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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024116769
(43)【公開日】2024-08-28
(54)【発明の名称】弾性クローラ
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/253 20060101AFI20240821BHJP
【FI】
B62D55/253 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022569
(22)【出願日】2023-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石嵜 友己
(57)【要約】
【課題】耐久性に優れた弾性クローラの提供。
【解決手段】弾性クローラは、メインベルトを有している。このメインベルトは、無端形状であって、弾性を有する。このメインベルトはさらに、かつ内周面及び外周面を有する。この内周面は、転輪走行ゾーン34を含んでいる。この転輪走行ゾーン34は、ベース面48と、複数の突起50とを有している。このベース面48は、メインベルトの幅方向Xに対して傾斜していない。それぞれの突起50は、ベース面48から起立している。この突起50は、上底面52と、側面54とを有している。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転輪を有する走行装置の弾性クローラであって、
無端形状であって、弾性を有し、かつ内周面及び外周面を有するメインベルトを備えており、
上記内周面が、上記転輪が通過するゾーンを含んでおり、
上記ゾーンが、ベース面と、このベース面から起立する複数の突起とを有する、弾性クローラ。
【請求項2】
上記ベース面が、上記メインベルトの幅方向に対して実質的な傾斜を有さない、請求項1に記載の弾性クローラ。
【請求項3】
上記メインベルトに埋設された芯金をさらに備えており、
上記転輪が通過するゾーンのうち、上記芯金と周方向位置が一致するゾーンに、上記突起が存在する、請求項1又は2に記載の弾性クローラ。
【請求項4】
上記突起の平均高さAHが1.0mm以上4.0mm以下である、請求項1又は2に記載の弾性クローラ。
【請求項5】
上記突起の平均断面積AAが0.8mm以上13.0mm以下である、請求項1又は2に記載の弾性クローラ。
【請求項6】
上記突起の平均間隔AIが1.0mm以上4.0mm以下である、請求項1又は2に記載の弾性クローラ。
【請求項7】
上記突起が左右対称に並ぶ、請求項1又は2に記載の弾性クローラ。
【請求項8】
上記突起が存在するゾーンの幅の、上記転輪が通過するゾーンの幅に対する比率PPが、50%以上である、請求項1又は2に記載の弾性クローラ。
【請求項9】
それぞれの突起が側面を有しており、この側面の上記ベース面に対する角度θが70°以上90°以下である、請求項1又は2に記載の弾性クローラ。
【請求項10】
それぞれの突起のA硬度が、50以上90以下である、請求項1又は2に記載の弾性クローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、弾性クローラを開示する。詳細には、本明細書は、転輪を有する走行装置の、弾性クローラに関する。
【背景技術】
【0002】
走行装置の弾性クローラは、ゴム等からなり無端形状を有するメインベルトを有している。このメインベルトの内周面は、転輪走行ゾーンを含んでいる。走行装置の運転中、 転輪走行ゾーンは、転輪と接触する。転輪走行ゾーンと転輪との間に、土砂が侵入しうる。この土砂は、転輪によって転輪走行ゾーンに押し付けられる。この土砂は、転輪走行ゾーンを傷つける。
【0003】
特開2006-111113公報には、転輪走行ゾーンが肉盛部を有する弾性クローラが開示されている。この肉盛部は、ピークと、このピークから延びる斜面とを有している。転輪走行ゾーンに侵入した土砂は、この斜面に沿って移動する。従って土砂は、転輪走行ゾーンと転輪とに挟まれにくい。この弾性クローラでは、転輪走行ゾーンの損傷が抑制されうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-111113公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開2006-111113公報に開示された弾性クローラでも、ピークと転輪との間には、土砂が挟まれうる。ピークには、大きな圧力がかかる。従って、この弾性クローラでは、ピークの近傍において転輪走行ゾーンが損傷しやすい。
