IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-サンプリング方法、及び支持装置 図1
  • 特開-サンプリング方法、及び支持装置 図2
  • 特開-サンプリング方法、及び支持装置 図3
  • 特開-サンプリング方法、及び支持装置 図4
  • 特開-サンプリング方法、及び支持装置 図5
  • 特開-サンプリング方法、及び支持装置 図6
  • 特開-サンプリング方法、及び支持装置 図7
  • 特開-サンプリング方法、及び支持装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116699
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】サンプリング方法、及び支持装置
(51)【国際特許分類】
   G21C 17/00 20060101AFI20240821BHJP
   G21F 7/06 20060101ALI20240821BHJP
   G21C 13/00 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
G21C17/00 400
G21F7/06
G21C13/00 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022455
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】南山 彰男
(72)【発明者】
【氏名】森川 玲於奈
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 弘祥
(72)【発明者】
【氏名】西脇 良
(72)【発明者】
【氏名】三好 善幸
(72)【発明者】
【氏名】千田 哲也
【テーマコード(参考)】
2G075
【Fターム(参考)】
2G075AA01
2G075EA01
2G075EA02
2G075FC12
2G075GA01
(57)【要約】
【課題】より汎用性の高いサンプリング方法、及び支持装置を提供する。
【解決手段】サンプリング方法は、原子炉格納容器内の対象部位のサンプルを、支持柱、及びサンプリング装置を用いて採取するサンプリング方法であって、支持柱は、単位長さごとに分割された複数の分割体を有し、サンプリング方法は、対象部位の上方で少なくとも1つの分割体を支持するステップと、分割体の水平面内での位置を対象部位に応じて調節するステップと、支持されている分割体の上端に、他の分割体の下端を接続するステップと、接続された複数の分割体を対象部位に向けて降下させるステップと、対象部位でサンプリング装置によってサンプルを採取するステップと、を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉格納容器内の対象部位のサンプルを、支持柱、及び該支持柱の先端に設けられたサンプリング装置を用いて採取するサンプリング方法であって、
前記支持柱は、単位長さごとに分割された複数の分割体を有し、
前記サンプリング方法は、
前記対象部位の上方で少なくとも1つの前記分割体を支持するステップと、
前記分割体の水平面内での位置を前記対象部位に応じて調節するステップと、
前記支持されている前記分割体の上端に、他の前記分割体の下端を接続するステップと、
前記接続された複数の分割体を前記対象部位に向けて降下させるステップと、
前記対象部位で前記サンプリング装置によって前記サンプルを採取するステップと、
を含むサンプリング方法。
【請求項2】
前記分割体を支持するステップ、前記他の分割体の下端を接続するステップ、及び前記対象部位に向けて降下させるステップを、前記支持柱が前記対象部位に達する高さとなるまで順次繰り返す請求項1に記載のサンプリング方法。
【請求項3】
前記サンプルを採取するステップでは、放電加工によって前記対象部位の前記サンプルを採取する請求項1又は2に記載のサンプリング方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のサンプリング方法に用いられる支持装置であって、
前記原子炉格納容器の周囲で固定可能な架台と、
該架台に設けられ、前記分割体を、上下方向に延びる姿勢で、かつ前記対象部位の上方で支持可能な支持部と、
前記架台に設けられ、前記支持部の前記架台に対する水平面内での相対位置を、前記支持部が前記分割体を支持した状態で調節可能な位置調整部と、
を備える支持装置。
【請求項5】
