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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116740
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】制振装置、架台、及び装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/04 20060101AFI20240821BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20240821BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
F16F15/04 F
F16F15/02 S
F16F7/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022527
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 匠
(72)【発明者】
【氏名】永作 智也
【テーマコード(参考)】
3J048
3J066
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048BA11
3J048BA17
3J048DA01
3J048EA08
3J048EA09
3J048EA13
3J066AA15
3J066AA26
3J066BA01
3J066BB04
3J066BC03
3J066BD05
(57)【要約】
【課題】装置の稼働中に生じる振動を抑制するようにした制振装置、架台、及び装置を提供する。
【解決手段】制振装置は、床の基準面に配置された架台と前記架台上に配置された装置とを含む対象物であって、前記架台が、前記装置を下から支持するフレームと前記フレームを所定の高さに支持するための脚部とを含めて構成されていて、前記装置に振動源が含まれている対象物に生じる振動を抑制する制振装置であって、前記基準面に固定される基台に固定されている束と、前記束に拘束された状態で前記フレームの側面に対向させる第1面を有した支持部と、前記フレームの前記側面と、前記支持部の前記第1面との間に配置される弾性体と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床の基準面に配置された架台と前記架台上に配置された装置とを含む対象物であって、前記架台が、前記装置を下から支持するフレームと前記フレームを所定の高さに支持するための脚部とを含めて構成されていて、前記装置に振動源が含まれている対象物に生じる振動を抑制する制振装置であって、
前記基準面に固定される基台に固定されている束と、前記束に拘束された状態で前記フレームの側面に対向させる第1面を有した支持部と、
前記フレームの前記側面と、前記支持部の前記第1面との間に配置される弾性体と、
を備える制振装置。
【請求項2】
前記支持部は、
前記第1面と、前記第1面の背面側の第2面とを有する板状部材であって、前記第2面が前記束に固定されている板状部材、を含む
請求項1に記載の制振装置。
【請求項3】
前記板状部材の前記第1面の上端部の沿面方向の幅が、前記第1面の下端部の沿面方向の幅よりも広い、
請求項2に記載の制振装置。
【請求項4】
前記フレームは、前記フレームの側面を形成するビームを含み、
前記板状部材の前記第1面の上端部を、高減衰ゴムを含む前記弾性体を介して、前記ビームに接触させる、
請求項2に記載の制振装置。
【請求項5】
前記ビームの両端が前記架台の前記脚部に夫々連結されていて、
前記ビームの振動を抑制する効果が比較的大きくなる位置の前記ビームに前記第1面が対向配置されていて、
前記弾性体が前記ビームと前記第1面とに夫々当接している、
請求項4に記載の制振装置。
【請求項6】
前記弾性体は、前記ビームと前記第1面との離隔距離の変化を打ち消す方向の応力を前記ビームと前記第1面に掛ける、
請求項5に記載の制振装置。
【請求項7】
前記弾性体は、前記第1面に沿う方向に前記ビームを並進させる力を打ち消す応力を発生させる、
請求項5に記載の制振装置。
【請求項8】
前記板状部材と前記ビームとの離隔を所定の範囲に制限する固定部材
を備える請求項4に記載の制振装置。
【請求項9】
前記支持部の前記束の前記基台からの延伸方向が鉛直方向又は鉛直方向に対して所定角度傾斜した方向にある
請求項2に記載の制振装置。
【請求項10】
