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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116716
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】スポンジシート
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20240821BHJP
   B60R 13/08 20060101ALI20240821BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20240821BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20240821BHJP
   B29C 44/20 20060101ALI20240821BHJP
   B29C 48/00 20190101ALI20240821BHJP
   B29C 48/07 20190101ALI20240821BHJP
   B29C 48/30 20190101ALI20240821BHJP
   D06N 7/00 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CEQ
C08J9/04 CER
B60R13/08
B60J5/00 501E
B29C44/00 E
B29C44/20
B29C48/00
B29C48/07
B29C48/30
D06N7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022488
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】友安 伸吾
(72)【発明者】
【氏名】宮田 知範
【テーマコード(参考)】
3D023
4F055
4F074
4F207
4F214
【Fターム(参考)】
3D023BA02
3D023BA03
3D023BA08
3D023BB16
3D023BB21
3D023BB29
3D023BB30
3D023BC01
3D023BD03
3D023BE03
4F055AA23
4F055BA03
4F055DA02
4F055FA04
4F055GA18
4F055GA26
4F074AA05
4F074AA25
4F074BA00
4F074CA22
4F074CC08Y
4F074DA24
4F074DA35
4F207AA45
4F207AB02
4F207AG02
4F207AG05
4F207AG20
4F207AH26
4F207AR12
4F207KA01
4F207KA11
4F207KL63
4F214AA45
4F214AB02
4F214AF01
4F214AG01
4F214AG05
4F214AG20
4F214AH26
4F214UB02
4F214UB29
4F214UP51
(57)【要約】
【課題】複数のスポンジシートを重ねて保管してもスポンジシート同士を貼りつき難くし、所望枚数のスポンジシートを上から取る際の作業性を向上させる。
【解決手段】ゴム又は熱可塑性エラストマーを押出成形してなるスポンジシート1には、厚み方向一方の面1aから突出して所定方向に延びるリブ10が所定ピッチで複数本形成されている。リブ10の高さをhとし、リブ10のピッチをxとし、リブ10の外面を構成する円弧面の半径をRとした時、12.595+(-9.5×h)+(-38.1×R)+(16.7×x)>0の関係を満たすように、リブ10の高さ、リブ10のピッチ、リブ10の外面を構成する円弧面の半径が設定されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム又は熱可塑性エラストマーを押出成形してなるスポンジシートであって、
厚み方向一方の面から突出して所定方向に延びるリブが所定ピッチで複数本形成され、
前記リブの高さをhとし、
前記リブのピッチをxとし、
前記リブの外面を構成する円弧面の半径をRとした時、
12.595+(-9.5×h)+(-38.1×R)+(16.7×x)>0の関係を満たすことを特徴とするスポンジシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば合成ゴム等を発泡させてなるスポンジシートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、自動車に使用されるスポンジシートが開示されている。特許文献1のスポンジシートの比重は、0.08以下に設定されている。