(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011662
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】ガスタービンのスクロール
(51)【国際特許分類】
F23R 3/60 20060101AFI20240118BHJP
F02C 7/20 20060101ALI20240118BHJP
F23R 3/42 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
F23R3/60
F02C7/20 B
F23R3/42 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113862
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】糟谷 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 隆
(72)【発明者】
【氏名】伊東 正雄
(72)【発明者】
【氏名】岩井 保憲
(72)【発明者】
【氏名】森澤 優一
(57)【要約】
【課題】変形抑制部材を備えることで、周方向亘ってスクロールの出口の変形を抑制するとともに、変形抑制部材を容易に交換可能なガスタービンのスクロールを提供する。
【解決手段】実施形態のスクロール40Aは、燃焼器20から排出された燃焼ガス27をタービンロータ33の軸方向および周方向に流動させてタービンに導く。スクロール40Aは、外周壁50と、外周壁50と環状通路70を構成し、外周壁50のタービンロータ側に外周壁50と間隙をあけて設けられた内周壁60と、スクロール40Aの出口部の周方向に設けられ、外周壁50および内周壁60を径方向に貫通し、一端が外周壁50に着脱可能に固定され、他端が内周壁60に着脱可能に固定された複数の変形抑制部材80とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼器から排出された燃焼ガスをタービンロータの軸方向および前記タービンロータの周方向に流動させてタービンに導くガスタービンのスクロールであって、
外周壁と、
前記外周壁と環状通路を構成し、前記外周壁のタービンロータ側に前記外周壁と所定の間隙をあけて設けられた内周壁と、
前記スクロールの出口部の周方向に設けられ、前記外周壁および前記内周壁を前記タービンロータの径方向に貫通し、一端が前記外周壁に着脱可能に固定され、他端が前記内周壁に着脱可能に固定された複数の変形抑制部材と
を具備することを特徴とするガスタービンのスクロール。
【請求項2】
各前記変形抑制部材は、前記外周壁および前記内周壁にボルトまたはナットによって締結されていることを特徴とする請求項1記載のガスタービンのスクロール。
【請求項3】
各前記変形抑制部材の一端が、前記外周壁における前記径方向の外側の外周面に固定され、
各前記変形抑制部材の他端が、前記内周壁における前記径方向の内側の内周面に固定されていることを特徴とする請求項1または2記載のガスタービンのスクロール。
【請求項4】
前記外周壁の前記外周面には、各前記変形抑制部材の一端を固定する第1の固定座部が形成され、
前記内周壁の前記内周面には、各前記変形抑制部材の他端を固定する第2の固定座部が形成されていることを特徴とする請求項3記載のガスタービンのスクロール。
【請求項5】
各前記変形抑制部材は、
前記第1の固定座部に前記径方向の外側から当接されてボルトによって締結される固定フランジ部と、
前記固定フランジ部から前記径方向の内側に延び、前記外周壁を貫通して前記内周壁における前記径方向の外側の外周面に当接する本体部と、
前記本体部から前記径方向の内側に延び、前記内周壁を貫通して前記第2の固定座部にナットによって締結される固定ネジ部と
を備えることを特徴とする請求項4記載のガスタービンのスクロール。
【請求項6】
前記本体部は、
前記本体部内に冷却媒体を導入する導入通路と、
前記導入通路に導入された冷却媒体を前記環状通路に排出する排出孔と
を備え、
前記固定フランジ部は、
前記導入通路に連通し、前記スクロールの外側から冷却媒体を前記導入通路に導入する導入孔を備えることを特徴とする請求項5記載のガスタービンのスクロール。
【請求項7】
前記本体部は、
前記本体部内に冷却媒体を導入する筒状部材で構成され、導入された冷却媒体を噴出する噴出孔を有する内筒部と、
前記内筒部を囲むように設けられた筒状部材で構成され、前記噴出孔が形成された位置と対向する位置からずらした位置に形成された、前記噴出孔から噴出された冷却媒体を前記環状通路に排出する排出孔を有する外筒部と
を備え、
前記固定フランジ部は、
前記内筒部の内部に連通し、前記スクロールの外側から冷却媒体を前記内筒部の内部に導入する導入孔を備えることを特徴とする請求項5記載のガスタービンのスクロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ガスタービンのスクロールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、単缶燃焼器やサイロ型燃焼器を備えるガスタービンが普及されている。これらの燃焼器は、タービンロータの軸方向に対して垂直な方向に配置される。そのため、ガスタービンは、燃焼器から排出された燃焼ガスをタービンロータの軸方向に転向させるとともにタービンロータの周方向に導くスクロールを備える。
【0003】
スクロールは、タービンロータの周囲にタービンロータの軸方向に延びる環状通路を形成する。環状通路は、外周壁と内周壁との間に形成される。そして、燃焼ガスは、環状通路を通りスクロールの出口から初段の静翼(ノズル)に導かれる。
【0004】