床の基準面に配置され、上部に配置された装置を支持する架台であって、
前記装置を下から支持するフレームと、
前記フレームを所定の高さに支持するための脚部と、
前記基準面に固定される基台に固定されている束と、前記束に拘束された状態で前記フレームの側面に対向させる第1面を有した支持部と、
前記フレームの前記側面と、前記支持部の前記第1面との間に配置される弾性体と、
を備える架台。
【請求項11】
請求項10に記載の架台と、
前記架台の上部に配置される振動源と
を備える装置。
【請求項12】
前記振動源がモータ又はエンジンである
請求項11に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制振装置、架台、及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
振動源を含む装置を架台に設置して稼働すると、設計的に想定した大きさを超える機械振動が発生することがある。この機械振動は、機械的共振の条件が揃ったときなどに発生する。
機械振動を抑える手法として、ダンパ装置を利用する制振装置が知られている。制振装置は、ダンパ装置などを組み合わせてなる構造物によって特定の周波数成分の振動エネルギーを抑圧するように調整されているものが多い。このようなダンパ装置を利用する制振装置の抑圧効果には、周波数依存性がある。ダンパ装置を利用する制振装置の抑圧効果にみられる周波数依存性を、振動の周波数成分の変化に適応させることは難しい。このようなダンパ装置を利用する制振装置の場合には、大きな抑圧効果が見込める特定の周波数成分以外の振動を抑圧できないことがあった。
ところで、空気調和システムを構成する空調機械には、温度を調整して排出する排気の風量を調整可能なものが多い。空調機械は、例えば、送風ファンを駆動するモータの速度を調整することにより、その風量を調整する。空調機械におけるモータなどは、振動源の一例である。このような方法で風量を調整すると、これに伴って空調機械内の振動源が生成する振動の周期又は周波数成分が変わることがあった。
上記のように、
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-157406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、装置の稼働状況によって振動の周期又は周波数成分が変わる場合には、装置内部又は近傍にダンパ装置を利用する制振装置を設けたとしても、その制振装置による制振効果を維持することが困難であり、所望の抑制効果が得られない場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、装置の稼働中に生じる振動を抑制するようにした制振装置、架台、及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様の制振装置は、床の基準面に配置された架台と前記架台上に配置された装置とを含む対象物であって、前記架台が、前記装置を下から支持するフレームと前記フレームを所定の高さに支持するための脚部とを含めて構成されていて、前記装置に振動源が含まれている対象物に生じる振動を抑制する制振装置であって、前記基準面に固定される基台に固定されている束と、前記束に拘束された状態で前記フレームの側面に対向させる第1面を有した支持部と、前記フレームの前記側面と、前記支持部の前記第1面との間に配置される弾性体と、を備える制振装置である。
(2)上記の一態様の制振装置において、前記支持部は、前記第1面と、前記第1面の背面側の第2面とを有する板状部材であって、前記第2面が前記束に固定されている板状部材、を含む。
(3)上記の一態様の制振装置において、前記板状部材の前記第1面の上端部の沿面方向の幅が、前記第1面の下端部の沿面方向の幅よりも広い。
(4)上記の一態様の制振装置において、前記フレームは、前記フレームの側面を形成するビームを含み、前記板状部材の前記第1面の上端部を、高減衰ゴムを含む前記弾性体を介して、前記ビームに接触させる。
(5)上記の一態様の制振装置において、前記ビームの両端が前記架台の前記脚部に夫々連結されていて、前記ビームの振動を抑制する効果が比較的大きくなる位置の前記ビームに前記第1面が対向配置されていて、前記弾性体が前記ビームと前記第1面とに夫々当接している。
(6)上記の一態様の制振装置において、前記弾性体は、前記ビームと前記第1面との離隔距離の変化を打ち消す方向の応力を前記ビームと前記第1面に掛ける。
(7)上記の一態様の制振装置において、前記弾性体は、前記第1面に沿う方向に前記ビームを並進させる力を打ち消す応力を発生させる。
