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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116697
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】X線CT装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/046 20180101AFI20240821BHJP
【FI】
G01N23/046
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022452
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】506382792
【氏名又は名称】コムスキャンテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(72)【発明者】
【氏名】田中 靖和
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001HA07
2G001HA13
2G001HA14
2G001JA08
2G001PA12
2G001RA06
(57)【要約】
【課題】円状のマーカー回転軌跡と、理論上の楕円状のマーカー射影軌跡と、実際の楕円状のマーカー検出軌跡との間の対応関係を適正化することによって画質を向上させた再構成処理が可能となるX線CT装置を提供する。
【解決手段】X線CT装置1は、X線源11によるX線の照射範囲内で回転軸P1に対して偏心して位置し、ステージ部13に対して固定されるマーカー15と、被検体Wの投影画像から、被検体Wの撮像画像と楕円状のマーカー検出軌跡とを取得する検出結果取得部32と、円状のマーカー回転軌跡における各位置と楕円状のマーカー射影軌跡における各位置とを紐付ける第1紐付け部33と、前記マーカー射影軌跡における各位置と前記マーカー検出軌跡における各位置とを紐付ける第2紐付け部34と、被検体Wの断層画像を再構成する再構成部36と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を照射するX線源と、
前記X線源によって照射されるX線の投影面を有する検出器と、
前記X線源と前記検出器との間に位置し、被検体を載置するステージ部と、
前記ステージ部を、回転軸を中心として、前記X線源及び前記検出器に対して回転させる回転駆動部と、
前記X線源によるX線の照射範囲内で前記回転軸に対して偏心して位置し、前記ステージ部に対して固定されるマーカーと、
前記回転駆動部によって前記ステージ部が回転した状態で前記X線が前記被検体に照射された際に前記投影面に対して投影された画像から、前記被検体の撮像画像と前記投影面上での前記マーカーの移動軌跡である楕円状のマーカー検出軌跡とを取得する検出結果取得部と、
前記回転軸の軸方向に見て、前記回転駆動部によって回転する前記マーカーの移動軌跡である円状のマーカー回転軌跡を前記X線源から前記投影面を含む平面へ射影して得られる楕円状のマーカー射影軌跡における長軸上の頂点が、前記マーカー回転軌跡に対して前記X線源から引いた接線と前記マーカー回転軌跡との交点に対して紐付けられるように、前記マーカー回転軌跡における各位置と前記マーカー射影軌跡における各位置とを紐付ける第1紐付け部と、
前記マーカー射影軌跡における各位置と前記マーカー検出軌跡における各位置とを紐付ける第2紐付け部と、
前記第1紐付け部及び前記第2紐付け部による前記マーカー回転軌跡、前記マーカー射影軌跡及び前記マーカー検出軌跡の紐付けと、前記被検体の前記撮像画像とに基づいて、前記被検体の断層画像を再構成する再構成部と、
を有する、X線CT装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線CT装置において、
前記マーカー検出軌跡と前記マーカー射影軌跡とのズレ量を計算するズレ量計算部をさらに有し、
前記再構成部は、前記ズレ量に基づいて前記被検体の前記撮像画像を補正した補正画像を用いて、前記断層画像を再構成する、
X線CT装置。
【請求項3】
請求項1に記載のX線CT装置において、
楕円状の前記マーカー検出軌跡を、最小二乗法、重み反復法、Taubin法、くりこみ法、超精度最小二乗法、超精度くりこみ法、最尤推定法、超精度補正及び重みづけ最尤推定法のうちのいずれか1つによって推定する推定部をさらに有する、
X線CT装置。
【請求項4】
請求項1に記載のX線CT装置において、
前記第1紐付け部は、前記マーカー回転軌跡のうち、前記X線源に最も近い位置に対して、前記マーカー射影軌跡における短軸上の頂点の一方を紐付け、且つ、前記X線源から最も遠い位置に対して、前記マーカー射影軌跡における短軸上の頂点の他方を紐付ける、X線CT装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載のX線CT装置において、
前記ステージ部は、前記被検体を載置する載置面を有する支持治具を含み、
前記マーカーは、前記載置面よりも下方に位置する、
X線CT装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1つに記載のX線CT装置において、
前記マーカー回転軌跡は、前記マーカーの重心の三次元空間における移動軌跡であり、
前記マーカー検出軌跡は、前記X線によって前記投影面に投影されたマーカーの重心の移動軌跡である、
X線CT装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線照射によって試料の断層像を得るX線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線を試料に照射しながら試料を回転テーブルによって回転させ、多数の方向から得られたX線投影データに基づいて、試料の断層像を得るX線CT(Computed Tomography)装置が知られている。
【0003】
断層像の画質低下は、様々な誤差要因によって発生する。例えば、回転テーブルの回転中心の位置がX線の光軸からずれていると、断層像の画質低下が発生する。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1では、厳密な回転テーブルの回転軸の位置合わせをしなくても、アーチファクトのない断層画像を生成できる放射線検査装置が提案されている。具体的には、特許文献1の放射線検査装置では、検査物を載置する回転テーブルにマーカーを設け、前記回転テーブルを回転させながらX線を前記検査物に対して照射することによって一連のX線投影画像を取得する。そして、取得した前記一連のX線投影画像に写りこんでいる前記マーカーの像に基づいて、前記X線源が発する放射線ビームの光軸に対する前記回転テーブルの回転軸の位置ズレを算出し、この算出結果に基づいて前記一連のX線投影画像を補正する。
