは、Electrically Erasable Programmable Read-Only Memoryの略称である。PROMは、Programmable ROMの略称である。
【0017】
制御部30は、液体吐出装置1の各部の動作を制御するための信号を生成する。制御部30は、印刷信号SI及び波形指定信号dComを生成できる。印刷信号SIは、液体吐出ヘッド10の動作の種類を指定するためのデジタル信号である。印刷信号SIは、圧電素子20に対して駆動信号Comを供給するか否かを指定できる。波形指定信号dComは、駆動信号Comの波形を規定するデジタル信号である。駆動信号Comは、圧電素子20を駆動するためのアナログ信号である。
【0018】
液体吐出装置1は、駆動信号生成回路32を備える。駆動信号生成回路32は、制御部30と電気的に接続されている。駆動信号生成回路32は、DA変換回路を含む。駆動信号生成回路32は、波形指定信号dComにより規定される波形を有する駆動信号Comを生成する。制御部30は、リニアエンコーダー6からエンコーダー信号を受信すると、駆動信号生成回路32に、タイミング信号PTSを出力する。タイミング信号PTSは、駆動信号Comの生成タイミングを規定する。駆動信号生成回路32は、タイミング信号PTSを受信するごとに、駆動信号Comを出力する。
【0019】
駆動回路7は、制御部30及び駆動信号生成回路32と電気的に接続されている。駆動回路7は、印刷信号SIに基づいて、駆動信号Comを圧電素子20に供給するか否かを切り替える。駆動回路7は、制御部30から供給される印刷信号SI、ラッチ信号LAT、及び、チェンジ信号CHに基づいて、駆動信号Comが供給される圧電素子20を選択できる。ラッチ信号LATは、印刷データImgのラッチタイミングを規定する。チェンジ信号CHは、駆動信号Comに含まれる駆動パルスの選択タイミングを規定する。
【0020】
制御部30は、液体吐出ヘッド10によるインクの吐出動作を制御する。制御部30は、圧電素子20を駆動することにより、圧力室C内のインクの圧力を変動させて、ノズルNからインクを吐出する。圧電素子20、圧力室C、ノズルN等の詳細構成については後述する。制御部30は、印刷動作を行う際に、吐出動作を制御する。
【0021】
A2.液体吐出ヘッド10の構成:
次に、液体吐出ヘッド10の構成について説明する。図3は、液体吐出ヘッド10の一部断面図である。以下の説明において、互いに交差する3方向をX軸方向、Y軸方向、Z軸方向として説明する。液体吐出ヘッド10は、後述する供給側共通流路41、個別流路42、排出側共通流路43へと液体を循環させる循環方式を採用する。
【0022】
X軸方向は、図3における左右方向であり、互いに反対の方向であるX1方向(図3においては右方向)及びX2方向(図3においては左方向)を含む。Y軸方向は、互いに反対の方向であるY1方向及びY2方向を含む。Y1方向は、図3において、紙面奥行き方向である。Y2方向は、図3において紙面手前方向である。Z軸方向は、図3における上下方向であり、互いに反対の方向であるZ1方向(図3においては下方向)及びZ2方向(図3においては上方向)を含む。なお、以下、Z1方向を「下」として、Z2方向を「上」として説明することもある。
【0023】
X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに直交している。Z軸方向は、通常上下方向に沿う方向であるが、Z軸方向は、上下方向に沿う方向でなくてもよい。なお、以下の説明においては、Z1方向を「上」、Z2方向を「下」として説明する場合もある。
【0024】
本明細書では、「供給側」及び「排出側」との用語を用いる場合がある。「供給側」とは、液体の流路に関してノズルNよりも上流側を示す。また、ノズルNよりも上流側に関連するものを「供給側」という場合がある。また、ノズルNよりも下流側に関連するものを「排出側」という場合がある。
【0025】
液体吐出ヘッド10は、ノズル基板21、連通板22、圧力室基板23、振動板24、封止基板25、及び圧電素子20を備える。また、液体吐出ヘッド10は、COF60を備える。COFは、Chip on Filmの略称である。COF60は、制御部30と液体吐出ヘッド10とを電気的に接続するための複数の配線が形成された実装部品である。COF60は、「配線基板」に相当する。
【0026】
さらに、液体吐出ヘッド10は、供給側共通流路41、複数の個別流路42、排出側共通流路43、複数の圧力室C、第1吸収室44、第2吸収室45、第1コンプライアンス51、第2コンプライアンス52、第3コンプライアンス53、および第4コンプライアンス54、を有する。なお、複数の個別流路42および複数の圧力室Cは、Y軸方向に沿って配列されているため、図3では、それぞれ一つずつのみ表されている。本実施形態では、液体の一例であるインクを吐出する液体吐出ヘッド10について説明する。液体は、インクに限定されず、液体吐出ヘッド10は、その他の液体を吐出することができる。
【0027】
ノズル基板21、連通板22、圧力室基板23、振動板24、及び封止基板25の各厚さ方向は、Z軸方向に沿う。「Z軸方向」は、各基板23,24,25が積層される「積層方向」に相当する。ノズル基板21は、液体吐出ヘッド10の底部に配置される。ノズル基板21のZ2方向には、連通板22が配置される。連通板22のZ2方向には、圧力室基板23が配置される。言い換えると、連通板22は、圧力室基板23とノズル基板21の間に設けられる。圧力室基板23のZ2方向には、振動板24が設けられる。振動板24は、例えばSiOにて形成される。振動板24についての詳細は後述する。振動板24は、圧力室基板23と別の部材であり、圧力室基板23に接着されることで配置されても良いし、圧力室基板23のZ2方向の表面に熱酸化等の処理が行われることで形成されても良い。
【0028】
振動板24のZ2方向には、封止基板25が配置される。封止基板25は、振動板24、第1コンプライアンス51および第3コンプライアンス53、圧電素子15,16,20、及び圧力室基板23を覆う。封止基板25は、振動板24上に配置される。圧電素子20は、圧力室Cに対応して設けられている。
【0029】
[流路の説明]
まず、液体吐出ヘッド10内に形成される液体流路について説明する。液体流路は、図示しない供給口および排出口、供給側共通流路41、複数の個別流路42、および排出側共通流路43を含む。なお、供給側共通流路41と各個別流路42との境界には、図示しない周知の流路絞りが設けられている。
【0030】
供給側共通流路41は、複数の圧力室Cに対して共通に設けられている。「X軸方向」は、「圧力室Cと第1吸収室44の並ぶ方向」であり、「第1方向」に相当する。供給側共通流路41は、複数の圧力室Cに亘ってY軸方向に連続する。供給側共通流路41は、封止基板25に設けられた液室部61、圧力室基板23に設けられた液室部62、及び連通板22に設けられた液室部63を含む。これらの液室部61,62,63は、Z軸方向に連続する。
【0031】
第1吸収室44は、供給側の吸収室であり、圧力室CのX1方向に位置する。第1吸収室44は、圧力室Cの上流に連通する。第1吸収室44は、供給側共通流路41の一部を構成する。
【0032】
複数の個別流路42は、複数の圧力室Cに対してそれぞれ設けられており、Y軸方向に配列されている。個別流路42は、供給側共通流路41の下流に配置される。個別流路42は、圧力室基板23に設けられた液室部62の下流に連通する。個別流路42は、圧力室Cと、第1連通流路65と、第2連通流路66と、第3連通流路67と、を上流から順に有している。
【0033】
