(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116646
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】ヒアルロン酸産生促進剤及び内用剤
(51)【国際特許分類】
A61K 36/9064 20060101AFI20240821BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20240821BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240821BHJP
A61K 8/9794 20170101ALI20240821BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20240821BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20240821BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20240821BHJP
【FI】
A61K36/9064 ZNA
A61P17/16
A61P19/02
A61K8/9794
A61Q19/08
A23L33/105
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022352
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野場 翔太
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 寿
(72)【発明者】
【氏名】坂井田 勉
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LE01
4B018MD48
4B018ME10
4B018MF01
4C083AA082
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB032
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB312
4C083AB352
4C083AB432
4C083AB442
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC242
4C083AC302
4C083AC352
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC482
4C083AC542
4C083AC842
4C083AD092
4C083AD112
4C083AD272
4C083AD352
4C083AD512
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC07
4C083CC12
4C083CC25
4C083DD22
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE12
4C083FF01
4C088AB81
4C088AC04
4C088BA09
4C088BA10
4C088CA05
4C088CA06
4C088CA08
4C088MA17
4C088MA22
4C088MA27
4C088MA28
4C088MA35
4C088MA43
4C088MA52
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZA96
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ヒアルロン酸産生促進作用に優れた新規な外用剤又は内用剤を提供する。
【解決手段】ビャクズクの抽出物は、優れたヒアルロン酸産生促進作用を有し、安定性にも優れていた。ビャクズクの抽出物は、皮膚の老化予防といった美容分野だけでなく、老化による機能低下の抑制、治療等といった医療分野にも利用でき、化粧品、食品、医薬部外品及び医薬品等への応用が期待される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビャクズクの抽出物を含有することを特徴とするヒアルロン酸産生促進剤。
【請求項2】
請求項1記載のヒアルロン酸産生促進剤を含有することを特徴とする皮膚外用剤又は内用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒアルロン酸産生促進剤及び内用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸は結合組織に広く分布する高分子多糖体として知られており、真皮中でゲル状の形態を呈し、肌の弾力を維持している。従って、ヒアルロン酸の変質や減少が皮膚老化において重要であると考えられている。また、ヒアルロン酸は高分子であるため、それを含有した化粧料を皮膚に直接塗布しても吸収されにくいという問題があった。そこで、これまで、線維芽細胞を活性化することで、細胞自らのコラーゲンやヒアルロン酸の産生を促進させることができる皮膚外用剤が模索されてきた(特許文献1)。
【0003】
また、ヒアルロン酸は関節にも存在しており、関節の荷重の衝撃を和らげたり、関節の動きを滑らかにしたりする機能を果たしていることが知られている。正常人間関節液中のヒアルロン酸濃度は約2.3mg/mLであるが、慢性関節リウマチの場合、関節液中のヒアルロン酸濃度は約1.2mg/mLと低下し、同時に関節液の粘度も著しく低下する(非特許文献1)。また、化膿性関節炎や痛風性関節炎等でも、慢性関節リウマチの場合と同様、ヒアルロン酸含量の低下が起こることが知られている(非特許文献2)。上記疾患において、潤滑機能の改善、関節軟骨の被覆・保護、疼痛抑制及び病的関節液の改善のために、関節液中のヒアルロン酸量を増加させることが考えられる。例えば、慢性関節リウマチの患者にヒアルロン酸ナトリウムの関節注入法を行うと、上記の症状の改善が認められることが知られている(非特許文献3)。しかしながら、上記疾患の治療は長期に渡る。従って、日常生活の中で手軽に予防や治療等ができるように、ヒアルロン酸産生促進剤を含有させた皮膚外用剤や食品、医薬品が望まれている。