【0005】
投影面上の前記マーカーの移動軌跡は、楕円形状である。特許文献1の放射線検査装置では、投影面上の前記マーカーの楕円形状の移動軌跡に基づいて、前記X線源が発する放射線ビームの光軸に対する前記回転テーブルの回転軸の位置ズレを補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-215218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記回転テーブルの回転に伴う前記マーカーの移動軌跡は、前記回転テーブルの回転軸の軸方向に見て、円状となる。一方、投影面上の前記マーカーの移動軌跡は、上述のとおり、楕円形状である。前記楕円形状は、理論的には、前記回転テーブルの回転に伴う前記マーカーの移動軌跡を前記X線源から前記投影面に対して射影変換して得られる投影像である。
【0008】
特許文献1では、円状のマーカー回転軌跡と、円状のマーカー回転軌跡をX線源から前記投影面を含む平面へ射影して得られる楕円状のマーカー射影軌跡と、前記マーカーの前記投影面における移動軌跡である楕円状のマーカー検出軌跡との対応関係について、特に考慮されていない。しかしながら、再構成処理における画質向上の観点からは、このような対応関係を適正化することが望まれる。
【0009】
本発明の目的は、円状のマーカー回転軌跡と、理論上の楕円状のマーカー射影軌跡と、実際の楕円状のマーカー検出軌跡との間の対応関係を適正化することによって、画質を向上させた再構成処理が可能となるX線CT装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
態様1に係るX線CT装置は、X線を照射するX線源と、前記X線源によって照射されるX線の投影面を有する検出器と、前記X線源と前記検出器との間に位置し、被検体を載置するステージ部と、前記ステージ部を、回転軸を中心として、前記X線源及び前記検出器に対して回転させる回転駆動部と、前記X線源によるX線の照射範囲内で前記回転軸に対して偏心して位置し、前記ステージ部に対して固定されるマーカーと、前記回転駆動部によって前記ステージ部が回転した状態で前記X線が前記被検体に照射された際に前記投影面に対して投影された画像から、前記被検体の撮像画像と前記投影面上での前記マーカーの移動軌跡である楕円状のマーカー検出軌跡とを取得する検出結果取得部と、前記回転軸の軸方向に見て、前記回転駆動部によって回転する前記マーカーの移動軌跡である円状のマーカー回転軌跡を前記X線源から前記投影面を含む平面へ射影して得られる楕円状のマーカー射影軌跡における長軸上の頂点が、前記マーカー回転軌跡に対して前記X線源から引いた接線と前記マーカー回転軌跡との交点に対して紐付けられるように、前記マーカー回転軌跡における各位置と前記マーカー射影軌跡における各位置とを紐付ける第1紐付け部と、前記マーカー射影軌跡における各位置と前記マーカー検出軌跡における各位置とを紐付ける第2紐付け部と、前記第1紐付け部及び前記第2紐付け部による前記マーカー回転軌跡、前記マーカー射影軌跡及び前記マーカー検出軌跡の紐付けと、前記被検体の前記撮像画像とに基づいて、前記被検体の断層画像を再構成する再構成部と、を有する。
【0011】
上述の態様では、X線が照射された際の検出器における検出結果として、被検体の撮像画像とともに検出されるマーカーの移動軌跡であるマーカー検出軌跡は、楕円状である。また、ステージ部に対して固定されるマーカーが、X線源及び検出器に対して回転する。このような回転運動を行うマーカーの移動軌跡であるマーカー回転軌跡は、回転軸を中心とした円状となる。また、前記マーカー回転軌跡を前記検出器の投影面を含む平面に対して、前記X線源の位置から射影すると、楕円状のマーカー射影軌跡が得られる。
【0012】
そして、上述の構成では、前記マーカー検出軌跡における長軸上の頂点が、円状のマーカー回転軌跡に対して前記X線源の位置から引いた接線と前記マーカー回転軌跡との交点に対して紐付けられるように、第1紐付け部が、前記マーカー回転軌跡の各位置と、前記マーカー射影軌跡における各位置とを紐付ける。これにより、円状のマーカー回転軌跡と楕円状のマーカー検出軌跡との間の射影変換の精度を向上できる。すなわち、前記射影変換は、より実際の位置関係に適合する。
【0013】
第2紐付け部は、前記マーカー射影軌跡における各位置と前記マーカー検出軌跡における各位置とを紐付ける。
【0014】
再構成部は、前記第1紐付け部及び前記第2紐付け部による前記マーカー回転軌跡、前記マーカー射影軌跡及び前記マーカー検出軌跡の紐付けと、前記被検体の前記撮像画像とに基づいて、被検体の断層画像を再構成する。よって、円状のマーカー回転軌跡と、理論上の楕円状のマーカー射影軌跡と、実際の楕円状のマーカー検出軌跡との間の対応関係を適正化することによって画質を向上させた再構成処理が可能となる。
【0015】
態様2に係るX線CT装置は、態様1において、前記マーカー検出軌跡と前記マーカー射影軌跡とのズレ量を計算するズレ量計算部をさらに有し、前記再構成部は、前記ズレ量に基づいて前記被検体の前記撮像画像を補正した補正画像を用いて、前記断層画像を再構成する。
【0016】
上述の構成では、理論上のマーカー射影軌跡と、マーカーに対して実際にX線を照射したときに得られる前記マーカーの移動軌跡であるマーカー検出軌跡とのズレ量を求める。このズレ量は、焦点移動又はステージ部の運動誤差等に起因して生じ得る。上述の構成によれば、理論上のマーカー射影軌跡は、より実際の位置関係に適合した射影変換に基づいて得られるので、求めるズレ量の精度が向上する。これにより、精度よく求められたズレ量に基づいて被検体の撮像画像を補正して断層画像を再構成できる。よって、精度が高い再構成画像を得ることができる。
【0017】
態様3に係るX線CT装置は、態様1において、楕円状の前記マーカー検出軌跡を、最小二乗法、重み反復法、Taubin法、くりこみ法、超精度最小二乗法、超精度くりこみ法、最尤推定法、超精度補正及び重みづけ最尤推定法のうちのいずれか1つによって推定する推定部をさらに有する。
【0018】
マーカー検出軌跡は、上述の誤差等に起因して、きれいな楕円状を描かない場合がある。上述の態様によれば、誤差等を最適化することができるので、マーカー検出軌跡を精度よく推定することができる。
【0019】
態様4に係るX線CT装置は、態様1において、前記第1紐付け部は、前記マーカー回転軌跡のうち、前記X線源に最も近い位置に対して、前記マーカー射影軌跡における短軸上の頂点の一方を紐付け、且つ、前記X線源から最も遠い位置に対して、前記マーカー射影軌跡における短軸上の頂点の他方を紐付ける。
