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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116746
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】給電システムの制御方法、給電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 1/10 20060101AFI20240821BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
H02J1/10
H02J1/00 304E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022540
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】田中 暢
【テーマコード(参考)】
5G165
【Fターム(参考)】
5G165DA01
5G165GA02
5G165JA02
5G165LA02
(57)【要約】
【課題】ケーブルシステムへの影響を低減して給電切換を行う。
【解決手段】2つの給電装置1、10と、中継器7と、を備えるケーブルシステムの中継器7への給電を、2つの給電装置1、10による両端給電から片端給電に切り替える際に、給電装置1は、給電電流と、給電電圧と、ケーブルシステムに流れるシステム電流と、の値を取得し、システム電流の変化量の下限値と、システム電流の変化量の上限値を算出し、システム電流の値が変化量の下限値を下回った場合には、給電の停止制御を中断して、給電電流を、中断直前の給電電流である中途電流の状態で維持し、取得されたシステム電流の値が変化量の上限値以下の場合には、給電電流を中途電流の状態で維持し、取得したシステム電流の値が変化量の上限値を上回った場合であって、取得された給電電圧の値が所定の電圧以下である場合には、所定の時間で給電電流が0Aとなるように給電の停止制御を行う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの給電装置と、中継器と、を備えるケーブルシステムの前記中継器への給電を、前記2つの給電装置による両端給電から片端給電に切り替える際に、
1つの前記給電装置が、
給電電流と、給電電圧と、前記ケーブルシステムに流れるシステム電流と、の値を取得し、
給電の停止制御を開始した後に、前記システム電流の変化量の下限値と、前記システム電流の変化量の上限値を算出し、
取得された前記システム電流の値が前記変化量の下限値を下回った場合には、給電の停止制御を中断して、前記給電電流を、中断直前の給電電流である中途電流の状態で維持し、
取得された前記システム電流の値が前記変化量の上限値以下の場合には、前記給電電流を前記中途電流の状態で維持し、
取得した前記システム電流の値が前記変化量の上限値を上回った場合であって、取得された給電電圧の値が所定の電圧以下である場合には、所定の時間で給電電流が0Aとなるように給電の停止制御を行う、
給電システムの制御方法。
【請求項2】
前記給電装置の停止制御を開始した後に、前記変化量の下限値を算出して、取得された前記システム電流の値が前記変化量の下限値を下回るまでの動作である第1の動作パターンを行った後に、
前記給電装置からの給電電流を前記中途電流の状態で維持し、前記変化量の上限値を算出し、前記システム電流の値と、前記変化量の上限値と、の関係を判定する第2の動作パターンを実行する、
請求項1に記載の給電システムの制御方法。
【請求項3】
前記第2の動作パターンにおいて、前記システム電流の値が、変化量の上限値を上回った後に、
前記取得された給電電圧の値が所定の電圧以下であるか否かを判定し、取得された給電電圧の値が所定の電圧以下である場合には、所定の時間で給電電流が0Aとなるように停止制御を行う第3の動作パターンを行う、
請求項2に記載の給電システムの制御方法。
【請求項4】
前記第3の動作パターンにおいて、前記取得された給電電圧の値が所定の電圧以下でないと判定された場合には、前記給電電流を前記中途電流の状態で維持するとともに、給電電圧が所定の電圧以下となるまで前記給電電圧の取得と、前記給電電圧の値が所定の電圧以下であるか否かの判定を繰り返す、
請求項3に記載の給電システムの制御方法。
【請求項5】
前記第1の動作パターンにおいて算出される前記変化量の下限値は、システム全体を動作させるために必要とされるシステム動作電流の値より高い値であるとともに、前記第1の動作パターンから前記第2の動作パターンに遷移する際に、前記システム電流の値が僅かに前記変化量の下限値を下回った場合であっても、システム全体には動作可能な電流が供給された状態となる値である、