【0006】
本出願人の意図するところは、耐久性に優れた弾性クローラの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、転輪を有する走行装置の、弾性クローラを開示する。この弾性クローラは、無端形状であって、弾性を有し、かつ内周面及び外周面を有するメインベルトを有する。この内周面は、転輪が通過するゾーンを含む。このゾーンは、ベース面と、このベース面から起立する複数の突起とを有する。
【発明の効果】
【0008】
この弾性クローラでは、転輪からの圧力を、主として突起が受ける。このクローラでは、ベース面に加わる圧力は、小さい。従って、転輪走行ゾーンと転輪との間に土砂が侵入しても、ベース面は損傷しにくい。このクローラは、耐久性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係る弾性クローラを含む走行装置が示された概略図である。
図2図2は、図1の弾性クローラの一部が示された拡大平面図である。
図3図3は、図2のIII-III線に沿った断面図である。
図4図4は、図2の弾性クローラの転輪走行ゾーンの一部が示された拡大図である。
図5図5は、図4の転輪走行ゾーンの一部が示された拡大斜視図である。
図6図6は、図4のVI-VI線に沿った拡大断面図である。
図7図7は、図4のVII-VII線に沿った拡大断面図である。
図8図8は、図7のVIII-VIII線に沿った断面図である。
図9図9は、図4の転輪走行ゾーンの一部が示された拡大図である。
図10図10は、他の実施形態に係る弾性クローラの一部が示された平面図である。
図11図11は、図10の弾性クローラの転輪走行ゾーンの一部が示された拡大図である。
図12図12は、図11のXII-XII線に沿った断面図である。
図13図13は、さらに他の実施形態に係る弾性クローラの一部が示された平面図である。
図14図14は、図13のXIV-XIV線に沿った拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態が詳細に説明される。
【0011】
図1に、走行装置2が示されている。この走行装置2は、駆動輪4、従動輪6、複数の転輪8及び弾性クローラ10を有している。本実施形態では、駆動輪4は、スプロケット12である。この走行装置2は、図示されない駆動手段(エンジン等)を有している。この駆動手段により、スプロケット12が回転させられる。クローラ10は、スプロケット12と従動輪6との間に巻き掛けられている。スプロケット12の回転により、クローラ10が回転する。クローラ10が回転するとき、転輪8はクローラ10を案内する。この案内により、クローラ10の蛇行が阻止される。クローラ10の回転により、装置2が走行する。典型的な走行装置2として、土木機器、建設機器及び農業用機器が挙げられる。走行装置2が、複数の従動輪6を有してもよい。走行装置2が、従動輪6と他の従動輪6との間に位置する転輪8を有してもよい。
【0012】
図2及び3に、弾性クローラ10が示されている。これらの図面において、矢印Xは左右方向を表し、矢印Yは前後方向を表し、矢印Zは厚み方向を表す。左右方向Xは、駆動輪4の軸方向でもある。前後方向は、クローラ10の周方向でもある。図1-3に示されるように、このクローラ10は、メインベルト14、複数のラグ16、複数の芯金18、複数の転輪ガイド20及び一対の抗張体22を有している。
【0013】
メインベルト14は、無端形状を有する。このメインベルト14は、内周面24及び外周面26を有している。メインベルト14はさらに、一対の外縁28を有している。図2において矢印Wmは、メインベルト14の幅を表す。幅Wmは、左側の外縁28から右側の外縁28までの距離である。メインベルト14の幅Wmは、クローラ10の幅でもある。一般的な弾性クローラ10の幅Wmは、100mm以上600mm以下である。
【0014】
メインベルト14は、複数の係合孔30を有している。それぞれの係合孔30は、内周面24から外周面26にまで至っている。クローラ10が走行するとき、この係合孔30にスプロケット12の爪32(図1を参照)が入り込む。この爪32により、スプロケット12から芯金18を介してメインベルト14へと、駆動力が伝達される。メインベルト14が、係合孔30に代えて係合凹み有してもよい。係合凹みを有するメインベルト14では、爪32がこの係合凹みを押圧する。クローラ10が、係合孔30に代えて係合突出を有してもよい。係合突出を有するクローラ10では、爪32がこの係合突出を押圧する。
【0015】
