(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116710
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】中継局、情報処理装置、及び、方法
(51)【国際特許分類】
H04B 7/08 20060101AFI20240821BHJP
H04B 7/204 20060101ALI20240821BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20240821BHJP
H04W 16/26 20090101ALI20240821BHJP
【FI】
H04B7/08 800
H04B7/204
H04W16/28
H04W16/26
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022482
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 賢一
【テーマコード(参考)】
5K067
5K072
【Fターム(参考)】
5K067EE02
5K067EE06
5K067EE10
5K067KK02
5K067KK03
5K072AA29
5K072CC13
5K072CC15
5K072DD16
5K072DD17
(57)【要約】
【課題】端末局の移動にかかわらず、安定した非再生中継を提供する。
【解決手段】中継局は、端末局との通信に用いられる複数の第1のアンテナと、基地局との通信に用いられる1又は複数の第2のアンテナと、非再生中継を行う無線機と、を含む。中継局は、無線フレームの第1のスロットにおいて計測された自己干渉の少なくとも一部を含む端末局からの受信信号のSINRが最大となる第1のビームパタンを送信する。情報処理装置は、第1のビームパタンに基づいてビームパタンの集合を取得し、中継局へ送信する。中継局は、第2のスロットにおいて、ビームパタンの集合に含まれる各ビームパタンについて、複数のシンボルにおいて計測された端末局からの受信信号のSINRに基づいて、第2のビームパタンを複数のビームパタンから選択し、第1のアンテナで使用するビームパタンを第2のビームパタンに更新する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能な端末局との通信に用いられ、アンテナ利得が高められる方向であるビーム方向が所定のビームパタンに従って制御される複数の第1のアンテナと、
基地局との通信に用いられる1又は複数の第2のアンテナと、
前記基地局と前記端末局との間で、信号を復調及び復号せずに中継する非再生中継を行う無線機と、
無線フレームの第1のスロットにおいて計測された受信信号であって、前記非再生中継によって前記複数の第1のアンテナで送受信される信号と前記1又は複数の第2のアンテナで送受信される信号との間で発生する自己干渉の少なくとも一部を含む前記端末局からの受信信号のSINR(Signal to Interference and Noise power Ratio)が最大となる第1のビームパタンに基づいて取得されたビームパタンの集合に関する情報を取得することと、
前記第1のスロットより後の第2のスロットにおいて、前記ビームパタンの集合に含まれる複数のビームパタンそれぞれについて、1又は連続する複数のシンボルにおいて計測された前記自己干渉の少なくとも一部を含む前記端末局からの受信信号のSINRに基づいて、第2のビームパタンを前記複数のビームパタンから選択することと、
前記1又は連続する複数のシンボルの次のシンボルにおいて、前記複数の第1のアンテナで使用するビームパタンを前記第2のビームパタンに更新することと、
を実行する制御部と、
を備える中継局。
【請求項2】
前記ビームパタンの集合に関する情報は、前記第1のビームパタンに基づいて取得された第3のビームパタンに関する情報と、前記第3のビームパタンのビーム方向を基準として第1の角度によって定義されるビーム方向の第1の範囲内のビーム方向である前記複数のビームパタンに関する情報と、を含む、
請求項1に記載の中継局。
【請求項3】
前記複数のビームパタンは、それぞれのビーム方向が第2の角度で等間隔となるように配置されており、
前記複数のビームパタンに関する情報は、少なくとも、前記第1の角度と、前記第2の角度と、を含む、
請求項2に記載の中継局。
【請求項4】
前記第1の範囲は、前記第3のビームパタンのビーム方向を中心とした正及び負の方向に前記第1の角度の幅を有し、
前記第3のビームパタンは、前記第1のビームパタンに設定されており、
前記第1の角度及び前記第2の角度は、それぞれ、予め設定された所定値に設定されている、
請求項3に記載の中継局。
【請求項5】
前記制御部は、所定のタイミングで、前記自己干渉の少なくとも一部を含む前記端末局からの受信信号のSINRが最大となる前記第1のビームパタンを取得し、
前記第3のビームパタンは、前記第1のスロットにおいて取得された第1のビームパタンに設定されており、
前記第1の角度は、第1のスロットの1回前に取得された第3のスロットにおける第1のビームパタンから前記第1のスロットにおける第1のビームパタンへのビーム方向の第1の変化から推定される、前記第1のスロットの次に取得される予定の第4のスロットにおいてSINRが最大であるビームパタンの、前記第1のスロットにおける第1のビームパタンからのビーム方向の角度の第1の変化量に設定されており、
前記第2の角度は、前記第1の変化から推定される、前記第1のスロットにおける第1のビームパタンと前記第4のスロットにおいてSINRが最大であるビームパタンとの取得タイミング間の1シンボル当たりのビーム方向の角度の第2の変化量に設定されている、
請求項3に記載の中継局。
【請求項6】
前記制御部は、前記ビームパタンの集合に関する情報を、上流側の第1の装置から受信し、
前記第3のビームパタンは、前記第1の変化から推定される、前記第1のスロットから前記ビームパタンの集合に関する情報が前記中継局において使用開始される前記第2のスロットまでの時間差に応じた、前記第1のスロットにおける第1のビームパタンから前記第2のスロットにおいてSINRが最大であると推定されるビームパタンへのビーム方向の角度の第3の変化量の分、ビーム方向を前記第1のスロットにおいて取得された第1のビームパタンから変化させた、ビームパタンに設定されている、
請求項5に記載の中継局。
【請求項7】
前記制御部は、前記ビームパタンの集合に関する情報を、上流側の第1の装置から受信する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の中継局。
【請求項8】
前記制御部は、前記第2のスロットにおいて、現在のシンボルを含み、第1のシンボル数をウィンドウサイズとする移動平均ウィンドウに含まれる各シンボルの、SINRが最大となるビームパタンのビーム方向の移動平均値に最も近いビーム方向が得られるビームパタンを前記第2のビームパタンとして選択する、
請求項1に記載の中継局。
【請求項9】
(中継局のビームパタン更新方法:スイッチアンドステイ)
前記制御部は、前記第2のスロットにおいて、前記複数の第1のアンテナで使用中のビームパタンのビーム方向に対して、第2のシンボル数連続してSINRが最大のビームパタンのビーム方向が正又は負の方向に変化した場合に、前記使用中のビームパタンのビーム方向から所定の角度だけ正又は負の方向にビーム方向が変化したビームパタンを前記第2のビームパタンとして選択する、
請求項1に記載の中継局。
【請求項10】
前記制御部は、前記第1のシンボル数及び前記第2のシンボル数を、前記端末局の第1の移動速度に対する使用周波数におけるコヒーレント時間以下の最大シンボル数とする、請求項8又は9に記載の中継局。
【請求項11】
前記制御部は、前記端末局の第1の移動速度を、前記第2のスロットの直前の上り回線スロットにおける受信信号のサイクリックプレフィックスから算出する、
請求項10に記載の中継局。
【請求項12】
前記制御部は、前記端末局の第1の移動速度を、コアネットワークから取得する、
請求項10に記載の中継局。
【請求項13】
前記制御部は、
前記第2のスロットの直前の上り回線スロットに含まれる複数のシンボルそれぞれについての、前記直前の上り回線スロットにおけるシンボル番号と最大SINRとなるビームパタンのビーム方向とに基づいて、1つのスロットにおける1つのシンボルのシンボル番号を説明変数、前記1つのシンボルにおける最大SINRを与えるビームパタンのビーム
方向を目的関数とする所定の回帰モデル式における説明変数の1又は複数の係数を求め、
前記第2のスロットに含まれる複数のシンボルそれぞれについて、前記1又は複数の係数が適用された前記所定の回帰モデル式の説明変数に1つのシンボルのシンボル番号を入力した場合の目的変数の値の前記1つのシンボルにおける最大SINRを与えるビームパタンのビーム方向からの偏差と、目標偏差と、に基づいて、前記第1のシンボル数及び前記第2のシンボル数を決定する、
請求項8又は9に記載の中継局。
【請求項14】
移動可能な端末局との通信に用いられ、アンテナ利得が高められる方向であるビーム方向が所定のビームパタンに従って制御される複数の第1のアンテナと、基地局との通信に用いられる1又は複数の第2のアンテナと、前記基地局と前記端末局との間で、信号を復調及び復号せずに中継する非再生中継を行う無線機と、を含む中継局から、無線フレームの第1のスロットにおいて計測された受信信号であって、前記非再生中継によって前記複数の第1のアンテナで送受信される信号と前記1又は複数の第2のアンテナで送受信される信号との間で発生する自己干渉の少なくとも一部を含む前記端末局からの受信信号のSINR(Signal to Interference and Noise power Ratio)が最大となる第1のビームパタンを受信することと、
前記第1のビームパタンに基づいてビームパタンの集合に関する情報を取得することと、
前記中継局へ、前記ビームパタンの集合に関する情報を送信することと、
を実行する制御部、
を備える情報処理装置であって、
前記中継局は、
前記第1のスロットより後の第2のスロットにおいて、前記ビームパタンの集合に含まれる複数のビームパタンそれぞれについて、1又は連続する複数のシンボルにおいて計測された前記自己干渉の少なくとも一部を含む前記端末局からの受信信号のSINRに基づいて、第2のビームパタンを前記複数のビームパタンから選択し、
前記1又は連続する複数のシンボルの次のシンボルにおいて、前記複数の第1のアンテナで使用するビームパタンを前記第2のビームパタンに更新する、
情報処理装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記ビームパタンの集合に関する情報を、前記第1のビームパタンに基づいて取得した第3のビームパタンに関する情報と、前記第3のビームパタンのビーム方向を基準として第1の角度によって定義されるビーム方向の第1の範囲内のビーム方向である前記複数のビームパタンに関する情報と、を含めて取得する、
請求項14に記載の情報処理装置。
【請求項16】
前記制御部は、
前記複数のビームパタンを、それぞれのビーム方向が第2の角度の等間隔となるように配置される複数のビームパタンに設定し、
前記複数のビームパタンに関する情報に、少なくとも、前記第1の角度と、前記第2の角度と、を含める、
請求項15に記載の情報処理装置。
【請求項17】
前記制御部は、
前記第1の範囲を、前記第3のビームパタンのビーム方向を中心とした正及び負の方向に前記第1の角度の幅を有する範囲に設定し、
前記第3のビームパタンを、前記第1のビームパタンに設定し、
前記第1の角度及び前記第2の角度を、それぞれ、予め設定された所定値に設定する、請求項16に記載の情報処理装置。
【請求項18】
前記中継局は、所定のタイミングで、前記自己干渉の少なくとも一部を含む前記端末局からの受信信号のSINRが最大となる前記第1のビームパタンを取得し、
前記制御部は、
前記第3のビームパタンを、前記第1のスロットにおいて取得された第1のビームパタンに設定し、
前記第1の角度を、第1のスロットの1回前に取得された第3のスロットにおける第1のビームパタンから前記第1のスロットにおける第1のビームパタンへのビーム方向の第1の変化から推定される、前記第1のスロットの次に取得される予定の第4のスロットにおいてSINRが最大となるビームパタンの、前記第1のスロットにおける第1のビームパタンからのビーム方向の角度の第1の変化量に設定し、
前記第2の角度を、前記第1の変化から推定される、前記第1のスロットにおける第1のビームパタンと前記第4のスロットにおいてSINRが最大であるビームパタンとの取得タイミング間の1シンボル当たりのビーム方向の角度の第2の変化量に設定する、
請求項16に記載の情報処理装置。
【請求項19】
前記制御部は、前記第3のビームパタンを、前記第1の変化から推定される、前記第1のスロットから前記ビームパタンの集合に関する情報が前記中継局において適用されるまでの前記第2のスロットまでの時間差に応じた、前記第1のスロットにおける第1のビームパタンから前記第2のスロットにおいてSINRが最大となると推定されるビームパタンへのビーム方向の角度の第3の変化量の分、ビーム方向を前記第1のスロットにおいて取得された第1のビームパタンから変化させた、ビームパタンに設定する、
請求項18に記載の情報処理装置。
【請求項20】
移動可能な端末局との通信に用いられ、アンテナ利得が高められる方向であるビーム方向が所定のビームパタンに従って制御される複数の第1のアンテナと、