また、特許文献1のスポンジシートの断面形状は、下底の長さよりも上底の長さが短い台形部が複数隣接した状態で一体成形された形状となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-13061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のようなスポンジシートを使用する前段階で、複数のスポンジシートを重ねた状態にしてしばらく保管しておき、使用する際にスポンジシートを上から取って使用する場合がある。このとき、保管中に上下のスポンジシートが貼りついてしまうことがあり、上下のスポンジシートが貼りついていると、上のスポンジシートを取ろうとして持ち上げた時に下のスポンジシートも一緒に持ち上がることになる。こうなると所望枚数のスポンジシートを取ることができなくなるので、下のスポンジシートを上のスポンジシートから剥がさなければならず、手間がかかり、作業性が悪い。特に重量の影響で下へ行くほど強く貼りついてしまうので、スポンジシートを上から取るという簡単な作業であるにも関わらず、剥がす作業が付随することになり、その作業に要する工数が増大してしまう。
【0005】
この点、特許文献1では、台形部が複数隣接しているので、上面には複数の溝が形成されることになり、上のスポンジシートと下のスポンジシートとの接触面積を少なくすることができる。しかし、台形部の上底部分は平坦面で構成されているので、上のスポンジシートに貼りつき易く、下のスポンジシートを上のスポンジシートから剥がす作業が必要になる。
【0006】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、複数のスポンジシートを重ねて保管してもスポンジシート同士を貼りつき難くし、所望枚数のスポンジシートを上から取る際の作業性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、ゴム又は熱可塑性エラストマーを押出成形してなるスポンジシートを前提とすることができる。スポンジシートの厚み方向一方の面から突出して所定方向に延びるリブが所定ピッチで複数本形成されている。前記リブの高さをhとし、前記リブのピッチをxとし、前記リブの外面を構成する円弧面の半径をRとした時、12.595+(-9.5×h)+(-38.1×R)+(16.7×x)>0の関係を満たすように、前記リブの高さh、前記リブのピッチx、及び前記リブの外面を構成する円弧面の半径Rが設定されている。
【0008】
この構成によれば、スポンジシートの厚み方向一方の面に複数本のリブが形成されることになる。このリブは押出成形時に一体成形することが可能であり、上記関係を満たすようにリブの高さ、リブのピッチ及びリブの外面を構成する円弧面の半径を設定することで、複数枚のスポンジシートを重ねた状態でしばらく保管していても、スポンジシート同士が貼りつき難くなる。
【0009】
また、リブはスポンジシートから突出した部分であることから、スポンジシートに要求される防音性能等を高める上では無駄な部分になる場合がある。本構成では、上記関係を満たすようにリブの高さ、リブのピッチ及びリブの外面を構成する円弧面の半径を設定しているので、貼りつきを抑制可能なリブの高さが必要以上に高くなることはなく、無駄な部分を少なくできる。
【0010】
前記リブの高さhは0.6mm以上とすることができる。これにより、貼りつきの抑制効果がより一層高まる。また、前記リブの外面を構成する円弧面の半径Rは1.0mm以上1.3mm以下とすることができる。また、前記リブのピッチxは2.1mm以上とすることができる。また、スポンジシートの比重は0.08以下とすることができる。また、スポンジシートは、例えばEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等の材料を口金から押し出すことによって得られる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、スポンジシートの厚み方向一方の面に複数のリブを形成し、リブの高さ、リブのピッチ、リブの外面を構成する円弧面の半径を、所定の関係を満たすように設定したので、複数のスポンジシートを重ねて保管してもスポンジシート同士を貼りつき難くなり、所望枚数のスポンジシートを上から取る際の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係るスポンジシートの使用例を示す図である。
図2】スポンジシートの斜視図である。
図3】スポンジシートの拡大断面図である。
図4】押出成形時に使用される口金の拡大図である。
図5】スポンジシートを重ねて保管している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係るスポンジシート1の使用例を示す図である。図1では、スポンジシート1がドアホールシール材として使用される場合について示している。すなわち、自動車に設けられるドア100は、車室外側に位置するアウタパネル101と、車室内側に位置するインナパネル102とを備えている。アウタパネル101とインナパネル102との間には、ウインドレギュレータ等(図示せず)が配設される空間Rが形成されている。インナパネル102には、ドアホール102aが形成されており、ドアホール102aを介してウインドレギュレータ等の修理や交換を行うことができるようになっている。
