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特開2024-116656配管の止め栓、およびそれを用いた配管の開口部の密封方法
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  • 特開-配管の止め栓、およびそれを用いた配管の開口部の密封方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116656
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】配管の止め栓、およびそれを用いた配管の開口部の密封方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/18 20060101AFI20240821BHJP
【FI】
B29C65/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022372
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】株式会社PILLAR
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】ブイタン タン
(72)【発明者】
【氏名】足立 智大
(72)【発明者】
【氏名】蓮輪 拓朗
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AA16
4F211AG08
4F211AR12
4F211TA01
4F211TC11
4F211TD01
4F211TN07
(57)【要約】
【課題】配管の組み立て工程を複雑化させることも、流路の汚染源となることもなく、配管の開口部との溶着強度を十分に高くでき、かつ、開口部との間のシール性を十分に長期にわたって高く維持することのできる止め栓を提供する。
【解決手段】止め栓は、配管の開口部の内側に圧入される中芯と、開口部を外側から閉じる上蓋とを備えている。中芯の外周面は開口部の内周面との間に第1溶着部を含み、上蓋の片面は開口部の縁との間に第2溶着部を含む。これらの溶着部は、好ましくは熱板溶着によって形成される。第1溶着部は、開口部の縁から軸方向へ広がる範囲、および中芯の外周面と開口部の内周面との間の境界から径方向へ広がる範囲が、中芯が圧入されている状態にある開口部の縁に対向する熱源からの熱で、開口部と中芯との周壁を溶融させることの可能な範囲に等しい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の開口部を密封するための部材であって、
前記開口部の内側に圧入される中芯と、
前記開口部を外側から閉じる上蓋と
を備え、
前記中芯の外周面が前記開口部の内周面との間に第1溶着部を含み、
前記上蓋の片面が前記開口部の縁との間に第2溶着部を含む
ことを特徴とする止め栓。
【請求項2】
前記第1溶着部は、
前記開口部の縁から軸方向へ広がる範囲、および、
前記開口部の内周面と前記中芯の外周面との間の境界から径方向へ広がる範囲が、
前記中芯が圧入されている状態にある前記開口部の縁に対向する熱源からの熱で、前記開口部と前記中芯との周壁を溶融させることの可能な範囲
に等しい、
請求項1に記載の止め栓。
【請求項3】
前記中芯は、前記開口部の奥側の端が閉じている筒状であり、
前記中芯の周壁の厚さが前記開口部の周壁の厚さと等しい、
請求項1に記載の止め栓。
【請求項4】
配管の開口部を密封する方法であって、
止め栓を中芯と上蓋とに分けて用意するステップと、
前記開口部の内側に前記中芯を圧入するステップと、
前記開口部の縁と前記上蓋の片面との間に熱板を挟み、前記熱板からの熱で前記開口部の内周面と前記中芯の外周面との間に第1溶着部を形成するステップと、
前記熱板からの熱で溶融している状態の前記開口部の縁と前記上蓋の片面とを直に接触させて、前記開口部の縁と前記上蓋の片面との間に第2溶着部を形成するステップと
を備えている方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管を構成する部材に関し、特に配管の止め栓に関する。
【背景技術】
