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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116722
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】バイタルセンサ
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/02 20060101AFI20240821BHJP
   G01B 7/16 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
A61B5/02 310M
G01B7/16 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022499
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】浅川 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】足立 重之
(72)【発明者】
【氏名】湯口 昭代
(72)【発明者】
【氏名】北村 厚
【テーマコード(参考)】
2F063
4C017
【Fターム(参考)】
2F063AA25
2F063BA29
2F063BB01
2F063CA31
2F063DA02
2F063DC08
2F063EC06
2F063EC14
2F063EC22
2F063EC24
4C017AA09
4C017AC03
4C017EE01
4C017FF15
(57)【要約】
【課題】防汚対策や防水対策を施したバイタルセンサを提供する。
【解決手段】本バイタルセンサは、使用時に被験者側となる一方の面、及び前記一方の面とは反対側に位置する他方の面を備えた起歪体と、前記一方の面を被覆するゲル状粘着剤と、前記他方の面に設けられたひずみゲージと、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用時に被験者側となる一方の面、及び前記一方の面とは反対側に位置する他方の面を備えた起歪体と、
前記一方の面を被覆するゲル状粘着剤と、
前記他方の面に設けられたひずみゲージと、を有する、バイタルセンサ。
【請求項2】
使用時に被験者側となる一方の面、及び前記一方の面とは反対側に位置する他方の面を備えた起歪体と、
前記他方の面に設けられたひずみゲージと、
前記他方の面に設けられ、前記ひずみゲージを被覆するゲル状粘着剤と、を有する、バイタルセンサ。
【請求項3】
前記他方の面に設けられ、前記ひずみゲージを被覆する保護部材を有する、請求項1に記載のバイタルセンサ。
【請求項4】
前記保護部材は、ゲル状粘着剤である、請求項3に記載のバイタルセンサ。
【請求項5】
前記起歪体は、金属製である、請求項1、3、又は4に記載のバイタルセンサ。
【請求項6】
前記起歪体は、
基部と、
前記基部の内側を橋渡しする梁部と、
前記梁部に設けられた負荷部と、を有し、
前記ひずみゲージは、前記梁部に設けられている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のバイタルセンサ。
【請求項7】
前記梁部は、平面視で十字状に交差する2本の梁を有し、
前記梁の交差する領域に、前記負荷部が設けられている、請求項6に記載のバイタルセンサ。
【請求項8】
前記ひずみゲージを4つ備え、
4つの前記ひずみゲージのうちの2つは、第1方向を長手方向とする前記梁の前記負荷部に近い側に、平面視で前記負荷部を挟んで対向するように配置され、
4つの前記ひずみゲージのうちの他の2つは、前記第1方向と直交する第2方向を長手方向とする前記梁の前記基部に近い側に、平面視で前記負荷部を挟んで対向するように配置されている、請求項7に記載のバイタルセンサ。
【請求項9】
前記ひずみゲージは、検出素子としてCr混相膜から形成された抵抗体を有する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のバイタルセンサ。
【請求項10】
使用時に被験者側となる一方の面、及び前記一方の面とは反対側に位置する他方の面を備えた起歪体と、
前記一方の面を被覆するゲル状粘着剤と、
前記他方の面に設けられた検出部と、を有し、
前記検出部は、前記起歪体の変形及び/又は前記起歪体にかかる圧力を検出する、バイタルセンサ。
【請求項11】
使用時に被験者側となる一方の面、及び前記一方の面とは反対側に位置する他方の面を備えた起歪体と、
前記他方の面に設けられた検出部と、
前記他方の面に設けられ、前記検出部を被覆するゲル状粘着剤と、を有する、バイタルセンサ。
【請求項12】
前記他方の面に設けられ、前記検出部を被覆する保護部材を有する、請求項10に記載のバイタルセンサ。
【請求項13】
前記保護部材は、ゲル状粘着剤である、請求項12に記載のバイタルセンサ。
【請求項14】
前記起歪体は、金属製である、請求項10、12、又は13に記載のバイタルセンサ。
【請求項15】
前記起歪体は、
基部と、
前記基部の内側を橋渡しする梁部と、
前記梁部に設けられた負荷部と、を有し、
前記検出部は、前記梁部に設けられている、請求項10乃至14のいずれか一項に記載のバイタルセンサ。
【請求項16】
前記梁部は、平面視で十字状に交差する2本の梁を有し、
前記梁の交差する領域に、前記負荷部が設けられている、請求項15に記載のバイタルセンサ。
【請求項17】
前記検出部を4つ備え、
4つの前記検出部のうちの2つは、第1方向を長手方向とする前記梁の前記負荷部に近い側に、平面視で前記負荷部を挟んで対向するように配置され、
4つの前記検出部のうちの他の2つは、前記第1方向と直交する第2方向を長手方向とする前記梁の前記基部に近い側に、平面視で前記負荷部を挟んで対向するように配置されている、請求項16に記載のバイタルセンサ。
【請求項18】
前記検出部は、前記起歪体の変形によって生じる磁気変化を検出する検出素子を有する、請求項10乃至17の何れか一項に記載のバイタルセンサ。
【請求項19】
前記検出素子は磁性体を含み、
前記検出素子は、前記起歪体の変形によって前記磁性体に圧力が加わったときの前記磁性体の磁化の強さの変化を検出する検出素子である、請求項18に記載のバイタルセンサ。
【請求項20】
前記検出素子は、磁性膜で絶縁膜を挟んだ磁気トンネル接合の構造を含んでおり、
前記検出素子は、前記起歪体の変形によって前記構造で発生する磁気変化を検出する検出素子である、請求項18に記載のバイタルセンサ。
【請求項21】
前記検出部は半導体式のひずみゲージである、請求項10乃至17の何れか一項に記載のバイタルセンサ。
【請求項22】
前記検出部は静電容量式の圧力センサである、請求項10乃至17の何れか一項に記載のバイタルセンサ。
【請求項23】
前記検出部は光ファイバ式のひずみゲージである、請求項10乃至17の何れか一項に記載のバイタルセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイタルセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
バイタルセンサの一例として、心臓が血液を送り出すことに伴い発生する脈波を検出する脈波センサが知られている。一例として、外力の作用により撓み可能に支持されている起歪体となる受圧板と、その受圧板の撓みを電気信号に変換する圧電変換手段とが設けられた脈波センサが挙げられる。この脈波センサは、受圧板の可撓領域が外方に向かって凸曲面となるドーム状に形成されており、圧電変換手段として受圧板における頂部の内面に圧力検出素子を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-78689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
脈波センサ等のバイタルセンサにおいて、センサの内部には汚れや水分が入りこまないことが好ましい。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、防汚対策や防水対策を施したバイタルセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係るバイタルセンサは、使用時に被験者側となる一方の面、及び前記一方の面とは反対側に位置する他方の面を備えた起歪体と、前記一方の面を被覆するゲル状粘着剤と、前記他方の面に設けられたひずみゲージと、を有する。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、防汚対策や防水対策を施したバイタルセンサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係るバイタルセンサを例示する斜視図である。