複数の圧力室Cには、第1連通流路65および第2連通流路66を介して複数のノズルNがそれぞれ連通する。各ノズルNは、各圧力室Cに対してZ1方向に位置する。複数の第1連通流路65は、Z軸方向に延在する。複数の第2連通流路66は、第1連通流路65のZ1方向の端部に接続し、X2方向に延在する。ノズルNは、第2連通流路66におけるX軸方向の略中央に位置する。複数の第3連通流路67は、第2連通流路66のX2方向の端部に接続し、Z2方向に延在する。
【0034】
排出側共通流路43は、複数の圧力室Cに対して共通に設けられている。排出側共通流路43は、複数の個別流路42に対して共通に連通する。排出側共通流路43は、個別流路42を介して、各圧力室Cと連通する。排出側共通流路43は、各個別流路42の下流に配置されている。
【0035】
排出側共通流路43は、Y軸方向に連続する。排出側共通流路43は、封止基板25に設けられた液室部71、圧力室基板23に設けられた液室部72、及び連通板22に設けられた液室部73を含む。これらの液室部71,72,73は、Z軸方向に連続する。なお、液室部61,71は、封止基板25に設けられた貫通孔により形成されている。
【0036】
[各基板の説明]
図4図6は、液体吐出ヘッド10の断面図であって、図4は、図3におけるIV-IV線断面図であり、図5は、図3におけるV-V線断面図であり、図6は、図3におけるVI-VI線断面図である。以下、図3図6を適宜参照して、液体吐出ヘッド10を構成する各基板の構造について説明する。図3に示すように、ノズル基板21には、ノズル基板21をZ方向に貫通するノズルNが形成されている。上述したように、液体吐出ヘッド10は、このノズルNを介して液体を吐出する。ノズル基板21には、複数のノズルNがY軸方向に沿って複数配列されることによって、ノズル列が形成されている。ノズル基板21は、例えば、ステンレス鋼等の金属、ポリイミド樹脂のような有機物、又はシリコン単結晶基板等により形成される。
【0037】
図3図5に示すように、圧力室基板23には、供給側液室部62と、第1吸収室44と、複数の圧力室Cと、第2吸収室45と、排出側液室部72と、が形成されている。圧力室C、各吸収室44,45、および各液室部62,72は、ともに、液体の流路の一部を構成する。圧力室C、各吸収室44,45、および各液室部62,72は、X軸方向に延在する。圧力室C、各吸収室44,45、および各液室部62,72は、圧力室基板23をZ軸方向に貫通する。圧力室C、各吸収室44,45、および各液室部62,72は、所定の容積を有する。
【0038】
X軸方向における圧力室Cと第1吸収室44との間には、圧力室基板23の一部として形成された、圧力室Cと第1吸収室44とを区画する区画部28が設けられている。なお、圧力室Cと第1吸収室44とは、区画部28が設けられない部分における連通路を介して、X軸方向に連通している。
【0039】
複数の圧力室Cは、Y軸方向に所定の間隔で配置されている。複数の圧力室Cは、Y軸方向において、第1吸収室44および第2吸収室45と同じ位置に配置されている。Y軸方向において対応する圧力室Cと第1吸収室44とは、隣接しており、X軸方向に連通している。供給側液室部62は、封止基板25に設けられた液室部61と、連通板22に設けられた液室部63とともに、供給側共通流路41を形成している。
【0040】
本実施形態の圧力室基板23は、シリコン単結晶基板により形成されている。他の実施形態では、圧力室基板23は、例えば、ステンレス鋼(SUS)やニッケル(Ni)などの金属、ジルコニア(ZrO)あるいはアルミナ(Al)を代表とするセラミック材料 、ガラスセラミック材料、酸化マグネシウム(MgO)、ランタンアルミン酸(LaAlO)のような酸化物等によって形成されてもよい。本実施形態では、圧力室Cおよび吸収室44,45は、例えば、圧力室基板23を異方性エッチングによって加工することで形成される。本実施形態では、圧力室Cおよび吸収室44,45の深さがそれぞれ異なるため、複数回に分けてエッチングを行うことで製造できる。なお、圧力室Cおよび吸収室44,45の機能の詳細については後述する。
【0041】
連通板22は、ノズル基板21と圧力室基板23との間に配置され、接着剤等によってノズル基板21上に固定されている。連通板22は、例えば、シリコン単結晶基板によって形成される。図3図6に示すように、連通板22には、供給側液室部63と、排出側液室部73と、第1連通流路65と、第2連通流路66と、第3連通流路67と、が形成されている。各液室部63,73、第1連通流路65、および第3連通流路67は、連通板22をZ方向に貫通して形成されている。また、第2連通流路66は、連通板22をZ方向に貫通することなく、連通板22の下面が窪んだ部分として形成されている。液室部73は、封止基板25に形成された液室部71、圧力室基板23に形成された液室部72とともに、排出側共通流路43を形成している。
【0042】
図3に示すように、封止基板25は、Z1方向の下面に凹部が設けられた部材である。凹部は、圧力室Cおよび各吸収室44,45のZ2側において、圧力室Cおよび各吸収室44,45に対向する位置に開口している。具体的には、本実施形態の封止基板25には、凹部として、圧力室側凹部75と、第1吸収室側凹部76と、第2吸収室側凹部77と、が設けられている。
【0043】
圧力室側凹部75は、圧力室Cと対向する位置に開口している。すなわち、圧力室側凹部75は、圧力室Cに対応し、下部が開口している。第1吸収室側凹部76は、第1吸収室44と対向する位置に開口している。すなわち、第1吸収室側凹部76は、第1吸収室44に対応し、下部が開口している。第2吸収室側凹部77は、第2吸収室45と対向する位置に開口している。すなわち、第2吸収室側凹部77は、第2吸収室45に対応し、下部が開口している。各凹部75,76,77の間は、封止基板25の一部として形成された壁部によって隔てられており、互いに連通していない。圧力室側凹部75は、封止基板25に設けられた図示しない大気連通孔を介して、外部と連通している。すなわち、圧力室側凹部75は大気開放されており、圧力室側凹部75内の圧力は大気圧に保たれる。他方、第1吸収室側凹部76,および第2吸収室側凹部77は、いずれも外部と連通しておらず、大気開放されていない。
【0044】
図7は、振動板24と圧電素子20,15、およびその近傍の一部を拡大した断面図である。図3図7に示すように、各凹部75,76,77の開口の深さ、すなわち、各凹部75,76,77のZ方向の寸法(以下、単に「深さ」という)はそれぞれ異なっている。圧力室側凹部75の深さをa、第1吸収室側凹部76の深さをb、第2吸収室側凹部の深さをcとしたとき、a>c>bの関係を満たす。すなわち、第1吸収室側凹部76の深さbが最も深く、次に第2吸収室側凹部77の深さcが深く、圧力室側凹部75の深さaが最も浅くなっている。
【0045】
深さa、bの大小関係においては、上述のようにa>bを満たすことが必要だが、以下を更に満たすことがより好ましい。第1吸収室側凹部76の深さを十分に浅くするためには、上述のようにa>bを満たすことが最低条件として必要だが、実際には圧力室側凹部75に比べてごくわずかだけ小さくなっているだけだと得られる作用効果は小さい。第1吸収室側凹部76は、ある程度、圧力室側凹部75よりも小さくなっていることが好ましい。具体的には、a>(1.1×b)となっていることが好ましく、a>(1.3×b)となっていることが更に好ましい。一方で、第1吸収室側凹部76が圧力室側凹部75に比べてあまりにも小さくなり過ぎると、1つの封止基板25の近接する領域に深さが全く異なる空間を設けられることになるので、剛性が低くなる、製造工程が煩雑になる等の問題が生じる。よって、第1吸収室側凹部76が圧力室側凹部75に比べて極端に小さくなることは避けた方が好ましい。具体的にはさらに、a<(1.8×b)となることが好ましく、a<(1.5×b)となることが更に好ましい。なお、本実施形態において、各深さa、b、cは、Y軸方向において一定である。
