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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116736
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】熱処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/324 20060101AFI20240821BHJP
   H01L 21/26 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
H01L21/324 W
H01L21/26 Q
H01L21/324 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022518
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】中島 往馬
(57)【要約】
【課題】チャンバーにおける基板交換を確実に行うことができる熱処理方法を提供する。
【解決手段】処理チャンバー内にて先行ウェハーの熱処理を行う。処理チャンバーに対して半導体ウェハーの搬入出を行う搬送ロボットに向けての後続ウェハーの搬送を開始する。最初の後続ウェハーが搬送ロボットに到達して先行ウェハーと後続ウェハーとのウェハー交換が可能になったときにも、直ちにウェハー交換を行うのではなく、一定時間待機する。ウェハー交換を待機している間、複数の搬送ポジションを埋めるように後続ウェハーの搬送を継続する。一定の待機時間が経過してウェハー交換を実行する時点では、複数の搬送ポジションのうちの幾つかは後続ウェハーによって占められている。先行ウェハーによって搬送ポジションが塞がれることはなくなり、後続ウェハーを円滑に搬送して処理チャンバーにおけるウェハー交換を確実に行うことができる。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単独で処理を行う先行基板に熱処理を行った後に連続して処理を行う複数の後続基板に順次に熱処理を行う熱処理方法であって、
チャンバー内にて前記先行基板にランプから光を照射して当該先行基板を加熱する先行加熱工程と、
ロードポートから複数のポジションを経て搬送ロボットに向けて前記複数の後続基板を順次に搬送する第1搬送工程と、
前記複数の後続基板のうちの最初の後続基板が前記搬送ロボットに到達した後、前記搬送ロボットによる前記最初の後続基板と前記先行基板との基板交換を所定時間待機する待機工程と、
前記待機工程の間、前記複数のポジションを埋めるように前記ロードポートから前記搬送ロボットに向けて前記複数の後続基板を搬送する第2搬送工程と、
前記待機工程の後、前記搬送ロボットが前記チャンバー内の前記先行基板と前記最初の後続基板とを交換する交換工程と、
前記先行基板を前記搬送ロボットから前記ロードポートに向けて搬送しつつ、前記複数の後続基板を前記ロードポートから前記搬送ロボットに向けて順次に搬送する第3搬送工程と、
前記チャンバー内にて前記ランプからの光照射によって前記複数の後続基板を順次に加熱する後続加熱工程と、
を備えることを特徴とする熱処理方法。
【請求項2】
請求項1記載の熱処理方法において、
前記待機工程では、予め設定された一定の待機時間が経過するまで前記基板交換を待機することを特徴とする熱処理方法。
【請求項3】
請求項1記載の熱処理方法において、
前記待機工程では、前記第2搬送工程によって前記複数のポジションのうちの特定ポジションが埋まるまで前記基板交換を待機することを特徴とする熱処理方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の熱処理方法において、
前記複数のポジションは、基板の向きを調整するアライメント部、基板の傷を検知する傷検知部、および、基板を冷却する冷却部を含むことを特徴とする熱処理方法。
【請求項5】
請求項4記載の熱処理方法において、
前記先行基板はダミー基板であり、
前記先行加熱工程では、前記ダミー基板に光を照射して前記チャンバー内を加熱するダミー加熱処理を行うことを特徴とする熱処理方法。
【請求項6】
請求項5記載の熱処理方法において、
前記複数の後続基板はダミー基板であり、
前記先行加熱工程では、前記チャンバー内を一定の保温温度に保温するウォームアップ処理を行い、
前記後続加熱工程では、前記チャンバー内を目標温度に温調するコンディショニング処理を行うことを特徴とする熱処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単独で処理を行う先行基板に熱処理を行った後に連続して処理を行う複数の後続基板に順次に熱処理を行う熱処理方法に関する。処理対象となる基板には、例えば、半導体ウェハー、液晶表示装置用基板、flat panel display(FPD)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、または、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいて、極めて短時間で半導体ウェハーを加熱するフラッシュランプアニール(FLA)が注目されている。フラッシュランプアニールは、キセノンフラッシュランプ(以下、単に「フラッシュランプ」とするときにはキセノンフラッシュランプを意味する)を使用して半導体ウェハーの表面にフラッシュ光を照射することにより、半導体ウェハーの表面のみを極めて短時間(数ミリ秒以下)に昇温させる熱処理技術である。
【0003】
キセノンフラッシュランプの放射分光分布は紫外域から近赤外域であり、従来のハロゲンランプよりも波長が短く、シリコンの半導体ウェハーの基礎吸収帯とほぼ一致している。よって、キセノンフラッシュランプから半導体ウェハーにフラッシュ光を照射したときには、透過光が少なく半導体ウェハーを急速に昇温することが可能である。また、数ミリ秒以下の極めて短時間のフラッシュ光照射であれば、半導体ウェハーの表面近傍のみを選択的に昇温できることも判明している。
【0004】
このようなフラッシュランプアニールは、極短時間の加熱が必要とされる処理、例えば典型的には半導体ウェハーに注入された不純物の活性化に利用される。イオン注入法によって不純物が注入された半導体ウェハーの表面にフラッシュランプからフラッシュ光を照射すれば、当該半導体ウェハーの表面を極短時間だけ活性化温度にまで昇温することができ、不純物を深く拡散させることなく、不純物活性化のみを実行することができるのである。
【0005】
特許文献1には、チャンバー内に収容した半導体ウェハーにハロゲンランプから光照射を行って予備加熱した後に、当該半導体ウェハーの表面にフラッシュランプからフラッシュ光を照射する熱処理装置が開示されている。また、特許文献1には、先行する加熱処理済みの半導体ウェハーを搬送ロボットの一方のハンドによってチャンバーから取り出すとともに、もう一方のハンドで未処理の半導体ウェハーをチャンバー内に搬入してウェハー交換を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-120078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ウェハー交換を確実に行うためには、先行する半導体ウェハーの処理が終了した時点で搬送ロボットが後続の半導体ウェハーを保持してチャンバー前で待機している必要がある。このため、従来は、一連の半導体ウェハーの処理フローにおいて、チャンバーでの処理が律速段階となるようにレシピの処理時間を調整していた。すなわち、キャリアから取り出された半導体ウェハーがチャンバーに搬送されるまでに要する時間よりもチャンバーでの処理時間が長くなるように調整されていた。これにより、ウェハー交換を確実に行うことができ、その結果チャンバー内には常に半導体ウェハーが存在することとなって、チャンバー内温度を安定化することが可能となる。
【0008】
しかし、半導体ウェハーの搬送経路に新たな処理ユニットを追加すると、キャリアからチャンバーに至る半導体ウェハーの搬送時間が長くなる。そうすると、チャンバーでの処理が律速段階となる状態が崩れ、ウェハー交換が行えないケースが生じてチャンバー内に半導体ウェハーが存在しない時間帯が生じる。チャンバー内に半導体ウェハーが存在しないときには、ハロゲンランプおよびフラッシュランプによる加熱も行われないため、半導体ウェハーが存在しない時間が長くなるほど、チャンバーの温度は低下する。その結果、ロットの構成する複数の半導体ウェハーのそれぞれごとにチャンバーの温度が異なることとなり、それら複数の半導体ウェハー間での処理結果が不均一になるという問題が生じる。
【0009】
なお、レシピの処理時間を延ばすことによってチャンバーでの処理が律速段階となる状態に戻すことは可能ではあるが、多くの評価を経て決定された生産レシピの条件を変更することは容易ではない。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、チャンバーにおける基板交換を確実に行うことができる熱処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、単独で処理を行う先行基板に熱処理を行った後に連続して処理を行う複数の後続基板に順次に熱処理を行う熱処理方法において、チャンバー内にて前記先行基板にランプから光を照射して当該先行基板を加熱する先行加熱工程と、ロードポートから複数のポジションを経て搬送ロボットに向けて前記複数の後続基板を順次に搬送する第1搬送工程と、前記複数の後続基板のうちの最初の後続基板が前記搬送ロボットに到達した後、前記搬送ロボットによる前記最初の後続基板と前記先行基板との基板交換を所定時間待機する待機工程と、前記待機工程の間、前記複数のポジションを埋めるように前記ロードポートから前記搬送ロボットに向けて前記複数の後続基板を搬送する第2搬送工程と、前記待機工程の後、前記搬送ロボットが前記チャンバー内の前記先行基板と前記最初の後続基板とを交換する交換工程と、前記先行基板を前記搬送ロボットから前記ロードポートに向けて搬送しつつ、前記複数の後続基板を前記ロードポートから前記搬送ロボットに向けて順次に搬送する第3搬送工程と、前記チャンバー内にて前記ランプからの光照射によって前記複数の後続基板を順次に加熱する後続加熱工程と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る熱処理方法において、前記待機工程では、予め設定された一定の待機時間が経過するまで前記基板交換を待機することを特徴とする。
【0013】
また、請求項3の発明は、請求項1の発明に係る熱処理方法において、前記待機工程では、前記第2搬送工程によって前記複数のポジションのうちの特定ポジションが埋まるまで前記基板交換を待機することを特徴とする。
【0014】
また、請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれかの発明に係る熱処理方法において、前記複数のポジションは、基板の向きを調整するアライメント部、基板の傷を検知する傷検知部、および、基板を冷却する冷却部を含むことを特徴とする。
【0015】
また、請求項5の発明は、請求項4の発明に係る熱処理方法において、前記先行基板はダミー基板であり、前記先行加熱工程では、前記ダミー基板に光を照射して前記チャンバー内を加熱するダミー加熱処理を行うことを特徴とする。
