(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116677
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】消火システム
(51)【国際特許分類】
A62C 3/07 20060101AFI20240821BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20240821BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20240821BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20240821BHJP
【FI】
A62C3/07 Z
B60L3/00 H
B60L3/00 S
H01M50/249
H01M50/204 401F
H01M50/204 401D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022412
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高萩 夏輝
(72)【発明者】
【氏名】阿部 智大
(72)【発明者】
【氏名】花輪 洋宇
【テーマコード(参考)】
5H040
5H125
【Fターム(参考)】
5H040AA37
5H040AS04
5H040AT06
5H040AY04
5H040DD08
5H040DD26
5H040NN03
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125CD00
5H125EE26
5H125FF05
(57)【要約】
【課題】車両に搭載される電池モジュールに発生した火災を迅速に消火する。
【解決手段】消火システムは、車両に搭載される電池モジュールと、前記電池モジュールを収容する電池パックと、前記車両に設けられる消火液注入口と、前記消火液注入口と前記電池パック内とを連通する消火液注入路と、前記消火液注入路を開閉する注入用バルブと、前記車両に設けられるポンプと、前記ポンプと前記電池パック内とを連通する吸引路と、前記吸引路を開閉する吸引用バルブと、制御装置と、を備え、前記制御装置は、プロセッサと、メモリと、を有し、前記プロセッサは、前記電池モジュールの火災が発生したと判定した場合、前記吸引用バルブを開状態にさせることと、前記ポンプを駆動させて、前記電池パック内を負圧にすることと、前記注入用バルブを開状態にさせて、前記消火液注入口から前記電池パック内に消火液を注入可能な状態にすることと、を含む処理を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される電池モジュールと、
前記電池モジュールを収容する電池パックと、
前記車両に設けられる消火液注入口と、
前記消火液注入口と前記電池パック内とを連通する消火液注入路と、
前記消火液注入路を開閉する注入用バルブと、
前記車両に設けられるポンプと、
前記ポンプと前記電池パック内とを連通する吸引路と、
前記吸引路を開閉する吸引用バルブと、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
1つまたは複数のプロセッサと、
前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、
を有し、
前記プロセッサは、
前記電池モジュールの火災が発生したと判定した場合、
前記吸引用バルブを開状態にさせることと、
前記ポンプを駆動させて、前記電池パック内を負圧にすることと、
前記注入用バルブを開状態にさせて、前記消火液注入口から前記電池パック内に消火液を注入可能な状態にすることと、
を含む処理を実行する、消火システム。
【請求項2】
前記吸引路における前記電池パック側の端部は、前記電池パックの上面に配置され、
前記消火液注入路における前記電池パック側の端部は、前記電池パックのうち、前記吸引路の端部から離隔した位置に配置される、請求項1に記載の消火システム。
【請求項3】
前記電池パック内の空間は、1または2以上の隔壁により複数の分割空間に区画されており、
複数の前記電池モジュールはそれぞれ、前記電池パック内の前記分割空間の各々に収容されており、
前記消火液注入路は、前記消火液注入口から前記分割空間の各々に分岐して連通しており、
前記吸引路は、前記ポンプから前記分割空間の各々に分岐して連通しており、
前記注入用バルブおよび前記吸引用バルブは、前記分割空間の各々に設けられ、
前記プロセッサは、
いずれかの前記分割空間において、前記電池モジュールの火災が発生したと判定した場合、