【0004】
飛蚊症とは、視界内に糸くずや蚊のように見える薄い影が現れる症状で、目の内部を満たす硝子体内の混濁が網膜上に影を落とすことで発生する。飛蚊症は大きく2種類に分けることができ、加齢や紫外線、活性酸素等の影響で発症する生理的飛蚊症と、網膜剥離、網膜裂孔、硝子体出血、ぶどう膜炎等の疾患の一症状として現れる病的飛蚊症がある。生理的飛蚊症は、硝子体の主要成分であるヒアルロン酸の減少による液状化と、それに伴うコラーゲン線維の分解で硝子体内が混濁することで生じる。治療法として、硝子体切除手術やレーザー治療があるが、これらの施術は安全性の観点から日本ではあまり行われていないという実情があり、海外で治療を行うには多額の費用が必要となる。そのため、生理的飛蚊症を予防・改善するためには日常的に利用可能なヒアルロン酸産生促進剤を含有させた食品や医薬品が望まれている。
【0005】
ビャクズクは、主にショウガ科アモムム属に属する多年生草本植物である、Amomum kravanh、Amomum cardamomumの成熟果実を乾燥させたものである。これまでビャクズクの抽出物は、プロスタグランジン産生促進作用を有すること(特許文献2)、神経細胞突起を伸展する効果を有すること(特許文献3)が知られている。しかしながら、ビャクズクの抽出物がヒアルロン酸産生促進作用を有することは知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-1924号公報
【特許文献2】特開2012-144463号公報
【特許文献3】特開2001-55333号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】”Arthritis Rheumatism”, Vol.10,pp 357,1967
【非特許文献2】「結合組成」、金原出版、481頁、1984年
【非特許文献3】「炎症」、日本炎症学会、11巻、16頁、1991年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
安全で安定性に優れ、ヒアルロン酸産生促進作用に優れた素材が望まれているが、未だ十分満足し得るものが提供されていないのが現状である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような事情により、本発明者らは鋭意検討した結果、ビャクズクの抽出物が優れたヒアルロン酸産生促進作用を持ち、安定性においても優れていることを見出した。さらに、その抽出物を含有する外用剤又は内用剤が、安全で安定であり、ヒアルロン酸産生促進作用に優れており、多機能性美容・健康用素材、医薬品と成り得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)ビャクズクの抽出物を含有することを特徴とするヒアルロン酸産生促進剤。
(2)(1)記載のヒアルロン酸産生促進剤を含有することを特徴とする皮膚外用剤又は内用剤
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ビャクズクの抽出物を有効成分として含有するヒアルロン酸産生促進剤、皮膚外用剤又は内用剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に用いるビャクズク(白豆蒄)(別名:多骨(タコツ)、白寇(ビャック)、白叩(ビャック))は、主にショウガ科アモムム属に属する多年生草本植物であるAmomum kravanh、Amomum cardamomumの成熟果実を乾燥させたものである。インド南西部原産で主に熱帯地方で栽培されている。世界で最も古いスパイスであるカルダモンの近縁種で白カルダモン(ホワイトカルダモン)とも呼ばれる。ビャクズクは生薬や漢方、香辛料として利用されている。
【0013】
本発明において、ビャクズクの抽出は、ビャクズクをそのまま使用しても良く、蒸気加熱や焙煎といった修治処理、乾燥、粉砕、細切等の処理を行っても良い。
【0014】
本発明における蒸気加熱処理工程は、生又は乾燥したビャクズクに蒸気加熱処理を行う工程であり、さらには、蒸気加熱処理後に乾燥工程を行うことがより好ましい。蒸気加熱処理は、蒸気を対象物に直接接触させることによって行うことができ、例えば、水蒸気や、過熱水蒸気等の蒸気を、高湿度雰囲気下、例えば、湿度80%以上の雰囲気下で対象物を加熱する処理をいう。また、加熱は常圧下でも加圧下でも行うことができる。蒸気加熱処理の条件としては、温度は、70~180℃が好ましく、100~140℃がより好ましい。時間は、温度によって異なるが、1~10時間が好ましく、2~6時間がより好ましい。これらの温度及び時間の条件はあくまで例示であり、高めたい効果によっても異なるし、温度及び時間の相互の関係によっても異なるので、適宜変更できる。また、本発明における蒸気加熱処理は、連続式又はバッチ式のスチーマー(蒸し器)やオートクレーブ等を用いて行うことができる。また、乾燥工程としては、植物体の乾燥方法として通常用いられる方法が利用できる。例えば、自然乾燥(風乾)、天日乾燥、乾熱乾燥、通風乾燥、熱風乾燥、噴霧乾燥、減圧乾燥、真空乾燥等が挙げられ、好ましくは、乾熱乾燥、通風乾燥、熱風乾燥である。乾燥する温度及び乾燥時間は特に限定されないが、温度は40~70℃が好ましく、乾燥時間は乾燥温度、蒸気加熱処理後のビャクズクの水分含量、乾燥する総量によって異なるが、概ね4~24時間の範囲である。
【0015】