【0016】
また、請求項6の発明は、請求項5の発明に係る熱処理方法において、前記複数の後続基板はダミー基板であり、前記先行加熱工程では、前記チャンバー内を一定の保温温度に保温するウォームアップ処理を行い、前記後続加熱工程では、前記チャンバー内を目標温度に温調するコンディショニング処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1から請求項6の発明によれば、最初の後続基板が搬送ロボットに到達した後、最初の後続基板と先行基板との基板交換を所定時間待機し、その待機工程の間、複数のポジションを埋めるように複数の後続基板を搬送するため、先行基板によって複数のポジションが塞がれることはなくなり、複数の後続基板を円滑に搬送してチャンバーにおける基板交換を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る熱処理装置を示す平面図である。
図2図1の熱処理装置の正面図である。
図3】熱処理部の構成を示す縦断面図である。
図4】保持部の全体外観を示す斜視図である。
図5】サセプタの平面図である。
図6】サセプタの断面図である。
図7】移載機構の平面図である。
図8】移載機構の側面図である。
図9】複数のハロゲンランプの配置を示す平面図である。
図10】第1実施形態における半導体ウェハーの搬送手順を示すフローチャートである。
図11】半導体ウェハーの搬送の一工程を模式的に示す図である。
図12】半導体ウェハーの搬送の一工程を模式的に示す図である。
図13】半導体ウェハーの搬送の一工程を模式的に示す図である。
図14】半導体ウェハーの搬送の一工程を模式的に示す図である。
図15】半導体ウェハーの搬送の一工程を模式的に示す図である。
図16】半導体ウェハーの搬送の一工程を模式的に示す図である。
図17】半導体ウェハーの搬送の一工程を模式的に示す図である。
図18】半導体ウェハーの搬送の一工程を模式的に示す図である。
図19】半導体ウェハーの搬送の一工程を模式的に示す図である。
図20】半導体ウェハーの搬送の一工程を模式的に示す図である。
図21】半導体ウェハーの搬送の一工程を模式的に示す図である。
図22】半導体ウェハーの搬送の一工程を模式的に示す図である。
図23】半導体ウェハーの搬送の他の例を模式的に示す図である。
図24】半導体ウェハーの搬送の比較例を模式的に示す図である。
図25】半導体ウェハーの搬送の比較例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下において、相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば、「一方向に」、「一方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」、「同軸」、など)は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。また、等しい状態であることを示す表現(例えば、「同一」、「等しい」、「均質」、など)は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。また、形状を示す表現(例えば、「円形状」、「四角形状」、「円筒形状」、など)は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲の形状を表すものとし、例えば凹凸または面取りなどを有していてもよい。また、構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、「有する」、といった各表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。また、「A、BおよびCのうちの少なくとも一つ」という表現には、「Aのみ」、「Bのみ」、「Cのみ」、「A、BおよびCのうち任意の2つ」、「A、BおよびCの全て」が含まれる。
【0020】
<第1実施形態>
まず、本発明に係る熱処理装置について説明する。図1は、本発明に係る熱処理装置100を示す平面図であり、図2はその正面図である。熱処理装置100は基板として円板形状の半導体ウェハーWにフラッシュ光を照射してその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。処理対象となる半導体ウェハーWのサイズは特に限定されるものではないが、例えばφ300mmやφ450mmである。なお、図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。また、図1図3の各図においては、それらの方向関係を明確にするためZ軸方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系を付している。
【0021】
図1および図2に示すように、熱処理装置100は、未処理の半導体ウェハーWを外部から装置内に搬入するとともに処理済みの半導体ウェハーWを装置外に搬出するためのインデクサ部101、未処理の半導体ウェハーWの位置決めを行うアライメント部230、半導体ウェハーWの裏面における傷の有無を検知する傷検知部300、加熱処理後の半導体ウェハーWの冷却を行う2つの冷却部(第1冷却部130および第2冷却部140)、半導体ウェハーWにフラッシュ加熱処理を施す熱処理部160、並びに、第1冷却部130,第2冷却部140および熱処理部160に対して半導体ウェハーWの受け渡しを行う搬送ロボット150を備える。また、熱処理装置100は、上記の各処理部に設けられた動作機構および搬送ロボット150を制御して半導体ウェハーWのフラッシュ加熱処理を進行させる制御部3を備える。
【0022】
インデクサ部101は、複数のキャリアCを並べて載置するロードポート110と、各キャリアCから未処理の半導体ウェハーWを取り出すとともに、各キャリアCに処理済みの半導体ウェハーWを収納する受渡ロボット120とを備えている。正確にはインデクサ部101には3つのロードポートが設けられており、ロードポート110は、第1ロードポート110a、第2ロードポート110bおよび第3ロードポート110cを含む総称である(3つのロードポートを特に区別しない場合には単にロードポート110とする)。3つのロードポートのうち第1ロードポート110aおよび第2ロードポート110bには製品となる半導体ウェハーW(以下、プロダクトウェハーWとも称する)を収容したキャリアCが載置される。一方、第3ロードポート110cは、ダミーウェハーDWを収容したダミーキャリアDC専用のロードポートである。すなわち、第3ロードポート110cにはダミーキャリアDCのみが載置される。典型的には、第3ロードポート110cには複数のダミーウェハーDWを収容したダミーキャリアDCが常時載置されている。
【0023】
未処理の半導体ウェハーWを収容したキャリアCおよびダミーキャリアDCは無人搬送車(AGV、OHT)等によって搬送されてロードポート110に載置される。また、処理済みの半導体ウェハーWを収容したキャリアCおよびダミーキャリアDCも無人搬送車によってロードポート110から持ち去られる。
【0024】
また、ロードポート110においては、受渡ロボット120がキャリアCおよびダミーキャリアDCに対して任意の半導体ウェハーW(またはダミーウェハーDW)の出し入れを行うことができるように、キャリアCおよびダミーキャリアDCが図2の矢印CUにて示す如く昇降移動可能に構成されている。なお、キャリアCおよびダミーキャリアDCの形態としては、半導体ウェハーWを密閉空間に収納するFOUP(front opening unified pod)の他に、SMIF(Standard Mechanical Inter Face)ポッドや収納した半導体ウェハーWを外気に曝すOC(open cassette)であっても良い。
【0025】
また、受渡ロボット120は、図1の矢印120Sにて示すようなスライド移動、矢印120Rにて示すような旋回動作および昇降動作が可能とされている。受渡ロボット120は、それぞれが半導体ウェハーWを保持する2つの移載ハンド121a,121bを備える。これらの移載ハンド121a,121bは上下に所定のピッチだけ隔てて配置され、それぞれ独立して同一水平方向に直線的に進退移動可能とされている。これにより、受渡ロボット120は、キャリアCおよびダミーキャリアDCに対して半導体ウェハーWの出し入れを行うとともに、アライメント部230、傷検知部300、第1冷却部130および第2冷却部140に対して半導体ウェハーWの受け渡しを行う。受渡ロボット120によるキャリアC(またはダミーキャリアDC)に対する半導体ウェハーWの出し入れは、移載ハンド121a(または移載ハンド121b)のスライド移動、および、キャリアCの昇降移動により行われる。また、受渡ロボット120とアライメント部230、傷検知部300、第1冷却部130または第2冷却部140との半導体ウェハーWの受け渡しは、移載ハンド121a(または移載ハンド121b)の進退移動、および、受渡ロボット120の昇降動作によって行われる。
【0026】
アライメント部230は、Y軸方向に沿ったインデクサ部101の側方(+Y側)に接続されて設けられている。アライメント部230は、半導体ウェハーWを水平面内で回転させてフラッシュ加熱に適切な向きに向ける処理部である。アライメント部230は、アルミニウム合金製の筐体であるアライメントチャンバー231の内部に、半導体ウェハーWを水平姿勢に支持して回転させる機構、および、半導体ウェハーWの周縁部に形成されたノッチやオリフラ等を光学的に検出する機構などを設けて構成される。
【0027】
アライメント部230への半導体ウェハーWの受け渡しは受渡ロボット120によって行われる。受渡ロボット120からアライメントチャンバー231へはウェハー中心が所定の位置に位置するように半導体ウェハーWが渡される。アライメント部230では、インデクサ部101から受け取った半導体ウェハーWの中心部を回転中心として鉛直方向軸まわりで半導体ウェハーWを回転させ、ノッチ等を光学的に検出することによって半導体ウェハーWの向きを調整する。向き調整の終了した半導体ウェハーWは受渡ロボット120によってアライメントチャンバー231から取り出される。
【0028】
傷検知部300は、Y軸方向に沿ってアライメント部230とは反対側のインデクサ部101の側方(-Y側)に接続されて設けられている。傷検知部300は、半導体ウェハーWの裏面における傷の有無を検知する。なお、半導体ウェハーWの主面のうちパターン形成がなされて処理対象となるのが表面であり、その表面の反対側の面が裏面である。傷検知部300は、アルミニウム合金製の筐体である傷検知チャンバー301の内部に、半導体ウェハーWの裏面を撮像する撮像部および取得された画像データに対して所定の画像処理を行うことによって傷の有無を判定する判定部などを備えて構成される。
【0029】
傷検知部300への半導体ウェハーWの受け渡しは受渡ロボット120によって行われる。受渡ロボット120から傷検知チャンバー301へはウェハー中心が所定の位置に位置するように半導体ウェハーWが渡される。傷検知部300では、半導体ウェハーWの裏面を撮像して取得した画像データを解析して傷の有無を検出する。傷検知の終了した半導体ウェハーWは受渡ロボット120によって傷検知チャンバー301から取り出される。
