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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116691
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】ゴルフボール
(51)【国際特許分類】
   A63B 37/00 20060101AFI20240821BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20240821BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20240821BHJP
   C08K 5/37 20060101ALI20240821BHJP
   C08K 5/47 20060101ALI20240821BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
A63B37/00 626
A63B37/00 512
A63B37/00 614
A63B37/00 536
A63B37/00 654
A63B37/00 538
A63B37/00 632
C08K5/09
C08K5/14
C08K5/37
C08K5/47
C08L7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022443
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】永倉 光
(72)【発明者】
【氏名】兼子 拓巳
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 建彦
(72)【発明者】
【氏名】志賀 一喜
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC01W
4J002AC05X
4J002DE109
4J002EF046
4J002EG046
4J002EK037
4J002EV038
4J002EV048
4J002EV058
4J002EV328
4J002FD146
4J002FD147
4J002GC01
(57)【要約】
【課題】持続可能でよりよい社会の実現を目指す新規なゴルフボールであって、ドライバーショットのスピン量が低いゴルフボールを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のゴルフボールは、球状構成部材を有するゴルフボールであって、
前記球状構成部材は、(a)天然ゴムを含有するゴム成分、(b)共架橋剤、(c)架橋開始剤、および(d)有機硫黄化合物を含有するゴム組成物から形成されたものであり、
球状構成部材の表面硬度(Hs)が、ショアC硬度で75以上であり、球状構成部材の表面硬度(Hs)と球状構成部材の中心から球状構成部材の半径の75%地点の硬度(H75)との硬度差(Hs-H75)が、ショアC硬度で3以上、10以下であり、球状構成部材の表面硬度(Hs)と中心硬度(Ho)との硬度差(Hs-Ho)が、ショアC硬度で16以上であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状構成部材を有するゴルフボールであって、
前記球状構成部材は、(a)天然ゴムを含有するゴム成分、(b)共架橋剤、(c)架橋開始剤、および(d)有機硫黄化合物を含有するゴム組成物から形成されたものであり、
球状構成部材の表面硬度(Hs)が、ショアC硬度で75以上であり、球状構成部材の表面硬度(Hs)と球状構成部材の中心から球状構成部材の半径の75%地点の硬度(H75)との硬度差(Hs-H75)が、ショアC硬度で3以上、10以下であり、球状構成部材の表面硬度(Hs)と中心硬度(Ho)との硬度差(Hs-Ho)が、ショアC硬度で16以上であることを特徴とするゴルフボール。
【請求項2】
球状構成部材の表面硬度(Hs)と球状構成部材の中心から球状構成部材の半径の50%地点の硬度(H50)との硬度差(Hs-H50)が、ショアC硬度で、8以上である請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項3】
ゴルフボールの直径が、40mm~45mmであり、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときの圧縮変形量が、2.5mm以上、4.0mm以下である請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項4】
(a)ゴム成分中の天然ゴムの含有率が、10質量%~50質量%である請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項5】
前記ゴム組成物が、チオフェノール類および/またはポリスルフィド類に属する(d)有機硫黄化合物を含有する請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項6】
前記ゴム組成物が、さらにチアゾール類に属する(d)有機硫化合物を含有する請求項5に記載のゴルフボール。
【請求項7】
前記球状構成部材からなるワンピースゴルフボールである請求項1に記載のゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボールに関するものであり、持続可能でよりよい社会の実現を目指す新規なゴルフボールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
持続可能でよりよい社会の実現を目指して、ゴルフボールを構成する材料について新たな検討が進められている。ゴルフボールを構成するゴムとして、天然ゴムを使用することが検討されている。
【0003】
特許文献1には、基材ゴム100重量部に対し、10~60モル%エポキシ化された天然ゴム3~35重量部、メタクリル酸20~35重量部および酸化亜鉛20~50重量部含有する組成物から得られる練習場用ゴルフボールが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61-71069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ゴルフボールを構成するゴム成分として、天然ゴムを使用したゴルフボールは、合成ゴムのみを使用したゴルフボールに比べて性能が劣るという課題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、天然ゴムを使用したゴルフボールであって、ドライバーショットのスピン量を低下させることにより、飛距離の向上を図ったゴルフボールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のゴルフボールは、球状構成部材を有するゴルフボールであって、前記球状構成部材は、(a)天然ゴムを含有するゴム成分、(b)共架橋剤、(c)架橋開始剤、および(d)有機硫黄化合物を含有するゴム組成物から形成されたものであり、球状構成部材の表面硬度(Hs)が、ショアC硬度で75以上であり、球状構成部材の表面硬度(Hs)と球状構成部材の中心から球状構成部材の半径の75%地点の硬度(H75)との硬度差(Hs-H75)が、ショアC硬度で3以上、10以下であり、球状構成部材の表面硬度(Hs)と中心硬度(Ho)との硬度差(Hs-Ho)が、ショアC硬度で、16以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、持続可能でよりよい社会の実現を目指す新規なゴルフボールであって、ドライバーショットのスピン量が低いゴルフボールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るワンピースゴルフボールが示された一部切り欠き断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るマルチピースゴルフボールが示された一部切り欠き断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のゴルフボールは、球状構成部材を有するゴルフボールであって、