基地局との通信に用いられる1又は複数の第2のアンテナと、
前記基地局と前記端末局との間で、信号を復調及び復号せずに中継する非再生中継を行う無線機と、を含む中継局が、
無線フレームの第1のスロットにおいて計測された受信信号であって、前記非再生中継によって前記複数の第1のアンテナで送受信される信号と前記1又は複数の第2のアンテナで送受信される信号との間で発生する自己干渉の少なくとも一部を含む前記端末局からの受信信号のSINR(Signal to Interference and Noise power Ratio)が最大となる第1のビームパタンを送信することと、
情報処理装置が、
前記中継局から前記第1のビームパタンを受信することと、
前記第1のビームパタンに基づいてビームパタンの集合に関する情報を取得することと、
前記中継局へ、前記ビームパタンの集合に関する情報を送信することと、
前記中継局が、
前記第1のスロットより後の第2のスロットにおいて、前記ビームパタンの集合に含まれる複数のビームパタンそれぞれについて、1又は連続する複数のシンボルにおいて計測された前記自己干渉の少なくとも一部を含む前記端末局からの受信信号のSINRに基づいて、第2のビームパタンを前記複数のビームパタンから選択することと、
前記1又は連続する複数のシンボルの次のシンボルにおいて、前記複数の第1のアンテナで使用するビームパタンを前記第2のビームパタンに更新することと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、中継局、情報処理装置、及び、方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
5th Generation Mobile Communication System(5G)等の無線通信においては、サブミリ秒以下の超低遅延通信が期待されている。一方で、通信サービス向上の観点では、セルのカバレッジエリアの拡大が望まれ、そのためには、中継局を介する中継通信が有効である。そこで、無線通信を行う端末局を中継局とする無線通信方法が提案されている。さらに、遅延の少ない中継技術として、中継局では復調及び復号は行わず、信号増幅及び簡易なフィルタリングを行う非再生中継が望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】3GPP TS 38.174 V17.0.0 (2022-03)
【非特許文献2】3GPP TS 38.106 V1.0.0 (2022-03)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数のアンテナ素子を用いて端末局に向けてアンテナ利得が高められるビームフォーミングを用いることで、通信品質を向上させることができる。複数のアンテナ素子によるビームフォーミングによって電波が集まる方向は、ビームパタンによって設定される。すなわち、ビームフォーミングでは、ビームパタンを切り替えることによって、端末局の移動に応じて端末局に対するアンテナ利得を高めることができる。
【0005】
端末局が高速に移動する場合には、中継局において当該端末局に向けたアンテナの最適なビームパタンは、スロット又はシンボル単位で変化する。そのため、中継局が端末局の高速な移動に応じてビームパタンを更新しなければ、中継する信号のSINR(Signal to Interference and Noise power Ratio)が低下してしまい、非再生中継を継続できなくなる可能性がある。なお、端末局の高速な移動には、例えば、200km/h~300km/h等の新幹線による移動等が想定される。ただし、これに限定されず、無線通信で使用する周波数帯によって、端末局の高速な移動とされる移動速度は変わる。
【0006】
本開示の態様の一つは、端末局が高速に移動する場合でも、安定した非再生中継による通信を提供可能な中継局、情報処理装置、及び、方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の態様の一つは、
移動可能な端末局との通信に用いられ、アンテナ利得が高められる方向であるビーム方向が所定のビームパタンに従って制御される複数の第1のアンテナと、
基地局との通信に用いられる1又は複数の第2のアンテナと、
前記基地局と前記端末局との間で、信号を復調及び復号せずに中継する非再生中継を行う無線機と、
無線フレームの第1のスロットにおいて計測された受信信号であって、前記非再生中継によって前記複数の第1のアンテナで送受信される信号と前記1又は複数の第2のアンテナで送受信される信号との間で発生する自己干渉の少なくとも一部を含む前記端末局からの受信信号のSINR(Signal to Interference and Noise power Ratio)が最大となる第1のビームパタンに基づいて取得されたビームパタンの集合に関する情報を取得するこ
とと、
前記第1のスロットより後の第2のスロットにおいて、前記ビームパタンの集合に含まれる複数のビームパタンそれぞれについて、1又は連続する複数のシンボルにおいて計測された前記自己干渉の少なくとも一部を含む前記端末局からの受信信号のSINRに基づいて、第2のビームパタンを前記複数のビームパタンから選択することと、
前記1又は連続する複数のシンボルの次のシンボルにおいて、前記複数の第1のアンテナで使用するビームパタンを前記第2のビームパタンに更新することと、
を実行する制御部と、
を備える中継局である。
【0008】
本開示の他の態様の一つは、
移動可能な端末局との通信に用いられ、アンテナ利得が高められる方向であるビーム方向が所定のビームパタンに従って制御される複数の第1のアンテナと、基地局との通信に用いられる1又は複数の第2のアンテナと、前記基地局と前記端末局との間で、信号を復調及び復号せずに中継する非再生中継を行う無線機と、を含む中継局から、無線フレームの第1のスロットにおいて計測された受信信号であって、前記非再生中継によって前記複数の第1のアンテナで送受信される信号と前記1又は複数の第2のアンテナで送受信される信号との間で発生する自己干渉の少なくとも一部を含む前記端末局からの受信信号のSINR(Signal to Interference and Noise power Ratio)が最大となる第1のビームパタンを受信することと、
前記第1のビームパタンに基づいてビームパタンの集合に関する情報を取得することと、前記中継局へ、前記ビームパタンの集合に関する情報を送信することと、
を実行する制御部、
を備える情報処理装置であって、
前記中継局は、
前記第1のスロットより後の第2のスロットにおいて、前記ビームパタンの集合に含まれる複数のビームパタンそれぞれについて、1又は連続する複数のシンボルにおいて計測された前記自己干渉の少なくとも一部を含む前記端末局からの受信信号のSINRに基づいて、第2のビームパタンを前記複数のビームパタンから選択し、
前記1又は連続する複数のシンボルの次のシンボルにおいて、前記複数の第1のアンテナで使用するビームパタンを前記第2のビームパタンに更新する、
情報処理装置である。
【0009】
本開示の他の態様の一つは、
移動可能な端末局との通信に用いられ、アンテナ利得が高められる方向であるビーム方向が所定のビームパタンに従って制御される複数の第1のアンテナと、
基地局との通信に用いられる1又は複数の第2のアンテナと、
前記基地局と前記端末局との間で、信号を復調及び復号せずに中継する非再生中継を行う無線機と、を含む中継局が、
無線フレームの第1のスロットにおいて計測された受信信号であって、前記非再生中継によって前記複数の第1のアンテナで送受信される信号と前記1又は複数の第2のアンテナで送受信される信号との間で発生する自己干渉の少なくとも一部を含む前記端末局からの受信信号のSINR(Signal to Interference and Noise power Ratio)が最大となる第1のビームパタンを送信することと、
情報処理装置が、
前記中継局から前記第1のビームパタンを受信することと、
前記第1のビームパタンに基づいてビームパタンの集合に関する情報を取得することと、
前記中継局へ、前記ビームパタンの集合に関する情報を送信することと、
前記中継局が、
前記第1のスロットより後の第2のスロットにおいて、前記ビームパタンの集合に含まれる複数のビームパタンそれぞれについて、1又は連続する複数のシンボルにおいて計測された前記自己干渉の少なくとも一部を含む前記端末局からの受信信号のSINRに基づいて、第2のビームパタンを前記複数のビームパタンから選択することと、
前記1又は連続する複数のシンボルの次のシンボルにおいて、前記複数の第1のアンテナで使用するビームパタンを前記第2のビームパタンに更新することと、
を含む方法である。
【0010】
本開示の態様の一つによれば、端末局が高速に移動する場合でも、安定した非再生中継による通信を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る通信システムのシステム構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、通信システムのシステム構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る通信システムにおける中継局のビームパタン更新に係る処理のシーケンスの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、中継局のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、制御装置のハードウェア構成を例示する図である。
【
図6】
図6は、中継局におけるビームパタン選定処理のフローチャートの一例である。
【
図7】
図7は、第1実施形態における中継局へ割り当てられるビームパタン集合に含まれる複数のビームパタンの関係の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態における制御装置1のビームパタン集合決定処理のフローチャートの一例である。
【
図9】
図9は、第1実施形態における中継局のビームパタン更新処理のフローチャートの一例である。
【
図10】
図10は、(1)移動平均ウィンドウを用いる場合のビームパタン決定処理のフローチャートである。
【
図11】
図11は、(2)スイッチアンドステイを用いる場合のビームパタン決定処理のフローチャートである。
【
図12】
図12は、第1実施形態に係る通信システムにおけるビームパタンの更新処理のシミュレーション結果の一例である。
【
図13】
図13は、第2実施形態に係る通信システムにおける中継局のビームパタン更新に係る処理のシーケンスの一例を示す図である。
【
図14】
図14は、第2実施形態における中継局のビームパタン更新処理のフローチャートの一例である。
【
図15】
図15は、第2実施形態におけるビームパタン集合の更新処理において用いられる複数のビームパタンの関係の一例を示す図である。
【
図16】
図16は、第2実施形態におけるビームパタン集合の更新処理におけるタイムチャートの一例を示す図である。
【
図17】
図17は、第2実施形態における制御装置のビームパタン集合更新処理のフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の態様の一つでは、中継局は、端末局からの受信信号のSINRが最大となることが想定される複数のビームパタンが割り当てられ、当該複数のビームパタンの中から使用するビームパタンを1又は複数のシンボルごとに更新する。これによって、端末が高速に移動する場合でも、非再生中継による安定した通信を提供することができる。
【0013】
より具体的には、本開示の態様の一つは、中継局である。当該中継局は、移動可能な端末局との通信に用いられる複数の第1のアンテナと、基地局との通信に用いられる1又は複数の第2のアンテナと、基地局と端末局との間で、信号を復調及び復号せずに中継する非再生中継を行う無線機と、制御部と、を備える。複数の第1のアンテナは、アンテナ利得が高められる方向であるビーム方向が所定のビームパタンに従って制御される。
【0014】
中継局は、例えば、基地局、小型基地局、移動基地局、スマートフォン、及び、車載器等である。制御部は、例えば、コンピュータ、CPU(Central Processing Unit)、D
SP(Digital Signal Processor)及びGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサ、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の演算回路である。
【0015】
中継局が備える複数の第1のアンテナ及び1又は複数の第2のアンテナは、例えば、アダプティブアレーアンテナである。アダプティブアレーアンテナは、複数のアンテナ素子を配列したアレーアンテナである。アダプティブアレーアンテナは、各アンテナ素子の重み付けを伝搬環境に応じてアダプティブ制御して、電気的に指向性を変えることができる。ビームパタンとは、アンテナの主軸に対する受信感度の角度依存性を表す。アンテナの主軸は、ビームフォーミングにおいては複数のアンテナ素子のアンテナ利得が高められる方向のことである。すなわち、ビームパタンは、アンテナ利得が高められる方向によって変わる。以下、複数の第1のアンテナからのアンテナ利得が高められる方向ことを、ビーム方向、と称する。
【0016】
