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特開2024-116755疲労試験方法、疲労試験装置および試験片把持部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116755
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】疲労試験方法、疲労試験装置および試験片把持部材
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/34 20060101AFI20240821BHJP
【FI】
G01N3/34 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022555
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 建佑
(72)【発明者】
【氏名】森本 将史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 千紘
(72)【発明者】
【氏名】石津 友康
(72)【発明者】
【氏名】永井 耕太
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA07
2G061AA17
2G061AB05
2G061BA15
2G061CB02
2G061CC01
(57)【要約】
【課題】試験片に加わる組み付けひずみの発生部位を、曲げ荷重、または曲げおよびねじり複合荷重による最大応力部位とずらすことにより、精度よい疲労試験を行うことができる疲労試験方法、疲労試験装置および試験片把持部材を提供する。
【解決手段】本発明に係る試験片把持構造は、前記試験片を試験片把持部材により把持する試験片把持ステップと、前記試験片把持部材を支持部材および駆動部材により支持する把持部材支持ステップと、前記試験片に応力を加える応力負荷ステップと、を含み、前記試験片把持ステップは、前記第1把持部材および前記第2把持部材を構成する本体部と押圧部材とにより、前記試験片の端部を平行となるよう挟み込んで挟持し、前記把持部材支持ステップは、前記試験片把持部材を曲げ荷重が印加される部位と異なる部位に最大組み付け応力が発生するように支持する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験片に曲げ荷重、または曲げおよびねじり複合荷重を加えて前記試験片の耐疲労性を評価する疲労試験方法において、
前記試験片の両端を第1把持部材と第2把持部材からなる試験片把持部材により前記試験片の両端をそれぞれ把持する試験片把持ステップと、
前記試験片把持部材を支持部材により支持するとともに、前記試験片把持部材を可動部を有する駆動部材により支持する把持部材支持ステップと、
前記駆動部材により前記試験片に応力を加える応力負荷ステップと、
を含み、
前記試験片把持ステップは、前記第1把持部材および前記第2把持部材を構成する本体部と押圧部材とにより、前記本体部と前記押圧部材が前記試験片の端部を挟み込んで挟持し、
前記把持材支持ステップは、前記試験片に曲げ荷重の最大応力が印加される部位と異なる方向部位に最大組み付け応力が発生するように、前記支持部材及び前記駆動部材により前記把持部材を支持する疲労試験方法。
【請求項2】
前記試験片の反り量および前記疲労試験をおこなう装置に生じうる軸ずれによる組み付け応力分布を解析する解析ステップ、を含み、
前記把持部支持ステップは、前記解析ステップで見積もった組み付け応力に基づき、前記支持部材及び前記駆動部材により前記試験片把持部材の支持方向を決定する請求項1に記載の疲労試験方法。
【請求項3】
試験片に曲げ荷重、または曲げおよびねじり複合荷重を加えて前記試験片の耐疲労性を評価する疲労試験装置において、
第1把持部材と第2把持部材からなり、前記第1把持部材と前記第2把持部材により前記試験片の両端をそれぞれ把持する試験片把持部材と、
前記試験片把持部材を支持する支持部材と、
前記試験片把持部材を支持し、可動部により前記試験片に応力を加える駆動部材と、
を備え、
前記第1把持部材と第2把持部材は、それぞれ本体部と押圧部材とを有し、前記本体部と前記押圧部材が前記試験片の端部を挟み込み、
前記支持部材及び前記駆動部材は、前記試験片把持部材を、前記試験片に曲げ荷重の最大応力が印加される部位と異なる部位に最大組み付け応力が発生するよう支持する疲労試験装置。
【請求項4】
試験片に曲げ荷重、または曲げおよびねじり複合荷重を加えて前記試験片の耐疲労性を評価する疲労試験方法で使用する試験片把持部材において、
前記試験片把持部材は、前記試験片の両端をそれぞれ把持する第1把持部材と第2把持部材とからなり、
前記第1把持部材と前記第2把持部材は、試験片の端部を挟み込んで挟持する本体部と押圧部材とをそれぞれ有し、