【0020】
上述の態様では、第1紐付け部が、マーカー回転軌跡における上述の交点の2つとX線源に最も近い位置と前記X線源から最も遠い位置との合計4点と、マーカー射影軌跡における上述の長軸上の頂点の2つと短軸上の頂点の2つとの合計4点とが紐付けられる。すなわち、前記第1紐付け部は、前記マーカー回転軌跡及び前記マーカー射影軌跡のそれぞれの独立した4点を用いた位置の紐付けを行う。これにより、前記マーカー回転軌跡では、前記交点の2つ以外にもさらに2つの点が前記マーカー射影軌跡の点と紐付けられる。このため、射影変換の精度が向上する。円状の前記マーカー回転軌跡と、楕円状の前記マーカー射影軌跡との間のズレをより精度よく解消できる。
【0021】
態様5に係るX線CT装置は、態様1から4のいずれか1つにおいて、前記ステージ部は、前記被検体を載置する載置面を有する支持治具を含み、前記マーカーは、前記載置面よりも下方に位置する。
【0022】
上述の態様では、支持治具の載置面に載置される被検体よりも、マーカーが下方に位置する。これにより、前記被検体と前記マーカーとが検出器の投影面上において重なることを極力避けることができる。このため、前記被検体の撮像画像と前記マーカーの撮像画像とが重なることを避けることができる。したがって、再構成画像の画質に影響を与えることなく前記被検体のレイアウトの自由度を向上できる。
【0023】
態様6に係るX線CT装置は、態様1から4のいずれか1つにおいて、前記マーカー回転軌跡は、前記マーカーの重心の三次元空間における移動軌跡であり、前記マーカー検出軌跡は、前記X線によって前記投影面に投影されたマーカーの重心の移動軌跡である。
【0024】
上述の態様では、マーカーの重心を基準として精度よく前記マーカー回転軌跡、前記マーカー射影軌跡及び前記マーカー検出軌跡を計算することができる。このため、前記マーカー回転軌跡と、前記マーカー検出軌跡との間のズレ量をより精度よく計算できる。よって、再構成画像の画質が向上する。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一態様に係るX線CT装置は、X線を照射するX線源と、前記X線源によって照射されるX線の投影面を有する検出器と、前記X線源と前記検出器との間に位置し、被検体を載置するステージ部と、前記ステージ部を、回転軸を中心として、前記X線源及び前記検出器に対して回転させる回転駆動部と、前記X線源によるX線の照射範囲内で前記回転軸に対して偏心して位置し、前記ステージ部に対して固定されるマーカーと、前記回転駆動部によって前記ステージ部が回転した状態で前記X線が前記被検体に照射された際に前記投影面に対して投影された画像から、前記被検体の撮像画像と前記投影面上での前記マーカーの移動軌跡である楕円状のマーカー検出軌跡とを取得する検出結果取得部と、前記回転軸の軸方向に見て、前記回転駆動部によって回転する前記マーカーの移動軌跡である円状のマーカー回転軌跡を前記X線源から前記投影面を含む平面へ射影して得られる楕円状のマーカー射影軌跡における長軸上の頂点が、前記マーカー回転軌跡に対して前記X線源から引いた接線と前記マーカー回転軌跡との交点に対して紐付けられるように、前記マーカー回転軌跡における各位置と前記マーカー射影軌跡における各位置とを紐付ける第1紐付け部と、前記マーカー射影軌跡における各位置と前記マーカー検出軌跡における各位置とを紐付ける第2紐付け部と、前記第1紐付け部及び前記第2紐付け部による前記マーカー回転軌跡、前記マーカー射影軌跡及び前記マーカー検出軌跡の紐付けと、前記被検体の前記撮像画像とに基づいて、前記被検体の断層画像を再構成する再構成部と、を有する。
【0026】
上述の態様によれば、円状の前記マーカー回転軌跡と、理論上の楕円状の前記マーカー射影軌跡と、実際の楕円状の前記マーカー検出軌跡との間の対応関係を適正化することによって画質を向上させた再構成処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、実施形態1に係るX線CT装置の概略的構成を示す機能ブロック図である。
図2図2は、回転テーブルに設置された支持治具の上端付近の拡大断面図である。
図3図3は、投影画像の例を示す図である。
図4図4は、マーカー回転軌跡とマーカー射影軌跡との関係を示す立体図である。
図5図5は、マーカー回転軌跡とマーカー射影軌跡との関係を示す平面図であり、図4の白抜き矢印V矢視図である。
図6図6は、マーカー回転軌跡とマーカー射影軌跡との関係を示す側面図であり、図5の白抜き矢印VI矢視図である。
図7図7は、マーカー回転軌跡における点とマーカー射影軌跡における点との図形上の紐付けについて説明する模式図である。
図8図8は、ズレ量の算出方法について説明する図である。
図9図9は、実施形態1の変形例に係るX線CT装置の概略的構成を示す機能ブロック図である。
図10図10は、マーカーの投影面における移動軌跡であるマーカー検出軌跡TR3を最尤推定法によって求める方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。なお、図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。また、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0029】
[実施形態1]
(全体構成)
図1図5を用いて、実施形態1に係るX線CT装置1について説明する。図1は、実施形態1に係るX線CT装置1の概略的構成を示す機能ブロック図である。図2は、回転テーブル131に設置された支持治具132の上端付近の拡大断面図である。
【0030】
なお、図1において、矢印Xは、X線CT装置1の座標系におけるX軸を示し、矢印Yは、X線CT装置1の座標系におけるY軸を示し、矢印Zは、X線CT装置1の座標系におけるZ軸を示す。X軸、Y軸及びZ軸のそれぞれにおいて矢印の向きが正方向であり、矢印と逆の向きが負方向である。また、X軸及びY軸は、X線CT装置1の水平方向に延びる軸である。また、Z軸は、X線CT装置1の上下方向に延びる軸である。以下では、X線CT装置1の上下方向を単に上下方向と称する。Z軸は、X軸及びY軸を含む水平面に対して直交する。
【0031】
図1に示すように、X線CT装置1は、X線源11と、検出器12と、ステージ部13と、回転駆動部14と、記憶部20と、制御部30と、操作部51と、表示部52と、を有する。
【0032】
