(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116745
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】情報出力装置及び情報出力方法
(51)【国際特許分類】
B60W 30/02 20120101AFI20240821BHJP
B60W 30/10 20060101ALI20240821BHJP
B62D 6/00 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
B60W30/02
B60W30/10
B62D6/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022539
(22)【出願日】2023-02-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 由多
【テーマコード(参考)】
3D232
3D241
【Fターム(参考)】
3D232CC20
3D232DA23
3D232DA33
3D232DA84
3D232DA90
3D232DC08
3D232DD08
3D232DD13
3D232DE05
3D232EA01
3D232GG01
3D241BA15
3D241BA18
3D241BB27
3D241BC04
3D241CE08
3D241CE09
3D241DA54Z
3D241DB02Z
3D241DB12Z
3D241DB28Z
(57)【要約】
【課題】目標軌道を追従する車両の動作が不安定になることを抑制する。
【解決手段】車両が走行する車道の設計速度と、目標軌道の接線方向とは垂直な横方向において車両の位置と目標軌道とのずれを示す横偏差とを取得する取得部201と、取得部201が取得した設計速度に対応する目標ヨーレートの上限又は下限を示す制約条件を特定する特定部202と、目標ヨーレートが特定部202により特定された制約条件を満たす条件下において、横偏差に関する項を含む評価関数を最小値にしたときの目標ヨーレートを導出する導出部203と、導出部203が導出した目標ヨーレートを車両の走行に関する情報を処理する情報処理装置3へ出力する出力部204と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行する車道の設計速度と、目標軌道の接線方向とは垂直な横方向において前記車両の位置と前記目標軌道とのずれを示す横偏差とを取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記設計速度に対応する目標ヨーレートの上限又は下限を示す制約条件を特定する特定部と、
前記目標ヨーレートが前記特定部により特定された前記制約条件を満たす条件下において、前記横偏差に関する項を含む評価関数を最小値にしたときの前記目標ヨーレートを導出する導出部と、
前記導出部が導出した前記目標ヨーレートを前記車両の走行に関する情報を処理する情報処理装置へ出力する出力部と、
を備える情報出力装置。
【請求項2】
前記特定部は、前記取得部が取得した前記設計速度に対応する最小曲率半径を特定し、前記設計速度を当該最小曲率半径で除した値に基づいて、前記制約条件を特定する、
請求項1に記載の情報出力装置。
【請求項3】
前記導出部は、前記横偏差を時間微分した第1変数、前記目標軌道の接線方向に対応する方位角と前記車両の向きを示す方位角との差分を示す方位角偏差を時間微分した第2変数、及び、前記車両が旋回する角加速度に関する予測モデルを用いて、前記評価関数を最小値にしたときの前記目標ヨーレートを導出する、
請求項1又は2に記載の情報出力装置。
【請求項4】
前記導出部は、前記横偏差に関する項として前記横偏差の2乗に第1重みを乗じた項を含み、且つ、前記方位角偏差の2乗に第2重みを乗じた項をさらに含む前記評価関数を最小値にしたときの前記目標ヨーレートを導出する、
請求項3に記載の情報出力装置。
【請求項5】
前記導出部は、前記目標ヨーレートと、前記目標軌道の接線方向に対応する方位角を時間微分した変数との差分の2乗に第3重みを乗じた項をさらに含む前記評価関数を最小値にしたときの前記目標ヨーレートを導出する、
請求項1又は2に記載の情報出力装置。
【請求項6】
コンピュータが実行する、
車両が走行する車道の設計速度と、目標軌道の接線方向とは垂直な横方向において前記車両の位置と前記目標軌道とのずれを示す横偏差とを取得するステップと、
取得した前記設計速度に対応する目標ヨーレートの上限又は下限を示す制約条件を特定するステップと、
前記目標ヨーレートが特定された前記制約条件を満たす条件下において、前記横偏差に関する項を含む評価関数を最小値にしたときの前記目標ヨーレートを導出するステップと、
導出した前記目標ヨーレートを前記車両の走行に関する情報を処理する情報処理装置へ出力するステップと、
