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特開2024-116591ステータ、回転電機及びステータの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116591
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】ステータ、回転電機及びステータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20240821BHJP
【FI】
H02K9/19 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022281
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】松尾 卓
【テーマコード(参考)】
5H609
【Fターム(参考)】
5H609PP02
5H609PP06
5H609PP09
5H609QQ04
5H609QQ05
5H609RR37
5H609RR69
(57)【要約】      (修正有)
【課題】冷媒流路を容易に且つ低コストで設け、コイルの内部を効率よく冷却する。
【解決手段】回転電機10のステータ14の製造方法において、コイル20及びワニスからなる複合体122の内部には、ステータ14の軸方向に延びるパイプ124の中空部である冷媒流路が形成される。冷媒流路には、コイル20を冷却する冷媒が流れる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に貫通するスロットが形成された円筒状のステータコアと、前記ステータコアの前記スロットに配置されたコイルと、前記コイルに含浸することで前記コイルを前記スロット内に固定するワニスと、を備えるステータであって、
前記コイル及び前記ワニスからなる複合体の内部で前記軸方向に延び、前記コイルを冷却する冷媒が流れる冷媒流路を備える、ステータ。
【請求項2】
請求項1記載のステータにおいて、
前記冷媒流路は、前記複合体の内部を前記軸方向に貫通し、且つ、電気絶縁材料からなるパイプの中空部である、ステータ。
【請求項3】
請求項1記載のステータにおいて、
前記冷媒流路は、前記複合体の内部を前記軸方向に貫通する貫通孔である、ステータ。
【請求項4】
請求項1記載のステータにおいて、
前記複合体の内部には、前記ステータの径方向に間隔を空けて、複数の前記冷媒流路が設けられている、ステータ。
【請求項5】
請求項1記載のステータにおいて、
前記コイルは、
前記スロットを挿通するスロットコイル部と、
前記スロットコイル部の一端に連結され、前記ステータコアの一端面から前記軸方向に突出する第1コイルエンド部と、
前記スロットコイル部の他端に連結され、前記ステータコアの他端面から前記軸方向に突出する第2コイルエンド部と、
を有し、
前記冷媒流路は、前記第1コイルエンド部、前記スロットコイル部及び前記第2コイルエンド部を前記軸方向に貫通している、ステータ。
【請求項6】
請求項1記載のステータと、前記ステータの内側に配置され、前記軸方向に延びる円柱状のロータとを備える回転電機。
【請求項7】
軸方向に貫通するスロットが形成された円筒状のステータコアと、前記ステータコアの前記スロットに配置されたコイルと、前記コイルに含浸することで前記コイルを前記スロット内に固定するワニスと、を備えるステータの製造方法であって、
前記スロットに前記コイルを配置するコイル配置工程と、
液状の前記ワニスを前記コイルに含浸させる含浸工程と、
前記コイルを冷却する冷媒を流すための冷媒流路を形成する冷媒流路形成工程と、
を有し、
前記冷媒流路形成工程では、直線状のパイプ又は治具を用いて、前記コイルの内部で前記軸方向に延びる前記冷媒流路を形成する、ステータの製造方法。
【請求項8】
請求項7記載のステータの製造方法において、
前記冷媒流路形成工程では、電気絶縁材料からなるパイプを前記スロットの内部に前記軸方向に挿入し、
前記含浸工程の後、液状の前記ワニスが硬化したときに、前記パイプが前記コイルの内部に固定され、前記パイプの中空部が前記冷媒流路となる、ステータの製造方法。
【請求項9】
請求項8記載のステータの製造方法において、
前記冷媒流路形成工程は、前記コイル配置工程に先立ち行われる、ステータの製造方法。
【請求項10】
請求項8記載のステータの製造方法において、
前記冷媒流路形成工程は、前記コイル配置工程と前記含浸工程との間に行われる、ステータの製造方法。
【請求項11】
請求項8記載のステータの製造方法において、
前記コイル配置工程は、前記コイルを構成するコイル導線を前記ステータコアに巻回する第1巻回工程と、前記第1巻回工程の後、前記ステータコアに前記コイル導線をさらに巻回する第2巻回工程とを有し、
前記冷媒流路形成工程は、前記第1巻回工程と前記第2巻回工程との間に行われる、ステータの製造方法。
【請求項12】
請求項7記載のステータの製造方法において、
前記冷媒流路形成工程は、
前記治具を前記スロットの内部に前記軸方向に挿入する挿入工程と、
前記含浸工程の後、液状の前記ワニスが硬化し、前記治具が前記コイルの内部に固定されたときに、前記コイルから前記治具を抜き取ることで、前記コイルの内部を前記軸方向に貫通する貫通孔を形成する抜き取り工程と、
を有し、
前記貫通孔が前記冷媒流路となる、ステータの製造方法。