制御部は、無線フレームの第1のスロットにおいて計測された受信信号であって、自己干渉の少なくとも一部を含む端末局からの受信信号のSINRが最大となる第1のビームパタンに基づいて取得されるビームパタンの集合に関する情報を取得する。自己干渉による電力は、非再生中継によって複数の第1のアンテナで送受信される信号と1又は複数の第2のアンテナで送受信される信号との間で発生する。制御部は、第2のスロットにおいて、ビームパタンの集合に含まれる複数のビームパタンそれぞれについて、1又は連続する複数のシンボルにおいて計測された自己干渉の少なくとも一部を含む端末局からの受信信号のSINRに基づいて、第2のビームパタンを複数のビームパタンから選択する。また、制御部は、1又は連続する複数のシンボルの次のシンボルにおいて、複数の第1のアンテナで使用するビームパタンを第2のビームパタンに更新する。
【0017】
無線フレームは、10ミリ秒の時間長を有する。1つの無線フレームには10個のスロットが含まれる。スロットは、変調及び復調の基本伝送単位である。各スロットには、上り回線と下り回線のいずれかが割り当てられる。上り回線が割り当てられたスロットの期間には、上りリンク方向の通信が行われる。下り回線が割り当てられたスロットの期間には、下りリンク方向の通信が行われる。第1のスロット及び第2スロットは、例えば、上り回線のスロットである。1つのスロットには、所定数のシンボルが含まれる。シンボルは、変調信号において、位相と振幅との1つのセットの状態が継続する期間である。すなわち、スロットの切り替えのタイミングで、アンテナで使用するビームパタンを更新することができる。1つのスロットに含まれるシンボル数は、例えば、5Gで採用される変調方式であるOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiple Access )では、サブキャリアの間隔によって異なる。例えば、変調方式であるOFDMで、サブキャリアの間隔が15kHzである場合には、1スロットには14シンボルが含まれる。
【0018】
本開示の態様の一つでは、中継局は、ビームパタンの集合から、1又は複数のシンボルにおける各ビームパタンにおけるSINRに基づいて、次のスロットで使用されるビームパタンを決定する。また、SINRは、端末局からの受信信号に非再生中継による中継局における自己干渉の少なくとも一部が含まれていることを考慮して算出される。さらに、ビームパタンの集合は、第1のスロットにおいてSINRが最大となるビームパタンに基
づいて取得される。これによって、端末局が高速に移動する場合でも、端末局の移動に応じて、SINRが通信を継続できないほど低くならないようなビームパタンに切り替えることができ、安定した非再生中継による通信を提供することができる。
【0019】
本開示の態様の一つでは、ビームパタンの集合に関する情報は、第1のビームパタンに基づいて取得された第3のビームパタンに関する情報と、第3のビームパタンのビーム方向を基準として第1の角度によって定義されるビーム方向の第1の範囲内のビーム方向である複数のビームパタンに関する情報と、を含んでもよい。すなわち、中継局に割り当てられるビームパタンの集合は、ビーム方向がバラバラな複数のビームパタンではなく、いずれもビーム方向が第1の範囲内である複数のビームパタンによって構成される。第3のビームパタンは、第1のスロットにおいてSINRが最大となる第1のビームパタンに基づいて得られ、ビーム方向の第1の範囲は第3のビームパタンを基準として定義される。したがって、中継局に割り当てられるビームパタンの集合は、第1のスロット以降の或るスロット又はシンボルにおいて、SINRが最大になる可能性が高い複数のビームパタンを含む。当該ビームパタンの集合の中から複数の第1のアンテナで使用するビームパタンが選択されることによって、SINRが通信を継続できないほど低くならないようなビームパタンに切り替えることができる。なお、第1の角度は、第1のアンテナの方位角方向又は仰角方向の角度であってもよいし、第1のアンテナの方位角方向及び仰角方向によって形成される3次元座標空間における角度であってもよいし、第1のアンテナの方位角方向の角度及び仰角方向の角度によって表される角度であってもよい。
【0020】
本開示の態様の一つでは、ビームパタンの集合に含まれる複数のビームパタンは、それぞれのビーム方向が第2の角度で等間隔となるように配置されていてもよい。また、当該複数のビームパタンに関する情報は、少なくとも、第1の角度と、第2の角度と、を含むようにしてもよい。第2の角度も、第1の角度と同様に、第1のアンテナの方位角方向又は仰角方向の角度であってもよいし、第1のアンテナの方位角方向及び仰角方向によって形成される3次元座標空間における角度であってもよいし、第1のアンテナの方位角方向の角度及び仰角方向の角度によって表される角度であってもよい。中継局に割り当てられるビームパタンの集合が、それぞれのビーム方向が第2の角度の等間隔となるように配置された複数のビームパタンであることによって、第1の範囲内でビームパタンのビーム方向を分散させることができる。これによって、第1の範囲内でより最適なビームパタンをまんべんなく調べることができる。
【0021】
本開示の態様の一つでは、第1の範囲は、第3のビームパタンのビーム方向を中心とした正及び負の方向に第1の角度の幅を有してもよい。この場合に、第3のビームパタンは、第1のビームパタンに設定されてもよい。また、第1の角度及び第2の角度は、それぞれ、予め設定された所定値に設定されてもよい。第3のビームパタン、第1の角度、及び、第2角度がそれぞれ予め定義されている設定に従って取得される場合には、複雑な処理が行われないため、ビームパタンの集合に関する情報を生成する装置の処理負荷を軽減することができる。ビームパタンの集合に関する情報を生成する装置は、例えば、中継局、制御装置、又は、基地局である。
【0022】
本開示の態様の一つでは、制御部は、所定のタイミングで、自己干渉の少なくとも一部を含む端末局からの受信信号のSINRが最大となる第1のビームパタンを取得してもよい。所定のタイミングは、例えば、上り回線のスロットにおける所定のシンボルである。この場合に、第3のビームパタンは、第1のスロットにおいて取得された第1のビームパタンに設定されてもよい。第1の角度は、第1のスロットの1回前に取得された第3のスロットにおける第1のビームパタンから第1のスロットにおける第1のビームパタンへのビーム方向の第1の変化から推定される、第1のスロットの次に取得される予定の第4のスロットにおいてSINRが最大であるビームパタンの、第1のスロットにおける第1の
ビームパタンからのビーム方向の角度の第1の変化量に設定されてもよい。第2の角度は、当該第1の変化から推定される、第1のスロットにおける第1のビームパタンと第4のスロットにおいてSINRが最大であるビームパタンとの取得タイミング間の1シンボル当たりのビーム方向の角度の第2の変化量に設定されてもよい。
【0023】
すなわち、第1の角度及び第2の角度は、端末局の移動に応じて変化する、複数の第1のアンテナで使用されるのに最適なビームパタンの変化に基づいて取得される。例えば、端末局の移動速度が早くなるほど、第1の角度は大きくなり、第1の範囲も大きくなる。また、第1の角度(第1の変化量)は、端末局の移動方向に応じて正又は負の値をとり得るので、第1の範囲は、第4のスロットにおける端末局の移動方向を向くように設定される。したがって、第3のビームパタン、第1の角度、及び、第2の角度が端末局の移動を考慮して設定されることによって、第4のスロットにおける端末局の位置をより正確にとらえた第1の範囲を取得することができる。これによって、複数の第1のアンテナのビームパタンのビーム方向をより正確に端末局の位置に向かせることができる。
【0024】
本開示の態様の一つにおいて、制御部は、ビームパタンの集合に関する情報を、上流側の第1の装置から受信してもよい。すなわち、ビームパタンの集合に関する情報を、当該第1の装置が生成してもよい。第1の装置は、例えば、制御装置、又は、基地局である。これによって、第1の装置が無線ネットワークシステム全体において、各中継局に用いられるビームパタンを集中的に制御することができる。なお、ビームパタンの集合に関する情報は中継局自身が生成してもよい。この場合には、ビームパタンの集合に関する情報の取得において通信による遅延がなくなり、より早く端末局の移動に応じた最適なビームパタンに更新することができる。なお、本開示において、最適なビームパタンとは、SINRがより大きく得られるビームパタンのことである。
【0025】
また、ビームパタンの集合に関する情報が当該第1の装置から受信される場合に、第3のビームパタンは、上記第1の変化から推定される、第1のスロットからビームパタンの集合に関する情報が中継局において使用開始される第2のスロットまでの時間差に応じた、第1のスロットにおける第1のビームパタンから第2のスロットにおいてSINRが最大であると推定されるビームパタンへのビーム方向の角度の第3の変化量の分、ビーム方向を第1のスロットにおいて取得された第1のビームパタンから変化させた、ビームパタンに設定されてもよい。すなわち、角度の第3の変化量は、ビームパタンの集合に関する情報が中継局で使用開始されるまでの時間差を考慮した角度のオフセットである。これによって、ビームパタンの集合に関する情報が使用される第2のスロットにおいて、端末局の位置をより正確にとらえたビームパタンの集合を中継局へ割り当てることができる。中継局は、よりSINRの最大値が大きくなるビームパタン、すなわち、ビーム方向がより正確に端末局の位置へ向いたビームパタンへ、複数の第1のアンテナで使用されるビームパタンを更新することができる。
【0026】
本開示の他の態様の一つは、上記ビームパタンの集合に関する情報を取得し、中継局へ送信する情報処理装置としても特定することができる。また、本開示の他の態様の一つは、当該情報処理装置が上記ビームパタンの集合に関する情報を取得する処理と、上記中継局が当該ビームパタンの集合から使用するビームパタンを選択して更新する処理と、を実行する方法としても特定することができる。具体的には、当該方法は、移動可能な端末局との通信に用いられ、アンテナ利得が高められる方向であるビーム方向が所定のビームパタンに従って制御される複数の第1のアンテナと、基地局との通信に用いられる1又は複数の第2のアンテナと、基地局と端末局との間で、信号を復調及び復号せずに中継する非再生中継を行う無線機と、を含む中継局が、無線フレームの第1のスロットにおいて計測された受信信号であって、非再生中継によって複数の第1のアンテナで送受信される信号と1又は複数の第2のアンテナで送受信される信号との間で発生する自己干渉の少なくと
も一部を含む端末局からの受信信号のSINRが最大となる第1のビームパタンを送信することと、情報処理装置が、中継局から第1のビームパタンを受信することと、第1のビームパタンに基づいてビームパタンの集合に関する情報を取得することと、中継局へ、ビームパタンの集合に関する情報を送信することと、中継局が、第1のスロットより後の第2のスロットにおいて、ビームパタンの集合に含まれる複数のビームパタンそれぞれについて、1又は連続する複数のシンボルにおいて計測された自己干渉の少なくとも一部を含む端末局からの受信信号のSINRに基づいて、第2のビームパタンを複数のビームパタンから選択することと、1又は連続する複数のシンボルの次のシンボルにおいて、複数の第1のアンテナで使用するビームパタンを第2のビームパタンに更新することと、を含む方法である。
【0027】
また、他の態様の一つは、当該方法を、中継局又は情報処理装置に実行させるためのプログラム、及び、当該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能で非一時的な記憶媒体としても特定することができる。
【0028】
以下、図面に基づいて、本開示の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本開示は実施形態の構成に限定されない。
【0029】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る通信システム100Aのシステム構成の一例を示す図である。通信システム100Aは、制御装置1と、基地局2と、中継局3(3-1、…、3-M)と、端末局4とを有する。制御装置1は、基地局2が接続されるコアネットワーク上の装置である。ただし、制御装置1がコアネットワーク自体であるか、またはコアネットワークに含まれるシステムであると考えることもできる。コアネットワークは、例えば、光ファイバ網を含む。制御装置1は、基地局2、中継局3、及び、端末局4を制御し、端末局4に通信サービスを提供する。
【0030】
基地局2は、端末局4に無線アクセスネットワークを提供する。無線アクセスネットワークでの無線通信が可能なエリアは、セルとも呼ばれる。基地局2は、第1実施形態では、1以上のアンテナ(例えば、#1)と、これら1以上のアンテナに接続される無線機21と、制御回路22を有する。制御回路22は、例えば、プロセッサとメモリを有する。プロセッサは、メモリ上のコンピュータプログラムにより、制御装置1との通信、及び、中継局3及び端末局4との無線通信を制御する。
【0031】
端末局4は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、ウェアラブル端末、及び、車載されたデータ通信装置等の移動局である。ただし、これに限られず、端末局4は、据え置き型の端末装置であってもよい。例えば、端末装置は、基地局2が提供するセルの範囲で無線アクセスネットワークに接続する。中継局3は、基地局2と端末局4との無線通信を中継する。中継局3は、例えば、小型基地局、移動基地局、車載装置、及び、スマートフォン等である。第1実施形態では、中継局3は、非再生中継可能な構成を備える装置の中から制御装置1によって中継局として選定された装置である。