前記第1把持部材の前記本体部は、試験片把持部材の端部を支持する支持部材または前記試験片に応力を加える駆動部材側に接続する第1端部と、前記第1端部から連接してなり、前記支持部材および前記駆動部材の軸方向に対して、異なる方向に延出する第2端部と、を有し、
前記第2把持部材の前記本体部は、前記支持部材または前記駆動部材側に接続する第1端部と、前記支持部材および前記駆動部材の軸方向に対して、異なる方向に延出する第2端部と、前記第1端部と前記第2端部とを連接する連接部とを有する試験片把持部材。
【請求項5】
前記本体部は、挟持面に前記試験片の垂直方向の位置決めを行う位置決め部を有する請求項4に記載の試験片把持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疲労試験方法、疲労試験装置および試験片把持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
試験片を用いた疲労試験を実施する際、試験精度の向上のためには、試験片に規定された荷重・モーメントを精確に負荷させることが重要である。従来、試験片に傾きや回転などの余計な力が加わることなく引張試験を行う試験機用治具として、試験片の一端部を固定する基体と、試験片の他端部を固定し、前記基体に対して一方向にスライドするスライド体とを備える治具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、曲げモーメント無しに試験片を締め付け固定できる締め付け装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-35689号公報
【特許文献2】特開平05-107164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図4は、曲げ荷重、または曲げおよびねじり複合荷重を加えて試験片の耐疲労性を評価する疲労試験で従来使用されている疲労試験装置100Aであり、図5は疲労試験装置100Aで使用される試験片把持部材である。図4の疲労試験装置100Aでは、図4(b)の試験片把持部材20Bを使用している。図5(b)の試験片把持部材20Bは、試験片1を疲労試験装置100Aの軸方向Sに対し25°の角度で把持し、図5(a)の試験片把持部材20Aは10°の角度、図5(c)の試験片把持部材20Cは40°の角度、図5(d)の試験片把持部材20Dは90°の角度となるように把持する。試験片把持部材20Dは曲げ荷重のみ、試験片把持部材20A~20Cが曲げおよびねじり複合荷重用の把持部材である。試験片把持部材20A~20Dは、試験片1の両端をそれぞれ把持する第1把持部材21および第2把持部材25からなり、第1把持部材21および第2把持部材25は、それぞれ本体部22および26と、押圧部材23および27とを有する(図4参照、図5では、本体部22および26のみ図示)。第1把持部材21および第2把持部材25は、本体部22および26と、押圧部材23および27とにより試験片1をそれぞれ挟持する(図4参照)。本体部22および26と押圧部材23および27は、ボルト28で固定されている。
【0005】
図4に示す疲労試験装置100Aでは、トルク計30Aとモータ40Aとにより試験片把持部材20Bを支持した状態で、モータ40Aで試験片把持部材20Bを支持する軸を回転(図中の矢印方向)させることで、試験片1に曲げおよびねじり複合荷重を加えている。図6は、従来の疲労試験装置100Aで発生する組み付けひずみを説明する図であり、(a)は試験片1の把持部付近の側面図、(b)は試験片1の長さ方向の中心(細径部)の断面図である。図4に示すような曲げ荷重、または曲げおよびねじり複合荷重を加えた疲労試験において、図6(b)に示すように試験片1の上部方向に最大応力が加わるが、本体部22、26と押圧部材23、27による試験片1の組付け方法(上下方向に挟持、挟持面が水平)では、試験片1の反りや試験装置の軸ずれがある場合に、試験片1に加わる組み付けひずみは、図6(b)に示すように最大応力部と重なって発生し、精度良い疲労試験を行うことが難しいという問題を有していた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、試験片に加わる組み付けひずみの発生部位を、曲げ荷重、または曲げおよびねじり複合荷重による最大応力部位とずらすことにより、精度よい疲労試験を行うことができる疲労試験方法、疲労試験装置および試験片把持部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る疲労試験方法は、試験片に曲げ荷重、または曲げおよびねじり複合荷重を加えて前記試験片の耐疲労性を評価する疲労試験方法において、前記試験片の両端を第1把持部材と第2把持部材からなる試験片把持部材により前記試験片の両端をそれぞれ把持する試験片把持ステップと、前記試験片把持部材を支持部材により支持するとともに、前記試験片把持部材を可動部を有する駆動部材により支持する把持部材支持ステップと、前記駆動部材により前記試験片に応力を加える応力負荷ステップと、を含み、前記試験片把持ステップは、前記第1把持部材および前記第2把持部材を構成する本体部と押圧部材とにより、前記本体部と前記押圧部材が前記試験片の端部を挟み込んで挟持し、前記把持部材支持ステップは、前記試験片に最大応力が印加される部位と異なる部位に最大組み付け応力が発生するように、前記支持部材及び前記駆動部材により前記試験片把持部材を支持する。