複数の前記注入用バルブおよび前記吸引用バルブのうち、前記電池モジュールの火災が発生したと判定した前記分割空間に対応する前記注入用バルブおよび前記吸引用バルブを開状態にさせ、その他の前記分割空間に対応する前記注入用バルブおよび前記吸引用バルブを閉状態に維持させること、
を含む処理を実行する、請求項1に記載の消火システム。
【請求項4】
前記電池パック内の酸素濃度を検出する酸素濃度センサをさらに備え、
前記プロセッサは、
前記酸素濃度センサにより検出された前記電池パック内の酸素濃度が所定濃度未満となった場合、前記電池モジュールの火災が発生したと判定すること、
を含む処理を実行する、請求項1に記載の消火システム。
【請求項5】
前記電池パック内に貯留された前記消火液の液位レベルを検出する液位センサをさらに備え、
前記プロセッサは、
前記液位センサにより検出された前記液位レベルが所定レベル以上となった場合、前記ポンプを停止させること、
を含む処理を実行する、請求項1に記載の消火システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される電池モジュールの火災を消火する消火システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、電動車両に搭載されている電池モジュールに火災が発生した際に、当該電池モジュールの火災を消火する消火構造が開示されている。かかる消火構造では、消火液が注入される消火液注入口と電池パック内とを連通する消火液注入路が設けられており、消火液注入口から消火液注入路を通じて電池パックに消火液を注入することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の消火構造では、電池モジュールの火災の消火が可能ではあるものの、例えば、消火液注入路に適切な傾斜が形成されていなかった場合などのように、消火液注入路の態様などによっては、電池モジュールの火災の消火に時間がかかることがある。安全を考慮すると、電池モジュールの火災の消火は、迅速に行われることが望ましい。
【0005】
そこで、本発明は、車両に搭載される電池モジュールに発生した火災を迅速に消火することが可能な消火システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態に係る消火システムは、
車両に搭載される電池モジュールと、
前記電池モジュールを収容する電池パックと、
前記車両に設けられる消火液注入口と、
前記消火液注入口と前記電池パック内とを連通する消火液注入路と、
前記消火液注入路を開閉する注入用バルブと、
前記車両に設けられるポンプと、
前記ポンプと前記電池パック内とを連通する吸引路と、
前記吸引路を開閉する吸引用バルブと、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
1つまたは複数のプロセッサと、
前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、
を有し、
前記プロセッサは、
前記電池モジュールの火災が発生したと判定した場合、
前記吸引用バルブを開状態にさせることと、
前記ポンプを駆動させて、前記電池パック内を負圧にすることと、
前記注入用バルブを開状態にさせて、前記消火液注入口から前記電池パック内に消火液を注入可能な状態にすることと、
を含む処理を実行する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両に搭載される電池モジュールに発生した火災を迅速に消火することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態にかかる消火システムが適用される車両の構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本実施形態にかかる消火システムが適用される車両の部分概略図である。
【
図3】
図3は、消火制御部の動作を説明するフローチャートである。
【
図4】
図4は、消火液の注入の終了に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す具体的な寸法、材料、数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0010】
図1は、本実施形態にかかる消火システム1が適用される車両2の構成を示す概略図である。車両2は、例えば、ハイブリッド電気自動車である。以下では、車両2がハイブリッド電気自動車である例を用いて説明するが、車両2は、ハイブリッド電気自動車に限らず、電気自動車であってもよい。
【0011】
車両2は、電池パック10、電池モジュール12、消火液注入口14、消火液注入路16、注入用バルブ18、ポンプ20、吸引路22、吸引用バルブ24、酸素濃度センサ26、液位センサ28、表示装置30および制御装置32を備える。