前記球状構成部材は、(a)天然ゴムを含有するゴム成分、(b)共架橋剤、(c)架橋開始剤、および(d)有機硫黄化合物を含有するゴム組成物から形成されたものであり、
球状構成部材の表面硬度(Hs)が、ショアC硬度で75以上であり、球状構成部材の表面硬度(Hs)と中心硬度(Ho)との硬度差(Hs-Ho)が、ショアC硬度で、16以上であり、球状構成部材の表面硬度(Hs)と球状構成部材の中心から球状構成部材の半径の75%地点の硬度(H75)との硬度差(Hs-H75)が、ショアC硬度で、3以上、10以下であることを特徴とする。
【0010】
本発明のゴルフボールが有する球状構成部材は、上記のように外剛内柔構造を有する。外剛内柔構造の球状構成部材を有する本発明のゴルフボールは、ドライバーショットのスピン量が低くなる。低スピン量のゴルフボールは、ドライバーショットでの飛距離が大きくなる。
【0011】
まず、本発明のゴルフボールが有する球状構成部材の硬度について説明する。
【0012】
本発明のゴルフボールが有する球状構成部材の表面硬度(Hs)は、ショアC硬度で、75以上であり、78以上が好ましく、80以上がより好ましい。表面硬度(Hs)が、ショアC硬度で、75以上であれば、ドライバーショットでの低スピン化が達成しやすくなる。また、前記表面硬度(Hs)は、特に限定されないが、ショアC硬度で、90以下が好ましく、88以下がより好ましく、85以下がさらに好ましい。表面硬度(Hs)が、ショアC硬度で、90以下であれば、球状構成部材の表面が硬くなり過ぎず、耐久性が良好となる。
【0013】
前記球状構成部材の表面硬度(Hs)と球状構成部材の中心から半径の75%地点の硬度(H75)との硬度差(Hs-H75)は、ショアC硬度で、3以上であり、3.5以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましく、10以下であり、8以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましい。硬度差(Hs-H75)が前記範囲内であれば、コアの表面部分の硬度が高くなる。その結果、球状構成部材が外剛内柔構造を取りやすくなる。
【0014】
球状構成部材の中心から球状構成部材の半径の75%地点の硬度(H75)は、特に限定されないが、ショアC硬度で、70以上であることが好ましく、72以上であることがより好ましく、75以上であることがさらに好ましく、85以下であることが好ましく、82以下であることがより好ましく、80以下であることがさらに好ましい。硬度(H75)が前記範囲内であれば、ドライバーショットでのスピン量がより低減される。
【0015】
前記球状構成部材の表面硬度(Hs)と中心硬度(Ho)との硬度差(Hs-Ho)は、ショアC硬度で、16以上であり、17以上であることが好ましく、18以上であることがより好ましい。硬度差(Hs-Ho)が、ショアC硬度で、16以上であれば、球状構成部材が外剛内柔の構造となり、ドライバーショットでの低スピン化が達成しやすくなる。また、前記硬度差(Hs-Ho)は、特に限定されないが、ショアC硬度で、30以下であることが好ましく、28以下であることがより好ましく、25以下であることがさらに好ましい。硬度差(Hs-Ho)が、ショアC硬度で、30以下であれば、外剛内柔の度合が大きくなりすぎず、良好な打球感が得られる。
【0016】
球状構成部材の中心硬度(Ho)は、特に限定されないが、ショアC硬度で、55以上であることが好ましく、58以上であることがより好ましく、60以上であることがさらに好ましく、75以下であることが好ましく、70以下であることがより好ましく、65以下であることがさらに好ましい。中心硬度(H)が前記範囲内であれば、ゴルフボールの反発性および打球感がより良好となる。
【0017】
球状構成部材の表面硬度(Hs)と球状構成部材の中心から球状構成部材の半径の50%地点の硬度(H50)との硬度差(Hs-H50)は、特に限定されないが、ショアC硬度で、7以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましく、9以上であることがさらに好ましく、20以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましく、15以下であることがさらに好ましい。硬度差(Hs-H50)が前記範囲内であれば、ゴルフボールの反発性および打球感がより良好となるからである。
【0018】
球状構成部材の中心から球状構成部材の半径の50%地点の硬度(H50)は、特に限定されないが、ショアC硬度で、65以上であることが好ましく、68以上であることがより好ましく、70以上であることがさらに好ましく、80以下であることが好ましく、78以下であることがより好ましく、75以下であることがさらに好ましい。硬度(H50)が前記範囲内であれば、ゴルフボールの反発性および打球感がより良好となるからである。
【0019】
球状構成部材の中心から球状構成部材の半径の75%地点の硬度(H75)と50%地点の硬度(H50)との硬度差(H75-H50)は、特に限定されないが、ショアC硬度で、3以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましく、5以上であることがさらに好ましく、15以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。硬度差(H75-H50)が前記範囲内であれば、ゴルフボールの反発性および打球感がより良好となるからである。
【0020】
なお、前記球状構成部材の中心硬度(Ho)、ゴルフボールの中心からゴルフボール半径の50%地点の硬度(H50)、75%地点の硬度(H75)は、球状構成部材を球状構成部材の中心を通る断面で切断し、切断面の中心、および、中心から所定の距離の地点で測定した硬度である。球状構成部材の表面硬度(Hs)は、球状構成部材の表面で測定した硬度である。
【0021】
本発明のゴルフボールが有する球状構成部材は、(a)天然ゴムを含有するゴム成分、(b)共架橋剤、(c)架橋開始剤、および(d)有機硫黄化合物を含有するゴム組成物から形成されることが好ましい。
【0022】
前記(a)ゴム成分は、天然ゴム(NR)を含有することが好ましい。天然ゴムとは、天然ゴムのラテックス(乳液)を産出する植物に傷をつけてラテックスを回収し、前記ラテックスに含まれるゴム成分を凝固させることで作られ、天然由来のシス-1,4-ポリイソプレンを含むものである。
【0023】
前記天然ゴムのラテックスを産出する植物としては、例えば、トウダイグサ科のパラゴムノキ、セアラゴムノキ、クワ科のインドゴムノキ、パナゴムノキ、ラゴスゴムノキ、マメ科のアラビアゴムノキ、トラガントゴムノキ、キョウチクトウ科のクワガタノキ、ザンジバルツルゴム、フンツミアエラスチカ、ウルセオラ、キク科のグアユールゴムノキ、ゴムタンポポ、アカテツ科のガタパーチャノキ、バラタゴムノキ、サポジラ、ガガイモ科のオオバナアサガオ、トチュウ科のトチュウ等が挙げられる。
【0024】
前記天然ゴムとしては、原料のラテックスに恒粘度剤等を入れてゴム粘度を安定化したCVグレード、および、ゴム粘度を安定化していない非CVグレードが挙げられる。これらは、単独で用いても良いし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、特に安定した粘度を有するCVグレードが好ましい。なお、前記天然ゴムは、SMR(標準マレーシアゴム)、SVR(標準ベトナムゴム)のいずれもよい。
【0025】
