IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢崎総業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-高圧コネクタ 図1
  • 特開-高圧コネクタ 図2
  • 特開-高圧コネクタ 図3
  • 特開-高圧コネクタ 図4
  • 特開-高圧コネクタ 図5
  • 特開-高圧コネクタ 図6
  • 特開-高圧コネクタ 図7
  • 特開-高圧コネクタ 図8
  • 特開-高圧コネクタ 図9
  • 特開-高圧コネクタ 図10
  • 特開-高圧コネクタ 図11
  • 特開-高圧コネクタ 図12
  • 特開-高圧コネクタ 図13
  • 特開-高圧コネクタ 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116634
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】高圧コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/64 20060101AFI20240821BHJP
   H01R 13/639 20060101ALI20240821BHJP
   H01R 13/629 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
H01R13/64
H01R13/639 Z
H01R13/629
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022335
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】大場 光
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA03
5E021FA09
5E021FA14
5E021FA16
5E021FB07
5E021FB20
5E021FB21
5E021FC07
5E021FC14
5E021FC19
5E021FC31
5E021FC38
5E021HB02
5E021HB04
5E021HB05
5E021HC09
5E021JA05
5E021KA12
(57)【要約】
【課題】インターロック端子を備えつつ、高圧端子についてのアーク発生を抑えて嵌合解除を行うことができる高圧コネクタを提供する。
【解決手段】高圧コネクタ1が、コネクタハウジング11と、高圧端子と、コネクタ嵌合時には相手方インターロック端子に接続され、嵌合解除時には高圧端子の相手方高圧端子からの離間に先だって相手方インターロック端子から離間することでインターロック回路に高圧通電を遮断させるインターロック端子と、コネクタハウジング11に設けられ、嵌合解除方向D12へのコネクタ移動を、高圧端子と相手方高圧端子との接続を残しつつインターロック端子が相手方インターロック端子から離間する規制位置までに規制し、インターロック端子が相手方インターロック端子から離間した後にコネクタ移動の規制を解除する移動規制機構14と、を備えたことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタハウジングと、
前記コネクタハウジングに収容される高圧端子と、
前記コネクタハウジングに収容され、コネクタ嵌合時には、嵌合解除時に前記高圧端子を介した高圧通電を遮断するためのインターロック回路に繋がる相手方インターロック端子に接続され、前記嵌合解除時には前記高圧端子の相手方高圧端子からの離間に先だって前記相手方インターロック端子から離間することで前記インターロック回路に前記高圧通電を遮断させるインターロック端子と、
前記コネクタハウジングに設けられ、嵌合解除方向へのコネクタ移動を、前記高圧端子と前記相手方高圧端子との接続を残しつつ前記インターロック端子が前記相手方インターロック端子から離間する規制位置までに規制し、前記インターロック端子が前記相手方インターロック端子から離間した後に前記コネクタ移動の規制を解除する移動規制機構と、
を備えたことを特徴とする高圧コネクタ。
【請求項2】
前記移動規制機構が、
前記コネクタハウジングが前記規制位置まで移動すると相手方コネクタハウジングに係止して前記コネクタ移動を規制する係止爪と、
操作を受けて前記係止爪を前記相手方コネクタハウジングから外すことで前記規制を解除する解除部と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の高圧コネクタ。
【請求項3】
前記移動規制機構が、前記嵌合解除方向に延在するカンチレバー部を更に備え、
前記係止爪が、前記カンチレバー部における長手方向の中途位置に突出形成され、