X線源11は、コーンビーム状のX線を発生する。X線源11は、焦点が数マイクロメートルから数十マイクロメートルであるマイクロフォーカスX線管を含む。マイクロフォーカスX線管では、フィラメントから発生した電子を収束させ、収束させた電子をターゲットである陽極に当ててX線を発生させる。X線源11は、水平方向の一方向であるX軸方向に延びるX線光軸AXを有する。X線源11は、X線光軸AXの一方に位置する検出器12の方向にX線を照射する。
【0033】
検出器12は、X線源11から照射されるX線の投影面を有する。検出器12は、X線源11から照射されるX線を検出する。検出器12は、2次元状に配列された画素を有する2次元X線検出器である。検出器12は、検出したX線に基づき投影データを生成する。
【0034】
ステージ部13は、被検体Wを載置する台である。ステージ部13は、X線源11と検出器12との間に位置する。ステージ部13は、回転テーブル131と、支持治具132とを有する。回転テーブル131は、後述の回転駆動部14の駆動力によって、上下方向に延びる回転軸P1を中心として回転する。支持治具132は、上下方向に延びる軸線を有する円柱状の形状を有する。支持治具132は、例えば、X線を透過する樹脂製の部材である。支持治具132の円柱形状の軸線と、回転テーブル131の回転軸P1とは一致する。上下方向において、支持治具132の上端に位置する載置面132aには、被検体Wが載置される。支持治具132の載置面132aより下方には、球状のマーカー15が埋め込まれている。マーカー15は、例えば、X線を透過しない金属製の部材である。マーカー15は、支持治具132によってステージ部13に対して支持されている。これによって、マーカー15は、ステージ部13に対して固定されている。マーカー15は、X線源11によるX線の照射範囲内で回転軸P1に対して偏心して位置する。被検体Wの重心は、例えば、X線光軸AXと回転軸P1との交点に位置する。
【0035】
回転駆動部14は、ステージ部13を、上下方向に延びる回転軸P1を中心として、X線源11及び検出器12に対して回転させる。これにより、回転駆動部14は、ステージ部13に載置される被検体Wを、回転軸P1を中心としてX線源11に対して相対的に回転させる。具体的には、回転駆動部14は、回転テーブル131を、上下方向に延びる回転軸P1を中心として図1に示す矢印R11方向に一定速度で回転させる。回転駆動部14は、モータ等の駆動装置により実現される。回転駆動部14は、被検体Wの撮影時、制御部30の制御によって被検体Wを載置したステージ部13を所定の位置まで回転させる。
【0036】
記憶部20は、制御部30において実行されるプログラム及びプログラムで使用されるデータ等の各種のデータを格納している。記憶部20は、例えば、揮発性又は不揮発性の記憶装置により実現できる。記憶部20は、例えば、内蔵、外付けの記憶装置又はリムーバブルメディアにより実現できる。記憶部20は、具体的に例示すると、キャッシュメモリ及び主記憶装置により実現できる。また、記憶部20は、具体的に例示すると、SSD(Solid State Drive)又はHDD(ハードディスク)等の補助記憶装置により実現できる。また、記憶部20は、投影画像DP20を記憶する。投影画像DP20には、撮影画像及びマーカー画像が含まれる。
【0037】
制御部30は、プログラムを実行することでX線CT装置1における各種機能を統合的に実行する。制御部30の各種機能は、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等の演算装置によってプログラムが実行されことにより実現される。なお、制御部30の詳細については後述する。
【0038】
操作部51は、X線CT装置1における各種の操作を行うためのユーザインターフェースである。操作部51は、例えば、キーボード、ボタン等の入力装置、又は、マウス、ペンタブレット及びタッチパネル等のポインティングデバイスにより実現できる。例えば、操作部51における操作によって、X線CT装置1における撮影操作を行うことができる。
【0039】
表示部52は、ユーザに対してX線CT装置1における各種データを提示する。表示部52は、液晶又は有機EL等の表示装置により実現できる。
【0040】
(制御部の詳細)
引き続き図1を用いて制御部30の詳細を説明する。図1に示すように、制御部30は、撮像制御部31と、検出結果取得部32と、第1紐付け部33と、第2紐付け部34と、ズレ量計算部35と、再構成部36とを有する。
【0041】
(撮像制御部)
撮像制御部31は、X線源11、回転駆動部14及び検出器12を制御して被検体Wの撮像を行う。撮像制御部31は、操作部51による操作によって、撮像を開始する。撮像が開始されると、撮像制御部31は、回転駆動部14によってステージ部13が回転した状態で、X線源11によって被検体W及びマーカー15にX線を照射する。また、撮像制御部31は、検出器12の投影面12aに対して投影された被検体W及びマーカー15を検出器12によって検出する。撮像制御部31は、検出結果に基づき投影画像DP20を生成する。撮像制御部31は、投影画像DP20を記憶部20に記憶する。
【0042】
図3を用いて、撮像制御部31が生成する投影画像DP20について説明する。図3は、投影画像の例を示す図である。
【0043】
以下の説明では、撮像制御部31による撮像に先立って、X線源11と、検出器12と、ステージ部13に固定されるマーカー15との位置関係が、調整及び補正されていることを前提とする。
【0044】
図3に示すように、撮像制御部31は、回転テーブル131を1°回転させる毎に1枚の投影画像DP20を取得する。撮像制御部31は、0°から撮像を開始して360°分の投影画像DP20を取得する。
【0045】
それぞれの回転角度において撮像制御部31が生成する投影画像DP20には、被検体画像MWとマーカー画像M15とが含まれる。
【0046】
撮像制御部31は、検出器12によって検出された投影画像DP20を記憶部20に記憶する。
【0047】
(検出結果取得部)
検出結果取得部32は、投影画像DP20を記憶部20から取得する。検出結果取得部32は、回転駆動部14によってステージ部13が回転した状態でX線が被検体Wに照射された際に投影面12aに対して投影された投影画像DP20から、被検体Wの撮像画像と投影面12a上でのマーカー15の移動軌跡を取得する。
【0048】
図3に示すように、1回転分、すなわち360°分のマーカー画像M15の軌跡を繋げると、実際のX線の照射によって検出器12の投影面12aに投影されたマーカー15の重心の移動軌跡であるマーカー検出軌跡TR3を得ることができる。マーカー検出軌跡TR3は、回転駆動部14によって回転するマーカー15が投影面12aに対して投影された移動軌跡である。マーカー検出軌跡TR3は、楕円状の形状を有する。
【0049】
(第1紐付け部)