請求項2~請求項4のいずれか1項に記載の給電システムの制御方法。
【請求項6】
中継器に対する給電を2つの給電装置から行う際に、前記2つの給電装置からの両端給電から片端給電に切り替え可能であるケーブルシステムに利用される給電装置であって、
1つの前記給電装置は、
給電を実行する給電部と、
前記給電部による給電電流及び給電電圧と、前記ケーブルシステムに流れるシステム電流と、の値を取得する給電部と、
給電の停止制御を開始した後に、前記システム電流の変化量の下限値と、前記システム電流の変化量の上限値を算出する計算処理部と、
取得された前記システム電流が前記変化量の下限値を下回った場合には、給電の停止制御を中断して、前記給電電流を、中断直前の給電電流である中途電流の状態で維持し、取得された前記システム電流が前記変化量の上限値以下の場合には、前記給電電流を前記中途電流の状態で維持し、取得した前記システム電流が前記変化量の上限値を上回った場合であって、取得された給電電圧の値が所定の電圧以下である場合には、所定の時間で給電電流が0Aとなるように、前記給電部の停止制御を行う給電制御部と、を備える、
給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光海底ケーブル用において両端給電から片端給電への切り替える際の、システム給電電流を安定化させる制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
長距離の光海底ケーブルシステムにおいて、給電を両端から行う場合や、片端から行う場合があるとともに、これらを切り替えることがある。
【0003】
図5(a)は、長距離の光海底ケーブルシステムにおいて、両端給電である場合のブロック図であり、図5(b)は、この両端給電時の出力給電電圧のバランス図である。この光海底ケーブルシステムでは、両陸揚げ局であるA局とB局の2局の給電装置を用いて、両端給電という給電方式で、海底ケーブルに接続された海底中継器へ給電を行っている。ここで、両端給電とは、システム全体のシステム給電電圧(Vmax)を両陸揚げ局から正極および負極で全システム電力の約1/2を各々分担する方式である。なお、光海底ケーブルシステムの給電方式は、一定の給電電流値で給電を行う、定電流方式である。
【0004】
一方で、図6(a)は、長距離の光海底ケーブルシステムにおいて、片端給電である場合のブロック図であり、図6(b)は、この片端給電時の出力給電電圧のバランス図である。なお、片端給電とは、両端給電において片端の給電装置を保守作業などで停止する場合、対向局の運転中の給電装置がシステム電力を全て担うことで、海底中継器への給電を継続的に行う方式である。
【0005】
特許文献1には、2台の給電装置を直列冗長運転して、その中間に設けられた負荷に両端給電し、障害発生時等に一方の給電装置に停止信号を供給して該一方の給電装置を停止させるとともに、他方の給電装置に全負荷を担わせて片側給電を行う給電装置の停止方法であって、該片側給電に切り替える際に、該停止信号を供給される一方の給電装置の出力電流を、該他方の給電装置が全負荷を担う電流値と等しいか、或いは零でないそれ以下に一旦減少させ、所定時間後に零にして該一方の給電装置を停止させる給電装置の停止方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭61-037850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
長距離の光海底ケーブルシステムにおいて、両端給電から片端給電へ切り替える際には、給電バランスの変化が発生する。そして、給電バランスの変化が発生した場合には、給電停止する局にて充電されていた浮遊容量の電荷が放電かつ給電中の局による充電のため、海底ケーブルシステムの運用に必要なシステム動作電流の低下が発生する。
【0008】
図7は、両端給電状態から、片端の給電装置が停止して片端給電状態となる際のシステム電流の変化を示す図である。具体的には、両端給電から片端給電に移行する際に、片端の給電装置が停止制御を開始(T1)すると、システム全体の給電能力が低下する為、ケーブルの浮遊容量に充電されていた電荷は放電を始め、システム電流は減少する。
【0009】
このとき、対向局の給電装置の出力が上がり、放電量より充電量が大きくなるまでは、システム電流は継続して減少する(T1-T2)。その後、放電量と充電量がバランスし、システム電流は定電流値まで上昇する。(T2-T3)。海底ケーブル長に比例し、浮遊容量は大きくなり、放電量、充電量も大きくなる。これにより、放電後の充電も時間がかかる。