図2】第1実施形態に係るバイタルセンサを例示する平面図である。
図3】第1実施形態に係るバイタルセンサを例示する断面図である。
図4】第1実施形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。
図5】第1実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図(その1)である。
図6】第1実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図(その2)である。
図7】第2実施形態に係るバイタルセンサを例示する断面図である。
図8】第3実施形態に係るバイタルセンサを例示する断面図である。
図9】第4実施形態に係るバイタルセンサを例示する断面図である。
図10】第5実施形態に係るバイタルセンサを例示する断面図である。
図11】第6実施形態に係るひずみゲージに含まれる検出素子の一例を示す平面図および断面図である。
図12】第7実施形態に係るひずみゲージに含まれる検出素子の一例を示す斜視図、平面図、および断面図である。
図13】第7実施形態に係るひずみゲージに含まれる検出素子の他の一例を示す斜視図、平面図、および断面図である。
図14】第7実施形態に係るひずみゲージに含まれる検出素子の、更に他の一例を示す斜視図、平面図、および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
〈第1実施形態〉
図1は、第1実施形態に係るバイタルセンサを例示する斜視図である。図2は、第1実施形態に係るバイタルセンサを例示する平面図である。図3は、第1実施形態に係るバイタルセンサを例示する断面図であり、図2のA-A線に沿う断面を示している。
【0011】
図1図3を参照すると、バイタルセンサ1は、筐体10と、起歪体20と、線材30と、ゲル状粘着剤50と、ひずみゲージ100とを有している。なお、図2では、ゲル状粘着剤50は図示されていないが、図2においても図1に示した通りの位置にゲル状粘着剤50が存在する。
【0012】
起歪体20は、基部21と、梁部22と、負荷部23と、延伸部24とを有している。起歪体20は、平板状である。起歪体20は、例えば、平面視で4回対称の形状である。起歪体20の材料としては、例えば、金属、セラミック、ガラス等を用いることができる。起歪体20の材料として用いる金属としては、例えば、SUS(ステンレス鋼)、銅、アルミニウム等が挙げられる。起歪体20は、例えば、プレス加工法等により一体に形成することができる。負荷部23を除く起歪体20の厚さtは一定である。負荷部23を除く起歪体20の厚さtは、例えば、0.03mm以上0.3mm以下とすることができる。
【0013】
なお、本実施形態では、便宜上、バイタルセンサ1において、起歪体20の負荷部23が設けられている側を「上側」と称し、起歪体20の負荷部23が設けられていない側を「下側」と称する。又、各部位の上側に位置する面を「上面」と称し、各部位の下側に位置する面を「下面」と称する。ただし、バイタルセンサ1は天地逆の状態で用いることもできる。又、バイタルセンサ1は任意の角度で配置することもできる。又、平面視とは、起歪体20の上面に対する上側から下側への法線方向で対象物を視ることを指すものとする。そして、平面形状とは、前記法線方向で対象物を視たときの、対象物の形状を指すものとする。
【0014】
バイタルセンサ1において、筐体10は起歪体20を保持する部分である。筐体10は中空円柱状であって、下面側が塞がれ上面側が開口されている。筐体10は、例えば、金属や樹脂等から形成できる。筐体10の上面側の開口を塞ぐように、略円板状の起歪体20が接着剤等により固定されている。
【0015】
起歪体20において、基部21は、図1及び図2で示す円形の破線よりも外側の円形枠状(リング状)の領域である。なお、円形の破線よりも内側の領域を円形開口部と称する場合がある。つまり、起歪体20の基部21は、円形開口部を備えている。基部21の幅wは、例えば、1mm以上5mm以下である。基部21の内径d(すなわち、円形開口部の直径)は、例えば、5mm以上35mm以下である。
【0016】
梁部22は、基部21の内側を橋渡しするように設けられている。梁部22は、例えば、平面視で十字状に交差する2本の梁を有し、2本の梁の交差する領域は円形開口部の中心を含む。図2の例では、十字を構成する1本の梁がX方向を長手方向とし、十字を構成する他の1本の梁がY方向を長手方向とし、両者は直交している。直交する2本の梁の各々は、基部21の内径d(円形開口部の直径)より内側にあり、かつ可能な限り長いことが好ましい。つまり、各々の梁の長さは、円形開口部の直径と略等しいことが好ましい。梁部22を構成する各々の梁において、交差する領域以外の幅wは一定であり、例えば、1mm以上5mm以下である。幅wが一定であることは必須ではないが、幅wを一定とすることで、ひずみをリニアに検出するできる点で好ましい。
【0017】
負荷部23は、梁部22に設けられている。負荷部23は、例えば、梁部22を構成する2本の梁の交差する領域に設けられる。負荷部23は、梁部22の上面から突起している。梁部22の上面を基準とする負荷部23の突起量は、例えば、0.1mm程度である。梁部22は可撓性を有しており、負荷部23に負荷が加わると弾性変形する。
【0018】
4つの延伸部24は、平面視で基部21の内側から梁部22の方向に延伸する扇形の部分である。各々の延伸部24と梁部22との間には、1mm程度の隙間が設けられている。延伸部24は、バイタルセンサ1のセンシングには寄与しないため、設けなくてもよい。
【0019】
線材30は、バイタルセンサ1と外部との電気信号の入出力を行うケーブルである。線材30は、シールドケーブルやフレキシブル基板等であってもよい。なお、線材30は、バイタルセンサ1の必須の構成要素ではない。バイタルセンサ1は、線材30を用いずに、無線等の方法で外部と通信する形態であってもよい。
【0020】
ゲル状粘着剤50は、起歪体20の一方の面を被覆している。具体的には、起歪体20は、使用時に被験者側となる上面20m、及び上面20mとは反対側に位置する下面20nを備えており、ゲル状粘着剤50は起歪体20の上面20mを被覆している。ゲル状粘着剤50は、起歪体20の上面20mの一部を被覆していてもよいが、上面20mの全体を被覆することが好ましい。
【0021】
このように、バイタルセンサ1は、起歪体20の上面20mがゲル状粘着剤50で被覆されているため、起歪体20が被験者の皮膚に直接触れることがない。そのため、被験者の汗等による水分が、起歪体20の下面20n側に位置するひずみゲージ100に伝わりにくい。すなわち、ゲル状粘着剤50は、防水機能を有している。
【0022】
また、起歪体20が被験者の皮膚に直接触れることがないため、起歪体20が金属製である場合は、金属による被験者の皮膚の炎症や金属アレルギーの発症を回避することができる。
【0023】
また、ゲル状粘着剤50は、人体に対する刺激が少なく、人体に触れたときに被験者に良好な感触を与えることができる。また、ゲル状粘着剤50は、起歪体20の上面20mを被覆しているため、起歪体20の上面20mが汚れることを防止できる。すなわち、ゲル状粘着剤50は、防汚機能を有している。
【0024】
なお、ゲル状粘着剤50は樹脂等に比べて柔らく、梁部22の弾性変形を妨げにくいため、ゲル状粘着剤50の存在がバイタルセンサ1の検出感度を低下させる要因にはなりにくい。
【0025】
ゲル状粘着剤50は、梁部22と延伸部24との隙間の上にも形成される。したがって、梁部22と延伸部24との隙間は、バイタルセンサ1の外部には露出しない。ゲル状粘着剤50は、梁部22と延伸部24との隙間に入り込み、梁部22と延伸部24との隙間の一部又は全部を埋めてもよい。
【0026】
仮に、梁部22と延伸部24との隙間がバイタルセンサ1の外部に開口していると、隙間に埃や異物等が挟まって梁部22が弾性変形できなくなるおそれがある。しかし、バイタルセンサ1では、ゲル状粘着剤50が梁部22と延伸部24との隙間の上にも形成され、梁部22と延伸部24との隙間がバイタルセンサ1の外部には露出しない。これにより、梁部22と延伸部24との隙間に埃や異物等が挟まることがないため、バイタルセンサ1による信頼性が高く、より安定な脈波の測定が可能となる。
【0027】