【請求項13】
請求項12記載のステータの製造方法において、
前記挿入工程は、前記コイル配置工程に先立ち行われる、ステータの製造方法。
【請求項14】
請求項12記載のステータの製造方法において、
前記挿入工程は、前記コイル配置工程と前記含浸工程との間に行われる、ステータの製造方法。
【請求項15】
請求項12記載のステータの製造方法において、
前記コイル配置工程は、前記コイルを構成するコイル導線を前記ステータコアに巻回する第1巻回工程と、前記第1巻回工程の後、前記ステータコアに前記コイル導線をさらに巻回する第2巻回工程とを有し、
前記挿入工程は、前記第1巻回工程と前記第2巻回工程との間に行われる、ステータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータ、回転電機及びステータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低炭素社会又は脱炭素社会の実現に向けた取り組みが活発化している。車両においても、CO排出量の削減及びエネルギー効率の改善のために、電動化技術に関する研究開発が行われている。このため、例えば、温室効果ガスを排出せず、環境性能に優れた電気自動車に注目が集まっている。電気自動車には、駆動源として、高出力なモータが搭載される。
【0003】
モータは、ステータを有する。ステータは、スロットが形成されたステータコアと、スロットに配置されたコイルとを有する。コイルに流す電流を大きくすれば、モータのトルクが大きくなり、モータの出力が大きくなる。しかしながら、コイルに電流を流すことで、コイルの抵抗成分によってコイルが発熱する。コイルの温度が許容温度を超えれば、コイルに流す電流を制限する必要がある。
【0004】
このようなコイルの温度上昇を抑制するため、従来は、冷却油等の冷媒をコイルエンドへ滴下することでコイルを冷却し、該コイルに流す電流を大きくしている。また、特許文献1には、スロットに配置されたコイルの外周部にヒートパイプを巻回することで、コイルの熱をコイルの外周部からヒートパイプに放熱することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-154713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の手法は、コイルエンド及びコイルの外周部を冷却することはできるが、コイルの内部まで冷却することができないので、コイルの温度を均一にすることができない。また、特許文献1の手法では、ステータコアが一体コアである場合、スロット内にヒートパイプを配置することが困難である。
【0007】
本発明は、上記した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、軸方向に貫通するスロットが形成された円筒状のステータコアと、前記ステータコアの前記スロットに配置されたコイルと、前記コイルに含浸することで前記コイルを前記スロット内に固定するワニスと、を備えるステータであって、前記ステータは、前記コイル及び前記ワニスからなる複合体の内部で前記軸方向に延び、前記コイルを冷却する冷媒が流れる冷媒流路を備える。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様のステータと、前記ステータの内側に配置され、前記軸方向に延びる円柱状のロータとを備える回転電機である。
【0010】
本発明の第3の態様は、軸方向に貫通するスロットが形成された円筒状のステータコアと、前記ステータコアの前記スロットに配置されたコイルと、前記コイルに含浸することで前記コイルを前記スロット内に固定するワニスと、を備えるステータの製造方法であって、前記製造方法は、前記スロットに前記コイルを配置するコイル配置工程と、液状の前記ワニスを前記コイルに含浸させる含浸工程と、前記コイルを冷却する冷媒を流すための冷媒流路を形成する冷媒流路形成工程と、を有し、前記冷媒流路形成工程では、直線状のパイプ又は治具を用いて、前記コイルの内部で前記軸方向に延びる前記冷媒流路を形成する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コイル(コイル及びワニスの複合体)の内部でステータコアの軸方向に延びる冷媒流路が設けられるので、コイルの内部にまで冷媒を流通させ、コイルの内部を効率よく冷却することができる。また、冷媒流路がコイル(複合体)の内部で該軸方向に延びているので、冷媒流路を容易に且つ低コストで設けることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1実施形態に係る回転電機の断面図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿った断面図である。
図3図3Aは、回転電機の供給ポートの近傍を示す拡大断面図であり、図3Bは、回転電機の排出ポートの近傍を示す拡大断面図である。
図4図4は、第2実施形態に係る回転電機の拡大断面図である。
図5図5は、図4のV-V線に沿った断面図である。
図6図6は、ステータの製造方法の第1実施例を示すフローチャートである。
図7図7は、ステータの製造方法の第2実施例を示すフローチャートである。
図8図8は、ステータの製造方法の第3実施例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の第1実施形態に係る回転電機10の断面図である。