【0012】
図1では、電池パック10に関して、電池パック10の側面から電池パック10内を透視した透視側面図で示されている。
図2は、本実施形態にかかる消火システム1が適用される車両2の部分概略図である。
図2では、電池パック10に関して、電池パック10の上面から電池パック10内を透視した透視平面図で示されている。以下、
図1および
図2を参照して、消火システム1の詳細を説明する。
【0013】
電池パック10は、中空の箱状に形成されている。電池パック10内の空間は、1または2以上の隔壁40により複数の分割空間42に区画されている。例えば、電池パック10内の空間は、隔壁40により、
図2の左右方向に3分割されるとともに、
図2の上下方向に2分割されており、合計で6分割されている。つまり、
図2の例では、電池パック10内の空間が、6つの分割空間42に区画されている。なお、分割空間42の数は、例示した6つに限らず、2以上の任意の数に設計されてもよい。隔壁40は、分割空間42の数が設計された数になるように設けられる。
【0014】
電池モジュール12は、例えば、リチウムイオン電池などの充放電が可能な2次電池である。車両2には、複数の電池モジュール12が搭載されている。複数の電池モジュール12は、電気的に直列接続されている。
【0015】
電池パック10は、電池モジュール12を収容している。より詳細には、複数の電池モジュール12はそれぞれ、電池パック10内の分割空間42の各々に収容されている。例えば、1つの分割空間42に1つの電池モジュール12が収容されており、いずれの分割空間42にも電池モジュール12が収容されている。換言すると、電池モジュール12ごとに分割空間42が区画されている。なお、1つの分割空間42に1つの電池モジュール12が収容される態様に限らず、1つの分割空間42に複数の電池モジュール12が収容されてもよい。
【0016】
本実施形態の消火システム1では、電池モジュール12の火災が発生した場合、電池モジュール12の火災を消火する消火液を電池パック10内に注入することができるようになっている。消火液は、消火機能を有する液体である。消火液によって電池モジュール12が液没されることによって、電池モジュール12の火災が消火される。消火液は、消火成分が含まれていない水、消火成分が含まれている水溶液、または、消火剤としてのその他の液体のいずれであってもよい。消火液は、例えば、水道水、井戸水、消火用水、消防車または消火栓などから供給される水など、電池モジュール12を液没させて消火させることが可能な任意の液体であってもよい。本実施形態では、消火液が水である例について説明する。
【0017】
消火液注入口14は、車両2の外装に設けられている。なお、消火液注入口14は、車体の外装板に設けられてもよいし、車体本体の下部に設けられてもよい。例えば、消火液注入口14は、電池モジュール12を車両2の外部から充電するための充電口やガソリンなどの燃料油の給油口が配置されるインレット50に設けられる。
【0018】
後述するが、電池モジュール12に火災が発生した場合、消火作業を行う消火作業者が、例えば、消防車の消火ホースの端部を消火液注入口14に取り付ける。消火液注入口14には、消火ホースを通じて消火液が注入される。
【0019】
消火液注入路16は、消火液注入口14と電池パック10内とを連通する。消火液注入路16は、消火液注入口14から分割空間42の各々に分岐して連通している。すなわち、消火液注入路16は、消火液注入口14から消火液が注入されると、注入された消火液を電池パック10内の各々の分割空間42に導くことができる。
【0020】
注入用バルブ18は、消火液注入路16における電池パック10側の端部に設けられる。消火液注入路16が分割空間42の各々に分岐しているため、注入用バルブ18は、分割空間42の各々に設けられる。注入用バルブ18は、当該注入用バルブ18が設けられている分割空間42に繋がる消火液注入路16を開閉する。
【0021】
注入用バルブ18が閉状態のとき、当該注入用バルブ18が設けられている分割空間42は、車両2の外部から遮蔽されている。注入用バルブ18が開状態のとき、当該注入用バルブ18が設けられている分割空間42が、消火液注入口14および消火液注入路16を通じて車両2の外部と連通する。そのため、注入用バルブ18が開状態のとき、開状態となっている当該注入用バルブ18が設けられている分割空間42に、消火液注入口14から消火液を注入可能な状態となる。
【0022】
ポンプ20は、気体を吸引することで負圧を生成することが可能な吸引ポンプである。ポンプ20は、図示を省略するが、吸引した気体を車両2の外部にパージするパージ弁を有する。
【0023】