(8)上記の一態様の制振装置は、前記板状部材と前記ビームとの離隔を所定の範囲に制限する固定部材を備える。
(9)上記の一態様の制振装置において、前記支持部の前記束の前記基台からの延伸方向が鉛直方向又は鉛直方向に対して所定角度傾斜した方向にある。
(10)本発明の一態様は、床の基準面に配置され、上部に配置された装置を支持する架台であって、前記装置を下から支持するフレームと、前記フレームを所定の高さに支持するための脚部と、前記基準面に固定される基台に固定されている束と、前記束に拘束された状態で前記フレームの側面に対向させる第1面を有した支持部と、前記フレームの前記側面と、前記支持部の前記第1面との間に配置される弾性体と、を備える架台である。
(11)本発明の一態様は、上記(10)に記載の架台と、前記架台の上部に配置される振動源とを備える装置である。
(12)本発明の一態様の装置における前記振動源がモータタ又はエンジンである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、装置の稼働中に生じる振動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第一実施形態による制振装置1を適用する空気調和システム100を説明するための図である。
図2】第一実施形態による制振装置1を備えた架台2を説明するための図である。
図3】実施形態の制振装置1の構成図である。
図4】比較例の空気調和システム100Zを説明するための図である。
図5】実施形態の制振効果について説明するための図である。
図6】実施形態の制振効果について説明するための図である。
図7】実施形態の制振効果について説明するための図である。
図8】第二実施形態に係る支持部10Aの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態による制振装置、架台、及び空気調和システムについて添付図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は、第一実施形態による制振装置1を適用する空気調和システム100を説明するための図である。図2は、第一実施形態による制振装置1を備えた架台2を説明するための図である。
【0011】
空気調和システム100は、ICT装置などが配置されるサーバ室の空気を適当な温度に維持するための空調機器3(空気調和装置)を含めて構成されている。
【0012】
例えば、このサーバ室に利用されるフロアのスラブ上面を、当該フロアの床の基準面とする。サーバ室には、その床の基準面上に2重床システムが配置されている。2重床の下部空間は、配線の通線用に利用することの他、空気調和システム100によってその下部空間に冷気を充満させることで、2重床システムの床パネルによって仕切られた2重床システムの床パネルの上部空間(部屋)に冷気を配送することに利用されている。
例えば、この図1に示すサーバ室には、空気調和システム100の空調機器3が2台と、ICT装置などが夫々配置されている。空調機器3は、架台2の上に配置されている。
【0013】
ここで図4を参照して比較例について簡単に説明する。
図4は、比較例の空気調和システム100Zを説明するための図である。
比較例の空気調和システム100Zは、前述の空気調和システム100の架台2に代えて、架台2Zを備えていることが異なる。この架台2は、後述する制振装置1を備えていない。
【0014】
空調機器3は、対象物になる装置の一例である。空調機器3には、振動源として、例えばコンプレッサ、ファン、これらに付随するモータなどが含まれている。振動源の図示を省略する。空調機器3内、及び対象のサーバ室内の振動源の種類、個数、大きさなどに制限はない。
【0015】
空気調和システム100Zの空調機器3を架台2Z上に配置して、空気調和システム100Zを稼働させたときに、その稼働時の条件によって空調機器3等に機械振動が発生することがあった。このような機械振動が発生すると、床面FLのスラブなどを伝わって、サーバ室内の各装置が振動したり、ガタガタと振動による音が立ったりすることがあった。
【0016】
これに対し、本実施形態の空気調和システム100では、制振装置1を備える架台2を用いることで、上記の比較例のような振動を抑制するように構成した。以下、これの詳細について順に説明する。
【0017】
図2に示すように、実施形態の制振対象の対象物は、床面FL(床の基準面)に配置された架台2と、その架台2上に配置された空調機器3(装置)とを含む。