【0010】
そのため、充電量が大きくなることで、システム電流も更なる減少することになる。その影響により、光海底ケーブルシステムの中継器の動作に必要な電流の閾値(以下、システム動作電流値)を下回り、中継器の機能停止による光海底ケーブルシステムが停止する課題がある。
【0011】
ここで、ケーブルシステムの浮遊容量は、給電方法の切換直前の給電バランスに状態に依存している。一例として極端な給電バランス(自局:対向局=99%:1%)の場合、99%のバランスを持っている自局が停止する場合、50%:50%で分担している場合より、浮遊容量が大きくなり、システム電流の変化量が大きくなる。
【0012】
また、両端給電のシステム都合上、自局及び対向局間の給電電圧のバランスの確認が困難であるため、給電バランスに合わせた任意の値での給電方法の切換に対応ができない課題がある。
【0013】
さらに、関連する給電装置の停止制御のフローチャートを図8に示し、さらに給電停止を行った場合のシステム電流の変化を図9(a)、停止させる給電装置の給電電流の変化を図9(b)に示す。
【0014】
図8図9(a)、図9(b)に示すように、関連するシステムでは、停止する給電装置の給電電流が任意の時間で0A(ゼロアンペア)になるように停止制御を行っている。前記のケーブル長および、給電バランスに比例した浮遊容量の増加によるシステム電流の低下を抑えるため給電停止時間を長く設定していた。
【0015】
しかしながら、給電バランスの状態により、浮遊容量の変化するため、設定値によってはシステム電流の低下が発生する場合があり、システム電流の低下を防ぐため、給電停止時間を長く設定する必要が有り、両端給電から片端給電への切替完了(T4)までの時間が長くなる課題がある。
【0016】
したがって、光海底ケーブルシステムの運用に必要な海底中継器のシステム動作電流を供給できなくなり、光海底ケーブルシステムの運用に影響が発生していた。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本開示にかかる給電システムの制御方法は、2つの給電装置と、中継器と、を備えるケーブルシステムの前記中継器への給電を、前記2つの給電装置による両端給電から片端給電に切り替える際に、1つの前記給電装置は、給電電流と、給電電圧と、前記ケーブルシステムに流れるシステム電流と、の値を取得し、給電の停止制御を開始した後に、前記システム電流の変化量の下限値と、前記システム電流の変化量の上限値を算出し、取得された前記システム電流の値が前記変化量の下限値を下回った場合には、給電の停止制御を中断して、前記給電電流を、中断直前の給電電流である中途電流の状態で維持し、取得された前記システム電流の値が前記変化量の上限値以下の場合には、前記給電電流を前記中途電流の状態で維持し、取得した前記システム電流の値が前記変化量の上限値を上回った場合であって、取得された給電電圧の値が所定の電圧以下である場合には、所定の時間で給電電流が0Aとなるように給電の停止制御を行う。
【0018】
また本開示にかかる給電装置は、中継器に対して行う給電を、前記中継器に2つの給電装置からの両端給電から片端給電に切り替え可能であるケーブルシステムに利用される給電装置であって、前記中継器への給電が、前記自給電装置及び前記他給電装置からの両端給電で行われる状態から、前記自給電装置による給電を停止する状態に遷移する際の給電状態を制御する給電装置であって、前記自給電装置は、給電を実行する給電部と、前記給電部による給電電流及び給電電圧と、前記ケーブルシステムに流れるシステム電流と、の値を取得する給電部と、給電の停止制御を開始した後に、前記システム電流の変化量の下限値と、前記システム電流の変化量の上限値を算出する計算処理部と、取得された前記システム電流が前記変化量の下限値を下回った場合には、給電の停止制御を中断して、前記給電電流を、中断直前の給電電流である中途電流の状態で維持し、取得された前記システム電流が前記変化量の上限値以下の場合には、前記給電電流を前記中途電流の状態で維持し、取得した前記システム電流が前記変化量の上限値を上回った場合であって、取得された給電電圧の値が所定の電圧以下である場合には、所定の時間で給電電流が0Aとなるように、前記給電部の停止制御を行う給電制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0019】
光海底ケーブルシステムの運用への影響を低減した状態で、給電方法の切換を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1の給電装置の構成を示すブロック図である。