【0030】
搬送ロボット150による半導体ウェハーWの搬送空間として搬送ロボット150を収容する搬送チャンバー170が設けられている。その搬送チャンバー170の三方に熱処理部160の処理チャンバー6、第1冷却部130の第1クールチャンバー131および第2冷却部140の第2クールチャンバー141が連通接続されている。
【0031】
熱処理装置100の主要部である熱処理部160は、予備加熱を行った半導体ウェハーWにキセノンフラッシュランプFLからの閃光(フラッシュ光)を照射してフラッシュ加熱処理を行う基板処理部である。この熱処理部160の構成についてはさらに後述する。
【0032】
第1冷却部130および第2冷却部140は、概ね同様の構成を備える。第1冷却部130および第2冷却部140はそれぞれ、アルミニウム合金製の筐体である第1クールチャンバー131および第2クールチャンバー141の内部に、金属製の冷却プレートと、その上面に載置された石英板とを備える(いずれも図示省略)。当該冷却プレートは、ペルチェ素子または恒温水循環によって常温(約23℃)に温調されている。熱処理部160にてフラッシュ加熱処理が施された半導体ウェハーWは、第1クールチャンバー131または第2クールチャンバー141に搬入されて当該石英板に載置されて冷却される。
【0033】
第1クールチャンバー131および第2クールチャンバー141はともに、インデクサ部101と搬送チャンバー170との間にて、それらの双方に接続されている。第1クールチャンバー131および第2クールチャンバー141には、半導体ウェハーWを搬入出するための2つの開口が形設されている。第1クールチャンバー131の2つの開口のうちインデクサ部101に接続される開口はゲートバルブ181によって開閉可能とされている。一方、第1クールチャンバー131の搬送チャンバー170に接続される開口はゲートバルブ183によって開閉可能とされている。すなわち、第1クールチャンバー131とインデクサ部101とはゲートバルブ181を介して接続され、第1クールチャンバー131と搬送チャンバー170とはゲートバルブ183を介して接続されている。
【0034】
インデクサ部101と第1クールチャンバー131との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う際には、ゲートバルブ181が開放される。また、第1クールチャンバー131と搬送チャンバー170との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う際には、ゲートバルブ183が開放される。ゲートバルブ181およびゲートバルブ183が閉鎖されているときには、第1クールチャンバー131の内部が密閉空間となる。
【0035】
また、第2クールチャンバー141の2つの開口のうちインデクサ部101に接続される開口はゲートバルブ182によって開閉可能とされている。一方、第2クールチャンバー141の搬送チャンバー170に接続される開口はゲートバルブ184によって開閉可能とされている。すなわち、第2クールチャンバー141とインデクサ部101とはゲートバルブ182を介して接続され、第2クールチャンバー141と搬送チャンバー170とはゲートバルブ184を介して接続されている。
【0036】
インデクサ部101と第2クールチャンバー141との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う際には、ゲートバルブ182が開放される。また、第2クールチャンバー141と搬送チャンバー170との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う際には、ゲートバルブ184が開放される。ゲートバルブ182およびゲートバルブ184が閉鎖されているときには、第2クールチャンバー141の内部が密閉空間となる。
【0037】
さらに、第1冷却部130および第2冷却部140はそれぞれ、第1クールチャンバー131および第2クールチャンバー141に清浄な窒素ガスを供給するガス供給機構とチャンバー内の雰囲気を排気する排気機構とを備える。これらのガス供給機構および排気機構は、流量を2段階に切り換え可能とされていても良い。
【0038】
搬送チャンバー170に設けられた搬送ロボット150は、鉛直方向に沿った軸を中心に矢印150Rにて示すように旋回可能とされる。搬送ロボット150は、複数のアームセグメントからなる2つのリンク機構を有し、それら2つのリンク機構の先端にはそれぞれ半導体ウェハーWを保持する搬送ハンド151a,151bが設けられている。これらの搬送ハンド151a,151bは上下に所定のピッチだけ隔てて配置され、リンク機構によりそれぞれ独立して同一水平方向に直線的にスライド移動可能とされている。また、搬送ロボット150は、2つのリンク機構が設けられるベースを昇降移動することにより、所定のピッチだけ離れた状態のまま2つの搬送ハンド151a,151bを昇降移動させる。
【0039】
搬送ロボット150が第1クールチャンバー131、第2クールチャンバー141または熱処理部160の処理チャンバー6を受け渡し相手として半導体ウェハーWの受け渡し(出し入れ)を行う際には、まず、両搬送ハンド151a,151bが受け渡し相手と対向するように旋回し、その後(または旋回している間に)昇降移動していずれかの搬送ハンドが受け渡し相手と半導体ウェハーWを受け渡しする高さに位置する。そして、搬送ハンド151a(151b)を水平方向に直線的にスライド移動させて受け渡し相手と半導体ウェハーWの受け渡しを行う。
【0040】
搬送ロボット150と受渡ロボット120との半導体ウェハーWの受け渡しは第1冷却部130または第2冷却部140を介して行うことができる。すなわち、第1冷却部130の第1クールチャンバー131および第2冷却部140の第2クールチャンバー141は、搬送ロボット150と受渡ロボット120との間で半導体ウェハーWを受け渡すためのパスとしても機能するものである。具体的には、搬送ロボット150または受渡ロボット120のうちの一方が第1クールチャンバー131または第2クールチャンバー141に渡した半導体ウェハーWを他方が受け取ることによって半導体ウェハーWの受け渡しが行われる。受渡ロボット120は、ロードポート110から搬送ロボット150に向けて半導体ウェハーWを搬送する搬送機構の役割を担う。
【0041】
上述したように、第1クールチャンバー131および第2クールチャンバー141とインデクサ部101との間にはそれぞれゲートバルブ181,182が設けられている。また、搬送チャンバー170と第1クールチャンバー131および第2クールチャンバー141との間にはそれぞれゲートバルブ183,184が設けられている。さらに、搬送チャンバー170と熱処理部160の処理チャンバー6との間にはゲートバルブ185が設けられている。熱処理装置100内にて半導体ウェハーWが搬送される際には、適宜これらのゲートバルブが開閉される。また、搬送チャンバー170、アライメントチャンバー231および傷検知チャンバー301にもガス供給部から窒素ガスが供給されるとともに、それらの内部の雰囲気が排気部によって排気される(いずれも図示省略)。
【0042】
次に、熱処理部160の構成について説明する。図3は、熱処理部160の構成を示す縦断面図である。熱処理部160は、半導体ウェハーWを収容して加熱処理を行う処理チャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するフラッシュランプハウス5と、複数のハロゲンランプHLを内蔵するハロゲンランプハウス4と、を備える。処理チャンバー6の上側にフラッシュランプハウス5が設けられるとともに、下側にハロゲンランプハウス4が設けられている。また、熱処理部160は、処理チャンバー6の内部に、半導体ウェハーWを水平姿勢に保持する保持部7と、保持部7と搬送ロボット150との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う移載機構10と、を備える。
【0043】
処理チャンバー6は、筒状のチャンバー側部61の上下に石英製のチャンバー窓を装着して構成されている。チャンバー側部61は上下が開口された概略筒形状を有しており、上側開口には上側チャンバー窓63が装着されて閉塞され、下側開口には下側チャンバー窓64が装着されて閉塞されている。処理チャンバー6の天井部を構成する上側チャンバー窓63は、石英により形成された円板形状部材であり、フラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を処理チャンバー6内に透過する石英窓として機能する。また、処理チャンバー6の床部を構成する下側チャンバー窓64も、石英により形成された円板形状部材であり、ハロゲンランプHLからの光を処理チャンバー6内に透過する石英窓として機能する。
【0044】
また、チャンバー側部61の内側の壁面の上部には反射リング68が装着され、下部には反射リング69が装着されている。反射リング68,69は、ともに円環状に形成されている。上側の反射リング68は、チャンバー側部61の上側から嵌め込むことによって装着される。一方、下側の反射リング69は、チャンバー側部61の下側から嵌め込んで図示省略のビスで留めることによって装着される。すなわち、反射リング68,69は、ともに着脱自在にチャンバー側部61に装着されるものである。処理チャンバー6の内側空間、すなわち上側チャンバー窓63、下側チャンバー窓64、チャンバー側部61および反射リング68,69によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。
【0045】
チャンバー側部61に反射リング68,69が装着されることによって、処理チャンバー6の内壁面に凹部62が形成される。すなわち、チャンバー側部61の内壁面のうち反射リング68,69が装着されていない中央部分と、反射リング68の下端面と、反射リング69の上端面とで囲まれた凹部62が形成される。凹部62は、処理チャンバー6の内壁面に水平方向に沿って円環状に形成され、半導体ウェハーWを保持する保持部7を囲繞する。チャンバー側部61および反射リング68,69は、強度と耐熱性に優れた金属材料(例えば、ステンレススチール)にて形成されている。
【0046】
また、チャンバー側部61には、処理チャンバー6に対して半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部(基板搬出入口)66が形設されている。搬送開口部66は、ゲートバルブ185によって開閉可能とされている。搬送開口部66は凹部62の外周面に連通接続されている。このため、ゲートバルブ185が搬送開口部66を開放しているときには、搬送開口部66から凹部62を通過して熱処理空間65への半導体ウェハーWの搬入および熱処理空間65からの半導体ウェハーWの搬出を行うことができる。また、ゲートバルブ185が搬送開口部66を閉鎖すると処理チャンバー6内の熱処理空間65が密閉空間とされる。
【0047】