ゲル状粘着剤50は、コロイド溶液が流動性を失ってゼリー状に固化した粘弾性体である。ゲル状粘着剤50は、例えば、フィルム状部材であり、ゲル状粘着剤50自身の粘着力で起歪体20に容易に貼り付けることができる。また、ゲル状粘着剤50を繰り返し使用することも可能である。
【0028】
ゲル状粘着剤50の厚さは、例えば、3μm以上100μm以下とすることができる。ゲル状粘着剤50がこのような厚さであれば、検出対象となる信号(脈波等)が起歪体20に伝達しやすくなる。ゲル状粘着剤50の厚さは、3μm以上10μm以下としてもよい。ゲル状粘着剤50がこのような厚さであれば、検出対象となる信号(脈波等)が起歪体20に一層伝達しやすくなる。
【0029】
ゲル状粘着剤50の材料としては、例えば、シリコーンゲル、ウレタンゲル、(メタ)アクリルゲル等が挙げられる。例えば、ゲル状粘着剤50として、日東電工株式会社製の極薄フィルム『優肌(登録商標)パーミロール(登録商標)』を用いてもよい。また、ゲル状粘着剤50の材料として、天然由来のゲルを用いてもよい。天然由来のゲルとしては、例えば、ゼリー、豆腐、コンニャク、シリカゲル、ナパーム-ガソリンと界面活性剤から構成されるゲル、セメントゲル、魚肉練り製品等が挙げられる。
【0030】
ゲル状粘着剤50は、起歪体20の上面20mに沿って形成されるため、ゲル状粘着剤50には、負荷部23を被覆する負荷部53が形成される。負荷部53は、ゲル状粘着剤50の上面から突起する。ゲル状粘着剤50の上面を基準とする負荷部53の突起量は、例えば、0.1mm程度である。
【0031】
なお、ゲル状粘着剤50は、起歪体20の上面20mの凹凸をある程度吸収するため、ゲル状粘着剤50の厚さによっては、ゲル状粘着剤50の上面が平坦に近くなってもよい。つまり、ゲル状粘着剤50の上面を基準とする負荷部53の突起量は、起歪体20の上面20mを基準とする負荷部23の突起量より小さくてもよい。
【0032】
ひずみゲージ100は、本開示において、脈波等を検出する検出部の一例である。ひずみゲージ100は、起歪体20の下面20nに設けられている。本実施形態では、他方の面は下面20nである。ひずみゲージ100は、例えば、梁部22の下面側に設けることができる。梁部22は平板状であるため、ひずみゲージを容易に貼り付けることができる。ひずみゲージ100は、1個以上設ければよいが、本実施形態では、4つのひずみゲージ100を設けている。4つのひずみゲージ100を設けることで、フルブリッジにより、ひずみを検出することができる。
【0033】
4つのひずみゲージ100のうちの2つは、X方向を長手方向とする梁の負荷部23に近い側(円形開口部の中心側)に、平面視で負荷部23を挟んで対向するように配置されている。4つのひずみゲージ100のうちの他の2つは、Y方向を長手方向とする梁の基部21に近い側に、平面視で負荷部23を挟んで対向するように配置されている。このような配置により、圧縮力と引張力を有効に検出してフルブリッジにより大きな出力を得ることができる。
【0034】
バイタルセンサ1は、負荷部23を被覆する負荷部53が被験者の橈骨動脈に当たるように被験者の腕に固定して使用される。被験者の脈波に応じて負荷部53を介して負荷部23に負荷が加わって梁部22が弾性変形すると、ひずみゲージ100の抵抗体の抵抗値が変化する。バイタルセンサ1は、梁部22の変形に伴なうひずみゲージ100の抵抗体の抵抗値の変化に基づいて脈波を検出できる。脈波は、例えば、ひずみゲージ100の電極と接続された測定回路から、周期的な電圧の変化として出力される。
【0035】
[ひずみゲージ100]
図4は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。図5は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図(その1)であり、図4のB-B線に沿う断面を示している。
【0036】
図4及び図5を参照すると、ひずみゲージ100は、基材110と、抵抗体130と、配線140と、電極150と、カバー層160とを有している。すなわち、ひずみゲージ100は、検出素子として抵抗体130を有している。カバー層160は、必要に応じて設けることができる。なお、図4及び図5では、便宜上、カバー層160の外縁のみを破線で示している。まずは、ひずみゲージ100を構成する各部について詳細に説明する。
【0037】
なお、図4図6を用いて行うひずみゲージの説明は、上面と下面の定義が他の図の場合とは異なる。具体的には、図4図6では、便宜上、ひずみゲージ100において、基材110の抵抗体130が設けられている側を「上側」と称し、抵抗体130が設けられていない側を「下側」と称する。又、各部位の上側に位置する面を「上面」と称し、各部位の下側に位置する面を「下面」と称する。ただし、ひずみゲージ100は天地逆の状態で用いることもできる。又、ひずみゲージ100は任意の角度で配置することもできる。又、平面視とは、基材110の上面110aに対する上側から下側への法線方向で対象物を視ることを指すものとする。そして、平面形状とは、前記法線方向で対象物を視たときの、対象物の形状を指すものとする。ひずみゲージ100は、基材110が起歪体20の下面20n側を向くように、起歪体20の下面20nに貼り付けられる。
【0038】
基材110は、抵抗体130等を形成するためのベース層となる部材である。基材110は可撓性を有する。基材110の厚さは特に限定されず、ひずみゲージ100の使用目的等に応じて適宜決定されてよい。例えば、基材110の厚さは5μm~500μm程度であってよい。なお、起歪体20の下面20nから受感部へのひずみの伝達性、及び、環境変化に対する寸法安定性の観点から考えると、基材110の厚さは5μm~200μmの範囲内であることが好ましい。また、絶縁性の観点から考えると、基材110の厚さは10μm以上であることが好ましい。
【0039】
基材110は、例えば、PI(ポリイミド)樹脂、エポキシ樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、LCP(液晶ポリマー)樹脂、ポリオレフィン樹脂等の絶縁樹脂フィルムから形成される。なお、フィルムとは、厚さが500μm以下程度であり、かつ可撓性を有する部材を指す。
【0040】
基材110が絶縁樹脂フィルムから形成される場合、当該絶縁樹脂フィルムには、フィラーや不純物等が含まれていてもよい。例えば、基材110は、シリカやアルミナ等のフィラーを含有する絶縁樹脂フィルムから形成されてもよい。
【0041】
基材110の樹脂以外の材料としては、例えば、SiO、ZrO(YSZも含む)、Si、Si、Al(サファイヤも含む)、ZnO、ペロブスカイト系セラミックス(CaTiO、BaTiO)等の結晶性材料が挙げられる。又、前述の結晶性材料以外に非晶質のガラス等を基材110の材料としてもよい。又、基材110の材料として、アルミニウム、アルミニウム合金(ジュラルミン)、チタン等の金属を用いてもよい。金属製の基材110を用いる場合、上面110aを被覆するように絶縁膜が設けられる。
【0042】
抵抗体130は、基材110の上側に所定のパターンで形成された薄膜である。ひずみゲージ100において、抵抗体130は、ひずみを受けて抵抗変化を生じる受感部である。抵抗体130は、基材110の上面110aに直接形成されてもよいし、基材110の上面110aに他の層を介して形成されてもよい。なお、図4では、便宜上、抵抗体130を密度の高い梨地模様で示している。
【0043】
抵抗体130は、複数の細長状部が長手方向を同一方向(図4の例ではB-B線の方向)に向けて所定間隔で配置され、隣接する細長状部の端部が互い違いに連結されて、全体としてジグザグに折り返す構造である。複数の細長状部の長手方向がグリッド方向となり、グリッド方向と垂直な方向がグリッド幅方向(図4の例ではB-B線と垂直な方向)となる。
【0044】
グリッド幅方向の最も外側に位置する2つの細長状部の長手方向の一端部は、グリッド幅方向に屈曲し、抵抗体130のグリッド幅方向の各々の終端130e及び130eを形成する。抵抗体130のグリッド幅方向の各々の終端130e及び130eは、配線140を介して、電極150と電気的に接続されている。言い換えれば、配線140は、抵抗体130のグリッド幅方向の各々の終端130e及び130eと各々の電極150とを電気的に接続している。
【0045】
抵抗体130は、例えば、Cr(クロム)を含む材料、Ni(ニッケル)を含む材料、又はCrとNiの両方を含む材料から形成することができる。すなわち、抵抗体130は、CrとNiの少なくとも一方を含む材料から形成することができる。Crを含む材料としては、例えば、Cr混相膜が挙げられる。Niを含む材料としては、例えば、Cu-Ni(銅ニッケル)が挙げられる。CrとNiの両方を含む材料としては、例えば、Ni-Cr(ニッケルクロム)が挙げられる。