スクロールの出口において、周方向に亘って均一な速度で燃焼ガスを噴出するために、外周壁と内周壁との間の間隙は、周方向に亘って所定の幅となるように設定されている。また、スクロールの出口のサイズや形状は、初段の静翼の入口のサイズや形状に対応して設定されている。
【0005】
スクロールの周囲には、スクロールを外部から冷却する圧縮空気などの冷却媒体が流れる。すなわち、スクロール内の環状通路には、高温の燃焼ガスが流れ、スクロールの外周には、燃焼ガスの温度よりも低い冷却媒体が流れる。
【0006】
また、燃焼器の燃焼器ライナ内に冷却媒体の一部を導入可能なように、冷却媒体の圧力は、燃焼ガスの圧力よりも高く設定されている。すなわち、スクロールの外周を流れる冷却媒体の圧力は、スクロール内の環状通路を流れる燃焼ガスの圧力よりも高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したように、スクロール内の環状通路を流れる燃焼ガスの圧力とスクロールの外周を流れる冷却媒体の圧力との間には圧力差(内外差圧)が生じる。そのため、スクロールは、この内外差圧による力を受ける。この内外差圧は、ガスタービンの高圧化に伴ってさらに増加する。
【0009】
開口端部となるスクロールの出口では、内外差圧によって変形が生じることがある。ここで、スクロールにおいて、外周壁は、内周壁よりも内外差圧によって変形しやすい。例えば、内外差圧によって、水平方向位置の外周壁がタービンロータの中心軸側(内側)に変形し、鉛直方向位置の外周壁がタービンロータの中心軸から離れる側(外側)に変形する。これによって、スクロールの出口のサイズや形状が変化し、初段の静翼に適正に燃焼ガスを噴出することが困難となる。
【0010】
なお、スクロールの外周壁の肉厚を厚くして剛性を高めた場合、燃焼ガスと冷却媒体の温度差によって外周壁に生じる熱応力が増加するという問題が生じる。
【0011】
また、従来のガスタービンのトランジッションピースにおいて、出口の変形を抑制するために、環状通路を形成する外周壁と内周壁の間に支柱を溶接する技術が検討されている。しかしながら、この技術を採用した場合、支柱が劣化した際、容易に支柱を交換することは困難である。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、変形抑制部材を備えることで、周方向に亘ってスクロールの出口の変形を抑制するとともに、変形抑制部材を容易に交換可能なガスタービンのスクロールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
実施形態のガスタービンのスクロールは、燃焼器から排出された燃焼ガスをタービンロータの軸方向および前記タービンロータの周方向に流動させてタービンに導く。ガスタービンのスクロールは、外周壁と、前記外周壁と環状通路を構成し、前記外周壁の前記タービンロータ側に前記外周壁と所定の間隙をあけて設けられた内周壁と、前記スクロールの出口部の周方向に設けられ、前記外周壁および前記内周壁を前記タービンロータの径方向に貫通し、一端が前記外周壁に着脱可能に固定され、他端が前記内周壁に着脱可能に固定された複数の変形抑制部材とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施の形態のスクロールを備えるガスタービンの縦断面を示す図である。
【
図3】第1の実施の形態のスクロールにおける出口部の径方向の断面を拡大して示した図である。
【
図4】第1の実施の形態のスクロールにおける出口部の固定座部を径方向外側から見たときの平面図である。
【
図5】第1の実施の形態のスクロールの変形抑制部材の平面図である。
【
図9】第2の実施の形態のスクロールにおける出口部の径方向の断面を拡大して示した図である。
【
図10】第2の実施の形態のスクロールの変形抑制部材の平面図である。
【
図11】第2の実施の形態のスクロールの変形抑制部材の縦断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0016】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態のスクロール40Aを備えるガスタービン1の縦断面を示す図である。
図2は、
図1のA-A断面を示す図である。なお、
図1には、上半側の構成が示され、
図2には、上半側および下半側の構成が示されている。ここでは、燃焼器20を上半側に備えた一例を示している。
【0017】
図1および
図2に示すように、ガスタービン1は、圧縮機10と、燃焼器20と、タービン30と、スクロール40Aとを備える。
【0018】
圧縮機10は、例えば、取り込んだ大気を圧縮して圧縮空気11を生成する。
【0019】
燃焼器20は、圧縮空気11に燃料を供給して燃焼させて高温の燃焼ガス27を生成する。燃焼器20は、
図1に示すように、例えば、単缶燃焼器で構成される。燃焼器20は、例えば、ガスタービン1の上部に配置され、鉛直方向、換言すれば、タービン30のタービンロータ33の中心軸Oに垂直な方向に延びている。
【0020】
なお、ここでは、単缶燃焼器を例示して説明するが、燃焼器はこれに限られない。燃焼器として、例えば、サイロ型燃焼器なども適用できる。すなわち、燃焼器ライナから排出された燃焼ガスをタービンロータ33の軸方向およびタービンロータ33の周方向に流動させるスクロールを必要とする燃焼器であれば、本実施の形態の燃焼器に含まれる。
【0021】
ここで、以下においてタービンロータ33の軸方向を単に軸方向と称する。また、以下においてタービンロータ33の周方向を単に周方向と称する。
【0022】
燃焼器20は、燃料と圧縮空気11を燃焼させる燃焼器ライナ21と、燃焼器ライナ21内に燃料を供給する燃料ノズル22と、燃焼器ライナ21内に酸化剤として圧縮空気11を供給する酸化剤供給部23とを備える。
【0023】