第1紐付け部33は、マーカー回転軌跡TR1における各位置とマーカー射影軌跡TR2における各位置とを紐付けるとともに、マーカー射影軌跡TR2における各位置とマーカー検出軌跡TR3における各位置とを紐付ける。
【0050】
(マーカー回転軌跡とマーカー射影軌跡との関係)
ここで、図4図6を用いて、マーカー回転軌跡TR1とマーカー射影軌跡TR2との関係について、より具体的に説明する。図4は、マーカー回転軌跡TR1とマーカー射影軌跡TR2との関係を示す立体図である。図5は、マーカー回転軌跡TR1とマーカー射影軌跡TR2との関係を示す平面図であり、図4の白抜き矢印V矢視図である。図6は、マーカー回転軌跡TR1とマーカー射影軌跡TR2との関係を示す側面図であり、図5の白抜き矢印VI矢視図である。
【0051】
以下の説明では、X線源11が位置する点PXは、X線源11の焦点の位置を意味する。なお、説明の便宜上、X線源11の焦点の大きさは考慮しない。球状のマーカー15の位置は、マーカー15の重心、すなわち球の中心を基準点とする。
【0052】
図4図6に示すように、X線源11のX線光軸AXは、X線源11が位置する点PXから投影面12aに向かってY方向に延びる。X線光軸AXは、且つ、投影面12aに直交し、且つ、投影面12aの水平方向及び上下方向の中心点C3において投影面12aと交わる。X線源11が位置する点PXと投影面12aとは、距離D1だけ離れて位置する。マーカー15は、X線光軸AXよりも距離L1だけ下方に位置する。
【0053】
マーカー回転軌跡TR1は、回転駆動部14によって回転するマーカー15の重心の三次元空間における移動軌跡である。従って、マーカー回転軌跡TR1は、回転軸P1の軸方向に見て、回転軸P1上に位置し且つX線光軸AXよりも距離L1だけ下方に位置する中心点C1を中心とする半径R1の円状である。回転軸P1は、X線源11が位置する点PXからY方向に距離D2だけ離れて位置する。なお、距離L1、距離D1、距離D2及び半径R1は、上述の通り既知である。
【0054】
次に、マーカー射影軌跡TR2は、マーカー回転軌跡TR1を、X線源11が位置する点PXから、投影面12aを含む平面Qへ射影して得られる計算上の移動軌跡である。マーカー射影軌跡TR2は、Y軸方向に見て、楕円形の形状を有する。このため、マーカー射影軌跡TR2の長軸半径をRbとする。マーカー射影軌跡TR2の楕円形状は、平面Qにおいて中心点C3を通り且つX方向に延びる中央水平線HRよりも下方に位置する。
【0055】
このマーカー回転軌跡TR1をX線源11が位置する点PXから平面Qに対して射影するための射影変換は、例えば、マーカー回転軌跡TR1及びマーカー射影軌跡TR2のそれぞれにおける独立した4点を用いて求めることができる。
【0056】
例えば、マーカー回転軌跡TR1における点とマーカー射影軌跡TR2における点との間には以下のような関係が成り立つ。
【0057】
マーカー回転軌跡TR1においてX線源11が位置する点PXに最も近い点Pa1は、マーカー射影軌跡TR2における楕円の最も下方にある点Pb1に射影される。
【0058】
マーカー回転軌跡TR1に対してX線源11が位置する点PXから引いた接線T1とマーカー回転軌跡TR1との交点である点Pa2は、マーカー射影軌跡TR2における楕円の長軸上の頂点の一方である点Pb2に射影される。点Pb2は、Y軸の正方向にみて、マーカー射影軌跡TR2において、最も左側に位置する。
【0059】
マーカー回転軌跡TR1においてX線源11が位置する点PXから最も遠い点Pa3は、マーカー射影軌跡TR2における楕円の最も上方にある点Pb3に射影される。
【0060】
マーカー回転軌跡TR1に対してX線源11が位置する点PXから引いた接線T2とマーカー回転軌跡TR1との交点である点Pa4は、マーカー射影軌跡TR2における楕円の長軸上の頂点の他方である点Pb4に射影される。点Pb4は、Y軸の正方向にみて、マーカー射影軌跡TR2において、最も右側に位置する。
【0061】
第1紐付け部33は、上述の4点に基づいて、マーカー回転軌跡TR1から、マーカー射影軌跡TR2への射影変換を求める。
【0062】
なお、接線T1とマーカー回転軌跡TR1との交点である点Pa2と、接線T2とマーカー回転軌跡TR1との交点である点Pa4との位置は以下の通り求めることができる。
【0063】
以下の説明では、マーカー回転軌跡TR1を水平面に投影した軌跡を水平投影軌跡TR10とする。このとき、水平投影軌跡TR10は、回転軸P1の軸線方向に見て、中心点C10を中心とする円形である。中心点C10は、X線源11が位置する点PXからY方向に距離D2だけ離れて位置する。また、水平投影軌跡TR10の半径は、マーカー回転軌跡TR1の半径と同様、R1である。
【0064】
特に図4において、水平投影軌跡TR10における点Pa10、Pa20、Pa30及びPa40は、それぞれ、マーカー回転軌跡TR1における点Pa1、Pa2、Pa3及びPa4に対応する。
【0065】
また、マーカー射影軌跡TR2における点Pb4を水平面に対してZ軸方向に投影した軌跡を点Pb40とする。マーカー射影軌跡TR2における楕円の長軸半径Rbは、X線光軸AXと投影面12aを含む平面Qとの交点である中心点C3と点Pb40との距離と同一である。
【0066】
X線源11が位置する点PXと中心点C10と点Pa40とからなる三角形は、X線源11が位置する点PXと中心点C3と、点Pb40とからなる三角形は、相似形である。
【0067】
このため、マーカー射影軌跡TR2における楕円の長軸半径Rbは次の通り計算することができる。まず、半径R1と、回転軸P1の軸方向に見たときのX線源11が位置する点PXから点Pb40までの距離D3と、X線源11が位置する点PXと投影面12aとの間の距離D1と、長軸半径Rbとの間に以下の数式(1)の関係が成り立つ。
【0068】
【数1】
ここで、距離D3は、以下の数式(2)に示すように表せる。
【0069】
【数2】
マーカー回転軌跡TR1における点Pa2及び点Pa4は、水平投影軌跡TR10における点Pa20及び点Pa40よりも距離L1だけ下方に位置する。このため、距離D3に基づいて、マーカー回転軌跡TR1における点Pa2及び点Pa4の位置を特定できる。
【0070】
マーカー射影軌跡TR2における楕円の長軸半径Rbは、例えば、数式(1)及び(2)より、長軸半径Rbは以下の数式(3)に示すように表せる。
【0071】
【数3】
距離D1、距離D2及び半径R1は、上述の通りすべて既知であるため、マーカー射影軌跡TR2の長軸半径Rbは、既知の情報によって算出できる。
【0072】
(マーカー回転軌跡における各位置と、マーカー射影軌跡における各位置との紐付け)
第1紐付け部33は、上述したように求めた射影変換に基づいて、マーカー回転軌跡TR1における点とマーカー射影軌跡TR2における点とを紐付ける。
【0073】