さらに、チャンバー側部61には、貫通孔61aおよび貫通孔61bが穿設されている。チャンバー側部61の外壁面の貫通孔61aが設けられている部位には端縁部放射温度計(エッジパイロメーター)20が取り付けられている。貫通孔61aは、後述するサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの下面から放射された赤外光を端縁部放射温度計20に導くための円筒状の孔である。一方、チャンバー側部61の外壁面の貫通孔61bが設けられている部位には中央部放射温度計(センターパイロメーター)25が取り付けられている。貫通孔61bは、サセプタ74から放射された赤外光を中央部放射温度計25に導くための円筒状の孔である。貫通孔61aおよび貫通孔61bは、その貫通方向の軸がサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの主面と交わるように、水平方向に対して傾斜して設けられている。よって、端縁部放射温度計20および中央部放射温度計25はサセプタ74の斜め下方に設けられることとなる。貫通孔61aおよび貫通孔61bの熱処理空間65に臨む側の端部には、端縁部放射温度計20および中央部放射温度計25が測定可能な波長領域の赤外光を透過させるフッ化バリウム材料からなる透明窓21および透明窓26がそれぞれ装着されている。
【0048】
また、処理チャンバー6の内壁上部には熱処理空間65に処理ガスを供給するガス供給孔81が形設されている。ガス供給孔81は、凹部62よりも上側位置に形設されており、反射リング68に設けられていても良い。ガス供給孔81は処理チャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間82を介してガス供給管83に連通接続されている。ガス供給管83は処理ガス供給源85に接続されている。また、ガス供給管83の経路途中にはバルブ84が介挿されている。バルブ84が開放されると、処理ガス供給源85から緩衝空間82に処理ガスが送給される。緩衝空間82に流入した処理ガスは、ガス供給孔81よりも流体抵抗の小さい緩衝空間82内を拡がるように流れてガス供給孔81から熱処理空間65内へと供給される。処理ガスとしては、窒素(N)等の不活性ガス、または、水素(H)、アンモニア(NH)等の反応性ガス、或いはそれらを混合した混合ガスを用いることができる(本実施形態では窒素)。
【0049】
一方、処理チャンバー6の内壁下部には熱処理空間65内の気体を排気するガス排気孔86が形設されている。ガス排気孔86は、凹部62よりも下側位置に形設されており、反射リング69に設けられていても良い。ガス排気孔86は処理チャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間87を介してガス排気管88に連通接続されている。ガス排気管88は排気機構190に接続されている。また、ガス排気管88の経路途中にはバルブ89が介挿されている。バルブ89が開放されると、熱処理空間65の気体がガス排気孔86から緩衝空間87を経てガス排気管88へと排出される。なお、ガス供給孔81およびガス排気孔86は、処理チャンバー6の周方向に沿って複数設けられていても良いし、スリット状のものであっても良い。また、処理ガス供給源85および排気機構190は、熱処理装置100に設けられた機構であっても良いし、熱処理装置100が設置される工場のユーティリティであっても良い。
【0050】
また、搬送開口部66の先端にも熱処理空間65内の気体を排出するガス排気管191が接続されている。ガス排気管191はバルブ192を介して排気機構190に接続されている。バルブ192を開放することによって、搬送開口部66を介して処理チャンバー6内の気体が排気される。
【0051】
図4は、保持部7の全体外観を示す斜視図である。保持部7は、基台リング71、連結部72およびサセプタ74を備えて構成される。基台リング71、連結部72およびサセプタ74はいずれも石英にて形成されている。すなわち、保持部7の全体が石英にて形成されている。
【0052】
基台リング71は円環形状から一部が欠落した円弧形状の石英部材である。この欠落部分は、後述する移載機構10の移載アーム11と基台リング71との干渉を防ぐために設けられている。基台リング71は凹部62の底面に載置されることによって、処理チャンバー6の壁面に支持されることとなる(図3参照)。基台リング71の上面に、その円環形状の周方向に沿って複数の連結部72(本実施形態では4個)が立設される。連結部72も石英の部材であり、溶接によって基台リング71に固着される。
【0053】
サセプタ74は基台リング71に設けられた4個の連結部72によって支持される。図5は、サセプタ74の平面図である。また、図6は、サセプタ74の断面図である。サセプタ74は、保持プレート75、ガイドリング76および複数の基板支持ピン77を備える。保持プレート75は、石英にて形成された略円形の平板状部材である。保持プレート75の直径は半導体ウェハーWの直径よりも大きい。すなわち、保持プレート75は、半導体ウェハーWよりも大きな平面サイズを有する。
【0054】
保持プレート75の上面周縁部にガイドリング76が設置されている。ガイドリング76は、半導体ウェハーWの直径よりも大きな内径を有する円環形状の部材である。例えば、半導体ウェハーWの直径がφ300mmの場合、ガイドリング76の内径はφ320mmである。ガイドリング76の内周は、保持プレート75から上方に向けて広くなるようなテーパ面とされている。ガイドリング76は、保持プレート75と同様の石英にて形成される。ガイドリング76は、保持プレート75の上面に溶着するようにしても良いし、別途加工したピンなどによって保持プレート75に固定するようにしても良い。或いは、保持プレート75とガイドリング76とを一体の部材として加工するようにしても良い。
【0055】
保持プレート75の上面のうちガイドリング76よりも内側の領域が半導体ウェハーWを保持する平面状の保持面75aとされる。保持プレート75の保持面75aには、複数の基板支持ピン77が立設されている。本実施形態においては、保持面75aの外周円(ガイドリング76の内周円)と同心円の周上に沿って30°毎に計12個の基板支持ピン77が立設されている。12個の基板支持ピン77を配置した円の径(対向する基板支持ピン77間の距離)は半導体ウェハーWの径よりも小さく、半導体ウェハーWの径がφ300mmであればφ270mm~φ280mm(本実施形態ではφ270mm)である。それぞれの基板支持ピン77は石英にて形成されている。複数の基板支持ピン77は、保持プレート75の上面に溶接によって設けるようにしても良いし、保持プレート75と一体に加工するようにしても良い。
【0056】
図4に戻り、基台リング71に立設された4個の連結部72とサセプタ74の保持プレート75の周縁部とが溶接によって固着される。すなわち、サセプタ74と基台リング71とは連結部72によって固定的に連結されている。このような保持部7の基台リング71が処理チャンバー6の壁面に支持されることによって、保持部7が処理チャンバー6に装着される。保持部7が処理チャンバー6に装着された状態においては、サセプタ74の保持プレート75は水平姿勢(法線が鉛直方向と一致する姿勢)となる。すなわち、保持プレート75の保持面75aは水平面となる。
【0057】
処理チャンバー6に搬入された半導体ウェハーWは、処理チャンバー6に装着された保持部7のサセプタ74の上に水平姿勢にて載置されて保持される。このとき、半導体ウェハーWは保持プレート75上に立設された12個の基板支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。より厳密には、12個の基板支持ピン77の上端部が半導体ウェハーWの下面に接触して当該半導体ウェハーWを支持する。12個の基板支持ピン77の高さ(基板支持ピン77の上端から保持プレート75の保持面75aまでの距離)は均一であるため、12個の基板支持ピン77によって半導体ウェハーWを水平姿勢に支持することができる。
【0058】
また、半導体ウェハーWは複数の基板支持ピン77によって保持プレート75の保持面75aから所定の間隔を隔てて支持されることとなる。基板支持ピン77の高さよりもガイドリング76の厚さの方が大きい。従って、複数の基板支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの水平方向の位置ずれはガイドリング76によって防止される。
【0059】
また、図4および図5に示すように、サセプタ74の保持プレート75には、上下に貫通して開口部78が形成されている。開口部78は、端縁部放射温度計20(図3参照)がサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの下面から放射される放射光(赤外光)を受光するために設けられている。すなわち、端縁部放射温度計20が開口部78を介してサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの下面から放射された光を受光してその半導体ウェハーWの温度を測定する。さらに、サセプタ74の保持プレート75には、後述する移載機構10のリフトピン12が半導体ウェハーWの受け渡しのために貫通する4個の貫通孔79が穿設されている。
【0060】
図7は、移載機構10の平面図である。また、図8は、移載機構10の側面図である。移載機構10は、2本の移載アーム11を備える。移載アーム11は、概ね円環状の凹部62に沿うような円弧形状とされている。それぞれの移載アーム11には2本のリフトピン12が立設されている。各移載アーム11は水平移動機構13によって回動可能とされている。水平移動機構13は、一対の移載アーム11を保持部7に対して半導体ウェハーWの移載を行う移載動作位置(図7の実線位置)と保持部7に保持された半導体ウェハーWと平面視で重ならない退避位置(図7の二点鎖線位置)との間で水平移動させる。移載動作位置はサセプタ74の下方であり、退避位置はサセプタ74よりも外方である。水平移動機構13としては、個別のモータによって各移載アーム11をそれぞれ回動させるものであっても良いし、リンク機構を用いて1個のモータによって一対の移載アーム11を連動させて回動させるものであっても良い。
【0061】
また、一対の移載アーム11は、昇降機構14によって水平移動機構13とともに昇降移動される。昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて上昇させると、計4本のリフトピン12がサセプタ74に穿設された貫通孔79(図4,5参照)を通過し、リフトピン12の上端がサセプタ74の上面から突き出る。一方、昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて下降させてリフトピン12を貫通孔79から抜き取り、水平移動機構13が一対の移載アーム11を開くように移動させると各移載アーム11が退避位置に移動する。一対の移載アーム11の退避位置は、保持部7の基台リング71の直上である。基台リング71は凹部62の底面に載置されているため、移載アーム11の退避位置は凹部62の内側となる。なお、移載機構10の駆動部(水平移動機構13および昇降機構14)が設けられている部位の近傍にも図示省略の排気機構が設けられており、移載機構10の駆動部周辺の雰囲気が処理チャンバー6の外部に排出されるように構成されている。
【0062】