なお、ここでは、酸化剤として圧縮機10で取り込んだ空気を使用した一例を示すが、酸化剤は空気に限られない。酸化剤として、例えば、酸素または酸素と水蒸気の混合気を使用してもよい。酸化剤として、酸素または酸素と水蒸気の混合気を使用する場合、酸素は、圧縮機10からの供給ではなく、例えば、外部の別系統から酸化剤供給部23に供給される。この場合、圧縮機10から水蒸気を供給してもよい。水蒸気は、後述する希釈媒体や冷却媒体として機能させることができる。また、酸化剤として酸素と水蒸気の混合気を使用する場合、酸化剤供給部23に圧縮機10から供給された水蒸気を導入する構成としてもよい。
【0024】
また、酸化剤として、例えば、酸素と二酸化炭素の混合気を使用してもよい。酸素と二酸化炭素の混合気は、例えば、外部の別系統から酸化剤供給部23に供給される。この場合、例えば、二酸化炭素を燃焼器ケーシング24内およびケーシング5内に導入して希釈媒体や冷却媒体として機能させることができる。なお、この場合、圧縮機10は不要となる。
【0025】
燃料は、特に限定されるものではない。燃料として、例えば、メタン、天然ガスなどの炭化水素、水素、アンモニア、炭化水素と水素の複合燃料、炭化水素とアンモニアの複合燃料などが使用される。また、燃料として、例えば、一酸化炭素および水素などを含む石炭ガス化ガス燃料を使用することもできる。また、アンモニアを含む石炭ガス化ガス燃料を使用することもできる。
【0026】
燃焼器ライナ21は、中心軸Oに垂直な方向に延びる筒体で構成されている。燃焼器ライナ21には、例えば、圧縮空気11を燃焼器ライナ21内に導入するための複数の導入孔21aが形成されている。導入孔21aから導入される圧縮空気11は、例えば、燃焼ガスの希釈媒体として機能する。酸化剤供給部23は、例えば、燃料ノズル22の周囲に配置される。
【0027】
燃焼器20は、燃焼器ケーシング24によって覆われている。燃焼器ケーシング24の一端は、ガスタービン1のケーシング5に接続されている。燃焼器ケーシング24の他端は、平板状の蓋部材25で封鎖されている。
【0028】
なお、燃料ノズル22に燃料を供給する燃料供給管26は、例えば、蓋部材25を貫通して配管されている。また、圧縮空気11は、ガイド部材12によって燃焼器20側に導かれるとともに、燃焼器ケーシング24内およびケーシング5内の空間に広がる。
【0029】
スクロール40Aは、燃焼器ライナ21とタービン30との間に配置される。スクロール40Aの一端(入口)は、燃焼器ライナ21の出口端部に連結されている。スクロール40Aの他端(出口)は、タービン30の初段の静翼31に対向する位置に配置される。なお、スクロール40Aの構成については、後に詳しく説明する。
【0030】
ここで、タービン30は、周方向に動翼32が植設されたタービンロータ33を備える。タービン30は、複数の動翼32を周方向に植設することで構成された動翼翼列を軸方向に複数段備えている。
【0031】
タービン30は、ケーシング5の内周に、複数の静翼31を周方向に設けることで構成された静翼翼列を軸方向に複数段備えている。静翼翼列は、軸方向に動翼翼列と交互になるように配置されている。そして、静翼翼列とこの静翼翼列の直下流の動翼翼列とで一つのタービン段落を構成する。タービン30は、ケーシング5内に複数段のタービン段落を備える。
【0032】
次に、スクロール40Aの構成について詳しく説明する。
【0033】
図3は、第1の実施の形態のスクロール40Aにおける出口部の径方向の断面を拡大して示した図である。なお、
図3において、変形抑制部材80は、断面図で示されていない。
図4は、第1の実施の形態のスクロール40Aにおける出口部の固定座部52を径方向外側から見たときの平面図である。
図5は、第1の実施の形態のスクロール40Aの変形抑制部材80の平面図である。
図6は、
図5のB-B断面を示す図である。
図7は、
図5のC-C断面を示す図である。
図8は、
図5のD-D断面を示す図である。
【0034】
スクロール40Aは、燃焼器20の燃焼器ライナ21から排出された燃焼ガス27を軸方向および周方向に流動させてタービンに導く。
【0035】
スクロール40Aは、外周壁50と、外周壁50のタービンロータ33側に設けられた内周壁60と、変形抑制部材80とを備える。換言すれば、内周壁60は、外周壁50よりもタービンロータ33の径方向の内側に配置されている。内周壁60は、外周壁50と所定の間隙をあけて設けられている。
【0036】
ここで、タービンロータ33の径方向は、中心軸Oに対して垂直な方向である。以下においてタービンロータ33の径方向を単に径方向と称する。径方向の内側は、径方向で中心軸Oに近づく側を意味する。以下において径方向の内側を径方向内側と称する。また、径方向の外側は、径方向で中心軸Oから遠ざかる側を意味する。以下において径方向の外側を径方向外側と称する。
【0037】
スクロール40Aは、
図1および
図2に示すように、燃焼器ライナ21から排出された燃焼ガス27を軸方向に導く屈曲流路部41と、軸方向に導かれた燃焼ガス27を周方向に導く環状流路部42とを備える。
【0038】
屈曲流路部41の上流端は、燃焼器ライナ21の下流端に接続されている。屈曲流路部41は、軸方向にほぼ90度屈曲する曲がり流路を構成する。なお、屈曲流路部41の出口側は、屈曲しながら周方向に広がる構成を有する。すなわち、屈曲流路部41において、燃焼ガスの流れは、周方向にも広げられる。
【0039】
そして、屈曲流路部41は、燃焼器ライナ21から排出された燃焼ガス27の流れをほぼ90度偏流する。偏流された燃焼ガス27の流れは、軸方向に流れる。
【0040】
環状流路部42は、タービンロータ33の周囲を覆うように設けられた環状通路70を構成する。すなわち、スクロール40Aの出口43側に形成される環状流路部42では、内周壁60と外周壁50との間にタービンロータ33の全周に亘って形成された環状通路70を備える。
【0041】