前記解除部が、前記カンチレバー部において、前記係止爪よりも前記長手方向の自由端側に設けられ、前記操作として、前記係止爪を前記相手方コネクタハウジングから外すように前記カンチレバー部を撓ませる係止解除方向の押圧操作を受けることを特徴とする請求項2に記載の高圧コネクタ。
【請求項4】
前記解除部は、前記コネクタ嵌合中は前記相手方コネクタハウジングに覆われ、前記コネクタハウジングが前記規制位置まで移動すると前記相手方コネクタハウジングから露出する位置に設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の高圧コネクタ。
【請求項5】
前記相手方コネクタハウジングには、
前記コネクタ嵌合中に前記解除部を覆うフード部と、
前記嵌合解除方向について前記フード部の後方側に、前記係止爪が嵌入可能で前記嵌合解除方向に延在するスリット状に形成され、前記コネクタ移動の際には前記係止爪を前記フード部に向かって案内する係止ガイド部と、が形成され、
前記係止爪は、前記コネクタハウジングが前記規制位置まで移動すると、前記係止ガイド部に案内されて前記フード部における前記嵌合解除方向の背面側に当接係止し、
前記解除部は、前記コネクタハウジングが前記規制位置まで移動すると前記フード部から前記嵌合解除方向へと飛び出して露出することを特徴とする請求項4に記載の高圧コネクタ。
【請求項6】
前記高圧端子が筒状のメス型端子であり、
前記インターロック端子がピン状のオス型端子であり、
前記嵌合解除方向について、前記高圧端子が前記相手方高圧端子と電気的に接続可能な距離が、前記インターロック端子が前記相手方インターロック端子と電気的に接続可能な距離よりも長いことを特徴とする請求項1に記載の高圧コネクタ。
【請求項7】
前記コネクタハウジングに、前記嵌合解除方向と交差する軸回りに回動可能に軸支され、前記嵌合解除時に前記軸回りの回動操作を受けることで、前記高圧端子及び前記インターロック端子を収容した前記コネクタハウジングを前記嵌合解除方向に移動させる操作レバーを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の高圧コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嵌合解除時に高圧通電を遮断させるためのインターロック端子を備えた高圧コネクタに関するものとなっている。
【背景技術】
【0002】
従来、コネクタの嵌合解除とともに高圧通電を遮断するインターロック回路が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1に記載のインターロック回路は、高圧コネクタが接続される高圧電源側に設けられ、高圧コネクタの嵌合解除を検知して高圧通電を遮断するものとなっている。高圧コネクタには、このようなインターロック回路に高圧通電を遮断させるためのインターロック端子が、高圧端子とともに設けられている。嵌合解除時には、高圧端子が高圧電源側の相手方高圧端子から離間するとともに、インターロック回路に繋がる相手方インターロック端子からインターロック端子が離間する。インターロック回路では、このインターロック端子の離間が高圧コネクタの嵌合解除として検知される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-112902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、作業者が高圧コネクタの嵌合解除を行う際、高圧コネクタの傾き等に起因して、高圧端子の離間タイミングとインターロック端子の離間タイミングがずれる場合がある。インターロック端子の離間タイミングの方が早い場合、高圧端子は高圧の通電状態のまま相手方高圧端子から離間することとなり、端子間にアークが発生する可能性がある。このようなアークの発生は高圧端子にダメージを与える恐れがあり望ましいものではない。
【0005】
従って、本発明は、上記のような問題に着目し、インターロック端子を備えつつ、高圧端子についてのアーク発生を抑えて嵌合解除を行うことができる高圧コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、高圧コネクタは、コネクタハウジングと、前記コネクタハウジングに収容される高圧端子と、前記コネクタハウジングに収容され、コネクタ嵌合時には、嵌合解除時に前記高圧端子を介した高圧通電を遮断するためのインターロック回路に繋がる相手方インターロック端子に接続され、前記嵌合解除時には前記高圧端子の相手方高圧端子からの離間に先だって前記相手方インターロック端子から離間することで前記インターロック回路に前記高圧通電を遮断させるインターロック端子と、前記コネクタハウジングに設けられ、嵌合解除方向へのコネクタ移動を、前記高圧端子と前記相手方高圧端子との接続を残しつつ前記インターロック端子が前記相手方インターロック端子から離間する規制位置までに規制し、前記インターロック端子が前記相手方インターロック端子から離間した後に前記コネクタ移動の規制を解除する移動規制機構と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上述の高圧コネクタによれば、インターロック端子を備えつつ、高圧端子についてのアーク発生を抑えて嵌合解除を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る高圧コネクタを、相手方コネクタとの嵌合状態で示す外観斜視図である。