【0018】
架台2は、空調機器3を下から支持するフレーム21と、フレーム21を所定の高さに支持するための複数の脚部22とを含めて構成されている。
架台2を形成するフレーム21は、4つのビームを含み、これが矩形に配置されていて台が形成されている。この各ビームの両端が、架台2の脚部22に夫々連結されている。脚部22の下端には、高さ調整用のアジャスタ部がそれぞれ形成されている。これにより、床面FLの傾き、凸凹などを吸収して、フレーム21の水平性を補償する。
【0019】
例えば、フレーム21の各ビームと脚部22は、夫々L型アングル(山形鋼材)によって形成される。各ビームを成すL型アングルの一辺がフレーム21の台の上面の一部になり、そのL型アングルの他の一辺が、つまり各ビームの側面がフレーム21の側面Sを形成する。架台2は、上記の各鋼材を組み合わせて形成される。このような架台2は、空調機器3の重量を支持可能な強度を有する。
上記の範囲の架台2は、比較例の架台2Zに相当するものであってもよい。
【0020】
本実施形態の架台2は、さらに制振装置1を備える。これの詳細について後述する。
【0021】
空調機器3は、ヒートポンプの一部を含む。空調機器3を稼働させると、コンプレッサが冷媒を循環させる。コンプレッサが冷媒を循環させることにより、熱交換器を流れる冷媒に、空調機器3の吸気の熱を移す。空調機器3は、内蔵するファンを作動させて熱交換器に、吸気を通風することにより、吸気の温度よりも低い温度の排気(冷気)を出力する。
例えば、空調機器3の筐体の底部には、図示されない開口があり、その開口から床方向に冷気を排出する。この冷気は、2重床システムの床パネルの下に形成される空間を流動して、床パネルに設けられたスリットを床パネルの上方向に通ってする。
【0022】
前述の比較例(図4)のように架台2Zに空調機器3を配置して組み合わせた構成の場合、架台2Zは、空調機器3の重量を支持可能だけの強度を有していても、空調機器3の稼働時に空調機器3が発する振動などに共振することがあった。
【0023】
そこで、本実施形態では、図1に示すように、制振装置1を用いて、振動源が含まれている空調機器3(対象物)に生じる機械振動を抑制する。以下、これの詳細について説明する。
【0024】
図3は、実施形態の制振装置1の構成図である。
制振装置1は、少なくとも支持部10と、弾性体15と、を備える。制振装置1は、さらに固定部材14を備えていてもよい。この固定部材14は、架台2の一部であってもよい。
【0025】
支持部10は、例えば、基台11と、束12と、板状部材13とを備える。
【0026】
例えば、支持部10の基台11は、鋼材で形成されているベースプレートを含む。そのベースプレートは、アンカーボルトなどにより床面FLに固定される。基台11の上面に束12が固定されている。基台11と束12の接続は溶接でよい。
【0027】
実施形態の束12は、山形鋼(L型アングル)によって形成される。束12の延伸方向は、基台11の上面の法線方向に沿って向けられている。例えば、基台11が水平に配置されていれば、束12は鉛直方向(+Z方向)に延伸することになる。例えば山形鋼のサイズは、L-75×75×6などである。
例えば、束12の山形鋼の第一の辺を、架台2と空調機器3から離れる方向(-Y方向)に向けて、その第二の辺を、空調機器3の筐体の側面に沿う方向(X方向)に向けるように、基台11の方位を調整して基台11の位置を合わせるとよい。
【0028】
板状部材13は、束12(山形鋼の第二の辺)の幅よりも広い面を備えている。板状部材13の面が、束12の第二の辺に沿わせて固定されている。板状部材13の面を束12に固定する固定の方法は、溶接であってもよく、ボルト止めであってもよい。
【0029】
実施形態の板状部材13は、第1面131と、第1面131の背面側の第2面132とを有する。板状部材13の第2面132が束12に固定されている。
板状部材13の第1面131の上端部の沿面方向の幅が、第1面131の下端部の沿面方向の幅よりも広く形成されている。この形状の場合、床の基準面付近の空気の流動性は、床パネル近傍の空気の流動性よりも高くなる。この形状の場合、床の基準面付近の空気の流動性は、床パネル近傍の空気の流動性よりも高くなる。この形状の場合、フレーム21の側面Sに対向させる区間を広くできる。
【0030】
支持部10は、束12に拘束された状態でフレーム21の側面Sに対向させる第1面131を有して構成される。フレーム21の側面Sと、支持部10の第1面131との間に、弾性体15が配置される。
