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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116588
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】コークス炉の操業方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 33/10 20060101AFI20240821BHJP
【FI】
C10B33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022277
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】南里 功美
(72)【発明者】
【氏名】石原 征己
(72)【発明者】
【氏名】松村 吉哲
(72)【発明者】
【氏名】沖野 正夫
(72)【発明者】
【氏名】平川 翔悟
(72)【発明者】
【氏名】加藤 元
(72)【発明者】
【氏名】辻 幸大
(57)【要約】
【課題】コークスケーキと炉床との間の押出し抵抗を低減することができる、コークス炉の操業方法を提供すること。
【解決手段】コークス炉の炭化室1に石炭を装入する際に、炭化室1の炉床10の上に耐火性球状物2を設ける第1設置工程と、第1設置工程の後、耐火性球状物2の上に板状物3を設ける第2設置工程と、第2設置工程の後、板状物の上に石炭を設ける石炭装入工程と、を備える、コークス炉の操業方法
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉の炭化室に石炭を装入する際に、
前記炭化室の炉床の上に耐火性球状物を設ける第1設置工程と、
前記第1設置工程の後、前記耐火性球状物の上に板状物を設ける第2設置工程と、
前記第2設置工程の後、前記板状物の上に前記石炭を設ける石炭装入工程と、
を備える、コークス炉の操業方法。
【請求項2】
前記板状物は、前記コークス炉の乾留中に炭化する素材である、請求項1に記載のコークス炉の操業方法。
【請求項3】
前記耐火性球状物は、耐火温度が1250℃以上であり、直径の平均が1mm以上16mm以下のセラミックス製球状物である、請求項1に記載のコークス炉の操業方法。
【請求項4】
前記耐火性球状物は、長径Dに対する短径Dの比(D/D)で表される真球度が0.9以上である、請求項1に記載のコークス炉の操業方法。
【請求項5】
前記耐火性球状物は、圧潰強度が90N以上である、請求項1に記載のコークス炉の操業方法。
【請求項6】
前記耐火性球状物は、Si成分をSiOに換算して45質量%以上88質量%以下、Al成分をAlに換算して10質量%以上48質量%以下、その他の成分を2質量%以上7質量%以下の範囲で含有する、請求項1に記載のコークス炉の操業方法。
【請求項7】
前記板状物は、直方体の形状であり、幅が300mm以上、長さが1800mm以下及び厚さが18mm以上54mm以下である、請求項1に記載のコークス炉の操業方法。
【請求項8】
前記板状物は、木材である、請求項1に記載のコークス炉の操業方法。
【請求項9】
前記板状物を前記耐火性球状物の上に設ける前に、あらかじめ水に濡らしておく、請求項1~8のいずれか1項に記載のコークス炉の操業方法。
【請求項10】
前記第1設置工程では、前記炭化室の炉頂の装炭孔及び窯口の少なくとも一方から前記耐火性球状物を投入する、請求項9に記載のコークス炉の操業方法。
【請求項11】
前記第2設置工程では、前記板状物を、押出機側の窯口より、2枚を2段に重ねて計4枚あるいは3枚を2段に重ねて計6枚あるいは4枚を2段に重ねて計8枚置く、請求項9に記載のコークス炉の操業方法。
【請求項12】
前記第1設置工程では、前記炉床に前記耐火性球状物を設ける前に、押出機のラムを用いた空押し及びエアーによる気吹きの少なくとも一方の処理を行い、前記炉床にある残コークスを排出する、請求項9に記載のコークス炉の操業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコークス炉の立上げや補修後に石炭を装入、または、炭化室の耐火物が劣化して押詰りや押止りの傾向のある炭化室に石炭を装入する際のコークス炉の操業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭を乾留してコークスを生成するコークス炉は、石炭が投入される炭化室と、炭化室を高温に保持するために燃料ガスの燃焼が行われる燃焼室とからなる。炭化室及び燃焼室は、耐火レンガを組み合わせて形成され、床面に対して垂直に立つ炉壁によって区切られており、交互に複数並んでいる。コークス炉において、特に炭化室の炉壁レンガは熱的、化学的あるいは機械的要因によって劣化し、長期間の使用でレンガの破孔や亀裂、欠損等が発生する。