図2に示されるように、内周面24は、一対の転輪走行ゾーン34と、一対のサイドゾーン36とを有している。それぞれの転輪走行ゾーン34は、左右方向において、転輪ガイド20の外側に位置している。この転輪走行ゾーン34は、前後方向に延在している。それぞれのサイドゾーン36は、左右方向において、転輪走行ゾーン34の外側に位置している。このサイドゾーン36は、前後方向に延在している。図3に示されるように、走行装置2が進行するとき、転輪8の外周面26が転輪走行ゾーン34と当接する。
【0016】
メインベルト14は、弾性材料から形成されている。ゴム、合成樹脂、エラストマー等が、メインベルト14に用いられうる。メインベルト14の典型的な材質は、架橋されたゴム組成物である。
【0017】
図1に示されるように、複数のラグ16が、周方向に沿って並んでいる。実施形態では、これらのラグ16は、等ピッチで並んでいる。図1及び3に示されるように、それぞれのラグ16は、メインベルト14の外周面26から突出している。このラグ16の材質は、メインベルト14の材質とは異なっている。ラグ16の材質が、メインベルト14の材質と同じであってもよい。ラグ16の典型的な材質は、架橋されたゴム組成物である。
【0018】
図2に示されるように、複数の芯金18が、前後方向に沿って並んでいる。本実施形態では、これらの芯金18は、等ピッチで並んでいる。それぞれの芯金18は、幅方向中心に位置している。芯金18は、概してメインベルト14に埋設されている。芯金18の一部は、メインベルト14から露出している。芯金18の一部がメインベルト14から露出する場合も含め、本明細書では、「埋設」と称される。芯金18は、硬質である。芯金18の典型的な材質は、スチール、ステンレススチール等の金属である。
【0019】
図3に示されるように、この芯金18は、センター38、一対のホーン40(horn)及び一対のウイング42を有している。それぞれのホーン40は、センター38から厚み方向内向き(図3の上向き)に突出している。それぞれのウイング42は、センター38から左右方向外向きに突出している。芯金18を含まない弾性クローラを、装置2が有してもよい。
【0020】
図1及び2に示されるように、複数の転輪ガイド20が、前後方向に沿って並んでいる。これらの転輪ガイド20は、等ピッチで並んでいる。それぞれの転輪ガイド20は、左右方向中心に位置している。図3に示されるように、この転輪ガイド20は、メインベルト14の内周面24から突出している。この転輪ガイド20は、一対のガイド突起44を有している。図3に示されるように、それぞれのガイド突起44は、芯金18のホーン40を含んでいる。換言すれば、ホーン40は、芯金18の一部であり、かつガイド突起44の一部でもある。このガイド突起44はさらに、メインベルト14の一部を含んでいる。転輪ガイド20が、メインベルト14を含まないガイド突起44を有してもよい。換言すれば、ガイド突起44において、ホーン40が完全に露出してもよい。
【0021】
抗張体22は、メインベルト14に埋設されている。抗張体22は、厚み方向において芯金18の外側(図3の下側)に位置している。この抗張体22は、複数のコード46を有している。これらのコード46は、左右方向に並列している。それぞれのコード46は、前後方向に延在している。このコード46は、メインベルト14の過剰な伸張を抑制しうる。コード46の典型的な材質は、スチール、ステンレススチール等の金属である。コード46が、有機繊維から形成されてもよい。抗張体22を含まない弾性クローラを、装置2が有してもよい。
【0022】
図4-7に、転輪走行ゾーン34が示されている。この転輪走行ゾーン34は、ベース面48と、複数の突起50とを有している。それぞれの突起50は、ベース面48から起立している。本実施形態では、突起50は、円錐台形状を有している。この突起50は、上底面52と側面54とを有している。本実施形態では、突起50は、ベース面48と一体である。換言すれば、突起50は、メインベルト14の一部である。従って突起50は、弾性を有する。図2から明らかなように、本実施形態では、転輪走行ゾーン34の全体に渡って突起50が存在している。
【0023】
弾性クローラ10が走行するとき、転輪走行ゾーン34は転輪8と接触する(図3参照)。詳細には、転輪8は、上底面52と接触する。転輪8は、突起50を押圧する。転輪8からの圧力は、主として突起50が受ける。圧力によって突起50は、圧縮変形を起こす。このクローラ10では、ベース面48に係る圧力は、小さい。従って、転輪走行ゾーン34と転輪8との間に土砂が侵入しても、ベース面48は損傷しにくい。
【0024】