前記天然ゴムのムーニー粘度(ML1+4(100℃))は、30以上であることが好ましく、より好ましくは35以上、さらに好ましくは40以上であり、80以下が好ましく、より好ましくは75以下、さらに好ましくは70以下である。天然ゴムのムーニー粘度が前記範囲内であれば、成型時の加工性が良好である。
【0026】
前記(a)ゴム成分中の天然ゴムの含有率は、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましく、50質量%以下であることが好ましく、48質量%以下であることがより好ましく、45質量%以下であることがさらに好ましい。(a)ゴム成分中の天然ゴムの含有率が前記範囲内であれば、ドライバーショットでの低スピン化をより達成しやすくなる。
【0027】
前記(a)ゴム成分は、天然ゴムに加えて、さらに合成ゴムを含有することが好ましい。合成ゴムとは、人工的に合成されるゴム弾性を持つ材料である。合成ゴムには、例えば、1種類又は2種類以上の単量体を重合して製造される化学合成ゴムや、天然ゴムの化学反応によって製造される天然ゴム誘導体がある。前記合成ゴムとしては、例えば、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレンポリブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のジエン系ゴム;エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、ウレタンゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、フッ素ゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム等の非ジエン系ゴムが挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
前記合成ゴムのムーニー粘度(ML1+4(100℃))は、40以上であることが好ましく、より好ましくは42以上、さらに好ましくは45以上であり、70以下が好ましく、より好ましくは65以下、さらに好ましくは60以下である。合成ゴムのムーニー粘度が前記範囲内であれば、成型時の加工性が良好である。
【0029】
なお、本発明でいうムーニー粘度(ML1+4(100℃))とは、JIS K6300に準じて、Lローターを使用し、予備加熱時間1分間、ローターの回転時間4分間、100℃の条件下にて測定した値である。
【0030】
適切な粘度を得やすい点から、ムーニー粘度が異なる2種類の合成ゴムを用いることも好ましい。この場合、合成ゴムのムーニー粘度差は、0以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、8以上であることがさらに好ましく、30以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましく、15以下であることがさらに好ましい。
【0031】
本発明では、前記合成ゴムとして、特に、反発に有利なシス-1,4-結合を、40質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上有するハイシスポリブタジエンゴムを用いることが好ましい。
【0032】
前記ハイシスポリブタジエンゴムは、1,2-ビニル結合の含有量が2質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1.7質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下である。1,2-ビニル結合の含有量が2質量%以下であれば、反発性が良くなる。
【0033】
前記ハイシスポリブタジエンゴムは、希土類元素系触媒で合成されたものが好適であり、特に、ランタン系列希土類元素化合物であるネオジム化合物を用いたネオジム系触媒の使用が、1,4-シス結合が高含量、1,2-ビニル結合が低含量のポリブタジエンゴムを優れた重合活性で得られるので好ましい。
【0034】
前記ハイシスポリブタジエンゴムの分子量分布Mw/Mn(Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)は、2.0以上であることが好ましく、より好ましくは2.2以上、さらに好ましくは2.4以上、最も好ましくは2.6以上であり、6.0以下であることが好ましく、より好ましくは5.0以下、さらに好ましくは4.0以下、最も好ましくは3.4以下である。ハイシスポリブタジエンゴムの分子量分布(Mw/Mn)が2.0以上であれば、作業性がよくなり、6.0以下であれば反発性が高くなる。なお、分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(東ソー社製、「HLC-8120GPC」)により、検知器として示差屈折計を用いて、カラム:GMHHXL(東ソー社製)、カラム温度:40℃、移動相:テトラヒドロフランの条件で測定し、標準ポリスチレン換算値として算出した値である。
【0035】
前記(b)共架橋剤は、(a)ゴム成分の分子鎖にグラフト重合することによって、ゴム成分の分子を架橋する作用を有するものである。(b)共架橋剤としては、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩が好適である。
【0036】
前記炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等を挙げることができる。これらの中でも、特にメタクリル酸を用いることが好ましい。
【0037】
炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸の金属塩を構成する金属成分としては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの1価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの二価の金属イオン;アルミニウムなどの3価の金属イオン;錫、ジルコニウムなどのその他のイオンが挙げられる。前記金属成分は、単独で用いても良いし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記金属成分としては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの二価の金属が好ましく、亜鉛がより好ましい。炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸の二価の金属塩を用いることにより、ゴム分子間に金属架橋が生じやすくなるからである。なお、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩は、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0038】
前記(b)共架橋剤の含有量は、(a)ゴム成分100質量部に対して、20質量部以上が好ましく、25質量部以上がより好ましく、30質量部以上がさらに好ましく、50質量部以下が好ましく、45質量部以下がより好ましく、40質量部以下がさらに好ましい。(b)共架橋剤の含有量が20質量部以上であれば、形成される構成部材が適当な硬さを有し、ゴルフボールの反発性が良くなる。一方、(b)共架橋剤の含有量が50質量部以下であれば、形成される構成部材が硬くなりすぎず、ゴルフボールの打球感が良好である。
【0039】
前記(c)架橋開始剤は、(a)ゴム成分を架橋するために配合されるものである。(c)架橋開始剤としては、有機過酸化物が好適である。前記有機過酸化物は、具体的には、ジクミルパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t―ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられる。これらの有機過酸化物は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でもジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。