図7を用いて具体的に説明すると次の通りである。図7は、マーカー回転軌跡TR1における点とマーカー射影軌跡TR2における点との図形上の紐付けについて説明する模式図である。マーカー15の初期位置は、回転の角度α=0°とする。
【0074】
ここで、マーカー回転軌跡TR1におけるマーカー15の初期位置である点Pa1の回転の角度は、α=0°である。マーカー回転軌跡TR1における点Pa2の回転の角度をα=θ1とする。マーカー回転軌跡TR1における点Pa3の回転の角度は、α=180°である。マーカー回転軌跡TR1における点Pa4の回転の角度は、α=360°-θ1である。
【0075】
図7に示す通り、第1紐付け部33は、上述の通り、円形状のマーカー回転軌跡TR1における点Pa1、Pa2、Pa3及びPa4の4点と、楕円形状のマーカー射影軌跡TR2における点Pb1、Pb2、Pb3及びPb4の4点との紐付けに基づいて射影変換fを求める。すなわち、第1紐付け部33は、円形状のマーカー回転軌跡TR1における点Pa1、Pa2、Pa3及びPa4の4点に対して、それぞれ、楕円形状のマーカー射影軌跡TR2における点Pb1、Pb2、Pb3及びPb4の4点を紐づける。
【0076】
上述の通り、X線CT装置1では、投影画像を1°ずつ360°分取得する。このため、マーカー回転軌跡TR1は、360°分の回転の角度に対応する360個の点を有する。
【0077】
第1紐付け部33は、求めた射影変換fに基づいて、上述のマーカー回転軌跡TR1における各点を、それぞれ、上述のマーカー射影軌跡TR2における各点に変換する。
【0078】
マーカー回転軌跡TR1における回転の角度αが、α=0°、θ1、180°、360°-θ1以外の点についても、射影変換fに基づいて、上述のマーカー回転軌跡TR1からマーカー射影軌跡TR2に変換することができる。
【0079】
ここで、仮に、マーカー回転軌跡TR1における0°、90°、180°及び270°の4点と、楕円形状のマーカー射影軌跡TR2における点Pb1、Pb2、Pb3及びPb4の4点とを紐づけると、マーカー射影軌跡TR2における点Pb2及びPb4の射影が、実際のX線源11、検出器12、回転軸P1及びマーカー15の位置関係を反映しないものとなり、良好な射影変換の精度が得られない。
【0080】
(第2紐付け部)
図7に示すように、第2紐付け部34は、マーカー射影軌跡TR2における回転の角度αにおける位置とマーカー検出軌跡TR3における回転の角度αにおける位置とを紐付ける。
【0081】
(ズレ量計算部)
ズレ量計算部35は、マーカー検出軌跡TR3とマーカー射影軌跡TR2とのズレ量を計算する。マーカー検出軌跡TR3は、X線源11の焦点移動等に起因して、マーカー射影軌跡TR2に対してズレを生じる。
【0082】
図8を用いて、ズレ量計算部35によるズレ量の算出について説明する。図8は、ズレ量の算出方法について説明する図である。
【0083】
図8に示すように、ズレ量計算部35は、マーカー検出軌跡TR3における回転の角度αの点Pc(α)と、点Pc(α)に紐づくマーカー射影軌跡TR2における回転の角度αの点Pb(α)とを比較し、Z軸方向のズレ量ΔZ及びY軸方向のズレ量ΔYを計算する。
【0084】
(再構成部)
再構成部36は、前記ズレ量に基づいて被検体Wの撮像画像を補正した補正画像に基づいて、被検体Wの断層画像を再構成する。
【0085】
具体的に説明すると以下の通りである。図8に示すように、再構成部36は、回転の角度αにおいて取得された投影画像DP20に含まれる被検体画像MW(α)をマーカー検出軌跡TR3における回転の角度αについて算出されたズレ量ΔMWに基づいて、Z軸方向及びY軸方向に平行移動させる。
【0086】
再構成部36は、このようにズレ量に基づいて補正した撮像画像を用いて再構成を行う。再構成部36は、再構成を行うことに得られた再構成画像を表示部52に出力する。
【0087】
以上に説明したように、X線CT装置1は、X線源11と、検出器12と、ステージ部13と、回転駆動部14と、マーカー15と、制御部30とを有する。
【0088】
X線源11は、X線を照射する。検出器12は、X線源11によって照射されるX線の投影面12aを有する。ステージ部13は、X線源11と検出器12との間に位置し、被検体Wを載置する。回転駆動部14は、ステージ部13を、回転軸P1を中心として、X線源11及び検出器12に対して回転させる。マーカー15は、X線源11によるX線の照射範囲内で回転軸P1に対して偏心して位置し、ステージ部13に対して支持治具132によって固定される。制御部30は、各種機能を実現するための処理を実行する。
【0089】
制御部30は、検出結果取得部32と、第1紐付け部33と、第2紐付け部34と、再構成部36とを有する。
【0090】
検出結果取得部32は、回転駆動部14によってステージ部13が回転した状態で前記X線が被検体Wに照射された際に投影面12aに対して投影された投影画像から、被検体Wの撮像画像と投影面12a上でのマーカー15の移動軌跡である楕円状のマーカー検出軌跡TR3とを取得する。
【0091】
第1紐付け部33は、回転軸P1の軸方向に見て、回転駆動部14によって回転するマーカー15の移動軌跡である円状のマーカー回転軌跡TR1をX線源11から投影面12aを含む平面Qへ射影して得られる楕円状のマーカー射影軌跡TR2における長軸上の頂点である点Pb2及びPb4が、マーカー回転軌跡TR1に対してX線源11から引いた接線T1,T2とマーカー回転軌跡TR1との交点である点Pa2及びPa4に対して紐付けられるように、マーカー回転軌跡TR1における各位置とマーカー射影軌跡TR2における各位置とを紐付ける。
【0092】
第2紐付け部34は、マーカー射影軌跡TR2における各位置とマーカー検出軌跡TR3における各位置とを紐付ける。
【0093】
再構成部36は、第1紐付け部33及び第2紐付け部34によるマーカー回転軌跡TR1、マーカー射影軌跡TR2及びマーカー検出軌跡TR3の紐付けと、被検体Wの前記撮像画像とに基づいて、被検体Wの断層画像を再構成する。
【0094】
上述の態様では、上述のようなマーカー検出軌跡TR3及びマーカー射影軌跡TR2の紐付けとマーカー射影軌跡TR2及びマーカー回転軌跡TR1の紐付けとに基づいて、マーカー検出軌跡TR3及びマーカー回転軌跡TR1が紐付けられる。例えば、図7等に示すように、マーカー射影軌跡TR2における長軸上の頂点である点Pb2及びPb4は、マーカー回転軌跡TR1に対してX線源11から引いた接線T1,T2とマーカー回転軌跡TR1との交点である点Pa2及びPa4に対して紐付けられる。このため、マーカー射影軌跡TR2における楕円の長軸上の点の一方である点Pb2とマーカー回転軌跡TR1における回転の角度が90°の位置とを紐付け、且つ、マーカー射影軌跡TR2における楕円の長軸上の点の他方である点Pb4とマーカー回転軌跡TR1における回転の角度が270°の位置とを紐付ける場合と比べて、円状のマーカー回転軌跡TR1と楕円状のマーカー検出軌跡TR3との間の射影変換の精度を向上させることができる。