【0002】
配管は、一般に、複数本の直管または曲管を、エルボ、ソケット、ティー、クロス、マニホールド(多岐管)等、多様な継手でつなぎ合わせることによって構成される。配管の構成部材には、多くの場合、既製の汎用部材が採用される。したがって、配管の設計によっては、継手の枝に不要なものが残る場合がある。このような場合に不要な枝の開口部を密封するための部材を「止め栓」(または、「キャップ」、「プラグ」)という(たとえば特許文献1-4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭59-098197号公報
【特許文献2】特公昭62-017529号公報
【特許文献3】特開平11-063355号公報
【特許文献4】特許第6977132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
止め栓を配管の開口部に固定する手段としては締結が一般的である(たとえば特許文献1参照)。止め栓の内周の雌ねじが開口部の外周の雄ねじにねじ込まれ、逆に、止め栓の外周の雄ねじが開口部の内周の雌ねじにねじ込まれる。しかし、汎用部材の開口部には必ずしもねじが設けられていないので、ねじの加工が必要である。また、溶接等、ねじの緩みを防ぐ加工も必要とされる場合がある。これらの追加工により、締結の利用は配管の組み立て工程の簡素化を困難にする。さらに、ねじの規模の分、開口部の小型化が難しい。
【0005】
止め栓と配管の開口部とがいずれも樹脂製である場合には、止め栓を開口部に固定する手段として溶着もよく利用される(たとえば特許文献2-4参照)。止め栓の片面と開口部の縁とが、止め栓の外側から加えられる熱、振動、高周波、もしくは超音波(たとえば特許文献2、4参照。)、または、止め栓の中に予め埋め込まれている電熱線(たとえば特許文献3参照。)からの熱で溶かされた後、その状態で互いに接触させられる。溶融樹脂が混ざり合った後に固化することにより、止め栓の片面と開口部の縁とが一体化するので、開口部が密封される。しかし、その一体化する領域(以下、「溶着部」と呼ぶ。)は開口部の縁に限られるので、開口部の径が大きいほど、溶着部の機械的強度、すなわち溶着強度が十分なレベルまでには到達しがたい。これは特に、止め栓が耐えるべき流体の総圧力が開口部の流路の断面積、すなわち開口部の内径の2乗に比例するのに対し、溶着部の面積が開口部の縁の面積、すなわち開口部の内径の1乗にしか比例しないことによる。したがって、開口部の内径が大きいほど、溶着部には外部からの振動/衝撃、流体の圧力変動等で亀裂が入りやすく、その亀裂が止め栓と開口部との間のシール性を損なわせる可能性が高い。
【0006】
上記の可能性を抑えるには、たとえば、止め栓に、開口部の中に圧入される部分が設けられればよい。この圧入部分の外周面が開口部の内周面に密着することにより、止め栓と開口部との間のシール性が補われるからである。しかし、圧入部分は開口部と一体化まではしていないので、外部からの振動/衝撃、流体の圧力変動、素材の経年変形等によって圧入部分と開口部との隙間に流体が入り込んで残留する可能性はある。特に流体が液体である場合、圧入部分と開口部との隙間に残留する液体の中に溶け込んでいる物質が凝固してその隙間に蓄積し、微粒子等の大きな塊にまで成長してから配管内の流路に戻りかねない。これらの塊は、流路の各部、さらには、配管に繋がる様々な流体機器を汚染し得るので好ましくない。
【0007】
本発明の目的は上記の課題を解決することであり、特に、配管の組み立て工程を複雑化させることも、流路の汚染源となることもなく、配管の開口部との溶着強度を十分に高くでき、かつ、開口部との間のシール性を十分に長期にわたって高く維持することのできる止め栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの観点による止め栓は、配管の開口部を密封するための部材であり、開口部の内側に圧入される中芯と、開口部を外側から閉じる上蓋とを備えている。中芯の外周面は開口部の内周面との間に第1溶着部を含み、上蓋の片面は開口部の縁との間に第2溶着部を含む。これらの溶着部は、好ましくは熱板溶着によって形成されたものである。これにより、特に第1溶着部は、開口部の縁から軸方向へ広がる範囲、および開口部の内周面と中芯の外周面との間の境界から径方向へ広がる範囲が、中芯が圧入されている状態にある開口部の縁に対向する熱源からの熱で、開口部と中芯との周壁を溶融させることの可能な範囲に等しい。好ましくは、中芯は、開口部の奥側の端が閉じている筒状であり、中芯の周壁の厚さが開口部の周壁の厚さと等しい。