【0040】
前記(c)架橋開始剤の含有量は、(a)ゴム成分100質量部に対して、1.0質量部以上が好ましく、より好ましくは1.5質量部以上、さらに好ましくは2.0質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは4.0質量部以下であり、さらに好ましくは3.0質量部以下である。(c)架橋開始剤の含有量が前記範囲内であれば、形成される球状構成部材の硬度が適切になる。
【0041】
前記(d)有機硫黄化合物は、架橋助剤または加硫促進剤としてゴム組成物に配合されるものである。(d)有機硫黄化合物としては、分子内に硫黄原子を有する有機化合物であれば、特に限定されず、例えば、チオール基(-SH)、または、硫黄数が2~4のポリスルフィド結合(-S-S-、-S-S-S-、または、-S-S-S-S-)を有する有機化合物、あるいはこれらの金属塩(-SM、-S-M-S-など、Mは金属原子)を挙げることができる。
【0042】
前記(d)有機硫黄化合物としては、例えば、チオフェノール類、チオナフトール類、ポリスルフィド類、チアゾール類、チウラム類、チオカルボン酸類、ジチオカルボン酸類、スルフェンアミド類、ジチオカルバミン酸塩類などに属する化合物を挙げることができる。
【0043】
前記チオフェノール類としては、例えば、チオフェノール;4-フルオロチオフェノール、2,4-ジフルオロチオフェノール、2,5-ジフルオロチオフェノール、2,6-ジフルオロチオフェノール、2,4,5-トリフルオロチオフェノール、2,4,5,6-テトラフルオロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノールなどのフルオロ基で置換されたチオフェノール類;2-クロロチオフェノール、4-クロロチオフェノール、2,4-ジクロロチオフェノール、2,5-ジクロロチオフェノール、2,6-ジクロロチオフェノール、2,4,5-トリクロロチオフェノール、2,4,5,6-テトラクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノールなどのクロロ基で置換されたチオフェノール類;4-ブロモチオフェノール、2,4-ジブロモチオフェノール、2,5-ジブロモチオフェノール、2,6-ジブロモチオフェノール、2,4,5-トリブロモチオフェノール、2,4,5,6-テトラブロモチオフェノール、ペンタブロモチオフェノールなどのブロモ基で置換されたチオフェノール類;4-ヨードチオフェノール、2,4-ジヨードチオフェノール、2,5-ジヨードチオフェノール、2,6-ジヨードチオフェノール、2,4,5-トリヨードチオフェノール、2,4,5,6-テトラヨードチオフェノール、ペンタヨードチオフェノールなどのヨード基で置換されたチオフェノール類;または、これらの金属塩が挙げられる。
【0044】
前記チオフェノール類としては、ペンタクロロチオフェノールおよび/またはその亜鉛塩が好ましい。
【0045】
前記チオナフトール類(ナフタレンチオール類)としては、2-チオナフトール、1-チオナフトール、1-クロロ-2-チオナフトール、2-クロロ-1-チオナフトール、1-ブロモ-2-チオナフトール、2-ブロモ-1-チオナフトール、1-フルオロ-2-チオナフトール、2-フルオロ-1-チオナフトール、1-シアノ-2-チオナフトール、2-シアノ-1-チオナフトール、1-アセチル-2-チオナフトール、2-アセチル-1-チオナフトール、またはこれらの金属塩を挙げることができる。
【0046】
前記金属塩としては、例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム、銅(I)、銀(I)などの一価の金属塩;亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン(II)、マンガン(II)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、ジルコニウム(II)、スズ(II)等の二価の金属塩が挙げられる。前記金属塩は、単独で用いても良いし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、反発性の点から、特に二価の金属塩が好ましく、亜鉛塩がより好ましい。
【0047】
ポリスルフィド類とは、ポリスルフィド結合を有する有機硫黄化合物であり、例えば、ジスルフィド類、トリスルフィド類、テトラスルフィド類が挙げられる。前記ポリスルフィド類としては、ジフェニルポリスルフィド類が好ましい。
【0048】
ジフェニルポリスルフィド類としては、ジフェニルジスルフィドの他;ビス(4-フルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5-ジフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6-テトラフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(4-クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5-ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6-テトラクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(4-ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5-ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6-テトラブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(4-ヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5-ジヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6-テトラヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタヨードフェニル)ジスルフィド等のハロゲン基で置換されたジフェニルジスルフィド類;ビス(4-メチルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリメチルフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタメチルフェニル)ジスルフィド、ビス(4-t-ブチルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリ-t-ブチルフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタ-t-ブチルフェニル)ジスルフィド等のアルキル基で置換されたジフェニルジスルフィド類;などが挙げられる。
【0049】
前記チアゾール類としては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩、亜鉛塩、銅塩またはシクロヘキシルアミン塩、2,2’-ジベンゾチアゾリルジスルフィド、2-(4-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、2-(2,4-ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2-(2,6-ジエチル-4-モリホリノチオ)ベンゾチアゾール等が挙げられる。
【0050】