を備える情報出力方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が自律的に走行するための情報を出力する情報出力装置及び情報出力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
目標軌道に追従して車両を自動走行する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、車両の前方向速度及び車幅方向速度等に対応する評価関数に、車両の横偏差、方位角偏差及び曲率を入力し、評価関数を最小等にするための補正操舵角を算出することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された方法では、目標軌道との間の横偏差及び方位角偏差が比較的大きい場合に、車両の動作が不安定になるという問題があった。
【0005】
本発明はこの点に鑑みてなされたものであり、目標軌道との間の横偏差及び方位角偏差が比較的大きい場合であっても目標軌道を追従する車両の動作が不安定になることを抑制することができる情報出力装置及び情報出力方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の情報出力装置は、車両が走行する車道の設計速度と、目標軌道の接線方向とは垂直な横方向において前記車両の位置と前記目標軌道とのずれを示す横偏差とを取得する取得部と、前記取得部が取得した前記設計速度に対応する目標ヨーレートの上限又は下限を示す制約条件を特定する特定部と、前記目標ヨーレートが前記特定部により特定された前記制約条件を満たす条件下において、前記横偏差に関する項を含む評価関数を最小値にしたときの前記目標ヨーレートを導出する導出部と、前記導出部が導出した前記目標ヨーレートを前記車両の走行に関する情報を処理する情報処理装置へ出力する出力部と、を備える。
【0007】
前記特定部は、前記取得部が取得した前記設計速度に対応する最小曲率半径を特定し、前記設計速度を当該最小曲率半径で除した値に基づいて、前記制約条件を特定してもよい。前記導出部は、前記横偏差を時間微分した第1変数、前記目標軌道の接線方向に対応する方位角と前記車両の向きを示す方位角との差分を示す方位角偏差を時間微分した第2変数、及び、前記車両が旋回する角加速度に関する予測モデルを用いて、前記評価関数を最小値にしたときの前記目標ヨーレートを導出してもよい。
【0008】
前記導出部は、前記横偏差に関する項として前記横偏差の2乗に第1重みを乗じた項を含み、且つ、前記方位角偏差の2乗に第2重みを乗じた項をさらに含む前記評価関数を最小値にしたときの前記目標ヨーレートを導出してもよい。前記導出部は、前記目標ヨーレートと、前記目標軌道の接線方向に対応する方位角を時間微分した変数との差分の2乗に第3重みを乗じた項をさらに含む前記評価関数を最小値にしたときの前記目標ヨーレートを導出してもよい。
【0009】
本発明の第2の態様の情報出力方法は、コンピュータが実行する、車両が走行する車道の設計速度と、目標軌道の接線方向とは垂直な横方向において前記車両の位置と前記目標軌道とのずれを示す横偏差とを取得するステップと、取得した前記設計速度に対応する目標ヨーレートの上限又は下限を示す制約条件を特定するステップと、前記目標ヨーレートが特定された前記制約条件を満たす条件下において、前記横偏差に関する項を含む評価関数を最小値にしたときの前記目標ヨーレートを導出するステップと、導出した前記目標ヨーレートを前記車両の走行に関する情報を処理する情報処理装置へ出力するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、目標軌道を追従する車両の動作が不安定になることを抑制するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図5】情報出力装置による目標ヨーレートの導出の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[車両の概要]
図1は、本実施形態の情報出力装置100の構成を示す。情報出力装置100は、軌道生成装置1、モデル予測コントローラ(
図1中のMPC)2、情報処理装置3及び制御装置4を備える。情報出力装置100は、車両に搭載されている。
【0013】
軌道生成装置1は、所定のサンプリング時間ごとに、車両が走行するための目標軌道をリアルタイムで生成する。軌道生成装置1は、生成した目標軌道に含まれるカーブの曲率を特定する。軌道生成装置1は、車両10が走行する走行位置を取得し、取得した走行位置と目標軌道との横方向のずれを示す横偏差を特定する。横方向は、目標軌道の接線方向と垂直な方向である。例えば、軌道生成装置1は、現在の車両10の位置と、この車両10とx軸方向の位置が同じ目標軌道上の位置との横方向のずれを横偏差として特定する。