図3に示すように、処理チャンバー6には、端縁部放射温度計20および中央部放射温度計25の2つの放射温度計が設けられている。端縁部放射温度計20および中央部放射温度計25の双方ともにサセプタ74に保持される半導体ウェハーWよりも下方に設けられている。端縁部放射温度計20は、サセプタ74に設けられた切り欠きである開口部78を介して半導体ウェハーWの下面から放射された赤外光を受光してその下面の温度を測定する。すなわち、端縁部放射温度計20の測定領域は開口部78の内側となる。一方、中央部放射温度計25の測定領域は、サセプタ74の保持プレート75の面内である。中央部放射温度計25は、サセプタ74から放射された赤外光を受光してサセプタ74の温度を測定する。
【0063】
処理チャンバー6の上方に設けられたフラッシュランプハウス5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、フラッシュランプハウス5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。フラッシュランプハウス5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状の石英窓である。フラッシュランプハウス5が処理チャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53が上側チャンバー窓63と相対向することとなる。フラッシュランプFLは処理チャンバー6の上方からランプ光放射窓53および上側チャンバー窓63を介して熱処理空間65にフラッシュ光を照射する。
【0064】
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
【0065】
キセノンフラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に付設されたトリガー電極とを備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサーに電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。このようなキセノンフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし100ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、ハロゲンランプHLの如き連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。すなわち、フラッシュランプFLは、1秒未満の極めて短い時間で瞬間的に発光するパルス発光ランプである。なお、フラッシュランプFLの発光時間は、フラッシュランプFLに電力供給を行うランプ電源のコイル定数によって調整することができる。
【0066】
また、リフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を熱処理空間65の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。
【0067】
処理チャンバー6の下方に設けられたハロゲンランプハウス4は、筐体41の内側に複数本(本実施形態では40本)のハロゲンランプHLを内蔵している。複数のハロゲンランプHLは処理チャンバー6の下方から下側チャンバー窓64を介して熱処理空間65への光照射を行う。
【0068】
図9は、複数のハロゲンランプHLの配置を示す平面図である。本実施形態では、上下2段に各20本ずつのハロゲンランプHLが配設されている。各ハロゲンランプHLは、長尺の円筒形状を有する棒状ランプである。上段、下段ともに20本のハロゲンランプHLは、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように配列されている。よって、上段、下段ともにハロゲンランプHLの配列によって形成される平面は水平面である。
【0069】
また、図9に示すように、上段、下段ともに保持部7に保持される半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域におけるハロゲンランプHLの配設密度が高くなっている。すなわち、上下段ともに、ランプ配列の中央部よりも周縁部の方がハロゲンランプHLの配設ピッチが短い。このため、ハロゲンランプHLからの光照射による加熱時に温度低下が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部により多い光量の照射を行うことができる。
【0070】
また、上段のハロゲンランプHLからなるランプ群と下段のハロゲンランプHLからなるランプ群とが格子状に交差するように配列されている。すなわち、上段の各ハロゲンランプHLの長手方向と下段の各ハロゲンランプHLの長手方向とが直交するように計40本のハロゲンランプHLが配設されている。
【0071】
ハロゲンランプHLは、ガラス管内部に配設されたフィラメントに通電することでフィラメントを白熱化させて発光させるフィラメント方式の光源である。ガラス管の内部には、窒素やアルゴン等の不活性ガスにハロゲン元素(ヨウ素、臭素等)を微量導入した気体が封入されている。ハロゲン元素を導入することによって、フィラメントの折損を抑制しつつフィラメントの温度を高温に設定することが可能となる。したがって、ハロゲンランプHLは、通常の白熱電球に比べて寿命が長くかつ強い光を連続的に照射できるという特性を有する。すなわち、ハロゲンランプHLは少なくとも1秒以上連続して発光する連続点灯ランプである。また、ハロゲンランプHLは棒状ランプであるため長寿命であり、ハロゲンランプHLを水平方向に沿わせて配置することにより上方の半導体ウェハーWへの放射効率が優れたものとなる。
【0072】
また、ハロゲンランプハウス4の筐体41内にも、2段のハロゲンランプHLの下側にリフレクタ43が設けられている(図3)。リフレクタ43は、複数のハロゲンランプHLから出射された光を熱処理空間65の側に反射する。
【0073】
上記の構成以外にも熱処理部160は、半導体ウェハーWの熱処理時にハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLから発生する熱エネルギーによるハロゲンランプハウス4、フラッシュランプハウス5および処理チャンバー6の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、処理チャンバー6の壁体には水冷管(図示省略)が設けられている。また、ハロゲンランプハウス4およびフラッシュランプハウス5は、内部に気体流を形成して排熱する空冷構造とされている。また、上側チャンバー窓63とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、フラッシュランプハウス5および上側チャンバー窓63を冷却する。
【0074】
制御部3は、熱処理装置100に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行う回路であるCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく記憶部(例えば、磁気ディスクまたはSSD)を備えている。制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって熱処理装置100における処理が進行する。なお、図1においては、インデクサ部101内に制御部3を示しているが、これに限定されるものではなく、制御部3は熱処理装置100内の任意の位置に配置することができる。
【0075】
次に、本発明に係る熱処理装置100の処理動作について説明する。まず、製品となる半導体ウェハー(プロダクトウェハー)Wに対する処理動作について説明する。以下に説明する半導体ウェハーWの処理手順は、制御部3が熱処理装置100の各動作機構を制御することにより進行する。
【0076】
まず、未処理の半導体ウェハーWがキャリアCに複数枚収容された状態でインデクサ部101の第1ロードポート110aまたは第2ロードポート110bに載置される。そして、受渡ロボット120が移載ハンド121a(または移載ハンド121b)によってキャリアCから未処理の半導体ウェハーWを1枚ずつ取り出し、アライメント部230のアライメントチャンバー231に搬入する。アライメントチャンバー231では、半導体ウェハーWをその中心部を回転中心として水平面内にて鉛直方向軸まわりで回転させ、ノッチ等を光学的に検出することによって半導体ウェハーWの向きを調整する。
【0077】
次に、インデクサ部101の受渡ロボット120がアライメントチャンバー231から向きの調整された半導体ウェハーWを取り出し、傷検知部300の傷検知チャンバー301に搬入する。傷検知チャンバー301では、半導体ウェハーWの裏面を撮像し、得られた画像データを解析して傷の有無を検出する。なお、傷が検出された半導体ウェハーWについては、熱処理部160にてフラッシュ光を照射したときに割れるおそれがあるため、その半導体ウェハーWをキャリアCに戻すようにしても良い。
【0078】
次に、受渡ロボット120が傷検知チャンバー301から半導体ウェハーWを取り出し、第1冷却部130の第1クールチャンバー131または第2冷却部140の第2クールチャンバー141に搬入する。第1クールチャンバー131または第2クールチャンバー141に搬入された未処理の半導体ウェハーWは搬送ロボット150によって搬送チャンバー170に搬出される。未処理の半導体ウェハーWがインデクサ部101から第1クールチャンバー131または第2クールチャンバー141を経て搬送チャンバー170に移送される際には、第1クールチャンバー131および第2クールチャンバー141は半導体ウェハーWの受け渡しのためのパスとして機能するのである。
【0079】
半導体ウェハーWを取り出した搬送ロボット150は熱処理部160を向くように旋回する。続いて、搬送ロボット150が搬送ハンド151a(または搬送ハンド151b)によって未処理の半導体ウェハーWを熱処理部160の処理チャンバー6に搬入する。
【0080】
処理チャンバー6に搬入された半導体ウェハーWには、ハロゲンランプHLによって予備加熱が行われた後、フラッシュランプFLからのフラッシュ光照射によってフラッシュ加熱処理が行われる。このフラッシュ加熱処理により、例えば半導体ウェハーWに注入された不純物の活性化が行われる。
【0081】
フラッシュ加熱処理が終了した後、搬送ロボット150が搬送ハンド151a(または搬送ハンド151b)を用いて処理チャンバー6からフラッシュ加熱処理後の半導体ウェハーWを搬送チャンバー170に搬出する。半導体ウェハーWを取り出した搬送ロボット150は、処理チャンバー6から第1クールチャンバー131または第2クールチャンバー141に向くように旋回する。
【0082】
その後、搬送ロボット150が加熱処理後の半導体ウェハーWを第1冷却部130の第1クールチャンバー131または第2冷却部140の第2クールチャンバー141に搬入する。このとき、当該半導体ウェハーWが加熱処理前に第1クールチャンバー131を通ってきている場合には加熱処理後にも第1クールチャンバー131に搬入され、加熱処理前に第2クールチャンバー141を通ってきている場合には加熱処理後にも第2クールチャンバー141に搬入される。第1クールチャンバー131または第2クールチャンバー141では、フラッシュ加熱処理後の半導体ウェハーWの冷却処理が行われる。熱処理部160の処理チャンバー6から搬出された時点での半導体ウェハーW全体の温度は比較的高温であるため、これを第1クールチャンバー131または第2クールチャンバー141にて常温近傍にまで冷却するのである。