【0009】
本発明の別の観点による配管の開口部を密封する方法は、次のステップを備えている。まず、止め栓を中芯と上蓋とに分けて用意する。次に、開口部の内側に中芯を圧入する。続いて、開口部の縁と上蓋の片面との間に熱板を挟み、熱板からの熱で開口部の内周面と中芯の外周面との間に第1溶着部を形成する。その後、熱板からの熱で溶融している状態の開口部の縁と前記上蓋の片面とを直に接触させて、開口部の縁と上蓋の片面との間に第2溶着部を形成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明による上記の止め栓では従来の止め栓とは異なり、上蓋の片面が配管の開口部の縁との間に第2溶着部を含むだけではなく、中芯の外周面も開口部の内周面との間に第1溶着部を含む。これにより、溶着部の総体積が従来の止め栓での値よりも大幅に増えるので、溶着強度を十分なレベルにまで高めることが容易である。さらに、中芯の外周面と開口部の内周面とが一体化しているので、それらの間には流体が入り込みようがない。したがって、本発明による上記の止め栓は、配管内の流路の汚染源となることなく、配管の開口部との溶着強度を十分に高くでき、かつ、開口部との間のシール性を十分に長期にわたって高く維持することができる。
【0011】
本発明による上記の方法は従来の方法とは異なり、止め栓を中芯と上蓋とに分けて用意し、開口部の内側に中芯が圧入されている状態で、開口部の縁と上蓋の片面との間に熱板を挟む。これにより、従来の熱板溶着とは異なり、止め栓の中芯には熱板からの熱が上蓋を介さずに伝わるので、開口部の内周面と中芯の外周面との間の境界およびその近傍に十分に多量の熱を伝えることができる。また、その熱が伝わる範囲は、高周波溶着および超音波溶着によって熱を伝えることの可能な範囲よりも大幅に拡げることが容易である。こうして、十分に大きな体積の第1溶着部を容易に形成することができる。さらに、開口部の縁と上蓋の片面との間に熱板を挟んだ後にそれらを直に接触させるという工程だけで、第1溶着部と第2溶着部との両方を同時に形成することができる。したがって、本発明による上記の方法は、配管の組み立て工程を複雑化させることも、止め栓を流路の汚染源とさせることもなく、止め栓と配管の開口部との間の溶着強度を十分に高くでき、かつ、止め栓と開口部との間のシール性を十分に長期にわたって高く維持することができる。
【0012】
好ましくは、中芯は、開口部の奥側の端が閉じている筒状であり、中芯の周壁の厚さが開口部の周壁の厚さと等しい。この場合、熱板溶着の際、中芯の周壁と開口部の周壁との間の境界から各周壁の反対側までの熱勾配が両周壁で等しいので、両周壁間の境界から各周壁の内部へ溶着部が均等に広がる。したがって、溶着部の形成が中芯と開口部とのいずれをも過剰に歪ませることがないので、溶着強度とシール性とをいずれも十分に高くすることが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)は、本発明の実施形態による止め栓で密封された配管の開口部の外観を示す斜視図であり、(b)はその止め栓と開口部との組立図である。
図2図1の(a)が示す直線II-IIに沿った断面図である。
図3】(a)は、図1の(b)が示す止め栓の中芯を開口部に圧入する工程を模式的に示す断面図である。(b)は、開口部と止め栓の上蓋とを熱板で加熱する工程を模式的に示す断面図である。(c)は、開口部と止め栓の上蓋とを溶着する工程を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1の(a)は、本発明の実施形態による止め栓100で密封された配管の開口部210の外観を示す斜視図であり、(b)は止め栓100と開口部210との組立図である。図2は、図1の(a)が示す直線II-IIに沿った断面図である。
【0015】