前記分割体は、上下方向に延びる本体部と、該本体部の両端から外周側に張り出す一対のフランジ部と、を有し、
前記支持部は、前記フランジ部に対して下方から当接するとともに、前記本体部が挿通される開口部が形成され、互いに組み合わせられることで該開口部を形成する一対の分割リングを有する請求項4に記載の支持装置。
【請求項6】
前記一対の分割リングは、上下方向から見て、前記架台側に位置する一方の前記分割リングの面積が、他方の前記分割リングの面積よりも大きい請求項5に記載の支持装置。
【請求項7】
前記位置調整部は、水平方向に直交する2方向に前記支持部を移動させることが可能な一対のボールネジ機構である請求項4に記載の支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サンプリング方法、及び支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所の廃炉作業では、各所の放射線量を事前に測定した上で、作業工程の計画立案や、二次廃棄物の発生量等の見積もりといった作業が行われる。特に、原子炉格納容器内の放射線量を測定するための技術として、下記非特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
下記非特許文献1に係る技術では、加圧水型原子炉(PWR:Pressured Water Reactor)の廃炉作業における格納容器内のサンプル採取を行うために、支持柱の先端に設けられた放電加工装置を用いる方法が採られている。支持柱を原子炉格納容器上方の開口部からサンプリング位置まで降下させ、サンプルが採取される。支持柱は複数の分割体によって構成されており、作業直前に所定の長さになるように組立が行われる。組立の完了した支持柱は、天井クレーンで吊架された後、例えば作業台車によって原子炉格納容器上で保持される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「PWR廃止措置における炉内サンプリング工事について」 保全学会 第16回学術講演 2019年7月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような長尺の支持柱を予め組み立ててサンプリング作業を行うことが難しい場合もある。例えば沸騰水型軽水炉(BWR:Boiling Water Reactor)では、原子炉の構造上の理由から、一般的に建屋の天井高さが低く、長尺の支持柱を立設することが難しい。このため、より汎用性の高いサンプリング方法、及び支持装置に対する要請が高まっていた。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、より汎用性の高いサンプリング方法、及び支持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係るサンプリング方法は、原子炉格納容器内の対象部位のサンプルを、支持柱、及び該支持柱の先端に設けられたサンプリング装置を用いて採取するサンプリング方法であって、前記支持柱は、単位長さごとに分割された複数の分割体を有し、前記サンプリング方法は、前記対象部位の上方で少なくとも1つの前記分割体を支持するステップと、前記分割体の水平面内での位置を前記対象部位に応じて調節するステップと、前記支持されている前記分割体の上端に、他の前記分割体の下端を接続するステップと、前記接続された複数の分割体を前記対象部位に向けて降下させるステップと、前記対象部位で前記サンプリング装置によって前記サンプルを採取するステップと、を含む。
【0008】
本開示に係る支持装置は、上記のサンプリング方法に用いられる支持装置であって、前記原子炉格納容器の周囲で固定可能な架台と、該架台に設けられ、前記分割体を、上下方向に延びる姿勢で、かつ前記対象部位の上方で支持可能な支持部と、前記架台に設けられ、前記支持部の前記架台に対する水平面内での相対位置を、前記支持部が前記分割体を支持した状態で調節可能な位置調整部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、より汎用性の高いサンプリング方法、及び支持装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施形態に係る原子炉建屋内部の構成を示す模式断面図である。
図2】本開示の実施形態に係る支持柱の構成を示す模式図である。
図3】本開示の実施形態に係る支持装置の構成を示す平面図である。
図4】本開示の実施形態に係るサンプリング方法の各ステップを示すフローチャートである。