図2】第1の給電装置を含めた海底ケーブルシステムの構成を示す図である。
図3】給電状態を切り替える過程を示したフローチャート図である。
図4】システム電流と給電電流と給電電圧の時間変化の一例を示した図である。
図5】関連する長距離の光海底ケーブルシステムが両端給電である場合のブロック図と給電電圧のバランスを示す図である。
図6】関連する長距離の光海底ケーブルシステムが片端給電である場合のブロック図と給電電圧のバランスを示す図である。
図7】関連する光海底ケーブルシステムが両端給電状態から片端給電状態となる際のシステム電流の変化の一例を示す図である。
図8】関連する光海底ケーブルシステムに利用される給電装置の停止制御のフローチャート図である。
図9】関連する光海底ケーブルシステムにおける給電装置を停止させる際のシステム電流と、給電装置からの給電電流の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本実施の形態について説明する。図1示すように、第1の給電装置1は、給電部2と、検出部3と、給電制御部4と、計算処理部5と、を有する。なお、本開示にかかる給電システムの制御方法は第1の給電装置1に適用するものであり、特に、第1の給電装置1における停止制御に関するものである。
【0022】
図2は、第1の給電装置1を含む長距離の光海底ケーブルシステム(以下、ケーブルシステム)の全体の構成の一例を示すものであって、第1の給電装置1と、海底中継器7、第2の給電装置10を有している。なお以下では、第1の給電装置1を給電装置(A局)または自給電装置、第2の給電装置10を給電装置(B局)または他給電装置、海底中継器7を、単に中継器7と記載することがある。なお、第1の給電装置1と、中継器7と、第2の給電装置10とを繋ぐ海底ケーブルを海底ケーブル6、第1の給電装置1と中継器7の間の海底ケーブル6が有している浮遊容量を浮遊容量8、第2の給電装置10と中継器7の間の海底ケーブル6が有している浮遊容量を浮遊容量9として示している。
【0023】
給電部2は、ケーブルシステム全体への給電を行う実行する。例えば、給電部2は、給電制御部4の制御に応じて、ケーブルシステム全体への給電を行う。このとき、第1の給電装置1と、第2の給電装置10から、それぞれ海底ケーブル6を介して接続された中継器7に対して給電が行われている状態が両端給電されている状態、第1の給電装置1と、第2の給電装置10の一方のみから中継器7に対して給電が行われている状態が、片側給電されている状態とする。なお、中継器7に対して給電が行われている状態とは、システム全体に対して給電されている状態であるものとする。
【0024】
検出部3は、第1の給電装置1において給電部2による給電電流と、給電電圧と、システム電流の値の検出を行う。検出部3は、これらの検出値の情報を有する信号を、計算処理部5に出力する。
【0025】
計算処理部5は、検出部3から出力された信号に応じて計算処理を行う。例えば、計算処理部5は、検出部3により取得されたシステム電流の値に応じて、システム電流の変化量の下限値(以下、変化量の下限値)、及び、システム電流の変化量の上限値(以下、変化量の上限値)の算出を行う。また後述するように、計算処理部5では、検出部3で取得された給電電圧が所定の電圧以下であるか否かの判定を行う。なお、この所定の電圧以下である状態とは電圧がほぼ0Vの状態のことを指し、以下の説明では、給電電圧が所定の電圧以下の状態であることを、電圧が0Vの状態であるものとして説明する。
【0026】
なお、この変化量の下限値とは、システム全体を動作させるために必要とされるシステム動作電流の値より高い値であり、システム電流の値が、僅かに変化量の下限値を下回った場合でも、システム全体には動作可能な電流が供給された状態となる値とする。また、変化量の上限値とは、この下限値より高い電流値である(図4(a)参照)。
【0027】
給電制御部4は、検出部3により取得された給電電流、給電電圧、システム電流の値や、計算処理部5による計算結果に応じて、給電部2で行う給電状態を制御する。例えば、後に詳述するように、給電制御部4では、検出部3により取得されたシステム電流と、計算処理部5により算出された変化量の下限値、変化量の上限値との関係に応じて、給電停止を中断する制御を行う。
【0028】
次に、図3を参照して、第1の給電装置1と第2の給電装置10による両端給電の状態から、第1の給電装置1を停止させて、第2の給電装置10による片端給電に給電状態を切り替える過程における第1の給電装置1の動作制御について説明する。
【0029】
ここで、図3に示したフローチャートでは、3つの動作パターンが存在している。以下では、各動作パターンについて順番に説明する。
【0030】