【0015】
スポンジシート1は、インナパネル102の車室内側に取り付けられている。例えば、合成樹脂フィルム及びブチルゴムシール剤を介してスポンジシート1をインナパネル102に貼りつけることができる。スポンジシート1によりドアホール102aが閉塞されるようになっている。符号103は、ドアトリムを示している。ドアトリム103によりインナパネル102及びスポンジシート1が車室内側から覆われる。尚、スポンジシート1は、ドアホールシール材以外の用途で使用することもでき、自動車の内装材に取り付けたり、車体パネル等に取り付けたりすることもできる。
【0016】
図2は、スポンジシート1の斜視図である。スポンジシート1は、ゴム又は熱可塑性エラストマーを押出成形してなるものである。ゴムとしては、例えばEPDM等を挙げることができ、熱可塑性エラストマーとしては、例えばTPO等を挙げることができるが、これに限られるものではない。また、スポンジシート1を押出成形する際には、材料を発泡剤によって発泡させている。材料の発泡倍率を変えることで、スポンジシート1の比重をコントロールすることができ、本実施形態では、スポンジシート1の比重が0.08以下となるように材料の発泡倍率を設定している。スポンジシート1が押出成形されているので、当該スポンジシート1の表面には、非発泡、即ち気泡を有さない表皮層が形成されることになる。
【0017】
スポンジシート1は、複数のリブ10を有している。すなわち、スポンジシート1の厚み方向一方の面1aには、当該一方の面1aから突出して所定方向に延びるリブ10が所定ピッチで複数本形成されている。リブ10の外面は円弧面で構成されている。複数のリブ10は、材料の押出成形時に成形される部分であることから、材料の押出方向に沿って互いに平行に延びている。一方、スポンジシート1の厚み方向他方の面1bは平坦面で構成されている。
【0018】
図3は、スポンジシート1をリブ10の長手方向に直交する方向に切断したときの断面を示しており、この図では気泡を省略しているが、多数の気泡が表皮層を除く部分に存在している。各中心線200は、各リブ10の幅方向中心を通ってスポンジシート1の厚み方向に延びる直線である。リブ10の幅方向とは、リブ10の長手方向と直交する方向であり、図3の左右方向となる。
【0019】
図3に示すように、リブ10の高さをh、リブ10のピッチをx、リブ10の外面を構成する円弧面の半径をRとする。リブ10の高さhは、スポンジシート1の一方の面1aからリブ10の突出方向先端までの寸法である。リブ10のピッチxは、あるリブ10の幅方向中心と、そのリブ10の隣に位置する別のリブ10の幅方向中心との距離であり、リブの中心間距離(中心線200間距離)ということもできる。また、リブ10の外面は上述したように円弧面で構成されており、この円弧面の中心Oは、リブ10の幅方向中心を通ってスポンジシート1の厚み方向に延びる中心線200上に位置している。中心Oとリブ10の先端部の円弧面との距離が上記半径Rとなる。
【0020】
リブ10の高さh、リブ10のピッチx、及びリブ10の外面を構成する円弧面の半径Rは、12.595+(-9.5×h)+(-38.1×R)+(16.7×x)>0(式1)の関係を満たすように設定されている。一例を挙げると、リブ10の高さhは0.6mm以上とすることができ、上限は1.0mm以下とすることができる。また、リブ10の外面を構成する円弧面の半径Rは1.0mm以上1.3mm以下とすることができる。また、リブ10のピッチxは2.1mm以上とすることができ、上限は2.6mm以下とすることができる。リブ10のピッチxが2.6mmでリブ10の高さhが0.6mmの場合、リブ10の外面を構成する円弧面の半径Rが1.3mmでは、隣合うリブ10の円弧面が終わった箇所同士が重ならないが、半径Rが1.3mmを超えると、隣合うリブ10の円弧面が終わった箇所同士が重なることで、隣合うリブ10の間の谷になる部分が浅くなっていくので、リブ10の高さが低くなってしまう。よって、リブ10のピッチx、及びリブ10の外面を構成する円弧面の半径Rは、上記寸法とするのが好ましい。
【0021】
また、隣合うリブ10間の距離Aは、あるリブ10の円弧面が終わった箇所と、そのリブ10の隣に位置する別のリブ10の円弧面が終わった箇所との距離である。隣合うリブ10間の距離Aは、例えば0mm以上0.5mm以下とすることができる。また、スポンジシート1の厚みTは、厚み方向一方の面1aと他方の面1bとの距離であり、リブ10の高さは含まない。スポンジシート1の厚みTは、例えば2mm以上10mm以下とすることができる。
【0022】