図4において矢印Wzは、転輪走行ゾーン34の幅を表す。幅Wzは、左右方向Xに沿って測定される。図4において符号CLは、転輪走行ゾーン34の中心線を表す。図4から明らかなように、突起50は、中心線CLに対して左右対称に並んでいる。この転輪走行ゾーン34では、転輪8からの圧力が偏らない。
【0025】
本実施形態では、突起50が列を形成している。図4に、第一列R1、第二列R2、第三列R3、第四列R4、第五列R5、第六列R6、第七列R7及び第八列R8が示されている。それぞれの列において、7個の突起50が、左右方向Xに沿って並んでいる。列と他の列との間に、突起50は存在していない。この転輪走行ゾーン34では、土砂が左右に排出されやすい。
【0026】
図7に示されるように、ベース面48は、概して左右方向Xに沿って延在している。換言すれば、ベース面48は、メインベルト14の幅方向に対して実質的な傾斜を有さない。従って、突起50の上底面52を結ぶ線も、メインベルト14の幅方向に対して実質的な傾斜を有さない。この転輪走行ゾーン34を有する弾性クローラ10からは、転輪8は、脱輪しにくい。
【0027】
図6において矢印Hiは、突起50の高さを表す。高さHiは、ベース面48から上底面52までの、厚み方向Zの距離である。全ての突起50の高さHiの算術平均は、平均高さAHである。平均高さAHは、1.0mm以上4.0mm以下が好ましい。平均高さAHが1.0mm以上である転輪走行ゾーン34では、突起50が転輪8をベース面48から離間させうる。この観点から、平均高さAHは1.5mm以上がより好ましく、2.0mm以上が特に好ましい。平均高さAHが4.0mm以下である転輪走行ゾーン34では、転輪8に押されたときに突起50が座屈しにくい。この観点から、平均高さAHは3.5mm以下がより好ましく、3.0mm以下が特に好ましい。それぞれの突起50の高さHiが、1.0mm以上4.0mm以下であることが、好ましい。
【0028】
図6において符号θは、ベース面48に対する側面54の角度である。角度θは、70°以上が好ましい。角度θが70°以上である突起50は、転輪8に押されたときに座屈しにくい。この観点から、角度θは73°以上がより好ましく、75°以上が特に好ましい。弾性クローラ10の成形の容易の観点から、角度θは90°以下が好ましい。
【0029】
図8は、図7のVIII-VIII線に沿った断面図である。図7に示されるように、この断面までのベース面48からの高さは、突起50の高さHiの1/2である。図8において矢印Diは、この断面の直径を表す。この断面は円形状を有するので、この断面の面積Arは、下記の数式によって算出されうる。
Ar = (Di / 2)* π
【0030】
全ての突起50の断面積Arの算術平均は、平均断面積AAである。平均断面積AAは、0.8mm以上13.0mm以下が好ましい。平均断面積AAが0.8mm以上である転輪走行ゾーン34では、転輪8に押されたときに突起50が座屈しにくい。この観点から、平均断面積AAは2.0mm以上がより好ましく、3.0mm以上が特に好ましい。平均断面積AAが13.0mm以下である転輪走行ゾーン34では、土砂が排出されやすい。この観点から、平均断面積AAは10.0mm以下がより好ましく、8.0mm以下が特に好ましい。それぞれの突起50の断面積Arが、0.8mm以上13.0mm以下であることが、好ましい。
【0031】
本明細書では、下記の数式に基づいて面積率PAが算出される。
PA = (TA / BA) * 100
この数式において、TAは全ての突起50の断面積Arの合計を表し、BAはベース面48の仮想面積を表す。この仮想面積は、突起50が全く存在しないと仮定されたときのベース面48の面積である。
【0032】
面積率PAは、10%以上50%以下が好ましい。面積率PAが10%以上である転輪走行ゾーン34では、転輪8に押されたときに突起50が座屈しにくい。この観点から、面積率PAは13%以上がより好ましく、15%以上が特に好ましい。面積率PAが50%以下である転輪走行ゾーン34では、土砂が排出されやすい。この観点から、面積率PAは40%以下がより好ましく、35%以下が特に好ましい。
【0033】
図9には、図4の転輪走行ゾーン34の一部がさらに拡大されて示されている。図9には、3つの突起50が示されている。詳細には、第一突起501、第二突起502及び第三突起503の上底面52が、図9に示されている。図9において符号I2は、第二突起502の上底面52の、第一突起501の上底面52との間隔を表わす。符号I3は、第三突起503の上底面52の、第一突起501の上底面52との間隔を表す。間隔I2は、間隔I3よりも小さい。換言すれば、第三突起503よりも第二突起502の方が、第一突起501に近い。第一突起501の周囲には、他の突起50も存在する。第一突起501を除く全ての突起50の中で、第一突起501に最も近い突起50は、第一突起501にとっての最近接突起である。この最近接突起と第一突起501との間隔は、第一突起501にとっての最小間隔Imである。第一突起501にとっての最近接突起が複数存在する場合は、1つの最近接突起と第一突起501との間隔が、第一突起501にとっての最小間隔Imである。