【0003】
このようなレンガの破孔や亀裂、欠損等は、押詰りあるいは押止りを誘発し、詰り処置などに多大な労力を要することから、コークスの生産量にも影響を及ぼす。このため、適宜コークス炉の補修を行いながら、操業が行われている。
押詰りや押止りが頻発する炭化室又はコークス炉の補修後の炭化室では、装入された石炭が乾留及び生成されたコークスケーキを押出す際において、押出し抵抗が非常に高い状態となる。この抵抗を低減するため、例えば特許文献1のように、耐火性の球状物を石炭の装入前に炭化室の炉床に敷き、炉床の摩擦を低減することが実施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-57841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、石炭が乾留される際には、液相炭化状態を経るため、石炭は粘性をもつ軟化溶融状態となる。このため、特許文献1の方法では、石炭が乾留される際に、耐火性の球状物は軟化溶融状態の石炭の中に取り込まれ、球状物の転動が阻害されることから、生成したコークスケーキと炉床との間の押出し抵抗を低下させる効果が得られにくいという問題があった。
そこで、本発明は、上記の課題に着目してなされたものであり、コークスケーキと炉床との間の押出し抵抗を低減することができる、コークス炉の操業方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様によれば、コークス炉の炭化室に石炭を装入する際に、前記炭化室の炉床の上に耐火性球状物を設ける第1設置工程と、前記第1設置工程の後、前記耐火性球状物の上に板状物を設ける第2設置工程と、前記第2設置工程の後、前記板状物の上に前記石炭を設ける石炭装入工程と、を備える、コークス炉の操業方法が提供される。
【0007】
(2)上記(1)のコークス炉の操業方法において、上記板状物は、上記コークス炉の乾留中に炭化する素材である。
(3)上記(1)又は(2)のコークス炉の操業方法において、上記耐火性球状物は、耐火温度が1250℃以上であり、直径の平均が1mm以上16mm以下のセラミックス製球状物である。
【0008】
(4)上記(1)~(3)のいずれか一つのコークス炉の操業方法において、上記耐火性球状物は、長径Dに対する短径Dの比(D/D)で表される真球度が0.9以上である。
(5)上記(1)~(4)のいずれか一つのコークス炉の操業方法において、上記耐火性球状物は、圧潰強度が90N以上である。
【0009】
(6)上記(1)~(5)のいずれか一つのコークス炉の操業方法において、上記耐火性球状物は、Si成分をSiOに換算して45質量%以上88質量%以下、Al成分をAlに換算して10質量%以上48質量%以下、その他の成分を2質量%以上7質量%以下の範囲で含有する。
【0010】
(7)上記(1)~(6)のいずれか一つのコークス炉の操業方法において、上記板状物は、直方体の形状であり、幅が300mm以上、長さが1800mm以下及び厚さが18mm以上54mm以下である。
(8)上記(1)~(7)のいずれか一つのコークス炉の操業方法において、上記板状物は、木材である。
【0011】
(9)上記(1)~(8)のいずれか一つのコークス炉の操業方法において、上記板状物を上記耐火性球状物の上に設ける前に、あらかじめ水に濡らしておく。
(10)上記(1)~(9)のいずれか一つのコークス炉の操業方法において、上記第1設置工程では、上記炭化室の炉頂の装炭孔及び窯口の少なくとも一方から上記耐火性球状物を投入する。
【0012】
(11)上記(1)~(10)のいずれか一つのコークス炉の操業方法において、上記第2設置工程では、上記板状物を、押出機側の窯口より、2枚を2段に重ねて計4枚あるいは3枚を2段に重ねて計6枚あるいは4枚を2段に重ねて計8枚置く。