環状流路部42は、屈曲流路部41から排出された燃焼ガス27の流れを周方向に広げる。環状流路部42において、軸方向の速度成分を有する燃焼ガス27は、周方向に均一に広がる。
【0042】
環状流路部42(スクロール40A)の出口43は、初段の静翼31に対向する。そして、環状流路部42内を流れる燃焼ガス27は、出口43から初段の静翼31に向けて噴出される。
【0043】
変形抑制部材80は、
図1-
図3に示すように、スクロール40A(環状流路部42)の出口部の周方向に複数設けられている。換言すれば、変形抑制部材80は、出口43近傍のスクロール40Aの周方向に複数設けられている。変形抑制部材80は、例えば、周方向に等間隔に設けられている。
【0044】
変形抑制部材80は、環状流路部42を構成する外周壁50および内周壁60を径方向に貫通している。変形抑制部材80の一端は、外周壁50に着脱可能に固定されている。変形抑制部材80の他端は、内周壁60に着脱可能に固定されている。
図3に示すように、変形抑制部材80は、外周壁50および内周壁60にボルト93またはナット111によって着脱可能に締結されている。
【0045】
図3および
図4に示すように、外周壁50における径方向外側の外周面51には、変形抑制部材80の一端を固定する固定座部52が形成されている。また、
図3に示すように、内周壁60における径方向内側の内周面61には、変形抑制部材80の他端を固定する固定座部62が形成されている。なお、固定座部52は、第1の固定座部として機能し、固定座部62は、第2の固定座部として機能する。
【0046】
固定座部52は、外周面51から径方向外側に突出している。固定座部52の径方向外側の端面53は、平面で構成されている。固定座部52には、後述する変形抑制部材80の固定フランジ部90を固定するためのネジ穴54が形成されている。
【0047】
また、固定座部52および外周壁50には、後述する変形抑制部材80の本体部100および固定ネジ部110を挿入して貫通させるための挿入穴55が形成されている。この挿入穴55の形状は、例えば、本体部100の形状に対応して設定される。すなわち、
図4に示すように、固定座部52は、中央に挿入穴55を有する環状の突出構造体である。
【0048】
固定座部62は、内周面61から径方向内側に突出している。固定座部62の径方向内側の端面63は、平面で構成されている。端面63には、
図3に示すように、ナット111が当接する。
【0049】
固定座部62および内周壁60には、後述する変形抑制部材80の固定ネジ部110を貫通させるための貫通孔64が形成されている。この貫通孔64の孔径は、固定ネジ部110の外径に対応して設定される。すなわち、固定座部62は、中央に貫通孔64を有する環状の突出構造体である。
【0050】
変形抑制部材80は、
図5に示すように、固定フランジ部90と、本体部100と、固定ネジ部110とを備える。固定フランジ部90、本体部100および固定ネジ部110は、一体的に形成されてもよい。また、変形抑制部材80は、それぞれを別個に形成された、固定フランジ部90、本体部100、固定ネジ部110を接合して構成されてもよい。
【0051】
固定フランジ部90は、
図5および
図6に示すように、例えば、円形の平板状部材で構成される。固定フランジ部90の裏面91(本体部100側の面)の外縁は、固定座部52の端面53に当接する。そのため、固定フランジ部90の裏面91は、端面63と同様に、平面で構成されている。
【0052】
固定フランジ部90には、
図6に示すように、固定フランジ部90を固定座部52に固定するボルト93を貫通させるための貫通孔92が形成されている。貫通孔92は、固定座部52に形成されたネジ穴54に対応させた位置に形成される。また、固定フランジ部90には、本体部100の導入通路103に冷却媒体を導入する導入孔94が形成されている。この導入孔94は、本体部100の導入通路103に連通するように、導入通路103に対応させた位置に形成されている。
【0053】
固定フランジ部90は、径方向外側から固定座部52にボルト93によって着脱可能に締結される。すなわち、変形抑制部材80の径方向外側の端部は、ボルト93によって径方向外側から外周壁50の外周面51(固定座部52)に着脱可能に締結される。
【0054】
本体部100は、固定フランジ部90の裏面91から裏面91に対して垂直な方向に延びる柱体で構成される。変形抑制部材80をスクロール40Aに固定した際、
図3に示すように、固定フランジ部90の裏面91から径方向内側に延びる本体部100は、外周壁50を貫通し、本体部100の先端面101が内周壁60における径方向外側の外周面65に当接する。
【0055】
外周面65には、例えば、径方向内側に凹んだ凹部66が形成されている。凹部66の底面67は、本体部100の先端面101と当接するために、先端面101と同様に、平面で構成される。凹部66には、先端面101を含む先端部102の一部が嵌合する。凹部66を備えることで、本体部100の先端部102は、支持されるともに位置決めされる。
【0056】
ここで、本体部100の長手方向の長さ(径方向の長さ)は、外周壁50と内周壁60と間の予め設定された間隙距離に基づいて設定される。すなわち、先端面101を凹部66の底面67に当接させて変形抑制部材80を設置した際、
図3に示すように、本体部100の長手方向の長さ(径方向の長さ)は、固定座部52の端面53から凹部66の底面67までの径方向の距離と等しい。
【0057】
本体部100は、円柱などの柱体で構成される。本体部100は、例えば、
図7および
図8に示すように、長手方向に垂直な断面が楕円形状の柱体で構成されことが好ましい。この場合、本体部100は、燃焼ガス27の流れの上流に向けて配置される前縁105と、燃焼ガス27の流れの下流に向けて配置される後縁106を備える。すなわち、
図7および