【0046】
ここで、Cr混相膜とは、Cr、CrN、及びCrN等が混相した膜である。Cr混相膜は、酸化クロム等の不可避不純物を含んでいてもよい。
【0047】
抵抗体130の厚さは特に限定されず、ひずみゲージ100の使用目的等に応じて適宜決定されてよい。例えば、抵抗体130の厚さは0.05μm~2μm程度であってよい。特に、抵抗体130の厚さが0.1μm以上である場合、抵抗体130を構成する結晶の結晶性(例えば、α-Crの結晶性)が向上する。また、抵抗体130の厚さが1μm以下である場合、抵抗体130を構成する膜の内部応力に起因する、(i)膜のクラック及び(ii)膜の基材110からの反りが、低減される。
【0048】
横感度を生じ難くすることと、断線対策とを考慮すると、抵抗体130の幅は10μm以上100μm以下であることが好ましい。更に言えば、抵抗体130の幅は10μm以上70μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であるとより好ましい。
【0049】
例えば、抵抗体130がCr混相膜である場合、安定な結晶相であるα-Cr(アルファクロム)を主成分とすることで、ゲージ特性の安定性を向上させることができる。又例えば、抵抗体130がCr混相膜である場合、抵抗体130がα-Crを主成分とすることで、ひずみゲージ100のゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。ここで、「主成分」とは、抵抗体を構成する全物質の50重量%以上を占める成分のことを意味する。ゲージ特性を向上させるという観点から考えると、抵抗体130はα-Crを80重量%以上含むことが好ましい。更に言えば、同観点から考えると、抵抗体130はα-Crを90重量%以上含むことがより好ましい。なお、α-Crは、bcc構造(体心立方格子構造)のCrである。
【0050】
又、抵抗体130がCr混相膜である場合、Cr混相膜に含まれるCrN及びCrNは20重量%以下であることが好ましい。Cr混相膜に含まれるCrN及びCrNが20重量%以下であることで、ひずみゲージ100のゲージ率の低下を抑制することができる。
【0051】
又、Cr混相膜におけるCrNとCrNとの比率は、CrNとCrNの重量の合計に対し、CrNの割合が80重量%以上90重量%未満となるようにすることが好ましい。更に言えば、同比率は、CrNとCrNの重量の合計に対し、CrNの割合が90重量%以上95重量%未満となるようにすることがより好ましい。CrNは半導体的な性質を有する。そのため、前述のCrNの割合を90重量%以上95重量%未満とすることで、TCRの低下(負のTCR)が一層顕著となる。更に、前述のCrNの割合を90重量%以上95重量%未満とすることで抵抗体130のセラミックス化を低減し、抵抗体130の脆性破壊が起こりにくくすることができる。
【0052】
一方で、CrNは化学的に安定であるという利点を有する。Cr混相膜にCrNをより多く含むことで、不安定なNが発生する可能性を低減することができるため、安定なひずみゲージを得ることができる。ここで「不安定なN」とは、Cr混相膜の膜中に存在し得る、微量のNもしくは原子状のNのことを意味する。これらの不安定なNは、外的環境(例えば高温環境)によっては膜外へ抜け出ることがある。不安定なNが膜外へ抜け出るときに、Cr混相膜の膜応力が変化し得る。
【0053】
ひずみゲージ100において、抵抗体130の材料としてCr混相膜を用いた場合、高感度化かつ、小型化を実現することができる。例えば、従来のひずみゲージの出力が0.04mV/2V程度であったのに対して、抵抗体130の材料としてCr混相膜を用いた場合は0.3mV/2V以上の出力を得ることができる。また、従来のひずみゲージの大きさ(ゲージ長×ゲージ幅)が3mm×3mm程度であったのに対して、抵抗体130の材料としてCr混相膜を用いた場合の大きさ(ゲージ長×ゲージ幅)は0.3mm×0.3mm程度に小型化することができる。
【0054】
配線140は、基材110上に設けられている。配線140は、抵抗体130及び電極150と電気的に接続されている。配線140は、直線状には限定されず、任意のパターンとすることができる。また、配線140は、任意の幅及び任意の長さとすることができる。なお、図4では、便宜上、配線140を抵抗体130よりも密度の低い梨地模様で示している。
【0055】
電極150は、基材110上に設けられている。電極150は、配線140を介して抵抗体130と電気的に接続されている。電極150は、平面視において、配線140よりも拡幅して略矩形状に形成されている。電極150は、ひずみにより生じる抵抗体130の抵抗値の変化を外部に出力するための一対の電極である。電極150には、例えば外部接続用のリード線等が接合される。電極150の上面に、銅等の抵抗の低い金属層、または、金等のはんだ付け性が良好な金属層を積層してもよい。抵抗体130と配線140と電極150とは便宜上別符号としているが、両者は同一工程において同一材料により一体に形成することができる。なお、図4では、便宜上、電極150を配線140と同じ密度の梨地模様で示している。
【0056】
カバー層160(保護層)は、必要に応じ、基材110の上面110aに、抵抗体130及び配線140を被覆し電極150を露出するように設けられる。カバー層160の材料としては、例えば、PI樹脂、エポキシ樹脂、PEEK樹脂、PEN樹脂、PET樹脂、PPS樹脂、複合樹脂(例えば、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂)等の絶縁樹脂が挙げられる。なお、カバー層160は、フィラーや顔料を含有しても構わない。カバー層160の厚さは、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、カバー層160の厚さは2μm~30μm程度とすることができる。カバー層160を設けることで、抵抗体130に機械的な損傷等が生じることを抑制することができる。又、カバー層160を設けることで、抵抗体130を湿気等から保護することができる。
【0057】
[ひずみゲージ100の製造方法]
本実施形態に係るひずみゲージ100では、基材110上に、抵抗体130と、配線140と、電極150と、カバー層160とが形成される。なお、基材110とこれらの部材の層の間に別の層(後述する機能層等)が形成されてもよい。
【0058】
以下、ひずみゲージ100の製造方法について説明する。ひずみゲージ100を製造するためには、まず、基材110を準備し、基材110の上面110aに金属層(便宜上、金属層Aとする)を形成する。金属層Aは、最終的にパターニングされて抵抗体130、配線140、及び電極150となる層である。従って、金属層Aの材料や厚さは、前述の抵抗体130、配線140、及び電極150の材料や厚さと同様である。
【0059】
金属層Aは、例えば、金属層Aを形成可能な原料をターゲットとしたマグネトロンスパッタ法により成膜することができる。金属層Aは、マグネトロンスパッタ法に代えて、反応性スパッタ法、蒸着法、アークイオンプレーティング法、またはパルスレーザー堆積法等を用いて成膜されてもよい。基材110の上面110aに金属層Aを成膜後、周知のフォトリソグラフィ法により、金属層Aを図4の抵抗体130、配線140、及び電極150と同様の平面形状にパターニングする。
【0060】
なお、基材110の上面110aに下地層を形成してから金属層Aを形成してもよい。例えば、基材110の上面110aに、所定の膜厚の機能層をコンベンショナルスパッタ法により真空成膜してもよい。このように下地層を設けることによって、ひずみゲージ100のゲージ特性を安定化させることができる。
【0061】
本願において、機能層とは、少なくとも上層である金属層A(抵抗体130)の結晶成長を促進する機能を有する層を指す。機能層は、更に、基材110に含まれる酸素または水分による金属層Aの酸化を防止する機能、および/または、基材110と金属層Aとの密着性を向上する機能を備えていることが好ましい。機能層は、更に、他の機能を備えていてもよい。
【0062】
基材110を構成する絶縁樹脂フィルムは酸素や水分を含むことがあり、また、Crは自己酸化膜を形成することがある。そのため、特に金属層AがCrを含む場合、金属層Aの酸化を防止する機能を有する機能層を成膜することが好ましい。
【0063】