【0032】
制御装置1は、端末局4から接続要求の発生時に、基地局2が提供するセルの範囲に位置する1以上の装置を中継局3として選択し、無線通信の中継を指示する。なお、第1実施形態において、複数の中継局3が個々に区別される場合に、中継局3-1、・・・、3-Mのように枝番が付される。ここで、枝番Mは中継局3の数を示す整数である。
図1においては、中継局3-1と3-Mが例示されている。ただし、中継局3-1、・・・、3-Mが総称される場合には、単に、中継局3と記述される。
【0033】
中継局3は、複数のアンテナ(例えば、#1、…、#G)と、これら複数のアンテナに
接続される無線機31と、制御部32とを有する。なお、
図1では、中継局3は1つの無線機31を備えるように示されているが、これに限定されず、中継局3は、アンテナごとに1つずつ複数の無線機31を備えてもよい。
【0034】
端末局4は、1本以上のアンテナ(例えば、#1)と、当該1以上のアンテナに接続される無線機41と、制御回路42とを有する。例えば、セル内の移動局が基地局2に無線アクセスネットワークへの接続を要求し、接続されることで、当該移動局が端末局4として動作する。セル内の移動局は、基地局2に直接無線アクセスネットワークへの接続を要求してもよい。または、セル内の移動局は、セル内で中継局3として動作する装置を介して基地局2に無線アクセスネットワークへの接続を要求してもよい。端末局4は、1以上の中継局3のいずれかを介してまたは1以上の中継局3のいずれをも介さずに基地局2と通信可能な局ということができる。
【0035】
図2は、通信システム100Bのシステム構成の一例を示す図である。第1実施形態では、システム構成を通信システム100Bとしてもよい。通信システム100Bは、
図1の通信システム100Aと比較して、基地局2の代わりに、中央基地局2Aと、1以上の分散基地局2Bと有する。1以上の分散基地局2Bが個々に区別される場合に、分散基地局2B-1、・・・、2B-Sのように枝番が付される。ここで、枝番Sは分散基地局数を示す整数である。
図2においては、分散基地局2B-1と2B-Sが例示されている。ただし、分散基地局2B-1、・・・、2B-Sが総称される場合には、単に、分散基地局2Bと記述される。
【0036】
中央基地局2Aは、制御回路22Aを有する。また、分散基地局2Bは、無線機21Bを有する。中央基地局2Aの制御回路22Aと分散基地局2Bの無線機21Bとは、例えば、光ファイバC1又は無線ネットワークで接続される。中央基地局2Aと複数の分散基地局2Bとを接続する光ファイバC1のトポロジは、特定のトポロジに限定されない。例えば、光ファイバC1のトポロジは、ノード間の一対一の接続、中央基地局2Aから離れるにしたがって分岐するネットワーク、スター型のネットワーク、または、リングネットワーク等であってもよい。また、中央基地局2Aの制御回路22Aと分散基地局2Bの無線機21Bとの間を無線ネットワークで接続する場合に、採用される無線ネットワークの規格、及び、プロトコルは特定のものに限定されない。
【0037】
制御回路22Aは、
図1の制御回路22と同様、プロセッサとメモリを有する。プロセッサは、メモリ上のコンピュータプログラムにより、制御装置1との通信、および中継局3、端末局4との無線通信を制御する。すなわち、制御回路22Aは、1以上の分散基地局2Bの無線機21Bを介して、中継局3及び端末局4との無線通信を制御する。
【0038】
なお、通信システム100A及び通信システム100Bにおいて、中継局の制御部32は、制御チャネル用のアンテナを、アンテナ#1からアンテナ#Gとは別に備えていてもよい。以下、通信システム100A及び通信システム100Bを区別しない場合には、単に、通信システム100と表記する。
【0039】
第1実施形態では、通信システム100では、以下のことが採用されていることを前提とする。通信システム100では、時分割多重で、上り回線及び下り回線では同一周波数チャネルが使用される。また、基地局2、中継局3、及び、端末局4間では、無線フレームのスロットタイミングは同期している。通信システム100では、無線の変調方式として、CP-OFDM(Cyclic Prefix - Orthogonal Frequency Division Multiplexing)などのサイクリックプレフィックスを持つブロック伝送方式が採用されている。また、中継局3は、中継の対象となる端末局4が上り回線及び下り回線において使用するリソースブロック情報を共有している。なお、上り回線は、端末局4から基地局2への方向の通信
リンクである。下り回線は、基地局2から端末局4への方向の通信リンクである。以下、下り回線方向を下り方向、上り回線方向を上り方向と称することもある。
【0040】
第1実施形態では、中継局3は、制御装置1からビームパタンの集合を受信し、当該ビームパタンの集合に含まれる複数のビームパタンの中から、SINRが最大となるようなビームパタンを選択して、更新する。端末局4からの受信信号のSINRは、非再生中継による自己干渉の影響を考慮して算出される。これによって、中継局は、無線フレームよりも短い間隔で、ビームパタンを更新することができ、端末局4が高速で移動する場合でも安定的に非再生中継による通信を提供することができる。
【0041】
図3は、第1実施形態に係る通信システム100における中継局3のビームパタン更新に係る処理のシーケンスの一例を示す図である。
図3では、S1からS3の処理の流れが示され、各処理の詳細はそれぞれ後述される。
【0042】
S1では、中継局3は、無線フレーム内の所定の上りスロットにおいて、ビームパタン選定処理を実行する。S1におけるビームパタン選定処理では、中継局3は、予め設定されているビームパタンの集合の中から、端末局4からの受信信号のSINRが最大となるビームパタンを選定し、当該ビームパタンと当該ビームパタンにおける最大SINRとを制御装置1へ通知する。以下、単に、SINR、という場合には、端末局4からの受信信号のSINRを指すこととする。
【0043】
S2では、制御装置1は、中継局3へ割り当てるビームパタンの集合を決定するビームパタン集合決定処理を実行する。S2におけるビームパタン集合決定処理では、制御装置1は、中継局3から通知されたビームパタンに基づいて、中継局3に割り当てるビームパタン集合を決定し、中継局3へ通知する。
【0044】
中継局3は、制御装置1から通知されたビームパタン集合に含まれるビームパタンを用いて非再生中継を行う。これとともに、S3では、中継局3は、ビームパタン更新処理を行う。S3におけるビームパタン更新処理では、中継局3は、ビームパタンの集合に含まれる各ビームパタンについてシンボル単位でSINRを監視し、SINRが最大となるようなビームパタンを選択してビームパタンを更新する。なお、
図3では、制御装置1がS2のビームパタン集合決定処理を実行するが、基地局2が実行してもよい。
【0045】
図4は、中継局3のハードウェア構成の一例を示す図である。中継局3は、無線機31-1及び無線機31-2と、制御部32と、自己干渉除去部33と、ベースバンド回路34と、を備える。無線機31-1は、端末局との通信用のアンテナ#1からアンテナ#Nに接続する。無線機31-2は、制御装置1との通信用の1又は複数のアンテナに接続する。なお、無線機31-1と無線機31-2とは同じ構成を有する。無線機31-1及び無線機31-2が総称される場合には、単に、無線機31と記述される。なお、端末局との通信用のアンテナの数Nと、制御装置1との通信用の1又は複数のアンテナの数と、の合計は、中継局3が保持するアンテナの数Gとなる。すなわち、N<Gである。以下、代表して、端末局との通信用のアンテナ#1からアンテナ#Nに接続する無線機31-1について説明する。
【0046】
無線機31-1は、送受切替スイッチ311、送信機312、受信機313、及び、その他乗算器及び加算器を備える。送受切替スイッチ311は、アンテナ#1からアンテナ#Nの送信又は受信を切り替えるスイッチである。送受切替スイッチ311は、送信機312又は受信機313のいずれかに接続する。送受切替スイッチ311が送信機312に接続することで、アンテナと送信機312とが接続され、アンテナが送信アンテナとして動作する。送受切替スイッチ311が受信機313に接続することで、アンテナと受信機
313とが接続され、アンテナが受信アンテナとして動作する。無線機31-1における送受切替スイッチ311の接続の切り替えは、制御部32からの指示に従って行われる。
【0047】
受信機313は、送受切替スイッチ311によってアンテナと接続されている場合に、アンテナから受信信号を受ける。受信機313は、直交検波回路とアナログデジタル(AD)コンバータを有する。受信機313は、直交検波回路により受信信号をダウンコンバートし、さらにADコンバータによりデジタルデータに変換してベースバンド信号を得る。受信機313は、得られたベースバンド信号を自己干渉除去部33に出力する。
【0048】
ここで、無線機31-1に接続する端末局との通信用のアンテナは、上り回線方向での通信では、端末局4から信号を受信する受信アンテナとして動作する。一方、無線機31-2に接続する基地局2との通信用のアンテナは、上り回線方向での通信では、基地局2へ信号を送信する送信アンテナとして動作する。無線機31-1に接続する端末局との通信用のアンテナは、下り回線方向での通信では、端末局4へ信号を送信する送信アンテナとして動作する。一方、無線機31-2に接続する基地局2との通信用のアンテナは、下り回線方向での通信では、基地局2から信号を受信する受信アンテナとして動作する。
【0049】
アンテナの送信信号と受信信号の電力差は例えば約100dBほどである。したがって、端末局との通信用のアンテナと、基地局2との通信用のアンテナとの間では、送信信号の一部は受信信号と互いに干渉し合う。中継局3における送信信号の一部と受信信号との干渉は、自己干渉と呼ばれる。送信信号は受信信号よりも電力が大きいため、受信信号による送信信号への自己干渉の影響は無視できるほど小さい。しかしながら、送信信号の一部による無線信号への自己干渉の影響は無視できず、当該送信信号の一部は受信信号の干渉信号となる。その為、受信信号への自己干渉による干渉信号となる送信信号の一部は、受信機313内の直交検波回路内のRadio Frequency(RF)アナログフィルタと自己干
渉除去部33内のFIRフィルタを併用することで抑圧される。
【0050】
自己干渉除去部33は、FIRフィルタを有する。自己干渉除去部33は、FIRフィルタにより、受信信号に混入し、干渉している送信信号の一部を抑圧する。自己干渉除去部33は、FIRフィルタによりフィルタリングした受信信号を、ベースバンド回路34へ出力する。
【0051】
自己干渉除去部33から出力された受信信号には、それぞれのアンテナ#nに対応した受信側の乗算器によって、それぞれのアンテナ#nに対応する、使用中のビームパタンp_(j,curt)を生成するウェイトw_(curt,n)により重み付けされる。nは、アンテナを示す変数である。nは、n=1,...,Nの値をとる。Nは、端末局4との通信用のアンテナの数である。p_(j,curt)は、中継局jにおいて現在(currentの略curt.)使用中のビームパタンを示す。w_(curt,n)は、ビームパタンp_(j,curt)における、アンテナ#nに対応するウェイトを示す。ウェイトwは、複素数である。ビームパタン及びウェイト等を表すアルファベットに続く下線以降のカッコ内の文字は、図中では下付き文字として示されている。各ウェイトで重み付けされたアンテナ#1からアンテナ#Nの各受信信号は、その後加算器によって加算されて、ベースバンド回路34へ出力される。
【0052】
ベースバンド回路34は、通常、ベースバンド信号である受信信号に対して、復調、及び、復号等を行うが、非再生中継では、ベースバンド信号である受信信号を送信アンテナに接続している無線機31へそのまま出力する。例えば、端末局との通信用アンテナから受信された受信信号は、ベースバンド回路34によって、基地局2との通信用アンテナと接続する無線機31-2へ出力される。例えば、基地局2との通信用アンテナから受信された受信信号は、ベースバンド回路34によって、端末局との通信用アンテナと接続する
無線機31-1へ出力される。
【0053】
次に、基地局2との通信用アンテナから受信された受信信号が、ベースバンド回路34によって、端末局との通信用アンテナと接続する無線機31-1へ出力され、中継局3から送信信号として、無線機31-1の送信側について説明する。ベースバンド回路34から出力された送信信号は、分波され、それぞれのアンテナ#nに対応した送信側の乗算器によって、それぞれのアンテナ#nに対応する、使用中のビームパタンp_(j,curt)を生成するウェイトw_(curt,n)により重み付けされる。各ウェイトで重み付けされた各送信信号は、その後送信機312へ出力される。なお、
図4では、便宜上、送信信号は送信側の乗算器から自己干渉除去部33を介して送信機312へ出力されているが、実際には送信信号には自己干渉の抑圧は行われない。
【0054】
送信機312は、デジタルアナログ(DA)コンバータと、変調回路と、増幅回路と、を有する。送信機312は、スイッチによってアンテナと接続されている場合に、ベースバンド回路34から送信側の乗算器と自己干渉除去部33とを介して送信信号の入力を受ける。送信機312は、送信信号をアナログ信号に変換し、変調回路によりRF信号を生成する。また、送信機312は、増幅回路によりRF信号の電力(振幅)を増幅する。送信機312は、送受切替スイッチ311によって接続されているアンテナからRF信号を中継信号として送信する。