【0083】
所定の冷却処理時間が経過した後、受渡ロボット120が冷却後の半導体ウェハーWを第1クールチャンバー131または第2クールチャンバー141から搬出し、キャリアCへと返却する。キャリアCに所定枚数の処理済み半導体ウェハーWが収容されると、そのキャリアCはインデクサ部101の第1ロードポート110aまたは第2ロードポート110bから搬出される。
【0084】
熱処理部160における加熱処理について説明を続ける。処理チャンバー6への半導体ウェハーWの搬入に先立って、給気のためのバルブ84が開放されるとともに、排気用のバルブ89,192が開放されて処理チャンバー6内に対する給排気が開始される。バルブ84が開放されると、ガス供給孔81から熱処理空間65に窒素ガスが供給される。また、バルブ89が開放されると、ガス排気孔86から処理チャンバー6内の気体が排気される。これにより、処理チャンバー6内の熱処理空間65の上部から供給された窒素ガスが下方へと流れ、熱処理空間65の下部から排気される。
【0085】
また、バルブ192が開放されることによって、搬送開口部66からも処理チャンバー6内の気体が排気される。さらに、図示省略の排気機構によって移載機構10の駆動部周辺の雰囲気も排気される。なお、熱処理部160における半導体ウェハーWの熱処理時には窒素ガスが熱処理空間65に継続的に供給されており、その供給量は処理工程に応じて適宜変更される。
【0086】
続いて、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放され、搬送ロボット150により搬送開口部66を介して処理対象となる半導体ウェハーWが処理チャンバー6内の熱処理空間65に搬入される。搬送ロボット150は、未処理の半導体ウェハーWを保持する搬送ハンド151a(または搬送ハンド151b)を保持部7の直上位置まで進出させて停止させる。そして、移載機構10の一対の移載アーム11が退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12が貫通孔79を通ってサセプタ74の保持プレート75の上面から突き出て半導体ウェハーWを受け取る。このとき、リフトピン12は基板支持ピン77の上端よりも上方にまで上昇する。
【0087】
未処理の半導体ウェハーWがリフトピン12に載置された後、搬送ロボット150が搬送ハンド151aを熱処理空間65から退出させ、ゲートバルブ185によって搬送開口部66が閉鎖される。そして、一対の移載アーム11が下降することにより、半導体ウェハーWは移載機構10から保持部7のサセプタ74に受け渡されて水平姿勢にて下方より保持される。半導体ウェハーWは、保持プレート75上に立設された複数の基板支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。また、半導体ウェハーWは、熱処理の対象となる表面を上面として保持部7に保持される。複数の基板支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの裏面(表面とは反対側の主面)と保持プレート75の保持面75aとの間には所定の間隔が形成される。サセプタ74の下方にまで下降した一対の移載アーム11は水平移動機構13によって退避位置、すなわち凹部62の内側に退避する。
【0088】
半導体ウェハーWが保持部7のサセプタ74によって水平姿勢にて下方より保持された後、40本のハロゲンランプHLが一斉に点灯して予備加熱(アシスト加熱)が開始される。ハロゲンランプHLから出射されたハロゲン光は、石英にて形成された下側チャンバー窓64およびサセプタ74を透過して半導体ウェハーWの下面から照射される。ハロゲンランプHLからの光照射を受けることによって半導体ウェハーWが予備加熱されて温度が上昇する。なお、移載機構10の移載アーム11は凹部62の内側に退避しているため、ハロゲンランプHLによる加熱の障害となることは無い。
【0089】
ハロゲンランプHLによる予備加熱を行うときには、半導体ウェハーWの温度が端縁部放射温度計20によって測定されている。すなわち、サセプタ74に保持された半導体ウェハーWの下面から開口部78を介して放射された赤外光を端縁部放射温度計20が受光して昇温中のウェハー温度を測定する。測定された半導体ウェハーWの温度は制御部3に伝達される。制御部3は、ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する半導体ウェハーWの温度が所定の予備加熱温度T1に到達したか否かを監視しつつ、ハロゲンランプHLの出力を制御する。すなわち、制御部3は、端縁部放射温度計20による測定値に基づいて、半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1となるようにハロゲンランプHLの出力をフィードバック制御する。予備加熱温度T1は、例えば600℃ないし800℃程度である。
【0090】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した後、制御部3は半導体ウェハーWをその予備加熱温度T1に暫時維持する。具体的には、端縁部放射温度計20によって測定される半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した時点にて制御部3がハロゲンランプHLの出力を調整し、半導体ウェハーWの温度をほぼ予備加熱温度T1に維持している。
【0091】
このようなハロゲンランプHLによる予備加熱を行うことによって、半導体ウェハーWの全体を予備加熱温度T1に均一に昇温している。ハロゲンランプHLによる予備加熱の段階においては、より放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部の温度が中央部よりも低下する傾向にあるが、ハロゲンランプハウス4におけるハロゲンランプHLの配設密度は、半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域の方が高くなっている。このため、放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部に照射される光量が多くなり、予備加熱段階における半導体ウェハーWの面内温度分布を均一なものとすることができる。
【0092】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達して所定時間が経過した時点にてフラッシュランプFLが半導体ウェハーWの表面にフラッシュ光照射を行う。このとき、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の一部は直接に処理チャンバー6内へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ52により反射されてから処理チャンバー6内へと向かい、これらのフラッシュ光の照射により半導体ウェハーWのフラッシュ加熱が行われる。
【0093】
フラッシュ加熱は、フラッシュランプFLからのフラッシュ光(閃光)照射により行われるため、半導体ウェハーWの表面温度を短時間で上昇することができる。すなわち、フラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光は、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが極めて短い光パルスに変換された、照射時間が0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度の極めて短く強い閃光である。そして、フラッシュランプFLからのフラッシュ光照射によりフラッシュ加熱される半導体ウェハーWの表面温度は、瞬間的に処理温度T2まで上昇し、その後表面温度が急速に下降する。処理温度T2は、例えば1000℃以上である。このように、フラッシュ加熱では半導体ウェハーWの表面温度を極めて短時間で昇降することができる。このため、例えば、半導体ウェハーWに注入された不純物の熱による拡散を抑制しつつ当該不純物の活性化を行うことができる。
【0094】
フラッシュ加熱処理が終了した後、所定時間経過後にハロゲンランプHLが消灯する。これにより、半導体ウェハーWが予備加熱温度T1から急速に降温する。降温中の半導体ウェハーWの温度は端縁部放射温度計20によって測定され、その測定結果は制御部3に伝達される。制御部3は、端縁部放射温度計20の測定結果より半導体ウェハーWの温度が所定温度まで降温したか否かを監視する。そして、半導体ウェハーWの温度が所定以下にまで降温した後、移載機構10の一対の移載アーム11が再び退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12がサセプタ74の上面から突き出て熱処理後の半導体ウェハーWをサセプタ74から受け取る。続いて、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、リフトピン12上に載置された処理後の半導体ウェハーWが搬送ロボット150の搬送ハンド151b(または搬送ハンド151a)により搬出される。搬送ロボット150は、搬送ハンド151bをリフトピン12によって突き上げられた半導体ウェハーWの直下位置にまで進出させて停止させる。そして、一対の移載アーム11が下降することにより、フラッシュ加熱後の半導体ウェハーWが搬送ハンド151bに渡されて載置される。その後、搬送ロボット150が搬送ハンド151bを処理チャンバー6から退出させて処理後の半導体ウェハーWを搬出する。
【0095】
本実施形態においては、ロードポート110に載置されたキャリアCから払い出された半導体ウェハーWがアライメント部230での向き調整および傷検知部300での傷検知を経て熱処理部160に処理チャンバー6まで搬送される。このため、例えば特許文献1に開示されるような従来の構成に比較して、キャリアCから処理チャンバー6に至るまでの半導体ウェハーWの搬送時間が傷検知部300での処理時間の分だけ長時間化している。その結果、従来であれば処理チャンバー6において搬送ロボット150の搬送ハンド151aおよび搬送ハンド151bを使って熱処理後の半導体ウェハーWと未処理の半導体ウェハーWとの入れ替えを行えていたところ、半導体ウェハーWの搬送時間の長時間化によってウェハー交換ができないケースが生じる。すなわち、処理チャンバー6にて先行する半導体ウェハーWの熱処理が終了した時点で後続の未処理の半導体ウェハーWが搬送ロボット150まで到達していないことがある。そうすると、処理チャンバー6内に半導体ウェハーWが存在しない時間帯が生じ、処理チャンバー6の温度が低下して半導体ウェハーWの熱処理結果に影響を与えるおそれがある。例えば、フラッシュ加熱処理によって不純物の活性化を行った場合には、熱処理後のシート抵抗値が目標値に到達しない懸念がある。
【0096】
このため、第1実施形態では以下のようにして半導体ウェハーWの搬送を制御している。図10は、第1実施形態における半導体ウェハーWの搬送手順を示すフローチャートである。図11図22は、半導体ウェハーWの搬送の一工程を模式的に示す図である。以下、図11図22を適宜参照しつつ第1実施形態の半導体ウェハーWの搬送制御について説明する。なお、本実施形態の熱処理装置100においては、搬送対象となるポジションでの動作に応じてウェハー搬送を行うように制御部3が受渡ロボット120および搬送ロボット150を制御する(いわゆるイベントドリブン方式)。