図5】本開示の実施形態に係るサンプリング方法における分割体を支持するステップの様子を示す説明図である。
図6】本開示の実施形態に係るサンプリング方法における他の分割体を接続するステップの様子を示す説明図である。
図7】本開示の実施形態に係るサンプリング方法における支持柱を降下させるステップの様子を示す説明図である。
図8】本開示の実施形態に係る支持装置の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態に係るサンプリング方法、及び支持装置1について、図1から図7を参照して説明する。このサンプリング方法は、原子炉格納容器100内の対象部位101からサンプルを採取するための方法である。支持装置1は、このサンプリング方法に用いられる。
【0012】
(原子炉建屋内の構成)
図1に示すように、原子炉建屋内には、原子炉格納容器100と、天井クレーン2と、支持装置1と、支持柱3、及びサンプリング装置4と、が設けられている。原子炉格納容器100は、床面から凹没する容器状をなしている。原子炉格納容器100内には、減速材としての純水が充填されている。天井クレーン2は、原子炉建屋の天井に沿って水平面内で移動することが可能な楊重機器である。具体的には、天井クレーン2は、レール(不図示)によって案内される移動部21と、移動部21から下方に延びるワイヤー22と、ワイヤー22の先端に取り付けられたホイスト23と、を有する。ワイヤー22の長さは、作業者の操作によって適宜調節することが可能である。
【0013】
原子炉格納容器100内の底面や側面には、サンプリング対象となる対象部位101が予め設定されている。支持装置1は、この対象部位101に向けてサンプリング装置4を降下させるために設けられている。サンプリング装置4として具体的には、放電加工装置が好適に用いられる。サンプリング装置4は、支持柱3の先端に取り付けられている。支持柱3は、上下方向に延びるとともに、上下方向に互いに接続された複数の分割体31を有する。
【0014】
図2に示すように、分割体31は、軸線Xに沿って延びる円柱状の本体部51と、本体部51の上下方向両端部にそれぞれ設けられたフランジ部52と、を有する。フランジ部52は、本体部51の両端で外周側に張り出す円盤状をなしている。分割体31の上側に位置するフランジ部52(上部フランジ部52a)には、雌ネジ孔53が形成されている。分割体31の下側に位置するフランジ部52(下部フランジ部52b)には、ネジの切られていない孔54が形成されている。これら雌ネジ孔53、及び孔54を同軸上で一致させた上でボルト55を挿通することによって、一対の分割体31が上下方向に連結される。ボルト55の雄ネジは、雌ネジ孔53のネジ溝に螺合する。つまり、これら分割体31同士の接続はボルト55のみによって行われ、ナットは必要とされない。これら分割体31を、対象部位101の高さ方向における位置に合わせて必要な数だけ接続することで、1つの支持柱3が完成する。
【0015】
(支持装置1の構成)
図1に示すように、支持装置1は、架台11と、支持部12と、位置調整部13と、を有する。架台11は、原子炉格納容器100の端縁から内周側に向かって水平方向に張り出している。架台11として具体的には、作業台車や、燃料棒交換機が好適に用いられる。つまり、従前から用意されていた既存設備に支持装置1としての機能を持たせることが可能とされている。架台11は、原子炉格納容器100に上部開口をまたぐようにしてかけ渡されている。また、架台11は、当該上部開口の面内で自在に移動することが可能である。架台11は、脚部61と、脚部61から水平方向に突出するステージ62と、を有する。支持部12は、このステージ62に取り付けられている。
【0016】
図3に示すように、支持部12は、矩形をなす4つのフレーム12aと、このフレーム12aの内側に配置された一対の分割リングを有する。
【0017】
フレーム12aは、ステージ62の上面に固定されている。棒状のフレーム12aが互いに直交する方向に組み合わされることで、4つのフレーム12aが平面視で矩形状をなしている。それそれの分割リング12bには、内周側に円弧状の切り欠きが形成されている。一対の分割リング12bを組み合わせることで、これら分割リング12bの中央部には円形の開口部71が形成される。分割リング12b同士はヒンジ72によって、水平面内で互いに回動可能に接続されている。平面視した場合の分割リング12bの面積比は1:1である。即ち、分割リング12bに形成された切り欠きは半円状をなしている。開口部71の開口径は、上述した分割体31の本体部51の外径よりもわずかに大きく、フランジ部52の外径よりも小さく設定されている。これにより、フランジ部52が開口部71の端縁に引っ掛かるようにして支持されることが可能とされている。