【0055】
制御部32は、例えば、CPU及びDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサ、又は、FPGA等の演算回路である。制御部32は、非再生中継処理の制御を行う。より具体的には、制御部32は、伝搬路の電波伝搬特性を計測したり、ビームパタンごとSINRを計算したり、制御チャネルを通じてビームパタンとそのSINRとを制御装置1へ通知したり、ビームパタンを更新したりする。制御部32は、「中継局」の「制御部」の一例である。
【0056】
なお、中継局3のハードウェア構成は
図4に示されるものに限定されない。例えば、
図4では、中継局3は、制御部32に接続する制御チャネル用のアンテナを端末局との通信用のアンテナ#1からアンテナ#N及び基地局との通信用の1又は複数のアンテナとは別に備えているが、これに限定されない。例えば、中継局3は、制御部32には制御チャネル用のアンテナを備えず、アンテナ#1からアンテナ#Gのいずれかを制御チャネル用のアンテナとして用いてもよい。
【0057】
図5は、制御装置1のハードウェア構成を例示する図である。制御装置1はCPU 11と、主記憶装置12と、外部機器を有し、コンピュータプログラムにより通信処理および情報処理を実行する。CPU 11は、プロセッサとも呼ばれる。CPU 11は、単一のプロセッサに限定されず、マルチプロセッサ構成であってもよい。また、CPU 11は、Graphics Processing Unit(GPU)、Digital Signal Processor(DSP)等を含むものであってもよい。また、CPU 11は、Field Programmable Gate Array(F
PGA)等のハードウェア回路と連携するものでもよい。外部機器としては、外部記憶装置13、出力装置14、操作装置15、および通信装置16が例示される。
【0058】
CPU 11は、主記憶装置12に実行可能に展開されたコンピュータプログラムを実行し、制御装置1の処理を提供する。主記憶装置12は、CPU 11が実行するコンピュータプログラム、CPU 11が処理するデータ等を記憶する。主記憶装置12は、Dynamic Random Access Memory(DRAM)、Static Random Access Memory(SRAM)
、Read Only Memory(ROM)等である。さらに、外部記憶装置13は、例えば、主記憶装置12を補助する記憶領域として使用され、CPU 11が実行するコンピュータプログラム、CPU 11が処理するデータ等を記憶する。外部記憶装置13は、ハードディ
スクドライブ、Solid State Drive(SSD)等である。さらに、制御装置1には、着脱
可能記憶媒体の駆動装置が接続されてもよい。着脱可能記憶媒体は、例えば、ブルーレイディスク、Digital Versatile Disc(DVD)、Compact Disc(CD)、フラッシュメモリカード等である。CPU 11は、「情報処理装置」の「制御部」の一例である。
【0059】
出力装置14は、例えば、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスパネル等の表示装置である。ただし、出力装置14がスピーカその他の音を出力する装置を含んでもよい。操作装置15は、例えば、ディスプレイ上にタッチセンサを重ねたタッチパネル等である。通信装置16は、例えば、光ファイバを介して基地局2およびインターネット等の外部ネットワークと通信する。通信装置16は、例えば、基地局2に接続されるゲートウェイおよびインターネット等の外部ネットワークと通信するゲートウェイである。通信装置16は、1台の装置であってもよいし、複数台の装置の組み合わせであってもよい。なお、制御装置1のハードウェア構成は、
図5に示されるものに限定されない。
【0060】
(中継局3における最大SINRとなるビームパタンの選定処理)
図6は、中継局3におけるビームパタン選定処理のフローチャートの一例である。中継局3におけるビームパタン選定処理は、
図3のS1において実行される処理に該当する。
図6に示される処理は、制御装置1から制御チャネルを通じて端末局4への中継を指示された場合に、所定の周期で繰り返し実行される。
【0061】
OP11では、制御部32は、自己干渉の計測タイミングであるか否かを判定する。自己干渉の計測タイミングは、例えば、制御チャネルを通じて制御装置1から通知される。自己干渉の計測タイミングとなった場合には(OP11:YES)、処理がOP12へ進む。自己干渉の計測タイミングが到来していない場合には(OP11:NO)、
図6に示される処理が終了する。
【0062】
OP12では、制御部32は、無線機31-1に接続されている端末局4との通信用のアンテナ又は無線機31-2に接続されている基地局2との通信用のアンテナのいずれかからリファレンス信号を送信する。OP13では、制御部32は、無線機31-2に接続されている基地局2との通信用のアンテナ又は無線機31-1に接続されている端末局4との通信用のアンテナで、OP12において送信したリファレンス信号を受信し、端末局4との通信用のアンテナと基地局2との通信用のアンテナとの間の伝搬特性を計測する。
【0063】
OP12とOP13の処理は、端末局4との通信用のアンテナのビームパタン集合P_(j)に含まれる全てのビームパタンについて実行されてもよいし、一部のビームパタンについて実行されてもよい。ビームパタン集合P_(j)は、予め制御部32が保持していてもよいし、制御装置1から予め通知されてもよい。OP12とOP13との処理が一部のビームパタンについて実行される場合には、その他のビームパタンについては、端末局4との通信用のアンテナと基地局2との通信用のアンテナとの間の伝搬特性は、計測されたビームパタンの伝搬特性を用いて補完される。例えば、ビームパタンAとビームパタンBとがビーム方向の角度差が所定値未満であり、ビームパタンAの伝搬特性が計測されている場合には、ビームパタンBの伝搬特性をビームパタンAの伝搬特性で近似してもよい。
【0064】
OP14では、制御部32は、制御装置1から指定されたs番目の上り回線スロットの期間であるか否かを判定する。s番目の上り回線スロットの期間である場合には(OP14:YES)、処理がOP15へ進む。s番目の上り回線スロットの期間が始まるまで(OP14:NO)、制御部32は待機状態となる。
【0065】
OP15では、制御部32は、端末局4からのリファレンス信号をビームパタンp_(
j,0)で受信した場合の受信信号ベクトルRx_(j,0)={rx_(1),...,rx_(N)}を記録する。rx(j,n)は、アンテナ#nの受信信号である。ビームパタンp_(j,0)は、予め制御部32が保持している、又は、制御装置1から通知されているビームパタンである。受信信号rx_(n)は、自己干渉除去部33から出力された受信信号を計測したものである。したがって、受信信号rx_(n)の電力は、自己干渉除去部33による自己干渉抑圧量が除去された値となる。
【0066】
OP16では、ビームパタン集合P_(j)に含まれる各ビームパタンp_(j,d)について、SINRを算出する。dは、ビームパタンを示す変数である。dは、d=1,...,Dの値をとる。Dはビームパタン集合P_(j)に含まれるビームパタン数である。ビームパタンp_(j,d)の場合のSINR Γ_(j,k)(p_(j,d))
は以下の式1で求められる。kは、端末局4を示す変数である。
【数1】
【0067】
W_(j)は、中継局3における雑音電力である。I_(j)(p_(j,d))は、受信信号内に残留する自己干渉電力である。自己干渉電力は端末局4との通信用のアンテナと基地局2との通信用のアンテナとの間の伝搬特性によって表され、且つ、自己干渉除去部33による自己干渉抑圧量を固定値とみなすことができるので、受信信号内に残留する自己干渉電力は、ベースバンド回路34と自己干渉除去部33との間の、自己干渉除去部33への入力信号(送信信号)と、自己干渉除去部33からの出力信号(受信信号)と、の間の干渉とも捉えられる。この場合のビームパタンp_(j,d)における自己干渉除去部33への入力信号(送信信号)と自己干渉除去部33からの出力信号(受信信号)との間の結合を示す伝搬特性をH_(R→R)(p_(j,d))と表すと、I_(j)(p_(j,d))は、以下の式2で表される。なお、H_(R→R)(p_(j,d))は、ビームパタンp_(j,d)における端末局4との通信用のアンテナと基地局2との通信用のアンテナとの間の伝搬特性と、自己干渉除去部33による自己干渉抑圧量とから求めることができる。
【数2】
P_(Tx,j)は、中継局3における送信信号の電力である。
【0068】
OP17では、制御部32は、OP16で求めた、ビームパタン集合P_(j)に含まれる複数のビームパタンp_(j,d)のうちSINRが最大となるビームパタンp_(j,max)(s)と、当該SINRとを制御装置1へ通知する。sは、無線フレームにおけるスロットを示す変数である。その後、
図6に示される処理が終了する。なお、
図6に示される中継局3のビームパタン選定処理は一例であって、中継局3のビームパタン選定処理は
図6に示される処理に限定されない。例えば、各ビームパタンにおけるSINRは、アンテナ#nの受信信号、当該ビームパタンにおける端末局4との通信用のアンテナと基地局2との通信用のアンテナとの間の伝搬特性、自己干渉除去部33による自己干渉抑圧量、及び、中継局3における雑音電力W_(j)を用いて算出されてもよい。
【0069】
(制御装置1における中継局3へ割り当てるビームパタン集合の決定処理)
図7は、第1実施形態における中継局3へ割り当てられるビームパタン集合に含まれる複数のビームパタンの関係の一例を示す図である。
図7に示される例は、方位角方向のビームパタンを示す。
【0070】
第1実施形態では、中継局3へ割り当てられるビームパタン集合P_(j,R)(s)は、中心となるビームパタンp_(j,R)(s)と、ビームパタンp_(j,R)(s)のビーム方向を中心として正及び負の方向にビーム方向の角度の範囲を定義するθ_(j,R)と、ビームパタン間のステップ幅Δθ_(j,R)と、によって定義される。すなわち、第1実施形態では、中継局3へ割り当てられるビームパタン集合P_(j,R)(s)には、θ_(j,R)/Δθ_(j,R)×2個のビームパタンが含まれる。ビームパタンのビーム方向とは、当該ビームパタンをアンテナに適用した場合に、電波が集められ、アンテナ利得が高められる方向のことである。
【0071】
ビームパタン集合P_(j,R)(s)の中心となるビームパタンp_(j,R)(s)は、中継局3から通知されるビームパタンp_(j,max)(s)に設定される。ビーム方向の角度の範囲±θ_(j,R)とステップ幅Δθ_(j,R)とは、それぞれ、予め設定された値に設定される。このように、ビームパタン集合P_(j,R)(s)に含まれる複数のビームパタンが、ビーム方向がステップ幅Δθ_(j,R)で等間隔の角度になるように設定されることによって、ビーム方向の角度の範囲±θ_(j,R)内を中継局3がより良いビームパタンをまんべんなく調べることができる。
【0072】
図8は、第1実施形態における制御装置1のビームパタン集合決定処理のフローチャートの一例である。
図8に示される処理は、所定の周期で繰り返し実行される。
図8に示される処理の実行主体は、制御装置1のCPU 11であるが、便宜上、制御装置1を主体として説明する。
【0073】
OP21では、制御装置1は、中継局3からビームパタンp_(j,max)(s)と当該ビームパタンp_(j,max)(s)におけるSINRとの通知を受信したか否かを判定する。中継局3からビームパタンp_(j,max)(s)と当該ビームパタンp_(j,max)(s)におけるSINRとの通知が受信された場合には(OP21:YES)、処理がOP22へ進む。中継局3からビームパタンp_(j,max)(s)と当該ビームパタンp_(j,max)(s)におけるSINRとの通知が受信されていない場合には(OP21:NO)、
図8に示される処理が終了する。
【0074】
OP22では、制御装置1は、中継局3から通知されたSINRが閾値以上であるか否かを判定する。当該閾値は、中継局3による端末局4への非再生中継の継続を判定するための閾値である。中継局3から通知されたSINRが閾値以上である場合には(OP22:YES)、処理がOP23へ進む。中継局3から通知されたSINRが閾値未満である場合には(OP22:NO)、ビームパタン集合P_(j)に含まれるいずれのビームパタンを使用しても中継局3による端末局4への非再生中継が継続できないことが判定され、
図8に示される処理が終了する。
【0075】
OP23では、制御装置1は、中継局3に割り当てるビームパタン集合P_(j,R)(s)を決定する。制御装置1は、中心となるビームパタンp_(j,R)(s)をp_(j,max)(s)に設定する。制御装置1は、ビーム方向の角度の範囲±θ_(j,R)、及び、ステップ幅Δθ_(j,R)を、それぞれ、予め設定された固定値に設定する。
【0076】
OP24では、制御装置1は、中継局3へ、ビームパタン集合P_(j,R)(s)に関する情報を通知する。ビームパタン集合P_(j,R)(s)に関する情報には、例え
ば、中心となるビームパタンp_(j,R)(s)、ビーム方向の角度の範囲±θ_(j,R)、及び、ステップ幅Δθ_(j,R)が含まれる。その後、