【0046】
図8は、図7におけるVIII-VIII線断面模式図であって、第1コンプライアンスの撓みについて説明する図である。換言すると、図8では、圧力室CのX軸方向の略中央部分をYZ平面で切ったときの断面図が表されている。図9は、図7におけるIX-IX線断面模式図であって、第1コンプライアンスの撓みについて説明する図である。図9では、第1吸収室44のX軸方向の略中央部分をYZ平面で切ったときの断面図が表されている。図8図9に示すように、第1吸収室側凹部76のY軸方向に沿う開口幅L2は、圧力室側凹部75のY軸方向に沿う開口幅L1よりも大きい。圧力室Cの開口幅L1は、解像度に応じて設計される。第1吸収室44の開口幅L2は、圧力を効率よく吸収するため、少なくとも圧力室Cの開口幅L1よりも大きく設計する必要がある。
【0047】
なお、図8図9は、後述する第1コンプライアンス51の振動吸収動作を説明する模式図でもあり、説明の便宜上、第1コンプライアンス51の構成については、振動板24や圧電素子20,15等の詳細については省略して簡略化した太線として図示している。また、縮尺についても実際とは異なっており、図8図9とを比較すると、図面上ではL2はL1の数倍程度の長さとなっているが、実際には、L2はL1の数百倍の長さである。なお、これらの点は、後述する図11図12についても同様である。
【0048】
また、各凹部75,76,77は、液体の流路と連通しておらず、凹部75,76,77には液体が流通しない。各凹部75,76,77のX軸方向の幅は、大きい順に圧力室側凹部75、第1吸収室側凹部76、第2吸収室側凹部77となっている。図4に示すように、圧力室側凹部75、第1吸収室側凹部76および第2吸収室側凹部77は、液体吐出ヘッド10のY軸方向の幅に亘って延在する。第1吸収室側凹部76および第2吸収室側凹部77のY軸方向の幅は同じである。「Y軸方向」は、「第1吸収室側凹部76が延在する方向」であり、「第2方向」に相当する。第2方向は、圧力室Cと第1吸収室44の並ぶ第1方向と交差する。
【0049】
図3に示すように、封止基板25のX軸方向の中央部よりもX2方向寄りの位置には、封止基板25をZ軸方向に貫通する貫通孔78が設けられている。貫通孔78には、上記COF60が挿入されている。上下方向(Z方向)に見たとき、COF60、圧力室C、第1吸収室44は、第1側から第2側に向かってこの順で並んで配置されている。X軸方向において、圧力室Cから第1吸収室44までの離間距離(流路長)は、圧力室Cから第2吸収室45までの離間距離(流路長)よりも短い。
【0050】
振動板24は、圧力室基板23上に積層されている。圧電素子15,16,20は、振動板24上に積層されている。複数の圧電素子20は、圧力室側凹部75内に位置する。圧電素子15は、第1吸収室側凹部76内に位置する。圧電素子16は、第2吸収室側凹部77内に位置する。圧電素子20は、液体吐出用の圧電素子である。
【0051】
各圧電素子15,16、20の詳細は後述するが、圧電素子20は、上下の電極を介して電圧が印加されることにより駆動するアクチュエーターである。一方、圧電素子15、16は、2つまたは1つの電極と圧電体を有する点では圧電素子20と略同様の構成であるが、流路内の液体に圧力を付与するものではなく、振動吸収をするためのものであるため、制御部30とは電気的に接続されておらず、駆動されない。なお、各圧電素子15,16,20の具体的な構成、およびその周辺の構成についての詳細は、図7図8を用いて後述する。
【0052】
[コンプライアンスの説明]
次に、第1コンプライアンス51~第4コンプライアンス54の構成について説明する。第1コンプライアンス51は、供給側の液体の振動を吸収するための吸収部である。第1コンプライアンス51は、振動板24と、圧電素子15と、を備える。図4に示すように、第1コンプライアンス51は、排出側共通流路43のY軸方向の幅に亘ってY軸方向に連続する。振動板24上に、Y軸方向の幅に亘ってY軸方向に連続する圧電素子15が形成されている。第1コンプライアンス51のX軸方向の幅W1は、圧電素子15のX軸方向における幅に相当する。振動板24は、液体の圧力を受けて変形可能である。振動板24は、液体の圧力によって変形し、第1吸収室44内の液体の圧力変動を吸収できる。圧電素子15は、Z軸方向に見て第1吸収室44に重なる位置に配置される。
【0053】
第2コンプライアンス52は、供給側の液体の振動を吸収するための吸収部である。第2コンプライアンス52は、連通板22のZ1方向に設けられる。第2コンプライアンス52は、供給側共通流路41内の液体の圧力変動を吸収する可撓性フィルムである。図3に示すように、第2コンプライアンス52は、連通板22の液室部63のZ1方向側の開口部を閉塞するように、連通板22の下面に設置されて、供給側共通流路41の壁面(具体的には底面)を構成する。
【0054】
ここで、圧力室CのZ方向における中心位置を通り、X軸とY軸とを含むXY平面上にある線B1を、圧力室Cの基準位置とする。圧力室Cと第1コンプライアンス51とのZ軸方向の距離D1は、圧力室Cと第2コンプライアンス52とのZ軸方向の距離D2よりも短い。距離D1は、圧力室Cの基準位置から振動板24の底面までの距離である。距離D2は、圧力室Cの基準位置から第2コンプライアンス52の上面までの距離である。なお、圧力室Cから第1コンプライアンス51までの流路長は、圧力室Cから第2コンプライアンス52までの流路長より短い。
【0055】
第2コンプライアンス52のZ軸方向の厚さは、第1コンプライアンス51のZ軸方向の厚さより薄い。第2コンプライアンス52のX軸方向の幅W2(図6参照)は、第1コンプライアンス51のX軸方向の幅W1(図4参照)よりも大きい。第1コンプライアンス51のY軸方向の幅と、第2コンプライアンス52のY軸方向の幅とは略同じである。
【0056】
上述のような第1コンプライアンス51および第2コンプライアンス52の物性や寸法等により、第2コンプライアンス52のコンプライアンス能力は、第1コンプライアンス51のコンプライアンス能力よりも大きい。コンプライアンス能力は、コンプライアンス量と同じ意味であり、以下の式(1)を用いて表現できる。
【数1】
【0057】
式(1)中、「ν」は、振動板24のポアソン比である。「ν」は、コンプライアンスを構成する材料の物性値である。「E」は、ヤング率である。「E」は、コンプライアンスを構成する材料の物性値である。
【0058】
「w」は、コンプライアンスが覆うX軸に沿う開口の長さである。「l」は、コンプライアンスが覆うY軸に沿う開口の長さである。「t」は、コンプライアンスの厚さである。なおここではw<lであるため上記の条件となるが、w>lの場合は「w」はY軸に沿う長さ、「l」はX軸に沿う長さとなる。
【0059】
第3コンプライアンス53は、排出側の液体の振動を吸収するための吸収部である。第3コンプライアンス53の構成は、第1コンプライアンス51と略同様であり、振動板24と、圧電素子16と、を備える。第3コンプライアンス53を構成する振動板24は、Y軸方向に連続する。第3コンプライアンス53のX軸方向の幅は、複数の圧電素子16のX軸方向における幅に相当する。振動板24は、液体の圧力を受けて変形可能である。振動板24は、液体の圧力によって変形し、第2吸収室45内の液体の圧力変動を吸収できる。
【0060】
振動板24上には、Y軸方向の幅に亘ってY軸方向に連続する圧電素子16が形成されている。圧電素子16は、Z軸方向に見て第2吸収室45に重なる位置に対応して配置される。
【0061】