【0014】
軌道生成装置1は、目標軌道に加えて、車両が目標軌道を走行したと仮定した場合の目標軌道上のそれぞれの位置の車両10の車体前方を示す目標方位角を特定する。軌道生成装置1は、現在の車両10の車体前方を示す方位角と、目標方位角との差分を示す方位角偏差を特定する。例えば、軌道生成装置1は、現在の車両10とx軸方向の位置が同じ目標軌道上の位置に対応する目標方位角を特定し、現在の車両10の方位角と、特定した目標方位角との差分を方位角偏差として特定する。
【0015】
図2は、横偏差及び方位角偏差の例を示す。
図2の大文字のX軸及びY軸はグローバル座標系を示す。例えば、軌道生成装置1は、例えば、東経、北緯等の値を変換することにより、このグローバル座標系のX座標及びY座標を特定する。
図2の小文字のxy座標は、走行中の車両10からみた座標系を示す。小文字のx軸は、車両10の車体前方を示す。小文字のy軸は、車両10の車幅方向を示す。
図2には、軌道生成装置1が生成した目標軌道cを示す。
図2中のzは、横偏差を示す。
図2中のψは、目標方位角を示す。
図2中のVは、車両10が走行する走行速度を示す。
図2中のφは、車両10の車体前方を示すx方向に対応する方位角を示す。
【0016】
図2中のθは、車両10の車体前方を示す方位角φと、目標方位角ψとの差分を示す方位角偏差である。
図2中のδは、車両10が旋回する操舵角を示す。
図2の例では、操舵角は、車体前方と、車両10の前輪又は後輪の向きとの差分を示す。
図2中のβは、車体前方と、車両10の走行方向との差分を示すすべり角である。
【0017】
モデル予測コントローラ2は、車両10が目標軌道に追従するための最適な旋回角速度である目標ヨーレートを導出する。モデル予測コントローラ2は、後述する予測モデル及び評価関数を用いて、所定の制約条件を満たす目標ヨーレートを導出する。より詳しくは、モデル予測コントローラ2は、目標軌道に対応する車道の設計速度を特定する。設計速度は、車道の幾何学的特徴を決定するために使用される。モデル予測コントローラ2は、特定した設計速度に基づいて、目標ヨーレートの上限又は下限の制約条件を特定する。制約条件の特定方法の詳細については後述する。モデル予測コントローラ2は、特定した制約条件を満たすように、評価関数を最小にする目標ヨーレートを導出する。モデル予測コントローラ2は、導出した目標ヨーレートを情報処理装置3へ出力する。
【0018】
情報処理装置3は、車両の走行に関する情報を処理する。情報処理装置3は、外部からの目標ヨーレート等の参照入力を整形するリファレンスガバナである。情報処理装置3は、モデル予測コントローラ2が導出した目標ヨーレートに車両10のヨーレートを近づけるための目標操舵角を特定する。
【0019】
まず、情報処理装置3は、車両10の走行を制御する制御装置4から車両の現在のヨーレート及び車速を取得する。情報処理装置3は、フィードフォワード制御として、車両10の車速と目標ヨーレートとに基づいて、目標操舵角を特定する。情報処理装置3は、フィードバック制御として、車両10の現在のヨーレートと目標ヨーレートとの差分が小さくなるように、目標操舵角を特定する。情報処理装置3は、このフィードフォワード制御と、このフィードバック制御とを組み合わせた2自由度制御により車両10の目標操舵角を特定する。情報処理装置3は、特定した目標操舵角を制御装置4へ出力する。
【0020】
制御装置4は、例えば、ECU(Electronic Control Unit)である。制御装置4は、車両の走行を制御する。制御装置4は、情報処理装置3が特定した目標操舵角に基づいて、車両の操舵角δを変化させて車両10を走行させる。制御装置4は、車両10の走行中に、車両10の走行速度V及び操舵角δを測定する。制御装置4は、車両10の操舵角δに基づいて、測定した走行速度Vのx軸方向成分(
図2参照)である前方向速度と、y軸方向成分である車幅方向速度とを特定する。制御装置4は、走行中の車両10が旋回する角速度であるヨーレートと、特定した前方向速度と、特定した車幅方向速度とをモデル予測コントローラ2へ出力する。制御装置4は、ヨーレートと、前方向速度とを情報処理装置3へ出力する。
【0021】
情報処理装置3及び制御装置4は、互いに一体的に構成されてもよい。この場合、情報処理装置3は、モデル予測コントローラ2が導出した目標ヨーレートに車両10のヨーレートを近づけるように目標操舵角を特定し、この目標操舵角に基づいて、車両10を走行させてもよい。
【0022】
モデル予測コントローラ2は、車道の設計速度に対応する目標ヨーレートの上限又は下限の制約条件を特定し、この制約条件を満たすように、評価関数を最小にする目標ヨーレートを導出する。このため、モデル予測コントローラ2は、軌道生成装置1が特定した横偏差z又は方位角偏差θが比較的大きい場合であっても過大な目標ヨーレートを導出することを抑制することができる。したがって、モデル予測コントローラ2は、目標軌道を追従する車両10の動作が不安定になることを抑制することができる。