吸引路22は、ポンプ20と電池パック10内とを連通する。吸引路22は、ポンプ20から分割空間42の各々に分岐して連通している。すなわち、ポンプ20は、吸引路22を通じて分割空間42の各々から気体を吸引することができ、分割空間42を負圧にすることが可能となっている。
【0024】
吸引用バルブ24は、吸引路22における電池パック10側の端部に設けられる。吸引路22が分割空間42の各々に分岐しているため、吸引用バルブ24は、分割空間42の各々に設けられる。吸引用バルブ24は、当該吸引用バルブ24が設けられている分割空間42に繋がる吸引路22を開閉する。
【0025】
吸引用バルブ24が閉状態のとき、当該吸引用バルブ24が設けられている分割空間42は、ポンプ20から遮蔽されている。吸引用バルブ24が開状態のとき、当該吸引用バルブ24が設けられている分割空間42が、吸引路22を通じてポンプ20と連通する。そのため、吸引用バルブ24が開状態であってポンプ20が駆動すると、開状態となっている当該吸引用バルブ24が設けられている分割空間42内の気体がポンプ20によって吸引され、当該分割空間42内を負圧にすることができる。
【0026】
本実施形態の消火システム1では、後述するが、電池モジュール12の火災が発生した場合に、ポンプ20によって電池パック10内が負圧にされる。これにより、本実施形態の消火システム1では、消火液注入口14から注入された消火液が電池パック10内に吸引されるように作用するため、消火液を電池パック10内に迅速に注入することができる。
【0027】
吸引路22における電池パック10側の端部は、電池パック10の上面に配置される。これにより、消火液が分割空間42内に注入されて分割空間42の底部に貯留されたとしても、分割空間42内の消火液がポンプ20に吸引されることを抑制することができる。
【0028】
例えば、吸引路22における電池パック10側の端部は、分割空間42の上面における実質的に中央に配置されてもよい。より詳細には、吸引路22における電池パック10側の端部は、当該端部の少なくとも一部が、分割空間42の上面における4隅の対角線の交点と接する位置、すなわち、分割空間42の上面の中央と接する位置に配置されてもよい。これにより、車両2が水平面に対して傾斜した姿勢となって、分割空間42内に貯留された消火液の水面が分割空間42の上面に対して傾斜したとしても、分割空間42内の消火液が吸引路22を通じてポンプ20に吸引されることを抑制することができる。
【0029】
消火液注入路16における電池パック10側の端部は、電池パック10のうち、吸引路22の端部から離隔した位置に配置される。これにより、消火液注入路16から電池パック10内に注入された消火液が、電池モジュール12の消火に寄与することなく、そのまま吸引路22に吸引されることを抑制することができる。
【0030】
例えば、消火液注入路16における電池パック10側の端部は、電池パック10の側面に配置され、電池パック10の底面の近傍に位置する。より詳細には、消火液注入路16における電池パック10側の端部は、分割空間42における底部側の4隅の1つの近傍に位置する。これにより、消火液注入路16における電池パック10側の端部は、分割空間42における上面側に位置する吸引路22の端部に対して、離隔することになる。
【0031】
なお、吸引路22における電池パック10側の端部は、分割空間42の上面における実質的に中央に配置される態様に限らない。例えば、吸引路22における電池パック10側の端部は、分割空間42における上部側の4隅のうち、消火液注入路16における電池パック10側の端部の位置に対して対角となる隅に配置されてもよい。このように、消火液注入路16における電池パック10側の端部と、吸引路22における電池パック10側の端部とを分割空間42において対角に配置してもよい。これにより、消火液注入路16から電池パック10内に注入された消火液が、電池モジュール12の消火に寄与することなく、そのまま吸引路22に吸引されることを、より効果的に抑制することができる。
【0032】
また、消火液注入路16における電池パック10側の端部は、電池パック10の側面に配置される例に限らず、吸引路22の端部から離隔させつつ電池パック10の上面に配置されてもよい。例えば、消火液注入路16における電池パック10側の端部は、電池パック10の上面に配置されるとともに、分割空間42における上部側の4隅のうち、吸引路22における電池パック10側の端部の位置に対して対角となる隅に位置するようにしてもよい。また、消火液注入路16における電池パック10側の端部は、電池パック10の底面に配置されてもよい。例えば、消火液注入路16における電池パック10側の端部は、電池パック10の電池モジュール12が配置されていない底面に位置するようにしてもよい。
【0033】