(12)上記(1)~(11)のいずれか一つのコークス炉の操業方法において、上記第1設置工程では、上記炉床に上記耐火性球状物を設ける前に、押出機のラムを用いた空押し及びエアーによる気吹きの少なくとも一方の処理を行い、上記炉床にある残コークスを排出する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、コークスケーキと炉床との間の押出し抵抗を低減することができる、コークス炉の操業方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るコークス炉の操業方法を示す模式図であり、(A)は第1設置工程を示し、(B)は第2設置工程を示す。
図2】実施例1における試験片を示す模式図であり、(A)は条件1の試験片を示し、(B)は条件2の試験片を示し、(C)は条件3の試験片を示し、(D)は条件4の試験片を示す。
図3】実施例1における引張り力の測定方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の詳細な説明では、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合が含まれる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0016】
<コークス炉の操業方法>
本発明の一実施形態に係るコークス炉の操業方法では、コークス炉の炭化室に石炭を装入した後、石炭を乾留することでコークスを製造する。この際、コークス炉の炭化室に石炭を装入する装入工程に先立ち、第1設置工程と第2設置工程とを行う。
【0017】
(第1設置工程)
第1設置工程では、図1(A)に示すように、コークス炉の炭化室1の炉床10の上に複数の耐火性球状物2を設ける。この際、炉床10の上に耐火性球状物2を敷き詰められて設置されることが好ましい。また、炉床10に敷き詰める耐火性球状物2は、耐火性球状物2の中心間の間隔を耐火性球状物2の直径の2倍以下として1段で敷き詰めることが好ましいが、部分的に耐火性球状物2同士が上下に重なって2段となっても良い。平面視にて、部分的に耐火性球状物2同士が上下に重なって2段となる面積が、炉床10の面積の2分の1以下であれば押し出し抵抗の低減効果はほとんど低下しない。なお、図1(A),(B)は、炭化室1の内部を幅方向から視た模式図である。炭化室1において、幅方向は図1の前後方向であり、炭化室1と燃焼室(不図示)とが並ぶ方向である。また、炭化室1において、水平方向に平行で、幅方向に直交する方向(図1の左右方向)を奥行方向という。
【0018】
耐火性球状物2は、耐火性の球状物であり、耐火温度が1250℃以上であることが好ましい。炭化室1の温度は、乾留時に最大で約1250℃となるため、耐火性球状物2の耐火温度を1250℃以上とすることで、コークス炉での還流後にも耐火性球状物2の形状を確実に保つことができる。
【0019】
また、耐火性球状物2は、直径の平均が1mm以上16mm以下であることが好ましい。コークスの押し出しに支障を生じる炭化室1の炉床10の劣化による亀裂や凹凸の寸法は、およそ1mm以上である。このため、球状物の直径の平均を1mm以上とすることで、劣化による亀裂や凹凸がある場合でも押出しに掛かる力を低減することができる。耐火性球状物2の直径の上限は特に無いが、耐火性球状物2のコストと炭化室容積の確保の観点からは16mm以下であることが好ましい。また、耐火性球状物2は、直径が異なるものが含まれていてもよいが、最大となる直径をDmax(mm)、最小となる直径をDmin(mm)とした場合に、Dmax/Dminが1.5以下となることが好ましい。
【0020】
さらに、耐火性球状物2は、球状の長径Dに対する短径Dの比(D/D)で表される真球度が0.9以上であることが好ましい。耐火性球状物2は真球である必要はないが、真球度が0.9未満の場合、押し出しに掛かる力の低減効果がやや小さくなる。
さらに、耐火性球状物2は、圧潰強度が90N以上であることが好ましい。炭化室1の炉床10に敷き詰める耐火性球状物2には、装入された石炭や製造されるコークスの重量が掛かるが、押し出し時にはそれ以上の力が掛かるので、押し出し開始後に耐火性球状物2の破壊を防ぐには、圧潰強度は90N以上であることが好ましい。
【0021】