【0023】
図3は、情報出力装置100の要部の構成を示す。情報出力装置100は、モデル予測コントローラ2及び記憶部5を備える。記憶部5は、例えば、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等により構成される。記憶部5は、モデル予測コントローラ2を機能させるための各種プログラムや各種データを記憶する。例えば、記憶部5には、設計速度と、最小曲率半径とを関連付けた参照曲率情報が記憶されている。
【0024】
図4は、参照曲率情報の例を示す。例えば、時速20キロメートルの設計速度には、15メートルの最小曲率半径が関連付けられている。設計速度に対応する最小曲率半径は、車道構造令により定められている。モデル予測コントローラ2は、記憶部5に記憶されているプログラムを実行することにより、取得部201、特定部202、導出部203及び出力部204として機能する。
【0025】
取得部201は、各種の情報を軌道生成装置1、制御装置4又は外部装置から取得する。取得部201は、車両10の走行位置と目標軌道との横方向のずれを示す横偏差zを軌道生成装置1から取得する。取得部201は、方位角偏差θを軌道生成装置1から取得する。取得部201は、目標軌道と、目標軌道に含まれるそれぞれのカーブの曲率とを軌道生成装置1から取得する。取得部201は、ヨーレート、車両10の前方向速度及び車幅方向速度を制御装置4から取得する。
【0026】
取得部201は、車両10が走行する車道の設計速度を外部装置から取得する。外部装置は、例えば、車道の平面的な位置の情報を車両10に提供するサーバである。より詳しくは、取得部201は、車両10の位置から所定距離以内の車道の設計速度と、車道の位置とを関連付けて外部装置から取得する。取得部201は、目標軌道に対応する車道の位置を特定し、特定した位置に関連付けて取得した設計速度を特定する。
【0027】
取得部201は、取得した設計速度を特定部202へ出力する。取得部201は、取得した曲率、横偏差z、方位角偏差θ、目標軌道、ヨーレート、前方向速度、車幅方向速度及び設計速度を導出部203へ出力する。
【0028】
[制約条件の特定]
特定部202は、取得部201が取得した設計速度に対応する目標ヨーレートの上限又は下限を示す制約条件を特定する。まず、特定部202は、取得部201が取得した設計速度に対応する最小曲率半径を特定する。最小曲率半径は、車道の設計速度に応じて法令上許容されている曲率半径の下限値である。より詳しくは、特定部202は、設計速度と、最小曲率半径とを関連付けた参照曲率情報(
図4参照)を記憶部5から読み出す。特定部202は、読み出した参照曲率情報を参照して、取得部201が取得した設計速度に対応する最小曲率半径を特定する。
【0029】
特定部202は、取得部201が取得した設計速度を最小曲率半径で除した値に基づいて、目標ヨーレートの上限値又は下限値の制約条件を特定する。例えば、特定部202は、この設計速度を最小曲率半径で除した値に所定の係数を乗じることにより、目標ヨーレートの上限値を制約条件として特定する。所定の係数は、例えば、車両10の車幅方向速度のばらつきに起因して目標ヨーレートが増減することにより車両10の挙動の安定性に影響を与えることを抑制するために定められる。特定部202は、同様の方法により目標ヨーレートの下限値を制約条件として特定してもよく、目標ヨーレートの上限値及び下限値の両方を特定してもよい。特定部202は、特定した制約条件を導出部203へ出力する。
【0030】
[目標ヨーレートの導出]
導出部203は、軌道生成装置1が生成した目標軌道を車両10が追従するための目標ヨーレートを導出する。導出部203は、横偏差zを時間微分した第1変数、目標軌道の接線方向に対応する方位角ψと車両10の向きを示す方位角φとの差分を示す方位角偏差θを時間微分した第2変数、及び、車両10が旋回する角加速度に関する予測モデルを用いて、この目標ヨーレートを導出する。予測モデルは、以下の式(1)で表される。
【数1】
【0031】
式(1)中、z
tは、横偏差を時間微分した第1変数である。式(1)中、θ
tは、方位角偏差を時間微分した第2変数である。ψ
t2は、車両10が旋回する角加速度である。V
xは、車両10の走行速度Vのx軸方向成分(
図2参照)である前方向速度である。
図1中のτ(タウ)は、導出部203が導出する目標ヨーレートに対して車両10が応答する一次遅れ系の時定数である。φ
tは、車両10が旋回するヨーレートである。φ
tは、車両10の車体前方に対応する方位角φを時間微分することにより求められる。γは、目標ヨーレートである。y
tは、走行速度Vのy軸方向成分(
図2参照)である車幅方向速度である。ψ