【0014】
回転電機10は、ハウジング12と、ステータ14と、ロータ16とを備える。
【0015】
ハウジング12は、円環状の部材である。ステータ14及びロータ16は、ハウジング12の内部に収容される。ステータ14は、円筒状のステータである。ステータ14は、例えば、3相Y型結線のステータである。
【0016】
ステータ14は、ステータコア18と、コイル20と、ワニス22(図2参照)とを備える。
【0017】
ステータコア18は、円筒状の部材である。ステータコア18は、複数の鋼板24が該ステータコア18の軸方向に積層されることで構成される。複数の鋼板24は、不図示の加締めピンによって該軸方向に加締められる。従って、ステータコア18は、円環状に形成され、且つ、該軸方向に延在する一体コアである。該軸方向におけるステータコア18の一端は、第1端面26である。該軸方向におけるステータコア18の他端は、第2端面28である。第1端面26及び第2端面28は、ステータコア18の中心軸線30と直交する平坦面である。
【0018】
なお、ステータコア18は、一体コアに限定されない。ステータコア18は、周方向に分割された分割コアを該周方向に組み付けて構成してもよい。
【0019】
図2に示すように、ステータコア18は、コア外周部32と、複数のティース34とを有する。複数のティース34は、コア外周部32からステータコア18の径方向内側に突出している。複数のティース34は、ステータコア18の周方向に等間隔に配置されている。各ティース34の内端部は、該周方向に突出した鍔部36を有する。隣り合うティース34の一方の鍔部36と他方の鍔部36との間に、ギャップ38が形成される。
【0020】
隣り合うティース34の向かい合う面と、コア外周部32の内周面とによって、スロット40が形成される。すなわち、ステータコア18の内側には、複数のスロット40が形成されている。図1に示すように、複数のスロット40の各々は、ステータコア18の軸方向に貫通している。従って、複数のスロット40は、ステータコア18の第1端面26及び第2端面28に開口している。図2に示すように、複数のスロット40は、ステータコア18の内側において、該ステータコア18の周方向に等間隔に形成されている。
【0021】
複数のスロット40の各々には、コイル20が配置される。コイル20は、ワニス22が含浸されることで、スロット40内に固定される。図1に示すように、コイル20は、スロットコイル部42と、第1コイルエンド部44と、第2コイルエンド部46とを有する。
【0022】
スロットコイル部42は、スロット40を挿通する。
【0023】
第1コイルエンド部44は、ステータコア18の軸方向におけるスロットコイル部42の一端に連結されている。スロットコイル部42の一端は、スロットコイル部42における第1端面26側の端部である。第1コイルエンド部44は、ステータコア18の第1端面26(一端面)から該ステータコア18の軸方向に突出している。
【0024】
第2コイルエンド部46は、ステータコア18の軸方向におけるスロットコイル部42の他端に連結されている。スロットコイル部42の他端は、スロットコイル部42における第2端面28側の端部である。第2コイルエンド部46は、ステータコア18の第2端面28(他端面)から該ステータコア18の軸方向に突出している。
【0025】
コイル20は、複数本のコイル導線48を巻回することにより構成される。複数のスロット40の各々には、複数本のコイル導線48がステータコア18の軸方向に沿って挿通される。スロットコイル部42は、複数本のコイル導線48のうち、スロット40に挿通する部分で構成される。
【0026】
複数本のコイル導線48のうち、スロット40から引き出された部分は、ステータコア18の周方向に延在する。第1コイルエンド部44は、複数本のコイル導線48のうち、第1端面26からステータコア18の軸方向に引き出された部分で構成される。第2コイルエンド部46は、複数本のコイル導線48のうち、第2端面28からステータコア18の軸方向に引き出された部分で構成される。なお、第1コイルエンド部44及び第2コイルエンド部46は、複数本のコイル導線48が束状に纏められた円環状に形成されている。
【0027】
図2に示すように、コイル導線48の断面形状は、円形である。複数本のコイル導線48によってそれぞれ複数相(U相、V相、W相)が構成される。複数本のコイル導線48は、ステータコア18の各スロット40に挿通されて互いに隣接する。スロット40に挿通された複数相(U相、V相、W相)のコイル導線48がステータコア18に巻回される。
【0028】
各コイル導線48の端部は、第1コイルエンド部44から径方向外方へ相毎に取り出される。複数本のコイル導線48の端部が、それぞれ接続端子(図示せず)によってそれぞれ束ねられる。
【0029】
スロット40の内部には、ウェッジ50と、絶縁紙52とが配置されている。ウェッジ50及び絶縁紙52は、非導電材料からなるシートである。ウェッジ50及び絶縁紙52は、スロット40の内面に沿ってそれぞれ配置される。スロット40の内面は、ウェッジ50及び絶縁紙52によって覆われる。ウェッジ50は、スロット40の径方向内方に配置される。ウェッジ50は、ギャップ38に向かい合ってギャップ38を覆う。絶縁紙52は、スロット40の径方向外方、スロット40の周方向の内面をそれぞれ覆う。ウェッジ50及び絶縁紙52は、スロット40の内面とコイル20(スロットコイル部42)との接触を防止する。