図8に示された本体部100において、燃焼ガス27は、左側から右側に向かって流れる。このように本体部100の形状を楕円形状などの流線形状とすることで、燃焼ガス27の流れにおける圧力損失は小さくなる。
【0058】
本体部100は、
図7および
図8に示すように、本体部100を冷却する冷却構造を備えてもよい。本体部100は、冷却構造として、例えば、導入通路103と、排出孔104とを備える。
【0059】
ここで、本体部100を冷却する冷却媒体として、圧縮機10からケーシング5内に供給された圧縮空気11が使用される。この圧縮空気11は、スクロール40Aの周囲に存在する。圧縮空気11の温度は、環状通路70を流れる燃焼ガス27の温度よりも低い。なお、本体部100の冷却に使用される圧縮空気11を冷却媒体と称する。
【0060】
導入通路103は、固定フランジ部90の導入孔94を介してスクロール40Aの外側から本体部100の内部に冷却媒体を導入する。導入通路103は、本体部100の固定フランジ部90側の端部から本体部100の先端部102に向かって形成されている。導入通路103は、例えば、本体部100の長手方向(径方向)に形成される。なお、導入通路103は、先端面101には貫通していない。
【0061】
本体部100には、複数の導入通路103が形成されている。導入通路103は、例えば、
図7および
図8に示すように、本体部100の外側面に近い外周縁部に形成されることが好ましい。これによって、高温となる本体部100の外側面の冷却を促進することができる。
【0062】
また、複数の導入通路103を設けて、一つの導入通路103における流路断面積を小さくすることで、導入通路103を流れる冷却媒体の流速を上げることができる。これによって、冷却媒体と導入通路103の壁面との熱伝達を促進できる。
【0063】
排出孔104は、導入通路103に導入された冷却媒体を外部に排出する。変形抑制部材80をスクロール40Aに固定した際、排出孔104は、冷却媒体を環状通路70に排出する。
【0064】
図8に示すように、排出孔104の一端は、導入通路103に連通している。排出孔104の他端は、本体部100における先端部102の側部に貫通している。このように、排出孔104は、導入通路103に連通する貫通孔で構成されている。なお、
図3に示すように、先端部102を凹部66に嵌合させた際、排出孔104は、外周面65よりも径方向外側に位置している。
【0065】
ここで、排出孔104は、導入通路103に導入された冷却媒体を外部に排出する構成であればよい。排出孔104は、例えば、
図8に示すように、燃焼ガス27の流れの下流側に傾けて形成されることが好ましい。下流側に傾けて排出孔104を形成することで、本体部100の周囲の燃焼ガス27の流れと、排出孔104から排出される冷却媒体の流れとの干渉を抑制できる。これによって、燃焼ガス27の流れにおける圧力損失は小さくなる。また、下流側に傾けて排出孔104を形成することで、排出孔104内への燃焼ガス27の流入を防止できる。
【0066】
ここで、冷却構造としての、導入通路103および排出孔104の構成は、上記した構成に限られない。導入通路103は、本体部100を冷却するために冷却媒体を本体部100の内部に導入できる構成であればよい。また、排出孔104は、導入通路103に導入された冷却媒体を外部(環状通路70)に排出できる構成であればよい。
【0067】
固定ネジ部110は、
図5に示すように、本体部100の先端面101から先端面101に対して垂直な方向に延びる棒状のネジ部材で構成される。変形抑制部材80をスクロール40Aに固定した際、
図3に示すように、本体部100の先端面101から径方向内側に延びる固定ネジ部110は、内周壁60および固定座部62を貫通する。
【0068】
固定ネジ部110の側面には、ナット111と螺合するねじ山112が形成されている。固定ネジ部110は、ナット111によって固定座部62に固定可能な長さに設定されている。
【0069】
そして、固定ネジ部110は、固定座部62にナット111によって着脱可能に締結される。すなわち、変形抑制部材80の径方向内側の端部は、ナット111によって径方向内側から内周壁60の内周面61(固定座部62)に着脱可能に締結される。
【0070】
上記した変形抑制部材80を固定する際、まず、径方向外側から変形抑制部材80の固定ネジ部110側を挿入穴55に挿入する。続いて、固定ネジ部110を貫通孔64に貫通させて、本体部100の先端面101を凹部66の底面67に当接させる。この際、固定フランジ部90の裏面91は、固定座部52の端面53に当接する。ここで、裏面91を端面53に当接させる際、固定フランジ部90の貫通孔92と固定座部52のネジ穴54とが連通するように調整される。
【0071】
続いて、貫通孔92にボルト93を挿入して、固定フランジ部90を固定座部52にボルト締結する。これによって、変形抑制部材80の固定フランジ部90は、外周壁50の固定座部52に径方向外側から着脱可能に固定される。
【0072】
また、固定座部62の端面63から径方向内側に突出した固定ネジ部110をナット111によって締め付ける。これによって、変形抑制部材80の固定ネジ部110は、内周壁60に径方向内側から着脱可能に固定される。
【0073】
上記したように、変形抑制部材80はスクロール40Aに着脱可能に設けられる。なお、同様の方法で、複数の変形抑制部材80は、
図2に示すように、周方向に亘って外周壁50および内周壁60に着脱可能に設けられている。
【0074】
なお、上記したように、変形抑制部材80は、本体部100が外周壁50を貫通し、固定ネジ部110が内周壁60を貫通して固定されている。そのため、例えば、ボルト93やナット111に損傷が生じた場合でも、変形抑制部材80が環状通路70の下流側へ飛ばされることはない。
【0075】
次に、ガスタービン1の作用について説明する。
【0076】
図1に示すように、燃料は、燃料ノズル22から燃焼器ライナ21内に供給される。圧縮機10から排出された酸化剤である圧縮空気11は、酸化剤供給部23から燃焼器ライナ21内に供給される。