第4コンプライアンス54は、排出側の液体の振動を吸収するための吸収部である。第4コンプライアンス54は、連通板22のZ1方向に設けられる。第4コンプライアンス54は、排出側共通流路43内の液体の圧力変動を吸収する可撓性フィルムである。第4コンプライアンス54は、連通板22の液室部73のZ1方向側の開口部を閉塞するように、連通板22の下面に設置されて、排出側共通流路43の壁面(具体的には底面)を構成する。
【0062】
ここで、圧力室Cと第3コンプライアンス53とのZ軸方向の距離は、圧力室Cと第1コンプライアンス51とのZ軸方向の距離D1と同じである。また、圧力室Cと第4コンプライアンス54とのZ軸方向の距離は、圧力室Cと第2コンプライアンス52とのZ軸方向の距離D2と同じである。すなわち、圧力室Cと第3コンプライアンス53とのZ軸方向の距離D1は、圧力室Cと第4コンプライアンス54とのZ軸方向の距離D2よりも短い。
【0063】
なお、上記各コンプライアンス51~54を形成する材料や、コンプライアンス51~54の厚み等を調整することによって、圧力室Cから伝搬した液体の振動を吸収するのに適した可撓性を有するように、コンプライアンス51~54を形成することが好ましい。なお、第1吸収室側凹部76及び第2吸収室側凹部77内に位置する圧電素子15,16は、圧力室側凹部75内の圧電素子20とは異なり圧力室内の液体に圧力を付与するものではないため、制御部30とは電気的に接続されていない。
【0064】
[圧電素子15,16,20および配線の構成]
図7は、振動板24と圧電素子20,15、およびその近傍の一部を拡大した断面図である。振動板24は、圧電素子20の駆動により振動する。図7に示すように、振動板24は、第1絶縁層241と第2絶縁層242との積層体で構成される。第1絶縁層241は、圧力室基板23に接触する。第2絶縁層242は、第1絶縁層241に対して圧力室基板23とは反対に位置する。
【0065】
第1絶縁層241は、二酸化シリコン(SiO)等の弾性材料で形成される弾性膜である。第2絶縁層242は、二酸化ジルコニウム(ZrO)等の絶縁材料で形成される。第1絶縁層241および第2絶縁層242の各々は、熱酸化またはスパッタリング等の公知の成膜技術により形成される。なお、所定の板厚の板状部材のうち圧力室Cに対応する領域について板厚方向の一部を選択的に除去することで、圧力室基板23と振動板24の一部または全部とを一体に形成することが可能である。
【0066】
封止基板25は、振動板24の上面に例えば接着剤13で固定される。圧電素子20は、概略的には、下部電極153と圧電体152と上部電極151とを、この順番で振動板24に積層した構造体である。上部電極151は、圧電体152の上部に位置する。下部電極153は、圧電体152の下部に位置する。
【0067】
下部電極153は、振動板24の上面に形成される。下部電極153は、圧電素子20ごとに相互に離間して形成された個別電極である。下部電極153には、電圧が変動する駆動信号が印加される。下部電極153は、相互に間隔をあけてY軸に沿って配列される。下部電極153は、例えば白金(Pt)またはイリジウム(Ir)等の導電材料で形成される。
【0068】
圧電体152は、下部電極153の上部に形成され、圧力室Cおよび第1吸収室44の上部に位置しており、かつ下部電極153に接触する。圧電体152は、複数の圧電素子20に亘りY軸に沿って連続する帯状の誘電膜である。圧電体152は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)等の公知の圧電材料で形成される。
【0069】
上部電極151は、圧電体152に接触する。上部電極151は、複数の圧電素子20に亘り連続するようにY軸に沿って延在する共通電極である。上部電極151は、圧力室Cの上部から第1吸収室44の上部まで一続きの部材で形成されている。上部電極151には、所定の基準電圧が印加される。基準電圧は一定の電圧であり、例えば接地電圧よりも高い電圧に設定される。すなわち、上部電極151には、例えば、電圧が一定である保持信号が印加される。上部電極151に印加される基準電圧と下部電極153に供給される駆動信号との差分に相当する電圧が圧電体152に印加される。駆動信号は、吐出量に応じて異なる。保持信号は、吐出量によらず一定であり、変動しない。なお、上部電極151には、接地電圧が印加されてもよい。また、上部電極151は、例えば白金(Pt)またはイリジウム(Ir)等の低抵抗な導電材料で形成される。
【0070】
下部電極153と上部電極151との間に電圧が印加されることで圧電体152が変形
することにより、圧電素子20は、振動板24を撓み変形させるエネルギーを生成する。圧電素子20が生成したエネルギーにより振動板24が振動することにより圧力室Cの圧力が変化し、圧力室C内のインクが図3に示すノズルNから吐出される。
【0071】
圧電素子15は、概略的には、介在部材154と圧電体152と上部電極151とを、この順番で振動板24に積層した構造体である。介在部材154は、圧電体152の下部に位置する。介在部材154は、相互に間隔をあけてY軸に沿って配列される。介在部材154は、下部電極153と同じ材料で形成されており、下部電極153とは電気的に接続していない。介在部材154は、第1吸収室44の上部に位置している。第1吸収室44の上部には、下部電極153は設けられていない。なお、製造工程において、下部電極153と介在部材154とは、同じ材料にて一続きで形成され、その後、圧電体152等の成膜前にエッチングにより電気的に遮断されることで構成される。
【0072】
第1吸収室44と第1吸収室側凹部76との間には、上記した通り、圧電体152、上部電極151、介在部材154、振動板24の全てが設けられている。
【0073】
次に、各電極151,153とCOF60とを電気的に接続する配線の構造について説明する。図7に示すように、配線は、上部電極配線11と、下部電極配線12と、を含む。上部電極配線11は、上部電極151の上部に位置し、上部電極151と図示しない外部電源とを電気的に接続する。下部電極配線12は、下部電極153と図示しない外部電源とを電気的に接続する。
【0074】
なお、上記図3において、各圧電素子20,15を構成する電極151,153や圧電体152および、各電極151,153とCOF60とを電気的に接続する配線の図示は省略している。また、図3図4は、液体吐出ヘッド10の全体の概要を説明するための図であり、圧電素子20,15,16の構成や、後述する配線を含む部分の詳細は、図7,および後述の図10の方がより適切である。
【0075】
下部電極配線12の平面視形状は、X軸に沿って延在する長手形状である。図7に例示される通り、下部電極配線12は、下部電極153の上面に接触する部分と、圧電体152の上面に接触する部分とを有する。また、下部電極配線12は、圧電体152のX2側の端に接触する。なお、図7においては、下部電極配線12のX2側の端についての図示を省略しているが、下部電極配線12は、X2方向へCOF60まで延びて接続されている。下部電極配線12は、下部電極153に駆動信号を印加する。下部電極配線12は、図3に示すCOF60に搭載された駆動回路から駆動信号が供給されるリード配線である。
【0076】
上部電極配線11は、上部電極151の上部に位置し、かつ、上部電極151に接触する。上部電極配線11は、上部電極151に基準電圧を印加する。上部電極配線11には、COF60を介して図示しない基準電圧が供給される。また、上部電極配線11が設けられることで、上部電極151における基準電圧の電圧降下が抑制される。また、上部電極配線11は、振動板24の振動を抑制するための錘としても機能する。
【0077】