開口部210は、たとえばマニホールド200に含まれる複数の開口部の1つである。流路に利用される開口部220は、たとえば継手300を通してチューブ400等の他の配管に接続される。一方、不要な開口部210は止め栓100で密封される。
【0016】
止め栓100と開口部210とはいずれも樹脂製であり、好ましくは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)等のフッ素樹脂から成る。更に好ましくは、止め栓100と開口部210との樹脂が同種である。
【0017】
図1の(b)が示すように、止め栓100は中芯110と上蓋120とを含む。これらは互いに独立に成形され、開口部210を密封する際、熱溶着によって一体化する(後述参照)。
【0018】
中芯110は、開口部210の内側に圧入可能な形状およびサイズである。たとえば、図1の(b)が示すように、開口部210が円筒状である場合は中芯110も円筒状であり、中芯110の外径が開口部210の内径よりもわずかに大きい。好ましくは、中芯110の軸方向における端のうち、開口部210の縁211側の端111(以下、「開口端」と呼ぶ。)は開いており、表面が円環状である。一方、開口部210の奥212側の端112(以下、「閉塞端」と呼ぶ。)は閉じており、表面が円板状である。図2が示すように中芯110が開口部210の内側に完全に圧入されている状態では、開口端111は表面が開口部210の縁211と同じ平面に含まれ、閉塞端112は表面がマニホールド200内の流路の壁面201と隙間も段差もなく連続している。中芯110の円筒状の壁113(以下、「周壁」と呼ぶ。)は外周面が開口部210の周壁213の内周面との間に、溶着されている領域131(以下、「第1溶着部」と呼ぶ。)を形成している。好ましくは、中芯110の周壁113の厚さTH1と開口部210の周壁213の厚さTH2とはいずれも一定であり、更に好ましくは両方の厚さTH1、TH2が等しい。
【0019】
上蓋120は、開口部210の縁211の全体を覆う形状、たとえば円板状であり(図1の(b)参照。)、外径が開口部210の内径以上であり、好ましくはそれよりも大きい(図2参照)。好ましくは、上蓋120の厚さは一定である。上蓋120は片側(図2では左側)の円板面121が中芯110の開口端111の表面と開口部210の縁211とのそれぞれとの間に、溶着されている領域132(以下、「第2溶着部」と呼ぶ。)を形成しており、開口部210を同軸に塞いでいる(図1の(a)、図2参照)。上蓋120、好ましくはその中心には軸方向の貫通穴122が開いている。貫通穴122は上蓋120を開口部210に被せる際、上蓋120の位置決めに利用される(後述参照)。
[止め栓による開口部の密封]
【0020】
止め栓100による開口部210の密封は次のように行われる。まず、中芯110と上蓋120とが個別に、フッ素樹脂から射出成形等によって製造される。次に、開口部210の内側に中芯110が圧入される。続いて、開口部210の縁211と上蓋120の片面121との間に熱板が挟まれ、熱板からの熱で開口部210の内周面と中芯110の外周面との間に第1溶着部131が形成される。さらに、熱板からの熱で溶融している状態の開口部210の縁211と上蓋120の片面121とが直に接触させられて、開口部210の縁211と上蓋120の片面121との間に第2溶着部132が形成される。
【0021】
図3の(a)は、中芯110を開口部210に圧入する工程を模式的に示す断面図である。中芯110の外径は開口部210の内径よりも大きいが、その差はわずかであり、たとえば数μm-数百μmである。したがって、中芯110の閉塞端112が開口部210の縁211に対して同軸に押し当てられると、開口部210を押し広げながら、かつ自身は押し縮められながら、開口部210の内側に入り込むことができる。ただし、その際の抵抗力が大きいので、圧入には、たとえば手動の場合は梃子等の工具が、自動の場合は空気圧または油圧等によるピストンが、それぞれ利用される。図3の(a)が2点鎖線で示すように、中芯110は、開口端111の表面が開口部210の縁211と同じ平面に含まれるまで、開口部210の内側に押し込まれる。このとき、好ましくは、閉塞端112の表面がマニホールド200内の流路の壁面201と隙間も段差もなく連続するように、中芯110の形状およびサイズが設計されている。