このように、金属層Aの下層に機能層を設けることにより、金属層Aの結晶成長を促進可能となり、安定な結晶相からなる金属層Aを作製することができる。その結果、ひずみゲージ100において、ゲージ特性の安定性が向上する。又、機能層を構成する材料が金属層Aに拡散することにより、ひずみゲージ100において、ゲージ特性が向上する。
【0064】
機能層の材料としては、例えば、Cr(クロム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、Ni(ニッケル)、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Si(シリコン)、C(炭素)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Bi(ビスマス)、Fe(鉄)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Re(レニウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Au(金)、Co(コバルト)、Mn(マンガン)、Al(アルミニウム)からなる群から選択される1種又は複数種の金属、この群の何れかの金属の合金、又は、この群の何れかの金属の化合物が挙げられる。
【0065】
図6は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図(その2)である。図6は、抵抗体130、配線140、及び電極150の下地層として機能層120を設けた場合のひずみゲージ100の断面形状を示している。
【0066】
機能層120の平面形状は、例えば抵抗体130、配線140、及び電極150の平面形状と略同一にパターニングされてよい。しかしながら、機能層120と抵抗体130、配線140、及び電極150との平面形状は略同一でなくてもよい。例えば、機能層120が絶縁材料から形成される場合には、機能層120を抵抗体130、配線140、及び電極150の平面形状と異なる形状にパターニングしてもよい。この場合、機能層120は例えば抵抗体130、配線140、及び電極150が形成されている領域にベタ状に形成されてもよい。或いは、機能層120は、基材110の上面全体にベタ状に形成されてもよい。
【0067】
抵抗体130、配線140、及び電極150を形成した後、必要に応じ、基材110の上面110aにカバー層160を形成する。カバー層160は抵抗体130及び配線140を被覆するが、電極150はカバー層160から露出していてよい。例えば、基材110の上面110aに、抵抗体130及び配線140を被覆し電極150を露出するように、半硬化状態の熱硬化性の絶縁樹脂フィルムをラミネートして、その後に当該絶縁樹脂フィルムを加熱して硬化させることにより、カバー層160を形成することができる。以上の工程により、ひずみゲージ100が完成する。
【0068】
〈第2実施形態〉
第2実施形態では、起歪体の下面側にゲル状粘着剤を設けたバイタルセンサの例を示す。なお、第2実施形態では、既に説明した実施形態と同一の構成部についての説明は省略する場合がある。
【0069】
図7は、第2実施形態に係るバイタルセンサを例示する断面図である。図7を参照すると、バイタルセンサ2は、起歪体20の下面20n側にゲル状粘着剤50Aを有しており、起歪体20の上面20m側にゲル状粘着剤を有していない。ゲル状粘着剤50Aは、起歪体20の下面20nに設けられ、ひずみゲージ100を被覆する。ゲル状粘着剤50Aの材料や厚さは、ゲル状粘着剤50と同様としてよい。
【0070】
バイタルセンサ2は、起歪体20の下面20nがゲル状粘着剤50Aで被覆されているため、被験者の汗等による水分が、ひずみゲージ100に伝わりにくくすることができる。すなわち、ゲル状粘着剤50Aは、防水機能を有している。バイタルセンサ2では、ゲル状粘着剤50Aがひずみゲージ100を直接被覆するため、バイタルセンサ1の場合よりも大きな防水効果が得られる。また、ひずみゲージ100がカバー層160を有する場合は、ゲル状粘着剤50Aによる防水効果と共にカバー層160による防湿効果を得ることができる。
【0071】
また、ゲル状粘着剤50Aは、凹凸を吸収しやすく、貼付時の空気の巻き込み等によるうねりが発生しにくいため、ひずみゲージ100の検出感度のばらつきを低減することができる。
【0072】
また、ゲル状粘着剤50Aは、起歪体20の下面20nを被覆しているため、起歪体20の下面20nが汚れることを防止できる。すなわち、ゲル状粘着剤50Aは、防汚機能を有している。
【0073】
また、バイタルセンサ2では、ゲル状粘着剤50Aが梁部22と延伸部24との隙間に入り込み、梁部22と延伸部24との隙間を埋めていることが好ましい。これにより、梁部22と延伸部24との隙間に埃や異物等が挟まることがないため、バイタルセンサ2による信頼性が高く、より安定な脈波の測定が可能となる。
【0074】
なお、ゲル状粘着剤50Aは樹脂等に比べて柔らく、梁部22の弾性変形を妨げにくいため、ゲル状粘着剤50Aの存在がバイタルセンサ2の検出感度を低下させる要因にはなりにくい。
【0075】
バイタルセンサ2において、起歪体20の材料としては、バイタルセンサ1と同様に、金属、セラミック、ガラス等を用いることができる。しかし、バイタルセンサ2では、起歪体20の上面20mが被験者側に露出するため、金属アレルギーを抑制する観点からは、起歪体20はセラミックやガラス等の非金属製であることが好ましい。
【0076】
〈第3実施形態〉
第3実施形態では、起歪体の下面側に保護部材を設けたバイタルセンサの例を示す。なお、第3実施形態では、既に説明した実施形態と同一の構成部についての説明は省略する場合がある。
【0077】
図8は、第3実施形態に係るバイタルセンサを例示する断面図である。図8を参照すると、バイタルセンサ3は、起歪体20の上面20m側にゲル状粘着剤50を有しており、さらに起歪体20の下面20n側に保護部材60を有している。保護部材60は、起歪体20の下面20nに設けられ、ひずみゲージ100を被覆する。
【0078】
保護部材60は、例えば、樹脂フィルムである。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリイミドフィルム等を用いることができる。保護部材60は、ゲル状粘着剤であってもよい。保護部材60がゲル状粘着剤である場合は、起歪体20の下面20nがゲル状粘着剤で被覆されるため、第2実施形態と同様の効果が得られる。また、起歪体20の上面20mと下面20nの両方がゲル状粘着剤で被覆されるため、第1実施形態及び第2実施形態よりも防湿効果を一層高くすることができる。
【0079】
〈第4実施形態〉
第4実施形態では、起歪体の上面側に被覆層を設けたバイタルセンサの例を示す。なお、第4実施形態では、既に説明した実施形態と同一の構成部についての説明は省略する場合がある。
【0080】
図9は、第4実施形態に係るバイタルセンサを例示する断面図である。図9を参照すると、バイタルセンサ4は、ゲル状粘着剤50の一方の面側に被覆層70を有する点が、バイタルセンサ1と相違する。
【0081】
被覆層70は、例えば、フッ素系又はシリコーン系の層である。被覆層70の厚さは、ゲル状粘着剤50に対して薄くすることができる。被覆層70の厚さは、例えば、数分子層程度の厚さであってもよい。被覆層70は、ゲル状粘着剤50の上面の一部を被覆していてもよいが、上面の全体を被覆することが好ましい。
【0082】
このように、バイタルセンサ4は、起歪体20の上面20mがゲル状粘着剤50で被覆され、かつゲル状粘着剤50が被覆層70で被覆されているため、起歪体20かつゲル状粘着剤50が被験者の皮膚に直接触れることがない。そのため、べたつかないという効果がある。
【0083】
〈第5実施形態〉
第5実施形態では、起歪体の下面側に無機層等を設けたバイタルセンサの例を示す。なお、第5実施形態では、既に説明した実施形態と同一の構成部についての説明は省略する場合がある。
【0084】
図10は、第5実施形態に係るバイタルセンサを例示する断面図である。図10を参照すると、バイタルセンサ5は、ゲル状粘着剤50Aの他方の面側に無機層80及びゲル状粘着剤50Bを有する点が、バイタルセンサ2と相違する。
【0085】
無機層80は、ゲル状粘着剤50Aの他方の面側に積層されている。無機層80の材料としては、例えば、金属やセラミックス等が挙げられる。ゲル状粘着剤50Bは、無機層80の他方の面側に積層されている。ゲル状粘着剤50Bの材料、厚さ、弾性率、及び粘着率は、ゲル状粘着剤50やゲル状粘着剤50Aと同様としてよい。
【0086】