【0030】
図1に示すように、ウェッジ50の端部及び絶縁紙52の端部は、ステータコア18の第1端面26から軸方向に突出する。ウェッジ50の端部及び絶縁紙52の端部は、ステータコア18の第2端面28から軸方向に突出する。
【0031】
ロータ16は、円柱状の部材である。ロータ16は、ステータ14の内側で回転可能に配置される。ロータ16は、ステータコア18の中心軸線30と同軸に配置される。ロータ16は、シャフト54と、ロータ本体58とを備える。シャフト54は、ロータ本体58の軸中心に連結される。ロータ本体58は、複数の収容孔60を有する。複数の収容孔60は、ロータ16の周方向に沿って等間隔に形成されている。複数の収容孔60の各々には、磁石62が収容される。すなわち、ロータ本体58は、周方向に沿って等間隔に配置された複数の磁石62を備える。複数の磁石62は、ロータ本体58の外周部に配置される。
【0032】
回転電機10は、冷却構造70をさらに備える。冷却構造70は、冷媒入口部材72と、冷媒出口部材74とを備える。冷媒入口部材72及び冷媒出口部材74は同一形状である。冷媒入口部材72及び冷媒出口部材74は、樹脂材によって形成される。冷媒入口部材72は、ステータコア18の第1端面26に配置される。冷媒入口部材72は、第1コイルエンド部44を覆う。冷媒出口部材74は、ステータコア18の第2端面28に配置される。冷媒出口部材74は、第2コイルエンド部46を覆う。なお、冷媒入口部材72と冷媒出口部材74とが異なる形状でもよい。
【0033】
図3Aに示すように、冷媒入口部材72は、第1ボディ76と、供給通路78と、第1シール部材80と、第1空間形成部82とを備える。第1空間形成部82は、冷媒入口部材72の内部に第1空間部84を形成する。第1空間形成部82は、第1通路形成部材86を有する。
【0034】
第1通路形成部材86は、樹脂材から形成される。第1通路形成部材86は、第1コイルエンド部44の軸方向端部に配置される。第1通路形成部材86の断面形状は矩形状である。第1通路形成部材86は中空状である。第1通路形成部材86は、環状であり第1コイルエンド部44に沿って配置される。第1通路形成部材86は、開口した開口端部88を有する。第1通路形成部材86の開口端部88が第1コイルエンド部44の軸方向端部に当接した状態で、開口端部88と第1コイルエンド部44とが固定される。第1通路形成部材86と第1コイルエンド部44とが接着剤によって互いに固定される。第1通路形成部材86の開口端部88が第1コイルエンド部44によって塞がれる。第1通路形成部材86の内部には、閉塞された供給通路78が形成される。
【0035】
第1通路形成部材86は、第1連通ポート90を有する。第1連通ポート90は、第1コイルエンド部44に向かい合う第1通路形成部材86の壁部92を軸方向に貫通する。第1連通ポート90と冷媒入口部材72の供給ポート94とが同軸に配置される。第1連通ポート90と供給ポート94とが連通する。第1連通ポート90及び供給ポート94によって第1通路形成部材86の供給通路78と外部とが連通する。
【0036】
図3Bに示すように、冷媒出口部材74は、第2ボディ100と、排出通路102と、第2シール部材104と、第2空間形成部106とを備える。第2空間形成部106は、冷媒出口部材74の内部に第2空間部108を形成する。第2空間形成部106は、第2通路形成部材110を有する。
【0037】
第2通路形成部材110は、樹脂材から形成される。第2通路形成部材110は、第2コイルエンド部46の軸方向端部に配置される。第2通路形成部材110の断面形状は矩形状である。第2通路形成部材110は中空状である。第2通路形成部材110は、環状であり第2コイルエンド部46に沿って配置される。第2通路形成部材110は、開口した開口端部112を有する。第2通路形成部材110の開口端部112が第2コイルエンド部46の軸方向端部に当接した状態で、開口端部112と第2コイルエンド部46とが固定される。第2通路形成部材110と第2コイルエンド部46とが接着剤によって互いに固定される。第2通路形成部材110の開口端部112が第2コイルエンド部46によって塞がれる。第2通路形成部材110の内部は、閉塞された排出通路102が形成される。
【0038】
第2通路形成部材110は、第2連通ポート114を有する。第2連通ポート114は、第2コイルエンド部46に向かい合う第2通路形成部材110の壁部116を軸方向に貫通する。第2連通ポート114と冷媒出口部材74の排出ポート118とが同軸に配置される。第2連通ポート114と排出ポート118とが連通する。第2連通ポート114及び排出ポート118によって第2通路形成部材110の排出通路102と外部とが連通する。
【0039】
回転電機10は、冷媒流路120をさらに備える。冷媒流路120は、複数のスロット40の各々において、コイル20及びワニス22からなる複合体122の内部でステータコア18の軸方向に延びている。冷媒流路120には、コイル20を冷却するための冷媒が流れる。
【0040】