【0097】
まず、熱処理部160にて先行ウェハーの熱処理が行われる(ステップS1)。先行ウェハーは、その1枚のウェハーに対して単独で処理が行われるものである。第1実施形態では、先行ウェハーは例えばダミーウェハーDWである。また、先行ウェハーの熱処理は、例えば、ダミーウェハーDWに対してハロゲンランプHL(およびフラッシュランプFL)から光を照射して当該ダミーウェハーDWを昇温させることによって処理チャンバー6内を温調するダミー加熱処理である。ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温したダミーウェハーDWからの熱伝導によって、処理チャンバー6内が製品となる半導体ウェハーWの処理時の安定温度に温調される。以下、ダミーウェハーDWである先行ウェハーを先行ウェハーDWと表記する。
【0098】
次に、後続ウェハーの搬送が開始される(ステップS2)。後続ウェハーは、連続して処理を行う複数のウェハーであり、第1実施形態では製品となる半導体ウェハー(プロダクトウェハー)Wである。ダミーウェハーDWを用いたダミー加熱処理が行われた後に、複数の製品となる半導体ウェハーWに対して順次に熱処理を行うのである。以下、1枚目の半導体ウェハーWを後続ウェハーW1、2枚目の半導体ウェハーWを後続ウェハーW2、3枚目の半導体ウェハーWを後続ウェハーW3(以降同様)と表記する。
【0099】
まず、受渡ロボット120が下側の移載ハンド121bによってロードポート110に載置されたキャリアCから最初の後続ウェハーW1を取り出す(図11)。続いて、受渡ロボット120が後続ウェハーW1をアライメント部230のアライメントチャンバー231に搬入した後に下側の移載ハンド121bによってロードポート110から2枚目の後続ウェハーW2を取り出す(図12)。その後、受渡ロボット120は、上側の移載ハンド121aによってアライメント部230から向き調整が行われた後続ウェハーW1を取り出すとともに、下側の移載ハンド121bによって後続ウェハーW2をアライメント部230に搬入する(図13)。すなわち、受渡ロボット120は、アライメント部230に対してウェハー交換を行う。
【0100】
次に、受渡ロボット120は、上側の移載ハンド121aによって後続ウェハーW1を傷検知部300の傷検知チャンバー301に搬入する(図14)。このときには、アライメント部230にて後続ウェハーW2の向き調整が行われている。傷検知部300における後続ウェハーW1の傷検知が終了すると、受渡ロボット120が上側の移載ハンド121aによって後続ウェハーW1を傷検知部300の傷検知チャンバー301から搬出する。
【0101】
次に、受渡ロボット120は、上側の移載ハンド121aによって後続ウェハーW1を第2冷却部140の第2クールチャンバー141に搬入する。続いて、受渡ロボット120は、下側の移載ハンド121bによってロードポート110から3枚目の後続ウェハーW3を取り出す(図15)。この時点においても、アライメント部230における後続ウェハーW2の向き調整は継続して行われている。
【0102】
次に、搬送ロボット150が上側の搬送ハンド151aによって第2冷却部140から後続ウェハーW1を搬出する。続いて、受渡ロボット120が上側の移載ハンド121aによってアライメント部230から向き調整が行われた後続ウェハーW2を取り出すとともに、下側の移載ハンド121bによって後続ウェハーW3をアライメント部230に搬入する(図16)。搬送ロボット150が第2冷却部140から後続ウェハーW1を搬出することによって、最初の後続ウェハーW1が搬送ロボット150に到達することとなる(ステップS3)。
【0103】
最初の後続ウェハーW1が搬送ロボット150に到達することにより、搬送ロボット150による先行ウェハーDWと後続ウェハーW1とのウェハー交換が可能となる。しかし、第1実施形態においては、先行ウェハーDWと後続ウェハーW1とのウェハー交換が可能となっても直ちにウェハー交換を行うのではなくウェハー交換を待機する(ステップS4)。すなわち、搬送ロボット150は搬送ハンド151aによって後続ウェハーW1を保持したまま待機する。また、熱処理部160の処理チャンバー6も先行ウェハーDWを収容した状態で待機する。
【0104】
搬送ロボット150による処理チャンバー6に対するウェハー交換を待機している間も後続ウェハーW2以降の後続ウェハーの搬送は継続される(ステップS5)。そして、予め設定された一定の待機時間が経過するまでウェハー交換を待機するとともに、後続ウェハーの搬送を継続する(ステップS6)。待機時間は予め設定されて、例えば制御部3の記憶部等に記憶されている。
【0105】
最初の後続ウェハーW1が搬送ロボット150に到達した後、受渡ロボット120が後続ウェハーW2を傷検知部300に搬入する。後続ウェハーW2の傷検知が終了すると、受渡ロボット120が上側の移載ハンド121aによって後続ウェハーW2を傷検知部300から搬出する。次に、受渡ロボット120は、上側の移載ハンド121aによって後続ウェハーW2を第1冷却部130の第1クールチャンバー131に搬入する。続いて、受渡ロボット120は、下側の移載ハンド121bによってロードポート110から4枚目の後続ウェハーW4を取り出す(図17)。そして、受渡ロボット120が上側の移載ハンド121aによってアライメント部230から向き調整が行われた後続ウェハーW3を取り出すとともに、下側の移載ハンド121bによって後続ウェハーW4をアライメント部230に搬入する。
【0106】
この間、先行ウェハーDWと後続ウェハーW1とのウェハー交換は待機したままである。ウェハー交換を待機したまま、後続ウェハーの搬送を継続することによって、ロードポート110から搬送ロボット150に至るまでの複数の搬送ポジションが後続ウェハーによって徐々に埋められる。搬送ポジションとは、半導体ウェハーWの搬送対象となる箇所であり、本実施形態ではアライメント部230、傷検知部300、第1冷却部130および第2冷却部140が該当する。
【0107】
一定の待機時間が経過した時点で先行ウェハーDWと最初の後続ウェハーW1とのウェハー交換を実行する(ステップS7)。具体的には、搬送ロボット150が下側の搬送ハンド151bを処理チャンバー6に挿し入れて先行ウェハーDWを処理チャンバー6から搬出するとともに、上側の搬送ハンド151aによって最初の後続ウェハーW1を処理チャンバー6に搬入する(図18)。すなわち、先行ウェハーDWと後続ウェハーW1とのウェハー交換が可能となってから一定の待機時間を待ってウェハー交換を実行しているのである。
【0108】
先行ウェハーDWと後続ウェハーW1とのウェハー交換が完了した後、先行ウェハーDWおよび後続ウェハーの搬送を継続する(ステップS8)。具体的には、先行ウェハーDWを搬送ロボット150からロードポート110に向けて搬送しつつ、複数の後続ウェハーをロードポート110から搬送ロボット150に向けて順次に搬送する。また、これと並行して後続ウェハーを順次に加熱する熱処理を実行する(ステップS9)。すなわち、ステップS8とステップS9とは並列的に実行される。
【0109】
先行ウェハーDWと後続ウェハーW1とのウェハー交換が実行された後、受渡ロボット120が移載ハンド121aによって後続ウェハーW3を傷検知部300に搬入する。また、搬送ロボット150が上側の搬送ハンド151aによって後続ウェハーW2を第1冷却部130から搬出し、下側の搬送ハンド151bによって先行ウェハーDWを第1冷却部130に搬入する(図19)。すなわち、搬送ロボット150は、第1冷却部130に対して後続ウェハーW2と先行ウェハーDWとのウェハー交換を行う。
【0110】
ダミー加熱処理によって昇温している先行ウェハーDWは第1冷却部130の第1クールチャンバー131内にて常温近傍にまで冷却される。一方、処理チャンバー6に搬入された後続ウェハーW1に対しては、上述した加熱処理が行われる。すなわち、処理チャンバー6内にてハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLからに光照射によって後続ウェハーW1に対する加熱処理が行われる。
【0111】
先行ウェハーDWの冷却処理および後続ウェハーW1の加熱処理が行われている間もウェハー搬送は継続されている。受渡ロボット120は、後続ウェハーW3を傷検知部300から搬出して第2冷却部140に搬入する。続いて、受渡ロボット120は、移載ハンド121bによってロードポート110から5枚目の後続ウェハーW5を取り出す(図20)。
【0112】
次に、受渡ロボット120は、移載ハンド121aによってアライメント部230から向き調整が行われた後続ウェハーW4を取り出すとともに、移載ハンド121bによって後続ウェハーW5をアライメント部230に搬入する。続いて、受渡ロボット120が後続ウェハーW4を傷検知部300に搬入する。
【0113】
処理チャンバー6における最初の後続ウェハーW1の加熱処理が終了すると、搬送ロボット150が搬送ハンド151bによって後続ウェハーW1を処理チャンバー6から搬出するとともに、搬送ハンド151aによって後続ウェハーW2を処理チャンバー6に搬入する。すなわち、搬送ロボット150は、処理チャンバー6に対して最初の後続ウェハーW1と2枚目の後続ウェハーW2とのウェハー交換を行う。処理チャンバー6に搬入された後続ウェハーW2に対してはハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLからの光照射による加熱処理が行われる。続いて、受渡ロボット120は、下側の移載ハンド121bによって第1冷却部130から冷却処理の終了した先行ウェハーDWを搬出する(図21)。
【0114】
次に、搬送ロボット150が上側の搬送ハンド151aによって後続ウェハーW3を第2冷却部140から搬出し、下側の搬送ハンド151bによって後続ウェハーW1を第2冷却部140に搬入する。すなわち、搬送ロボット150は、第2冷却部140に対して後続ウェハーW3と後続ウェハーW1とのウェハー交換を行う。第2冷却部140に搬入された後続ウェハーW1には冷却処理が行われる。また、受渡ロボット120は先行ウェハーDWをロードポート110に載置されたダミーキャリアDCに格納する。続いて、受渡ロボット120は、後続ウェハーW4を傷検知部300から搬出して第1冷却部130に搬入する(図22)。以降、同様の手順が繰り返されて複数の後続ウェハーに対して順次に処理が行われる。
【0115】
第1実施形態においては、最初の後続ウェハーW1が搬送ロボット150に到達して先行ウェハーDWと後続ウェハーW1とのウェハー交換が可能になったときにも、直ちにウェハー交換を行うのではなく、一定時間待機してからウェハー交換を行っている。すなわち、搬送ロボット150による先行ウェハーDWと後続ウェハーW1とのウェハー交換のタイミングを意図的に一定時間遅延させているのである。そして、ウェハー交換を待機している間、ロードポート110から搬送ロボット150に至るまでの複数の搬送ポジションを埋めるようにロードポート110から搬送ロボット150に向けて後続ウェハーを搬送している。このため、一定の待機時間が経過して先行ウェハーDWと後続ウェハーW1とのウェハー交換を実行する時点では、複数の搬送ポジションのうちの幾つかは後続ウェハーによって占められている。