・第1の動作パターン(ステップS11~ステップS15)
初めに、ケーブルシステムにおいて、第1の給電装置1と第2の給電装置10による両端給電の状態から、第1の給電装置1からの給電を停止させる停止制御を開始したものとする。
【0031】
検出部3は、給電電流、給電電圧、システム電流を取得する。また、検出部3は、取得した給電電流、給電電圧、システム電流の情報を計算処理部5に出力する(ステップS11)。
【0032】
計算処理部5は、検出部3で取得された給電電圧が0Vであるか否かの判定を行う(ステップS12)。この判定を、判定Aとする。
【0033】
この判定Aにおいて、給電電圧が0Vではないと判定された場合には(ステップS12でNo)、ステップS3に進む。一方で、給電電圧が0Vであると判定された場合には(ステップS12でYes)、後述するステップS31に進み、第3の動作パターンに遷移する。第3の動作パターンについては、後に説明する。
【0034】
なお、ステップS12でYesとなるパターンは、少なくとも1回、後述する第2の動作パターンの動作を行った後に発生することとする。
【0035】
給電制御部4は、任意の時間で給電電流が0Aになるように、給電部2の動作を制御する(ステップS13)。
【0036】
計算処理部5は、システム電流の変化量の下限値を算出する(ステップS14)。
【0037】
計算処理部5は、検出部3で取得されたシステム電流の値が、算出された変化量の下限値より小さいか否かを判定する(ステップS15)。この判定を、判定Bとする。
【0038】
判定Bにおいて、検出部3で取得されたシステム電流の値が、計算処理部5で算出された変化量の下限値以上である場合には(ステップS15でNo)、ステップS11に戻り、第1の動作パターンを繰り返す。
【0039】
一方で、判定Bにおいて、検出部3で取得されたシステム電流の値が、計算処理部5で算出された変化量の下限値を下回った場合には(ステップS15でYes)、ステップS21に進み、第2の動作パターンに遷移する。
【0040】
・第2の動作パターン(ステップS21~ステップS25)
検出部3は、給電電流、給電電圧、システム電流を検出する。また、検出部3は、検出した給電電流、給電電圧、システム電流の情報を計算処理部5に出力する(ステップS21)。
【0041】
計算処理部5は、システム電流が変化量の下限値を下回る直前の給電電流の値を、中途電流の値として保持しておき、この中途電流の値を給電制御部4に出力する(ステップS22)。
【0042】
計算処理部5は、検出部3で取得したシステム電流値に応じて、変化量の上限値を算出する(ステップS23)。
【0043】
給電制御部4は、第1の給電装置1における給電の停止制御を中断し、給電部2による給電電流が中途電流の状態を維持するように動作を制御する(ステップS24)。
【0044】
計算処理部5は、検出部3で取得されたシステム電流の値が、算出された変化量の上限値を上回るか否かを判定する(ステップS25)。この判定を、判定Cとする。
【0045】
判定Cにおいて、検出部3で取得されたシステム電流の値が、算出された変化量の上限値以下であれば(ステップS25でNo)、ステップS24に戻り処理を繰り返す。すなわち給電制御部4では、給電部2が、中途電流の値の状態で給電を行う状態を維持するように制御を行う。
【0046】
一方で、判定Cにおいて、検出部3で取得されたシステム電流の値が、算出された変化量の上限値を上回る場合には(ステップS25でYes)、ステップS11に戻る。なおこのとき、ステップS11に戻ることにより、給電システムの制御方法では、第1の動作パターンに遷移するか、第3の動作パターンに遷移するかのいずれかとなる。
【0047】
・第3の動作パターン(ステップS11~S12、ステップS31)
第1の動作パターンと同様に、検出部3は、給電電流、給電電圧、システム電流を取得する。また、検出部3は、取得した給電電流、給電電圧、システム電流の情報を計算処理部5に出力する(ステップS11)。また判定Aにおいて、検出部3で取得された給電電圧が0Vであると判定されたものとし(ステップS12でYes)、ステップS31に進む。
【0048】
給電制御部4は、所定の時間で給電電流が0Aになるように給電部2の動作を制御する(ステップS31)。なお、所定の時間は、あらかじめ任意の時間に決定しておくことができる。
【0049】
ここで図4(a)は、両端給電から片端給電への給電切り替え過程における時間ごとのシステム電流の変化量の一例を示す図であり、図4(b)は、第1の給電装置1から給電される給電電流と給電電圧の変化量の一例を示す図であって、図4(a)及び図4(b)の横軸の時間T1~T4は共通の時間とする。なお、図4(b)における電圧は、絶対値で表示している。