【0022】
図3の(b)は、開口部210と上蓋120とを熱板500で加熱する工程を模式的に示す断面図である。上蓋120は、貫通穴122に挿入された棒状の治具510によって支持され、開口部210と同軸に配置される。このとき、上蓋120の片面121が中芯110の開口端111の表面と開口部210の縁211とから軸方向(図3の(b)では右方)に間隔を開けて、それらと平行に対向する。開口部210の縁211と上蓋120の片面121との間に熱板500が挟まれる。熱板500はたとえば、鉄等、熱伝導性の高い素材から成る平板であり、内蔵または外付けのヒーター(図示せず。)からの熱で板面の温度を、好ましくは、中芯110、上蓋120、および開口部210を構成する樹脂の融点以上、典型的には数百℃まで上昇させることができる。好ましくは、熱板500の片側の板面(図3の(b)では左側面)が中芯110の開口端111の表面および開口部210の縁211に隙間を隔てて対向し、反対側の板面(図3の(b)では右側面)が上蓋120の片面121に隙間を隔てて対向し、それぞれ熱HTを輻射する。これにより、中芯110の開口端111の表面、開口部210の縁211、および上蓋120の片面121では樹脂が溶融する。中芯110と開口部210とでは更に熱HTが、主に周壁113、213の間の境界面に沿って伝わるので、その境界面の両側でも樹脂が溶融し、その境界面を越えて混ざり合う。こうして、第1溶着部131が形成される。好ましくは、第1溶着部131の範囲が周壁113、213の間の境界面の全体にわたる。
【0023】
図3の(c)は、開口部210と上蓋120とを溶着する工程を模式的に示す断面図である。熱板500は、中芯110の開口端111の表面、開口部210の縁211、および上蓋120の片面121のそれぞれで樹脂を十分な厚さまで溶融させると除去される。続いて、治具510が上蓋120の片面121を中芯110の開口端111の表面と開口部210の縁211とに押し付ける。こうして、上蓋120の片面121が中芯110の開口端111の表面と開口部210の縁211とに直に接触し、溶融している樹脂が互いに混ざり合うので、上蓋120の片面121と中芯110の開口端111の表面との間、および上蓋120の片面121と開口部210の縁211との間に第2溶着部132が形成される。その後、第1溶着部131と第2溶着部132とが十分に冷えて固まると、止め栓100が開口部210と一体化し、開口部210に完全に固定される。こうして、止め栓100による開口部210の密封が完了する。
[実施形態の利点]
【0024】
止め栓100では従来の止め栓とは異なり、上蓋120の片面121がマニホールド200の開口部210の縁211との間に第2溶着部132を含むだけではなく、中芯110の外周面も開口部210の内周面との間に第1溶着部131を含む。これにより、溶着部131、132の総体積が従来の止め栓での値よりも大幅に増えるので、溶着強度を十分なレベルにまで高めることが容易である。さらに、第1溶着部131では中芯110の外周面と開口部210の内周面とが一体化しているので、それらの間には流体が入り込みようがない。したがって、止め栓100は、マニホールド200内の流路の汚染源となることなく、開口部210との溶着強度を十分に高くでき、かつ、開口部210との間のシール性を十分に長期にわたって高く維持することができる。
【0025】
本発明の上記の実施形態による開口部210の密封方法は従来の密封方法とは異なり、止め栓100を中芯110と上蓋120とに分けて用意し、開口部210の内側に中芯110が圧入されている状態で、開口部210の縁211と上蓋120の片面121との間に熱板500を挟む。これにより、従来の熱板溶着とは異なり、中芯110には熱板500からの熱が上蓋120を介さずに伝わるので、開口部210の内周面と中芯110の外周面との間の境界およびその近傍に十分に多量の熱を伝えることができる。また、その熱が伝わる範囲は、高周波溶着および超音波溶着によって熱を伝えることの可能な範囲よりも大幅に拡げることが容易である。こうして、十分に大きな体積の第1溶着部131を容易に形成することができる。さらに、開口部210の縁211と上蓋120の片面121との間に熱板500を挟んだ後にそれらを直に接触させるという工程だけで、第1溶着部131と第2溶着部132との両方を同時に形成することができる。したがって、本発明の上記の実施形態による密封方法は、配管の組み立て工程を複雑化させることも、止め栓100を流路の汚染源とさせることもなく、止め栓100と開口部210との間の溶着強度を十分に高くでき、かつ、止め栓100と開口部210との間のシール性を十分に長期にわたって高く維持することができる。