前記チアゾール類としては、2-メルカプトベンゾチアゾールが特に好ましい。
【0051】
チウラム類としては、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィドなどのチウラムモノスルフィド類、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィドなどのチウラムジスルフィド類、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなどのチウラムテトラスルフィド類が挙げられる。チオカルボン酸類としては、例えば、ナフタレンチオカルボン酸が挙げられる。ジチオカルボン酸類としては、例えば、ナフタレンジチオカルボン酸が挙げられる。スルフェンアミド類としては、例えば、N-シクロへキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミドが挙げられる。ジチオカルバミン酸塩類としては、例えば、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、N-ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸銅(II)、ジメチルジチオカルバミン酸鉄(III)、ジエチルジチオカルバミン酸セレン、ジエチルジチオカルバミン酸テルル等が挙げられる。
【0052】
前記(d)有機硫黄化合物は、単独もしくは二種以上を混合して使用することができる。
【0053】
前記(d)有機硫黄化合物の含有量は、(a)ゴム成分100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは0.8質量部以上、さらに好ましくは1.0質量部以上であって、15質量部以下が好ましく、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。(d)有機硫黄化合物の含有量が前記範囲内であれば、ゴルフボールの外剛内柔の度合が適切である。
【0054】
本発明では、更なる低スピン化の観点から、前記(d)有機硫黄化合物としては、チオフェノール類および/またはポリスルフィド類を含有することが好ましく、チオフェノール類および/またはポリスルフィド類とチアゾール類とを併用することがより好ましい。チオフェノール類および/またはポリスルフィド類とチアゾール類とを併用する場合、これらの質量比([チオフェノール類および/またはポリスルフィド類]/チアゾール類)は、0.1以上が好ましく、より好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.3以上であって、2.0以下が好ましく、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.0以下である。
【0055】
前記ゴム組成物は、共架橋剤として炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸のみを含有する場合、さらに(e)金属化合物を含有してもよい。ゴム組成物中で炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸を金属化合物で中和することにより、共架橋剤として炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸の金属塩を使用する場合と実質的に同様の効果が得られるからである。また、共架橋剤として、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸とその金属塩とを併用する場合も、(e)金属化合物を用いてもよい。
【0056】
前記(e)金属化合物としては、ゴム組成物中において炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸を中和することができるものであれば、特に限定されない。前記(e)金属化合物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化銅などの金属水酸化物;酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化銅などの金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウムなどの金属炭酸化物が挙げられる。これらの(e)金属化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。(e)前記金属化合物として好ましいのは、二価金属化合物であり、より好ましくは亜鉛化合物である。二価金属化合物は、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸と反応して、金属架橋を形成するからである。また、亜鉛化合物を用いることにより、反発性の高いゴルフボールが得られる。
【0057】
前記ゴム組成物は、必要に応じて、顔料、重量調整などのための充填剤、老化防止剤、しゃく解剤、軟化剤などの添加剤を含有してもよい。
【0058】
ゴム組成物に配合される顔料としては、例えば、白色顔料、青色顔料、紫色顔料などを挙げることができる。前記白色顔料としては、酸化チタンを使用することが好ましい。酸化チタンの種類は、特に限定されないが、隠蔽性が良好であるという理由から、ルチル型を用いることが好ましい。また、酸化チタンの含有量は、(a)ゴム成分100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは1質量部以上であって、8質量部以下が好ましく、より好ましくは5質量部以下である。
【0059】
前記青色顔料としては、例えば、群青、コバルト青、フタロシアニンブルーなどを挙げることができる。また、前記紫色顔料としては、例えば、アントラキノンバイオレット、ジオキサジンバイオレット、メチルバイオレットなどを挙げることができる。
【0060】
前記青色顔料の含有量は、(a)ゴム成分100質量部に対して、0.001質量部以上が好ましく、より好ましくは0.05質量部以上であって、0.2質量部以下が好ましく、より好ましくは0.1質量部以下である。0.001質量部未満では、青みが不十分で、黄色味がかった色に見え、0.2質量部を超えると、青くなりすぎて、鮮やかな白色外観ではなくなる。
【0061】
ゴム組成物に用いる充填剤としては、主として最終製品として得られるゴルフボールの重量を調整するための重量調整剤として配合されるものであり、必要に応じて配合すれば良い。前記充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タングステン粉末、モリブデン粉末などの無機充填剤を挙げることができる。前記充填剤として特に好ましいのは、酸化亜鉛である。酸化亜鉛は、加硫助剤として機能して、構成部材全体の硬度を高めると考えられる。前記充填剤の含有量は、(a)ゴム成分100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましく、15質量部以上が特に好ましく、35質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、28質量部以下がさらに好ましい。充填剤の含有量が0.5質量部以上であれば、重量調整が容易になり、35質量部以下であれば、ゴム成分の重量分率が小さくなりすぎず反発性の低下が抑えられるからである。なお、前記充填剤が金属化合物(例えば、金属酸化物、金属炭酸化物)である場合、上記した(e)金属化合物としても機能する。
【0062】
前記老化防止剤の含有量は、(a)ゴム成分100質量部に対して、0.1質量部以上、1質量部以下であることが好ましい。また、しゃく解剤の含有量は、(a)ゴム成分100質量部に対して、0.1質量部以上、5質量部以下であることが好ましい。
【0063】