図1に示すように、複数のスロット40の各々において、複合体122にはパイプ124がステータコア18の軸方向に貫通している。詳しくは、パイプ124は、直線状のパイプである。パイプ124は、第1コイルエンド部44、スロットコイル部42及び第2コイルエンド部46をステータコア18の軸方向に貫通している。パイプ124の一端は、第1コイルエンド部44からステータコア18の軸方向に突出している。パイプ124の他端は、第2コイルエンド部46からステータコア18の軸方向に突出している。冷媒流路120は、パイプ124の中空部126である。また、複合体122の内部には、ステータコア18の径方向に間隔を空けて、複数の冷媒流路120が設けられている。図1及び図2には、例えば、複数のスロット40の各々について、複合体122の内部に2つのパイプ124(冷媒流路120)を設けた場合を図示している。なお、回転電機10では、パイプ124の両端をカットし、パイプ124の一端と第1コイルエンド部44とを面一にすると共に、パイプ124の他端と第2コイルエンド部46とを面一にしてもよい。
【0041】
第1実施形態に係る回転電機10では、供給ポート94に冷媒が供給されたとき、供給ポート94から第1連通ポート90を通じて冷媒が供給通路78へ供給される。供給通路78には、冷媒流路120の一端が連通している。そのため、供給通路78に供給された冷媒は、冷媒流路120に流れ込み、コイル20の一端側から他端側に流れる。冷媒流路120の他端は、排出通路102に連通している。そのため、冷媒流路120の他端から排出された冷媒は、排出通路102に流れ込む。排出通路102に流れ込んだ冷媒は、第2連通ポート114と排出ポート118とを介して外部へと排出される。
【0042】
第1実施形態に係る回転電機10の効果について説明する。
【0043】
図1図3Bに示すように、回転電機10では、コイル20及びワニス22の複合体122の内部でステータコア18の軸方向に延びる冷媒流路120が設けられるので、コイル20の内部にまで冷媒を流通させ、コイル20の内部を効率よく冷却することができる。また、冷媒流路120が複合体122の内部で該軸方向に延びているので、冷媒流路120を容易に且つ低コストで設けることが可能である。
【0044】
図1図3Bに示すように、パイプ124の中空部126が冷媒流路120であるので、複合体122の内部に冷媒流路120を容易に設けることができる。また、パイプ124が電気絶縁材料からなるので、複合体122の内部での短絡の発生等を回避することができる。
【0045】
複数の冷媒流路120をステータ14の径方向に間隔を空けて複合体122の内部に設けることで、コイル20の内部を一層効率よく冷却することができる。
【0046】
冷媒流路120が第1コイルエンド部44、スロットコイル部42及び第2コイルエンド部46を軸方向に貫通することで、複合体122の内部に冷媒流路120を容易に設けることができる。また、冷媒流路120に冷媒を流すと、第1コイルエンド部44、スロットコイル部42及び第2コイルエンド部46が冷却される。これにより、コイル20の内部を一層効率よく冷却することができる。
【0047】
図4及び図5は、本発明の第2実施形態に係る回転電機127を示す。第1実施形態に係る回転電機10(図1図3B参照)と同じ構成要素については、同じ参照符号を付けて詳細な説明を省略する。
【0048】
回転電機127では、複合体122の内部を軸方向に貫通する貫通孔128が冷媒流路120となる。貫通孔128は、直線状の貫通孔である。貫通孔128の一端は、第1コイルエンド部44に開口する開口132である。貫通孔128の他端は、第2コイルエンド部46に開口する開口134である。
【0049】
第2実施形態に係る回転電機127の効果について説明する。
【0050】
第2実施形態では、第1実施形態での冷媒流路120を設けたことによる効果に加え、複合体122の内部をステータコア18の軸方向に貫通する貫通孔128が冷媒流路120であるので、複合体122の内部に低コストで且つ容易に冷媒流路120を設けることができる。
【0051】
回転電機10、127は、以上のように構成される。次に、ステータ14の製造方法について、図6図8を参照しながら説明する。ここでは、該製造方法の3つの実施例(第1実施例~第3実施例)について順に説明する。
【0052】
図6を参照しながら第1実施例を説明する。第1実施例では、ステータコア18(図1参照)にコイル20を配置する前に、冷媒流路120(図2図3B参照)を形成する。第1実施例には、2つの態様(第1態様、第2態様)が含まれる。第1態様は、第1実施形態に係る回転電機10(図1図3B参照)を製造するための態様である。第1態様では、棒状部材であるパイプ124を挿入し、パイプ124の中空部126を冷媒流路120とする。第2態様は、第2実施形態に係る回転電機127(図4及び図5参照)を製造するための態様である。第2態様では、棒状部材である治具130を挿入し、その後、液状のワニス22が硬化した後に、治具130を抜き取って形成される貫通孔128を冷媒流路120とする。
【0053】
具体的には、図6のステップS1において、ステータコア18(図1及び図4参照)が不図示の製造装置にセッティングされる。
【0054】
ステップS2(冷媒流路形成工程、挿入工程)において、ステータコア18のスロット40の内部に棒状部材(パイプ124又は治具130)をステータコア18の軸方向に沿って配置する。
【0055】
ステップS3(コイル配置工程)において、ステータコア18のスロット40にコイル20が配置される。この工程では、コイル導線48を予め巻回して形成されたコイル20をスロット40に配置する。
【0056】
ステップS4(含浸工程)において、液状のワニス22をコイル20に含浸させる。