さらに、耐火性球状物2は、セラミックス製球状物であることが好ましく、Si成分をSiOに換算して45質量%以上88質量%以下、Al成分をAlに換算して10質量%以上48質量%以下、その他の成分を2質量%以上7質量%以下の範囲で含有することが好ましい。炭化室1の炉床10に設けられる耐火性球状物2は、コークスに混入しても高炉の操業への影響が小さいものが望ましい。そして、Si成分やAl成分はコークスにも含まれるものであるので、耐火性球状物2はこれらを主成分とするものが好ましい。例えば、コストや耐火性を両立する観点からは、耐火性球状物2の成分組成を上記の範囲とすることができる。
【0022】
なお、第1設置工程では、耐火性球状物2は、炭化室1の炉頂の装炭口及び窯口の少なくとも一方から投入されることが好ましい。装炭口から投入することにより、耐火性球状物2を炭化室1の広い範囲に均一に敷き詰めることができる。また、炭化室1の窯口近くの領域では、装炭口から離れているため、装炭口からの装入では均一に敷き詰めることが困難となることがある。このような場合には、少なくとも窯口の近く対しては、窯口から耐火性球状物2を投入することで、均一に敷き詰めることが容易となる。
さらに、第1設置工程では、耐火性球状物2を設ける前に、押出機のラムを用いた空押し及びエアーを用いた気吹きの少なくとも一方の処理を行い、炉床10上にある残コークスを排出することが好ましい。このようにすることで、少ない耐火性球状物2でも効果を得ることができる。
【0023】
(第2設置工程)
第2設置工程は、第1設置工程の後に行われる。第2設置工程では、図1(B)に示すように、第1設置工程で炉床10の上に設けられた耐火性球状物2の上に、板状物3を設ける。
【0024】
また、板状物3は、乾留中に炭化する素材であることが好ましい。さらに、板状物3は、炭化室1の炉床10に敷き詰められた耐火性球状物2と、炭化室1に装入された石炭から製造されるコークスケーキとの間で炭化層を形成するものが好ましい。板状物3がコークス炉内の温度で溶融したり気化したりするものである場合、耐火性球状物2による押出し抵抗の低減効果が小さくなるためである。また、板状物3が炭化しないもの(例えば金属など)である場合、製造したコークスに混入すると後工程での運搬や整粒の妨げとなることがある。例えば、板状物3には、杉材などの木材を適用することが好ましい。
【0025】
板状物3は、直方体の形状であることが好ましい。さらに、板状物3の幅方向の長さは、炭化室1の幅方向の長さよりも小さい必要があるものの、300mm以上とすることが好ましい。板状物3の幅方向の長さ(「板状物3の幅」ともいう。)を300mm以上とすることで、押し出しに掛かる力の低減効果が大きくなる。また、板状物3の奥行方向の長さ(「板状物3の長さ」ともいう)は、炭化室1の奥行方向の長さよりも小さい必要があるものの、特に制限はされない。なお、敷き詰める際の作業性を考慮すると、板状物3の奥行方向の長さは2200mm以下であることが好ましいく、1800mm以下であることがより好ましい。板状物3の厚さは、コークスの重量に耐えることと費用の観点とから、18mm以上54mm以下が好適である。
【0026】
また、コークス炉の炭化室1は、コークスの乾留中は酸素がほとんど無いので、木材などは炭化するだけであり燃えることは無い。しかし、乾留前の石炭の装入時には、炭化室1内に外気が残っているため、内部の木材が燃えることがある。このため、炭化室1の炉床10に敷き詰められた耐火性球状物2の上に置く前に、板状物3を予め水に濡らしておくことが好ましい。このようにすることで、乾留開始前の板状物3の燃焼を抑制する事が出来る。
【0027】
さらに、板状物3は、鉛直方向の上方から視た平面視において、1枚又は複数枚設けられてもよい。平面視において複数の板状物3を設けることにより、1枚当たりの板状物3の重量を低減でき、寸法を小さくできるため、作業性が向上する。また、板状物3は、厚み方向(図1(B)の上下方向)に、複数枚(複数段)設けられてもよい。このようにすることで、1枚当たりの板状物3の重量を低減でき、作業性が向上する。例えば、板状物3を、押出機側の窯口より、2枚を2段に重ねて計4枚、3枚を2段に重ねて計6枚あるいは4枚を2段に重ねて計8枚置いてもよい。
【0028】
第2設置工程の後、板状物3の上に石炭が設けられ(石炭装入工程)、その後、乾留が行われることでコークスが製造される。