このように、バイタルセンサ5では、防水効果を持つゲル状粘着剤50Aの下面が、防湿効果を持つ無機層80で被覆されているため、防水効果だけでなく、防湿効果もある。また、バイタルセンサ5では、起歪体20の下面20nを、ゲル状粘着剤50A、無機層80、及びゲル状粘着剤50Bが順に被覆しているため、無機層80の剥離を防止できるという効果がある。
【0087】
〈第6実施形態〉
上述した各実施形態では、本開示に係る検出部が抵抗体を用いたひずみゲージである例について説明した。すなわち、前記各実施形態では、本開示に係る検出部が電気抵抗式の金属ひずみゲージである場合について説明した。しかしながら、本開示に係る検出部は金属ひずみゲージに限定されない。例えば、本開示に係る検出部は、当該ひずみゲージに含まれる検出素子によって、起歪体(または、起歪体に相当する構造物)のひずみによって引き起こされる磁気変化を検出するひずみゲージであってもよい。
【0088】
具体的には、本開示に係る検出部は、ビラリ現象(後述)を利用した検出素子を含んだひずみゲージであってもよい。また、本開示に係る検出部は、磁気トンネル接合(後述)の構造を有する検出素子を含んだひずみゲージであってもよい。以下、第6実施形態では、ビラリ現象を利用した検出素子を含むひずみゲージについて説明する。また、第7実施形態では、磁気トンネル接合の構造を有する検出素子を含んだひずみゲージについて説明する。
【0089】
なお、本明細書の各実施形態では、同様の機能を有する部材には同様の名称および部材番号を付し、説明を繰り返さないこととする。また、以降の各実施形態に係る各図面(図11以降の図面)におけるx軸、y軸、およびz軸の方向は、図2図3等で示したx軸、y軸、およびz軸の方向と同一である。また、以降の説明では、z軸の正方向を「上」、z軸の負方向を「下」と称する。すなわち、以降の説明において「上側」とはz軸の正方向側であり、「上面」はz軸の正方向側にある面を示す。また、「下側」とはz軸の負方向側であり、「下面」とはz軸の負方向側にある面を示す。
【0090】
図11は、第6実施形態に係るひずみゲージに含まれる検出素子600の一例を示す図である。図11の(a)は検出素子600をz軸の負方向から正方向(すなわち、下面から上面側)に見たときの平面図である。一方、図11の(b)は、図11の(a)に示す検出素子600のα-α´直線での断面図を示している。なお、図11の(a)および(b)では、検出素子600から延びる配線は図示していない。しかしながら、検出素子600には、後述する駆動コイル620と電源とを接続する配線と、感知コイル680によって検出された電流を伝達するための配線が接続されていてもよい。
【0091】
図11の(a)に示す通り、検出素子600は、駆動コイル620と、感知コイル680と、ベース層610とを含む。ベース層610は駆動コイル620および感知コイル680の芯材となる層である。感知コイル680は、ベース層610(より厳密には、後述するベース金属670)の磁化の強さを検出するためのコイルである。駆動コイル620は、磁界を発生させるためのコイルである。検出素子600は、ベース層610を芯材として、感知コイル680が内側、そして駆動コイル620が外側に巻かれた2重構造を有している。なお、駆動コイル620および感知コイル680の材料は、Cu、Ag、Al、およびAu等の導電性金属、ならびに、これらの金属の合金であることが望ましい。また、駆動コイル620および感知コイル680の巻き数および断面積の大きさは、検出素子600に要求されるひずみの検知感度に応じて適宜設計されてよい。
【0092】
後で詳述するが、ベース層610に応力が加わると、ベース層610に含まれるベース金属670(後述)の磁化の強さが変化する。検出素子600は、感知コイル680でこの磁化の強さの変化を検出することによって、ベース層610にかかる応力の強さ(すなわち、ひずみ度合)を特定することができる。
【0093】
図11の(b)の断面図を参照して、検出素子600の構成について更に説明する。なお、図11の(b)において、駆動コイル620、感知コイル680、および3つの絶縁層640、650、および660はそれぞれ、芯材であるベース金属670を取り囲むように形成されている。すなわち、図11の(b)において同じ部材番号を付した層は、ベース金属670を取り囲んで繋がっている。
【0094】
ベース金属670は、各種コイルおよび絶縁層の芯材となる部材である。ベース金属670は、例えば略平板状の金属板であってよい。ベース金属670は絶縁層660で取り囲むように被覆されている。ベース金属670は、例えば、センダスト等のFe-Si-Al系合金、および、パーマロイ等のNi-Fe系合金等の軟磁性体材料で構成されることが望ましい。前述のベース層610は、図11の(b)に示す通り、このベース金属670と絶縁層660から成る。
【0095】
絶縁層660の外側には、絶縁層660を取り囲むように絶縁層650が形成される。そして、絶縁層650の外側には、更に絶縁層640が形成されている。絶縁層650は、感知コイル680を含む層であり、感知コイル680の間隙を絶縁材料で充填した層である。絶縁層640は、駆動コイル620を含む層であり、駆動コイル620の間隙を絶縁材料で充填した層である。絶縁層640、650、および660は、磁界に影響しないドライフィルムまたは感光性ポリイミド等のレジスト硬化物から成ることが望ましい。
【0096】
検出素子600の一面は、図11の(b)に示すように、基材110に貼り付けられていてよい。基材110は、検出素子600を固定する部材である。例えば、基材110は、プラスチックフィルム等で構成されるフレキシブル基板であってよい。検出素子600は基材110を介して起歪体20に貼り付けられる。なお、検出素子600は、全体として平板または薄膜状の検出素子であってもよい。検出素子600が平板または薄膜状である場合、検出素子600を基材110により容易に貼り付けることができる。また、検出素子600において基材110は必須の構成ではない。例えば、検出素子600に基材110を設けず、検出素子600の上面を起歪体20に直接貼り付けて使用してもよい。
【0097】
本実施形態に係る起歪体20は、基本的には第1実施形態に係る起歪体20と同様の構成および材料であってよい。しかしながら、起歪体20は、非磁性体から成ることがより望ましい。本実施形態に係る起歪体20は、例えば、非磁性ステンレスを材料として作製することができる。
【0098】
次に、検出素子600を用いてひずみを検出する原理を概説する。検出素子600は、磁性体であるベース金属670を含んでいる。電源から駆動コイル620に交流電流が供給されると、駆動コイル620はその周囲に交番磁界を生じさせる。これにより磁界が発生し、ベース金属670は磁化される。この状態で起歪体20が変形すると、ひずみが生じる。ひずみは基材110を伝わり、ベース金属670に応力が加わる。なお、検出素子600を、基材110を介さずに起歪体20に貼り付けている場合は、起歪体20からベース金属670(およびそれを被覆する絶縁層640~660)に直接応力が伝わる。
【0099】
ベース金属670に応力が加わると、その応力に応じてベース金属670の透磁率が変化する。したがって、ベース金属670の磁化の強さ(磁化の程度)が変化する。このように、磁性体に応力がかかると磁性体の透磁率および磁化の強さが変化する現象のことを「ビラリ現象」という。検出素子600の構成によれば、ピックアップコイルである感知コイル680には、ベース金属670の磁化の強さに応じた交流電圧が誘起される。したがって、ビラリ現象の原理に基づけば、この交流電圧の値から、ベース金属670にかかる応力を算出することができる。そして、当該算出した応力から、起歪体20のひずみ度合を特定することができる。なお、検出素子600が図11の(a)および(b)に示す形状である場合、検出素子600のグリッド方向は、図11の(a)におけるα-α´方向に等しい。以上説明した原理に基づいて、検出素子600は、起歪体20のひずみを検出することができる。すなわち、検出素子600は、ひずみゲージの検出素子として機能する。
【0100】
なお、駆動コイル620は、感知コイル680の外側、かつ当該感知コイル680が存在している領域全体に、できる限り均一に巻き付けられることが望ましい。これにより、ベース金属670の、感知コイル680が存在する領域全体に、より均一に交番磁界を加えることができる。これにより、ビラリ現象によるベース金属670の磁化の強さの変化をより精密に検出することができる。したがって、検出素子600の性能が向上する。
【0101】