【0018】
位置調整部13は、分割リング12bの下側に設けられたコマ81と、これら分割リング12bを相対移動可能に支持するボールネジ機構82と、を有する。分割リング12bのうち、一方はコマ81の上面に固定され、他方はヒンジ72を介してコマ81と干渉することなく回動可能に支持されている。ボールネジ機構82は、フレーム12aの内側で、互いに直交する第一方向D1、及び第二方向D2にそれぞれ2つずつ設けられている。ボールネジ機構82は、ボールネジ本体91と、ボールネジ本体91の両端部に設けられたスライド部92と、を有する。ボールネジ本体91は、上記したコマ81に挿通されている。つまり、ボールネジ本体91を自身の中心軸回りに回転させることで、コマ81及び分割リング12bが当該ボールネジ本体91に沿って移動することができる。スライド部92は、フレーム12aの内面に沿って摺動可能に支持されている。例えば、第一方向D1にコマ81を移動させる際には、第二方向D2に延びるボールネジ機構82のスライド部92がフレーム12aに対して第一方向D1に摺動する。したがって、第一方向D1、及び第二方向D2におけるそれぞれのコマ81の移動が互いに干渉することがない。
【0019】
(サンプリング方法)
次いで、上述した装置を用いたサンプリング方法について、図4から図7を参照して説明する。図4に示すように、このサンプリング方法は、分割体31を支持するステップS1と、分割体31の位置を調節するステップS2と、他の分割体31を接続するステップS3と、接続された分割体31を降下させるステップS4と、サンプルを採取するステップS5と、を含む。
【0020】
ステップS1では、上述の支持装置1の支持部12に少なくとも1つの分割体31を載置する(図5参照)。具体的には、分割リング12bの一方を解放して、分割体31の上側のフランジ部52を他方の分割リング12bの端縁に引っ掛けるようにして載置する。その後、一方の分割リング12bを回動させて、フランジ部52全体を一対の分割リングによって挟持する。なお、このとき、最も下方の分割体31の先端にはサンプリング装置4が予め取り付けられていることが望ましい。分割体31の移動や載置には、上述した天井クレーン2を用いてもよいし、人力によってもよい。
【0021】
ステップS2では、上記ステップS1で支持部12によって支持された状態の分割体31の位置調整を行う。即ち、原子炉格納容器100内の対象部位101に応じて、分割体31を降下させる際のおおまかな位置を合わせる。この作業には、位置調整部13としてのボールネジ機構82が用いられる。ボールネジ機構82を駆動することで、分割体31の先端が対象部位101に向かうように、目視又はカメラ画像等による遠隔監視に基づいて当該分割体31の位置が調整される。
【0022】
その後、ステップS3では、支持部12に支持された状態の分割体31の上端に、他の分割体31の下端を接続する(図6)。具体的には、図2に基づいて上述したように、下側の分割体31の上側フランジ部52に、上側の分割体31の下側フランジ部52を当接させ、ボルト55によって両者を締結固定する。この時、他の分割体31を移動、吊架させる際には、天井クレーン2が好適に用いられる。天井クレーン2で当該分割体31を吊架した状態で、上記したフランジ部52同士の接続作業が行われる。
【0023】
次いで、ステップS4では、互いに接続された複数の分割体31を、対象部位101に向けて降下させる(図7)。この作業も天井クレーン2によって行われることが望ましい。以上のステップS2からステップS4を、支持柱3が完成するまで順次繰り返す。つまり、支持柱3の先端のサンプリング装置4が対象部位101に到達可能な長さとなるまで、分割体31の接続、位置調整、及び降下が繰り返される。最後に、ステップS5では、サンプリング装置4を稼働させることによって、対象部位101のサンプルが採取される。詳しくは図示しないが、サンプリング装置4は、放電加工を施すことによって、原子炉格納容器100の壁面からサンプルを切り出す。その後、支持柱3を上昇させてサンプルを回収する。以上により、本実施形態に係るサンプリング方法の全工程が完了する。
【0024】
(作用効果)