図8に示される処理が終了する。ビームパタン集合P_(j,R)(s)に関する情報は、「ビームパタンの集合に関する情報」の一例である。ビームパタンp_(j,max)(s)は、「第1のビームパタン」の一例である。ビームパタンp_(j,R)(s)は、「第3のビームパタン」の一例である。ビーム方向の角度の範囲は、「第1の範囲」の一例である。ビーム方向の角度の範囲を定義するθ_(j,R)は、「第1の角度」の一例である。ステップ幅Δθ_(j,R)は、「第2の角度」の一例である。
【0077】
なお、
図7及び
図8に示される中継局3へ通知されるビームパタン集合P_(j,R)(s)の定義は一例であって、ビームパタン集合P_(j,R)(s)の定義は
図7に示される例に限定されない。例えば、ビームパタン集合P_(j,R)(s)は、ビーム方向の角度の範囲±θ_(j,R)内にビーム方向が収まる、所定数のビームパタンがランダムに決定されてもよい。この場合には、ビームパタン集合P_(j,R)(s)に関する情報には、ビームパタンp_(j,R)(s)と、ビームパタン集合P_(j,R)(s)に含まれる所定数のビームパタンと、が含まれてもよい。また、
図7に示されるように、中継局3へ通知されるビームパタン集合P_(j,R)(s)が定義される場合でも、中継局3へ通知されるビームパタン集合P_(j,R)(s)に関する情報には、例えば、ビームパタンp_(j,R)(s)と、ビーム方向の角度の範囲±θ_(j,R)にビーム方向が収まるステップ幅Δθ_(j,R)の複数のビームパタンと、が含まれてもよい。
【0078】
(中継局3におけるビームパタン更新処理)
図9は、第1実施形態における中継局3のビームパタン更新処理のフローチャートの一例である。
図9に示される処理は、
図3のS3において実行される処理である。
図9に示される処理は、所定の周期で繰り返し実行される。
図9に示される処理は、例えば、ビームパタン選定処理において、ビームパタン集合P_(j)に含まれる複数のビームパタンp_(j,d)のうちSINRが最大となるビームパタンp_(j,max)(s)と、当該SINRとを制御装置1へ通知した後に開始されてもよい。
【0079】
OP31では、制御部32は、制御装置1からビームパタン集合P_(j,R)(s)を受信したか否かを判定する。制御装置1からビームパタン集合P_(j,R)(s)が受信された場合には(OP31:YES)、処理がOP32へ進む。制御装置1からビームパタン集合P_(j,R)(s)が受信されていない場合には(OP31:NO)、
図9に示される処理が終了する。
【0080】
OP32では、制御部32は、シンボルの切り替えか否かを判定する。シンボルの切り替えである場合には(OP32:YES)、処理がOP33へ進む。シンボルの切り替えでない場合には(OP32:NO)、制御部32は待機状態となる。
【0081】
OP33では、制御部32は、端末局4との通信用のアンテナの使用中のビームパタンp_(j,curt)をビームパタンp_(j,next)に更新し、非再生中継を開始する。p_(j,curt)の初期値はp_(j,0)である。p_(j,next)の初期値は、ビームパタン集合P_(j,R)(s)に含まれるビームパタンp_(j,R)(s)である。
【0082】
OP34では、制御部32は、上り回線スロットの期間であるか否かを判定する。上り回線スロットの期間である場合には(OP34:YES)、処理がOP35へ進む。上り回線スロットの期間でない、すなわち、下り回線スロットの期間である場合には(OP34:NO)、処理がOP38へ進む。
【0083】
OP35からOP37の処理は、上り回線スロットの期間である場合に実行される。OP35では、制御部32は、端末局4からの中継信号(データ信号)をビームパタンp_(j,curt)で受信した場合の受信信号ベクトルRx_(j,curt)={rx_(1),...,rx_(N)}を記録する。OP36では、ビームパタン集合P_(j,R)に含まれる各ビームパタンp_(j,d)について、SINRを算出する。ビームパタンp_(j,d)におけるSINR Γ_(j,k)(p_(j,d))は上述の式
1で求められる。ビームパタン集合P_(j,R)に含まれる各ビームパタンp_(j,d)を生成するウェイトベクトルW_(j,d)={w_(j,1),...,w_(j,n)}は、ビームパタンp_(j,d)のビーム方向の角度が決まることによって取得される。ビームパタン集合P_(j,R)に含まれる各ビームパタンp_(j,d)のビーム方向は、ビームパタンp_(j,R)(s)と、ビーム方向の角度の範囲±θ_(j,R)と、ステップ幅Δθ_(j,R)とによって取得可能である。
【0084】
OP37では、制御部32は、OP36で算出した各ビームパタンp_(j,d)のSINRに基づいて、次のシンボルで使用されるビームパタンp_(j,next)を決定するビームパタン決定処理を実行する。ビームパタン決定処理の詳細は後述される。
【0085】
OP38では、制御部32は、ビームパタン更新処理の終了条件が満たされたか否かを判定する。ビームパタンの終了条件は、例えば、制御装置1によって指定された無線フレーム内の期間が終了すること、及び、制御装置1から制御チャネルを通じて端末局4への非再生中継の停止指示を受信すること、等のいずれか又は全部である。ビームパタン更新処理の終了条件が満たされた場合には(OP38:YES)、
図9に示される処理が終了する。
【0086】
ビームパタン更新処理の終了条件が満たされていない場合には(OP38:NO)、処理がOP32へ進み、シンボルごとに使用されるビームパタンp_(j,curt)がp_(j,next)に更新される(OP33)。上り回線のスロットの期間中は、シンボルごとに、ビームパタン集合P_(j,R)に含まれる各ビームパタンp_(j,d)についてSINRが算出され(OP36)、ビームパタンp_(j,next)が決定される(OP37)。下り回線のスロットの期間中は、OP35からOP37の処理は実行されないので、直前の上り回線のスロット内の最後のシンボルで決定されたビームパタンp_(j,next)が使用されて非再生中継が行われる。
【0087】
OP37におけるビームパタン決定処理には、(1)移動平均ウィンドウを用いる方法と、(2)スイッチアンドステイを用いる方法とがある。(1)移動平均ウィンドウを用いる方法と、(2)スイッチアンドステイを用いる方法とのいずれを用いるかは、通信システム100の管理者が任意に設定可能である。
【0088】
図10は、(1)移動平均ウィンドウを用いる場合のビームパタン決定処理のフローチャートである。
図10に示される処理は、
図9のOP37において実行される処理の一つである。
【0089】
OP3711では、制御部32は、移動平均ウィンドウW_(MA)に含まれる複数のシンボルそれぞれにおいてビームパタン集合P_(j,R)に含まれる複数のビームパタンのうちSINRが最大となるビームパタンp_(j,max)(h)のビーム方向θ_(j,max)(h)の移動平均値W_(MA)(θ_(j,max)(h-Lw+1:h))を取得する。hはシンボルを示す変数である。Lwは移動平均ウィンドウのシンボル数である。例えば、Lw=3である場合には、現在のシンボル#hとした場合に、シンボル#h-2からシンボル#hのそれぞれにおいてSINRが最大となる各ビームパタン
のビーム方向θ_(j,max)(h-2)、θ_(j,max)(h-1)、及び、θ_(j,max)(h)の平均値が移動平均値W_(MA)(θ_(j,max)(h-Lw+1:h))として求められる。
【0090】
OP3712では、制御部32は、移動平均値W_(MA)(θ_(j,max)(h-Lw+1:h))に対して、最も近いビーム方向が得られるビームパタンp_(j,near_maxθ)をビームパタン集合P_(j,R)から選択する。
【0091】
OP3713では、制御部32は、次のシンボルで使用されるビームパタンp_(j,next)として移動平均値W_(MA)(θ_(j,max)(h-Lw+1:h))に最も近いビーム方向が得られるビームパタンp_(j,near_maxθ)を設定する。その後、処理が
図9のOP38へ進む。
【0092】
例えば、Lw=3である場合に、シンボル#h-2からシンボル#h+2のそれぞれのシンボルにおいてSINRが最大となるビームパタンが、いずれも、ビームパタンp_(j,D)であったと仮定する。この場合には、シンボル#h+1からシンボル#h+3の3シンボルの間は、ビームパタンp_(j,D)が、使用されるビームパタンp_(j,curt)となる。また、例えば、各シンボルでSINRが最大となるビームパタンが変化する状況でも、シンボル#h-2からシンボル#h+2を通じて移動平均値W_(MA)(θ_(j,max)(h-Lw+1:h))に対して、最も近いビーム方向が得られるビームパタンp_(j,near_maxθ)がビームパタンp_(j,D)である場合には、シンボル#h+1からシンボル#h+3の3シンボルの間は、ビームパタンp_(j,D)が使用されるビームパタンp_(j,curt)となる。このように、移動平均ウィンドウを用いることによって、使用されるビームパタンp_(j,curt)の変化する周期が短くなりすぎることを抑制することができる。
【0093】
図11は、(2)スイッチアンドステイを用いる場合のビームパタン決定処理のフローチャートである。(2)スイッチアンドステイを用いる場合のビームパタン決定処理では、現在のビームパタンp_(j,curt)のビーム方向θ_(j,curt)に対して、Lssシンボル連続して、最大SINRとなるビームパタンp_(j,max)(h)のビーム方向θ_(j,max)(h)が正または負となったとき、連続した正又は負の方向へビーム方向を移動させたビームパタンにp_(j,next)を更新する。
図11に示される処理は、
図9のOP37において実行される処理の一つである。
【0094】
OP3721では、制御部32は、現在のシンボル#hにおいて最大SINRとなるビームパタンp_(j,max)(h)のビーム方向θ_(j,max)(h)から現在のビームパタンp_(j,curt)のビーム方向θ_(j,curt)を引いた値を記録する。すなわち、OP37721では、現在のビームパタンp_(j,curt)のビーム方向θ_(j,curt)に対する、現在のシンボル#hにおいて最大SINRとなるビームパタンp_(j,max)(h)のビーム方向θ_(j,max)(h)が正であるか負であるかが記録される。
【0095】
OP3722では、制御部32は、θ_(j,max)(h)-θ_(j,curt)が正であるか負であるかを判定する。θ_(j,max)(h)-θ_(j,curt)が正である場合には(OP3722:YES)、処理がOP3723へ進む。
【0096】
OP3723では、制御部32は、現在のシンボル#hから一つ前のシンボル#h-1においても、現在のビームパタンp_(j,curt)のビーム方向θ_(j,curt)に対する、最大SINRとなるビームパタンp_(j,max)(h-1)のビーム方向θ_(j,max)(h-1)が正であるか否かを判定する。θ_(j,max)(h
-1)-θ_(j,curt)の記録がない場合には、OP3723は否定判定となる。
【0097】
θ_(j,max)(h-1)-θ_(j,curt)が正である場合には(OP3723:YES)、処理がOP3724に進む。OP3724では、制御部32は、変数qに1をインクリメントする。変数qは、現在のビームパタンp_(j,curt)のビーム方向θ_(j,curt)に対して最大SINRとなるビームパタンp_(j,max)(h)のビーム方向θ_(j,max)(h)が連続して正または負となる回数を計数するための変数である。qの初期値は0であり、
図9のビームパタン更新処理が終了すると値がクリアされる。
【0098】
OP3725では、制御部32は、qの値がLss以上であるか否か、すなわち、現在のビームパタンp_(j,curt)のビーム方向θ_(j,curt)に対して最大SINRとなるビームパタンp_(j,max)(h)のビーム方向θ_(j,max)(h)がLss回以上連続して正となったか否かを判定する。qの値がLss以上である場合には(OP3725:YES)、処理がOP3726へ進む。qの値がLss未満である場合には(OP3725:NO)、p_(j,next)は更新されず、
図11に示される処理が終了し、処理が
図9のOP38へ進む。
【0099】
OP3726では、制御部32は、p_(j,next)を、現在のビームパタンp_(j,curt)のビーム方向θ_(j,curt)にステップ幅Δθ_(j,R)を加算した方向をビーム方向とするビームパタンに設定する。その後、
図11に示される処理が終了し、処理が
図9のOP38へ進む。
【0100】
次に、θ_(j,max)(h)-θ_(j,curt)が負又は0である場合には(OP3722:NO)、処理がOP3727へ進む。OP3727では、制御部32は、現在のシンボル#hから一つ前のシンボル#h-1において、現在のビームパタンp_(j,curt)のビーム方向θ_(j,curt)に対する、最大SINRとなるビームパタンp_(j,max)(h-1)のビーム方向θ_(j,max)(h-1)が負であるか否かを判定する。θ_(j,max)(h-1)-θ_(j,curt)の記録がない場合には、OP3727は否定判定となる。
【0101】
θ_(j,max)(h-1)-θ_(j,curt)が負である場合には(OP3727:YES)、処理がOP3728に進む。OP3728では、制御部32は、変数qに1をインクリメントする。
【0102】