【0077】
燃焼器ライナ21内に導かれた燃料および圧縮空気11は、燃焼して燃焼ガス27となる。なお、圧縮空気11は、例えば、導入孔21aからも燃焼器ライナ21内に導入される。
【0078】
燃焼器ライナ21から排出された燃焼ガス27は、スクロール40Aに流入する。スクロール40Aの屈曲流路部41に流入した燃焼ガス27は、軸方向にほぼ90度偏流される。そして偏流された燃焼ガス27は、環状流路部42に流入する。環状流路部42に流入した燃焼ガス27は、周方向に広がる。
【0079】
燃焼ガス27は、環状流路部42において周方向に均一に広がる。これによって、燃焼ガス27の流れは、環状流路部42の環状の流路内においてほぼ均一な速度分布となる。
【0080】
そして、燃焼ガス27は、スクロール40Aの出口43近傍の周方向に設けられた変形抑制部材80の間を通過して初段の静翼31に向けて噴出される。この際、燃焼ガス27は、環状の出口43から周方向に亘ってほぼ均一な速度で噴出される。
【0081】
燃焼ガス27は、初段の静翼31から初段の動翼32に噴出される。そして、タービン30内に導入された燃焼ガス27は、タービン30を回動させる。なお、図示しない発電機は、タービン30の回動によって駆動され、発電する。
【0082】
ここで、スクロール40A内には、高温の燃焼ガス27が流れる。スクロール40Aの外周には、燃焼ガス27の温度よりも低い温度の圧縮空気11が流れる。なお、この圧縮空気11は、燃焼器ライナ21やスクロール40Aを冷却する冷却媒体としても機能する。
【0083】
また、燃焼器ライナ21内に圧縮空気11の一部を導入可能なように、圧縮空気11の圧力は、燃焼ガス27の圧力よりも高く設定されている。すなわち、スクロール40Aの外周を流れる圧縮空気11の圧力は、環状流路部42の環状通路70を流れる燃焼ガス27の圧力よりも高い。
【0084】
そのため、環状流路部42内の燃焼ガス27の圧力と環状流路部42の外周の圧縮空気11の圧力との間には圧力差(内外差圧)が生じる。そのため、環状流路部42は、この内外差圧による力を受ける。
【0085】
スクロール40Aの環状流路部42において、外周壁50は、内周壁60よりも内外差圧によって変形しやすい。また、外周壁50において、スクロール40Aの出口43近傍の出口部は変形しやすい。内外差圧によって、例えば、水平方向位置の外周壁50は、径方向内側に変形し、鉛直方向位置の外周壁50は、径方向外側に変形する。
【0086】
しかしながら、スクロール40Aは、変形抑制部材80を出口43近傍の出口部に備えることによって、外周壁50の径方向への変形が抑制される。
【0087】
具体的には、外周壁50の径方向外側への変形は、ナット111によって固定ネジ部110を内周壁60に固定させることおよび固定フランジ部90を固定座部52の端面53に当接させることよって抑制される。また、外周壁50の径方向内側への変形は、本体部100の先端面101を凹部66の底面67に当接させることおよびボルト93によって固定フランジ部90を外周壁50に固定することによって抑制される。
【0088】
ここで、固定フランジ部90の導入孔94を介して導入通路103内に導入された冷却媒体は、径方向内側に流れながら導入通路103の壁面を冷却する。そして、本体部100を冷却した冷却媒体は、排出孔104から環状通路70に排出される。これによって、環状通路70を流れる燃焼ガス27に曝される本体部100が冷却される。
【0089】
上記したように、第1の実施の形態のスクロール40Aによれば、変形抑制部材80を備えることで、スクロール40Aの内部と外部との間に内外差圧が発生する場合においても、スクロール40Aの変形を抑制することができる。また、ガスタービンがさらに高圧化されて内外差圧が増加する場合にもいても、変形抑制部材80を備えることで、スクロール40Aの変形を抑制することができる。
【0090】
さらに、変形抑制部材80を備えることで、外周壁50の径方向外側への変形および外周壁50の径方向内側への変形の双方を抑制することができる。そのため、変形抑制部材80において、配置される位置の変形方向に基づいて構造などを設計変更することなく、一つの構造でスクロール40Aの周方向の各位置における変形を抑制することができる。
【0091】
これによって、スクロール40Aの出口43において外周壁50と内周壁60との間隙を周方向に亘って所定の間隙に維持することができる。すなわち、スクロール40Aの出口43において、例えば、外周壁50が適正なサイズおよび形状に維持されるため、初段の静翼に適正に燃焼ガス27を噴出することができる。
【0092】
変形抑制部材80は、着脱可能にスクロール40Aに備えられているため、変形抑制部材を容易に交換することができる。
【0093】
また、変形抑制部材80に冷却構造を備えることで、変形抑制部材80を構成する材料の耐熱温度を超える温度環境下においても、変形抑制部材80を使用することができる。
【0094】
ここで、第1の実施の形態のスクロール40Aにおいて、変形抑制部材80の構成は、上記した構成に限られない。
【0095】
例えば、環状通路70を流れる燃焼ガス27の温度が変形抑制部材80を構成する材料の耐熱温度よりも低い場合には、変形抑制部材80は、冷却構造を備えることなく構成されてもよい。この場合、本体部100において、導入通路103、排出孔104の構成は不要となる。また、固定フランジ部90において、導入孔94の構成は不要となる。冷却構造を備えない変形抑制部材80において、本体部100は、例えば、中実の柱体で構成される。
【0096】
(第2の実施の形態)
図9は、第2の実施の形態のスクロール40Bにおける出口部の径方向の断面を拡大して示した図である。なお、
図9において、変形抑制部材120は、断面図で示されていない。