図2図1に示されている高圧コネクタ及び相手方コネクタを、高圧端子及び相手方高圧端子を通る断面で示す断面図である。
図3図1に示されている高圧コネクタ及び相手方コネクタに、インターロック回路で嵌合解除を検知するために設けられた構造を、嵌合方向に沿った断面で示した断面図である。
図4図1に示されている高圧コネクタにおける移動規制機構を、図1中のV11-V11線に沿った断面で示した断面図である。
図5図1図4に示されている高圧コネクタの相手方コネクタに対する嵌合が解除されるまでの第1段階を、図1と同等の斜視図で示した図である。
図6図5に示されている第1段階での移動規制機構の状態を、図4と同等の断面図で示した図である。
図7図5に示されている第1段階での高圧端子の端子状態を、図2と同等の断面図で示した図である。
図8図5に示されている第1段階でのインターロック端子の端子状態を、図3と同等の断面図で示した図である。
図9図1図4に示されている高圧コネクタの相手方コネクタに対する嵌合が解除されるまでの第2段階を、移動規制機構についての図6と同等の断面図で示した図である。
図10図1図4に示されている高圧コネクタの相手方コネクタに対する嵌合が解除されるまでの第3段階を、図1と同等の斜視図で示した図である。
図11図10に示されている第3段階での移動規制機構の状態を、図4と同等の断面図で示した図である。
図12図10に示されている第3段階での高圧端子の端子状態を、図2と同等の断面図で示した図である。
図13図1図4に示されている高圧コネクタの相手方コネクタに対する嵌合が解除されるまでの第4段階を、図1と同等の斜視図で示した図である。
図14図13に示されている第4段階での高圧端子の端子状態を、図2と同等の断面図で示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、高圧コネクタの一実施形態について説明する。
【0010】
図1は、一実施形態に係る高圧コネクタを、相手方コネクタとの嵌合状態で示す外観斜視図である。
【0011】
本実施形態における高圧コネクタ1は、車両に搭載されて配策される高圧電源用ハーネスW1の端部コネクタとして利用される。この高圧コネクタ1が嵌合される相手方コネクタ2は、電源側の機器C1の外壁C11に固定された機器コネクタである。この相手方コネクタ2はオス型コネクタであり、高圧コネクタ1はメス型コネクタとなっている。また、高圧コネクタ1は、操作レバー15に対する回動操作によって相手方コネクタ2との嵌合及び嵌合解除が行われるレバーコネクタとなっている。
【0012】
操作レバー15は、高圧コネクタ1のコネクタハウジング11の嵌合方向D11及び嵌合解除方向D12と交差する軸15a回りに回動可能に軸支されたレバー部材である。この操作レバー15における一対のアーム部151には、相手方コネクタハウジング21に設けられた一対の凸部211を受入れて案内するカム溝151aが形成されている。コネクタ嵌合時には、操作レバー15は、嵌合方向D11及び軸15aの両方と直交するように立てられる。その状態で、まず、カム溝151aの入り口付近に相手方コネクタハウジング21の凸部211が嵌入する程度に高圧コネクタ1が相手方コネクタ2に組付けられる。その後、操作レバー15が図1中の左方へと倒れるように嵌合操作方向D13に操作されると相手方コネクタハウジング21の凸部211がカム溝151aに沿って移動することで、高圧コネクタ1が相手方コネクタ2へと押し付けられて嵌合が行われる。図1には、操作レバー15が嵌合操作方向D13に完全に倒されて高圧コネクタ1が相手方コネクタ2に嵌合した状態が示されている。
【0013】
図2は、図1に示されている高圧コネクタ及び相手方コネクタを、高圧端子及び相手方高圧端子を通る断面で示す断面図である。
【0014】
本実施形態における高圧コネクタ1は、絶縁樹脂製のコネクタハウジング11に、プラス/マイナスの一対の高圧端子12が収容されたものとなっている。上述したように、相手方コネクタ2はオス型コネクタであり、高圧コネクタ1はメス型コネクタとなっている。即ち、高圧端子12は、導電性金属で円筒状に形成され、内側に接点バネ121が設置されたメス型端子であり、この高圧端子12が、コネクタハウジング11における円筒状の端子収容室111に収容されている。
【0015】