OP3729では、制御部32は、qの値がLss以上であるか否か、すなわち、現在のビームパタンp_(j,curt)のビーム方向θ_(j,curt)に対して最大SINRとなるビームパタンp_(j,max)(h)のビーム方向θ_(j,max)(h)がLss回以上連続して負となったか否かを判定する。qの値がLss以上である場合には(OP3729:YES)、処理がOP3730へ進む。qの値がLss未満である場合には(OP3729:NO)、p_(j,next)は更新されず、
図11に示される処理が終了し、処理が
図9のOP38へ進む。
【0103】
OP3730では、制御部32は、p_(j,next)を、現在のビームパタンp_(j,curt)のビーム方向θ_(j,curt)にステップ幅Δθ_(j,R)を減算した方向をビーム方向とするビームパタンに設定する。その後、
図11に示される処理が終了し、処理が
図9のOP38へ進む。
【0104】
OP3723において、θ_(j,max)(h-1)-θ_(j,curt)が負又は0である場合(OP3723:NO)、及び、OP3727において、θ_(j,ma
x)(h-1)-θ_(j,curt)が正又は0である場合(OP3727:NO)には、処理がOP3731へ進む。OP3731では、制御部32は、qを初期値の0に設定する。この場合には、p_(j,next)は更新されず、
図11に示される処理が終了し、処理が
図9のOP38へ進む。
【0105】
現在のビームパタンp_(j,curt)のビーム方向θ_(j,curt)に対して最大SINRとなるビームパタンp_(j,max)(h)のビーム方向θ_(j,max)(h)がLss回以上連続して正又は負になる場合には、端末局4が高速で移動していることが示される。この場合に、ビームパタンp_(j,next)をビームパタンp_(j,curt)のビーム方向を正又は負の方向にΔθ_(j,R)移動させて更新することで、端末局4の高速な移動に対応して、より最適なビームパタンに更新することができる。
【0106】
なお、中継局3のビームパタンの更新処理は、(1)移動平均ウィンドウを用いる方法と、(2)スイッチアンドステイを用いる方法とに限定されない。例えば、シンボルごとに、ビームパタン集合P_(j,R)に含まれる最大SINRとなるビームパタンへ使用するビームパタンp_(j,curt)を更新してもよい。
【0107】
(Lw及びLssの決定方法)
(1)移動平均ウィンドウを用いるビームパタンの更新処理における移動平均ウィンドウW_(MA)のサイズLwと、(2)スイッチアンドステイを用いるビームパタンの更新処理におけるLssと、の決定方法には、例えば、以下の(A)-(C)がある。
【0108】
(A)所定の固定値とする。例えば、Lw及びLssは、3シンボルに設定される。
(B)コヒーレント時間Tc(伝搬路の特性を同一とみなせる時間長)以下となる最大シンボル数に設定する。例えば、コヒーレント時間をシンボル時間長で割って得られる商をLw及びLssとする。コヒーレント時間Tcは、端末局4の移動速度v_(UE)と、使用周波数とから算出される。なお、端末局4の移動速度v_(UE)は、所定の値が用いられてもよいし、端末局4からの直前の上り回線スロットにおける受信信号のサイクリックプレフィックスから推定値として算出されてもよいし、所定のアプリケーションを介して、5Gコアネットワークから、5Gコアネットワークが端末局4から収集した値が取得されて用いられてもよい。
【0109】
(C)最大SINRとなるビーム方向を予測する回帰式を用いて、中継局3においてシンボル単位で取得されるビーム方向θ_(j,max)(h)について、回帰式で求めたビーム方向との偏差σ_(beam)と目標偏差σ_(error)とに基づいて設定する。当該回帰式は、1シンボルにおいて最大SINRとなるビームパタンのビーム方向θ_(j,max)(h)を目的変数、当該シンボルのシンボル番号hを説明変数とする。また、当該回帰式は、直前の上り回線スロットにおいて、移動平均またはスイッチアンドステイを用いるビームパタン更新処理時に各シンボルについて得られたビーム方向θ_(j,max)(h)と当該直前の上り回線スロットにおける各シンボルのシンボル番号hとのセットを用いてフィッティングされる(各項の係数が求められている)。当該回帰式に現在のスロットにおける現在のシンボルのシンボル番号hを入力した際のビーム方向の出力値と、当該現在のシンボルにおいて得られたビーム方向θ_(j,max)(h)と、の偏差(平均二乗誤差の平方根)σ_(beam)に基づいて、Lw及びLssが求められる。Lw及びLssは、例えば、σ_(beam)をσ_(error)で割った商の二乗を現在のLw及びLssの値に乗ずることでシンボルごとに更新されてもよい。
【0110】
Lw及びLssは、端末局4との通信用のアンテナで使用されるビームパタンの更新の間隔(又は頻度)に影響を与えるパラメータの一つである。Lw及びLssは小さすぎて
も大きすぎても通信が安定しなくなってしまう。例えば、端末局4の移動速度を考慮したり、シンボル単位で取得される最大SINRのビームパタンと当該ビームパタンにおけるSINRとを考慮したりすることで、Lw及びLssを適切な値に設定することができ、安定した通信を提供することができる。
【0111】
図12は、第1実施形態に係る通信システム100におけるビームパタンの更新処理のシミュレーション結果の一例である。
図12に示されるグラフは、横軸をシンボル(時間)、縦軸を各シンボルにおいてSINRが最大となるビームパタンのビーム方向の角度とする。
図12に示される例では、各シンボルにおける、端末局4の位置に対するビーム方向の角度、シンボル単位で最大SINRのビームパタンに更新した場合の使用ビームパタンのビーム方向の角度、(1)移動平均ウィンドウを用いる方法でビームパタンを更新した場合の使用ビームパタンのビーム方向の角度、及び、(2)スイッチアンドステイを用いる方法でビームパタンを更新した場合の使用ビームパタンのビーム方向の角度、が示されている。
【0112】
いずれの方法によるビームパタンの更新のシミュレーションでも、端末局4の移動速度及び経路、中継局3の送信電力、及び、端末局4と中継局3間の伝搬路特性等の条件は同一である。
【0113】
シンボル単位でビームパタンを更新した場合の使用ビームパタンのビーム方向の角度に対する、それぞれのビームパタンの更新方法による各シンボルにおける角度の平均誤差は、シンボル単位で最大SINRのビームパタンに更新した場合は4.75度、(1)移動平均ウィンドウを用いる方法でビームパタンを更新した場合は2.32度、(2)スイッチアンドステイを用いる方法でビームパタンを更新した場合は2.53度であった。したがって、シンボル単位で最大SINRのビームパタンに更新した場合よりも、(1)移動平均ウィンドウを用いる方法、及び、(2)スイッチアンドステイを用いる方法でビームパタンを更新した方が、ビーム方向の平均誤差が小さく、より安定した品質で非再生中継による通信を提供することができる。
【0114】
<第1実施形態の作用効果>
第1実施形態によれば、中継局3の端末局4との通信用の複数のアンテナのビームパタンを1又は複数のシンボル単位で更新することができる。これによって、端末局4が高速で移動する場合でも、安定的に非再生中継による通信を提供することができる。また、ビームパタンの更新はシンボル単位で算出されるビームパタン集合P_(j,R)に含まれる各ビームパタンについてのSINRに基づいて行われる。さらに、ビームパタン集合P_(j,R)は、あるスロットにおいて最大SINRとなるビームパタンに基づいて取得される。ビームパタンにおけるSINRは、中継局3における非再生中継によって発生する自己干渉の影響も考慮されて算出されている。したがって、第1実施形態によれば、中継局3における非再生中継による自己干渉の影響も考慮されるので、ビームパタンにおけるSINRをより正確に取得することができる。これによって、通信を安定的に継続可能なSINRを得られることを担保するビームパタンで使用ビームパタンを更新することができる。
【0115】
<第2実施形態>
第1実施形態では、中継局3は、制御装置1からビームパタン集合P_(j,R)の通知を受けた後、終了条件が満たされるまで、当該通知されたビームパタン集合P_(j,R)を用いてビームパタン更新処理を実行する。第2実施形態では、中継局3に割り当てられるビームパタン集合P_(j,R)は、シンボル単位で算出される、当該ビームパタン集合P_(j,R)に含まれるビームパタンの内の最大SINRとなるビームパタンに基づいて更新される。第2実施形態では第1実施形態と共通する説明については省略され
る。
【0116】
図13は、第2実施形態に係る通信システム100における中継局3のビームパタン更新に係る処理のシーケンスの一例を示す図である。第2実施形態においても、通信システム100のシステム構成、制御装置1、基地局2、中継局3、及び、端末局4の構成は第1実施形態と同様である。第2実施形態では、S1において中継局3によってSINRが最大となるビームパタンの処理が行われ、S2において制御装置1によって中継局3に割り当てるビームパタン集合の決定処理が実行されるまでは第1実施形態と同様である。
【0117】
第2実施形態では、制御装置1からビームパタン集合の通知後、S3-1において、中継局3は、ビームパタン更新処理を実行し、所定のタイミングで、SINRが最大となるビームパタンを制御装置1に通知する。S4では、制御装置1は、中継局3から通知されたSINRが最大となるビームパタンに基づいて、中継局3に割り当てるビームパタン集合を更新するビームパタン集合更新処理を実行する。第2実施形態では、ビームパタン更新処理の終了条件が満たされるまで、S3-1とS4との処理が中継局3と制御装置1とによって繰り返し行われる。
【0118】
図14は、第2実施形態における中継局3のビームパタン更新処理のフローチャートの一例である。
図14に示される処理は、
図13のS3-1において実行される処理である。
図14に示される処理は、所定の周期で繰り返し実行される。
図14では、
図9の第1実施形態におけるビームパタン更新処理と同じ処理には同じ符号が付されている。
【0119】
OP31からOP37までの、制御装置1からビームパタン集合P_(j,R)(s)を受信し、上り回線スロットの各シンボルにおいて、ビームパタン集合P_(j,R)(s)に含まれる各ビームパタンについてSINRを算出して、次に使用するビームパタンp_(j,next)を決定する処理は、第1実施形態と同様である。
【0120】
OP311では、制御部32は、上り回線スロットの終了のシンボルか否かを判定する。上り回線スロットの終了のシンボルである場合には(OP311:YES)、処理がOP312へ進む。上り回線スロットの終了のシンボルでない場合には(OP311:NO)、処理がOP32へ進む。
【0121】
OP312では、制御部32は、当該上り回線スロットにおける各シンボルにおいて、ビームパタン集合P_(j,R)(s)に含まれるビームパタンのうち、最大SINRとなる回数(又は頻度)が最も多かったビームパタンp_(j,max)(s)と当該ビームパタンに対する最大SINRとを制御装置1へ通知する。
【0122】
OP313では、制御部32は、制御装置1からビームパタン集合P_(j,R)(s)を受信したか否かを判定する。制御装置1からビームパタン集合P_(j,R)(s)が受信された場合には(OP313:YES)、処理がOP314へ進む。制御装置1からビームパタン集合P_(j,R)(s)が受信されていない場合には(OP313:NO)、制御部32は待機状態となる。例えば、所定時間経過しても制御装置1からビームパタン集合P_(j,R)(s)が受信されない場合には、制御部32は処理をOP32へ進めてもよい。
【0123】
OP314では、制御部32は、ビームパタン集合P_(j,R)(s)を制御装置1から受信したビームパタン集合P_(j,R)(s)に更新する。また、次のシンボルで使用するビームパタンp_(j,next)を、制御装置1から受信したビームパタン集合P_(j,R)(s)に含まれるビームパタンp_(j,R)(s)に更新する。その後、処理がOP38へ進む。
【0124】
終了条件が満たされない場合には(OP38:NO)、その直後のシンボルの開始で、使用ビームパタンp_(j,curt)が、OP314で受信されたビームパタン集合P_(j,R)(s)に含まれるビームパタンp_(j,R)(s)に更新されて、非再生中継が行われる。なお、
図14に示される第2実施形態における中継局3のビームパタン更新処理は一例であって、これに限定されない。例えば、OP312において制御装置1へ通知されるビームパタンは、上り回線スロットの最後のシンボルにおいて最大SINRとなるビームパタンであってもよい。
【0125】
(制御装置1における中継局3へ割り当てるビームパタン集合の更新処理)
図15は、第2実施形態におけるビームパタン集合の更新処理において用いられる複数のビームパタンの関係の一例を示す図である。
図15に示される例は、方位角方向のビームパタンを示す。
【0126】
図15では、s番目のスロットにおいて、中継局3からの最大SINRとなるビームパタンp_(j,max)(s)の通知を制御装置1が受信したことを想定する。この1回前の通知は、s-Δs1番目のスロットで発生したことを想定する。また、次回の通知は、s+Δs2番目のスロットで行われる予定であることを想定する。s-Δs1番目のスロットで通知されたビームパタンはp_(j,max)(s-Δs1)とする。s+Δs2番目のスロットで通知されたビームパタンは、p_(j,max)(s+Δs2)とする。