図10は、第2の実施の形態のスクロール40Bの変形抑制部材120の平面図である。
図11は、第2の実施の形態のスクロール40Bの変形抑制部材120の縦断面を示す図である。
図12は、
図10のE-E断面を示す図である。
図13は、
図11のF-F断面を示す図である。
図14は、
図11のG-G断面を示す図である。
【0097】
なお、第2の実施の形態において、第1の実施の形態のスクロール40Aと同一の構成部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略または簡略する。
【0098】
第2の実施の形態のスクロール40Bにおいては、変形抑制部材120以外は第1の実施の形態のスクロール40Aの構成と同じである。具体的には、変形抑制部材120におおける冷却構造が、第1の実施の形態のスクロール40Aの変形抑制部材80における冷却構造と異なる。そのため、ここでは、主に変形抑制部材120の構成について説明する。
【0099】
図9に示すように、変形抑制部材120は、第1の実施の形態の変形抑制部材80と同様に、環状流路部42における外周壁50および内周壁60を径方向に貫通している。変形抑制部材120の一端は、ボルト93によって外周壁50に着脱可能に固定されている。変形抑制部材120の他端は、ナット111によって内周壁60に着脱可能に固定されている。
【0100】
変形抑制部材120は、
図10に示すように、固定フランジ部130と、本体部140と、固定ネジ部110とを備える。固定フランジ部130、本体部140および固定ネジ部110は、一体的に形成されてもよい。また、変形抑制部材120は、それぞれを別個に形成された、固定フランジ部130、本体部140、固定ネジ部110を接合して構成されてもよい。
【0101】
固定フランジ部130の構成は、本体部140内に冷却媒体を導入する導入孔133の構成以外は、第1の実施の形態における固定フランジ部90の構成と同じである。固定フランジ部130には、
図12に示すように、固定フランジ部130を固定座部52に固定するボルト93を貫通させるための貫通孔132が形成されている。なお、貫通孔132の構成は、第1の実施の形態の固定フランジ部90の貫通孔92の構成と同じである。
【0102】
また、固定フランジ部130には、本体部140の内筒部150内に冷却媒体を導入する導入孔133が形成されている。この導入孔133は、本体部140の内筒部150内に連通する位置に形成されている。
【0103】
円形の平板状部材で構成された固定フランジ部130の裏面131(本体部140側の面)の外縁は、固定座部52の端面53に当接する。固定フランジ部130は、径方向外側から固定座部52にボルト93によって着脱可能に締結される。
【0104】
本体部140は、固定フランジ部130の裏面131から裏面131に対して垂直な方向に延びる。本体部140は、
図11、
図13、
図14に示すように、内筒部150と、外筒部160とを備える。
【0105】
内筒部150は、本体部140内に冷却媒体を導入する筒状部材で構成されている。外筒部160は、内筒部150を囲むように内筒部150の外側に設けられた筒状部材で構成されている。換言すれば、内筒部150は、外筒部160との間に所定の間隙をあけて外筒部160内に収容されている。
【0106】
すなわち、
図13および
図14に示すように、本体部140は、内筒部150と外筒部160とで構成される二重管構造を有する。これによって、外筒部160の内側面161と内筒部150の外側面151との間に空間170が形成される。
【0107】
内筒部150および外筒部160において、
図13および
図14に示すように、長手方向に垂直な断面(径方向に垂直な断面)の形状が楕円形状に構成される。この場合、外筒部160の前縁162は、燃焼ガス27の流れの上流に向けて配置され、外筒部160の後縁163は、燃焼ガス27の流れの下流に向けて配置される。外筒部160の形状を楕円形状などの流線形状とすることで、燃焼ガス27の流れにおける圧力損失は小さくなる。
【0108】
図11に示すように、外筒部160の一端は、固定フランジ部130の裏面131に接合されている。外筒部160の他端は、封止端壁164によって封止されている。なお、外筒部160は、例えば、一端が開口し、他端が閉じられた筒体部材で構成されてもよい。この場合は、封止端壁164は不要となる。
【0109】
内筒部150は、例えば、両端が開口した筒状部材で構成されている。例えば、内筒部150の一端は、固定フランジ部130の裏面131に接続され、内筒部150の他端は、封止端壁164に当接している。
【0110】
内筒部150は、内部に導入された冷却媒体を外筒部160の内側面161に向けて噴出する複数の噴出孔152を備える。噴出孔152は、例えば、内筒部150の長手方向(径方向)に所定の間隔で設けられる。また、噴出孔152は、例えば、前縁153から後縁154に向かって所定の間隔で設けられる。大部分の噴出孔152は、
図14に示すように、後縁154側よりも前縁153側に設けられる。これによって、高温となる外筒部160の前縁162側を積極的に冷却することができる。
【0111】
外筒部160は、噴出孔142から噴出された冷却媒体を外部に排出する複数の排出孔165を有する。変形抑制部材120をスクロール40Bに固定した際、排出孔165は、冷却媒体を環状通路70に排出する。
【0112】
排出孔165は、噴出孔152が形成された位置と対向する位置からずらした位置に形成される。すなわち、排出孔165は、噴出孔152から噴出された冷却媒体が直接排出孔165を介して外部に排出されない位置に設けられる。これによって、噴出孔152から噴出された冷却媒体は、外筒部160の内側面161に衝突する。このように、冷却媒体を内側面161に衝突させてインピンジメント冷却することで、外筒部160の冷却が促進される。
【0113】
大部分の排出孔165は、