また、絶縁層660は、ベース金属670の全部ではなく一部に形成されていてもよい。例えば、ベース金属670のうち、感知コイル680および駆動コイル620を巻き付ける領域の部分を絶縁層660で覆い、絶縁層660の上から感知コイル680を含む絶縁層650で覆い、更に、絶縁層650の上から駆動コイル620を含む絶縁層640で覆うような構成であってもよい。
【0102】
また、ベース金属670が略平板状である場合、絶縁層660はベース金属670の、コイルを巻く方向のみ取り囲んで形成されていてもよい。すなわち、図11の(b)において、ベース金属670のy方向の両端部は絶縁層660で覆われていなくてもよい。
【0103】
本実施形態に係るバイタルセンサにおいて、起歪体20が変形する(すなわち、起歪体にひずみが生じる)と、ひずみゲージの基材110(または、検出素子600自体)がひずむ。検出素子600は、このひずみによって生じる磁性変化を、前述のビラリ現象の原理に基づき検出することができる。
【0104】
本実施形態に係る検出素子600を含んだひずみゲージは、第1実施形態~第5実施形態で示したあらゆる配置パターンで起歪体20に配置可能である。すなわち、本実施形態に係る検出素子600を用いて、電気抵抗式のひずみゲージを用いたときと同様に起歪体20のひずみを検出することができる。したがって、本実施形態に係るひずみゲージは、第1実施形態~第5実施形態に係るひずみゲージ100と同様の効果を奏する。
【0105】
〈第7実施形態〉
図12は、第7実施形態に係るひずみゲージに含まれる検出素子の一例である検出素子700を示す図である。図13は、第7実施形態に係る検出素子の他の一例である検出素子800を示す図である。また、図14は、第7実施形態に係る検出素子の更に他の一例である検出素子900を示す図である。図12~14の(a)はそれぞれ、検出素子700、800、および900の斜視図である。図12~14の(b)はそれぞれ、検出素子700、800、および900をz軸の負方向から正方向に見たときの平面図である。図12~14の(c)は、検出素子700、800、および900の、zy平面に平行な面での断面図である。なお、図12~14のいずれの図も、検出素子から延びる配線は図示していない。しかしながら、これらの検出素子700、800、および900には、後述する上流電極710と電源とを接続する配線と、下流電極720と電源とを接続する配線とが接続されていてもよい。
【0106】
図12図14の(a)に示す通り、検出素子700、800、および900は、上流電極710と、下流電極720と、磁性膜730と、絶縁膜740と、を含む。絶縁膜740は、図示のように磁性膜730で挟まれている。この磁性膜730と絶縁膜740によって、磁気トンネル接合が形成される。すなわち、検出素子700、800、および900は、磁気トンネル接合の構造に電極を接続した構造である。
【0107】
なお、検出素子700、800、および900の上面は、第1実施形態に係る基材110と同様の基材に貼り付けられていてもよい。そして、検出素子700は基材を介して起歪体20に貼り付けられてよい。また、検出素子700、800、および900は、全体として平板または薄膜状の検出素子であってもよい。検出素子700、800、および900が平板または薄膜状である場合、検出素子700、800、および900を基材または起歪体20により容易に貼り付けることができる。また例えば、検出素子700、800、および900の上面を起歪体20に直接貼り付けて使用してもよい。
【0108】
磁性膜730は磁性ナノ薄膜である。絶縁膜740は絶縁体のナノ薄膜である。磁気トンネル接合の構造が形成可能であれば、磁性膜730と、絶縁膜740の材料は特に限定されない。例えば、磁性膜730としてコバルト鉄ボロン、または、Fe、Co、Niなどの3d遷移金属強磁性体及びそれらを含む合金等を用いることができる。また、絶縁膜740として、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウムや酸化マグネシウム等を用いることができる。
【0109】
上流電極710および下流電極720は、磁気トンネル接合の構造に対し電圧を印加するための電極である。図12~14の例では、電流は上流電極710から下流電極720へと流れる。例えば図12の(c)の場合、上流電極710と下流電極720の間に電圧を印加すると、電子は下側(z軸負方向側)の磁性膜730から、絶縁膜740を超えて上側(z軸正方向側)の磁性膜730に流れ込む。これは「トンネル効果」と呼ばれている現象であり、電子が絶縁膜740を通過するときの電気抵抗は、「トンネル抵抗」と呼ばれている。なお、図12~14の例では、電極の各部の接合部は、磁気トンネル接合の構造をショートパスする電流が流れない様に端部が処理された構造となっている。
【0110】
ところで、基材110等を介して検出素子700にひずみがかかると、トンネル接合の構造において、磁気変化が起こる。より具体的には、上側と下側の磁性膜730の磁化方向がずれる。このように、上下の磁性膜730の磁化方向がずれると、磁化方向が平行な場合に比べて、トンネル抵抗が大きくなる(トンネル磁気抵抗効果)。したがって、前述の構成を備えた検出素子700では、検出素子700(より厳密には、磁気トンネル接合の部分)のひずみの大きさに応じて、電極間を流れる電流が小さくなる。すなわち、ひずみが大きくなるにつれ、電気抵抗が大きくなる。検出素子700は、このように、印加した電圧に対する電流値に基づきひずみを検出することができる。したがって、検出素子700を起歪体20に貼り付けることによって、起歪体20にかかるひずみを測定することができる。
【0111】
磁気トンネル接合の構造を有する検出素子は、図12に示した例に限定されない。例えば、図13および図14に示すような検出素子800および900を採用することも可能である。図13に示す検出素子800も、図14に示す検出素子900も、上流電極710、下流電極720、磁性膜730、および絶縁膜740で構成されること、および、これらの構成によってひずみを検出する原理については、検出素子700と同様である。また、検出素子800および900の基本的な動作についても、検出素子700と同様である。なお、検出素子700、800、および900のグリッド方向は、それぞれ図12図14におけるy軸方向(y軸の正方向およびy軸の負方向)に相当する。図13に示す検出素子800は図示の通り、上側の磁性膜730と下側の磁性膜730が、一部繋がった構造をしている。すなわち、磁性膜730の一部の領域においてのみ、磁気トンネル接合の構造が形成されており、当該構造においてトンネル磁気抵抗効果が生じる。一方、図14に示す検出素子900は、基板910を介して基材110に貼り付けられる。図12図14に示すように、検出素子は前述の原理を超えない範囲であれば、要求されるサイズ、耐久性、および検出すべき応力の大きさ等に応じて、適宜その設計が変更されてよい。
【0112】
なお、本実施形態に係る起歪体20は、基本的には第1実施形態に係る起歪体20と同様の構成および材料であってよい。しかしながら、本実施形態において、起歪体20は、非磁性体から成ることがより望ましい。本実施形態に係る起歪体20は、例えば、非磁性ステンレスを材料として作製することができる。また、検出素子700、800、および900は素子全体として、フィルム型などの略平板状の形状であってよい。これにより、起歪体20に、検出素子700を容易に貼り付けることができる。また、検出素子700、800、および900は、駆動コイル等、磁気トンネル接合の構造部分に対して、微弱な磁界を印加するための構造を有していてもよい。磁気トンネル接合の構造部分に対して磁界を印加することにより、前述のトンネル磁気抵抗効果をより安定して測定することができるため、安定してひずみを検出することができる。
【0113】
また、検出素子700、800、および900における「上流電極」および「下流電極」は便宜上の名称であり、電流の流れる方向は逆であってもよい。つまり、図12図14で示した検出素子700、800、および900において、下流電極720の方から、上流電極710の方へと電流が流れる設計であってもよい。
【0114】
本実施形態に係るバイタルセンサにおいて、起歪体20が変形する(すなわち、起歪体にひずみが生じる)と、ひずみゲージの基材(または、検出素子700、800、または900自体)がひずむ。検出素子700、800、または900は、このひずみによって生じる磁性変化を、前述のトンネル磁気抵抗効果の原理に基づき検出することができる。
【0115】