【0127】
第2実施形態では、制御装置1は、ビームパタンp_(j,max)(s-Δs1)からビームパタンp_(j,max)(s)への変化に基づいて、中心となるビームパタンp_(j,R)(s)と、ビーム方向の角度の範囲を定義するθ_(j,R)と、ビームパタン間のステップ幅Δθ_(j,R)と、を設定する。制御装置1は、中継局3に対して最大SINRとなるビームパタンの通知タイミングを指示しているので、当該通知が行われるスロットを把握している。
【0128】
まず、ビームパタンp_(j,max)(s-Δs1)からビームパタンp_(j,max)(s)へのビーム方向の角度の変化量をΔφ_(j,m)とする。s-Δs1番目のスロットからs番目のスロットまでの時間長をΔT_(j,m)とする。Δφ_(j,m)をΔT_(j,m)で割ると、最大SINRとなるビームパタンのビーム方向の単位時間当たりの変化量を得ることができる。最大SINRとなるビームパタンのビーム方向の単位時間当たりの変化量に、s番目のスロットからs+Δs2番目のスロットまでの時間長ΔT_(j,e)を乗じると、ビームパタンp_(j,max)(s)からビームパタンp_(j,max)(s+Δs2)へのビーム方向の角度の変化量の推定値を得ることができる。第2実施形態では、s番目のスロットからs+Δs2番目のスロットまでの間に、最大SINRとなるビームパタンのビーム方向が変化すると推定される範囲を、ビーム方向の角度の範囲を定義するθ_(j,R)として設定する。すなわち、第2実施形態では、θ_(j,R)は、以下の式3で求めることができる。
【数3】
【0129】
ビームパタン集合P_(j,R)(s)に含まれる複数のビームパタンは、ビーム方向の角度の範囲θ_(j,R)内でビーム方向が等間隔で収まるように設定される。したがって、ステップ幅Δθ_(j,R)は、以下の式4のように、θ_(j,R)を、s番目のスロットからs+Δs2番目のスロットの間に含まれるシンボル数Nsymで割って求めることができる。
【数4】
【0130】
中心となるビームパタンp_(j,R)(s)は、中継局3からビームパタンp_(j,max)(s)が通知されてから、制御装置1から中継局3へビームパタン集合P_(j,R)(s)に関する情報が通知されて、中継局3においてビームパタン更新処理に用いられるまでの時間の間に、最大SINRとなるビームパタンのビーム方向の角度が変化すると予測される変化量を考慮して求められる。中継局3から制御装置1へのビームパタンの通知は上り回線を用いて行われるが、制御装置1から中継局3へのビームパタン集合P_(j,R)(s)に関する情報の通知は下り回線を用いて行われる。したがって、制御装置1から中継局3へビームパタン集合P_(j,R)(s)に関する情報が通知されるスロットは、中継局3からビームパタンが通知されるs番目のスロットの後の最初の下り回線スロットとなる。当該下り回線スロットを、s+Δs3番目のスロットとする。s番目のスロットからs+Δs3番目のスロットまでの間に変化すると予測されるビームパタンのビーム方向の角度の変化量は、ビームパタンp_(j,max)(s)をs+Δs3番目における最大SINRとなると予測されるビームパタンとして用いる際のオフセットとも言える。s番目のスロットからs+Δs3番目のスロットまでの間に変化すると予測されるビームパタンのビーム方向の角度の変化量をΔθoffset(s+Δs3)とすると、Δθoffset(s+Δs3)は、最大SINRとなるビームパタンのビーム方向の単位時間当たりの変化量を用いて、以下の式5で示される。Tslotは1スロットの時間長とする。
【数5】
【0131】
そうすると、s+Δs3番目のスロットにおいてSINRが最大となるビームパタンは、s番目のスロットにおいてSINRが最大のビームパタンp_(j,max)(s)の
ビーム方向をΔθoffset(s+Δs3)移動させたビームパタンとして予測される。したがって、第2実施形態では、s+Δs3番目のスロットにおいてSINRが最大となると予測されるビームパタンを、中心となるビームパタンp_(j,R)(s)とする。第2実施形態における中心となるビームパタンp_(j,R)(s)は以下の式6で示される。
【数6】
【0132】
図16は、第2実施形態におけるビームパタン集合の更新処理におけるタイムチャートの一例を示す図である。
図16では、スロットの上り回線と下り回線の割り当ての一例が示されている。
図16において、「U」のスロットは上り回線のスロットであることが示される。「D」のスロットは下り回線のスロットであることが示される。
【0133】
図16に示されるタイムチャートにおけるs-Δs1番目、s番目、s+Δs3番目、及び、s+Δs2番目のスロットは、それぞれ、
図15において説明されたスロットと対応している。1つのスロットの時間長がTslotである。s-Δs1番目のスロットからs番目のスロットまでの時間長ΔT_(j,m)は、スロット数Δs1×Tslotで求められる。s番目のスロットからs+Δs3番目のスロットまでの時間長ΔT_(j,e)は、スロット数Δs2×Tslotで求められる。
【0134】
s番目のスロットは上りスロットである。s番目のスロットにおいて、中継局3は、端末局4からの受信信号に基づいて、ビームパタン集合P_(j,R)(s-Δs1)に含まれる各ビームパタンのうちの最大SINRとなるビームパタンp_(j,max)(s)を取得し、制御装置1へ通知する(
図14のOP312)。制御装置1は、s番目より前のs-Δs1番目の上りスロットにおいて中継局3から通知されたビームパタンp_(j,max)(s-Δs1)とビームパタンp_(j,max)(s)から、ビームパタン集合P_(j,R)(s)を
図15で説明されたように取得する。
【0135】
s番目のスロットの後の下り回線のスロットは、s+Δs3番目のスロットである。制御装置1は、s+Δs3番目の下り回線スロットにおいて、ビームパタン集合P_(j,R)(s)に関する情報を中継局3へ通知する。中継局3は、制御装置1から受信したビームパタン集合P_(j,R)(s)を受信し(
図14のOP313)、ビームパタン集合を更新して(
図14のOP314)、ビームパタン更新処理を実行する。
【0136】
なお、
図14では、中継局3は、上り回線スロットの終了の度に、当該スロットにおいて最大SINRとなるビームパタンの通知が実行することになっているが、中継局3からのビームパタンの通知のタイミングはこれに限定されない。
図16に示されるように、中継局3からのビームパタンの通知のタイミングは上り回線スロットの終了の度でなくてもよい。また、
図15及び
図16に示される、ビームパタン集合P_(j,R)に関する情報には、ビームパタンp_(j,R)(s)、ビーム方向の角度の範囲θ_(j,R)、及び、ステップ幅Δθ_(j,R)の設定方法は一例であって、
図15及び
図16に示される例に限定されない。例えば、ビームパタンp_(j,R)(s)は、ビーム方向の角度にΔθoffsetを加算せずに、s番目のスロットにおいて中継局3から通知されるビームパタンp_(j,max)(s)そのものに設定されてもよい。
【0137】
図17は、第2実施形態における制御装置1のビームパタン集合更新処理のフローチャートの一例である。
図17に示される処理は、所定の周期で繰り返し実行される。
図17に示される処理の実行主体は、制御装置1のCPU 11であるが、便宜上、制御装置1
を主体として説明する。
【0138】
OP41では、制御装置1は、中継局3から、無線フレーム内のs番目の上り回線スロットにおいて最大SINRとなるビームパタンp_(j,max)(s)と当該ビームパタンp_(j,max)(s)におけるSINRとの通知を受信したか否かを判定する。中継局3からビームパタンp_(j,max)(s)と当該ビームパタンp_(j,max)(s)におけるSINRとの通知が受信された場合には(OP41:YES)、処理がOP42へ進む。中継局3からビームパタンp_(j,max)(s)と当該ビームパタンp_(j,max)(s)におけるSINRとの通知が受信されていない場合には(OP41:NO)、
図17に示される処理が終了する。
【0139】
OP42では、制御装置1は、中継局3から通知されたSINRが閾値以上であるか否かを判定する。中継局3から通知されたSINRが閾値以上である場合には(OP42:YES)、処理がOP43へ進む。中継局3から通知されたSINRが閾値未満である場合には(OP42:NO)、
図17に示される処理が終了する。
【0140】
OP43では、制御装置1は、式3に従って、ビーム方向の角度の範囲θ_(j,R)を取得する。OP44では、制御装置1は、式4に従って、ステップ幅Δθ_(j,R)を取得する。OP45では、制御装置1は、式5に従って、オフセットΔθoffsetを取得する。OP46では、制御装置1は、式6に従って、ビームパタンp_(j,R)(s)を取得する。
【0141】
OP47では、制御装置1は、ビームパタン集合P_(j,R)に関する情報を中継局3へ通知する。ビームパタン集合P_(j,R)に関する情報には、ビームパタンp_(j,R)(s)、ビーム方向の角度の範囲θ_(j,R)、及び、ステップ幅Δθ_(j,R)が含まれる。その後、
図17に示される処理が終了する。
【0142】
第2実施形態では、制御装置1は、中継局3から通知されるSINRが最大であるビームパタンの変化に基づいて、中継局3に割り当てるビームパタン集合P_(j,R)を更新する。これによって、中継局3に割り当てられるビームパタン集合P_(j,R)に含まれる複数のビームパタンも端末局4の移動に応じて更新されることになる。当該ビームパタン集合P_(j,R)の中から選択されたビームパタンで使用ビームパタンp_(j,curt)が更新されるので、更新後の使用ビームパタンp_(j,curt)を用いることによって、端末局4の移動による位置の変化に応じて、より安定的で、且つ、SINRの値がより大きな通信を提供することができる。
【0143】
また、第2実施形態では、ビームパタン集合P_(j,R)に含まれるビームパタンp_(j,R)(s)は、制御装置1から中継局3への通知による時間差を考慮して、オフセットΔθoffsetを用いて取得される。中継局3は、ビームパタン集合P_(j,R)の受信後、当該ビームパタンp_(j,R)(s)を用いて非再生中継を行うので、当該非再生中継におけるSINRが最大になる可能性が高くなり、より品質のよい通信を提供することができる。
【0144】
<その他の実施形態>
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。
【0145】
第1実施形態及び第2実施形態では、制御装置1が中継局3に割り当てるビームパタン集合を決定した。これに代えて、基地局2が中継局3に割り当てるビームパタン集合を決定してもよい。この場合には、基地局2は、第1実施形態及び第2実施形態における制御
装置1が実行する処理を制御装置1の代わりに実行する。または、中継局3自身が単独でビームパタン集合を決定して、ビームパタンの更新を行ってもよい。この場合には、中継局3自身が、例えば、
図8又は
図17の、制御装置1との通信に係る処理以外の処理も実行する。中継局3自身がビームパタン集合を決定する場合には、中継局3と制御装置1との通信遅延が発生しないので、中継局3はより早くビームパタン集合を取得することができる。
【0146】
第1実施形態及び第2実施形態では、中継局3の端末局4との通信用のアンテナのビームパタンのビーム方向の角度は、方位角方向のみ取り扱われていたが、ビーム方向の角度は方位角方向と仰角方向の2つの方向で取り扱われてもよい。この場合には、ビーム方向の角度を示すパラメータとして、方位角方向の角度θに加えて、仰角方向の角度φも用いられることとなる。なお、ビーム方向の角度に仰角方向の角度φが加わっても、第1実施形態及び第2実施形態で説明されたロジックに変更はない。
【0147】
第1実施形態及び第2実施形態では、可変なウェイトを用いることで電気的にビームフォーミングを行う複数のアンテナ素子を備える中継局が中継局3として想定されている。これに限定されず、例えば、1又は複数のシンボル単位で物理的に向きを変えることが可能であれば、機械的に向きを変えるアンテナを備える中継局を中継局3として採用することも可能である。
【0148】
また、本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【0149】
また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。あるいは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成(サーバ構成)によって実現するかは、柔軟に変更可能である。
【0150】
本開示は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク、ブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、または光学式カードのような、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0151】
1・・制御装置
2・・基地局
3・・中継局
4・・端末局
11・・CPU
12・・主記憶装置
13・・外部記憶装置
16・・通信装置
21・・無線機
22・・制御回路
31・・無線機
32・・制御部
33・・自己干渉除去部
34・・ベースバンド回路
41・・無線機
42・・制御回路
100・・通信システム
311・・送受切替スイッチ
312・・送信機
313・・受信機