図10は、振動板24と圧電素子16、およびその近傍の一部を拡大した断面図であって、排出側に設けられる第3コンプライアンス53周辺を示す図である。図10に示すように、第2吸収室45の上部には、振動板24、下部電極153、圧電体152、上部電極151、および上部電極配線11が、Z2方向へ以上の順番で積層されている。なお、上部電極151、下部電極153、および上部電極配線11のいずれも、どこにも電気接続されていない。しかし、圧電素子16が駆動されなければ、それらの一部は電気接続されていてもよい。
【0078】
[動作説明・液体の流れ]
液体容器2内の液体は、ポンプ83によって移送され、供給流路81内を流れて、図示しない供給口を通り、供給側共通流路41に流入する。供給側共通流路41内の液体は、第1吸収室44を通り、個別流路42の一部を構成する圧力室Cに供給される。圧力室C内の液体の一部は、ノズルNから吐出される。
【0079】
ノズルNから吐出されなかった液体は、第2連通流路66および第3連通流路67、個別流路42の一部を構成する第2吸収室45を通り、排出側共通流路43に流入する。排出側共通流路43内の液体は、図示しない排出口を通じて、回収流路82内に流入し、液体容器2に回収される。液体吐出ヘッド10では、このように液体が循環される。
【0080】
上述した圧力室Cは、振動板24の振動によって、圧力室C内の液体に圧力を付与する。振動板24は、圧電素子20の駆動によって振動する。具体的には、圧電体に電圧が印加されることによって、圧電体のうち第1電極と第2電極とによってZ方向に挟まれた部分である能動部に、圧電歪みが生じる。圧電素子20は、この圧電歪みによって、振動板24を撓むように振動させて圧力室の容積を変化させることで、圧力室C内の液体に圧力を付与する。なお、圧電体のうち、上部電極151と下部電極153とによってZ方向に挟まれない部分である非能動部では、圧電体に電圧が印加された場合であっても、上記の圧電歪みは生じない。つまり、第1吸収室44の上部には、下部電極153に代えて、下部電極153とは物理的かつ電気的に分離した介在部材154が設けられているのみであるため、第1吸収室44の上部には圧電歪みは生じない。
【0081】
液体吐出ヘッド10は、上述したように、圧力室Cにおいて液体に圧力を付与することによって、ノズルNから液体を吐出する。ここで、圧力室Cにおいて液体に圧力が付与された場合、圧力室C内の液体の一部は、圧力室Cよりも上流に位置する、複数の圧力室Cに共通の液室等に流れ、圧力室Cから液室等へと液体の振動が伝搬する。ここで、複数の圧力室Cにおいて液体に圧力が付与された場合、ある圧力室Cから液室等へと流れる液体は、例えば、他の圧力室Cから液室等へと流れる液体によって流通を阻害される等の影響を受ける。そのため、ある圧力室Cからの液体の振動の伝搬の態様が、他の圧力室Cからの液体の振動の伝搬の影響によって変化し、ある圧力室Cを介してノズルNから吐出される液体の品質の安定性が低下する場合がある。このような液体の振動は、各コンプライアンス51~54により好適に吸収される。
【0082】
第1コンプライアンス51では、図8図9に模式的に示すように、圧力室Cおよび第1吸収室44のそれぞれにおいて、開口幅L1,L2の中央を最大の撓み量として変形する。開口幅の中央での撓み量をYとすると、撓み量Yは以下の式(2)で表される。
【数2】
式(2)中、「P」は圧力、「L」は開口幅、「E」はヤング率、「I」は慣性モーメントである。
【0083】
ここで、原理的には、コンプライアンスの変形は、式(2)に示すように開口幅の3乗に比例するため、同じ圧力に対して、開口幅の大きい第1吸収室44側の第1コンプライアンス51の方が、圧力室C側の第1コンプライアンス51より大きく変形する。すなわち、圧力室Cでの開口幅L1の中央での撓み量をY11とし、第1吸収室44での開口幅L2の中央での撓み量をY12とすると、Y12の方がY11よりも大きい(Y12>Y11)。つまり、第1吸収室44の開口幅L2が圧力室Cの開口幅L1よりも大きいため、圧力室C側と第1吸収室44側とにおいて同じ膜構成である場合には、同一圧力に対しての変形量は第1吸収室44の方が大きくなる。
【0084】
このとき、大気開放されていない第1吸収室側凹部76の深さbが、圧力室側凹部75の深さaと同じ、もしくは大きい構成では、第1コンプライアンス51が変形した際に、封止空間としての第1吸収室側凹部76の底面(Z2方向の面であり実際には凹部76の天面)に張り付いてしまい、コンプライアンスとして正常に動作しなくなる虞がある。
【0085】
これは、吸収室側凹部76の容積が大きすぎることが要因と考えられる。ボイルシャルルの法則などからわかるように一定空間の圧力は容積に反比例する。したがって、吸収室側凹部76の容積が大きいほど、吸収室側凹部76から加わる圧力、すなわち第1コンプライアンス51を下側に押す力は小さくなるため、吸収室44内の液体の振動吸収により上側に向かった振動板に対して十分に反発することができないためであると考えらえる。このように、吸収室側凹部76の容積が大きい場合には、第1吸収室側凹部76内では、第1コンプライアンス51が上側へ撓んだ状態のまま下側へ戻りにくくなる。
【0086】
ここで、第1吸収室側凹部76の容積を小さくするには、ノズル列方向(Y軸方向、縦方向)や圧力室Cと第1吸収室44の並び方向(X軸方向、横方向)の幅を小さくすることが考えられる。しかし、縦方向×横方向の断面積が第1吸収室44内の液体と対向する部分となるため、これらを小さくすると、そもそもの吸収効率が低下してしまう。よって、第1吸収室側凹部76の深さを浅くすることで、容積を小さくすることが好ましい。
【0087】
本実施形態によれば、a>bの関係を満たしており、第1吸収室側凹部76の容積が小さくなるように考慮されているため、第1コンプライアンス51が封止空間である第1吸収室側凹部76の底面に張り付くことを効果的に抑制できる。
【0088】
上記第1実施形態の液体吐出ヘッド10および液体吐出装置1によれば、以下の効果を奏することができる。
【0089】
上記第1実施形態によれば、各凹部75,76,77の深さの関係において、第1吸収室側凹部76の深さbが最も浅く、次に第2吸収室側凹部77の深さcが浅く、圧力室側凹部75の深さaが最も深くなっている(a>c>b)。
【0090】
第1吸収室側凹部76は、圧力室側凹部75に比べて振動領域が大きく、それゆえ第1コンプライアンス51の撓み量も大きくなるため、第1吸収室側凹部76では第1コンプライアンス51が封止基板25に張り付いてしまう可能性が高い。第1コンプライアンス51が封止基板25に張り付いてしまうと、その後、振動板として正常に機能しない虞がある。この点において、第1実施形態では、第1吸収室側凹部76の深さbは圧力室側凹部75の深さaよりも浅く、第1吸収室側凹部76の容積がなるべく小さくなるように封止基板25が構成されているため、吸収効率を低下させることなく第1コンプライアンス51が封止空間である第1吸収室側凹部76の底面に張り付くことを抑制できる。
【0091】
なお、圧力室側凹部75は共振のため所定値にする必要がある。上記形態では、圧力室側凹部75の深さaは所定値を維持したまま、好適に第1コンプライアンス51の第1吸収室側凹部76での張り付きを抑制できる。
【0092】
また、上記第1実施形態では、圧力室側凹部75は大気開放されており、圧力室側凹部75内の圧力は大気圧に保たれる。他方、第1吸収室側凹部76,および第2吸収室側凹部77は、いずれも外部と連通しておらず、大気開放されていない。圧力室側凹部75は、大気開放されているため、複数の圧力室間で吐出圧力の変動が伝わること(以下、「クロストーク」という)を好適に抑制できる。
【0093】