ここで、原子炉格納容器100のサンプリングを行うに当たって、従来は、作業直前に所定の長さになるように支持柱3の組立を行うことが一般的であった。組立の完了した支持柱3は、天井クレーン2で吊架された後、例えば作業台車によって原子炉格納容器100上で保持される。しかしながら、上記のような長尺の支持柱3を予め組み立ててサンプリング作業を行うことが難しい場合もある。例えば沸騰水型軽水炉(BWR:Boiling Water Reactor)では、原子炉の構造上の理由から、一般的に建屋の天井高さが低く、長尺の支持柱3を立設することが難しい。このため、より汎用性の高いサンプリング方法、及び支持装置1に対する要請が高まっていた。そこで、本実施形態では、上述の方法、及び構成を採用している。
【0025】
上記方法によれば、複数の分割体31のうちの一部を対象部位101の上方で支持した状態で、他の分割体31を接続し、さらに対象部位101に応じて位置決めをする各ステップが繰り返される。これにより、長尺の支持柱3を建屋内で取り扱う必要がなくなるため、当該建屋の容積や天井高さ等に制約を受けることなく、サンプリング作業を行うことが可能となる。また、分割体31の接続作業ごとに位置決めを都度行うため、支持柱3が完成した後に大掛かりな位置決め作業を行う必要がなくなる。特に、長尺の支持柱3を事後的に位置決めする場合には、動揺による先端部の位置ずれ等が生じやすい。しかしながら、上記方法によれば、比較的に短い分割体31を都度位置決めしながら接続していくため、このような位置ずれが生じる可能性を大幅に低減することができる。これにより、迅速かつ円滑にサンプリング作業を開始することができる。したがって、サンプリング作業に要するコスト、期間を圧縮することが可能となる。
【0026】
また、上記方法によれば、分割体31の接続、位置決め、及び降下の各ステップを所定回数繰り返すことのみによって、早期にサンプリング装置4を対象部位101に到達させることができる。これにより、サンプリング作業の迅速化を実現することができる。なお、対象部位101に対する高さ方向の位置調整には天井クレーン2を用いることも可能である。これにより、水平位置、及び高さ位置を精緻に調節した状態で安定的にサンプリング作業を進めることができる。
【0027】
さらに、上記方法によれば、放電加工によってサンプルを採取することから、対象部位101の材質を問わずにサンプリング作業を行うことができる。また、放電加工では、機械加工に比べて切削反力が小さいことから、作業中にサンプリング装置4の位置がずれてしまう可能性も低減することができる。これにより、より効率的かつ安定的にサンプリング作業を行うことが可能となる。加えて、サンプリングによって生じる切粉等の二次廃棄物も少量で済むことから、作業環境のさらなる保全にもつなげることができる。これにより、後続の作業の負担やコストを低減することが可能となる。
【0028】
また、上記構成によれば、支持装置1に位置調整部13が設けられていることによって、分割体31を支持した状態で対象部位101に応じた位置決めを精緻に行うことができる。これにより、支持柱3の完成後の大掛かりな位置決めが不要となるため、サンプリング作業をより効率的かつ円滑に進めることが可能となる。特に、長尺の支持柱3を事後的に位置決めする場合には、動揺による先端部の位置ずれ等が生じやすい。しかしながら、上記構成によれば、比較的に短い分割体31を都度位置決めできるため、このような位置ずれが生じる可能性を大幅に低減することができる。これにより、迅速かつ円滑にサンプリング作業を開始することができる。したがって、サンプリング作業に要するコスト、期間をさらに圧縮することが可能となる。
【0029】
加えて、上記構成によれば、分割体31のフランジ部52を分割リング12bの端縁に引っ掛けることで、当該分割体31の重量を安定的に支持することができる。また、一対の分割リング12bを解放することで、フランジ部52と当該分割リング12bとの係合が解除されるため、分割体31を円滑に対象部位101に向かって降下させることもできる。したがって、サンプリング作業を効率的かつ迅速に進めることが可能となる。
【0030】
さらに、上記構成によれば、ボールネジ機構82を用いて支持部12を水平面内で移動させることができる。これにより、クレーン等の楊重機器を用いた場合に比べて、より精緻かつ正確に分割体31と対象部位101との位置を合わせることができる。したがって、サンプリング作業の効率化と高精度化とを両立することができる。また、ボールネジ本体91を単に回転させることのみによって微細な位置調整が可能であることから、遠隔からの作業も容易に実現できる。これにより、作業の安全性をさらに向上させることが可能となる。さらには、ボールネジ本体91の回転数に基づいて、定量的な位置決めが可能であることから、サンプリング作業をさらなる高精度化を実現することもできる。