ポンプ20は、例えば、ハイブリッド電気自動車や電気自動車に一般的に搭載されているブレーキブースター用のポンプを使用できる。なお、ポンプ20は、ブレーキブースター用のポンプに限らず、例えば、ブレーキブースター用のポンプとは別に設けられてもよい。以下では、ブレーキブースター用のポンプを、電池パック10内を負圧にするポンプ20として兼用する例を説明する。
【0034】
ブレーキペダル60は、ブレーキブースター62に接続されている。ブレーキブースター62はブレーキ機構64に接続されている。ブレーキペダル60が運転者によって踏み込まれると、ブレーキブースター62を介してブレーキ機構64が作動し、車両2が減速する。ブレーキブースター62は、ブレーキペダル60の踏み込み力が軽減されるようにアシストする。
【0035】
エンジン66の吸気ポートには、吸気流路68が接続されている。吸気流路68におけるスロットルバルブ70とエンジン66との間において、吸気流路68から分岐流路72が分岐している。分岐流路72は、吸気流路68とブレーキブースター62とを連通する。
【0036】
分岐流路72には、第1ワンウェイバルブ74が設けられる。第1ワンウェイバルブ74は、ブレーキブースター62側からエンジン66側へ流れる気体の流れを許可し、エンジン66側からブレーキブースター62側に流れる気体の流れを遮断する。
【0037】
分岐流路72における第1ワンウェイバルブ74とブレーキブースター62との間には、第2ワンウェイバルブ76が設けられる。第2ワンウェイバルブ76は、ブレーキブースター62側からエンジン66側へ流れる気体の流れを許可し、エンジン66側からブレーキブースター62側に流れる気体の流れを遮断する。
【0038】
分岐流路72における第1ワンウェイバルブ74と第2ワンウェイバルブ76との間には、連絡流路78の一端が接続されている。連絡流路78の他端は、吸引路22における分岐部80とポンプ20との間に接続されている。
【0039】
ポンプ20は、吸引路22を通じて分割空間42内の気体を吸引することが可能となっているとともに、吸引路22に接続される連絡流路78および分岐流路72を通じてブレーキブースター62内の気体を吸引することも可能となっている。
【0040】
エンジン66が動作している状態では、エンジン66内で負圧が発生する。この状態では、エンジン66内の負圧によって、吸気流路68および分岐流路72を通じて、ブレーキブースター62内を負圧にすることができる。ブレーキブースター62内が負圧になることで、ブレーキブースター62は、ブレーキペダル60の踏み込み力をアシストすることができる。
【0041】
一方、例えば、車両2が不図示のモータによって走行する状態のように、エンジン66が動作していない状態では、エンジン66内に負圧を発生させることができない。そこで、この状態では、ポンプ20を駆動させる。そうすると、ポンプ20がブレーキブースター62内から気体を吸引することで、ブレーキブースター62内を負圧にすることができる。その結果、エンジン66が動作していなくとも、ブレーキブースター62によってブレーキペダル60の踏み込み力をアシストすることができる。
【0042】
さらに、本実施形態の消火システム1では、電池モジュール12の火災が発生した場合、火災が発生した分割空間42の吸引用バルブ24を開状態にさせるとともに、ポンプ20を駆動させることで、火災が発生した分割空間42内を負圧にすることができる。これにより、消火液注入口14から注入された消火液が、負圧にした分割空間42内に吸引されるように作用する。その結果、分割空間42内に消火液を迅速に注入することが可能となる。
【0043】
ブレーキブースター用のポンプと、分割空間42内を負圧にするポンプ20とを兼用することで、分割空間42内を負圧にする専用のポンプ20を新たに設ける態様と比べ、本実施形態の消火システム1を、部品点数を抑えつつ車両2に適用することができる。その結果、本実施形態の消火システム1が適用された車両2の重量の増加を抑制することができ、ポンプ20を配置するスペースの増加を抑制することができ、車両2の製造コストを抑制することができる。
【0044】
酸素濃度センサ26は、電池パック10内に配置され、電池パック10内の酸素濃度を検出する。より詳細には、酸素濃度センサ26は、分割空間42の各々に設けられる。酸素濃度センサ26は、設置された分割空間42内の酸素濃度を検出する。
【0045】
酸素濃度センサ26は、例えば、電池パック10の上面に配置される。なお、酸素濃度センサ26は、電池パック10の上面に設置される態様に限らず、電池パック10内の酸素濃度を検出可能な任意の位置に設けられてもよい。
【0046】
液位センサ28は、電池パック10内に配置され、電池パック10内に貯留した消火液の液位レベルを検出する。より詳細には、液位センサ28は、分割空間42の各々に設けられる。液位センサ28は、設置された分割空間42内に貯留した消火液の液位レベルを検出する。