【0057】
ステップS4の後、液状のワニス22が硬化する。これにより、棒状部材がコイル20の内部に固定される。
【0058】
第1実施例において、第1態様の場合には、固定されたパイプ124をコイル20の内部にそのまま残す。これにより、パイプ124の中空部126が冷媒流路120となる。
【0059】
第1実施例において、第2態様の場合には、ステップS4の後、ステップS5(冷媒流路形成工程、抜き取り工程)において、コイル20から治具130を抜き取る。これにより、コイル20の内部をステータコア18の軸方向に貫通する貫通孔128が形成される。
【0060】
第1実施例の効果について説明する。
【0061】
第1実施例では、コイル20の内部でステータコア18の軸方向に延びる冷媒流路120が形成されるので、コイル20の内部にまで冷媒を流通させ、コイル20の内部を効率よく冷却することができる。また、冷媒流路120がコイル20の内部で該軸方向に延びているので、冷媒流路120を容易に且つ低コストで設けることが可能である。
【0062】
第1実施例では、電気絶縁材料からなるパイプ124をステータコア18の軸方向に沿ってスロット40の内部に挿入し、ステップS4の後、液状のワニス22が硬化すれば、パイプ124がコイル20の内部に固定されて該パイプ124の中空部126が冷媒流路120となる。これにより、コイル20の内部に冷媒流路120を容易に形成することができる。
【0063】
第1実施例の第1態様では、ステップS3に先立ちステップS2を行うので、パイプ124をスロット40の内部に容易に挿入することができる。
【0064】
第1実施例の第2態様では、ステップS2を行うことにより、治具130をステータコア18の軸方向に沿ってスロット40の内部に容易に挿入することができる。また、ステップS4の後、液状のワニス22が硬化したときに、治具130は、コイル20の内部に固定される。そこで、ステップS5を行って、コイル20から治具130を抜き取ることで、コイル20の内部に貫通孔128を形成し、貫通孔128を冷媒流路120とする。これにより、冷媒流路120を容易に形成することができる。
【0065】
第1実施例の第2態様では、ステップS3に先立ちステップS2を行うので、ステータコア18の軸方向に沿って、治具130をスロット40の内部に容易に挿入することができる。
【0066】
図7を参照しながら第2実施例を説明する。第2実施例では、ステータコア18(図1参照)にコイル20を配置する工程と、液状のワニス22をコイル20に含浸させる工程との間に、冷媒流路120を形成する。第2実施例でも、第1態様及び第2態様が含まれる。
【0067】
具体的には、図7のステップS11において、ステータコア18(図1及び図4参照)が不図示の製造装置にセッティングされる。
【0068】
ステップS12(コイル配置工程)において、ステータコア18のスロット40にコイル20が配置される。この工程でも、コイル導線48を予め巻回して形成されたコイル20をスロット40に配置する。
【0069】
ステップS13(冷媒流路形成工程、挿入工程)において、スロット40に配置されたコイル20の内部に棒状部材(パイプ124又は治具130)をステータコア18の軸方向に沿って配置する。
【0070】
ステップS14(含浸工程)において、液状のワニス22をコイル20に含浸させる。
【0071】
ステップS14の後、液状のワニス22が硬化する。これにより、棒状部材がコイル20の内部に固定される。
【0072】
第2実施例において、第1態様の場合には、固定されたパイプ124をコイル20の内部にそのまま残す。これにより、パイプ124の中空部126が冷媒流路120となる。
【0073】
第2実施例において、第2態様の場合には、ステップS14の後、ステップS15(冷媒流路形成工程、抜き取り工程)において、コイル20から治具130を抜き取る。これにより、コイル20の内部をステータコア18の軸方向に貫通する貫通孔128が形成される。
【0074】
第2実施例の効果について説明する。
【0075】
第2実施例では、第1実施例での冷媒流路120を設けることによる効果、及び、棒状部材を用いることによる効果に加え、ステップS12とステップS14との間にステップS13を行うので、高い占積率が求められない仕様のステータ14を製造するときに、パイプ124又は治具130をコイル20の内部に容易に挿入することができる。
【0076】
図8を参照しながら第3実施例を説明する。第3実施例では、ステータコア18(図1及び図4参照)にコイル20を巻回する工程の途中で、冷媒流路120を形成する。第3実施例でも、第1態様及び第2態様が含まれる。
【0077】
具体的には、図8のステップS21において、ステータコア18が不図示の製造装置にセッティングされる。
【0078】
ステップS22(コイル配置工程、第1巻回工程)において、コイル導線48のステータコア18への巻回を開始する。
【0079】
ステップS23において、コイル導線48のステータコア18への巻回を中断する。
【0080】
ステップS24(冷媒流路形成工程、挿入工程)において、ステータコア18のスロット40の内部に棒状部材(パイプ124又は治具130)をステータコア18の軸方向に沿って配置する。
【0081】
ステップS25(コイル配置工程、第2巻回工程)において、コイル導線48のステータコア18への巻回を再開する。
【0082】