図4は、スポンジシート1を押出成形する時に使用される口金300を示している。口金300は、材料が押し出される開口301を形成する部材であり、開口301の周縁部は、スポンジシート1の厚み方向他方の面1bの面を成形するための直線部301aと、スポンジシート1の厚み方向一方の面1aのリブ10を成形するための複数の凹部301bとを有している。
【0023】
凹部301bの深さ方向の寸法Bは、例えば1.4mm以上1.8mm以下で設定することができる。凹部301bの円弧面の半径rは、0.7mm以上1.0mm以下で設定することができる。このような寸法設定を行うことで、各部の寸法が上述した寸法となるようにスポンジシート1を押出成形することができる。特に、半径rを0.7mm以上とすることで、材料を凹部301b内に流れ込ませることができるので、リブ10の成形不良が発生しにくくなる。半径rを1.0mmよりも大きくすると、成形後のリブ10が狙い通りの高さにならなくなるので、半径rは1.0mm以下にするのが好ましい。
【0024】
上記式1は、各リブ10の高さが狙い通りとなるようにするための式である。この式1の関係を満たすように各部の寸法を設定することで、隣合うリブ10の間の谷が浅くなる(リブ10が低くなる)ことはない。例えば、リブ10の外面を構成する円弧面の半径Rが1.0mmの場合、リブ10の最小ピッチxは2.1mmとすることができ、すなわち、リブ10の外面を構成する円弧面の半径Rが1.0mmの場合、リブ10のピッチxは、2.1mm以上2.6mm以下の範囲に設定する。
【0025】
上記式1は、各要素(リブ10の高さh、リブ10のピッチx、リブ10の外面を構成する円弧面の半径R)を変えて実際に作図し、隣合うリブ10同士の接触有無を確認したデータを複数揃えた後、それらデータを判別分析することによって求めたものである。
【0026】
また、1つの口金300が有する凹部301bの数により、1枚のスポンジシート1に形成されるリブ10の数が決定される。本実施形態では、スポンジシート1の幅が740mmであるとした場合、その1枚のスポンジシート1に形成されるリブ10が200本以上となるように、凹部301bの数が設定されている。1枚のスポンジシート1に形成されるリブ10の上限数は、360本以下に設定されている。
【0027】
図5は、複数枚のスポンジシート1を重ねた状態で保管している状態を示している。スポンジシート1を重ねる際には、リブ10が上に位置するように全てのスポンジシート1の向きを決めておく。したがって、下に位置するスポンジシート1のリブ10が、その上に位置するスポンジシート1の厚み方向他方の面1bに接触することになる。スポンジシート1の枚数が数十枚以上になると、下側に位置するスポンジシート1にかかる荷重が大きくなる。本実施形態では、スポンジシート1のリブ10が接触しており、かつ、そのリブ10の高さh、リブ10のピッチx、リブ10の外面を構成する円弧面の半径Rを上述したように設定しているので、上のスポンジシート1と下のスポンジシート1との接触面積を小さく維持できる。これにより、複数のスポンジシート1を重ねて保管してもスポンジシート1同士が貼りつき難くなり、所望枚数のスポンジシート1を上から取る際の作業性を向上させることができる。
【0028】
所望枚数は1枚であってもよいし、3~4枚程度であってもよい。例えば重ねて保管していたスポンジシート1を上から取り、取ったスポンジシート1に打ち抜き作業を行う場合、上から4枚のスポンジシート1を一度に取った後、打ち抜き装置(図示せず)まで運び、4枚のスポンジシート1に対して一度に打ち抜き作業を行うことができる。このとき、上から5枚目のスポンジシート1が4枚目のスポンジシート1の下面に貼りついていないので、4枚のスポンジシート1のみを簡単にかつ素早く取ることができる。1枚のスポンジシート1を取る場合も同様である。
【0029】
また、リブ10はスポンジシート1から突出した部分であることから、スポンジシート1に要求される防音性能等を高める上では無駄な部分になる場合がある。本実施形態では、上記式1を満たすようにリブ10の高さh、リブ10のピッチx及びリブ10の外面を構成する円弧面の半径Rを設定しているので、貼りつきを抑制可能なリブ10の高さが必要以上に高くなることはなく、無駄な部分を少なくできる。
【0030】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。図示しないが、スポンジシート1の厚み方向他方の面1bにリブを形成してもよい。図5に示すスポンジシート1を上下反転させて重ねてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上説明したように、本発明に係るスポンジシートは、例えば複数枚を重ねた状態で保管しておく場合に利用できる。
【符号の説明】
【0032】
1 スポンジシート
1a 厚み方向一方の面
10 リブ
図1
図2
図3
図4
図5