前記ゴム組成物は、(a)ゴム成分、(b)共架橋剤、(c)架橋開始剤、(d)有機硫黄化合物、および、必要に応じて配合するその他の成分を混練することにより得られる。混練の方法は、特に限定されず、例えば、混練ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどの公知の混練機を用いて行えばよい。
【0064】
前記構成部材は、混練後のゴム組成物を金型内で成形することにより得ることができる。前記構成部材に成形する温度は、120℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましく、160℃以上がさらに好ましく、170℃以下が好ましい。また、成形時の圧力は、2.9MPa~11.8MPaが好ましい。成形時間は、10分間~60分間が好ましい。
【0065】
本発明のゴルフボールの構造は、前記球状構成部材を有するものであれば、特に限定されない。本発明のゴルフボールとしては、例えば、前記球状構成部材を本体とするワンピースゴルフボール、および、前記球状構成部材を球状コアとするゴルフボールを挙げることができる。前記球状構成部材を球状コアとするゴルフボールとしては、例えば、球状コアと、前記球状コアを被覆するように配設された単層のカバーとを有するツーピースゴルフボール;球状コアと、前記球状コアを被覆するように配設された2層以上のカバーとを有するマルチピースゴルフボール(スリーピースゴルフボールを含む)などを挙げることができる。なお、前記球状コアは、単層構造と多層構造のいずれもよいが、単層構造であることが好ましい。前記いずれの構造のゴルフボールにも本発明を好適に利用できる。本発明のゴルフボールは、ワンピースゴルフボールであることが好ましい。
【0066】
本発明のゴルフボールは、前記球状構成部材を球状コアとして有する場合、前記球状コアの直径は、34.8mm以上が好ましく、より好ましくは36.8mm以上、さらに好ましくは38.8mm以上であり、42.2mm以下が好ましく、41.8mm以下がより好ましく、さらに好ましくは41.2mm以下であり、最も好ましくは40.8mm以下である。前記球状コアの直径が34.8mm以上であれば、カバーの厚みが厚くなり過ぎず、反発性がより良好となる。一方、球状コアの直径が42.2mm以下であれば、カバーが薄くなり過ぎず、カバーの機能がより発揮される。
【0067】
前記球状コアは、直径34.8mm~42.2mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮変形量(圧縮方向に球状コアが縮む量)が、2.5mm以上であることが好ましく、より好ましくは2.6mm以上、さらに好ましくは2.7mm以上であり、4.0mm以下であることが好ましく、より好ましくは3.5mm以下、さらに好ましくは3.2mm以下である。前記圧縮変形量が2.5mm以上であれば打球感がより良好となり、4.0mm以下であれば反発性がより良好となる。
【0068】
本発明のゴルフボールは、前記構成部材を球状コアとして有する場合、球状コアの外側に位置する少なくとも一層のカバーを有する。前記カバーは、樹脂成分を含有する樹脂組成物から形成されることが好ましい。前記樹脂成分としては、例えば、アイオノマー樹脂、BASFジャパン(株)から商品名「エラストラン(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、三菱ケミカル(株)から商品名「テファブロック」で市販されている熱可塑性スチレンエラストマーなどが挙げられる。
【0069】
前記アイオノマー樹脂としては、例えば、オレフィンと炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸との二元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、オレフィンと炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸とα,β-不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、あるいは、これらの混合物を挙げることができる。前記オレフィンとしては、炭素数が2~8個のオレフィンが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等を挙げることができ、特にエチレンが好ましい。前記炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられ、特にアクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。また、α,β-不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のメチル、エチル、プロピル、n-ブチル、イソブチルエステル等が用いられ、特にアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルが好ましい。これらのなかでも、前記アイオノマー樹脂としては、エチレン-(メタ)アクリル酸二元共重合体の金属イオン中和物、エチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル三元共重合体の金属イオン中和物が好ましい。
【0070】
前記アイオノマー樹脂の具体例を商品名で例示すると、三井デュポンポリケミカル(株)から市販されている「ハイミラン(Himilan)(登録商標)(例えば、ハイミラン1555(Na)、ハイミラン1557(Zn)、ハイミラン1605(Na)、ハイミラン1706(Zn)、ハイミラン1707(Na)、ハイミランAM3711(Mg)、ハイミランAM7329(Zn)などが挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、ハイミラン1856(Na)、ハイミラン1855(Zn)など)」が挙げられる。
【0071】
さらにデュポン社から市販されているアイオノマー樹脂としては、「サーリン(Surlyn)(登録商標)(例えば、サーリン8945(Na)、サーリン9945(Zn)、サーリン8140(Na)、サーリン8150(Na)、サーリン9120(Zn)、サーリン9150(Zn)、サーリン6910(Mg)、サーリン6120(Mg)、サーリン7930(Li)、サーリン7940(Li)、サーリンAD8546(Li)などが挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、サーリン8120(Na)、サーリン8320(Na)、サーリン9320(Zn)、サーリン6320(Mg)、HPF1000(Mg)、HPF2000(Mg)など)」が挙げられる。
【0072】
またエクソンモービル化学(株)から市販されているアイオノマー樹脂としては、「アイオテック(Iotek)(登録商標)(例えば、アイオテック8000(Na)、アイオテック8030(Na)、アイオテック7010(Zn)、アイオテック7030(Zn)などが挙げられ、三元共重合体アイオノマー樹脂としては、アイオテック7510(Zn)、アイオテック7520(Zn)など)」が挙げられる。
【0073】
なお、前記アイオノマー樹脂の商品名の後の括弧内に記載したNa、Zn、Li、Mgなどは、これらの中和金属イオンの金属種を示している。前記アイオノマー樹脂は、単独で若しくは2種以上を混合して使用しても良い。
【0074】
前記樹脂組成物は、樹脂成分として、熱可塑性ポリウレタンエラストマーまたはアイオノマー樹脂を含有することが好ましい。前記樹脂組成物の樹脂成分中の熱可塑性ポリウレタンエラストマーまたはアイオノマー樹脂の含有率は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。前記樹脂組成物は、樹脂成分として、熱可塑性ポリウレタンエラストマーまたはアイオノマー樹脂のみを含有してもよい。