ステップS26において、コイル導線48のステータコア18への巻回を終了する。これにより、スロット40にコイル20が形成されると共に、コイル20の内部にパイプ124が配置される。
【0083】
ステップS27(含浸工程)において、液状のワニス22をコイル20に含浸させる。
【0084】
ステップS27の後、液状のワニス22が硬化する。これにより、棒状部材がコイル20の内部に固定される。
【0085】
第3実施例において、第1態様の場合には、固定されたパイプ124をコイル20の内部にそのまま残す。これにより、パイプ124の中空部126が冷媒流路120となる。
【0086】
第3実施例において、第2態様の場合には、ステップS27の後、ステップS28(冷媒流路形成工程、抜き取り工程)において、コイル20から治具130を抜き取る。これにより、コイル20の内部をステータコア18の軸方向に貫通する貫通孔128が形成される。
【0087】
第3実施例の製造方法の効果について説明する。
【0088】
第3実施例では、第1実施例での冷媒流路120を設けることによる効果、及び、棒状部材を用いることによる効果に加え、ステップS22、S23と、ステップS25、S26との間にステップS24を行うので、パイプ124又は治具130をコイル20の内部の所望の箇所に容易に挿入することができる。
【0089】
上述した開示に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0090】
(付記1)
軸方向に貫通するスロット(40)が形成された円筒状のステータコア(18)と、前記ステータコアの前記スロットに配置されたコイル(20)と、前記コイルに含浸することで前記コイルを前記スロット内に固定するワニス(22)と、を備えるステータ(14)であって、前記コイル及び前記ワニスからなる複合体(122)の内部で前記軸方向に延び、前記コイルを冷却する冷媒が流れる冷媒流路(120)を備える。
【0091】
このような構成によれば、コイル及びワニスの複合体の内部でステータコアの軸方向に延びる冷媒流路が設けられるので、コイルの内部にまで冷媒を流通させ、コイルの内部を効率よく冷却することができる。また、冷媒流路が複合体の内部で該軸方向に延びているので、冷媒流路を容易に且つ低コストで設けることが可能である。
【0092】
(付記2)
付記1に記載のステータにおいて、前記冷媒流路は、前記複合体の内部を前記軸方向に貫通し、且つ、電気絶縁材料からなるパイプ(124)の中空部(126)であってもよい。
【0093】
このような構成によれば、パイプの中空部が冷媒流路であるので、複合体の内部に冷媒流路を容易に設けることができる。また、パイプが電気絶縁材料からなるので、複合体の内部での短絡の発生等を回避することができる。
【0094】
(付記3)
付記1に記載のステータにおいて、前記冷媒流路は、前記複合体の内部を前記軸方向に貫通する貫通孔(128)であってもよい。
【0095】
このような構成によれば、複合体の内部をステータコアの軸方向に貫通する貫通孔が冷媒流路であるので、複合体の内部に低コストで且つ容易に冷媒流路を設けることができる。
【0096】
(付記4)
付記1~3のいずれかに記載のステータにおいて、前記複合体の内部には、前記ステータの径方向に間隔を空けて、複数の前記冷媒流路が設けられてもよい。
【0097】
このような構成によれば、複数の冷媒流路をステータの径方向に間隔を空けて複合体の内部に設けることで、コイルの内部を一層効率よく冷却することができる。
【0098】
(付記5)
付記1~4のいずれかに記載のステータにおいて、前記コイルは、前記スロットを挿通するスロットコイル部(42)と、前記スロットコイル部の一端に連結され、前記ステータコアの一端面(26)から前記軸方向に突出する第1コイルエンド部(44)と、前記スロットコイル部の他端に連結され、前記ステータコアの他端面(28)から前記軸方向に突出する第2コイルエンド部(46)と、を有し、前記冷媒流路は、前記第1コイルエンド部、前記スロットコイル部及び前記第2コイルエンド部を前記軸方向に貫通してもよい。
【0099】
このような構成によれば、冷媒流路が第1コイルエンド部、スロットコイル部及び第2コイルエンド部を軸方向に貫通することで、複合体の内部に冷媒流路を容易に設けることができる。また、冷媒流路に冷媒を流すと、第1コイルエンド部、スロットコイル部及び第2コイルエンド部が冷却される。これにより、コイルの内部を一層効率よく冷却することができる。
【0100】
(付記6)
付記1~5のいずれかに記載のステータと、前記ステータの内側に配置され、前記軸方向に延びる円柱状のロータ(16)とを備える回転電機(10)である。
【0101】
このような構成によれば、コイル及びワニスの複合体の内部でステータコアの軸方向に延びる冷媒流路が設けられるので、コイルの内部にまで冷媒を流通させ、コイルの内部を効率よく冷却することができる。また、冷媒流路が複合体の内部で該軸方向に延びているので、冷媒流路を容易に且つ低コストで設けることが可能である。
【0102】
(付記7)