他方、相手方コネクタ2における相手方高圧端子22は、円筒状の高圧端子12に進入可能となるように導電性金属で丸棒状に形成されたオス型端子となっている。この相手方高圧端子22は、導電性金属で形成された胴体部分221の先端に絶縁キャップ222が取り付けられたものである。この相手方高圧端子22が、高圧コネクタ1の嵌合側を受入れ可能な形状を有する絶縁樹脂製の相手方コネクタハウジング21に取り付けられている。
【0016】
図2に示されている嵌合時には、相手方高圧端子22における胴体部分221の中程が高圧端子12の内部の接点バネ121に圧接した状態で電気的に接続される。この胴体部分221と接点バネ121との圧接部分における嵌合方向D11の前端から、胴体部分221と絶縁キャップ222との境界までの嵌合軸線X11に沿った距離が次のようなものとなっている。即ち、上記の距離が、高圧端子12が相手方高圧端子22と電気的に接続可能な高圧接続距離L11となっている。嵌合解除時には、胴体部分221と絶縁キャップ222との境界が嵌合解除方向D12に接点バネ121から外れるまで電気的な接続が維持される。
【0017】
ここで、本実施形態では、電源側の機器C1には、コネクタの嵌合解除とともに高圧通電を遮断するインターロック回路が設けられている。このインターロック回路は、相手方コネクタ2に対する高圧コネクタ1の嵌合解除を検知して高圧通電を遮断するものとなっている。インターロック回路で嵌合解除を検知するために、高圧コネクタ1及び相手方コネクタ2には、次のような構造が設けられている。
【0018】
図3は、図1に示されている高圧コネクタ及び相手方コネクタに、インターロック回路で嵌合解除を検知するために設けられた構造を、嵌合方向に沿った断面で示した断面図である。
【0019】
インターロック回路で嵌合解除を検知するための構造として、高圧コネクタ1にはインターロック端子13が設けられている。このインターロック端子13は、コネクタハウジング11に収容され、コネクタ嵌合時には相手方インターロック端子23に接続される。相手方インターロック端子23は、相手方コネクタハウジング21に収容されるとともに機器C1側のインターロック回路に繋がれている。インターロック端子13は、嵌合解除時には、高圧端子12の相手方高圧端子22からの離間に先だって相手方インターロック端子23から離間する。インターロック回路では、この離間が検知され、その離間検知を受けてインターロック回路が高圧端子12に対する高圧通電を遮断する。
【0020】
ここで、本実施形態では、高圧コネクタ1におけるインターロック端子13は、導電性金属で形成されたピン状のオス型端子となっている。他方、相手方コネクタ2の相手方インターロック端子23は、導電性金属でこのインターロック端子13を受入れ可能な矩形筒形状に形成され、内部に接点バネ231が設けられたメス型端子となっている。図3に示されている嵌合時には、インターロック端子13の中程が相手方インターロック端子23の内部の接点バネ231に圧接した状態で電気的に接続される。このインターロック端子13と接点バネ231との圧接部分における嵌合方向D11の後端から、インターロック端子13の先端までの嵌合軸線X12に沿った距離が次のようなものとなっている。即ち、上記の距離が、インターロック端子13が相手方インターロック端子23と電気的に接続可能なインターロック接続距離L12となっている。嵌合解除時には、インターロック端子13の先端が嵌合解除方向D12に接点バネ231から外れるまで電気的な接続が維持される。本実施形態では、図2に示されている高圧接続距離L11が、図3に示されているインターロック接続距離L12よりも長くなっている。
【0021】
図1を参照して上述したように、高圧コネクタ1は、レバー操作によって相手方コネクタ2との嵌合及び嵌合解除が行われる。嵌合は、嵌合操作方向D13に操作レバー15が倒されることで行われる。他方、嵌合解除は、倒れた状態の操作レバー15が逆向きの解除操作方向D14に起こされることで行われる。操作レバー15が起こされると、相手方コネクタ2の凸部211がカム溝151aに沿って嵌合時とは逆に入り口へと案内される。これよって、高圧コネクタ1が相手方コネクタ2から嵌合解除方向D12へと離されて嵌合解除が行われる。このとき、インターロック端子13が相手方インターロック端子23から離間することでインターロック回路による高圧通電の遮断が行われた後に、非通電状態で高圧端子12が相手方高圧端子22から離間することがアーク回避の観点から望ましい。そこで、高圧コネクタ1には、嵌合解除時の高圧コネクタ1のコネクタ移動を次のように規制する移動規制機構14がコネクタハウジング11に設けられている。
【0022】
図4は、図1に示されている高圧コネクタにおける移動規制機構を、図1中のV11-V11線に沿った断面で示した断面図である。
【0023】