【0034】
全ての突起50の最小間隔Imの算術平均は、平均間隔AIである。平均間隔AIは、1.0mm以上4.0mm以下が好ましい。平均間隔AIが1.0mm以上である転輪走行ゾーン34は、土砂の排出性に優れる。この観点から、平均間隔AIは1.5mm以上がより好ましく、2.0mm以上が特に好ましい。平均間隔AIが4.0mm以下である転輪走行ゾーン34では、転輪8からの荷重が分散しうる。この観点から、平均間隔AIは3.5mm以下がより好ましく、3.0mm以下が特に好ましい。それぞれの突起50の最小間隔Imが、1.0mm以上4.0mm以下であることが、好ましい。
【0035】
突起50の硬度は、50以上90以下が好ましい。硬度が50以上である突起50は、転輪8に押されたときに座屈しにくい。この観点から、硬度は60以上がより好ましく、65以上が特に好ましい。硬度が90以下である突起50は、転輪8に押されたときに十分に変形しうる。この観点から、硬度は80以下がより好ましく、75以下が特に好ましい。硬度は、タイプAのデュロメータによって測定される。測定時の温度は、23℃である。
【0036】
転輪走行ゾーン34は、種々の形状の突起を有しうる。好ましい形状として、角錐台、円柱及び角柱が例示される。転輪走行ゾーン34が、互いに形状の異なる複数種の突起を有してもよい。
【0037】
図10-12に、他の実施形態に係る弾性クローラ56が示されている。このクローラ56は、メインベルト58を有している。このメインベルト58は、内周面60を有している。この内周面60は、一対の転輪走行ゾーン62を有している。それぞれの転輪走行ゾーン62は、ベース面64と、複数の突起66とを有している。図11に示された転輪走行ゾーン62の突起66の数は、図4に示された転輪走行ゾーン34の突起50の数よりも少ない。突起66は、左右方向の中央に、偏って存在している。このクローラ56の、突起66の数以外の構造は、図1-9に示された弾性クローラ10のそれと、同じである。
【0038】
図11及び12に示されるように、この転輪走行ゾーン62は、凹凸ゾーン68と一対の平坦ゾーン70とに区分されうる。突起66は、凹凸ゾーン68に存在している。この凹凸ゾーン68では、突起66が凹凸を形成している。この凹凸ゾーン68は、前後方向Yに沿って延在している。それぞれの平坦ゾーン70は、凹凸ゾーン68の左又は右に存在している。この平坦ゾーン70は、前後方向Yに沿って延在している。平坦ゾーン70には、突起66は存在していない。転輪走行ゾーン62が、1つの凹凸ゾーン68と1つの平坦ゾーン70とに区分されてもよい。
【0039】
図11及び12において矢印Wpは、凹凸ゾーン68の幅を表す。幅Wpは、最も左に位置する突起66aの左端と、最も右に位置する突起66bの右端との、左右方向Xに沿った距離である。凹凸ゾーン68の幅Wpの、転輪走行ゾーン62の幅Wzに対する比率PPは、50%以上が好ましい。この比率PPが50%以上である転輪走行ゾーン62では、転輪8(図3参照)からの圧力が偏らない。この観点から、比率PPは60%以上がより好ましく、70%以上が特に好ましい。比率PPが100%であってもよい。クローラ56の軽量の観点から、この比率PPは80%以下が好ましい。
【0040】
図13及び14に、さらに他の実施形態に係る弾性クローラ72が示されている。このクローラ72は、メインベルト74、複数のラグ76及び複数の芯金78を有している。メインベルト74は、内周面80及び外周面82を有している。それぞれのラグ76は、この外周面82から突出している。それぞれの芯金78は、メインベルト74に埋設されている。
【0041】
図13に示されるように、メインベルト74の内周面80は、一対の転輪走行ゾーン84を有している。図14に示されるように、それぞれの転輪走行ゾーン84は、ベース面86と、複数の突起88とを有している。それぞれの突起88は、厚み方向Zにおいて、芯金78の内側(図14における上側)に存在している。換言すれば、突起88は、転輪走行ゾーン84のうち、芯金78と周方向位置が一致するゾーンに、存在している。転輪走行ゾーン84のうち、芯金78と周方向位置が一致しないゾーンには、突起88は存在していない。このクローラ72の、突起88の位置以外の構造は、図1-9に示された弾性クローラ10のそれと、同じである。