【0116】
仮に、ウェハー交換のタイミングを遅延させることなく、先行ウェハーDWと後続ウェハーW1とのウェハー交換が可能になったときに直ちにウェハー交換を行った場合には、以下のような不具合が生じる。図24および図25は、直ちにウェハー交換を行った場合における半導体ウェハーWの搬送の一工程を模式的に示す図である。最初の後続ウェハーW1が搬送ロボット150に到達した図16の状態から直ちにウェハー交換を行うときには、搬送ロボット150が搬送ハンド151bによって先行ウェハーDWを処理チャンバー6から搬出するとともに、搬送ハンド151aによって後続ウェハーW1を処理チャンバー6に搬入する。
【0117】
次に、搬送ロボット150は処理チャンバー6から搬出した先行ウェハーDWを第1冷却部130に搬入する。また、受渡ロボット120は、後続ウェハーW2を傷検知部300に搬入し、傷検知が終了した後に、上側の移載ハンド121aによって傷検知部300から搬出する(図24)。図24の状態において、受渡ロボット120の移載ハンド121aによって保持されている後続ウェハーW2は、次に第1冷却部130に搬入されるシーケンスとなっている。ところが、第1冷却部130では先行ウェハーDWの冷却処理が行われている。このため、後続ウェハーW2を第1冷却部130に搬入することはできず、受渡ロボット120は後続ウェハーW2を保持したまま先行ウェハーDWの冷却処理が終了するまで待機することとなる。すなわち、先行ウェハーDWによって搬送ポジションが塞がれるために、後続ウェハーW2の搬送に支障が生じるのである。
【0118】
第1冷却部130における先行ウェハーDWの冷却処理が終了するのを待って受渡ロボット120が下側の移載ハンド121bによって先行ウェハーDWを第1冷却部130から搬出するとともに、上側の移載ハンド121aによって後続ウェハーW2を第1冷却部130に搬入する。続いて、受渡ロボット120は先行ウェハーDWをロードポート110に載置されたダミーキャリアDCに格納する。
【0119】
次に、処理チャンバー6における最初の後続ウェハーW1の加熱処理が終了するのであるが、その時点ではまだ2枚目の後続ウェハーW2が搬送ロボット150に到達していない。これは、先行ウェハーDWの冷却処理が終了するまで後続ウェハーW2の搬送を待機させていたためである。従って、搬送ロボット150は、ウェハー交換を行うことなく、搬送ハンド151bによって後続ウェハーW1を処理チャンバー6から搬出する。一方、受渡ロボット120は移載ハンド121bによってロードポート110から新たな後続ウェハーW4を取り出す(図25)。
【0120】
図25に示すように、搬送ロボット150が処理チャンバー6におけるウェハー交換を行っていないため、後続ウェハーW1が搬出されると処理チャンバー6内には半導体ウェハーWが存在しなくなる。処理チャンバー6内に半導体ウェハーが存在しないときには、ハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLによる加熱も行われないため、半導体ウェハーWが存在しない時間が長くなるほど、処理チャンバー6内の温度は低下する。その結果、ロットの構成する複数の後続ウェハーのそれぞれごとに処理チャンバー6内の温度が異なることとなり、それら複数の後続ウェハー間での処理結果が不均一になるという不具合が生じるのである。
【0121】
以上のように、先行ウェハーDWと後続ウェハーW1とのウェハー交換が可能になったときに直ちにウェハー交換を行うと、先行ウェハーDWによって搬送ポジションが塞がれて後続ウェハーW2の搬送に支障が生じ、処理チャンバー6にて後続ウェハーW1の加熱処理が終了したときに、後続ウェハーW2が搬送ロボット150に到達できなくなる。これにより、処理チャンバー6における最初の後続ウェハーW1と2枚目の後続ウェハーW2とのウェハー交換を行うことができなくなり、処理チャンバー6内の温度が低下するのである。
【0122】
これに対して、第1実施形態においては、先行ウェハーDWと後続ウェハーW1とのウェハー交換が可能になったときに、ウェハー交換のタイミングを意図的に一定時間遅延させて後続ウェハーの搬送を継続し、複数の搬送ポジションのうちの幾つかを後続ウェハーによって占めるようにしている。これにより、先行ウェハーDWによって搬送ポジションが塞がれることはなくなり、先行ウェハーDWは基本的には後続ウェハーとのウェハー交換によって搬送ロボット150からロードポート110に向けて搬送される。このため、後続ウェハーの搬送に支障が生じることが防止され、処理チャンバー6にてある後続ウェハーの加熱処理が終了したときには、必ず次の後続ウェハーが搬送ロボット150に到達することとなる。その結果、処理チャンバー6においてウェハー交換を確実に行うことができ、処理チャンバー6内には常に半導体ウェハーWが存在することとなり、処理チャンバー6内の温度は低下することなくダミー加熱処理によって温調された安定温度に維持されることとなる。従って、ロットの構成する複数の後続ウェハーの全てについて処理チャンバー6内の温度は一定となり、それら複数の後続ウェハー間での処理結果は均一なものとなる。
【0123】
ところで、第1実施形態では、先行ウェハーDWと後続ウェハーW1とのウェハー交換のタイミングを一定時間遅延させているため、ロットの初期の何枚かの後続ウェハーについては、遅延無く直ちにウェハー交換を行った場合に比べて処理チャンバー6における処理開始時期が遅くなるおそれがある。しかし、上述したように、第1実施形態のようすれば、後続ウェハーを円滑に搬送して処理チャンバー6におけるウェハー交換を確実に行うことが可能となる。かつ、レシピに規定された処理時間に従って処理チャンバー6での加熱処理が実行される。このため、ロット全体としては直ちにウェハー交換を行って後続ウェハーの搬送に支障が生じた場合に比べて処理時間が短くなってスループットを向上させることができる。すなわち、第1実施形態のようにすれば、処理結果を均一にしつつ、スループットも向上させることができるのである。
【0124】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態の熱処理装置100および熱処理部160の構成は第1実施形態と同じである。また、第2実施形態における半導体ウェハーWに対する加熱処理の手順も第1実施形態と同じである。第1実施形態では、先行ウェハーDWと後続ウェハーW1とのウェハー交換が可能となってから予め設定された一定の待機時間が経過するまでウェハー交換を待機していたが、第2実施形態では、複数の搬送ポジションのうちの特定ポジションが埋まるまでウェハー交換を待機する。
【0125】
図23は、半導体ウェハーWの搬送の他の例を模式的に示す図である。第2実施形態においても、最初の後続ウェハーW1が搬送ロボット150に到達して先行ウェハーDWと後続ウェハーW1とのウェハー交換が可能になったときに、直ちにウェハー交換を行うのではなくウェハー交換を待機する。また、第1実施形態と同様に、ウェハー交換を待機している間、複数の搬送ポジションを埋めるようにロードポート110から搬送ロボット150に向けて後続ウェハーを搬送する。
【0126】
第2実施形態においては、図23に示すように、複数の搬送ポジションのうち第1冷却部130および第2冷却部140の双方が後続ウェハーによって占められた時点で先行ウェハーDWと最初の後続ウェハーW1とのウェハー交換を実行する。このようにしても、第1実施形態と同様に、先行ウェハーDWと後続ウェハーW1とのウェハー交換を実行する時点では、複数の搬送ポジションのうちの幾つかは後続ウェハーによって占められる。このため、先行ウェハーDWによって搬送ポジションが塞がれることはなくなり、後続ウェハーを円滑に搬送して処理チャンバー6におけるウェハー交換を確実に行うことができる。
【0127】
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、先行ウェハーがダミーウェハーDWであり、後続ウェハーがプロダクトウェハーWであったが、これに代えて、後続ウェハーもダミーウェハーDWであっても良い。特許文献1には、ダミー加熱処理をウォームアップ処理とコンディショニング処理との2段階に分けて実行することが提案されている。ウォームアップ処理は、処理チャンバー6内を一定の保温温度に保温する第1段階の処理である。一方、コンディショニング処理は、ウォームアップ処理の後に、処理チャンバー6内を目標温度に温調する第2段階の処理である。目標温度は、製品となる半導体ウェハーWの処理時の安定温度である。典型的には、ウォームアップ処理は1枚のダミーウェハーDWを用いて行い、コンディショニング処理は複数枚(例えば15枚~20枚)のダミーウェハーDWを用いて行う。このため、先行ウェハーを用いてウォームアップ処理を行い、複数の後続ウェハーを用いてコンディショニング処理を行うときに、上記実施形態と同様の技術を適用することができる。
【0128】
また、第2実施形態においては、第1冷却部130および第2冷却部140の双方が後続ウェハーによって占められた時点でウェハー交換を実行していたが、これに限定されるものではなく、複数の搬送ポジションのうち任意の搬送ポジションが後続ウェハーによって埋められたときにウェハー交換を実行するようにすれば良い。例えば、第1冷却部130が後続ウェハーによって占められた時点で先行ウェハーDWと最初の後続ウェハーW1とのウェハー交換を実行するようにしても良い。
【0129】
また、上記実施形態においては、フラッシュランプハウス5に30本のフラッシュランプFLを備えるようにしていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュランプFLの本数は任意の数とすることができる。また、フラッシュランプFLはキセノンフラッシュランプに限定されるものではなく、クリプトンフラッシュランプであっても良い。また、ハロゲンランプハウス4に備えるハロゲンランプHLの本数も40本に限定されるものではなく、任意の数とすることができる。
【0130】
また、上記実施形態においては、1秒以上連続して発光する連続点灯ランプとしてフィラメント方式のハロゲンランプHLを用いて半導体ウェハーWの予備加熱を行っていたが、これに限定されるものではなく、ハロゲンランプHLに代えて放電型のアークランプ(例えば、キセノンアークランプ)またはLEDランプを連続点灯ランプとして用いて予備加熱を行うようにしても良い。
【符号の説明】
【0131】
3 制御部
4 ハロゲンランプハウス
5 フラッシュランプハウス
6 処理チャンバー
7 保持部
10 移載機構
20 端縁部放射温度計
25 中央部放射温度計
65 熱処理空間
66 搬送開口部
74 サセプタ
100 熱処理装置
101 インデクサ部
110 ロードポート
120 受渡ロボット
121a,121b 移載ハンド
130 第1冷却部
140 第2冷却部
150 搬送ロボット
151a,151b 搬送ハンド
160 熱処理部
185 ゲートバルブ
230 アライメント部
300 傷検知部
C キャリア
DW ダミーウェハー
FL フラッシュランプ
HL ハロゲンランプ
W 半導体ウェハー
図1
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