この移動規制機構14は、嵌合解除方向D12への高圧コネクタ1のコネクタ移動を、高圧端子12と相手方高圧端子22との接続を残しつつインターロック端子13が相手方インターロック端子23から離間する規制位置までに規制する。そして、移動規制機構14は、インターロック端子13が相手方インターロック端子23から離間した後にコネクタ移動の規制を解除する。移動規制機構14は、係止爪141と、解除部142と、カンチレバー部143とを備えている。他方、この移動規制機構14に対応する構成として、相手方コネクタ2では、相手方コネクタハウジング21に、フード部241と、係止ガイド部242とが形成されている。
【0024】
移動規制機構14における係止爪141は、高圧コネクタ1のコネクタハウジング11が上記の規制位置まで移動すると相手方コネクタハウジング21に係止してコネクタ移動を規制する部位である。解除部142は、作業者から操作を受けて係止爪141を相手方コネクタハウジング21から外すことで規制を解除する部位である。
【0025】
また、カンチレバー部143は、嵌合方向D11の前方側を固定端、嵌合解除方向D12の前方側を自由端としてコネクタハウジング11に撓み変形可能な片持ち梁状に設けられた部位である。係止爪141は、このカンチレバー部143における長手方向D15の中途位置に突出形成されている。解除部142は、このカンチレバー部143において、係止爪141よりも長手方向D15の自由端側、具体的には、カンチレバー部143における自由端側の先端部に設けられている。そして、解除部142は、規制解除のための操作として、係止爪141を相手方コネクタハウジング21から外すようにカンチレバー部143を撓ませる係止解除方向D16の押圧操作を受ける。
【0026】
相手方コネクタハウジング21のフード部241は、コネクタ嵌合中に移動規制機構14における解除部142を覆うように嵌合解除方向D12の前方側に庇状に張り出した部位である。係止ガイド部242は、嵌合解除方向D12についてフード部241の後方側に、係止爪141が嵌入可能で嵌合解除方向D12に延在するスリット状に形成された部位である。この係止ガイド部242は、嵌合解除方向D12のコネクタ移動の際には係止爪141をフード部241に向かって案内する。
【0027】
移動規制機構14における係止爪141は、コネクタハウジング11が上記の規制位置まで移動すると、係止ガイド部242に案内されてフード部241における嵌合解除方向D12の背面241a側に当接係止する。解除部142は、コネクタハウジング11が規制位置まで移動するとフード部241から嵌合解除方向D12へと飛び出して露出する。
【0028】
以上に説明した移動規制機構14を備える高圧コネクタ1が、レバー操作によって嵌合解除方向D12に動かされて相手方コネクタ2に対する嵌合が解除されるまでの移動規制機構14の一連の動きについて以下に説明する。また、この説明は、移動規制機構14の動きを、高圧端子12やインターロック端子13の端子状態と対比しながら行う。
【0029】
図5は、図1図4に示されている高圧コネクタの相手方コネクタに対する嵌合が解除されるまでの第1段階を、図1と同等の斜視図で示した図である。図6は、図5に示されている第1段階での移動規制機構の状態を、図4と同等の断面図で示した図である。図7は、図5に示されている第1段階での高圧端子の端子状態を、図2と同等の断面図で示した図である。また、図8は、図5に示されている第1段階でのインターロック端子の端子状態を、図3と同等の断面図で示した図である。
【0030】
図5図8に示されている第1段階では、まず、操作レバー15が解除操作方向D14に起こされる。このレバー操作により、相手方コネクタ2の凸部211が操作レバー15のカム溝151aに沿って移動することで、高圧コネクタ1が相手方コネクタ2から嵌合解除方向D12に押し出される。このときの押出しは、図6に示されているように、移動規制機構14の係止爪141が係止ガイド部242に案内されてフード部241の背面241a側に当接係止した段階で規制されて停止する。このときの高圧コネクタ1の位置が、次のような規制位置P11となっている。即ち、この規制位置P11では、図7に示されているように、相手方高圧端子22の胴体部分221と絶縁キャップ222との境界が高圧端子12の接点バネ121から外れていない。その結果、規制位置P11では、高圧端子12と相手方高圧端子22との接続が、胴体部分221と絶縁キャップ222との境界側に接続代L13が確保された状態で残っている。他方、図8に示されているように、この規制位置P11では、インターロック端子13は、相手方インターロック端子23から完全に離間している。従って、高圧コネクタ1がこの規制位置P11に達した第1段階では、機器C1側のインターロック回路がインターロック端子13の離間を検知して高圧端子12に対する高圧通電を遮断している。また、このときには、図6に示されているように、移動規制機構14における解除部142がフード部241から嵌合解除方向D12へと飛び出して露出している。