tは、目標方位角ψを時間微分した値である。
【0032】
導出部203は、横偏差zに関する項を含む評価関数を最小値にしたときの目標ヨーレートを導出する。この評価関数の横偏差zに関する項は、横偏差zの2乗に第1重みを乗じた項である。この評価関数は、方位角偏差θの2乗に第2重みを乗じた項をさらに含む。この評価関数は、目標ヨーレートγと、目標軌道の接線方向に対応する目標方位角ψを時間微分した変数ψtとの差分の2乗に第3重みを乗じた項をさらに含む。
【0033】
導出部203が目標ヨーレートを導出するために用いる評価関数Jは、以下の式(2)により表される。
【数2】
式(2)中、pは、予測ホライズンの長さである。予測ホライズンは、現在から所定の未来までの時間範囲である。Q
zは、横偏差z(k)に対応する第1重みである。Q
θは、方位角偏差θ(k)に対応する第2重みである。R
γは、目標ヨーレートγと、目標方位角ψを時間微分した変数ψ
tと、の差分に対応する第3重みである。z(p)は、横偏差zの予測ホライズンにおける終端値である。Q
zfinalは、横偏差zに関する終端重みである。θ(p)は、方位角偏差θの予測ホライズンにおける終端値である。Q
θfinalは、方位角偏差θに関する終端重みである。第1重みQ
z、第2重みQ
θ、第3重みR
γ、横偏差に関する終端重みQ
zfinal及び方位角偏差に関する終端重みQ
θfinalは、例えば、車両10の走行試験により定められる。
【0034】
導出部203は、特定部202により特定した上限値又は下限値の制約条件を目標ヨーレートが満たす条件下において、この評価関数を最小値にしたときの目標ヨーレートγを導出する。導出部203は、導出した目標ヨーレートγを出力部204に入力する。
【0035】
[目標ヨーレートの出力]
出力部204は、導出部203が導出した目標ヨーレートγを情報処理装置3へ出力する。出力部204は、情報処理装置3及び制御装置4が互いに一体に構成されている場合には、この情報処理装置3へ目標ヨーレートγを出力してもよい。
【0036】
[情報出力装置100による目標ヨーレートの導出の処理手順]
図5は、情報出力装置100による目標ヨーレートの導出の処理手順を示すフローチャートである。この処理手順は、例えば、車両10の走行中に開始される。まず、軌道生成装置1は、車両10が走行するための目標軌道を生成する(S101)。軌道生成装置1は、車両10の走行位置と目標軌道との横方向のずれを示す横偏差zを特定する。軌道生成装置1は、車両10の車体前方を示す方位角φと、目標方位角ψとの差分を示す方位角偏差θを特定する。
【0037】
取得部201は、横偏差z、方位角偏差θ及び目標軌道を軌道生成装置1から取得する(S102)。取得部201は、目標軌道に対応する車道の設計速度を外部装置から取得する(S103)。
【0038】
特定部202は、取得部201が取得した設計速度に対応する目標ヨーレートの上限を示す制約条件を特定する(S104)。導出部203は、式(1)に示す予測モデルを用いて、特定部202が特定した制約条件を満たす範囲内において式(2)に示す評価関数を最小化したときの目標ヨーレートγを導出する(S105)。出力部204は、導出部203が導出した目標ヨーレートγを情報処理装置3へ出力する(S106)。
【0039】
情報処理装置3は、出力部204が出力した目標ヨーレートγに車両10のヨーレートを近づけるための目標操舵角を特定する。情報処理装置3は、特定した目標操舵角を制御装置4へ出力する(S107)。制御装置4は、情報処理装置3が出力した目標操舵角に基づいて、車両10の操舵角δを変化させて車両10を走行させる(S108)。制御装置4は、車両10の走行を終了したか否かを判定する(S109)。
【0040】
制御装置4は、車両10の走行を終了したと判定した場合(S109のYES)、処理を終了する。制御装置4は、S109の判定において車両10の走行を終了していないと判定した場合(S109のNO)、S101の処理に戻る。
【0041】
[本実施形態の情報出力装置100による効果]
導出部203は、設計速度に基づいて特定部202が特定した制約条件を満たすように、評価関数を最小にする目標ヨーレートγを導出する。このため、導出部203は、軌道生成装置1が特定した横偏差z又は方位角偏差θが比較的大きい場合であっても過大な目標ヨーレートγを導出することを抑制することができる。このため、導出部203は、目標軌道を追従する車両10の動作が不安定になることを抑制することができる。
【0042】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0043】
1 軌道生成装置
2 モデル予測コントローラ
3 情報処理装置
4 制御装置
5 記憶部
10 車両
20 時速
100 情報出力装置
201 取得部
202 特定部
203 導出部
204 出力部