【0075】
前記樹脂組成物は、上述した樹脂成分のほか、白色顔料(例えば、酸化チタン)、青色顔料、赤色顔料などの顔料成分、酸化亜鉛、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの重量調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを、カバーの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
【0076】
前記白色顔料(例えば、酸化チタン)の含有量は、カバーを構成する樹脂成分100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部であって、10質量部以下が好ましく、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは6質量部以下である。白色顔料の含有量を0.5質量部以上とすることによって、カバーに隠蔽性を付与することができる。また、白色顔料の含有量が10質量部以下であれば、得られるカバーの耐久性が良好なものとなる。
【0077】
前記カバーを成形する方法としては、例えば、前記樹脂組成物から中空殻状のシェルを成形し、コアを複数のシェルで被覆して圧縮成形する方法(好ましくは、樹脂組成物から中空殻状のハーフシェルを成形し、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法)、あるいは、前記樹脂組成物をコア上に直接射出成形する方法を挙げることができる。
【0078】
圧縮成形法によりカバーを成形する場合、ハーフシェルの成形は、圧縮成形法または射出成形法のいずれの方法によっても行うことができるが、圧縮成形法が好適である。樹脂組成物を圧縮成形してハーフシェルに成形する条件としては、例えば、1MPa以上、20MPa以下の圧力で、樹脂組成物の流動開始温度に対して、-20℃以上、70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一な厚みをもつハーフシェルを成形できる。ハーフシェルを用いてカバーを成形する方法としては、例えば、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法を挙げることができる。ハーフシェルを圧縮成形してカバーに成形する条件としては、例えば、0.5MPa以上、25MPa以下の成形圧力で、樹脂組成物の流動開始温度に対して、-20℃以上、70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一な厚みを有するカバーを成形できる。
【0079】
樹脂組成物を射出成形してカバーを成形する場合、押出して得られたペレット状の樹脂組成物を用いて射出成形しても良いし、あるいは、基材樹脂成分や顔料などのカバー用材料をドライブレンドして直接射出成形してもよい。カバー成形用上下金型としては、半球状キャビティを有し、ピンプル付きで、ピンプルの一部が進退可能なホールドピンを兼ねているものを使用することが好ましい。射出成形によるカバーの成形は、ホールドピンを突き出し、コアを投入してホールドさせた後、樹脂組成物を注入して、冷却することによりカバーを成形することができ、例えば、9MPa~15MPaの圧力で型締めした金型内に、200℃~250℃に加熱した樹脂組成物を0.5秒~5秒で注入し、10秒~60秒間冷却して型開きすることにより行う。
【0080】
前記カバーの厚みは、4.0mm以下が好ましく、より好ましくは3.0mm以下、さらに好ましくは2.0mm以下である。カバーの厚みが4.0mm以下であれば、得られるゴルフボールの反発性や打球感がより良好となる。前記カバーの厚みは、0.3mm以上が好ましく、0.4mm以上がより好ましく、さらに好ましくは0.5mm以上である。カバーの厚みが0.3mm以上であれば、カバーの打撃耐久性や耐摩耗性が向上する。複数のカバー層の場合は、複数のカバー層の合計厚みが上記範囲であることが好ましい。
【0081】
成形されたゴルフボール本体(ワンピースゴルフボール本体、または、カバーが成形されたゴルフボール本体)は、金型から取り出し、必要に応じて、バリ取り、洗浄、サンドブラストなどの表面処理を行うことが好ましい。また、所望により、塗膜やマークを形成することもできる。
【0082】
本発明のゴルフボールの表面に、通常ディンプルと呼ばれるくぼみが形成される。ゴルフボール本体の表面に形成されるディンプルの総数は、200個以上500個以下が好ましい。ディンプルの総数が前記範囲内であれば、ディンプルサイズが適度となり、ディンプルの効果が得られやすい。形成されるディンプルの形状(平面視形状)は、特に限定されるものではなく、円形;略三角形、略四角形、略五角形、略六角形などの多角形;その他不定形状;を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0083】
本発明のゴルフボールの表面に形成される塗膜の膜厚は、特に限定されないが、5μm以上が好ましく、6μm以上がより好ましく、7μm以上がさらに好ましく、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。膜厚が5μm以上であれば、継続的に使用しても塗膜が摩耗消失しにくくなり、膜厚が50μm以下であれば、ディンプルの効果が十分に得られ、ゴルフボールの飛行性能が向上する。塗膜を形成する樹脂は、特に限定されず、例えば、ポリウレタン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステルなどが挙げられる。
【0084】
本発明のゴルフボールの直径は、40mmから45mmが好ましい。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は42.67mm以上が特に好ましい。空気抵抗抑制の観点から、直径は44mm以下がより好ましく、42.80mm以下が特に好ましい。また、本発明のゴルフボールの質量は、40g以上50g以下が好ましい。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44g以上がより好ましく、45.00g以上が特に好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が特に好ましい。
【0085】
本発明のゴルフボールは、直径40mm~45mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときの圧縮変形量(圧縮方向にゴルフボールの縮む量)は、2.5mm以上であることが好ましく、より好ましくは2.6mm以上、さらに好ましくは2.7mm以上であり、4.0mm以下であることが好ましく、より好ましくは3.5mm以下、さらに好ましくは3.2mm以下である。前記圧縮変形量が2.5mm以上のゴルフボールは、硬くなり過ぎず、打球感が良い。一方、圧縮変形量を4.0mm以下にすることにより、反発性が高くなる。
【0086】
本発明のゴルフボールの一例を、図1、2を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るワンピースゴルフボールが示された一部切り欠き断面図である。図2は、本発明の一実施形態に係るマルチピースゴルフボールが示された一部切り欠き断面図である。
【0087】
図1のゴルフボール1は、球状構成部材からなるゴルフボール本体2と前記ゴルフボール本体2を被覆する塗膜3とから構成されるワンピースゴルフボールである。ゴルフボール本体2の表面には、多数のディンプル21が形成されている。このゴルフボール1の表面のうち、ディンプル21以外の部分は、ランド22である。このゴルフボール1は、ゴルフボール本体2の外側に塗膜3が形成されている。
【0088】