【0031】
図9は、図1図4に示されている高圧コネクタの相手方コネクタに対する嵌合が解除されるまでの第2段階を、移動規制機構についての図6と同等の断面図で示した図である。
【0032】
この図9に示されている第2段階では、相手方コネクタハウジング21のフード部241から嵌合解除方向D12に飛び出して露出した移動規制機構14の解除部142に対して次のような押圧操作が加えられる。このときの押圧操作は、移動規制機構14の係止爪141をフード部241の背面241aから外すようにカンチレバー部143を撓ませる係止解除方向D16の押圧操作となる。この第2段階において係止爪141がフード部241の背面241aから外されることで、移動規制機構14によるコネクタ移動の規制が解除される。
【0033】
図10は、図1図4に示されている高圧コネクタの相手方コネクタに対する嵌合が解除されるまでの第3段階を、図1と同等の斜視図で示した図である。図11は、図10に示されている第3段階での移動規制機構の状態を、図4と同等の断面図で示した図である。図12は、図10に示されている第3段階での高圧端子の端子状態を、図2と同等の断面図で示した図である。
【0034】
図10図12に示されている第3段階では、図9の第2段階でコネクタ移動の規制が解除された高圧コネクタ1が嵌合解除方向D12に更に動かされる。このときの高圧コネクタ1の移動も、図5図8の第1段階と同様に、操作レバー15が解除操作方向D14に回動されることで行われる。このときの操作レバー15の回動は、操作レバー15が機器C1の外壁C11に当接するまで行われる。この回動により、相手方コネクタ2の凸部211がカム溝151aの入り口まで案内され、これによって高圧コネクタ1が嵌合解除方向D12へと更に押し出される。
【0035】
また、図9の第2段階で相手方コネクタハウジング21のフード部241の背面241aから外された移動規制機構14の係止爪141は、その状態のまま高圧コネクタ1が押し出されることでフード部241を内側へと潜り抜けて嵌合解除方向D12に移動する。フード部241を内側に達したところでカンチレバー部143の撓みが解消する。
【0036】
そして、この第3段階では、図12に示されているように、高圧コネクタ1における非通電状態の高圧端子12の接点バネ121から、相手方コネクタ2における相手方高圧端子22の胴体部分221と絶縁キャップ222との境界が嵌合解除方向D12に外れる。これにより、インターロック端子13に続いて、高圧端子12と相手方高圧端子22との電気的な接続も解消されることとなる。
【0037】
図13は、図1図4に示されている高圧コネクタの相手方コネクタに対する嵌合が解除されるまでの第4段階を、図1と同等の斜視図で示した図である。図14は、図13に示されている第4段階での高圧端子の端子状態を、図2と同等の断面図で示した図である。
【0038】
図13及び図14に示されている第4段階では、操作レバー15の回動後の高圧コネクタ1が、相手方コネクタ2から嵌合解除方向D12に引き抜かれる。この第4段階において相手方コネクタ2の凸部211は、操作レバー15におけるカム溝151aの外へと出て行くこととなる。また、図14に示されているように、高圧コネクタ1における非通電状態の高圧端子12は相手方高圧端子22から益々離間し、やがて相手方高圧端子22が高圧端子12から抜け出ることとなる。この第4段階を以て、相手方コネクタ2からの高圧コネクタ1の嵌合解除作業が終了する。
【0039】
以上に説明した実施形態の高圧コネクタ1によれば、移動規制機構14によって嵌合解除方向D12へのコネクタ移動が規制される。この移動規制によって、インターロック端子13が相手方インターロック端子23から離間するまで高圧端子12と相手方高圧端子22との接続が維持される。そして、高圧端子12の離間は、インターロック端子13の離間後、即ち、インターロック回路によって高圧通電が遮断された後に行われる。このような非通電状態のタイミングで高圧端子12の離間が行われることで、高圧端子12についてのアーク発生を抑えることができる。このように、上記の高圧コネクタ1によれば、インターロック端子13を備えつつ、高圧端子12についてのアーク発生を抑えて嵌合解除を行うことができる。
【0040】
ここで、本実施形態では、移動規制機構14が、相手方コネクタハウジング21に係止してコネクタ移動を規制する係止爪141と、操作を受けて規制を解除する解除部142とを備えている。この構成によれば、作業者は、高圧端子12の離間作業がインターロック端子13の離間後の作業であることを解除部142の操作を介して認識した上で行うことができる。解除操作中のこの認識により、アーク抑制について作業者に安心感を与えつつ高圧端子12の離間作業を行わせることができる。
【0041】