【0042】
芯金78は、硬質である。弾性クローラ72の走行のとき、メインベルト74のうち、芯金78と転輪8(図3参照)とに挟まれた部分に、大きな圧力がかかる。この圧力を突起88が受けるので、ベース面86の損傷が抑制される。芯金78と周方向位置が一致しないゾーンに突起88が存在ないので、このクローラ72は軽量である。
【0043】
芯金78と周方向位置が一致しないゾーンに、小数の突起88が存在してもよい。この場合、芯金78と周方向位置が一致しないゾーンにおける突起88の面積率PA1と、芯金78と周方向位置が一致するゾーンにおける突起88の面積率PA2との比(PA1/PA2)は、0.5以下が好ましく、0.3以下がより好ましく、0.2以下が特に好ましい。理想的な比(PA1/PA2)は、ゼロである。面積率PA1及びPA2の算出方法は、前述された面積率PAの算出方法と同じである。
【0044】
転輪走行ゾーン84のうち芯金78と周方向位置が一致するゾーンが、図11及び12に示された転輪走行ゾーン62と同様の、凹凸ゾーン及び平坦ゾーンを有してもよい。突起88は、凹凸ゾーンにのみ存在する。凹凸ゾーンの幅の、転輪走行ゾーン84の幅に対する比率PPは、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上が特に好ましい。
【0045】
[開示項目]
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態の開示である。
【0046】
[項目1]
転輪を有する走行装置の弾性クローラであって、
無端形状であって、弾性を有し、かつ内周面及び外周面を有するメインベルトを備えており、
上記内周面が、上記転輪が通過するゾーンを含んでおり、
上記ゾーンが、ベース面と、このベース面から起立する複数の突起とを有する、弾性クローラ。
【0047】
[項目2]
上記ベース面が、上記メインベルトの幅方向に対して実質的な傾斜を有さない、項目1に記載の弾性クローラ。
【0048】
[項目3]
上記メインベルトに埋設された芯金をさらに備えており、
上記転輪が通過するゾーンのうち、上記芯金と周方向位置が一致するゾーンに、上記突起が存在する、項目1又は2に記載の弾性クローラ。
【0049】
[項目4]
上記突起の平均高さAHが1.0mm以上4.0mm以下である、項目1から3のいずれかに記載の弾性クローラ。
【0050】
[項目5]
上記突起の平均断面積AAが0.8mm以上13.0mm以下である、項目1から4のいずれかに記載の弾性クローラ。
【0051】
[項目6]
上記突起の平均間隔AIが1.0mm以上4.0mm以下である、項目1から5のいずれかに記載の弾性クローラ。
【0052】
[項目7]
上記突起が左右対称に並ぶ、項目1から6のいずれかに記載の弾性クローラ。
【0053】
[項目8]
上記突起が存在するゾーンの幅の、上記転輪が通過するゾーンの幅に対する比率PPが、50%以上である、項目1から7のいずれかに記載の弾性クローラ。
【0054】
[項目9]
それぞれの突起が側面を有しており、この側面の上記ベース面に対する角度θが70°以上90°以下である、項目1から8のいずれかに記載の弾性クローラ。
【0055】
[項目10]
それぞれの突起のA硬度が、50以上90以下である、項目1から9のいずれかに記載の弾性クローラ。
【産業上の利用可能性】
【0056】
前述の弾性クローラは、種々の走行装置に適している。このクローラは特に、土木機械及び建設機械に適している。
【符号の説明】
【0057】
2・・・走行装置
4・・・駆動輪
6・・・従動輪
8・・・転輪
10・・・弾性クローラ
12・・・スプロケット
14・・・メインベルト
16・・・ラグ
18・・・芯金
20・・・転輪ガイド
22・・・抗張体
24・・・内周面
26・・・外周面
28・・・外縁
30・・・係合孔
34・・・転輪走行ゾーン
36・・・サイドゾーン
38・・・センター
40・・・ホーン
42・・・ウイング
44・・・ガイド突起
46・・・コード
48・・・ベース面
50・・・突起
52・・・上底面
54・・・側面
56・・・弾性クローラ
58・・・メインベルト
60・・・内周面
62・・・転輪走行ゾーン
64・・・ベース面
66・・・突起
68・・・凹凸ゾーン
70・・・平坦ゾーン
72・・・弾性クローラ
74・・・メインベルト
76・・・ラグ
78・・・芯金
80・・・内周面
82・・・外周面
84・・・転輪走行ゾーン
86・・・ベース面
88・・・突起
図1
図2
図3
図4
図5
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