本実施形態に係る検出素子700、800、および900を含んだひずみゲージは、第1実施形態~第5実施形態に示したあらゆる配置位置で起歪体20に配置可能である。すなわち、本実施形態に係る検出素子700、800、および900を用いて、電気抵抗式のひずみゲージを用いたときと同様に起歪体20のひずみを検出することができる。したがって、本実施形態に係るひずみゲージは、第1実施形態~第5実施形態に係るひずみゲージ100と同様の効果を奏する。
【0116】
〈第8実施形態〉
本開示に係る検出部は、半導体式のひずみゲージ、静電容量式の圧力センサ、または光ファイバ式のひずみゲージであってもよい。また、本開示に係る検出部は、機械式圧力センサ、振動式圧力センサ、または圧電式圧力センサであってもよい。以下、各種ひずみゲージ及び圧力センサの原理を説明する。
【0117】
(半導体式のひずみゲージ)
半導体式のひずみゲージは、半導体の圧抵抗効果を利用してひずみを検出するひずみゲージである。すなわち、半導体式のひずみゲージは、半導体をひずみの検出素子として用いるひずみゲージである。
【0118】
半導体に応力が印加されると、半導体の結晶格子にひずみが生じて半導体中のキャリアの数及び移動度が変化するため、結果として電気抵抗が変化することが知られている。半導体式のひずみゲージは、電気抵抗式の金属ひずみゲージと同様、起歪体20に直接貼り付けて使用することができる。この場合、起歪体20が伸縮すると、貼り付けられた半導体(より詳しくは、半導体の結晶格子)のひずみ電気抵抗が変化する。そのため、当該電気抵抗を測定することで起歪体20のひずみ量を特定することができる。
【0119】
また、半導体式のひずみゲージは、ダイアフラム構造を備えたひずみセンサとして構成することもできる。この場合、ひずみセンサは例えば、非金属のダイアフラム(又は、金属ダイアフラム上に電気絶縁層を形成したもの)と、当該ダイアフラムの上に形成された半導体(例えば、シリコン薄膜の半導体)と、を有する。そして、この様にダイアフラムを含む構造において、ダイアフラムに印加された垂直応力によりダイアフラムがひずむと、半導体の電気抵抗が変化する。そのため、当該電気抵抗を測定することでダイアフラムのひずみ量(ひいては、起歪体20のひずみ量)を特定することができる。
【0120】
(静電容量式の圧力センサ)
静電容量式の圧力センサは、ダイアフラムにかかる圧力を一対の電極の静電容量の変化として計測する圧力センサである。すなわち、静電容量式の圧力センサは、一対の電極を検出素子として用いる圧力センサである。静電容量式の圧力センサは例えば、可動電極としてのダイアフラムと、1つ以上の固定電極と、を備える。ダイアフラムは例えば不純物を含んだシリコン(すなわち、導体として機能するシリコン)等で形成される。
【0121】
ダイアフラムに圧力が印加されると、当該ダイアフラムが変位し、固定電極と可動電極との間の距離が変化する。電極間の静電容量は、電極間媒質の誘電率と電極の面積が一定ならば、電極間の距離に応じて定まることが知られている。したがって、静電容量を計測することで、ダイアフラムの変位量(すなわち、圧力の大きさ)を特定することができる。
【0122】
(光ファイバ式のひずみゲージ)
光ファイバ式のひずみゲージとは、ファイバ・ブラッグ・グレーティング(FBG)が形成されている光ファイバを用いてひずみを検出するひずみゲージである。すなわち、光ファイバ式のひずみゲージは、光ファイバをひずみの検出素子として用いるひずみゲージである。FBGは光ファイバの他の部分とは異なる光の反射を起こす回折格子であり、この格子の一つ一つは一定間隔で形成されている。光ファイバがひずんで伸びると、FBGの格子間隔が広がるため、光ファイバに入射した光(例えば、レーザ光)の反射光の波長が変化する。また、光ファイバがひずんで縮むと、FBGの格子間隔は狭くなるため、ファイバに入射した光(例えば、レーザ光)の反射光の波長が変化する。
【0123】
このような特性を有する光ファイバを起歪体20に貼り付けておき、光ファイバの反射光の波長スペクトルを計測することで、光ファイバのひずみ量(すなわち、起歪体20のひずみ量)を特定することができる。なお、光ファイバ式のひずみゲージは、光ファイバ内で生じるブリルアン散乱光の周波数の変化から当該光ファイバのひずみ量を特定するひずみゲージであってもよい。
【0124】
(機械式圧力センサ)
機械式圧力センサは機械的構造物の変位量を計測することで、当該構造物にかかる圧力を特定するセンサである。機械式圧力センサは、例えば、ばね又は曲げた管を備えており、このばねの伸縮量又は曲げた管の伸縮量を計測する。これらの伸縮量(すなわち、変位量)は、ばね又は曲げた管にかかる圧力の大きさに応じて変化する。したがって、当該伸縮量を計測することで、ばね又は曲げた管にかかる圧力を特定することができる。なお、ばね又は曲げた管の形状や大きさは、機械式圧力センサの取り付け対象の大きさ及び形状に応じて適宜定められてよい。
【0125】
(振動式圧力センサ)
振動式圧力センサは、弾性梁の固有振動数が、当該弾性梁の軸に沿って生じる圧力(すなわち、軸力)によって変化するという現象を利用して圧力を検出するセンサである。振動式圧力センサは、電気抵抗式の金属ひずみゲージと同様、起歪体20に直接貼り付けて使用することができる。また例えば、振動式圧力センサは、基板上に形成されたダイアフラムと、当該ダイアフラムの表面に形成された梁状の振動子と、で構成される圧力センサであってもよい。
【0126】
いずれの場合でも、起歪体20がひずむと、その圧力は直接または間接的に振動子に伝わり、振動子に軸力が生じる。振動子の固有振動数は、軸力に応じて変化する。したがって、振動子の固有振動数を計測することで、起歪体20に対する圧力の大きさを特定することができる。
【0127】
(圧電式圧力センサ)
圧電式圧力センサとは、圧電素子(ピエゾ素子とも称する)を含んでおり、この圧電素子の特性を用いて圧力を検出するセンサである。圧電素子は、力が加わり変形する(ひずむ)と、その力に応じた起電力を発生する特性を持っている。また、圧電素子は、電圧をかけると、その電圧に応じた力を発生させて伸縮する特性を持っている。
【0128】
圧電式圧力センサは、圧電素子の起電力を測定することで、圧電素子にかかった力(すなわち、圧電素子のひずみ量)を特定することができる。したがって、圧電式圧力センサを起歪体20に貼り付けておくことで、起歪体20のひずみ量を特定することができる。
【0129】
以上の説明の通り、半導体式のひずみゲージ、静電容量式の圧力センサ、光ファイバ式のひずみゲージ、機械式圧力センサ、振動式圧力センサ、および圧電式圧力センサを用いた場合でも、第1実施形態~第5実施形態に係るひずみゲージ100と同様の効果を得ることができる。
【0130】
以上、好ましい実施形態等について詳説した。しかしながら、本開示に係るバイタルセンサは、上述した実施形態および変形例等に限定されない。例えば、上述した実施形態等に係るバイタルセンサについて、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、種々の変形及び置換を加えることができる。
【0131】
例えば、湿気は、延伸部24と梁部22との間の隙間から起歪体20の下面20n側に入り込むが、その他の僅かな隙間からも起歪体20の下面20n側に入り込む。したがって、隙間が設けられていないスリットレスの起歪体を用いたバイタルセンサにおいても、ゲル状粘着剤50及び/又はゲル状粘着剤50Aを設けることで防湿効果を得ることができる。すなわち、本発明は、スリットを有する起歪体を備えたバイタルセンサばかりでなく、スリットレスの起歪体を用いたバイタルセンサにも適用可能である。
【0132】
また、上記の実施形態では、バイタルセンサ1等が脈波を検出する例を示したが、バイタルセンサ1の検出対象は脈波には限定されない。バイタルセンサ1等は、例えば、血圧、脈拍、酸素レベル等を検出対象とすることができる。
【符号の説明】
【0133】
1,2,3 バイタルセンサ、10 筐体、20 起歪体、20m 上面、20n 下面、21 基部、22 梁部、23 負荷部、24 延伸部、30 線材、50,50A,50B ゲル状粘着剤、60 保護部材、70 被覆層、80 無機層、100 ひずみゲージ、110 基材、110a 上面、130 抵抗体、140 配線、150 電極、160 カバー層、130e、130e 終端、600,700,800,900 検出素子、610 ベース層、620 駆動コイル、640,650,660 絶縁層、670 ベース金属、680 感知コイル、710 上流電極、720 下流電極、730 磁性膜、740 絶縁膜、910 基板
図1
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