上記第1実施形態では、第2吸収室45は、圧力室Cからの離間距離が第1吸収室44と比較して長いので圧力伝搬が小さい。よって第3コンプライアンス53の撓み量も第1吸収室44の第1コンプライアンス51ほどは大きくない。そのため、第2吸収室側凹部77では、第1吸収室側凹部76と比較して第3コンプライアンス53が凹部77の底面に張り付くリスクは小さい。よって、容積を小さくする必要性についても、第1吸収室側凹部76よりは小さい。よって、不要に第2吸収室側凹部77の深さcを浅くすることなく適度な深さとできる。
【0094】
なお、従来の一般的な構成では、圧力室側凹部と吸収室側凹部とを連通させて、共に閉空間とし大気開放させていなかった。しかし、ノズルの駆動数によっては、上記クロストークを抑制することが十分にできない虞があった。これを踏まえ、圧力室側凹部を大気に連通させ大気開放したところ、クロストークの問題は解消したが、圧力室側凹部と連通する吸収室側凹部まで大気開放されてしまい、そこで振動板コンプライアンスが封止基板に張り付いてしまうという問題が顕著に生じることを、本願発明者らは見出した。
【0095】
大気開放した吸収室側凹部において上記問題が生じる理由は、吸収室の振動板や圧電素子は圧力室と違い能動的な駆動は行わないため、自由端のような挙動を取り、吸収室側凹部の圧力低下に伴って上側に向かいやすくなるためだと考えられる。また、吸収室は圧力室と異なり、複数の圧力室に対して共通であるため、その振幅が大きくなることも一因だと考えられる。したがって、圧力室側凹部と吸収室側凹部を連通させず、圧力室側凹部は大気開放する一方で、吸収室側凹部は大気開放しない構成が好ましい。上記第1実施形態では、こうした構成を前提とした上で、さらに確実に各吸収室44,45に対応する各凹部76,77におけるコンプライアンス51,53の張り付きを抑制できる構成となっている。
【0096】
上記第1実施形態によれば、液体を供給する第1吸収室44の方が、液体を排出する第2吸収室45と比べて、圧力室Cからの距離が近く液体の振動影響を受けやすい。また、ノズルNからの排出分を考えると、第1吸収室44の方が第2吸収室45よりも流量が多いため、流量が多く振動影響がより顕著に表れる第1吸収室44において、第1コンプライアンス51の吸収室側凹部76での張り付きを抑制できる。
【0097】
上記第1実施形態によれば、第1吸収室44の上部には、下部電極153は設けられておらず、下部電極153と電気的に接続しないが、下部電極153と同じ材料で形成される介在部材154が設けられる。このため、圧力室Cと第1吸収室44の材料をなるべく揃えて弾性率や振動率を近づけることができ、第1吸収室44での吸収効率を向上させることができる。また、製造時において、第1吸収室44の上部の全てに対してエッチングする場合と比較して、不要なエッチングをする必要がなく、液体吐出ヘッド10の製造を容易にできる。
【0098】
また、圧電体152を焼成するときは、その下部にある材料に配向が影響を受ける。下部電極153に相当するものを省略してしまうと配向が所望のものからずれてくるため、下部電極153と同じ材料の介在部材154を残しておくのが好ましい。
【0099】
上記第1実施形態によれば、下部電極153は、X方向において第1吸収室44まで延びておらず遮断(断絶)されているため、上部電極151は第1吸収室44の上部まで一続きであっても第1吸収室44において圧電素子15は振動しない。このため、製造時において上部電極151に不要なエッチングをする必要がなく、液体吐出ヘッド10の製造を容易にできる。
【0100】
なお、圧電体152は、その厚みゆえに遮断することが製造上困難であり、エッチングの際に、圧力室C側の圧電体152の組成や構造が変化し想定した吐出特性を得られなくなる虞があることから、遮断するのは好ましくない。
【0101】
また、上記したように例えばIr(イリジウム)等の材料により形成される上部電極151は、圧電体152上をなるべく覆うことで圧電体152への水分混入を避ける目的もあることから遮断するのは好ましくない。また、上部電極151は、VBS(時間に寄らず一定の小電圧)が印加されるに過ぎず、たとえ吸収室44,45側に印加されても電気的ロスやノイズも小さい。
【0102】
一方、下部電極153はCOM(時間により変位する吐出のために圧力室を収縮・膨張させる波形信号)が印加されるが、時間により変位し、比較的電圧が大きいので、吸収室44,45側に印加すると電気的な無駄が大きく、圧力室C側に影響を及ぼす可能性もある。このため、下部電極153を遮断することが好ましい。
【0103】
上記第1実施形態によれば、圧電素子20,15,16の積層構造および、振動板24の構造は同じであるため、第2吸収室45、圧力室C、および第1吸収室44の材料をなるべく揃えて弾性率を近づけることができ、振動特性を均一にできる。
【0104】
さらに、第1コンプライアンス51および第3コンプライアンス53を、例えば、フォトレジストによるマスキングを利用したエッチング等の既知の方法を用いて作成することができる。例えば、圧力室側凹部75内の圧電素子20を含むアクチュエーターを構成する各部材を形成する際に、アクチュエーターを構成する各部材を形成するのと同様の方法を用いて、第1コンプライアンス51および第3コンプライアンス53を構成する各部材を形成できる。アクチュエーターを構成する部材を用いて第1コンプライアンス51および第3コンプライアンス53を簡易に製造できる。また、第1コンプライアンス51および第3コンプライアンス53を構成する部材とアクチュエーターを構成する部材とを、同様の製造方法によって製造することによって、液体吐出ヘッド10の製造工程をより簡略化できる。
【0105】
B.第2実施形態:
次に、本開示の第2実施形態について、図11を参照して説明する。なお、以下複数の実施形態において、上記第1実施形態と実質的に同様の構成については同様の符号を付し、説明は省略する。第2実施形態の液体吐出ヘッド10は、上記第1実施形態の液体吐出ヘッド10に対して、第1吸収室側凹部76の深さがY軸方向において一定ではない点が異なっている。
【0106】
図11は、第2実施形態の液体吐出ヘッド10において、第1吸収室44の周辺構成を模式的に示す断面図である。図11は、第1吸収室44のX軸方向幅の略中央部分をYZ平面で切ったときの断面図であり、第1実施形態の図9に相当する断面図である。図11に示すように、第1吸収室側凹部76の底面において、Y軸方向の開口幅L2の中央部には、周囲よりさらに深く凹んだ段部79が設けられている。「中央部」とは、開口幅L2の中心を含む部位である。本実施形態の「中央部」は、中心を含み、中心からY1方向およびY2方向に同じ幅を有している。段部のY軸方向の幅は、適宜設定可能であり、例えば全体の開口幅L2の1/4から1/2程度に設定できる。
【0107】
本第2実施形態のように、第1吸収室側凹部76の深さが場所によって異なる場合には、「第1吸収室側凹部76の深さ」は、第1吸収室側凹部76において最も浅いところの深さと定義する。よって、第2実施形態の第1吸収室側凹部76の深さbは、第1吸収室側凹部76の底部において段部79以外の部位80の深さである。段部79の深さは、圧力室側凹部75の深さaと同じである。なお、段部79の深さは、圧力室側凹部75の深さaと同じでなくてもよい。
【0108】
上記第2実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、段部79以外の部位80、すなわち開口幅の中央部を含まない部位は、段部79が設けられる部位と比較して封止基板25の厚みが確保されるため、封止基板25の剛性を高めることができる。また、段部79においては、圧力室側凹部75と同じ深さaであるため、第1コンプライアンス51が撓む最大値である開口幅L2の中央において、好適に第1コンプライアンス51の段部79に相当する底面への干渉を抑制できる。
【0109】
C.第3実施形態:
次に、本開示の第3実施形態について、図12を参照して説明する。上記第2実施形態では、第1コンプライアンス51は、排出側共通流路43のY軸方向の幅に亘ってY軸方向に連続するものとしたが、第3実施形態では、Y軸方向において複数(本実施形態では2つ)に分割されている点が異なっている。
【0110】
図12は、第3実施形態の液体吐出ヘッド10において、第1吸収室44の周辺構成を模式的に示す断面図である。図12は、第1吸収室44のX軸方向幅の略中央部分をYZ平面で切ったときの断面図であり、第1実施形態の図9に相当する断面図である。図12に示すように、第1吸収室側凹部76の底面において、各第1吸収室44のそれぞれのY軸方向の開口幅L3の中央部に対向する部位には、周囲よりさらに深く凹んだ段部79が設けられている。上記第2実施形態と同様に、段部79以外の部位80の深さbは、圧力室側凹部75の深さaより浅い。
上記第3実施形態によれば、上記第2実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0111】
D.他の形態:
(D1)上記各実施形態では、第1コンプライアンス51において、第1吸収室44と第1吸収室側凹部76との間には、圧電体152、上部電極151、介在部材154、振動板24の全てが設けられているものとしたが、これらのうちの一部を設ける構成としてもよい。第3コンプライアンス53についても同様である。
【0112】
(D2)上記各実施形態では、各凹部75,76,77の開口の深さにおいて、a>c>bの関係を満たすものとしたが、少なくとも、圧力室側凹部75と第1吸収室側凹部76の深さの関係において、a>bを満たしていればよい。よって、第1吸収室側凹部76の深さbが、圧力室側凹部75の深さaより浅く、例えば、第2吸収室側凹部77の深さcは、圧力室側凹部75の深さaもしくは第1吸収室側凹部76の深さbと同じでもよいし、深くても浅くてもよい。
【0113】
(D3)上記各実施形態の液体吐出装置1では、液体吐出ヘッド10に流入した液体が循環する循環ヘッドとしたが、液体が循環しない非循環ヘッドであってもよい。非循環ヘッドの場合、排出側共通流路43を備えないため、第2吸収室45や圧電素子16は備えず、圧電素子20,15を備える構成として実施できる。
【0114】
(D4)上記各実施形態の液体吐出装置1では、第1コンプライアンス51~第4コンプライアンス54までを設ける構成としたが、第1コンプライアンス51および第3コンプライアンス53のみを備える構成としてもよい。第2コンプライアンス52および第4コンプライアンス54を設けない場合には、当該コンプライアンス52,54の部分はノズル基板21で形成してもよい。
【0115】
(D5)上記第1実施形態の液体吐出装置1において、介在部材154は設けなくてもよい。
【0116】
(D6)上記各実施形態の液体吐出装置1では、上部電極151は、圧力室Cの上部から第1吸収室44の上部まで一続きの部材で形成されているものとしたが、分離していてもよい。また、上記第1実施形態では、図7に示すように、上部電極151および介在部材154を、第1吸収室側凹部76のX軸方向の幅の一部に重なるように設けたが、第1吸収室側凹部76のX軸方向の幅の全てに亘って存在するように設けてもよい。
【0117】
(D7)上記第3実施形態の液体吐出装置1では、第1コンプライアンス51は、排出側共通流路43のY軸方向において2つに分割されているものとしたが、3つ以上の複数に分割されていてもよい。コンプライアンスは、あまり細かく分割してしまうと変形が不十分となるため、コンプライアンスとしての振動吸収の役割を果たす程度の分割形態であればよい。
【0118】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0119】
(1)本開示の一形態によれば、液体吐出ヘッドが提供される。この液体吐出ヘッドは、液体吐出ヘッドであって、ノズルと、電圧が印加されることで駆動される圧電体と、前記圧電体の上部に位置し、前記圧電体と電気的に接続する上部電極と、前記圧電体の下部に位置し、前記圧電体と電気的に接続する下部電極と、前記下部電極の下部に位置し、前記圧電体の駆動によって振動する振動板と、前記振動板の振動によって前記ノズルから液体を吐出するための圧力が液体に付与される圧力室、および、前記圧力室に対して隣接し、前記圧力室から伝搬した液体の振動を吸収する第1吸収室が設けられた圧力室基板と、前記上部電極の上部に位置し、前記圧電体を覆うようにして設けられた封止基板と、を有し、前記封止基板には、前記圧力室に対応し、下部が開口し、大気開放された圧力室側凹部と、前記第1吸収室に対応し、下部が開口し、大気開放されていない第1吸収室側凹部と、が設けられ、前記圧力室側凹部の深さをa、前記第1吸収室側凹部の深さをbとしたとき、a>bを満たすことを特徴とする。
この形態によれば、第1吸収室側凹部の深さbが圧力室側凹部の深さaよりも浅く、第1吸収室側凹部の容積を小さくできるため、吸収効率を低下させることなく、例えば振動板により構成される振動吸収部材が、封止空間である第1吸収室側凹部の底面に張り付くことを抑制できる。このため、吸収室に対応する凹部と、圧力室に対応する凹部と、が設けられる封止基板の構成を好適化できる。
【0120】
(2)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、a>(1.1×b)を満たしてもよい。
【0121】
(3)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、a>(1.3×b)を満たしてもよい。
【0122】
(4)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、a<(1.8×b)を満たしてもよい。
【0123】
(5)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、a<(1.5×b)を満たしてもよい。
【0124】
(6)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記圧力室と前記圧力室側凹部の間には、前記圧電体、前記上部電極、前記下部電極、前記振動板のすべてが設けられ、前記第1吸収室と前記第1吸収室側凹部の間には、前記圧電体、前記上部電極、前記下部電極と同じ材料で形成され前記下部電極と電気的に接続しない介在部材、前記振動板の少なくとも1つが設けられてもよい。
【0125】
(7)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第1吸収室と前記第1吸収室側凹部の間には、前記圧電体、前記上部電極、前記介在部材、前記振動板の全てが設けられてもよい。この形態によれば、圧力室と圧力室側凹部の間と、第1吸収室と第1吸収室側凹部の間とに設けられる部材構成をなるべく揃えて弾性率を近づけることができ、振動特性を均一にできる。
【0126】
(8)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記圧力室基板には、前記圧力室から伝搬した液体の振動を吸収する第2吸収室が更に設けられ、前記封止基板には、前記第2吸収室に対応し、下部が開口し、大気開放されていない第2吸収室側凹部が更に設けられ、前記圧力室と前記第1吸収室の並ぶ方向を第1方向としたとき、前記圧力室と前記第1吸収室の前記第1方向における離間距離は、前記圧力室と前記第2吸収室の前記第1方向における離間距離よりも短くてもよい。
【0127】
(9)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記圧力室、前記ノズル、前記第1吸収室、前記第2吸収室を有する個別流路を複数備え、前記圧力室基板には、前記複数の個別流路に共通に連通し、前記第1吸収室に液体を供給する供給側共通流路と、前記複数の個別流路に共通に連通し、前記第2吸収室から液体を排出する排出側共通流路と、が更に設けられてもよい。