例えば、板状部材13の第1面131の上端部は、高減衰ゴムを含む弾性体15を介して、ビームに接触されている。
【0031】
弾性体15は、例えば高減衰ゴムを含む。これにより、弾性体15は、掛る応力によって変形して、その変形によって応力を減衰させる。弾性体15は、対向する2つの面に挟まれた状態にあり、対向する2つの面の夫々から掛る圧縮力、牽引力などにより変形し、弾性体15の厚さが変化する。また、弾性体15は、対向する2つの面が面に沿って互いに逆方向に移動した際には、せん断変形が生じる。弾性体15は、変形することによりエネルギーを吸収して2つの面の移動を抑制する。
また、弾性体15は、第1面131に沿う方向(X方向)にビームを並進させる力を打ち消す応力を発生させるように変形する。さらに、弾性体15は、ビームと第1面131との離隔距離の変化を打ち消す方向の応力をビームと第1面131に掛ける。
【0032】
支持部10を、弾性体15によって振動エネルギーを吸収させる面積を広げた逆3角形型とすることで、効率的に振動エネルギーを吸収させることが可能になる。
【0033】
図7を参照して、空調機器3の架台2に対する固定について説明する。
図7は、空調機器3の架台2に対する固定について説明するための図である。
図7に、空調機器3の架台2に対する固定構造をモデル化した図を示す。
空調機器3の筐体の底面は、数本のボルト3Bによって架台2に固定されている。その架台2側の位置は、フレーム21の上面内にあり、各脚部22に対して比較的寄せた位置になっていることが多い。この各脚部22に比較的寄せた位置とは、例えば各ビームの長手方向に4分割したときに、各ビーム端部から夫々1/4の長さの範囲内のことである。上記は、4分割を一例で示したが、これに制限はなく6分割、8分割などのようにN分割(Nは、3以上の整数。)することも可能である。この場合の各脚部22に比較的寄せた位置とは、各ビームの長手方向にN分割したときに、各ビーム端部から夫々1/Nの長さの範囲内のことである。
また、空調機器3の筐体の底面と、フレーム21の上面との間に、弾性体23が設けられていることがある。この弾性体23は、各ビームの長手方向にN分割(Nは、3以上の整数。)したときに、各ビーム端部から夫々1/Nの長さの範囲外に配置される。
この弾性体23が、空調機器3の筐体の底面と、フレーム21の上面との間に設けられていることにより、空調機器3の筐体の底面の振動がフレーム21の上面に伝わりにくくなる。
ただし、この弾性体23に弾力があることで、例えば押圧された弾性体23に、その復元力が生じることがある。さらに、この復元力が機械振動を助長することがある。この影響について説明する。
図7に示す実施形態の場合、架台2の頂部にあるフレーム21のビームの振動によるその上方向の変位は、空調機器3の筐体の底面と、その間に設けられている弾性体23によって制限される。その一方で、フレーム21のビームの振動によるその下方向の変位は、脚部22がある位置で制限されるが、制振装置1が設けられていない場合には、脚部22と制振装置1がある位置以外の位置には制限されるものがない。このため、フレーム21のビームの振動を抑制しにくい場合がある。
【0034】
フレーム21の各ビームの振動を抑制する効果が比較的大きくなる位置を設計的又は実験的に決定し、その位置に制振装置1を配置して、弾性体15を介してビームと第1面131とを対向配置するとよい。このとき、弾性体15がフレーム21の各ビームと第1面131とに夫々当接している。
【0035】
図5図6を参照して、実施形態の制振効果について説明する。
図5図6は、実施形態の制振効果について説明するための図である。
【0036】
図5の(a1)は、比較例の空気調和システム100Zの側面図であり、(b1)は、同じく正面図である。
図5の(a2)は、実施形態の空気調和システム100の側面図であり、(b1)は、同じく正面図である。
図6についても、図5と同様である。
【0037】
この図5に、典型的な機械振動の一例をモデル化して示す。
図5の(a1)と(b1)の比較例の場合、機械共振が生じたときに架台2の各ビームの振動し易い部分に大きな変位が生じることがある。この振動の成分は、各方向の成分を含む。例えば、この図5の(a1)と(b1)の比較例に示す振動は、各ビームの長手方向の中点近傍に上下方向の振動が生じた場合を例示するものである。この比較例にみられる機械振動により、各ビームの長手方向の中点近傍に例えば上下方向に振動する運動エネルギーが生じる。この運動エネルギーによる振動が脚部22を通じて床面FLに伝わり、建物を振動させることになる。