軸方向に貫通するスロットが形成された円筒状のステータコアと、前記ステータコアの前記スロットに配置されたコイルと、前記コイルに含浸することで前記コイルを前記スロット内に固定するワニスと、を備えるステータの製造方法であって、前記スロットに前記コイルを配置するコイル配置工程(S3、S12、S22、S25)と、液状の前記ワニスを前記コイルに含浸させる含浸工程(S4、S14、S27)と、前記コイルを冷却する冷媒を流すための冷媒流路を形成する冷媒流路形成工程(S2、S5、S13、S15、S24、S28)と、を有し、前記冷媒流路形成工程では、直線状のパイプ又は治具を用いて、前記コイルの内部で前記軸方向に延びる前記冷媒流路を形成する。
【0103】
このような構成によれば、コイルの内部でステータコアの軸方向に延びる冷媒流路が形成されるので、コイルの内部にまで冷媒を流通させ、コイルの内部を効率よく冷却することができる。また、冷媒流路がコイルの内部で該軸方向に延びているので、冷媒流路を容易に且つ低コストで設けることが可能である。
【0104】
(付記8)
付記7に記載のステータの製造方法において、前記冷媒流路形成工程では、電気絶縁材料からなるパイプを前記スロットの内部に前記軸方向に挿入し、前記含浸工程の後、液状の前記ワニスが硬化したときに、前記パイプが前記コイルの内部に固定され、前記パイプの中空部が前記冷媒流路となってもよい。
【0105】
このような構成によれば、電気絶縁材料からなるパイプをステータコアの軸方向に沿ってスロットの内部に挿入し、含浸工程の後、液状のワニスが硬化すれば、パイプがコイルの内部に固定されて該パイプの中空部が冷媒流路となる。これにより、コイルの内部に冷媒流路を容易に形成することができる。
【0106】
(付記9)
付記8に記載のステータの製造方法において、前記冷媒流路形成工程は、前記コイル配置工程に先立ち行われてもよい。
【0107】
このような構成によれば、コイル配置工程に先立ち冷媒流路形成工程を行うので、パイプをスロットの内部に容易に挿入することができる。
【0108】
(付記10)
付記8に記載のステータの製造方法において、前記冷媒流路形成工程は、前記コイル配置工程と前記含浸工程との間に行われてもよい。
【0109】
このような構成によれば、コイル配置工程と含浸工程との間に冷媒流路形成工程を行うので、高い占積率が求められない仕様のステータを製造するときに、パイプをコイルの内部に容易に挿入することができる。
【0110】
(付記11)
付記8に記載のステータの製造方法において、前記コイル配置工程は、前記コイルを構成するコイル導線(48)を前記ステータコアに巻回する第1巻回工程(S22)と、前記第1巻回工程の後、前記ステータコアに前記コイル導線をさらに巻回する第2巻回工程(S25)とを有し、前記冷媒流路形成工程は、前記第1巻回工程と前記第2巻回工程との間に行われてもよい。
【0111】
このような構成によれば、第1巻回工程と第2巻回工程との間に冷媒流路形成工程を行うので、パイプをコイルの内部の所望の箇所に容易に挿入することができる。
【0112】
(付記12)
付記7に記載のステータの製造方法において、前記冷媒流路形成工程は、前記治具を前記スロットの内部に前記軸方向に挿入する挿入工程(S2、S13、S24)と、前記含浸工程の後、液状の前記ワニスが硬化し、前記治具が前記コイルの内部に固定されたときに、前記コイルから前記治具を抜き取ることで、前記コイルの内部を前記軸方向に貫通する貫通孔を形成する抜き取り工程(S5、S15、S28)と、を有し、前記貫通孔が前記冷媒流路となってもよい。
【0113】
このような構成によれば、挿入工程を行うことにより、治具をステータコアの軸方向に沿ってスロットの内部に容易に挿入することができる。また、含浸工程の後、液状のワニスが硬化したときに、治具は、コイルの内部に固定される。そこで、抜き取り工程を行って、コイルから治具を抜き取ることで、コイルの内部に貫通孔を形成し、貫通孔を冷媒流路とする。これにより、冷媒流路を容易に形成することができる。
【0114】
(付記13)
付記12に記載のステータの製造方法において、前記挿入工程は、前記コイル配置工程に先立ち行われてもよい。
【0115】
このような構成によれば、コイル配置工程に先立ち挿入工程を行うので、ステータコアの軸方向に沿って、治具をスロットの内部に容易に挿入することができる。
【0116】
(付記14)
付記12に記載のステータの製造方法において、前記挿入工程は、前記コイル配置工程と前記含浸工程との間に行われもよい。
【0117】
このような構成によれば、コイル配置工程と含浸工程との間に挿入工程を行うので、高い占積率が求められない仕様のステータを製造するときに、治具をステータコアの軸方向に沿ってコイルの内部に容易に挿入することができる。
【0118】
(付記15)
付記12に記載のステータの製造方法において、前記コイル配置工程は、前記コイルを構成するコイル導線を前記ステータコアに巻回する第1巻回工程と、前記第1巻回工程の後、前記ステータコアに前記コイル導線をさらに巻回する第2巻回工程とを有し、前記挿入工程は、前記第1巻回工程と前記第2巻回工程との間に行われもよい。
【0119】
このような構成によれば、第1巻回工程と第2巻回工程との間に挿入工程を行うので、治具をステータコアの軸方向に沿ってコイルの内部の所望の箇所に容易に挿入することができる。
【0120】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0121】
10…回転電機
14…ステータ
16…ロータ
18…ステータコア
20…コイル
22…ワニス
40…スロット
122…複合体
120…冷媒流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8