【0047】
液位センサ28は、例えば、電池パック10の上面に配置される。なお、液位センサ28は、電池パック10の上面に配置される態様に限らない。液位センサ28は、電池モジュール12が消火液によって適切に液没されたことを検知できるように、例えば、電池モジュール12の上面より高い任意の位置に配置されてもよい。
【0048】
表示装置30は、例えば、LEDランプ、液晶デバイス、有機ELデバイスなどで構成される。表示装置30は、消火液注入口14の周囲に設けられる。例えば、消火液注入口14がインレット50に設けられる態様では、表示装置30もインレット50に設けられる。表示装置30は、消火液注入口14から消火液を注入可能な状態であることを報知することができる。また、表示装置30は、消火液の注入が完了したことを報知することができる。
【0049】
制御装置32は、1つまたは複数のプロセッサ90と、プロセッサ90に接続される1つまたは複数のメモリ92とを有する。制御装置32は、例えば、バッテリコントロールユニットなどであってもよいし、車両2に搭載される他のコントロールユニットであってもよい。メモリ92は、プログラム等が格納されたROMおよびワークエリアとしてのRAMを含む。プロセッサ90は、メモリ92に含まれるプログラムと協働して、消火システム1の動作を実現する消火制御部94としても機能する。
【0050】
消火制御部94は、酸素濃度センサ26により検出された電池パック10内の酸素濃度が所定濃度未満となった場合、電池モジュール12の火災が発生したと判定する。これにより、電池モジュール12の火災の発生を的確に認識することができる。
【0051】
消火制御部94は、電池モジュール12の火災が発生したと判定した場合、吸引用バルブ24を開状態にさせ、ポンプ20を駆動させて電池パック10内を負圧にする。そして、消火制御部94は、注入用バルブ18を開状態にさせて、消火液注入口14から電池パック10内に消火液を注入可能な状態にする。
【0052】
より詳細には、消火制御部94は、いずれかの分割空間42において、電池モジュール12の火災が発生したと判定した場合、複数の注入用バルブ18および吸引用バルブ24のうち、電池モジュール12の火災が発生したと判定した分割空間42に対応する注入用バルブ18および吸引用バルブ24を開状態にさせる。一方、消火制御部94は、その他の分割空間42、すなわち、電池モジュール12の火災が発生したと判定されていない分割空間42に対応する注入用バルブ18および吸引用バルブ24を閉状態に維持させる。
【0053】
これにより、注入用バルブ18および吸引用バルブ24が開状態となった分割空間42のみが負圧となり、当該分割空間42にのみ、消火液が注入可能な状態となる。そして、消火液が注入されると、火災が発生したと判定した分割空間42内の電池モジュール12のみが消火液によって液没される。このため、火災が発生した電池モジュール12の火災を的確に消火することができるとともに、火災が発生していない電池モジュール12が消火液によって無駄に液没することを防止できる。その結果、例えば、火災が発生していない電池モジュール12の再利用が可能となる。
【0054】
消火制御部94は、液位センサ28により検出された液位レベルが所定レベル以上となった場合、ポンプ20を停止させる。これにより、電池モジュール12が消火液によって液没されたことを的確に把握することができる。
【0055】
図3は、消火制御部94の動作を説明するフローチャートである。吸引用バルブ24および注入用バルブ18の初期状態は、閉状態であるとする。消火制御部94は、所定時間間隔で訪れる所定の割込みタイミングが到来するごとに、
図3の一連の処理を繰り返し実行する。
【0056】
所定の割込みタイミングが到来すると、消火制御部94は、各々の酸素濃度センサ26から酸素濃度を取得する(S10)。
【0057】
消火制御部94は、取得した複数の酸素濃度について、酸素濃度が所定濃度未満となる酸素濃度があるかを判定する(S11)。ここでの所定濃度は、火災が発生していないときの酸素濃度と、火災が発生したときの酸素濃度とを区別可能な酸素濃度に設定される。
【0058】
酸素濃度が所定濃度未満となる酸素濃度が1つもない場合(S11におけるNO)、消火制御部94は、
図3の一連の処理を終了する。
【0059】
酸素濃度が所定濃度未満となる酸素濃度が1つ以上ある場合(S11におけるYES)、消火制御部94は、電池モジュール12の火災が発生したと判定し(S12)、火災が発生した分割空間42を特定する(S13)。より詳細には、消火制御部94は、ステップS11の処理で酸素濃度が所定濃度未満となった酸素濃度を検出した酸素濃度センサ26が配置されている分割空間42が、火災が発生した分割空間42であると特定する。以下、火災が発生したと特定した分割空間42を、消火対象の分割空間42という場合がある。