【0095】
再構成部36は、第1紐付け部33及び第2紐付け部34によるマーカー回転軌跡TR1、マーカー射影軌跡TR2及びマーカー検出軌跡TR3の紐付けと、被検体Wの前記撮像画像とに基づいて、被検体Wの断層画像を再構成する。よって、円状のマーカー回転軌跡TR1と、理論上の楕円状のマーカー射影軌跡TR2と、実際の楕円状のマーカー検出軌跡TR3との間の対応関係を適正化することができる。これにより、より画質を向上させた再構成画像を得ることができる。
【0096】
また、X線CT装置の制御部30は、前記マーカー検出軌跡と前記マーカー射影軌跡とのズレ量を計算するズレ量計算部35をさらに有する。再構成部36は、前記ズレ量に基づいて被検体Wの前記撮像画像を補正した補正画像を用いて、前記断層画像を再構成する。
【0097】
上述した紐付けと、前記撮像画像とに基づく処理の一例は、求めたズレ量に基づいて前記撮像画像を補正する処理である。上述の構成では、理論上のマーカー射影軌跡TR2と、マーカー15に対して実際にX線を照射したときに得られるマーカー15の移動軌跡であるマーカー検出軌跡TR3とのズレ量を求める。このズレ量は、X線源11の焦点移動又はステージ部13の運動誤差等に起因して生じ得る。上述の構成によれば、理論上のマーカー射影軌跡TR2は、より実際の位置関係に適合した射影変換に基づいて得られるので、求めるズレ量の精度が向上する。これにより、精度よく求められたズレ量に基づいて被検体Wの撮像画像を補正して断層画像を再構成できる。よって、精度が高い再構成画像を得ることができる。
【0098】
また、X線CT装置1では、第1紐付け部33は、マーカー回転軌跡TR1のうち、X線源11に最も近い位置に対して、マーカー射影軌跡TR2における短軸上の頂点の一方を紐付け、且つ、X線源11から最も遠い位置に対して、マーカー射影軌跡TR2における短軸上の頂点の他方を紐付ける。
【0099】
上述の態様では、第1紐付け部33が、マーカー回転軌跡TR1における上述の交点の2つとX線源11に最も近い位置とX線源11から最も遠い位置との合計4点と、マーカー射影軌跡TR2における上述の長軸上の頂点の2つと短軸上の頂点の2つとの合計4点とが紐付けられる。すなわち、第1紐付け部33は、マーカー回転軌跡TR1及びマーカー射影軌跡TR2のそれぞれの独立した4点を用いた位置の紐付けを行う。これにより、マーカー回転軌跡TR1では、前記交点の2つ以外にもさらに2つの点がマーカー射影軌跡TR2の点と紐付けられる。このため、射影変換の精度が向上する。円状のマーカー回転軌跡TR1と、楕円状のマーカー射影軌跡TR2との間のズレをより精度よく解消できる。
【0100】
また、X線CT装置1では、ステージ部13は、被検体Wを載置する載置面132aを有する支持治具132を含む。また、マーカー15は、支持治具132の載置面132aよりも下方に位置する。
【0101】
上述の態様では、支持治具132の載置面132aに載置される被検体Wよりも、マーカー15が下方に位置する。これにより、被検体Wの投影像と、マーカー15の投影像とが検出器12の投影面12a上において重なることを極力避けることができる。したがって、再構成画像の画質に影響を与えることなく前記被検体Wのレイアウトの自由度を向上できる。
【0102】
また、X線CT装置1では、マーカー回転軌跡TR1は、マーカー15の重心の三次元空間における移動軌跡である。また、マーカー検出軌跡TR3は、前記X線によって検出器12の投影面12aに投影されたマーカー15の重心の移動軌跡である。
【0103】
上述の態様では、マーカー15の重心を基準として精度よくマーカー回転軌跡TR1、マーカー射影軌跡TR2及びマーカー検出軌跡TR3を計算することができる。このため、マーカー射影軌跡TR2と、マーカー検出軌跡TR3との間のズレ量をより精度よく計算できる。よって、再構成画像の画質が向上する。
【0104】
[実施形態1の変形例1]
図9及び図10を用いて、実施形態1の変形例1に係るX線CT装置2について説明する。図9は、実施形態1の変形例1に係るX線CT装置2の概略的構成を示す機能ブロック図である。図10は、マーカー15の投影面12aにおける移動軌跡であるマーカー検出軌跡TR3を最尤推定法によって求める方法を説明する図である。
【0105】
実施形態1の変形例1に係るX線CT装置2は、楕円状のマーカー検出軌跡TR3を最尤推定法によって推定する。
【0106】
実施形態1の変形例1に係るX線CT装置2は、制御部30が推定部37を有する点で、実施形態1に係るX線CT装置1と異なる。
【0107】
なお、実施形態1の変形例1の説明では、実施形態1に係るX線CT装置1と共通する部分については、詳細な説明を繰り返さない。
【0108】
図9に示すX線CT装置1の推定部37は、図10に示すように、マーカー15の球の重心の平面Qにおける位置P(α1)、…、P(αn)に最もフィッティングする楕円TR4を最尤推定法によって求める。最尤推定法では、取得データの点列には真の位置に一様等方な正規分布に従う誤差が独立に加わっていると仮定して、当てはめる楕円と点列との距離の二乗和を最小にするように楕円を定める方法である。上記二乗和は、「再投影誤差」と呼ばれる。
【0109】
再投影誤差は「サンプソン誤差」と呼ばれる関数によって、近似される。サンプソン誤差を最小化する反復手法としては、例えば「FNS法」などがある。なお、最尤推定法については、非特許文献:横田健太、外3名、“楕円当てはめの精度比較:最小二乗法から超精度くりこみ法まで”、2012年1月、第180回コンピュータビジョンとイメージメディア研究発表会(情報処理学会研究報告)に記載の技術を採用することができる。
【0110】
推定部37は、最尤推定法によって求めた楕円TR4をマーカー検出軌跡TR3として検出結果取得部32に対して出力する。
【0111】
また、検出結果取得部32は、推定部37が出力したマーカー検出軌跡TR3に基づき上述の紐付け処理を行う。
【0112】
マーカー検出軌跡TR3は、上述の誤差等に起因して、きれいな楕円状を描かない場合がある。上述の態様によれば、誤差等を最適化することができるので、マーカー検出軌跡TR3を精度よく推定することができる。
【0113】
なお、X線CT装置2は、重み付け最尤推定法によって求めた楕円TR4をマーカー検出軌跡TR3として検出結果取得部32に対して出力してもよい。なお、重み付け最尤推定法としては、非特許文献:金森敬文、“重み付き最尤推定量を用いた能動学習のアルゴリズム”、計算機統計学、日本計算機統計学会、1999年11巻2号p.65-75、1999年10月25日発行に記載の技術を採用できる。