【0031】
<その他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0032】
なお、上記の方法、及び構成を適用する対象は、BWRに限定されず、作業環境や建屋内部のレイアウトの制約等によっては、PWRに上記方法や構成を適用してもよい。上述したものと同様の作用効果を得ることが可能である。
【0033】
また、上記実施形態では、1つずつの分割体31を順次支持して位置決めし、接続していく方法について説明した。しかしながら、予め作業フロアで2つや3つ程度接続された複数の分割体31を支持装置1に順次載置して、位置決めと接続を繰り返していく方法を採ることも可能である。これにより、作業時間のさらなる短縮化を図ることができる。
【0034】
さらに、上記実施形態では、一対の分割リング12bを平面視した場合の面積比が1:1である例について説明した。しかしながら、変形例として図8に示すように、これら分割リングの面積比を1:3や1:4等、一方より他方の面積を大きく設定することも可能である。特に、架台11側に位置する分割リング12bを他方の可動する分割リング12bよりも大きくすることが望ましい。この構成によれば、一方の分割リング12bの面積が他方の面積よりも大きいことから、当該一方の分割リング12bによってフランジ部52の荷重をより安定的に負担することができる。これにより、作業中に支持部12から分割体31が脱落してしまう可能性を大幅に低減することができる。
【0035】
また、上記実施形態では、ナットを用いずにボルト55のみによって分割体31同士を接続する構成について説明した。しかしながら、ボルト55に加えてナットを用いてこれら分割体31同士を接続する構成を採ることも可能である。ただし、部品点数が削減できる点、及び上方からのボルト55締結のみで接続作業が完了できる点で、ナットを用いない上記実施形態の構成の方が有利である。
【0036】
加えて、サンプリング装置4としては、放電加工装置以外の装置を用いることも可能である。対象部位101の特性に応じて適切なサンプリング装置4を選択することが望ましい。また、サンプリング装置4に併設してカメラ等の撮像機器を設けてもよい。これにより、遠隔からも対象部位101を視認しながらサンプリング作業を進めることが可能となる。
【0037】
さらに、上記実施形態では、支持柱3を対象部位101に向けて降下させる際に分割体31を接続していく方法について説明した。しかし、サンプリング作業が完了した後に支持柱3を上昇させる際に、当該支持柱3を分割体31ごとに分割しながらサンプルを回収することも可能である。これにより、建屋の天井高さ等の制約を受けることなく、サンプリング作業を完了することができる。
【0038】
<付記>
各実施形態に記載のサンプリング方法、及び支持装置1は、例えば以下のように把握される。
【0039】
(1)第1の態様に係るサンプリング方法は、原子炉格納容器100内の対象部位101のサンプルを、支持柱3、及び該支持柱3の先端に設けられたサンプリング装置4を用いて採取するサンプリング方法であって、前記支持柱3は、単位長さごとに分割された複数の分割体31を有し、前記サンプリング方法は、前記対象部位101の上方で少なくとも1つの前記分割体31を支持するステップと、前記分割体31の水平面内での位置を前記対象部位101に応じて調節するステップと、前記支持されている前記分割体31の上端に、他の前記分割体31の下端を接続するステップと、前記接続された複数の分割体31を前記対象部位101に向けて降下させるステップと、前記対象部位101で前記サンプリング装置4によって前記サンプルを採取するステップと、を含む。
【0040】
上記方法によれば、複数の分割体31のうちの一部を対象部位101の上方で支持した状態で、他の分割体31を接続し、さらに対象部位101に応じて位置決めをする各ステップが繰り返される。これにより、長尺の支持柱3を建屋内で取り扱う必要がなくなるため、当該建屋の容積や天井高さ等に制約を受けることなく、サンプリング作業を行うことが可能となる。また、分割体31の接続作業ごとに位置決めを都度行うため、支持柱3が完成した後に大掛かりな位置決め作業を行う必要がなくなる。これにより、迅速かつ円滑にサンプリング作業を開始することができる。
【0041】
(2)第2の態様に係るサンプリング方法は、(1)のサンプリング方法であって、前記分割体31を支持するステップ、前記他の分割体31の下端を接続するステップ、及び前記対象部位101に向けて降下させるステップを、前記支持柱3が前記対象部位101に達する高さとなるまで順次繰り返す。