また、本実施形態では、移動規制機構14の解除部142が、カンチレバー部143の自由端側に設けられ、中途部位の係止爪141を相手方コネクタハウジング21から外すようにカンチレバー部143を撓ませる押圧操作を受ける部位となっている。この構成によれば、作業者は、カンチレバー部143の自由端側に設けられた解除部142に対する押圧操作という作業性の良好な操作によってコネクタ移動の規制解除を行うことができる。
【0042】
また、本実施形態では、解除部142は、コネクタ嵌合中は相手方コネクタハウジング21に覆われ、規制位置P11までコネクタ移動が進むと露出する。この構成によれば、コネクタハウジング11が規制位置P11まで移動してインターロック端子13の離間が終わるまで、移動規制機構14における解除部142が相手方コネクタハウジング21に覆われることとなる。このように解除部142が覆われることで、コネクタ移動の規制が、インターロック端子13の離間前に意図せずに解除される等といった事態の発生を効果的に抑えることができる。
【0043】
また、本実施形態では、相手方コネクタハウジング21には、コネクタ嵌合中に解除部142を覆うフード部241と、コネクタ移動の際に係止爪141をフード部241に向かって案内する係止ガイド部242が形成されている。係止爪141は規制位置P11までコネクタ移動が進むとフード部241の背面241a側に当接係止し、解除部142は、この規制位置P11でフード部241から飛び出して露出する。この構成によれば、相手方コネクタハウジング21において解除部142を覆う部位と係止爪141が係止する部位とがフード部241という1つの部位で兼ねられる。この兼用構造により、相手方コネクタハウジング21における解除部142に関する構造を簡略化することができる。また、相手方コネクタハウジング21には、嵌合解除時のコネクタ移動の際にフード部241まで係止爪141を案内する係止ガイド部242が設けられている。この係止ガイド部242により、係止爪141を安定的にフード部241に係止させることができる。
【0044】
また、本実施形態では、高圧端子12が筒状のメス型端子であり、インターロック端子13がピン状のオス型端子となっている。そして、高圧端子12が相手方高圧端子22と電気的に接続可能な高圧接続距離L11が、インターロック端子13が相手方インターロック端子23と電気的に接続可能なインターロック接続距離L12よりも長い。この構成によれば、コネクタ移動の規制位置P11において、高圧端子12と相手方高圧端子22との接続を残しつつインターロック端子13が相手方インターロック端子23から離間するという状況を効果的に作り出すことができる。
【0045】
また、本実施形態では、コネクタハウジング11に、嵌合時及び嵌合解除時にコネクタハウジング11、即ち高圧コネクタ1を相手方コネクタ2に対して相対移動させる操作レバー15が設けられている。この構成によれば、コネクタ移動がレバー操作によって行われることから、嵌合時のコネクタ移動、及び、高圧端子12の離間に先立つインターロック端子13の離間を伴う嵌合解除時のコネクタ移動を、コネクタ姿勢を安定させて行うことができる。
【0046】
尚、以上に説明した実施形態は高圧コネクタの代表的な形態を示したに過ぎない。高圧コネクタは、これに限定されるものではなく種々変形して実施することができる。
【0047】
例えば、上述した実施形態では、高圧コネクタの一例として、車両に搭載されて配策される高圧電源用ハーネスW1の端部コネクタとして利用され、電源側の機器C1の機器コネクタとしての相手方コネクタ2と嵌合する高圧コネクタ1が例示されている。しかしながら、高圧コネクタは、これに限るものではなく、その具体的な適用対象や、嵌合相手の相手方コネクタの種類等については、これを問うものではない。
【0048】
また、上述した実施形態では、高圧コネクタの一例として、プラス/マイナスの一対の高圧端子12がコネクタハウジング11に収容された高圧コネクタ1が例示されている。しかしながら、高圧コネクタは、これに限るものではなく、高圧端子がコネクタハウジングに収容されたものであれば、その具体的な端子数等は任意に設定し得るものである。
【0049】
また、上述した実施形態では、インターロック端子が相手方インターロック端子を介して接続されるインターロック回路の一例として、電源側の機器C1に設けられてコネクタの嵌合解除とともに高圧通電を遮断するインターロック回路が例示されている。しかしながら、インターロック回路は、これに限るものではなく、その設置位置等については適宜に設定し得るものである。
【0050】
また、上述した実施形態では、移動規制機構の一例として、解除部142に対する操作を受けて係止爪141の係止を解除することでコネクタ移動の規制を解除する移動規制機構14が例示されている。しかしながら、移動規制機構は、これに限るものではなく、作業者からの操作を介さずにコネクタ移動の規制を解除するものであってもよい。ただし、移動規制の解除に解除部142への操作を必要とする移動規制機構14によれば、アーク抑制について作業者に安心感を与えつつ高圧端子12の離間作業を行わせることができる点は上述した通りである。