【0008】
また、本発明に係る疲労試験方法は、上記発明において、前記試験片の反り量および前記疲労試験をおこなう装置に生じうる軸ずれによる組み付け応力分布を解析する解析ステップ、を含み、前記把持部材支持ステップは、前記解析ステップで見積もった組み付け応力に基づき、前記支持部材及び前記駆動部材による前記把持部材の支持方向を決定する。
【0009】
また、本発明に係る疲労試験装置は、試験片に曲げ荷重、または曲げおよびねじり複合荷重を加えて前記試験片の耐疲労性を評価する疲労試験装置において、第1把持部材と第2把持部材からなり、前記第1把持部材および前記第2把持部材により前記試験片の両端をそれぞれ把持する試験片把持部材と、前記試験片把持部材を支持する支持部材と、前記試験片把持部材を支持し、可動部により前記試験片に応力を加える駆動部材と、を備え、前記第1把持部材および前記第2把持部材は、それぞれ本体部と押圧部材とを有し、前記本体部と前記押圧部材が前記試験片の端部を挟み込み、前記支持部材及び前記駆動部材は、前記試験片把持部材を、前記試験片に曲げ荷重の最大応力が印加される部位と異なる部位に最大組み付け応力が発生するように支持する。
【0010】
また、本発明に係る試験片把持部材は、試験片に曲げ荷重、または曲げおよびねじり複合荷重を加えて前記試験片の耐疲労性を評価する疲労試験方法で使用する試験片把持部材において、前記試験片把持部材は、前記試験片の両端をそれぞれ把持する第1把持部材と第2把持部材とからなり、前記第1把持部材と前記第2把持部材は、試験片の端部を平行に挟み込んで挟持する本体部と押圧部材とをそれぞれ有し、前記第1把持部材の前記本体部は、試験片把持部材の端部を支持する支持部材または前記試験片に応力を加える駆動部材に接続する側の第1端部と、前記第1端部から連接してなり、前記支持部材および前記駆動部材の軸方向に対して、異なる方向に延出する第2端部と、を有し、前記第2把持部材の前記本体部は、前記支持部材または前記駆動部材に接続する側の第1端部と、前記支持部材および前記駆動部材の軸方向に対して、異なる方向に延出する第2端部と、前記第1端部と前記第2端部とを連接する連接部とを有する。
【0011】
また、本発明に係る試験片把持部材は、上記発明において、前記本体部は、挟持面に前記試験片の垂直方向の位置決めを行う位置決め部を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、試験片に加わる組み付けひずみの最大応力発生部位を試験により加える曲げ応力の最大応力発生部位とずらすことにより、精度よく疲労試験を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る疲労試験装置の斜視図である。
図2A図2Aは、図1に示す疲労試験装置の上面図である。
図2B図2Bは、図1に示す疲労試験装置の側面図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係る試験片把持部材の上面図である。
図4図4は、従来の疲労試験装置の斜視図である。
図5図5は、図4の疲労試験装置で使用する試験片把持部材の上面図である。
図6図6は、従来の疲労試験装置で発生する組み付けひずみを説明する図である。
図7図7は、本発明の実施の形態に係る疲労試験装置で発生する組み付けひずみを説明する図である。
図8図8は、本発明の実施の形態の変形例に係る試験片把持部材を説明する断面図である。
図9図9は、本発明の実施の形態に係る疲労試験方法における試験片の反りによる応力解析を説明する図である。
図10図10は、応力解析による試験片の円周方向に生じる最大主応力および最小主応力を説明する図である。
図11図11は、疲労試験装置による試験片把持部材の支持方向を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)を説明する。なお、図面は模式的なものであって、各部分の厚みと幅との関係、それぞれの部分の厚みの比率などは現実のものとは異なる場合があり、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれる場合がある。