【0060】
次に、消火制御部94は、消火対象の分割空間42に対応する吸引用バルブ24を開状態にさせ(S14)、ポンプ20を駆動させる(S15)。なお、ブレーキブースター用のポンプと、分割空間42を負圧にするポンプ20とを兼用する場合、既にポンプ20が駆動していることがあるが、その場合には、消火制御部94は、ポンプ20の駆動を維持させる。
【0061】
次に、消火制御部94は、消火対象の分割空間42に対応する注入用バルブ18を開状態にさせる(S16)。
【0062】
そして、消火制御部94は、消火液注入口14から電池パック10内に消火液を注入可能な状態であること、すなわち、消火液の注入準備が完了した旨を報知し(S17)、
図3の一連の処理を終了する。例えば、消火制御部94は、消火液の注入準備が完了した旨を表示装置30に表示させる。
【0063】
消火作業者は、表示装置30の表示を見ることで、消火液の注入準備が完了していることを認識することができる。そして、消火作業者は、消火液の注入準備が完了していることを認識すると、消火ホースの端部を消火液注入口14に取り付けて、消火液の注入を開始する。
【0064】
図4は、消火液の注入の終了に関するフローチャートである。消火制御部94は、所定時間間隔で訪れる所定の割込みタイミングが到来するごとに、
図4の一連の処理を繰り返し実行する。
【0065】
所定の割込みタイミングが到来すると、消火制御部94は、消火対象の分割空間42に対応する液位センサ28から液位レベルを取得する(S20)。なお、消火対象の分割空間42が特定されていない場合、つまり、電池モジュール12の火災が発生していないと判定されている場合、消火制御部94は、
図4の一連の処理を終了してもよい。
【0066】
消火制御部94は、取得した液位レベルが所定レベル以上であるか否かを判定する(S21)。ここでの所定レベルは、例えば、液位センサ28の設置位置に基づいて設定され、電池モジュール12の上面の位置よりも高い位置に設定される。
【0067】
取得した液位レベルが所定レベル未満である場合(S21におけるNO)、消火制御部94は、
図4の一連の処理を終了する。
【0068】
取得した液位レベルが所定レベル以上である場合(S21におけるYES)、消火制御部94は、ポンプ20を停止させ(S22)、消火対象の分割空間42に対応する吸引用バルブ24を閉状態にさせる(S23)。
【0069】
そして、消火制御部94は、消火液の注入が完了した旨を報知し(S24)、
図4の一連の処理を終了する。例えば、消火制御部94は、消火液の注入が完了した旨を表示装置30に表示させる。
【0070】
消火作業者は、表示装置30の表示を見ることで、消火液の注入が完了したことを認識することができる。そして、消火作業者は、消火液の注入が完了したことを認識すると、消火液の注入を実際に停止させ、消火ホースの端部を消火液注入口14から取り外す。
【0071】
なお、消火制御部94は、消火液の注入が完了した旨の報知とともに、消火対象の分割空間42に対応する注入用バルブ18を閉状態にさせてもよい。
【0072】
以上のように、本実施形態の消火システム1のプロセッサ90は、電池モジュール12の火災が発生したと判定した場合、吸引用バルブ24を開状態にさせることと、ポンプ20を駆動させて、電池パック10内を負圧にすることと、注入用バルブ18を開状態にさせて、消火液注入口14から電池パック10内に消火液を注入可能な状態にすることと、を含む処理を実行する。
【0073】
これにより、本実施形態の消火システム1では、火災が発生した電池パック10内が負圧になるため、消火液注入口14から消火液が注入されるとき、消火液が消火液注入路16を通じて当該電池パック10内に吸引されるように作用する。
【0074】
したがって、本実施形態の消火システム1によれば、消火液注入口14から注入された消火液が電池パック10内に早く到達するため、電池モジュール12に発生した火災を迅速に消火することが可能となる。
【0075】
本実施形態の消火システム1では、消火液が電池パック10内に吸引されるように作用するため、消火液注入路16に傾斜が設けられていなかったり、消火液注入口14が車両2の下部に設けられていたりしても、消火液を電池パック10内に適切に注入することができる。
【0076】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0077】
1 消火システム
2 車両
10 電池パック
12 電池モジュール
14 消火液注入口
16 消火液注入路
18 注入用バルブ
20 ポンプ
22 吸引路
24 吸引用バルブ
26 酸素濃度センサ
28 液位センサ
32 制御装置
40 隔壁
42 分割空間
90 プロセッサ
92 メモリ