溶媒による抽出方法は特に限定されず、例えば、加熱抽出(例えば40~100℃)、常温抽出(例えば15~25℃)、低温抽出(例えば0~15℃)、撹拌抽出又はカラム抽出する方法等により行うことができる。抽出溶媒としては、例えば、水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等)、液状多価アルコール類(1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、流動パラフィン等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)が挙げられる。好ましくは、水、低級アルコール及び液状多価アルコール等の極性溶媒が良く、特に好ましくは、水、エタノール、1,3-ブチレングリコール及びプロピレングリコールが良い。これらの溶媒は一種でも二種以上を混合して用いても良い。特に好ましい抽出溶媒としては、水、水-エタノールの混合極性溶媒又は水-1,3-ブチレングリコールの混合極性溶媒が挙げられる。中でも、エタノール又は1,3-ブチレングリコールを20~100重量%含有するのが好ましく、50~100重量%含有するのが最も好ましい。また、上記抽出溶媒に酸やアルカリを添加して、pH調整した溶媒を使用することもできる。
【0016】
溶媒の使用量については、特に限定はなく、例えばビャクズク(乾燥重量)に対し、5倍以上、好ましくは10倍以上であれば良いが、抽出後に濃縮を行ったり、単離したりする場合の操作の便宜上100倍以下であることが好ましい。また、抽出温度や時間は、用いる溶媒の種類や抽出時の圧力等によって適宜選択できる。
【0017】
上記抽出物は、抽出した溶液のまま用いても良いが、必要に応じて、本発明の効果を奏する範囲で、濃縮(減圧濃縮、膜濃縮等による濃縮)、希釈、濾過、活性炭等による脱色、脱臭、エタノール沈殿等の処理を行ってから用いても良い。さらには、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理を行い、乾燥物として用いても良い。
【0018】
本発明は、上記抽出物をそのまま使用しても良く、抽出物の効果を損なわない範囲で、化粧品、医薬部外品、医薬品又は食品等に用いられる成分である油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、金属石鹸、pH調整剤、防腐剤、香料、保湿剤、粉体、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、酸化防止剤、美白剤、キレート剤、賦形剤、皮膜剤、甘味料、酸味料等の成分が含有されていても良い。
【0019】
本発明は、化粧品、医薬部外品、医薬品、食品のいずれにも用いることができ、その剤形としては、例えば、化粧水、クリーム、乳液、ゲル剤、エアゾール剤、エッセンス、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデーション、打粉、口紅、軟膏、パップ剤、錠菓、チョコレート、ガム、飴、飲料、散剤、顆粒剤、錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤、シロップ剤、丸剤、懸濁剤、液剤、乳剤、坐剤、注射用溶液等が挙げられる。
【0020】
外用の場合、本発明に用いる上記抽出物の含有量は、固形物に換算して0.0001重量%以上が好ましく、0.001~10重量%がより好ましい。さらに、0.01~5重量%が最も好ましい。0.0001重量%未満では十分な効果は望みにくい。10重量%を超えると、効果の増強は認められにくく不経済である。
【0021】
内用の場合、摂取量は年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なる。通常、成人1人当たりの1日の摂取量としては、5mg以上が好ましく、10mg~5gがより好ましい。さらに、20mg~2gが最も好ましい。
【0022】
次に本発明を詳細に説明するため、実施例として本発明に用いる抽出物の製造例、実験例及び処方例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。製造例に示す%とは重量%を、処方例に示す含有量の部とは重量部を示す。
【実施例0023】
ビャクズクの抽出物の製造例
製造例1~7においてビャクズクの抽出物を以下の通り製造した。
【0024】
(製造例1)ビャクズクの熱水抽出物の調製
ビャクズクの乾燥物10gに200mLの水を加え、95~100℃で2時間抽出した。得られた抽出液を濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してビャクズクの熱水抽出物を0.4g得た。
【0025】
(製造例2)ビャクズクの50%エタノール抽出物の調製
ビャクズクの乾燥物10gを200mLの50%エタノール水溶液に室温で7日間浸漬し、抽出を行った。得られた抽出液を濾過した後、エバポレーターで濃縮乾固してビャクズクの50%エタノール抽出物を0.5g得た。
【0026】
(製造例3)ビャクズクのエタノール抽出物の調製
ビャクズクの乾燥物10gを200mLのエタノールに室温で7日間浸漬し、抽出を行った。得られた抽出液を濾過した後、エバポレーターで濃縮乾固してビャクズクのエタノール抽出物を0.02g得た。
【0027】
(製造例4)ビャクズクの1,3-ブチレングリコール抽出物の調製
ビャクズクの乾燥物10gを200mLの1,3-ブチレングリコールに室温で7日間浸漬し、抽出を行った。得られた抽出液を濾過して、ビャクズクの1,3-ブチレングリコール抽出物を189g得た。
【0028】
(製造例5)蒸気加熱ビャクズクの調製
ビャクズクの乾燥物10gを121℃で2時間蒸気加熱処理したのち、60℃で5時間乾熱乾燥させる、蒸気加熱から乾燥までの処理を2回繰り返し、蒸気加熱ビャクズクを9.8g得た。
【0029】
(製造例6)蒸気加熱ビャクズクの50%エタノール抽出物の調製
蒸気加熱ビャクズク10gを200mLの50%エタノール水溶液に室温で7日間浸漬し、抽出を行った。得られた抽出液を濾過した後、エバポレーターで濃縮乾固して蒸気加熱ビャクズクの50%エタノール抽出物を0.2g得た。
【0030】
(製造例7)ビャクズク抽出物のエタノール沈殿上清物の調製
ビャクズクの乾燥物10gに200mLの水を加え、95~100℃で2時間抽出した。得られた抽出液を濾過した。その濾液に200mLのエタノールを加え、遠心分離し、得られた上清をエバポレーターで濃縮乾固してビャクズク抽出物のエタノール沈殿上清物を0.2g得た。