【0051】
また、上述した実施形態では、移動規制機構の一例として、係止爪141及び解除部142が撓み変形可能なカンチレバー部143に設けられ、解除部142に対する押圧操作によってコネクタ移動の規制を解除する移動規制機構14が例示されている。しかしながら、移動規制機構は、これに限るものではなく、解除部への操作を伴う機構であれば、その具体的な構造を問うものではない。ただし、解除部142に対する押圧操作でカンチレバー部143を撓ませて移動規制を解除する構造によれば、押圧操作という作業性の良好な操作によってコネクタ移動の規制解除を行うことができる点は上述した通りである。
【0052】
また、上述した実施形態では、移動規制機構の一例として、コネクタ嵌合中は解除部142が相手方コネクタハウジング21に覆われ、規制位置P11までコネクタ移動が進むと解除部142が露出する移動規制機構14が例示されている。しかしながら、移動規制機構は、これに限るものではなく、解除部が常に露出状態となるものであってもよい。ただし、コネクタ嵌合中は解除部142が覆われ嵌合解除時に解除部142が露出する移動規制機構14によれば、コネクタ移動の規制が意図せずに解除される等といった事態の発生を効果的に抑えることができる点は上述した通りである。
【0053】
また、上述した実施形態では、移動規制機構の一例として、コネクタ嵌合中はフード部241に解除部142が覆われ、嵌合解除時には係止爪141がフード部241の背面242a側に当接係止する移動規制機構14が例示されている。この移動規制機構14では、嵌合解除時には、係止爪141は係止ガイド部242に案内されてフード部241の背面242a側に当接係止し、解除部142がフード部241から飛び出して露出する。しかしながら、移動規制機構は、これに限るものではなく、コネクタ嵌合中に解除部を覆い嵌合解除時に解除部が飛び出す部位とは別部位に係止爪が係止するものであってもよい。また、係止部が、嵌合解除時に係止先へと特には案内されない構成であってもよい。ただし、解除部142を覆って嵌合解除時に解除部142が飛び出すフード部241に係止爪141が当接係止する移動規制機構14によれば、相手方コネクタハウジング21における解除部142に関する構造を簡略化することができる点は上述した通りである。また、係止爪141が係止ガイド部242によってフード部241まで案内される構成によれば、嵌合解除時に係止爪141を安定的にフード部241に係止させることができる点も上述した通りである。
【0054】
また、上述した実施形態では、高圧コネクタの一例として、次のような端子構造を有する高圧コネクタ1が例示されている。即ち、この高圧コネクタ1では、メス型の高圧端子12とオス型の相手方高圧端子22との高圧接続距離L11が、オス型のインターロック端子13とメス型の相手方インターロック端子23とのインターロック接続距離L12よりも長くなっている。しかしながら、高圧コネクタは、これに限るものではなく、高圧端子及びインターロック端子について任意の端子構造を採用し得るものである。ただし、上述の端子構造を採用することで、高圧端子12と相手方高圧端子22との接続を残しつつインターロック端子13が相手方インターロック端子23から離間するという状況を効果的に作り出すことができる点は上述した通りである。
【0055】
また、上述した実施形態では、高圧コネクタの一例として、嵌合及び嵌合解除の操作を行うための操作レバー15を備えた高圧コネクタ1が例示されている。しかしながら、高圧コネクタは、これに限るものではなく、操作レバーを特には備えていないもの等であってもよい。ただし、操作レバー15を備えることで、コネクタ姿勢を安定させてコネクタ移動を行うことができる点は上述した通りである。
【符号の説明】
【0056】
1 高圧コネクタ
2 相手方コネクタ
11 コネクタハウジング
12 高圧端子
13 インターロック端子
14 移動規制機構
15 操作レバー
15a 軸
21 相手方コネクタハウジング
22 相手方高圧端子
23 相手方インターロック端子
111 端子収容室
121,231 接点バネ
141 係止爪
142 解除部
143 カンチレバー部
151 アーム部
151a カム溝
211 凸部
221 胴体部分
222 絶縁キャップ
241 フード部
241a 背面
242 係止ガイド部
C1 機器
C11 外壁
D11 嵌合方向
D12 嵌合解除方向
D13 嵌合操作方向
D14 解除操作方向
D15 長手方向
D16 係止解除方向
L11 高圧接続距離
L12 インターロック接続距離
L13 接続代
P11 規制位置
W1 高圧電源用ハーネス
X11,X12 嵌合軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14