【0015】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る疲労試験装置100の斜視図であり、図2Aは、疲労試験装置100の上面図、図2Bは、疲労試験装置100の側面図である。また、図3は疲労試験装置100で使用される試験片把持部材10A~10D(10)の上面図である。疲労試験装置100は、試験片1を把持する試験片把持部材10と、試験片把持部材10を支持する支持部材30と、試験片把持部材10を支持し、試験片1に応力を加える駆動部材としてのアクチュエータ40と、を備える。図1では、試験片1として、両端部がDカットのダンベル型試験片を使用しているが、両端部はカットされないものであってもよい。図1の疲労試験装置100では、図3(b)の試験片把持部材10Bを使用している。図3(b)の試験片把持部材10Bは、試験片1を疲労試験装置100の軸方向Sに対し25°の角度で把持し、図3(a)の試験片把持部材10Aは10°の角度、図3(c)の試験片把持部材10Cは40°の角度、図3(d)の試験片把持部材10Dは90°の角度となるように把持する。また、本実施の形態では、アクチュエータ40により試験片1の端部を直接支持しているが、他の部材を介して間接的に試験片1を支持および応力を加える構成であってもよい。
【0016】
試験片把持部材10は、第1把持部材11および第2把持部材15からなる。第1把持部材11および第2把持部材15により試験片1の両端をそれぞれ把持する。第1把持部材11は、本体部12と、押圧部材13および押圧部材14と、を有する。
【0017】
第1把持部材11は、本体部12と押圧部材13で試験片1の端部を挟み込んで試験片1を挟持する。また、本体部12と押圧部材14で回転軸2の端部を挟み込んで挟持する。本体部12は、第1把持部材11を支持するアクチュエータ40に接続する側の第1端部12aと、第1端部12aから連接してなり、支持部材30およびアクチュエータ40の軸の方向に対して、異なる方向に延出する第2端部12bと、を有する。第1端部12aが押圧部材14とともに回転軸2を把持し、第2端部12bが押圧部材13とともに試験片1を挟持する。本体部12と押圧部材13との固定、および本体部12と押圧部材14との固定は、ボルト19等により行われるが、固定はボルトに限定されるものではない。
【0018】
第2把持部材15は、本体部16と、押圧部材17および押圧部材18と、を有する。本体部16と押圧部材17で試験片1の他端を挟み込んで試験片1を挟持する。また、本体部16と押圧部材18の挟持面で支持軸3の端部を挟み込んで挟持する。本体部16は、第2把持部材15の端部を支持する支持部材30に接続する側の第1端部16aと、支持部材30およびアクチュエータ40の軸の方向に対して、異なる方向に延出する第2端部16bと、前記第1端部と前記第2端部とを連接する連接部を有する。第1端部16Aが第3把持部18とともに把持棒3を把持し、第2端部16Bが第2把持部17とともに試験片1の他端を挟持する。第1把持部16と第2把持部17との固定、および第1把持部16と第3把持部18との固定は、ボルト19等により行われるが、固定はボルトに限定されるものではない。なお、支持部材30およびアクチュエータ40の軸の方向とは、回転軸2および支持軸3の軸方向のことを意味する。また、上記では、第1把持部材11をアクチュエータ40、第2把持部材15を支持部材30に接続しているが、第1支持部材11を支持部材30、第2支持部材15をアクチュエータ40に接続してもよい。
【0019】
第1把持部材11の第2端部12bおよび第2把持部材15の第2端部16bの延出方向は、試験片1に加える曲げ荷重量に応じて適宜決定される。試験片に曲げ荷重のみを加えて疲労試験を行う場合は、回転軸2および支持軸3の軸方向と直交する方向に延出し、曲げおよびねじり複合荷重を加えて疲労試験を行う場合は、回転軸2および支持軸3の軸方向となす角度が小さいほど曲げ荷重の負荷が小さく、ねじり荷重が大きくなる。
【0020】
支持部材30は、支持軸3を把持することにより試験片把持部材10により挟持された試験片1を固定できるものであればよいが、本実施の形態ではトルク計を使用する。
【0021】
アクチュエータ40は、回転軸2を把持することにより試験片把持部材10を支持し、モータ等の可動部により回転軸2を揺動させて、試験片1に曲げ、または曲げおよびねじり荷重を加える。
【0022】
支持部材30及びアクチュエータ40は、試験片把持部材10を、試験片1に曲げ荷重、または曲げ及びねじり荷重による最大荷重が印加される部位と異なる部位に組み付け応力が発生するように支持する。図1に示す疲労試験装置100では、回転軸2の揺動により、試験片1の上部に最大応力が発生するため、試験片把持部材10での試験片1の把持による組み付け応力が試験片1の側方に発生するよう支持部材30及びアクチュエータ40により試験片把持部材10を支持する。
【0023】
図7は、本発明の実施の形態に係る疲労試験装置100で発生する組み付けひずみを説明する図であり、(a)は試験片1の把持部付近の側面図、(b)は試験片1の長さ方向の中心(細径部)の断面図である。図1に示す疲労試験装置100を使用し、曲げ荷重、または曲げおよびねじり複合荷重を加えると、図7(b)に示すように試験片1の上部方向に最大応力が加わる。一方、本発明の実施の形態に係る組み付け方法では、本体部12と押圧部材13、本体部16と押圧部材17により試験片1を鉛直方向に平行に挟持(挟持面が鉛直)するため、試験片1の反りや試験装置の軸ずれがある場合に、試験片1に加わる組み付けひずみは、図7(b)に示すように最大応力部と重ならずに試験片1の側方に発生するため、組み付けひずみによる影響を受けることなく、精度良い疲労試験を行うことが可能となる。