【0114】
X線の焦点変動は、X線の照射開始からの時間が短いほど変動が大きい傾向がある。推定部37は、重み付け最尤推定を用いて、回転の角度が小さい点に対して、低い重み付けを行うとともに、回転の角度が大きくなるにつれて高い重み付けを行う。
【0115】
これにより、上述の焦点変動の傾向に基づく楕円を求めることができる。すなわち、マーカー検出軌跡TR3をより精度よく推定することができる。
【0116】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0117】
前記各実施形態では、X線CT装置1の制御部30がプログラムを実行することにより各種機能を実現する。すなわち、制御部30はソフトウェアによって実現されている。これに限られず、制御部は、専用の集積回路等のハードウェアによって実現されていてもよい。
【0118】
前記各実施形態では、X線源11は、焦点が数マイクロメートルから数十マイクロメートルであるマイクロフォーカスX線管を含む。しかしながら、X線源は、マイクロメートルオーダーよりも大きい焦点を有していてもよい。
【0119】
前記各実施形態では、X線源11は、水平方向の一方向に延びるX線光軸AXを有する。しかしながら、X線源のX線光軸は上下方向であってもよいし、別の他の方向であってもよい。
【0120】
前記各実施形態では、特に説明しなかったが、X線源、検出器及び回転台は、それぞれ、X線光軸の方向、上下方向及び上下方向に直交する水平方向に移動する移動機構を有していてもよい。これにより、X線光軸の位置及び投影データの幾何倍率等を調整できる。
【0121】
前記各実施形態では、ステージ部13が回転駆動部14によって回転する。しかしながら、回転駆動部は、X線源としてのX線源及び検出器12の対を、被検体に対して回転させてもよい。回転駆動部は、被検体及び前記被検体にX線を照射するX線源の少なくとも一方を相対的に回転させてもよい。
【0122】
前記各実施形態では、X線CT装置1が記憶部20に投影画像を記憶する。しかしながら、X線CT装置は、通信ネットワークを介して接続された外部のサーバに投影画像をアップロードしてもよい。また、X線CT装置は、外部のサーバに保存されている投影画像に基づいて、紐付け、ズレ量の算出及び断層画像の再構成の処理を行ってもよい。
【0123】
前記各実施形態では、被検体Wを、回転テーブル131の上に設置された支持治具132の上に載置する。しかしながら、被検体Wを回転テーブルに直接載置してもよい。また、回転テーブル内にマーカーを埋め込んでもよい。また、回転テーブル上に支持治具とは別に棒状体を設け、前記棒状体の上端にマーカーを配置してもよい。
【0124】
前記各実施形態では、撮像制御部31は、1°刻みで投影画像を取得する。しかしながら、1°より小さい回転角度ごとに投影画像を取得してもよいし、1°より大きい回転角度ごとに投影画像を取得してもよい。
【0125】
前記各実施形態では、撮像制御部31は、ステージ部13の1回転分、すなわち、360°分の投影画像を取得する。しかしながら、撮像制御部は、360°より大きい回転の角度において投影画像を取得してもよい。
【0126】
前記各実施形態では、ズレ量計算部35がマーカー検出軌跡TR3とマーカー射影軌跡TR2とのズレ量を計算する。しかしながら、ズレ量計算部35は、省略することもできる。
【0127】
前記各実施形態では、第1紐付け部33は、マーカー回転軌跡TR1のうち、X線源11に最も近い位置に対して、マーカー射影軌跡TR2における短軸上の頂点の一方を紐付け、且つ、X線源11から最も遠い位置に対して、マーカー射影軌跡TR2における短軸上の頂点の他方を紐付ける。第1紐付け部は、マーカー回転軌跡TR1のうち、X線源11に最も近い位置、X線源11から最も遠い位置及び上述の2つの交点以外の位置に対して、マーカー射影軌跡TR2における点を紐付けてもよい。
【0128】
前記各実施形態では、支持治具132は、例えば、X線を透過する樹脂製の部材である。また、マーカー15は、X線を透過しない金属製の部材である。しかしながら、投影画像において、マーカーが判別できれば、マーカーX線を透過する部材であってもよい。
【0129】
前記各実施形態では、マーカー15は、球状である。しかしながら、マーカーは球状でなくてもよく、投影画像から、マーカーの軌跡が取得できれば、任意の形状を有していてもよい。
【0130】
前記各実施形態では、マーカー回転軌跡TR1は、マーカー15の重心の三次元空間における移動軌跡である。また、マーカー検出軌跡TR3は、X線によって検出器12の投影面12aに投影されたマーカー15の重心の移動軌跡である。しかしながら、マーカー回転軌跡及びマーカー検出軌跡は、マーカーの重心以外の位置を基準として求めてもよい。
【0131】
前記各実施形態では、ステージ部13は、被検体Wを載置する載置面132aを有する支持治具132を含む。また、マーカー15は、載置面132aよりも下方に位置する。しかしながら、支持治具は省略してもよい。例えば、被検体Wは、回転テーブルの載置面に載置してもよい。また、マーカーは、回転テーブルの載置面よりも下方に埋め込まれていてもよい。
【0132】
前記実施形態1の変形例では、X線CT装置2は、最尤推定法又は重み付け最尤推定法によって求めた楕円TR4をマーカー検出軌跡TR3として検出結果取得部32に対して出力する。しかしながら、X線CT装置は、重み反復法、Taubin法、くりこみ法、超精度最小二乗法、超精度くりこみ法、最尤推定法又は超精度補正によって楕円を推定してもよい。なお、これらの推定方法として、上述の非特許文献:横田健太、外3名、“楕円当てはめの精度比較:最小二乗法から超精度くりこみ法まで”、2012年1月、第180回コンピュータビジョンとイメージメディア研究発表会(情報処理学会研究報告)に記載の技術を採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明は、X線照射によって試料の断層像を得るX線CT装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0134】
1、2 X線CT装置
11 X線源
12 検出器
13 ステージ部
131 回転テーブル
132 支持治具
14 回転駆動部
15 マーカー
20 記憶部
30 制御部
31 撮像制御部
32 検出結果取得部
33 第1紐付け部
34 第2紐付け部
35 ズレ量計算部
36 再構成部
51 操作部
52 表示部
DP20 投影画像
W 被検体
図1
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