本実施形態に係るコークス炉の操業方法によれば、炭化室1の炉床10に敷き詰められた耐火性球状物2と、炭化室1に装入された石炭から製造されるコークスケーキとの間には、板状物3が設けられる。これにより、乾留時に発生する軟化溶融状態の石炭は板状物3と接触し、耐火性球状物2との接触が抑えられることから、コークスケーキと炉床10との間の押出し抵抗の低下を効果的に発現させることができる。
【0029】
以上で、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、これら説明によって発明を限定することを意図するものではない。本発明の説明を参照することにより、当業者には、開示された実施形態とともに種々の変形例を含む本発明の別の実施形態も明らかである。従って、特許請求の範囲に記載された発明の実施形態には、本明細書に記載したこれらの変形例を単独または組み合わせて含む実施形態も網羅すると解すべきである。
【実施例0030】
本発明者らは、後述する種々の条件で石炭を乾留させ試験片を作成し、その試験片の引張り力を測定した(実施例1)。図2(A)~(D)には、条件1~条件4の試験片4の模式図をそれぞれ示す。図2(A)に示す条件1では、80kgの石炭5を缶焼きすることで乾留して試験片4aを作成した。図2(B)に示す条件2では、耐火性球状物2を敷いた上に板状物3を載せ、さらに板状物3の上に80kgの石炭5を載せたものを缶焼きすることで乾留して試験片4bを作成した。図2(C)に示す条件3では、板状物3の上に80kgの石炭5を載せたものを缶焼きすることで乾留して試験片4cを作成した。図2(D)に示す条件4では、耐火性球状物2を敷いた上に80kgの石炭5を載せたものを缶焼きすることで乾留して試験片4dを作成した。なお、缶焼きによる試験では、直方体状の缶の底面に耐火性球状物2や板状物3を必要に応じて敷き詰めた後、管の内部に石炭5を装入し、この缶を加熱炉に入れて蒸し焼きにした。
【0031】
缶に装入する石炭は、嵩密度(dry)が760±10kg/cmで、事前処理をして装入時の水分(mass%)が9.0±0.3%、粒度(mm)が75±3%であることを確認した。
実施例1では、このように作成した試験片4に対して、図2に示す測定方法で引張り力の測定を行った。引張り力の測定では、まず、台6の上に載せた試験片4を、ワイヤーやチェーンを用いて、バネ計り7及びチェーンブロック8を介して、柱に固定した。バネ計り7には、秤量が100kgを用いた。また、チェーンブロック8は、定格荷重が0.5tのものを用いた。さらに、台6をワイヤー等で他の柱に固定した。その後、チェーンブロック8で、試験片4を引張り、試験片4の動き出し時の引張り力と、移動中の引っ張り力とを測定した。
【0032】
表1に、耐火性球状物2及び板状物3(床敷材)の有無、缶焼き後の重量、並びに動き出し時及び移動中の引張り力の測定結果について示す。上記実施形態と同様に、乾留時に耐火性球状物2と板状物3とを設けた条件2では、に動き出し時及び移動中の引張り力が最も小さくなり、静止摩擦係数や動摩擦係数が低減することが確認できた。
【0033】
【表1】
【実施例0034】
また、本発明者らは、上記実施形態と同様に、コークス炉の操業において、第1設置工程及び第2設置工程を行った後、炭化室1に石炭を装入し、コークスを製造した(実施例2)。実施例2では、石炭を乾留した後、押出機にてコークス炉を押し出す際の押出機の電流値を測定した。また、比較として、実施例と同じコークス炉にて、引用文献1と同様に、炭化室1の炉床10に耐火性球状物2を設けた後に石炭を装入した条件でもコークスの製造を行い、同様に押出機の電流値を測定した。
【0035】
表2に、実施例2の結果として、コークス炉の条件、石炭の装入量及び押出機の電流値の測定結果をそれぞれ示す。なお、実施例2-1,2-2及び比較例2-1で用いたコークス炉(コークス炉A)、並びに実施例2-2,2-3及び比較例2-4で用いたコークス炉(コークス炉B)は、それぞれ同じコークス炉Aである。表2に示すように、実施例2-1~2-4の条件では、比較例2-1,2-2に比べて、押出機の電流値が低減しており、押出し抵抗が低減できることが確認できた。
【0036】
【表2】
【符号の説明】
【0037】
1 炭化室
10 炉床
2 耐火性球状物
3 板状物
4,4a~4d 試験片
5 石炭
6 台
7 バネ計り
8 チェーンブロック
図1
図2
図3