これに対し、図5の(a2)と(b2)の実施形態の場合、制振装置1が各ビームの側面の移動を制することから、各ビームの長手方向の中点近傍の上下方向の振動の振幅が小さくなる。弾性体15、16がせん断変形することにより、各ビームの長手方向の中点近傍に上下方向に振動する運動エネルギーを吸収することにより、比較例にみられた機械振動を抑制して、脚部22を通じて床面FLに伝わる振動を抑制することができる。なお、各ビームの振動が、弾性体15、16を介して支持部10を通じて床面FLに伝わる経路があるが、弾性体15、16がせん断変形することに消費されることにより、この経路を通じた運動エネルギーは比較的少なくなる。また、脚部22を通じて伝わる振動の位相に対する位相差が生じることで、床面FLの振動の振幅を抑制することになる。上記のように弾性体15、16にエネルギーを吸収させる場合には、周波数依存性を低くできるため、より広範囲の振動の周波数成分に適応させることができる。
【0038】
この図6に、典型的な他の機械振動の一例をモデル化して示す。
図6の(a1)と(b1)の比較例の場合、機械共振が生じたときに空調機器3が水平方向に並進するように振動して大きな変位が生じることがある。
これに対し、図6の(a2)と(b2)の実施形態の場合、制振装置1が架台2の頂部の水平方向の振動を制することから、各ビームの長手方向の振動の振幅が小さくなっている。
【0039】
なお、フレーム21の各ビームの振動を抑制する効果が比較的大きくなる位置を設計的又は実験的に決定するとよい。その位置に制振装置1を配置して、弾性体15を介してビームと第1面131とを対向配置するとよい。このとき、弾性体15がフレーム21の各ビームと第1面131とに夫々当接しているとよい。
【0040】
上記の実施形態によれば、制振装置1は、床の基準面に配置された架台2と架台2上に配置された空調機器3(装置)とを含む対象物に生じる振動を抑制する。対象物の架台2は、空調機器3(装置)を下から支持するフレーム21とフレーム21を所定の高さに支持するための脚部22とを含めて構成されている。空調機器3(装置)には、振動源が含まれている。制振装置1は、基準面に固定される基台11に固定されている束12と、束12に拘束された状態でフレームの側面に対向させる第1面131を有した支持部10と、フレーム21の側面と支持部10の第1面131との間に配置される弾性体15と、を備える。このような制振装置1は、空調機器3(装置)の稼働中に生じる振動を抑制することができる。
【0041】
なお、支持部10の束12の基台11からの延伸方向が鉛直方向にある。
また、支持部10の第1面131に弾性体15の一部を接着させて、フレーム21の側面(架台2のビームの側面)に弾性体15の一部を接着させる。
平時の状態であるときに、支持部10の第1面131と、フレーム21の側面(架台2のビームの側面)を直接的に接触させていない。
振動があり弾性体15が加圧状態にあるときに、支持部10の第1面131と、フレーム21の側面(架台2のビームの側面)からの圧力で弾性体15が変形しても、支持部10の第1面131と、フレーム21の側面(架台2のビームの側面)が接触しないように弾性体15を構成するとよい。
【0042】
上記の実施形態の制振装置1は、比較例の架台2に対して後から追加することも可能である。この場合、比較例の構成に生じた機械振動を、追加した制振装置1によって抑制することが可能になる。これによれば、稼働している空調設備3を止めることなく制振装置1を設置できる。
【0043】
なお、エネルギー吸収を行うタイプの制振部材(絶縁ゴムなど)による対策の場合、稼働している設備に後から施工することが困難である、本実施形態の方法であれば、対応可能である。
【0044】
上記の通り実施形態の架台2は、床の床面FLに配置され、上部に配置された空調機器3(装置)を支持する。
この架台2は、空調機器3を下から支持するフレーム21と、フレーム21を所定の高さに支持するための脚部22と、床面FLに固定される基台11に固定されている束12と、束12に拘束された状態でフレーム21の側面Sに対向させる第1面131を有した支持部10と、フレーム21の側面Sと支持部10の第1面131との間に配置される弾性体15と、を備えているとよい。
【0045】
上記の実施形態に示した通り、制振装置1の構造には、可動部がなく、必要な構成も比較的少ないものになる。例えば、AMD・TMDよりも簡単に構成することができる。
【0046】
(変形例)
上記の第1実施形態の制振装置1において、制振装置1と架台2のフレーム21との距離が大きくなることがある。これに適用可能な変形例について説明する。