この形態によれば、液体を供給する第1吸収室の方が、液体を排出する第2吸収室と比べて、圧力室からの距離が近いため、振動の吸収効率がより良い構成とできる。また、ノズルからの排出分を考えると、第1吸収室の方が第2吸収室よりも流量が多いため、流量が多く振動影響がより顕著に表れる第1吸収室において、効率的に振動吸収を行うことができる。そして、撓みが大きくなると想定される第1吸収室の振動吸収部材が、第1吸収室側凹部の底面に張り付くことを抑制できる。
【0128】
(10)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第2吸収室側凹部の深さをcとしたとき、a>c>bを満たしてもよい。
一般に、液体を供給する第1吸収室の方が、液体を排出する第2吸収室と比べて、圧力室からの距離が近く液体の振動影響を受けやすい。また、ノズルからの排出分を考えると、第1吸収室の方が第2吸収室よりも流量が多い。このため、流量が多く振動影響がより顕著に表れる第1吸収室に対応する第1吸収室側凹部において、振動吸収部材の張り付きを抑制できる。
【0129】
(11)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記圧力室と前記第1吸収室の並ぶ方向を第1方向とし、前記第1方向と交差し、前記第1吸収室側凹部が延在する方向を第2方向としたとき、前記第1吸収室側凹部の底面の一部の領域においてa>bを満たし、前記一部の領域は、前記第2方向に沿った前記第1吸収室側凹部の開口幅の中央部を含まなくてもよい。
この形態によれば、開口幅の中央部を含まない一部の領域において、第1吸収室側凹部の底面の深さbが、圧力室側凹部の深さaよりも浅いため、第1吸収室側凹部の容積を小さくできる。さらに、中央部を含まない一部の領域は、中央部と比較して封止基板の厚みが確保されるため、封止基板の剛性を高めることができる。なお、中央部については、a>bを満たさないので、振動吸収部材変形時に第1吸収室側凹部との干渉を抑制できる。
【0130】
(12)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記圧力室と前記第1吸収室の並ぶ方向を第1方向とし、前記第1方向と交差し、前記第1吸収室側凹部が延在する方向を第2方向としたとき、前記第1吸収室側凹部は前記第2方向において複数に分割されて設けられ、前記第1吸収室側凹部の底面の一部の領域においてa>bを満たし、前記一部の領域は、前記第2方向に沿った前記第1吸収室側凹部の開口幅の中央部を含まなくてもよい。
この形態によれば、第2方向において複数に分割された第1吸収室側凹部を備える液体吐出ヘッドにおいて、振動吸収部材が第1吸収室側凹部の底面に張り付くことを好適に抑制できる。
【0131】
(13)本開示の他の形態によれば、液体吐出装置が提供される。この液体吐出装置は、上記第1の液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドから液体を吐出させる吐出動作を制御する制御部と、を有する。この形態によれば、液体吐出装置において、封止基板の構成を好適化できる。
【0132】
また、本開示は、インクジェット方式に限らず、インク以外の他の液体を吐出する任意の液体吐出装置にも適用することができる。例えば、以下のような各種の液体吐出装置に適用可能である。
(1)ファクシミリ装置等の画像記録装置。
(2)液晶ディスプレイ等の画像表示装置用のカラーフィルターの製造に用いられる色材吐出装置。
(3)有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイや、面発光ディスプレイ(Field Emission Display、FED)等の電極形成に用いられる電極材吐出装置。
(4)バイオチップ製造に用いられる生体有機物を含む液体を吐出する液体吐出装置。
(5)精密ピペットとしての試料吐出装置。
(6)潤滑油の吐出装置。
(7)樹脂液の吐出装置。
(8)時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を吐出する液体吐出装置。
(9)光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂液等の透明樹脂液を基板上に吐出する液体吐出装置。
(10)基板などをエッチングするために酸性又はアルカリ性のエッチング液を吐出する液体吐出装置。
(11)他の任意の微小量の液滴を吐出させる液体消費ヘッドを備える液体吐出装置。
【0133】
「液滴」とは、液体吐出装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう「液体」とは、液体吐出装置が消費できるような材料であれば良い。例えば、「液体」は、物質が液相であるときの状態の材料であれば良く、粘性の高い又は低い液状態の材料、及び、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような液状態の材料も「液体」に含まれる。また、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなども「液体」に含まれる。また、第1液体と第2液体との組み合わせの代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクと反応液との組み合わせのほか、以下のものが挙げられる。
(1)接着剤の主剤および硬化剤
(2)塗料のベース塗料および希釈剤や、クリア塗料および希釈剤
(3)細胞用インクの細胞を含有する主溶媒および希釈溶媒
(4)金属光沢感を発現するインク(メタリックインク)のメタリックリーフ顔料分散液および希釈溶媒
(5)車両用燃料のガソリン・軽油およびバイオ燃料
(6)薬品の薬主成分および保護成分
(7)発光ダイオード(LED)の蛍光体および封止材
【0134】
さらに、本開示は、上述した液体吐出ヘッド、液体吐出装置としての形態に限らず、液体吐出システムや、液体吐出装置を備える複合機等の種々の態様で実現可能である。
【符号の説明】
【0135】
1…液体吐出装置、2…液体容器、3…キャリッジ、4…キャリッジ搬送機構、4a…搬送ベルト、5…媒体搬送機構、5a…搬送ローラー、6…リニアエンコーダー、7…駆動回路、8…循環機構、10…液体吐出ヘッド、11…上部電極配線、12…下部電極配線、13…接着剤、15,16,20…圧電素子、21…ノズル基板、22…連通板、23…圧力室基板、24…振動板、25…封止基板、28…区画部、30…制御部、31…CPU、32…駆動信号生成回路、35…記憶部、36…ROM、37…RAM、41…供給側共通流路、42…個別流路、43…排出側共通流路、44…第1吸収室(供給側吸収室)、45…第2吸収室(排出側吸収室)、51…第1コンプライアンス、52…第2コンプライアンス、53…第3コンプライアンス、54…第4コンプライアンス、55,56…分割コンプライアンス、60…COF(配線基板)、61,62,63…供給側液室部、65…第1連通流路、66…第2連通流路、67…第3連通流路、71,72,73…排出側液室部、75…圧力室側凹部、76…第1吸収室側凹部、77…第2吸収室側凹部、78…貫通孔、79…段部、82…回収流路、83…ポンプ、111…本体配線部、112…接続配線部、113…開口部、151…上部電極、152…圧電体、153…下部電極、154…介在部材、241…第1絶縁層、242…第2絶縁層、C…圧力室、D1…距離、D2…距離、N…ノズル、PA…印刷用紙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12