【0026】
中芯110は筒状であり、周壁113の厚さが開口部210の周壁213の厚さと等しい。この場合、熱板溶着の際、周壁113、213の間の境界から各周壁113、213の反対側までの熱勾配が両周壁113、213で等しいので、両周壁113、213の間の境界から各周壁113、213の内部へ、第1溶着部131が均等に広がる。したがって、第1溶着部131の形成が中芯110と開口部210とのいずれをも過剰に歪ませることがないので、溶着強度とシール性とをいずれも十分に高くすることが容易である。
[変形例]
【0027】
(1)マニホールド200の開口部210は円筒状であるが、これに限らず、角筒、楕円筒等の他の形状であってもよい。これに合わせて、止め栓100は中芯110が円筒状の他に、角筒、楕円筒等、開口部210に圧入可能な他の形状であってもよい。一方、上蓋120は、開口部210を塞ぐことさえできれば、開口部210と中芯110との形状にかかわらず、円板状以外の形状であってもよい。好ましくは、上蓋120の外径は開口部210の内径よりも十分に広い。これにより、第2溶着部132の面積を十分に広く確保することが容易である。
【0028】
(2)マニホールド200の開口部210の縁211、中芯110の開口端111の表面、および上蓋120の片面121はいずれも平面状である。それに限らず、それらが、波状、鋸歯状等、立体的に複雑な形状であってもよい。それらの形状に合わせて、熱板500が平板状から変形させられればよい。ただし、中芯と開口部との間では周壁の厚さが揃えられることが好ましい。熱板溶着の際、それらを過熱で過剰に変形させることなく、第1溶着部を十分に広く形成することが容易だからである。
【0029】
(3)止め栓100とマニホールド200の開口部210とはいずれも同種のフッ素樹脂製である。しかし、流体に対する化学的安定性が十分に高い、流体に混入する不純物に対する制限が緩い等の理由で、止め栓100または開口部210が他の樹脂から形成されてもよい。また、溶着強度が十分に得られる等の理由で、止め栓100と開口部210とが異なる樹脂から形成されてもよい。
【0030】
(4)マニホールド200の開口部210を止め栓100で密封する際、好ましくは図3の(b)が示すように、熱板500による開口部210と上蓋120との加熱が非接触式で行われる。これにより、熱板500への樹脂の溶着を防ぐことができる。しかし、発明による加熱が非接触式に限られるわけではなく、熱板の素材が樹脂を溶着させにくい種類であり、または樹脂が熱板には溶着しにくい種類であれば、接触式であってもよい。また、熱源は熱板500には限られない。中芯110が圧入されている状態にある開口部210の縁に対向させることが可能でさえあれば、他の熱源が利用されてもよい。
【0031】
(5)マニホールド200の開口部210を止め栓100で密封する際、開口部210と上蓋120とを熱板500で加熱する工程では、図3の(b)が示すように、上蓋120を、その貫通穴122に挿入された棒状の治具510によって支持する。その他に、上蓋120の外周面を適切な治具等によって支持し、図3の(c)が示す開口部210と上蓋120とを溶着する工程では、その治具によって上蓋120の片面121を中芯110の開口端111の表面と開口部210の縁211とに押し付けてもよい。この場合、上蓋120の貫通穴122が省略されてもよい。
【符号の説明】
【0032】
100 止め栓
110 止め栓の中芯
111 中芯の開口端
112 中芯の閉塞端
113 中芯の周壁
120 止め栓の上蓋
121 上蓋の片面
122 上蓋の貫通穴
131 第1溶着部
132 第2溶着部
200 マニホールド
201 マニホールド内の流路の壁面
210 マニホールドの開口部
211 開口部の縁
212 開口部の奥
213 開口部の周壁
500 熱板
510 治具
図1
図2
図3