【0024】
また、試験片把持部材10は、試験片1の位置決め部材を有するものが好ましい。図8は、本発明の実施の形態の変形例に係る試験片把持部材10E~10Iを説明する断面図である。図8に示すように、第1把持部材11の本体部12は、挟持面に試験片1の垂直方向の位置決めを行う位置決め部12cを有する。位置決め部12cの形状は、V字状の溝(試験片把持部材10E)、円弧状(試験片把持部材10F)、コの字状(試験片把持部材10G)、底面が円弧状のコの字状(試験片把持部材10H)、底面がV字のコの字状(試験片把持部材10I)等が例示される。コの字内に試験片1を配置して位置決めする位置決め部12c(試験片把持部材10G~10I)は、底面部のみ試験片に接し、上面部を試験片と接しない構造として位置決めすることが好ましい。コの字部の上面でも試験片1と接する構造とすると、組み付け応力が試験片の上部にも発生するためである。位置決め部12cは、第2把持部材15の本体部16にも同様の構造のものを設けることが好ましい。
【0025】
支持部材30及びアクチュエータ40による試験片把持部材10を支持する方向は、試験片1に曲げ荷重等による最大荷重が加わる部位(上部)と、異なる方向に組み付け応力が加わるように支持すればよい。組み付け応力による影響を最も小さくするためには、試験片1の側方に組み付け応力が発生するように把持、すなわち、試験片把持部材10の本体部12と押圧部材13、および本体部16と押圧部材17の試験片1の挟持面が鉛直となるよう支持部材30及びアクチュエータ40で試験片把持部材10を支持することが好ましい。
【0026】
なお、支持部材30及びアクチュエータ40による試験片把持部材10の支持は、試験片把持部材10の挟持面が鉛直であることが好ましいが、疲労試験によっては多少の組付け応力を許容できる場合がある。このような場合には、試験片1の反り量および疲労試験装置に生じうる軸ずれによる応力分布を解析し、支持方向を決定してもよい。図9は、本発明の実施の形態に係る疲労試験方法における試験片の反りによる応力解析を説明する図である。
【0027】
例えば、図9に示すような0.4°反りがあるような試験片1を、試験片把持部材で試験片1の反りを矯正するように把持した場合、試験片に組み付けひずみによる応力が発生する。図9では、試験片1の上部が最大主応力が最大となる箇所であり、上部からの角度θに応じて最大主応力が減じる。また、試験装置に軸ずれがある場合にも、当該試験装置で試験片を把持することにより試験片にひずみが生じる。試験片の反りおよび試験装置の軸ずれにより生じ得る組み付け応力分布を解析し、許容し得る応力に基づき、支持部材及びアクチュエータによる試験片把持部材の支持方向を決定してもよい。
【0028】
図10は、図9に示す試験片に反りがある場合の試験片に加わる組み付け応力について、試験片の円周方向に沿って解析したデータをグラフ化したものであり、最大主応力および最小主応力と試験片の上部からの角度との関係を示している。例えば、±50MPaまでの組み付けひずみを許容できる場合、曲げ荷重の最大主応力が最大となる部位と試験片中心を結ぶ方向と、挟持面と直交する方向との角度は、83°~125°の範囲であればよいことがわかる。このような場合、図11に示すように、試験片把持部材10の本体部12と押圧部材13、および本体部16と押圧部材17の試験片1の挟持面と直交する方向と、曲げ荷重最大主応力が発生する部位と試験片中心を結ぶ方向との角度が83°~125°の角度となるように、支持部材30及びアクチュエータ40は試験片把持部材10を把持することができる。
【0029】
本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【0030】
以上説明したように、本発明に係る疲労試験方法は、試験片の措置や装置の軸ずれによる組み付けひずみにより生じる応力発生部位を、曲げ荷重等の最大応力発生部位とずらすことが可能であり、精度よく試験を行うことができる。
【符号の説明】
【0031】
1 試験片
2 回転軸
3 支持軸
10、10A、10B、10C、10D、10E、20、20A、20B、20C、20D 試験片把持部材
11、21 第1把持部材
12、16、22、26 本体部
12a、16a 第1端部
12b、16b 第2端部
12c 位置決め部
13、14、17、18、23、27 押圧部材
15、25 第2把持部材
16c 連接部
19、28 ボルト
30 支持部材
40 アクチュエータ
100、100A 疲労試験装置
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11