【0050】
ここで、図4(a)及び図4(b)では、時刻T1~T2は第1の動作パターン、時刻T2~T3は第2の動作パターン、時刻T3~T4は第3の動作パターンとなっている。
【0051】
具体的には、時刻T1において、第1の給電装置1では給電の停止制御を開始している。言い換えると、時刻T1において、ケーブルシステムは、両端給電から片端給電への切り替えを開始している。
【0052】
時刻T1~T2において、第1の給電装置1は、第1の動作パターンを実行している。この時刻T1~T2の間、システム電流の値は大きく低下するとともに、第1の給電装置1による給電電流の値は低下し、給電電圧の値も低下している。
【0053】
時刻T2は、システム電流が大きく低下した結果、システム電流の値が、計算処理部5で算出された変化量の下限値を下回った状態となったときであり、第1の動作パターンから第2の動作パターンに遷移している。
【0054】
なおここで、第1の動作パターンから前記第2の動作パターンに遷移する際には、システム電流の値が、計算処理部5で算出した変化量の下限値を、僅かに下回った状態となる。
【0055】
そのため、計算処理部5で算出される変化量の下限値は、システム全体を動作させるために必要とされるシステム動作電流の値より十分に高い値であるように設定しておくことが望ましい。すなわち、計算処理部5では、システム電流の値が僅かに前記変化量の下限値を下回った場合であっても、ケーブルシステム全体には動作可能な電流が供給された状態となるように、変化量の下限値を設定しておく。これにより、第1の動作パターンから前記第2の動作パターンに遷移する際であっても、ケーブルシステム全体に十分なシステム電力が供給され、動作を継続させることができる。
【0056】
時刻T2~T3において、第1の給電装置1は、第2の動作パターンを実行している。この時刻T2~T3の間、システム電流の値は、計算処理部5で算出された下限値から、計算処理部5で算出された上限値となるまで、徐々に上昇している。
【0057】
このとき、給電制御部4では、給電部2による給電電流の値が、T2となる直前の電流の値である中途電流の値を維持するように、給電電流の出力制御を行う。より具体的には、時刻T2~T3において、給電制御部4は、給電部2による給電電流の値が僅かに上昇するように制御する。
【0058】
なおこのとき、給電制御部4は、時刻T2~T3における給電部2による給電電圧を、時刻T1~T2と同様の割合で低下させるように制御することができる。
【0059】
時刻T3は、時刻T2からシステム電流が徐々に上昇した結果、システム電流の値が、計算処理部5で算出された変化量の上限値を上回った状態となったときであり、第2の動作パターンから第3の動作パターンに遷移する。
【0060】
時刻T3~T4において、第1の給電装置1は、給電の停止制御である第3の動作パターンを実行している。図4(a)に示すように、この時刻T3~T4の間、システム電流の値は、計算処理部5で算出された変化量の上限値の値から、大きく上昇する。これは、第2の給電装置10からの電流の供給が十分に増加するためである。
【0061】
一方で、時刻T3~T4において、給電制御部4は、時刻T4において給電電流の値が0Aとなるように、給電部2による給電電流を低下させる制御を行う。これにより、第1の給電装置1では、給電を停止する処理を完了することができる。なおこのとき、給電部2による給電電圧は、時刻T3における電圧と同様に0Vである。
【0062】
このようにして、長距離の光海底ケーブルシステムでは、両端給電から片端給電への切り替えの際に供給される電流が、海底中継器の動作に必要なシステム動作電流を下回らず、光海底ケーブルシステムの運用に影響を与えずに給電の切換が可能である。
【0063】
さらに、システム電流を両端給電から片端給電に切り換える際に、切替完了までの時間の短縮が可能である。
【0064】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上述した給電システムの制御方法は第1の給電装置1に適用するものであるものとして説明したが、第2の給電装置10の構成を第1の給電装置1と同様の構成として、第2の給電装置10に対して上述した給電システムの制御方法を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 第1の給電装置
2 給電部
3 検出部
4 給電制御部
5 計算処理部
6 海底ケーブル
7 中継器
8 浮遊容量
9 浮遊容量
10 第2の給電装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9