【0042】
上記方法によれば、分割体31の接続、位置決め、及び降下の各ステップを所定回数繰り返すことのみによって、早期にサンプリング装置4を対象部位101に到達させることができる。これにより、サンプリング作業の迅速化を実現することができる。
【0043】
(3)第3の態様に係るサンプリング方法は、(1)又は(2)のサンプリング方法であって、前記サンプルを採取するステップでは、放電加工によって前記対象部位101の前記サンプルを採取する。
【0044】
上記方法によれば、放電加工によってサンプルが採取できることから、対象部位101の材質を問わずにサンプリング作業を行うことができる。また、放電加工では、機械加工に比べて切削反力が小さいことから、作業中にサンプリング装置4の位置がずれてしまう可能性も低減することができる。これにより、より効率的かつ安定的にサンプリング作業を行うことが可能となる。
【0045】
(4)第4の態様に係る支持装置1は、(1)から(3)のいずれか一態様に係るサンプリング方法に用いられる支持装置1であって、前記原子炉格納容器100の周囲で固定可能な架台11と、該架台11に設けられ、前記分割体31を、上下方向に延びる姿勢で、かつ前記対象部位101の上方で支持可能な支持部12と、前記架台11に設けられ、前記支持部12の前記架台11に対する水平面内での相対位置を、前記支持部12が前記分割体31を支持した状態で調節可能な位置調整部13と、を備える。
【0046】
上記構成によれば、位置調整部13が設けられていることによって、分割体31を支持した状態で対象部位101に応じた位置決めを精緻に行うことができる。これにより、支持柱3の完成後の大掛かりな位置決めが不要となるため、サンプリング作業をより効率的かつ円滑に進めることが可能となる。
【0047】
(5)第5の態様に係る支持装置1は、(4)の支持装置1であって、前記分割体31は、上下方向に延びる本体部51と、該本体部51の両端から外周側に張り出す一対のフランジ部52と、を有し、前記支持部12は、前記フランジ部52に対して下方から当接するとともに、前記本体部51が挿通される開口部71が形成され、互いに組み合わせられることで該開口部71を形成する一対の分割リング12bを有する。
【0048】
上記構成によれば、分割体31のフランジ部52を分割リング12bの端縁に引っ掛けることで、当該分割体31の重量を安定的に支持することができる。また、一対の分割リング12bを解放することで、フランジ部52と当該分割リング12bとの係合が解除されるため、分割体31を円滑に対象部位101に向かって降下させることもできる。
【0049】
(6)第6の態様に係る支持装置1は、(5)の支持装置1であって、前記一対の分割リングは、上下方向から見て、前記架台11側に位置する一方の前記分割リング12bの面積が、他方の前記分割リング12bの面積よりも大きい。
【0050】
上記構成によれば、一方の分割リング12bの面積が他方の面積よりも大きいことから、当該一方の分割リング12bによってフランジ部52の荷重をより安定的に負担することができる。これにより、作業中に支持部12から分割体31が脱落してしまう可能性を大幅に低減することができる。
【0051】
(7)第7の態様に係る支持装置1は、(4)から(6)のいずれか一態様に係る支持装置1であって、前記位置調整部13は、水平方向に直交する2方向に前記支持部12を移動させることが可能な一対のボールネジ機構82である。
【0052】
上記構成によれば、ボールネジ機構82を用いて支持部12を水平面内で移動させることができる。これにより、クレーン等の楊重機器を用いた場合に比べて、より精緻かつ正確に分割体31と対象部位101との位置を合わせることができる。したがって、サンプリング作業の効率化と高精度化とを両立することができる。
【符号の説明】
【0053】
1…支持装置 2…天井クレーン 3…支持柱 4…サンプリング装置 11…架台 12…支持部 12a…フレーム 12b…分割リング 13…位置調整部 21…移動部 22…ワイヤー 23…ホイスト 31…分割体 51…本体部 52…フランジ部 52a…上部フランジ部 52b…下部フランジ部 53…雌ネジ孔 54…孔 55…ボルト 61…脚部 62…ステージ 71…開口部 72…ヒンジ 81…コマ 82…ボールネジ機構 91…ボールネジ本体 92…スライド部 100…原子炉格納容器 101…対象部位 D1…第一方向 D2…第二方向 X…軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8