本変形例の事例は、制振装置1の効果を高めるための一例である。
【0047】
板状部材13とフレーム21のビームとの関係:
上記の図3に示すように、制振装置1は、固定部材14と、弾性体16とを備えて構成してもよい。
例えば、固定部材14と板状部材13との間には、弾性体16が設けられている。
固定部材14は、弾性体15と弾性体16とを介して板状部材13をフレーム21のビームに押圧する。
【0048】
固定部材14は、板状部材13とフレーム21の側面S(ビームの面)との相対的な移動を抑制し、弾性体15と弾性体16とを介して板状部材13をフレーム21の側面Sに押圧するためのガイドである。
例えば、固定部材14は、棒状の板材を含む。棒状の板材が波型に2回屈曲して形成されている。その屈曲は、固定部材14の延伸方向と直角な方向の直線に沿って曲げられていてよい。固定部材14を成す棒状の板材の一部に、固定用の穴が設けられているとよい。固定部材14は、固定用の穴を通るボルトによって、ビームに固定される。
【0049】
このように構成される制振装置1は、支持部10の板状部材13の架台2のビームに対する変位を抑制することで、架台2に生じる機械振動を抑制させることができる。この固定部材14(押えプレート)を設けることにより、高減衰ゴムの弾性体15に、適当な圧力を掛けることができる。
【0050】
(第二実施形態)
第二実施形態について説明する。
前述の第1実施形態の制振装置1における支持部10は、プレート上部に、略鉛直方向(+Z方向)に延伸する束12を有するものであった。第二実施形態における制振装置1Aは、第1実施形態の支持部10に代わる支持部10Aを備える。
【0051】
図8は、第二実施形態に係る制振装置1Aの構成図である。
制振装置1Aは、制振装置1の支持部10に代わり支持部10Aを備える。
【0052】
支持部10Aは、例えば、基台11Aと、束12Aと、板状部材13Aとを備える。
束12Aは、束12と同じく、山形鋼(L型アングル)によって形成される。これにより束12Aの延伸方向は、鉛直方向(+Z方向)に対し傾斜している。
【0053】
支持部10Aの基台11Aは、架台2の第1の脚部22の比較的近傍に配置されている。この場合の束12Aは、架台2の第2の脚部22の位置の近傍まで延伸し、フレーム21の側面に達する長さを有している。束12Aには、板状部材13Aが板状部材13の代わりに設けられている。
【0054】
上記の実施形態によれば、支持部10Aの束12Aの基台11Aからの延伸方向が鉛直方向に対して所定角度傾斜した方向にある。
上記の制振装置1Aは、支持部10Aを備えることにより、機械共振が生じたときに空調機器3が水平方向に並進するように振動する傾向を示す場合(図6)に、より有効に機能する。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0056】
例えば、架台2は、前述の制振装置1を含まずに構成されていて、制振装置1が別体であってもよい。
架台2のフレーム(ビーム)の振動を支持部10によって抑える位置は、架台2のフレーム(ビーム)の振動が比較的大きくなる位置を目安に決定するとよい。上記の実施形態の場合、フレーム21をその延伸方向に2分する位置を基準に定めてもよい。
架台2に設ける制振装置1の個数は1個に制限することなく、必要数設けてよい。
架台2に複数の制振装置1を設ける場合に、互いに異なるビームに対向させるように配置してもよく、共通するビームに対向させるように配置してもよい。
空調機器3は、実施形態の架台2の上部に配置される振動源を備える装置の一例である。その振動源はモータであってよい。
なお、振動源を備える装置は、空調機器3に制限されない。例えば、発電機、空調機器の室外機、冷却塔などは、振動源を備える装置の一例である。このような装置は、モータ(電動機)、エンジン(原動機)などの振動源を備えるものであってよい。このように、実施形態に係る装置は、屋内に配置されるもの(空調機器3など。)に制限されず、屋外に配置されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1、1A 制振装置
2、2A 架台
3 空調機器
10、10A 支持部、
11、11A 基台、
12、12A 束、
13、13A 板状部材、
14 固定部材、
15、16 弾性体、
21 フレーム、
22 脚部、
100 空気調和システム、
131 第1面、
132 第2面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8