図10および
図13に示すように、外筒部160の前縁162側に設けられている。ここで、外筒部160において、前縁162側は、後縁163側よりも高温となる。そのため、前縁162側から冷却媒体を排出することで、冷却媒体が燃焼ガス27と外筒部160の外側面166との間に存在する領域が形成される。このようなフィルム冷却によって、燃焼ガス27が直接外側面166に接触することが抑制され、外筒部160の温度上昇が抑制される。
【0114】
変形抑制部材120をスクロール40Bに固定した際、
図9に示すように、固定フランジ部130の裏面131から径方向内側に延びる本体部140は、外周壁50を貫通し、外筒部160の封止端壁164の端面が内周壁60における凹部66の底面67に当接する。
【0115】
ここで、固定ネジ部110は、外筒部160の封止端壁164から封止端壁164の端面に対して垂直な方向に延びる棒状のネジ部材で構成される。なお、固定ネジ部110については、前述したとおりである。
【0116】
変形抑制部材120をスクロール40Bに固定する工程は、前述した変形抑制部材80をスクロール40Aに固定する工程と同じである。なお、変形抑制部材120は、変形抑制部材80と同様に、スクロール40B(環状流路部42)の出口部の周方向に複数設けられる。
【0117】
上記した変形抑制部材120を備えるスクロール40Aにおいて、冷却媒体は、固定フランジ部130の導入孔133を介して内筒部150内に導入される。内筒部150内に導入された冷却媒体は、内筒部150内に広がり、噴出孔152から外筒部160の内側面161に向けて噴出される。
【0118】
噴出孔152から噴出された冷却媒体は、内側面161に衝突して外筒部160を内部から冷却する。このインピンジメント冷却によって、外筒部160の冷却が促進される。
【0119】
内側面161に衝突した冷却媒体は、排出孔165から環状通路70に排出される。この際、フィルム冷却によって、燃焼ガス27が直接外筒部160の外側面166に接触することが抑制され、外筒部160の温度上昇が抑制される。
【0120】
第2の実施の形態のスクロール40Bにおいても、第1の実施の形態のスクロール40Aと同様に、変形抑制部材120によって、外周壁50の径方向への変形が抑制される。具体的には、外周壁50の径方向外側への変形は、ナット111によって固定ネジ部110を内周壁60に固定させることおよび固定フランジ部130を固定座部52の端面53に当接させることよって抑制される。また、外周壁50の径方向内側への変形は、外筒部160の先端端面を凹部66の底面67に当接させることおよびボルト93によって固定フランジ部130を外周壁50に固定させることによって抑制される。
【0121】
上記したように、第2の実施の形態のスクロール40Bによれば、変形抑制部材120を備えることで、スクロール40Bの変形に関して、第1の実施の形態のスクロール40Aと同様の作用効果が得られる。すなわち、変形抑制部材120を備えることで、スクロール40Bの内部と外部との間に内外差圧が発生する場合においても、スクロール40Bの変形を抑制することができる。
【0122】
また、変形抑制部材120を備えることで、外周壁50の径方向外側への変形および外周壁50の径方向内側への変形の双方を抑制することができる。変形抑制部材120は、着脱可能にスクロール40Bに備えられているため、変形抑制部材を容易に交換することができる。
【0123】
変形抑制部材120に冷却構造を備えることで、変形抑制部材120を構成する材料の耐熱温度を超える温度環境下においても、変形抑制部材120を使用することができる。また、変形抑制部材120の冷却構造では、インピンジメント冷却およびフィルム冷却を機能させることで、変形抑制部材120の冷却が促進される。
【0124】
(他の実施の形態)
【0125】
上記した本実施の形態では、上半側に燃焼器20を備えた一例を示したが、この構成に限られない。燃焼器20は、下半側に備えられてもよい。この場合、燃焼器20は、ケーシング5を、例えば、鉛直下方から貫通して配置されている。また、燃焼器20は、上半側および下半側の双方に備えられてもよい。
【0126】
また、上記した本実施の形態では、ケーシング5を備えた一例を示したが、ケーシングの構造は、内部ケーシングの外周に外部ケーシングを備える二重ケーシング構造であってもよい。
【0127】
以上説明した実施形態によれば、変形抑制部材を備えることで、周方向亘ってスクロールの出口の変形を抑制するとともに、変形抑制部材を容易に交換することが可能となる。
【0128】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0129】
1…ガスタービン、5…ケーシング、10…圧縮機、11…圧縮空気、12…ガイド部材、20…燃焼器、21…燃焼器ライナ、21a…導入孔、22…燃料ノズル、23…酸化剤供給部、24…燃焼器ケーシング、25…蓋部材、26…燃料供給管、27…燃焼ガス、30…タービン、31…静翼、32…動翼、33…タービンロータ、40A、40B…スクロール、41…屈曲流路部、42…環状流路部、43…出口、50…外周壁、51、65…外周面、52、62…固定座部、53、63…端面、54…ネジ穴、55…挿入穴、60…内周壁、61…内周面、64、92、132…貫通孔、66…凹部、67…底面、70…環状通路、80、120…変形抑制部材、90、130…固定フランジ部、91、131…裏面、93…ボルト、94、133…導入孔、100、140…本体部、101…先端面、102…先端部、103…導入通路、104、165…排出孔、105、153、162…前縁、106、154、163…後縁、110…固定ネジ部、111…ナット、112…ねじ山、142、152…噴出孔、150…内筒部、151、166…外側面、160…外筒部、161…内側面、164…封止端壁、170…空間、O…中心軸。