図2のゴルフボール1は、球状構成部材からなる球状コア4と、球状コア4を被覆するカバー5とからなるゴルフボール本体を有する。前記カバー5の表面には、多数のディンプル51が形成されている。このゴルフボール1の表面のうち、ディンプル51以外の部分は、ランド52である。このゴルフボール1は、カバー5の外側に塗膜3が形成されている。
【実施例0089】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0090】
[評価方法]
(1)硬度分布(ショアC硬度)
スプリング式硬度計ショアC型を備えた高分子計器社製自動ゴム硬度計P1型を用いて、球状構成部材の表面部において測定したショアC硬度を球状構成部材の表面硬度とした。また、球状構成部材を半球状に切断し、切断面の中心、および、中心から所定の距離において硬度を測定した。なお、表面硬度と中心硬度以外の各地点硬度は、切断面の中心から所定の距離の4点で硬度を測定して、これらを平均することにより算出した。
【0091】
(2)圧縮変形量(mm)
圧縮変形量の測定には、YAMADA式コンプレッションテスター「SCH」を用いた。このテスターでは、ゴルフボールが金属製の剛板の上に置かれる。このゴルフボールに向かって金属製の円柱が徐々に降下する。この円柱の底面と剛板との間に挟まれたゴルフボールは変形する。ゴルフボールに98Nの初荷重がかかった状態から1275Nの終荷重がかかった状態までの円柱の移動距離を測定した。圧縮変形量(mm)は、この移動距離である。初荷重がかかるまでの円柱の移動速度は、0.83mm/sである。初荷重がかかってから終荷重がかかるまでの円柱の移動速度は、1.67mm/sである。
【0092】
(3)反発係数
各ゴルフボールに198.4gの金属製円筒物を40m/秒の速度で衝突させ、衝突前後の円筒物およびゴルフボールの速度を測定し、それぞれの速度および重量から各ゴルフボールの反発係数を算出した。測定は各ゴルフボールについて12個ずつ行って、その平均値を各ゴルフボールの反発係数とした。
【0093】
(4)ドライバーショットのスピン量(rpm)
ゴルフラボラトリー社製のスイングロボットM/Cに、メタルヘッド製W#1ドライバー(住友ゴム工業株式会社製、XXIO S ロフト11°)を取り付け、それぞれ、ヘッドスピード40m/s、50m/sでゴルフボールを打撃し、打撃直後のゴルフボールのスピン量を測定した。測定は、各ゴルフボールについて12回ずつ行って、その平均値をそのゴルフボールの測定値とした。打撃直後のゴルフボールのスピン量は、打撃されたゴルフボールを連続写真撮影することによって測定した。各ゴルフボールのスピン量は、ゴルフボールNo.1~3を基準として算出したスピン量との差で示した。具体的に、ゴルフボールNo.1~3の圧縮変形量とスピン量とをプロットして圧縮変形量-スピン量の線形近似曲線の式を求めて、この式に基づいて各ゴルフボールNo.4~11の圧縮変形量に対応するスピン量を算出し、実際に測定したスピン量とこの算出したスピン量との差(実際で測定したスピン量-算出したスピン量)をゴルフボールNo.4~11のスピン量として表1に示した。
【0094】
[ゴルフボールの作製]
表1に示す配合のゴム組成物を混練ロールにより混練し、半球状キャビティを有する上下金型内で170℃、20分間加熱プレスすることにより直径42.77mm(1.684inch)のゴルフボール本体を得た。得られたゴルフボール本体の表面をサンドブラスト処理して、マーキングを施した後、クリアーペイントを塗布し、40℃のオーブンで塗料を乾燥させ、直径42.77mm(1.684inch)、質量45.4gのワンピースゴルフボールを得た。得られたワンピースゴルフボールについて、評価した結果を表1に示した。
【0095】
【表1】
【0096】
BR730:JSR社製ハイシスブタジエンゴム(シス-1,4-結合含有量=96質量%、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))=55)
BR01:JSR社製ハイシスブタジエンゴム(シス-1,4-結合含有量=95質量%、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))=45)
IR2200:日本ゼオン社製イソプレンゴム(ムーニー粘度(ML1+4(100℃))=82)
CV60:天然ゴム(ムーニー粘度(ML1+4(100℃))=60)
メタクリル酸:三菱ケミカル社製
DCP:日油社製「パークミル(登録商標)D」(ジクミルパーオキサイド)
PCTP-Zn:富士フイルム和光純薬社製ペンタクロロチオフェノール亜鉛(28質量%~32質量%ステアリン酸亜鉛含有)
MBT:大内新興化学工業社製「ノクセラーM-P」(2-メルカプトベンゾチアゾール)
酸化亜鉛:東邦亜鉛社製「銀嶺R」
炭酸カルシウム:白石カルシウム社製「Whiton BF-300」
酸化チタン:石原産業社製「CR-60」
【0097】
表1の結果から、球状構成部材を有するゴルフボールであって、前記球状構成部材は、(a)天然ゴムを含有するゴム成分、(b)共架橋剤、(c)架橋開始剤、および(d)有機硫黄化合物を含有するゴム組成物から形成されたものであり、球状構成部材の表面硬度(Hs)が、ショアC硬度で75以上であり、球状構成部材の表面硬度(Hs)と中心硬度(Ho)との硬度差(Hs-Ho)が、ショアC硬度で、16以上であり、球状構成部材の表面硬度(Hs)と球状構成部材の中心から球状構成部材の半径の75%地点の硬度(H75)との硬度差(Hs-H75)が、ショアC硬度で、3以上、10以下である本発明のゴルフボールは、いずれも、ドライバーショットでのスピン量が低減されたものである。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明のゴルフボールは、ドライバーショットでのスピン量が低減され、飛距離が向上するものである。
【0099】
本発明の好ましい態様1は、球状構成部材を有するゴルフボールであって、
前記球状構成部材は、(a)天然ゴムを含有するゴム成分、(b)共架橋剤、(c)架橋開始剤、および(d)有機硫黄化合物を含有するゴム組成物から形成されたものであり、球状構成部材の表面硬度(Hs)が、ショアC硬度で75以上であり、球状構成部材の表面硬度(Hs)と球状構成部材の中心から球状構成部材の半径の75%地点の硬度(H75)との硬度差(Hs-H75)が、ショアC硬度で、3以上、10以下であり、球状構成部材の表面硬度(Hs)と中心硬度(Ho)との硬度差(Hs-Ho)が、ショアC硬度で16以上であることを特徴とするゴルフボールである。
【0100】
本発明の好ましい態様2は、球状構成部材の表面硬度(Hs)と球状構成部材の中心からゴルフボール半径の50%地点の硬度(H50)との硬度差(Hs-H50)が、ショアC硬度で、8以上である前記態様1に記載のゴルフボールである。
【0101】
本発明の好ましい態様3は、ゴルフボールの直径が、40mm~45mmであり、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときの圧縮変形量が、2.5mm以上、4.0mm以下である前記態様1または2に記載のゴルフボールである。
【0102】
本発明の好ましい態様4は、(a)ゴム成分中の天然ゴムの含有率が、10質量%~50質量%である前記態様1~3のいずれかに記載のゴルフボールである。
【0103】
本発明の好ましい態様5は、前記ゴム組成物が、チオフェノール類および/またはポリスルフィド類に属する(d)有機硫黄化合物を含有する前記態様1~4のいずれかに記載のゴルフボールである。
【0104】
本発明の好ましい態様6は、前記ゴム組成物が、さらにチアゾール類に属する(d)有機硫黄化合物を含有する前記態様5に記載のゴルフボールである。
【0105】
本発明の好ましい態様7は、前記態様1~6のいずれかに記載の球状構成部材からなるワンピースゴルフボールである。
【符号の説明】
【0106】
1:ゴルフボール、2:ゴルフボール本体、3:塗膜、4:球状コア、5:カバー
図1
図2